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明細書 :ガス拡散電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5223127号 (P5223127)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
発明の名称または考案の名称 ガス拡散電極の製造方法
国際特許分類 H01M   4/88        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 4/88 K
B01J 35/10 301G
B01J 37/08
B01J 37/04 102
B01J 23/42 M
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2008-513339 (P2008-513339)
出願日 平成19年4月27日(2007.4.27)
国際出願番号 PCT/JP2007/059554
国際公開番号 WO2007/126153
国際公開日 平成19年11月8日(2007.11.8)
優先権出願番号 2006122794
優先日 平成18年4月27日(2006.4.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年4月26日(2010.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】内田 裕之
【氏名】渡辺 政廣
審査官 【審査官】山内 達人
参考文献・文献 特開2002-184414(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86-4/98
H01M 8/00-8/24
特許請求の範囲 【請求項1】
金属触媒を担持するカーボンブラックに、イオン導電性高分子材料(以下、アイオノマー)と溶媒とを加えてペースト状とし、
前記ペーストを密閉容器内で加熱処理し、
前記アイオノマーの集合体を離散せしめ、
冷却処理後、真空乾燥し、
粉砕後、得られた粉体を溶媒と混合し触媒ペーストとし、
前記触媒ペーストをガス拡散電極用基板に被覆し作成することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
【請求項2】
前記冷却処理を水冷による急冷で行うことを特徴とする請求項1に記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理温度が80℃から250℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項4】
前記密閉容器内の圧力は10気圧以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガス拡散電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散電極の製造方法、及びガス拡散電極に関し、特に有機溶媒に可溶なイオン導電性高分子材料(以下、アイオノマー)が、金属触媒が担持されたカーボンの一次凝集体の内部の細孔(以下、一次孔)にまで入ることにより、触媒の利用率を向上させたガス拡散電極の製造方法、及びガス拡散電極に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、PEFC)は、燃料電池自動車、定置用コージェネレーション、携帯機器用の電源として研究開発が進められている。PEFCの心臓部は、図1に示すように、水素イオン(H)導電性の高分子電解質膜を2枚のガス拡散電極でサンドイッチした膜電極接合体(MEA)である。
ガス拡散電極の触媒層では、燃料極(アノード触媒層)で水素の酸化(H→2H+2e)、空気極(カソード触媒層)で酸素の還元(2H+1/2O+2e→HO)がおこる。電極触媒としては、カーボンブラック(以下、CB)等の導電体からなる担体に白金を主体とする数ナノメーターの活性金属触媒粒子、例えば白金とカーボンブラック(以下、Pt/CB)、プラチナ・ルテニウムとカーボンブラック(Pt-Ru/CB)が用いられている。しかし、白金は高価であるため、その使用量を低減するとともに、その利用率を高めることが求められている。
PEFCのカソード触媒層において、触媒利用率を高めるためには水素イオンを触媒粒子に効率的に供給する必要があるが、水素イオンはアイオノマーを介して触媒粒子に到達するため、触媒粒子をアイオノマーで被覆する必要がある。
アノード触媒層では、水素やメタノールを酸化して生じた水素イオンを電解質膜まで導電させるため、ガス拡散層をアイオノマーで同様に被覆する必要がある。ここで、アイオノマー被覆が厚くなるとH導電性は高くなるが、反応物や生成物の物質拡散が遅くなる。逆に、被覆が薄くなると、物質拡散速度が高くなるが、H導電性が低くなる。従って、これらのバランスの取れたガス拡散電極が求められている。
従来のガス拡散電極の製造方法としては、Pt/CB触媒粒子とアイオノマーと溶媒とを適切な割合で混合したペーストを作製し、これを電解質膜に直接、又はガス拡散層に塗布する方法がとられてきた。
一般にPt/CB触媒には二種類の細孔が存在する。一つは、Pt/CB一次凝集体(これ以上分離できない最小の触媒単位)内部の一次孔(約100nm以下のサイズ)であり、もう一つは凝集体間の二次孔(100nm超)の二つである。通常、Pt触媒の90%は一次孔の内壁に担持されている。しかし、図2Aに示すように、アイオノマー同士は凝集しやすいため、一次孔内部にアイオノマーが入り込むことができない。
これを改善する方法として、ペースト内のアイオノマー濃度を上げる方法があるが、所定の濃度を超えると二次孔まで充填されて、カソード電極で生成される酸素や水の物質拡散が阻害されるという問題がある。
さらに、アイオノマー濃度の上昇と共にペーストの粘度が高くなり、被覆が不均一になる、あるいは、乾燥時の粘度変化によりアイオノマー膜厚が不均一になるという問題があった。このため、従来法でのカソード触媒利用率は、約20%程度の低いレベルにとどまっていた。
これらの問題を解決する先行技術として、特開2005-190712号公報では触媒利用率の異なる二つ以上の電極触媒の混合した触媒担持電極を提案している。しかし、これは一次凝集体の内部にアイオノマーが入らないことによる触媒利用率の低下を解決するものではなく、かかる問題を解決する先行技術はない。
そこで本発明は、一次孔内部にまでアイオノマーを侵入させることにより、アノード触媒層で生じた水素イオンを効率よく電解質膜まで導電させることを目的とし、また、カソード触媒層に水素イオンを効率よく到達させ、カソード電極における反応物や生成物である酸素および水の物質拡散速度の低下を抑制し、金属触媒の利用率の向上を図ることを目的とする。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、金属触媒が担持されたカーボンブラックの一次凝集体を含むガス拡散層及び/又は触媒層を備えたガス拡散電極であって、前記一次凝集体の内部の細孔(以下、一次孔)の内壁にイオン導電性高分子材料(以下、アイオノマー)が略均一に被覆されていることを特徴とする。これにより、例えばPEFCにおいては、アノード触媒層で生じた水素イオンを効率よく、電解質膜まで導電させることができる。
前記一次孔の口径が100nm以下であることは好適である。また、前記金属触媒の80%以上が前記一次孔内の内壁に担持されていることは好ましく、前記アイオノマーと前記カーボンブラックの重量比が0.7以上であることは好適である。
本発明は、金属触媒を担持するカーボンブラックに、イオン導電性高分子材料(以下、アイオノマー)と溶媒とを加えてペースト状とし、前記ペーストを加熱処理し、前記アイオノマーの集合体を離散せしめ、冷却処理後に得られた粉体を溶媒と混合し触媒ペーストとし、前記触媒ペーストをガス拡散電極用基板に被覆し作成することを特徴とする。前記ペーストを加熱処理することにより、アイオノマーの分子サイズが小さくなり、一次凝集体の細孔にアイオノマーが侵入できる。
また、前記加熱処理を高気圧中で行うことは好適であり、また冷却処理を急冷で行うことは好ましい。また、前記加熱処理温度が80℃から250℃であることは好適であり、前記加熱処理を10気圧以上の高気圧中で行うことは好ましい。
本発明は、金属触媒を担持するカーボンブラックに、イオン導電性高分子材料(以下、アイオノマー)と溶媒とを加えてペースト状とし、前記ペーストを真空乾燥し、前記アイオノマーの集合体を離散せしめ、得られた粉体を溶媒と混合し触媒ペーストとし、前記触媒ペーストをガス拡散電極用基板に被覆し作成することを特徴とする。前記ペーストを真空乾燥することにより、アイオノマーの分子サイズが小さくなり、一次凝集体の細孔にまでアイオノマーが侵入できる。
本発明によれば、一次凝集体の一次孔内部にまでアイオノマーを侵入させることができる。この結果、アノード触媒層で生じた水素イオンを効率よく電解質膜まで導電させることができる。また、水素イオンをカソード触媒層に効率よく到達させることができるとともに、カソード電極における反応物や生成物の物質拡散速度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、固体高分子形燃料電池の膜電極接合体を示した図である。
図2Aおよび図2Bは、アイオノマーが被覆された触媒層の様子を模式的に示した図である。
図3は、触媒層の製造方法のフローチャートである。
図4は、固体高分子形燃料電池カソード触媒層の電流-電位特性を示したグラフである。
図5A~図5Eは、固体高分子形燃料電池カソード触媒層の特性を示したグラフである。
図6は、触媒層の細孔体積を示したグラフである。
図7A~7Cは、触媒粉末のSTEM写真である。
図8A~8Dは、銀イオン交換したナフィオン-Pt/CB触媒粉末のSTEM写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図2Bは、本発明により製造される一次凝集体の一次孔内部までアイオノマーが入り込み、一次孔の内壁にアイオノマーが均一に被覆された様子を示した概念図である。図3は本発明の製造工程のフローチャートを示したものである。
図3に示す通り、先ず、アイオノマーと、Pt/CB触媒粉末と溶媒とを適切な割合で混合してペーストを調製する(S1)。ここで、アイオノマーとしては、例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)などのポリ・パーフルオロスルホン酸、スルホン酸やホスホン酸を付与した炭化水素系高分子(ポリイミド、ポリエーテル、ポリアリレンエーテルスルホン、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリベンズイミダゾールなど)、酸化ケイ素やポリタングステン酸等の無機材料と有機高分子の無機-有機ハイブリッド電解質が好適である。
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノールなどの低級アルコールやアセトン等が好適である。また、例えば20℃付近の室温で乾燥させるときには適切な乾燥速度に制御できる2-プロパノールと水の混合溶媒が好ましい。
次に、ペーストを高温高圧雰囲気(オートクレーブ)で処理することにより、アイオノマーの有効サイズ(分子サイズ)を小さくして、一次凝集体内部の一次孔にまでアイオノマーが均一に被覆されるようにする(S2)。
次に、高温のまま溶媒ガスを抜いて常圧に戻し、急冷して均一な被覆状態を保持する(S3)。そして、真空乾燥してアイオノマーが被覆されたPt/CB粉末を得る(S4)。次に、調製された粉末を溶媒に再分散してペーストを調製し(S5)、ペーストを塗布して触媒層を形成する(S6)。これにより触媒層(新型触媒層)を製造する。
上記製造工程において、高温高圧雰囲気(オートクレーブ)処理(S2)、冷却処理(S3)、及び、触媒層塗布用ペーストの調整(S5)の工程を省略して触媒層を製造する、S1、S4’、S6’のプロセスでも、従来の触媒層よりもアイオノマーが一次孔内部に入り込んだ触媒層を製造することができる。なお、従来の触媒層の製造プロセスは、S1、S6’’である。

【実施例】
【0006】
アイオノマーとしてナフィオン、金属触媒として白金を用い、ナフィオン/カーボン重量比が0.7,0.5mg-Pt/cmのガス拡散電極を以下のようにして製造した。
先ず、次のようにして触媒ペーストの調製を行った。ボールミル用ジルコニアポットに2-プロパノール(関東化学株式会社製特級試薬)4.0g、純水4.0gとナフィオンアルコール溶液(デュポン株式会社,DE-521,ナフィオン5wt%)7.0gを入れた。これにPt/CB触媒(田中貴金属工業株式会社,TEC10E50E,46.3wt%Pt)0.93gを少量ずつ加え、遊星型ボールミル(フリッチュ・ジャパン株式会社,P-7型)で270rpmで2時間混合した。
次に、オートクレーブ処理として、上記のペーストを窒素ガスを満たしたグローブボックス(アズワン株式会社製)中で、容量70mLの弗素樹脂系容器に移してオートクレーブ(SUS加圧分解容器,株式会社
ヤナコ機器開発研究所製,AD-70)に密閉し、200℃で2時間加熱した。この処理中の容器内圧力は約18気圧と推定された。
次に、急冷処理として、SUS容器のフタをゆるめて溶媒蒸気を逃がして常圧に戻し、容器を水で急冷した。
次に、真空乾燥処理として、上記の処理により得られたペーストをガラス製ビーカーに移し、真空乾燥機(ヤマト科学株式会社,DP-23)にて90℃で3時間乾燥し、塊状のナフィオン被覆Pt/CBを作成した。
次に、触媒層塗布用ペーストの調製として、塊状のナフィオン被覆Pt/CBをボールミル用ジルコニアポットに入れて、遊星型ボールミルにて270rpmで1時間粉砕してナフィオン被覆Pt/CB粉末を得た。この0.64gに2-プロパノール3.0gと純水3.0gを加え、遊星型ボールミルで270rpmで2時間よく混合して触媒層塗布用ペーストを作成した。
次に、ガス拡散層付きカーボンペーパーへの触媒層の塗布として、触媒層塗布用ペーストを撥水化カーボンペーパー上のガス拡散層にバーコーターにより塗布した。室温で乾燥後、プログラムホットプレス機にて、室温、1MPaで30秒間コールド(冷間)プレスした。100℃で1晩処理した後、プログラムホットプレス機にて、140℃、1.2MPaで3分間ホットプレスした。このようにして得た触媒層のPt担持量は0.5±0.02mg/cmであり、触媒層中ナフィオン・アイオノマーとカーボンの重量比N/C=0.7であった。
これらの工程とは別に、比較対象として、最初に調製したペーストをそのまま撥水化カーボンペーパー上のガス拡散層にバーコーターにより塗布し、これを真空乾燥してガス拡散電極(オートクレーブ未処理触媒層)を作成した。
なお、ナフィオン被覆Pt/CBと溶媒との正確な混合比を必要としない、例えば粘度測定等により制御する場合などは、真空乾燥の工程を省略することも可能である。また、ペースト組成を適切に変えることにより、転写法(デカール法)やスプレー法などにより、電解質膜に直接触媒層を形成することも可能である。
ガス拡散層付きカーボンペーパー(CP,東レ株式会社,TGP-H-120,厚さ350μm)の撥水化処理を次のようにして行った。CPをテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン懸濁液(FEP懸濁液:ダイキン工業株式会社,ND-1)に浸漬後、60℃加熱乾燥を繰り返して、FEP量を15wt%に調節した。
FEP懸濁液に含まれている界面活性剤(ロームアンドハースジャパン株式会社,Triton
X-100)を取り除くために2-プロパノールに浸漬して超音波洗浄機中で洗浄した。そして、300℃で30分間加熱してFEPを固着させた。
次に、上記のFEP処理したCPの片面にガス拡散層を調製した。界面活性剤(Triton
X-100)、ポリテトラフルオロエチレン懸濁液(PTFE懸濁液:三井・デュポンフルオロケミカル株式会社)とカーボンブラック(CB,電気化学工業株式会社,デンカブラック)を、CB/PTFE/Triton
X-100=1/0.667/4.2(重量比)となるように混合し、遊星型ボールミルにて270rpmで2時間混合した。これをバーコーター(RK Print Coat
Instrument Ltd.,K101 control coater,Bar No.4)にて、撥水化処理したカーボンペーパーに塗布し、60℃で1時間乾燥させた。
次に、界面活性剤(Triton
X-100)を取り除くために、2-プロパノールに浸漬して超音波洗浄機中で洗浄した。これをプログラムホットプレス機(東邦工業株式会社製、TCM2.5)にて360℃、0.3MPaで3秒間ホットプレスし、純水で急冷した。かくしてPTFE+CB=1.05±0.05mg/cmのガス拡散層を有する撥水化カーボンペーパーを得た。
比較例
(1)触媒層の性能試験
電解質膜にはナフィオン112膜(デュポン株式会社,厚さ50μm)を用いた。使用前に、60℃の3%過酸化水素水で処理して有機不純物を除去し、60℃の1モル/Lの硝酸水溶液でプロトン化した。その後、60℃の温水が中性になるまで繰り返し洗浄した。上記のガス拡散電極も同様にして処理した。2枚のガス拡散電極(有効面積3cm)でナフィオン112膜を挟み、プログラムホットプレス機にて、120℃、0.98MPaで10秒間ホットプレスして膜電極接合体(MEA)を得た。アノード触媒層(燃料極)とカソード触媒層(空気極)の分極特性を分離して測定するために、可逆水素電極(RHE)を取り付けた。MEAはガス流路溝付きグラファイトブロックを有する試験セルにセットした。
セル運転温度はTcell=80℃で、加圧せず常圧で運転した。燃料には純水素を90℃で加湿して200mL/minの一定流速で供給した。酸化剤には純酸素(100mL/min)または空気(500mL/min)を50℃で加湿して供給した。これら反応ガスの利用率は1A/cmで11%に相当する。試験セルの電流-電位特性は、電流遮断機能付き電子負荷(Scribner製890C)を備えた単セル試験装置(株式会社東陽テクニカ)で測定した。
酸化剤に酸素ガスを用いた場合の電流—カソード電位特性を図4に示す。図には示していないが、アノード特性は触媒層の製法や組成によらず、1A/cm2の電流密度まで分極損失は無視できるほど小さかった。他方、カソード特性はオートクレーブ処理を行った新型触媒層(本製法)でN/C=0.7と1.0で、すべての電流密度域で顕著に向上した。
図5Aはカソード触媒層中の白金の質量活性、図5Bはターフェル勾配、図5CはMEAのオーム抵抗、図5Dは酸素ゲイン、ならびに図5Eは0.75Vにおける電流密度とN/Cとの関数を示す。質量活性は、0.9V(vs.RHE、オーム損除去)における白金触媒使用量あたりの電流値(Ag-1)で定義され、触媒利用率の尺度となる。
従来型触媒層に比べて、真空乾燥処理を行ったオートクレーブ未処理触媒層は、約2倍高い質量活性を有している。オートクレーブ処理を行った新型触媒層では、N/C≧0.7以上で極めて高い質量活性42Ag-1に達している。これは、同じ組成でのオートクレーブ未処理触媒層の約1.4倍、従来型の約2.8倍も高い値であり、本製法の有効性を明確に示している。
図5Bの分極特性のターフェル勾配は、いずれの触媒層でもN/C≧0.7で、電荷移動律速の理論値である約70mV
decade-1に達し、利用されている触媒まではプロトンと酸素ガスが十分に供給されていることを示している。N/C=0.5での大きなターフェル勾配と比較的大きなオーム抵抗(図5C)はアイオノマーによるプロトン導電ネットワークの不十分さを示している。
図5Dの酸素ゲインは酸素ガスを用いた場合と空気を用いた場合の電流密度0.5A/cm2における電位差として定義され、電極のガス拡散性の指標である。新型触媒層ではN/C=0.7で極小値に達しており、これよりもアイオノマーを増やすと酸素ガス拡散が阻害されることを示している。これらの総合性能として、図5Eに示すとおり、0.75Vにおける電流密度は、新型触媒層のN/C=0.7で1A/cmを越える最高値に達しており実用的に十分高い性能を有していることが証明された。
(2)触媒層の細孔分布
触媒層の細孔分布は水銀ポロシメータ(島津マイクロメトリックス,Autopore
II 9220)により測定した。Pt/CB一次凝集体内部の一次孔(100nm以下)と、凝集体間の二次孔(100nm超)が観測された。図6には、一次孔充填率のN/C依存性を示す。Pt触媒の約90%が存在する一次孔の充填率は、N/Cの増加とともに増加していることが示された。オートクレーブ処理により、一次孔充填率が高められており、これが先に示した高い触媒利用率をもたらしている。
(3)触媒層粉末の走査透過電子顕微鏡(TEM)観察
STEM観察用試料は以下のようにして調製した。少量の触媒粉末を包埋用導電性エポキシ樹脂(シェルケミカルズジャパン株式会社,EPON815)と混合し60℃で24時間固化させた。これをミクロトーム[ライカマイクロシステムズ株式会社,ウルトラミクロトーム(ダイヤモンドナイフ付き)]にて超薄片切片を得た。超薄片切片は、走査透過電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズHD-2300,加速電圧200kV)で観察した。
図7Aはアイオノマー被覆のないPt/CBのSTEM写真である。一次粒径約30nmのカーボンブラック粒子が連なった一次凝集体に粒径2-3nmのPt触媒(濃い黒のスポット)が高分散されている。図7A中の(a)は典型的な一次孔を、(b)は二次孔を示している。N/C=0.7でナフィオンを被覆し、オートクレーブ未処理の触媒が図7B、オートクレーブ処理した触媒が図7Cである。図7Cでは図7Aや図7Bよりも、Pt粒子のサイズがわずかに大きく見えるものの、それほど大きな差異は観察されなかった。
次に、ナフィオンを被覆したPt/CB触媒を硝酸銀水溶液で処理後によく水洗して、スルホン酸基のプロトンを電子線吸収係数の大きいAgイオンで交換し、アイオノマーの分布を走査透過電子顕微鏡(TEM)により観察した。図8Aおよび図8Bがオートクレーブ未処理の触媒、図8Cおよび図8Dがオートクレーブ処理した触媒であり、N/Cはともに0.7で同じである。また、図8Aおよび図8Cが低倍率(観察倍率10万倍)、図8Bおよび図8Dが高倍率(20万倍)である。
ナフィオンのスルホン酸基にAgイオンを付けたオートクレーブ未処理の触媒(図8A,図8B)では、図7A~7Cでは見られなかったような黒い塊(図中の矢印で示すようなパッチ)がPt/CBに付着している。この塊状物質はプロトン型ナフィオン・アイオノマー被覆Pt/CBのSTEM写真には見られなかったので、Ag+イオン交換ナフィオン・アイオノマーに帰属できる。
図8Aおよび図8B(オートクレーブ未処理)と図8Cおよび図8D(オートクレーブ処理)のSTEM写真を見比べると、明らかに、オートクレーブ処理により、アイオノマーが均一に分布していることがわかる。
先の図7CでPt粒子のサイズがやや大きく見えたのは、均一に被覆されたナフィオン・アイオノマーによって電子線が散乱されたためと解釈される。以上のように、本発明の製造法により、アイオノマーをPt/CB触媒に均一に被覆できることが走査透過電子顕微鏡(TEM)による観察により明確に示すことができた。
本明細書は、2006年4月27日出願の特願2006-122794に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5A】
5
【図5B】
6
【図5C】
7
【図5D】
8
【図5E】
9
【図6】
10
【図7A】
11
【図7B】
12
【図7C】
13
【図8A】
14
【図8B】
15
【図8C】
16
【図8D】
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