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明細書 :複合微細構造体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5150898号 (P5150898)
公開番号 特開2008-230925 (P2008-230925A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
発明の名称または考案の名称 複合微細構造体およびその製造方法
国際特許分類 C01G  23/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C01G 23/00 C
C01G 23/00 D
B82B 1/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 18
出願番号 特願2007-075356 (P2007-075356)
出願日 平成19年3月22日(2007.3.22)
審査請求日 平成21年7月30日(2009.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
発明者または考案者 【氏名】出来 成人
【氏名】水畑 穣
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125184、【弁理士】、【氏名又は名称】二口 治
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開2006-243451(JP,A)
特開平11-263620(JP,A)
特開2001-072414(JP,A)
特開2006-256916(JP,A)
特開2007-001826(JP,A)
特開2007-273746(JP,A)
特表2007-504307(JP,A)
特開2006-323231(JP,A)
国際公開第2006/061835(WO,A1)
特開2004-240008(JP,A)
特開2005-300767(JP,A)
特開2005-345762(JP,A)
特開2006-162638(JP,A)
特開2006-171533(JP,A)
特開2007-243343(JP,A)
Sachihiko IIZUKA et al.,Development of fabrication process for metal oxide with nano-structure by the liquid-phase infiltration (LPI) method,Electrochimica Acta,2005, Vol.51,pp.802-808
出来 成人 ほか,液相析出法(Liquid Phase Deposition; LPD法)による水溶液からの機能性酸化物の調製と形状規制,日本結晶成長学会誌,2006年, Vol.33, No.3,第42~48ページ
飯塚 幸彦 ほか,液相析出(LPD)法によるTixSn1-xO2傾斜薄膜の合成と光触媒活性,電気化学会創立70周年記念大会講演要旨集,2003年 3月25日,第134ページ上段
調査した分野 C01G1/00-23/08
B82B1/00
B82B3/00
CAplus(JDreamII)
Science Direct
Scopus
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
Ti,Zr,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Ni,Zn,In,Si,SnおよびSbよりなる群から選択される第1の金属元素ととの化合物である第1の金属酸化物層の内部に、前記群から選択され、第1の金属元素とは異なる第2の金属元素ととの化合物である第2の金属酸化物からなる同一粒径の微粒子が最密充填されており、前記第1の金属酸化物層と、前記第2の金属酸化物からなる微粒子が、いずれもLPD法により形成されていることを特徴とする複合微細構造体。
【請求項2】
前記微粒子の平均粒径は、10nm~10μmの範囲内にある請求項1に記載の複合微細構造体。
【請求項3】
三次元フォトニック結晶である請求項1または2に記載の複合微細構造体。
【請求項4】
光学的干渉色を示す請求項1~3のいずれか1項に記載の複合微細構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の複合微細構造体をLPD法により製造する方法であって、
基板上に、同一粒径の有機高分子微粒子を最密充填構造を採るように並べてテンプレートを形成する工程a、
第1の金属フッ化物錯体が溶解した反応溶液に前記テンプレートを浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して前記有機高分子微粒子の表面および粒子同士の間隙に、第1の金属ととの化合物である第1の金属酸化物を析出させる工程b、
前記工程bの生成物から有機高分子微粒子を除去し、多数の空孔を有する第1の金属酸化物層を形成する工程c、
第2の金属のフッ化物錯体が溶解した反応溶液に前記第1の金属酸化物層を有する基板を浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して、前記空孔内に第2の金属ととの化合物である第2の金属酸化物を析出させる工程d
を含むことを特徴とする複合微細構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる屈折率を有する物質が周期的に配列した構造体であるフォトニック結晶にもなり得る複合微細構造体およびその製造方法に関し、詳細には、金属酸化物等の金属化合物の微粒子が、ほぼ同一粒径で三次元的に規則正しい配列を採っている複合微細構造体ならびにこれを容易に製造することのできる製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、フォトニックバンドギャップを有する材料として光学デバイス等への適用が期待されている。またその量子効果を利用して半導体量子ドットを作製する試みもなされている。
【0003】
二次元的なフォトニック結晶は、気相法による薄膜形成と、リソグラフィ技術やドライエッチング技術を組み合わせて形成されているが、三次元的なフォトニック結晶の製造を行おうとすると、1層形成しては2層目を積層し、という作業を何回も繰り返さなければならず、実質的には、三次元的なフォトニック結晶の気相法での製造はほとんど不可能である。
【0004】
また、例えば特許文献1には、金属アルコキシドを予め基板に形成したマイクロモールド(ファイバー状溝)に流し込む方法でフォトニック結晶を製造する方法が示されているが、溝によって受光できる方向が制限されるため、あらゆる方向からの光を受光できる真の三次元構造のフォトニック結晶とは言い難い。

【特許文献1】特開2001-72414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、ほぼ同一粒径の金属化合物微粒子が、マトリックスである異種金属化合物相の中に規則的に配列充填された三次元構造を有する複合微細構造体を、簡単に製造することのできる方法を見出して、フォトニック結晶や様々な用途への適用が可能な複合微細構造体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合微細構造体は、第1の金属元素と16族元素から選択される1の非金属元素との化合物層の内部に、この第1の金属元素とは異なる第2の金属元素と前記16族非金属元素との化合物からなる略同一粒径の微粒子が最密充填されているところに特徴がある。
【0007】
上記16族非金属元素は、O、SまたはSeである。上記微粒子の平均粒径は、10nm~10μmの範囲内にあることが好ましい。
【0008】
本発明の複合微細構造体の製造方法はLPD(Liquid Phase Deposition:液相析出)法を用いるものであり、
基板上に、略同一粒径の有機高分子微粒子を最密充填構造を採るように並べてテンプレートを形成する工程a、
第1の金属フッ化物錯体が溶解した反応溶液に前記テンプレートを浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して前記有機高分子微粒子の表面および粒子同士の間隙に、第1の金属と16族非金属元素との化合物を析出させる工程b、
前記工程(b)の生成物から有機高分子微粒子を除去し、多数の空孔を有する第1の金属化合物層を形成する工程c、
第2の金属のフッ化物錯体が溶解した反応溶液に前記第1の金属化合物層を有する基板を浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して、前記空孔中に第2の金属と16族非金属元素との化合物を析出させる工程d
を含むところに、特徴を有する。
【0009】
金属硫化物または金属セレン化物の複合微細構造体を製造する場合には、上記工程dの後に、さらに、硫化またはセレン化工程eを行えばよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ある金属化合物の連続相の中に、略同一粒径の異種の金属化合物微粒子が三次元的に規則正しく配列する構造の複合微細構造体が得られる。この複合微細構造体はあらゆる方向の光を受け取ることができるため、例えば、新規フォトニック結晶として、光学デバイスの実用化に寄与することができると考えられる。また、本発明の製造方法は、気相法やリソグラフィ技術を用いずに、所望のサイズの複合微細構造体を容易に製造することができるため、今後、フォトニック結晶を工業的に製造する際や、他の用途に展開する場合においても、極めて工業的に有用な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の複合微細構造体は、第1の金属元素と16族元素から選択される1の非金属元素との化合物層の内部に、この第1の金属元素とは異なる第2の金属元素と前記16族非金属元素との化合物からなる略同一粒径の微粒子が最密充填されているものである。
【0012】
第1の金属元素としては、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Ni,Zn,In,Si,Sn,Sb等が挙げられる。16族の非金属元素としては、O,S,Seが挙げられる。例えば、第1および/または第2の金属化合物が金属酸化物の場合、酸化物としては、TiO2,ZrO2,V25,VO2,Nb25,Ta25,MoO3,WO3,Fe23,Fe34,NiO,ZnO,In23,SnO2,SiO2,Sb23,Sb25等となる。これらの複合酸化物でもよく、また、希土類元素としてLa,Ce,Pr,Nd,Eu,Gd,Tb等を添加イオンとして含有する上記酸化物等であってもよい。さらに、例えば、FeOOHといったオキシ水酸化物や、オキシフッ化物等もLPD法で析出させることができる。なお金属硫化物やセレン化物は、後述するように、金属酸化物を析出させた後の工程で、硫化反応またはセレン化反応を行うことにより得られる。
【0013】
これらの第1の金属化合物(酸化物、硫化物、セレン化物等)層は、規則正しく配列する第2の金属化合物の微粒子を内包・保持する連続相として機能する。
【0014】
第2の金属元素としては、第1の金属元素の具体例として示した元素がいずれも使用可能であるが、第1の金属元素とは異なる元素を選択しなければならない。第1の金属元素と第2の金属元素が同じ元素では、複合微細構造体になり得ないからである。第1の金属元素としては、例えば半導体的性質を帯びるTiやSiが好ましく、第2の金属としては、V,Fe,Ni,In,Sn等が、電気的、光学的、量子効果的に有用であると考えられる。第2の金属化合物も、酸化物、硫化物、セレン化物、オキシ水酸化物、オキシフッ化物等、種々の態様を採ることができる。
【0015】
次に、本発明の複合微細構造体の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、LPD法(Liquid Phase Deposition:液相析出法)を用いるものである。LPD法は、溶液内での金属フッ化物錯体の加水分解平衡反応を利用するもので、この反応を下記に示す。Mが金属である。
【0016】
【化1】
JP0005150898B2_000002t.gif

【0017】
上記式(1)で示される加水分解平衡反応は、式(2a),(2b)で示されるより安定なホウ素もしくはアルミニウムからなるフッ化物錯体を形成することにより、酸化物と遊離フッ素が形成される方向に進行する。すなわち、本発明法で採用するLPD法は、金属フッ化物錯体を有する反応溶液に基板(またはテンプレート)を浸漬し、反応溶液にフッ素イオン消費剤としてホウ酸(H3BO3)または金属アルミニウム(Al)を添加することにより、金属酸化物を基板(またはテンプレート)上に直接析出させるものである。この金属酸化物は、析出段階では数十nmの微細な粒子が緻密に接合しあって構成されているが、亀裂は原子間力顕微鏡で観察しても認められない(特開2006-256916号公報)。その後の加熱(焼成)処理すると、微小粒子が凝集して粒径が数百nm程度に増大するが、やはり亀裂は生じないため、LPD法は、金属化合物の薄膜や微粒子形成のための有用な方法といえる。
【0018】
本発明法においては、金属フッ化物錯体としては、前記金属元素とフッ素とを含む錯体であればいずれも用いることができ、例えば、(NH42TiF6、(NH42TaF6、(NH42ZrF6、(NH42FeF6、(NH42ZnF6、(NH42SnF6等の(NH42MF6(Mは金属元素)、H2SiF6等が挙げられる。
【0019】
また、反応溶液に金属酸化物とフッ酸(HF)を添加しても、その後にフッ素イオン消費剤を添加することにより、金属酸化物を析出させることができる。
【0020】
反応溶液中における上記金属フッ化物錯体の濃度は、0.1~0.5Mとなるようにするのが好ましく、より好ましくは0.1~0.3Mであり、さらに好ましくは0.15~0.25Mである。金属フッ化物錯体の濃度が低すぎる場合には、金属化合物の析出に長時間を要するか、もしくは析出が起こらない。一方、濃度が高すぎる場合には、析出初期において粒子が液相中に無秩序に発生し、薄膜の形状が定まらなかったり、粒径が微細になり過ぎる傾向がある。
【0021】
フッ素イオン捕捉剤、すなわち、ホウ酸(H3BO3)または金属Alの使用量は、出発反応溶液中の金属フッ化物錯体に対して(フッ素イオン捕捉剤/金属フッ化物錯体)、5~30(モル比)とするのが好ましく、より好ましくは5~20であり、さらに好ましくは10~15である。溶媒としては、上記金属フッ化物錯体およびフッ素イオン捕捉剤が溶解し得るものであれば特に限定されず、水、アセトニトリルなどが使用可能である。また、必要に応じて、上記出発原料等に加えて、ドーピングもしくは析出状態、析出速度等の改善のための添加物、例えば、界面活性剤などを使用してもよい。
【0022】
本発明法では、まず、基板上に、略同一粒径の有機高分子微粒子を自己集積化により最密充填構造を採るように並べてテンプレートを形成する工程aを行う。基板としては、各種ガラス、溶融石英板、シリコンウエハ、シリコンカーバイド等いずれでもよい。
【0023】
有機高分子微粒子は略同一粒径であることが、後の第2の金属化合物の微粒子の粒径を均一にするために重要である。このことから、単分散で全ての粒子の粒径がほぼ均一の有機高分子微粒子を用いることが好ましい。この特性を満足することと、後の工程cで除去することが可能であれば、有機高分子の素材は特に限定されない。現時点では、安価で、単分散の微粒子が簡単に入手できる点で、未架橋のポリスチレンビーズやポリメチルメタクリレートビーズが好ましいものとして挙げられる。平均粒径は、10nm~10μmの範囲が好ましい。フォトニック結晶の光学的性質を利用する観点からは可視光の波長近辺が有用であると考えられるため、光学分野に適用する際には、平均粒径が50~1500nmの高分子微粒子を用いるとよい。単分散有機高分子微粒子は、粒子間に働く分子間力により生じる引力と斥力とが等方的に作用し、粒子がブラウン運動により液体中を分散している間に、等間隔かつ等方的に配列されて自己集積化(自己組織化)する。その結果、同じ粒径を有する多数の粒子が三次元的最密充填構造を採る。この場合、その配列は面心立方格子もしくは六方細密充填状となることが知られているが、本発明の目的において必要とされる配列は、そのいずれでもよい。
【0024】
上記工程aを行う前に、予め、基板表面に第1の金属化合物層を形成しておいてもよい。第1の金属化合物層を基板表面に形成するには、第1の金属フッ化物錯体が溶解した反応溶液に基板を浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合すればよい。
反応条件は特に限定されず、大気圧下、10~120℃(より好ましくは30~50℃)で、基板浸漬後、フッ素イオン消費剤を添加して撹拌を続ければ,5分~20時間(より好ましくは12~20時間)で、基板上に第1の金属化合物の薄膜が形成される。
【0025】
反応溶液から得られた薄膜付き基板を取りだして、蒸留水で洗浄したり、乾燥するなどした後、上記工程aを行う。また、得られた薄膜(基板付き)に焼成処理を施してもよい。加熱温度は、金属酸化物の種類に応じて適宜変更可能であり、通常、500~1000℃の範囲内である。
【0026】
工程aが終了した後は、第1の金属のフッ化物錯体が溶解した反応溶液を調製し、上記工程aで作製したテンプレートを浸漬し、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して、前記有機高分子微粒子の表面および粒子同士の間隙に第1の金属化合物を析出させる工程bを行う。工程bの反応条件等は、上記の基板上に予め第1の金属化合物層を形成する方法と同様である。この工程bによって、有機高分子微粒子の表面や間隙に、第1の金属化合物が析出するので、有機高分子微粒子を内包する第1の金属化合物の層が基板の上に形成されることとなる。
【0027】
次に、上記工程bの生成物から有機高分子微粒子を除去し、空孔を有する第1の金属化合物層を形成する工程cを行う。有機高分子微粒子を除去するには、300~500℃程度で加熱することにより燃焼・揮発させる方法と、有機溶媒により溶解除去する方法が採用可能である。有機溶媒で溶解除去する場合は、有機高分子微粒子が溶解前に膨潤して、規則的空孔形成を阻害することのないように、貧溶媒を用いることが好ましく、この点で、例えば、アセトン、酢酸エチル、トルエン、o-,m-,p-キシレン等が好適なものとして挙げられる。
【0028】
上記工程cにより有機高分子微粒子が除去されると、有機高分子微粒子が占有していた部分が空孔となった第1の金属化合物層が、基板上に積層された構造体(反転オパール構造)が生成する。
【0029】
続いて、第2の金属のフッ化物錯体が溶解した反応溶液に前記第1の金属化合物層を有する基板を浸漬した後、反応溶液にフッ素イオン消費剤を添加混合して、前記空孔内部に第2の金属化合物を析出させる工程dを行う。有機高分子微粒子の除去の際には、第1の金属化合物層の中にパス(抜け道)を形成しつつ、揮発乃至は溶解除去するため、反応溶液はこのパスを通って空孔内に入り込むことが可能であり、空孔の内壁に第2の金属化合物が析出する。そして析出が繰り返されることで、空孔内が第2の金属化合物で充填されることとなる。これにより、第1の金属化合物層の中に、略同一粒径の第2の金属化合物の微粒子が立体的に規則正しく配列し、最密充填構造を採った本発明の複合微細構造体が生成する。この工程の後は、焼成してもよいし、しなくてもよい。
【0030】
なお、2種類の金属硫化物または金属セレン化物からなる複合微細構造体を製造する場合は、上記工程dの後に、硫黄(またはセレン)を含むガス中で加熱する等の公知の硫化工程またはセレン化工程eを行えばよい。
【実施例】
【0031】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。
【0032】
本実施例では、第1の金属化合物が酸化錫(SnO2)であり、このSnO2のなかに、第2金属化合物である二酸化チタン(TiO2)が、略同一粒径の粒子として立体的かつ規則的に配列した構造の複合微細構造体(コンポジット)を製造した。
【0033】
製造工程の概略を図1に示す。まず、基板上にポリスチレン(PS)ビーズを自己集積化させて(工程a)から、反応溶液内に浸漬し、LPD法によりSnO2の層をビーズの間隙や周囲に析出させる(工程b)。それから、昇温速度3℃/minで400℃まで加熱し、2時間保持して、PSビーズを揮散・消滅させる(工程c)。LPD法により、TiO2をPSビーズが消滅して空孔化した部分に析出させて、充填する(工程d)。これにより、SnO2のマトリックス中にTiO2微粒子が配列したSnO2-TiO2コンポジットが得られる。具体例を以下に示す。
【0034】
[工程a]
基板としては、ソーダライムガラス(松浪硝子工業社製のスライドガラス;青板硝子;30mm×50mm)を用いた。なお、反応前に、珪酸ナトリウム中でアルカリ脱脂を行い、その後、30℃で24時間、蒸留水中で超音波洗浄を行った。
【0035】
上記基板を乾燥した後、平均粒径190nmのポリスチレン(PS)ビーズを厚みが約4μmとなるように並べた。PSビーズが自己集積化したテンプレートが得られた。PSビーズの配列状態の操作電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。PSビーズが最密充填構造を採っていることが確認できた。
【0036】
[工程b]
SnO2のフッ酸水溶液を、SnO2・HFが0.025Mとなるように調製した。上記テンプレートを反応溶液中に浸漬し、H3BO3の濃度が0.2Mとなるように、反応溶液にH3BO3を加えた。30℃で12時間反応させたところ、テンプレートのPSビーズの間隙や周囲にSnO2が析出していた。
【0037】
[工程c]
続いて、反応溶液から、SnO2が析出固着したテンプレートを取りだし、加熱炉に入れ、昇温速度3℃/minで400℃まで加熱し、2時間保持して、PSビーズを揮散・消滅させた。この反転オパール構造体の断面のSEM写真を図3に示す。薄いグレーのSnO2によるマトリックスの中に、薄黒く丸く見えるのがPSビーズが消滅して空孔となった部分である。
【0038】
[工程d]
(NH42TiF6が0.1Mである30℃の水溶液を調製した。この水溶液に、上記工程cで得られた多数の空孔を有するSnO2構造体(反転オパール構造体)を浸漬した。H3BO3の濃度が0.2Mとなるように、反応溶液にH3BO3を加えた。30℃で12時間反応させたところ、空孔内部にTiO2が析出していた。得られたコンポジットのSEM写真を図4に示す。中央の写真はコンポジットを斜視した写真であり、右の上下は、アルゴンエッチングを用いたクロスセクションポリッシャー(日本電子社製;SM-09010)により、断面が平滑化されたものである。TiO2の微粒子が、規則正しく並んでいることがわかる。
【0039】
[外観]
上記工程aで得られたテンプレート(PS190nm)、工程cで得られた反転オパール構造体、工程dで得られた複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)の外観を図5に示した。参考のため、直径200nmのPSビーズと、直径230nmのPSビーズで作ったテンプレートの外観も示した。いずれにおいても最密充填することによる光学的干渉色を示しており、外観上、PS単分散粒子の構造規則性が複合微細構造体においても保持されていることがわかる。
【0040】
[X線回折]
工程cで得られた反転オパール構造体と、工程dで得られた複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)について、X線回折装置を用いてX線回折パターン測定を行った。結果を図6に示す。X線回折ではTiO2の存在はわからないが、反転オパール構造体の構造が、コンポジットにそのまま受け継がれていることが確認できた。
【0041】
[SEM-EDXによる元素マッピング]
SEM-EDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて、コンポジット内のSnとTiの濃度分析を行った。結果を図7に示した。SnもTiも偏在することなく、コンポジット内部に同じように存在していることがわかる。X線回折の結果と、この元素マッピングの結果から、SnO2とTiO2は、模式図の通り、SnO2のマトリックスの中に、TiO2の微粒子が多数存在していることが確認できた。
【0042】
[光透過率]
工程cで得られたSnO2反転オパール構造体と、工程dで得られた複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)について、吸光光度計(日本分光社製;V-7100)を用いて、光線透過率を測定した。結果を図8に示す。空孔を有するSnO2反転オパール構造体の透過率曲線と、SnO2-TiO2コンポジットの透過率曲線とを比較すると、コンポジット化によって空孔内にTiO2が充填されたため、470nm以上の波長での透過率が低下すること、屈折率が変化することによってピークがシフトすることがわかった。
【0043】
[光学バンドギャップの算出]
図9に示したように、近似Bragg式から、TiO2の粒径d、すなわち光学バンドギャップの算出を行った。反転オパール構造体(SnO2と空気から構成)の式では、第1成分はSnO2であり、第2成分は空気である。それぞれの体積分率をf1、f2とする。また、右辺の410は、図8の透過率曲線におけるピークの波長(λ)である。SnO2-TiO2コンポジットの式では、第1成分はSnO2であり、第2成分はTiO2である。この式以降では、SnO2の体積分率をf1、TiO2の体積分率をf2とする。右辺の560は、図8の透過率曲線におけるピークの波長(λ)である。
【0044】
計算の結果、SnO2の体積分率f1は0.56であり、TiO2の体積分率f2は0.44であり、光学バンドギャップに相当するTiO2の粒径dは153nmであった。190nmのPSビーズを用いて作製したコンポジットなので、実際のコンポジットにおけるdと近似的計算値がほぼ一致している。
【0045】
よって、本発明の複合微細構造体は、テンプレートの三次元的構造を再現できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の複合微細構造体は、金属化合物の連続相(マトリックス)の中に、略同一粒径の異種の金属化合物微粒子が三次元的に規則正しく配列する構造の複合微細構造体が得られる。この複合微細構造体はあらゆる方向の光を受け取ることができるため、フォトニック結晶として用いることができる。また、蛍光体、触媒担持体、色素増感型太陽電池、センサー等、種々のデバイスへの応用が可能であると考えられる。また、本発明の製造方法は、マトリックス内に配列している微粒子の粒径を所望のサイズに自由にコントロールでき、製法自体も容易なため、今後、フォトニック結晶を工業的に製造する際や、他の用途に展開する場合においても、極めて工業的に有用な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例の工程をまとめた説明図である。
【図2】工程aで得られたテンプレートの模式図とSEM写真である。
【図3】工程cで得られたSnO2反転オパール構造体の模式図とSEM写真である。
【図4】工程dで得られた複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)の模式図とSEM写真である。
【図5】各工程で得られた構造体の外観(色調)を示す写真である。
【図6】SnO2反転オパール構造体と複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)のX線回折パターンである。
【図7】SEM-EDXによる元素マッピング結果を示す図である。
【図8】SnO2反転オパール構造体と複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)光線透過率曲線である。
【図9】実施例で得られた複合微細構造体(SnO2-TiO2コンポジット)のSnO2とTiO2の体積分率およびTiO2の粒径dを算出するための説明図である。
図面
【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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