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明細書 :振動減衰器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4806272号 (P4806272)
公開番号 特開2007-232094 (P2007-232094A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年11月2日(2011.11.2)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 振動減衰器
国際特許分類 F16F  15/023       (2006.01)
F16F  15/02        (2006.01)
FI F16F 15/023 A
F16F 15/02 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2006-054768 (P2006-054768)
出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
審査請求日 平成21年1月6日(2009.1.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
発明者または考案者 【氏名】中村 友道
個別代理人の代理人 【識別番号】100074206、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 文二
【識別番号】100087538、【弁理士】、【氏名又は名称】鳥居 和久
【識別番号】100112575、【弁理士】、【氏名又は名称】田川 孝由
【識別番号】100084858、【弁理士】、【氏名又は名称】東尾 正博
審査官 【審査官】村山 禎恒
参考文献・文献 特開2004-278600(JP,A)
実開平4-39447(JP,U)
調査した分野 F16F 15/00-15/36
特許請求の範囲 【請求項1】
構造物(1)に付設され、柔軟性を有する袋(11)内に流体(12)を封入し、その袋(11)の前記付設部位以外は前記構造物(1)を含めた構造物に対して自由に動き得るようにしたものであって、前記構造物(1)の振動に伴い前記流体(12)が移動するとともに前記袋(11)も変形し、その流体(12)の移動によるエネルギー消費により構造物(1)の振動を吸収する振動減衰器。
【請求項2】
上記流体(12)の封入量を上記袋(11)の容量の50%としたことを特徴とする請求項1に記載の振動減衰器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物等の構造物の振動を吸収する振動減衰器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減衰力を発生させる物理作用の代表的なものとしては、粘性抵抗を利用するもの、摩擦抵抗を利用するもの、履歴(ヒステリシス)特性を利用するもの等が知られている。
その減衰作用に基づき、風などによる構造物の振れに対してその抵抗体により振動エネルギーを吸収して構造物の振動を抑制するものとして動吸振器がある。
【0003】
この従来の動吸振器として、構造物に抵抗体を移動自在に設け、その抵抗体の両端をばねで前記移動方向に移動自在に支持し、その構造物の移動に伴うばねを介した抵抗体の移動によりエネルギーを消費する原理で、その構造物の移動(振動)を抑制(低減)するものがある(特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平8-219231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の動吸振器は、振動を低減させようとする構造物の固有振動数と同じ固有振動数を持つ付加構造で成り立っており、その振動数の調整が不可欠であり、その調整が煩雑である。
また、抵抗体の移動は、一方向であるため、全方位の振動にたいして低減効果を得ようとすれば、最低、2方向(XY方向)に移動する抵抗体の設置が必要であり、その振動を低減する抵抗体の数が多くなれば(2つ以上になれば)、コストアップに繋がる。
【0005】
この発明は、上記実情に鑑み、簡単な構造でもって、固有振動数の調節を実施することなく、全方位の振動低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、構造物の移動に伴って袋に封入した流体を移動させ、その流体移動時のエネルギー消費により、その振動を抑制することとしたのである。
袋に封入した流体は、構造物の何れの方向への振動に対してもその振動方向に追従して移動し、その移動時のエネルギー消費によりその振動を抑制する。その振動抑制は、流体そのものの移動によるエネルギー消費に加えて流体の粘性抵抗に基づくエネルギー消費によってなされるものと考える。
このとき、袋も柔軟性があるため、その流体の移動に伴って変形し、その流体の動きを大きくする。このことは、流体が大きく動くことであり、そのときのエネルギー消費により振動の抑制力も向上する。また、流体移動時の流体と袋の間の摩擦抵抗も振動抑制に寄与する。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上のように、袋に封入した流体により、構造物の振動を抑制するようにしたので、簡単な構造でもって、構造物の全方位の振動に対して円滑な抑制効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施形態としては、構造物に付設され、柔軟性を有する袋内に流体を封入し、その袋の前記付設部位以外は前記構造物を含めた構造物に対して自由に動き得るようにしたものであって、前記構造物の振動に伴い前記流体が移動するとともに前記袋も変形し、その流体の移動によるエネルギー消費により構造物の振動を吸収する構成を採用する。
【0009】
この振動減衰器による吸振原理は未だ解析的には解明されていないが、この振動減衰器を取り付けた構造物が振動すると、袋の中に封入した流体が質量移動をする時に、流体の外側を柔軟な袋で覆われているため、袋自体が変形すると共に内部の流体の運動に影響を与える事によって減衰効果を生み出している事は確かめられている。
【0010】
従って、袋内部に封入した流体の質量m(袋自体の質量を含む)と、制振したい構造物の質量Mとの比μ=m/Mが小さすぎると減衰効果は小さくなるので、装置設計上では袋の材質や流体の粘性等も考慮して評価する(適宜に設定する)必要がある。
例えば、上記構造物の質量Mと袋自体の質量を含む流体の質量mの比(μ=m/M)を0.15以上とすることができる。通常、減衰効果(抑制効果)として、5%以上が要求されることが多いので、一例として要求減衰比を5%であると仮定すれば、その比μ=m/Mが0.15以上であると、その5%以上を達成できるからである。但し、流体及び袋の粘性等によって、抑制効果は変動するため、その流体及び袋、特に流体の材質等を適宜に選択して所望の減衰効果が得られるようにする。なお、流体の質量に対し袋の質量が無視できるほど小さい場合には、mは流体のみの質量とし得る。
【0011】
また、袋には、適度の柔軟性を持つが、流体を満杯にしなくても完全に形状が崩れてしまわない程度に形状保持可能な材料でできたものとする。
さらに、その袋の中に入れる流体の分量は、実験等により適宜に決定すればよいが、下記の実験では、減衰効果は本来の袋の容量の半分(50%)程度が最も大きな効果を得た。流体には、処理の容易な液体が好ましいが、粘性等の点から適宜なものを採用できる。
【実施例】
【0012】
図1に示す実験装置を使って、減衰を計測した結果、図3~図7に示すように大幅な(工学的にはほぼ完璧な)大きな減衰が得られる事が確認できた。
その図3は、下記ボール(袋)11内に空気を入れずに液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図、図4は、同ボール(袋)11内に空気を入れて液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図、図5は、同ボール(袋)11に代えてゴム風船として液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図、図6は、同ボール(袋)11内に空気を入れず、液量:50%の場合の構造物1の質量Mと流体12の質量mの比μ(=m/M)と減衰比の関係図、図7は、同ボール(袋)11内に空気を入れず、液量:50%の場合のばねのばね定数を変化させた場合の振動数と減衰比の関係図である。
【0013】
その実験装置は、同図に示すように、平板状の構造物1をその一方(図の左右方向)のみに移動自在でその他の方向には動き得ないように支持固定するとともに、その構造物1の移動方向の一端(図の左端)をばね2により支持し、その構造物1の上に、振動減衰器(ダンパー)10を載せ、その構造物1の他端を手で矢印方向に引っ張って離し、振動を付与してその振動の減衰度合等を測定したものである。
構造物1の振動は、その上に載置した加速度計3からの出力に基づき計測し、それから、構造物1の振動数及び減衰比を求めた。また、μ=m/Mは、構造物1に適宜な錘を載置しMを調整して変化させた。
【0014】
この振動減衰器10は、図2に示すように、バレーボール、サッカーボール等のボールの空気袋とされているゴム製の密封容器(袋)11に液体(水)12を封入したものである。その液体の封入量は、ボール(袋)11に液体を満たした時の質量を100%として、12.5%刻みで、液量を9ケース変化させた。また、袋11に空気を充満させた場合の試験もした。
さらに、ばね2には、ばね定数k=0.34N/mm(長さ:60mm)、0.432N/mm(長さ:65mm)、5.656N/mm(長さ:65)の3種類のコイル状のものを用い、手による構造物1の初期変位は、10mm、15mm、20mmの3通りを行った。
また、そのボール製振動減衰器10に代えて、袋11がゴム風船からなる振動減衰器10においても同様な実験をした。
【0015】
この実験装置による実験例によれば、空気の入っていないゴム製ボール11の場合は、図3に示すように、ボール11内の液量が増すごとに減衰比が増加していき、液量50%をピークに減少した。空気の入ったゴム製ボール11の液量の変化(図4)は図3の変化に近いが、減衰比は大きく異なった。ゴム風船を用いた場合の図5はゴム製ボールと異なり液量に比例して減衰比も増大した。
構造物1と振動減衰器10の質量比μを変化させた図6では構造物1の質量に比例するように減衰効果が減少した。
ばね定数kを変化させた図7では低振動数領域から高振動数領域の減衰比に違いが見られ、低振動数領域の方が減衰効果は高かった。なお、初期変位はばね2の引っ張り量であり、ばね定数が異なるばね2であると、同一の初期変位では異なる引っ張り力で引っ張ったこととなる。このため、その図7において、ばね定数の変化は横軸の振動数の変化に対応し、そのばね定数は、上記3種類のばね2を適宜に組み合わせることにより、図示の各値のものを得た。
【0016】
以上から、質量比μ=15%以上で、5%以上の減衰が得られており、この程度が目安と考えられるが、これは袋11の材料・形状や流体粘性等によっても変わり得るので、この発明の有効な(特許の)範囲のデータではなく、参考の位置づけである。
また、液体12の液量の違いによって、減衰比に明らかな変化が見られ、液量が50%の時に減衰比が最大になったので、振動減衰器10(液体柔軟ダンパー)として最も有効なのは液量が50%の場合と考え得るが、同様に、これは袋11の材料・形状や流体粘性等によっても変わり得るので、この発明の有効な(特許の)範囲のデータではなく、参考の位置づけである。
【0017】
なお、上記実験例では、一方向のみの振動に対してであったが、その直角方向(図1の矢印の直交方向)でも同様な結果が得られることは勿論であり、四方八方のあらゆる方向の振動が重畳的に働いても、この振動減衰器10はその各方向に流体12及び袋11が移動(変形)してその振動を吸収することは勿論である。
【0018】
因みに、既存の動吸振器の反共振点における振動物体とこの実験装置の動吸振器10(液体柔軟ダンパー)の位相の関係を比較するため、本実験の位相関係を目視観察してみると、液体ダンパー(袋11)の上部と下部の液体の動きに位相差が見られ、構造物1の動きに比べ袋11上部の動きが遅れていた。このことから、本振動減衰器(袋11)も原理的には動吸振器と同様の減衰効果が現れていると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の利用分野としては、(ア)ビルの最上階に設置する風対策の振動減衰器、(イ)タンク車内部の構造をこの発明構造とした振動減衰器、(ウ)振動が問題となるプラント機器の振動減衰器、(エ)精密機器を製作または使用する部屋の床面に設置する振動減衰器等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実験例を示す概略図
【図2】同振動減衰器の一実施例の概略図
【図3】同実施例による袋11内に空気を入れずに液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図
【図4】同袋11内に空気を入れて液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図
【図5】同袋11に代えてゴム風船として液体量を変化させた場合のその液量と減衰比の関係図
【図6】同袋11内に空気を入れず、液量:50%の場合の被吸振構造物と動吸振器の質量比に対する減衰効果の関係図
【図7】同袋11内に空気を入れず、液量:50%の場合のばねのばね定数を変化させた場合の振動数と減衰比の関係図
【符号の説明】
【0021】
1 構造物
10 振動減衰器
11 振動減衰器を成す袋
12 同振動減衰器を成す流体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6