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明細書 :熱蛍光線量測定素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4934767号 (P4934767)
公開番号 特開2008-256404 (P2008-256404A)
登録日 平成24年3月2日(2012.3.2)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
公開日 平成20年10月23日(2008.10.23)
発明の名称または考案の名称 熱蛍光線量測定素子
国際特許分類 G01T   1/11        (2006.01)
G01T   1/00        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
C09K  11/61        (2006.01)
C09K  11/00        (2006.01)
FI G01T 1/11 A
G01T 1/11 C
G01T 1/00 D
C09K 11/08 B
C09K 11/61 CPF
C09K 11/00 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2007-096540 (P2007-096540)
出願日 平成19年4月2日(2007.4.2)
審査請求日 平成22年4月1日(2010.4.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
発明者または考案者 【氏名】福田 和悟
個別代理人の代理人 【識別番号】100074206、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 文二
【識別番号】100087538、【弁理士】、【氏名又は名称】鳥居 和久
【識別番号】100112575、【弁理士】、【氏名又は名称】田川 孝由
【識別番号】100084858、【弁理士】、【氏名又は名称】東尾 正博
審査官 【審査官】木下 忠
参考文献・文献 特開昭54-139895(JP,A)
特開昭53-146682(JP,A)
特開昭61-269100(JP,A)
福田和悟,CaF2:Tb,Sm,Gdの熱蛍光特性(II),第53回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集第1分冊,2006年 3月22日,pp. 117
調査した分野 G01T1/11
特許請求の範囲 【請求項1】
Tbを0.01~0.2重量%、Smを0.01~0.2重量%、及び、Gdを0.01~1重量%含有するCaF焼結体からなる熱蛍光線量測定素子。
【請求項2】
Tbを0.05~0.07重量%、Smを0.02~0.04重量%、及び、Gdを0.3~0.4重量%含有するCaF焼結体からなる熱蛍光線量測定素子。
【請求項3】
Tbを0.01~0.2重量%、Smを0.01~0.2重量%、及び、Gdを0.01~1重量%含有するCaFを1000~1200℃で焼結することによって得られる熱蛍光線量測定素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線や中性子線等の線種を分別して、その照射量を定量評価する熱蛍光線量測定素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱蛍光線量測定素子としては、フッ化カルシウムCaFやフッ化リチウムLiF等の母材に、テルビウムTb、サマリウムSm、ガドリニウムGd等の希土類元素を添加したものがある。これらの添加元素は、紫外線、X線、ガンマ線、中性子線等の放射線の照射によって、エネルギー的に励起された状態となる。この励起状態は添加元素の種類によって異なり、例えばGdは、紫外線や中性子線等に対して高い感度を有しており、これらの放射線の照射によって励起されやすい。上記照射によって励起されたGd、はTbへ励起エネルギーを受け渡し(エネルギー遷移)、Gd自体は元の安定なエネルギー状態(基底状態)に戻る。
【0003】
この励起エネルギーを受け取ったTbは少なくとも数日以上の間、安定的に上記励起状態を維持し、この励起状態の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃程度まで昇温すると、励起されたTbが基底状態に戻り、その際に上記励起状態と基底状態のエネルギー差に対応した発光が生じる(特許文献1及び2参照)。
【0004】

【特許文献1】特開平7-97570号公報
【特許文献2】特許第3250192号公報
【0005】
この発光が最も強く生じる温度(熱蛍光グローピーク温度)は、上記添加元素の種類及び放射線の線種によって異なることが分かっており、測定する放射線の線種によって、上記添加元素の種類及びその組み合わせを適宜選択する。
【0006】
この熱蛍光線量測定素子は、放射線等を扱う現場において作業者が作業衣に常時着用し、放射線漏洩事故が生じた際に、その作業者の被曝量を測定するために使用されることがある。この場合、その作業者の被曝量のみならず、どのような線種の放射線等を被曝したかを知ることが、事故処理において重要である。そのため、どのような放射線種を被曝する恐れがあるか予め想定し、その放射線種に対応した熱蛍光線量測定素子を用いる必要がある。
【0007】
上記放射線の中でも、ガンマ線や中性子線は遮蔽物に対する透過能力が高いため、紫外線やX線等の他の放射線と比較して、人体への悪影響がはるかに大きい。そのため、特にガンマ線や中性子線を他の放射線と分別して評価し得る熱蛍光線量測定素子の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、熱蛍光線量測定素子は、特定の放射線の線種に対応して、使用する熱蛍光線量測定素子の種類を適宜選択する必要がある。そのため、複数種の放射線を扱う現場(複数種の放射線を被曝する恐れがある現場)においては、数種類の熱蛍光線量測定素子を併用しなければならず煩雑である。
【0009】
そこで、この発明は、一つの熱蛍光線量測定素子で、複数の放射線の線種、特にガンマ線及び中性子線を他の放射線と分別して、その照射量を定量評価することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、CaFの母材に、Tb、Sm、及び、Gdの各酸化物を適切な比率で添加し、熱蛍光線量測定素子を構成することとしたのである。具体的には、上記各添加物の添加量は、Tbを0.01~0.2重量%、Smを0.01~0.2重量%、及び、Gdを0.01~1重量%の各範囲とするのが好ましい。
【0011】
上記のように複数の添加物を同時添加すれば、複数の放射線の線種に対して測定感度を得ることができる。しかも、上記添加比率とすることで、各線種の上記熱蛍光グローピークが明確に分離され得る。そのため、複数の放射線が混在している混合放射場、特にガンマ線及び中性子線と、他の放射線とが混合している場合においても、一つの熱蛍光線量測定素子で、上記線種(ガンマ線及び中性子線と、その他の線種)が分別でき、しかも、上記分別ごとに照射量が定量的に評価できる。
【0012】
上記熱蛍光グローピークの分離を一層明確なものとするには、上記各添加物の添加量をTbを0.05~0.07重量%、Smを0.02~0.04重量%、及び、Gdを0.3~0.4重量%の各範囲とすることがより好ましい。
【0013】
上記熱蛍光線量測定素子は、原材料であるCaF、Tb、Sm及びGdの各粉末を均一に混合した上で型枠に入れ、型枠中の混合粉末に圧力を加えて成形体とし、さらにこの成形体を1000~1200℃に加熱した加熱炉中で焼結することによって得られる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、一つの熱蛍光線量測定素子で、上記線種(ガンマ線及び中性子線と、その他の線種)が分別でき、しかも、上記分別ごとに照射量が定量的に評価できる。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
CaF粉末(純度99.99%、レアメタリック製)に、0.06重量%のTb粉末(純度99.99%、レアメタリック製)、0.03重量%のSm粉末(純度99.99%、レアメタリック製)及び0.36重量%のGd粉末(純度99.99%、三津和化学薬品製)を均一に混合し、この混合粉末を型枠に充填し、直径6mm及び厚さ1mmの円板状に加圧成形した。この成形体を白金坩堝内に置いて、1100℃で2時間、大気雰囲気中で焼結し、熱蛍光線量測定素子の焼結体を得た。
【0016】
(実施例2)
実施例1で得た熱蛍光線量測定素子に、低圧水銀灯を光源とする紫外線(波長253.7nm、照射強度約0.4J/分・cm)を最大180秒間照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図1(a)に示すように100℃付近に熱蛍光グローピークが観察された。また、その温度以外に目立ったピークは観察されなかった。
このグラフにおいてグローピーク曲線1と加熱温度軸2がなす部分3の面積を求め、この面積と、同熱蛍光線量測定素子を用いて既知量の紫外線を照射した際の上記面積に相当する面積とを比較することで、照射した紫外線量を推定することができる。
また、図1(b)に示すように照射時間が180秒までは、熱蛍光強度は照射時間に対して直線的に増加し続けており、熱蛍光強度は飽和状態には至らなかった。このことより、この熱蛍光線量測定素子はこの紫外線強度の下においては、少なくとも180秒までは紫外線量を定量的に測定できるといえる。
【0017】
(実施例3)
実施例1で得た熱蛍光線量測定素子に、X線(0.15C/分・kg)をそれぞれ最大120秒間照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から240℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図2(a)に示すように、実施例1において紫外線を照射した場合と同様に、100℃付近に熱蛍光グローピークが観察された。また、その温度以外に目立ったピークは観察されなかった。
このグラフにおいてグローピーク曲線1と加熱温度軸2がなす部分3の面積を求め、この面積と、同熱蛍光線量測定素子を用いて既知量のX線を照射した際の上記面積に相当する面積とを比較することで、照射したX線量を推定することができる。
また、図2(b)に示すように照射時間が120秒までは、熱蛍光強度は照射時間に対して直線的に増加し続けており、熱蛍光強度は飽和状態には至らなかった。このことより、この熱蛍光線量測定素子はこのX線強度の下においては、少なくとも120秒まではX線量を定量的に測定できるといえる。
【0018】
(実施例4)
実施例1で得た熱蛍光線量測定素子に、コバルト60を線源とするガンマ線を11.5μSv照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図3に示すように150℃付近に熱蛍光グローピークが観察された。また、250℃以上の温度領域で熱蛍光強度がやや高くなっているものの、特段に目立ったピークは観察されなかった。
このグラフにおいてグローピーク曲線1と加熱温度軸2がなす部分3の面積を求め、この面積と、同熱蛍光線量測定素子を用いて既知量のガンマ線を照射した際の上記面積に相当する面積とを比較することで、照射したガンマ線量を推定することができる。
【0019】
(実施例5)
実施例1で得た熱蛍光線量測定素子に、中性子線を4.18mSv照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図4に示すように150~160℃付近に熱蛍光グローピークが観察された。また、250℃以上の温度領域で熱蛍光強度がやや高くなっているものの、特段に目立ったピークは観察されなかった。
このグラフにおいてグローピーク曲線1と加熱温度軸2がなす部分3の面積を求め、この面積と、同熱蛍光線量測定素子を用いて既知量の中性子線を照射した際の上記面積に相当する面積とを比較することで、照射した中性子線量を推定することができる。
【0020】
図1から図4に示したように、ガンマ線及び中性子線の熱蛍光グローピークと、紫外線及びX線の熱蛍光グローピークとは約50℃程度ずれている。そのため、例えば、X線とガンマ線が混在する混合放射場においても両線種を明確に分別することができる。
【0021】
また、上述したように、いずれの線種においても特定の熱蛍光グローピーク以外に目立ったピークは観察されないため、紫外線及びX線と、ガンマ線及び中性子線とが重なり合っている場合においても、ピーク位置の温度さえ特定できれば、その温度によって上記線種を特定することができる。
【0022】
上記熱蛍光グローピークは、添加元素の種類及びその添加量が変わると、そのピーク位置の温度や高さが変化したり、複数のピークが表れたりするため、複数の線種を分別するには、Tbを0.01~0.2重量%、Smを0.01~0.2重量%、及び、Gdを0.01~1重量%とするのが好ましい。
さらに、上記線種を明確に分別するには、Tbを0.05~0.07重量%、Smを0.02~0.04重量%、及び、Gdを0.3~0.4重量%とすることがより好ましい。
【0023】
この熱蛍光線量測定素子は、太陽光中の紫外線のように比較的強度が低い放射線に対しても高い感度を有している。そのため、この熱蛍光線量測定素子を紫外線センサーとして使用することもできる。
【0024】
(比較例)
CaF粉末(純度99.99%、レアメタリック社製)に、0.06重量%のTb粉末(純度99.99%、レアメタリック社製)及び0.36重量%のGd粉末(純度99.99%、三津和化学薬品株式会社製)を均一に混合し、この混合粉末を型枠に充填し、直径6mm及び厚さ1mmの円板状に加圧成形した。この成形体を白金坩堝内に置いて、1100℃で2時間、大気雰囲気中で焼結し、熱蛍光線量測定素子の焼結体を得た。
この熱蛍光線量測定素子に、低圧水銀灯を光源とする紫外線(波長253.7nm、照射強度約0.4J/分・cm)を最大180秒間照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図5(a)に示すように90~100℃付近及び250℃付近の2箇所に熱蛍光グローピークが観察された。
【0025】
また、この熱蛍光線量測定素子に、コバルト60を線源とするガンマ線を11.5μSv照射した。さらに照射後の熱蛍光線量測定素子を室温から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、その昇温の際の熱蛍光グローピークを測定した。
この場合、図5(b)に示すように250℃付近に大きなピークが観察されるとともに、150℃付近にも小さなピークが観察された。
このように、紫外線又はガンマ線を照射したいずれの場合も2箇所に熱蛍光グローピークが観察され、しかも、そのうち250℃付近のピークは重なり合っているため、両者を分別して評価することは困難である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例2において、紫外線を照射した熱蛍光線量測定素子の(a)はグローピーク曲線、(b)は熱蛍光強度の照射時間依存性、を示すグラフ
【図2】実施例3において、X線を照射した熱蛍光線量測定素子の(a)はグローピーク曲線、(b)は熱蛍光強度の照射時間依存性、を示すグラフ
【図3】実施例4において、ガンマ線を照射した熱蛍光線量測定素子のグローピーク曲線を示すグラフ
【図4】実施例5において、中性子線を照射した熱蛍光線量測定素子のグローピーク曲線を示すグラフ
【図5】比較例において、(a)は紫外線、(b)はガンマ線、を照射した熱蛍光線量測定素子のグローピーク曲線を示すグラフ
【符号の説明】
【0027】
1 グローピーク曲線
2 加熱温度軸
3 グローピーク曲線と加熱温度軸がなす部分
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4