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明細書 :診断薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719911号 (P4719911)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
発明の名称または考案の名称 診断薬
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
FI A61K 49/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2008-528786 (P2008-528786)
出願日 平成19年7月31日(2007.7.31)
国際出願番号 PCT/JP2007/065012
国際公開番号 WO2008/018327
国際公開日 平成20年2月14日(2008.2.14)
優先権出願番号 2006215437
優先日 平成18年8月8日(2006.8.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年5月24日(2010.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】河原 祥朗
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
審査官 【審査官】小森 潔
参考文献・文献 Endoscopy,2006年 6月,Vol.38,No.6,p613-616
Digestive Endoscopy,2005年,Vol.17,No.Supplement,pS2-S4
早期大腸癌,2005年,Vol.9,No.2,p141-145
胃と腸,2005年,Vol.40,No.5,p761-768
臨床消化器内科,2006年 7月20日,Vol.21,No.9,p1227-1233
消化器内視鏡,2006年 2月25日,Vol.18,No.2,p187-194
調査した分野 A61K 49/00
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布するための診断薬であって、インジゴカルミン(食用青色2号)、クチナシ青色素又はカラメル色素から選択される色素を含有するpH2~4の酢酸水溶液からなることを特徴とする診断薬。
【請求項2】
前記色素がインジゴカルミン(食用青色2号)である請求項1記載の診断薬。
【請求項3】
前記酢酸の濃度が0.01~1mol/Lである請求項1又は2記載の診断薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、消化器の内壁を内視鏡で観察する際に用いられる診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いて消化器の内壁を観察する際には、色素を散布して観察しやすくする手法が採用されている。現在、一般に広く用いられているのはインジゴカルミン水溶液である。
【0003】
また、手術の際には、切除予定部位に色素でマーキングすることによって切除範囲を明確にすることが行われている。例えば、特開平10-194998号公報(特許文献1)には、増粘剤および人体に適用可能な中間色系または寒色系の色素を含有する手術用生体マーキング製剤について記載されている。この手術用生体マーキング製剤を切除予定部位に注射器を用いて注入することにより、外科手術の際に切除範囲が明瞭となるとされている。
【0004】
しかしながら、早期癌等で病変部位の特定が困難な場合に必ずしも容易に観察することができるわけではなかった。また、手術の際に、病変部位と正常部位との境界を判断したり、病変部位のみを適切に切除することも容易ではなかった。そのため、内視鏡で観察する際に病変部位を明確に観察することができる手法が求められていた。
【0005】

【特許文献1】特開平10-194998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布することにより、特定が困難な病変部位を明確に観察することができる診断薬を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布するための診断薬であって、インジゴカルミン(食用青色2号)、クチナシ青色素又はカラメル色素から選択される色素を含有するpH2~4の酢酸水溶液からなることを特徴とする診断薬を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、色素がインジゴカルミン(食用青色2号)であることが好適であるまた、酢酸の濃度が0.01~1mol/Lであることも好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の診断薬は、内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布することにより、特定が困難な病変部位を明確に観察することができる。したがって、早期癌等の検出に対して好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】試験例1において内視鏡により観察された胃の内壁の写真である。
【図2】試験例1においてインジゴカルミン水溶液のみを散布して観察された胃の内壁の写真である。
【図3】試験例1において本発明の診断薬を散布して観察された胃の内壁の写真である。
【図4】試験例2において内視鏡により観察された胃の内壁の写真である。
【図5】試験例2においてインジゴカルミン水溶液のみを散布して観察された胃の内壁の写真である。
【図6】試験例2において本発明の診断薬を散布して観察された胃の内壁の写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の診断薬は、内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布するための診断薬であって、色素を含有するpH1~5の酸性水溶液からなるものである。
【0012】
本発明の診断薬は、内視鏡で観察する際に消化器の内壁に散布される。消化器の内壁に散布されることで、消化器の内壁表面への付着の程度によって病変部位の観察を容易にすることができる。本発明において、散布する方法は、消化器の内壁に本発明の診断薬が供給されるのであれば特に限定されず、塗布、噴霧する方法等が挙げられる。
【0013】
本発明において、消化器とは、食物を消化・吸収するための器官であって、食道、胃、小腸及び大腸等の消化管に肝臓、胆嚢及び膵臓等を加えたものの総称をいう。これらの中でも、本発明の診断薬は、消化器の内壁が円柱上皮から構成される胃やバレット食道に対して好適に使用することができる。円柱上皮は、通常、その表面は透明であるが、pHの変化、特に酸性度が強くなった場合に白濁化するという特徴を有しているために、本発明の診断薬を適用するのに特に適している組織である。
【0014】
本発明の診断薬は、色素を含有するものである。このことにより、観察する表面への診断薬の付着量が色素の濃淡の差で強調され、病変部位と正常部位との境界を明確に観察することができる。また、表面の凹凸も観察しやすくなる。消化器の内壁の色や血液の色等と区別できる点からは、色素は中間色系又は寒色系であることが好ましく、寒色系であることがより好ましい。ここで、中間色系とは、暖色系及び寒色系以外の色を示しており、例えば緑色、紫色、茶色などが挙げられる。また、寒色系の色としては、例えば青色が挙げられる。本発明で用いられる色素の形態は特に限定されず、染料であっても顔料であってもよいが、散布後の洗浄操作が容易である観点からは染料であることが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる色素は、特に限定されず、例えば、ファストグリーン(食用緑色3号)、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、スルホブロモフタレインナトリウム、インドシアニングリーン、メチレンブルー、ブリリアントブルー(食用青色1号)、インジゴカルミン(食用青色2号)、クチナシ青色素、トルイジンブルー、ピオクタニンブルー、カラメル色素などが挙げられるが、副作用がなく人体に安全である点からはインジゴカルミン(食用青色2号)、クチナシ青色素又はカラメル色素であることが好ましく、寒色色素であるインジゴカルミン(食用青色2号)又はクチナシ青色素がより好ましい。
【0016】
本発明で用いられる色素の濃度は、色素の種類や適用部位によって異なるが、病変部位と正常部位との境界を明確に観察できる観点からは、0.1~200mmol/Lの範囲にあることが好ましい。色素の濃度が0.1mmol/L未満の場合、消化器の内壁の色との差が観察しにくくなるおそれがあり、より好適には1mmol/L以上である。一方、色素の濃度が200mmol/Lを超える場合、色の濃淡の差が出にくく観察が困難となるおそれがあり、より好適には100mmol/L以下である。
【0017】
本発明の診断薬は、色素を含有するpH1~5の酸性水溶液からなるものである。pHがこのような範囲にあることにより、本発明の診断薬が散布されると正常部位では粘液がほとんど分泌されないが、病変部位、特に癌細胞を有する部位では粘液の分泌が促進される場合が多い。その結果、この粘液により色素を含有する液が病変部位に付着しにくくなり、色素の濃淡の差により病変部位と正常部位との境界を明確に観察できるようになる。また、本発明の診断薬が酸性水溶液であることから同時に粘膜表面の白濁化が起こるが、病変部位と正常部位では白濁化の程度に差がある場合も多いため、病変部位と正常部位との境界がより明瞭となりやすい。pHが1未満の場合、消化器の内壁が損傷するおそれがあり、pHは2以上であることが好ましく、pHは3以上であることがより好ましい。一方、pHが5を超える場合、病変部位での粘液の分泌促進が不十分となり、病変部位と正常部位との境界が不明瞭となるおそれがあり、pHは4以下であることが好ましい。
【0018】
本発明では、色素を含む溶液が酸性であることが重要である。従来から、酢酸水溶液を消化器の内壁に散布することによって、病変部位と正常部位の表面の白濁に差があることが知られていたが、このことだけでは観察が容易ではなかった。本発明者は、酢酸水溶液を散布した後にインジゴカルミン水溶液を散布した場合には、病変部位と正常部位のいずれにおいても色素が付着しにくいことを確認している。したがって、色素を含む溶液が酸性であることが重要である。
【0019】
上記酸性水溶液の種類は特に限定されないが、カルボン酸、塩酸、硫酸又はリン酸等から選択される酸を含有することが好ましい。なかでもカルボン酸が好適に使用される。使用されるカルボン酸は特に限定されないが、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸;乳酸、グリコール酸、グルコン酸などのオキシモノカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸などの多価カルボン酸;リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシ多価カルボン酸などを使用することができる。これらの中でも、人体に対する安全性の観点からは酢酸、リンゴ酸又はクエン酸であることがより好ましい。
【0020】
上記カルボン酸を本発明の診断薬に用いる際の濃度は特に限定されないが、0.01~1mol/Lであることが好ましい。カルボン酸の濃度が0.01mol/L未満の場合、病変部位での粘液の分泌促進が不十分となり、病変部位と正常部位との境界が不明瞭となるおそれがあり、より好適には0.05mol/L以上である。一方、カルボン酸の濃度が1mol/Lを超える場合、消化器の内壁を損傷するおそれがあり、より好適には0.5mol/L以下である。
【0021】
本発明の診断薬を用いることにより、特定が困難であった早期の消化器癌等を検出・観察することができる。本発明の診断薬は、消化器癌のなかでも特に早期の胃癌や早期のバレット食道癌に対して好適に使用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
診断薬の調製
0.4重量%インジゴカルミン水溶液(第一製薬株式会社製)25mlと1.5重量%酢酸水溶液15mlを混合して本発明の診断薬を得た。得られた診断薬は、インジゴカルミンの濃度が5.3mmol/Lであり、酢酸の濃度が0.1mol/Lであり、pHが3.0であった。
【0024】
試験例1
68才の男性患者の胃内に上部消化管内視鏡電子スコープを挿入して内視鏡検査を行ったところ、図1で示されるように病変の存在を明瞭に確認することができなかった。0.4重量%インジゴカルミン水溶液(第一製薬株式会社製)のみを胃の内壁に散布したところ、図2で示されるように疑わしい病変部位は観察されたが、病変部位の明確な同定はできなかった。上記胃の内壁を注射用蒸留水を用いて洗い流した後に、上記方法により得られた本発明の診断薬を胃の内壁に散布したところ、図3で示されるように青色に着色された正常粘膜を背景にして赤色の陥凹病変部位が明確に観察された。この病変部位を内視鏡的粘膜下層剥離術により摘出したところ、高分化型腺癌が確認された。
【0025】
試験例2
29才の男性患者の胃内に上部消化管内視鏡電子スコープを挿入して内視鏡検査を行ったところ、図4で示されるように病変の存在を明瞭に確認することができなかった。0.4重量%インジゴカルミン水溶液(第一製薬株式会社製)のみを胃の内壁に散布したところ、図5で示されるように疑わしい病変部位は観察されたが、病変部位の明確な同定はできなかった。上記胃の内壁を注射用蒸留水を用いて洗い流した後に、上記方法により得られた本発明の診断薬を胃の内壁に散布したところ、図6で示されるように青色に着色された線状の陥凹で囲まれた病変部位が明確に観察された。この病変部位を外科的切除により摘出したところ、印鑑細胞癌が確認された。内視鏡を用いた診断により印鑑細胞癌の伸長範囲を特定することは非常に困難であることから、本発明の診断薬が非常に有用であることが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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