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明細書 :ルチル(TiO2)単結晶の製造方法及びルチル(TiO2)単結晶、並びにこれを用いた光アイソレータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4882075号 (P4882075)
登録日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
発明の名称または考案の名称 ルチル(TiO2)単結晶の製造方法及びルチル(TiO2)単結晶、並びにこれを用いた光アイソレータ
国際特許分類 C30B  29/16        (2006.01)
C30B  13/00        (2006.01)
FI C30B 29/16
C30B 13/00
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2007-542744 (P2007-542744)
出願日 平成18年10月31日(2006.10.31)
国際出願番号 PCT/JP2006/321705
国際公開番号 WO2007/052632
国際公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
優先権出願番号 2005318706
優先日 平成17年11月1日(2005.11.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年5月19日(2008.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】田中 功
【氏名】綿打 敏司
【氏名】森本 真輔
【氏名】朴 鐘寛
審査官 【審査官】鮎沢 輝万
参考文献・文献 Kazuhito HATTA et al.,Floating zone growth and characterization of aluminum-doped rutile single crystals,Journal of Crystal Growth,1996年,Vol.163,p.279-284
調査した分野 C30B 1/00-35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の育成雰囲気中でルチル(TiO)原料棒とルチル種結晶との接合部分を融解させ双方の融液からなる溶融帯を形成し、前記溶融帯を移動させながらルチル(TiO)単結晶を育成するルチル(TiO)単結晶の製造方法において、
接合前の前記原料棒の先端にチタン原子価+4よりも低原子価の異種金属元素を付着させ、前記種結晶と接合し、
前記溶融帯を形成することで前記溶融帯に含まれる前記異種金属元素により、育成されるルチル(TiO)単結晶の酸素欠損を抑制することを特徴とするルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記異種金属元素は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)の群から選ばれる1種の金属元素であることを特徴とする請求項1に記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記育成雰囲気が酸素0.1MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項4】
420nm以上の波長領域における光透過率が、前記ルチル(TiO)単結晶の光透過方向の厚みが1mmから2mmにおいて、60%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法により製造されたルチル(TiO)単結晶。
【請求項5】
ルチル(TiO)単結晶に含まれる前記異種金属元素の濃度が誘導結合プラズマ発光分光分析法の測定限界濃度から30ppmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法により製造されたルチル(TiO)単結晶。
【請求項6】
TiO粉末を加圧・成形し、1000℃以上で所定時間焼結することによりTiO原料棒を作製し、
+3価以下の異種金属元素を含むTiO粉末(以下、溶媒粉末)を加圧・成形し、
1000℃以上で所定時間焼結することにより溶媒原料を作製し、
前記TiO原料棒の一端部に前記溶媒原料を溶解固着し、
赤外線集中加熱炉を用いたフローティングゾーン(FZ)法によって、所定の育成雰囲気中で、前記溶媒原料とルチル種結晶とを溶融させながら溶融帯を形成し、
前記溶融帯を移動させながらルチル(TiO)単結晶を育成することにより、育成されるルチル(TiO)単結晶の酸素欠損を抑制することを特徴とするルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記異種金属元素は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)の群から選ばれる1種の金属元素であることを特徴とする請求項6に記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記育成雰囲気が酸素0.1MPa以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法。
【請求項9】
420nm以上の波長領域における光透過率が、前記ルチル(TiO)単結晶の光透過方向の厚みが1mmから2mmにおいて、60%以上であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法により製造されたルチル(TiO)単結晶。
【請求項10】
ルチル(TiO)単結晶に含まれる前記異種金属元素の濃度が誘導結合プラズマ発光分光分析法の測定限界濃度から30ppmであることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のルチル(TiO)単結晶の製造方法により製造されたルチル(TiO)単結晶。
【請求項11】
請求項4、5、9、10のいずれかに記載のルチル(TiO)単結晶を含む光アイソレータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ルチル(TiO)単結晶を例えば赤外線集中加熱炉を用いたフローティングゾーン(FZ)法によってルチル単結晶を製造する方法に関し、特に酸素アニールなどの処理を施さなくても420nm以上の波長領域で光透過率が60%以上であるルチル(TiO)単結晶を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ルチル(TiO)単結晶は光アイソレータの構成部品として必要不可欠な光学材料である。現在、ルチル(TiO)単結晶は一般的にフローティングゾーン(Floating Zone法、以下FZ法)やベルヌーイ法により育成されているが、育成結晶に酸素欠損や小傾角粒界などの結晶欠陥が発生することが大きな問題となっている。
【0003】
前者は光透過率低下を、後者は屈折率変動を招き、いずれもルチル(TiO)単結晶を光学材料として利用する際の大きな障害となる。また、高温で酸素欠損が生じて濃青色に着色するという問題がある。更に酸素結晶に伴う着色によって、均一な加熱が困難となるため、直径が数インチに及ぶ大口径の単結晶育成は困難であるという問題がある。
【0004】
小傾角粒界の発生を抑制する方法として、FZ法による結晶育成において育成雰囲気を炭酸ガス中などの低酸素分圧下や高圧酸素加圧下で育成する(特許文献1)、あるいは、Al3+やSc3+などの金属イオンを原料に添加する方法(特許文献2)が報告されている。酸素分圧3×10-2気圧以下の結晶育成では、育成結晶中に酸素欠損を生じて濃青色に着色し、この酸素欠損を低減させるために1000℃以上で数十時間以上の長時間にわたって酸素熱処理を施す必要があった(特許文献1)。
【0005】
特許文献2は大口径で格子欠陥の少ない高品質なルチル単結晶を作成する方法として、アルミニウム原料を含む焼結原料棒を用いてルチル(TiO)単結晶を育成する方法を開示している。しかし、発明者の知見によれば特許文献2に記載のルチル単結晶の製造方法では、単結晶の育成が進行するに従って、溶融帯にアルミが蓄積され、育成結晶の後半部分ではアルミニウムを含む異相が析出し、透明性の高いルチル(TiO)単結晶を育成することが難しいことが知れた。

【特許文献1】特開昭61-101495号公報
【特許文献2】特開平6-48894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸素欠損や小傾角粒径を含むルチル(TiO)単結晶は、光透過率の低下や屈折率変動を招くとともに、大口径の単結晶の育成が困難である。このため、上述したように高圧酸素加圧下で単結晶の育成を行う、あるいは1000℃以上で数十時間以上の長時間にわたって酸素熱処理を施す必要があり、これらはコスト高の要因となっている。
【0007】
そこで本発明の目的は、高純度ルチル原料に対して微量の異種金属元素を添加したルチル(TiO)溶媒、又はルチル融液(TiO)種結晶とを接触させて、ルチル(TiO)単結晶を育成することにより、高圧酸素加圧下での単結晶育成、あるいは単結晶育成後の熱処理を行わなくても透過率の高いルチル(TiO)単結晶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、所定の育成雰囲気中でルチル原料棒とルチル種結晶との接合部分を融解させ溶融帯を形成し、前記溶融帯を移動させながらルチル(TiO)単結晶を育成するルチル(TiO)単結晶の製造方法において、前記溶融帯にチタン原子価+4よりも低原子価の異種金属元素を添加し、前記溶融帯に含まれる前記異種金属元素により、育成されるルチル(TiO)単結晶の酸素欠損を抑制することを特徴とする。無添加高純度のルチル(TiO)焼結原料棒を用い、溶融帯に異種金属元素を含ませることにより、熱処理を行わなくても透明のルチル(TiO)単結晶を製造することができる。これは前記異種金属元素が育成されるルチル(TiO)単結晶の酸素欠損を溶融帯に含まれる異種金属元素が抑制するためである。
(2)前記溶融帯に含まれる異種金属元素がアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)の群から選ばれる1種の金属元素であることは好適である。また、前記育成雰囲気が酸素0.1MPa以上であることは好ましい。
(3)本発明により製造されるルチル(TiO)単結晶は、420nm以上の波長領域における光透過率が、前記ルチル(TiO)単結晶の光透過方向の厚みが1mm以上において、60%以上であることを特徴とする。また、本発明により製造されるルチル(TiO)単結晶に含まれる前記異種金属元素の濃度は30ppm以下である。これは、液相に含まれる異種元素が育成結晶に取り込まれない、又は取り込まれる割合が小さいことを示しており、液相の異種元素濃度をCL、育成結晶に含まれる濃度をCSとするとCS/CLが1に比べて極めて小さいことを意味するものである。
(4)従って、異種金属元素がルチル(TiO)単結晶中に固溶しているとしても、育成結晶に固溶する異種元素は育成結晶全体にわたって極めて微少かつ均一に固溶していることを意味するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸素欠損や小傾角粒界の少ないルチル(TiO)単結晶を複雑な装置、あるいはルチル(TiO)単結晶育成後に高温で熱処理を行わなくても透過率の高い単結晶を製造することができる。この結果、従来は不可能であった大口径のルチル(TiO)単結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ルチル単結晶の製造方法に使用する四楕円型赤外線集中加熱炉の説明図である。
【図2】溶媒原料とルチル原料との接合(溶媒付け)、及びルチル単結晶の育成方法を示した図である。
【図3】得られた育成結晶の色形状の写真である。
【図4】光透過率を測定した結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0011】
1 四楕円型赤外線集中加熱装置
11a,11b 両回転楕円面鏡
12a,12b 赤外線ランプ
13 石英管
14 上回転軸
15 下回転軸
16 ガス排出口
17 ガス導入口
18 原料棒
19 溶融帯
20 ルチル(TiO)種結晶
21 スクリーン
22 レンズ
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1はこの発明のルチル単結晶の製造方法に使用する四楕円型赤外線集中加熱装置1の説明図である。
【0013】
図1に示す四楕円型赤外線集中加熱装置1において、4個の回転楕円面鏡11a,11bが、それらの各焦点Fが一致するように構成されている。各回転楕円面鏡11a,11b…の他方の焦点Fa,Fb…には赤外線ランプ(例えばハロゲンランプ)12a,12b…を配置する。
【0014】
前記中央の焦点Fの位置には、相互に逆方向に回転する原料棒18と種結晶20との間に形成される溶融帯19が配置される。これらは石英ガラス等からなる赤外線透過性の円筒体13内に位置し、原料棒18と種結晶20は、それぞれ回転駆動機構で駆動される上回転軸14および下回転軸15に結合されている。
【0015】
なお、上記原料棒18は、TiO粉末をゴムチューブに詰め、冷間等方圧プレス機(CIP)により300MPaの静水圧プレスで加圧成型し、1200℃で12時間空気中で焼結させて得た焼結体からなっている。
【0016】
上記円筒体13内にはその上部にガス排出口16が、またその下部にガス導入口17が連通させてあり、円筒体13内の育成雰囲気として酸素をガス導入口17から導入し、円筒体13内において一定の酸素圧を保持させるようになっている。
【0017】
ルチル(TiO)単結晶の製造に際しては、ガス導入口17から酸素を供給し、0.3MPa以上の酸素圧中でルチル原料棒の下端とルチル(TiO)種結晶20の上端を融解して溶融帯19を形成した後、種結晶20と加熱位置を毎時3mm以上の速度で相対的に移動させることによって溶融帯19を移動させて種結晶20にルチルを結晶化させて単結晶を得る。
【実施例】
【0018】
ルチル原料棒18を次の手順により作製した。ルチル原料:TiO(99.9%)(東邦チタニウム株式会社製)を細長いラバーチューブに詰めて、棒状に成型し、30分間アスピレーターで真空吸引してチューブ内の空気を抜き、冷間等方圧プレス機(CIP)により300MPaの静水圧プレスで成型後、ゴムチューブから取り出し片側にドリルで穴を開け、白金線を通し、抵抗加熱炉で1400℃、12時間、空気中で焼結し、丸棒状の原料棒18を作製した。作成した原料棒18のサイズは直径7~9.5mm、長さが45~60mmである。
【0019】
次の溶媒原料を次の手順により作製した。先ず、出発原料としてはTiO(99.9%)(東邦チタニウム株式会社製)を選定した。また、出発原料に添加する異種金属元素としてAl(99.99%)(大朋化学株式会社製)、Fe(99%)(関東化学株式会社製)、NiO(99.9%)(和光純薬工業株式会社製)、GaO(99.99%)(株式会社レアメタリック製)、CaCO(99.99%)(株式会社レアメタリック製)、Y(99.99%)(株式会社レアメタリック製)を選定した。
【0020】
それぞれの添加物を金属原子換算で表1に示すようにして、アルミナ乳鉢で湿式混合し、アルミナ坩堝に入れ、カンタル炉で1000℃、12時間、空気中で焼成し溶媒粉末を作製した。
【0021】
その溶媒粉末を細長いラバーチューブに詰め、棒状に成型し、30分間アスピレーターで真空吸引してチューブ内の空気を抜き、冷間等方圧プレス機(CIP)により300MPaの静水圧プレスで成型後、ゴムチューブから取り出し片側にドリルで穴を開け、白金線を通し、スーパーカンタル炉で1200℃、12時間、空気中で焼結し、溶媒原料の焼結体を作製した。
【0022】

【表1】
JP0004882075B2_000002t.gif

【0023】
溶媒原料とルチル原料との接合(溶媒付け)には、ルチル単結晶育成装置を用いた。この装置は、1.0kWのハロゲンランプ4つを光源とする四楕円鏡型赤外線集光加熱装置1((株) クリスタルシステム製FZ-T-4000-H)である。この装置の石英管には、育成雰囲気が酸素0.1MPaの場合は肉厚2mmのもの、酸素0.5MPaの場合は肉厚5mmのものを使用した。
【0024】
図2(a)に示すように、原料棒を白金線でアルミナ管に固定し、原料棒先端に溶媒原料を0.3g載せ(セッティング)、雰囲気は空気中で約1時間半かけてランプ出力を172V,18A(85%)まであげた後に、ランプ電圧を調整し溶媒を融かし原料棒先端に溶媒原料を付着させた(溶融・凝固)。
【0025】
ルチル単結晶の育成条件は、5mm/hで酸素1気圧または5気圧、ルチル種結晶20は方位<001>で直径3mmサイズのCO中で育成したルチル単結晶を用いた。図2(b)に示すように、溶媒付着済みの原料棒を白金線で上シャフトのフックに引っ掛け、下シャフトにはルチル種結晶20を設置した。石英管を装着したのち酸素圧を任意の値まで加圧し、約1時間半かけてランプ出力を3.17~3.44kWまで上げ、上下シャフトを互いに逆方向に10rpm(上)と30rpm(下)で回転させた。まず、溶融帯19を形成するために原料棒18の先端を溶融させた(図2(b)溶融)。その後、種結晶20を加熱帯まで上昇させ種結晶20を加熱した後、原料棒18に接合させて溶融帯19を形成した(図2(b)種付け)。加熱帯を相対的に上向きに5mm/hで移動させ、ルチル種結晶20の方位<001>に成長させた。
【0026】
ここで、加熱帯の相対的な移動は、加熱炉を上方に移動させる方法と原料棒18と種結晶20を同時に下方に移動させる方法があるが、どちらを用いてもよい。育成中は溶融帯19の状況を見て、ランプ電圧を調整した(図2(b)育成)。育成終了時にはランプ電圧を徐々に低下させ、約20分間で育成結晶と原料棒18を切り離した(図2(b)溶融帯の切り離し)。
【0027】
その後、約1時間をかけてランプ出力を0Wにした。酸素圧力は、ランプ出力が0Wになり育成結晶を炉から取り出すまで維持した。
【0028】
なお、本実施例で用いた赤外線集光加熱法の原理は次の通りである。
【0029】
アルミニウム膜や金膜がコーティングされた回転楕円体の一方の焦点にハロゲンランプをおき、もう一方の焦点には上シャフトに吊るした原料棒の先端と下シャフトに固定された種結晶20の上端がくるように配置する。ハロゲンランプの電圧を調整することにより、一方の焦点にあるハロゲンランプから放射された赤外線はもう一方の焦点に集光し、原料棒18と種結晶20の一部を融解させ、それらを接合させて溶融帯19を形成し、その溶融帯19を順次上方向に移動させることにより単結晶が育成される。
【0030】
ルチル(TiO)単結晶育成中の溶融帯19の様子は、レンズ22を通して育成装置画面のスクリーン21に投影されるので、溶融帯を観察しながらランプ電圧や上下シャフトの位置を調節し、安定な溶融帯19を維持する。また、結晶育成部は、透明石英管によって大気から遮断されているので、任意の雰囲気ガス中で結晶育成が可能である。なお、溶融帯形成には坩堝などの容器が必要でないので、坩堝からの汚染や坩堝と原料の化学反応などの問題がない。
【0031】
得られた育成結晶の形状はc軸方向と平行に4つのファセットがあらわれていたため四角柱であった。ルチル溶媒への添加物によって育成結晶の色に違いがあった。図3に示す通り、Al,Fe,Caについては育成雰囲気の酸素圧にかかわらずルチル本来の淡黄色であったが、Niは黄色と青色の中間色であり、Y,Gaでは青色より少し黄色かかった色を呈していた。
【0032】
育成したルチル単結晶を<001>に平行で厚さ2 mmのウエハ状に切り出し、それを1mmまで両面を鏡面研磨した後、偏光顕微鏡により品質を評価した。図4は光透過率を測定した結果を示したグラフである。ここで用いた試料は、厚さ1~2mm、研磨剤1μmで鏡面研磨済、未熱処理のものである。この試料について、UV-Spectrophotometerを使用し、室温で200~900nm波長範囲の光透過率を測定したところ、図4に示す通り、0.5MPaの酸素圧力で育成したルチル(TiO)単結晶が420nm以上の波長領域で約50%弱の光透過率であったの対し、Al、Feを添加した溶媒を溶融帯19として用いた場合には、アニールを行わなくても420nm以上の波長領域で約60%の光透過率を得ることができた。
【0033】
溶媒組成Al1350ppm、酸素圧0.1MPaで育成したルチル(TiO)結晶をワイヤーソーでそれぞれの部分を切り出し、育成結晶先端部(0.252g)後半部(0.208g)を硫酸中90℃で3.5時間処理した試料を0.1g秤量し、アルカリ融解し、融解塩を塩酸で溶解した。本溶液に含まれるアルミニウム(Al)を誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定(使用装置:SPS-1700HVR型)したところ、表2に示す通り、Al、Feともに測定装置の検出限界以下であった。
【0034】
溶融帯に添加した異種元素が育成結晶中に固溶すると仮定すると原料棒に無添加の純粋な酸化チタンを用いているので育成結晶の初期部に異種元素が析出する現象が見られ、融液中に含まれる異種元素の量は、育成が進むにしたがって減少するはずである。しかし、本実施例が示すようにルチル(TiO)結晶中に含まれるAl、Feが検出限界以下であることは、製造されたルチル(TiO)単結晶は、初期部と終期部で色の違いが無いことからも裏付けられる。
【0035】
【表2】
JP0004882075B2_000003t.gif

【0036】
本明細書は、2005年11月1日出願の特願2005-318706に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3