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明細書 :超電導磁気浮上による非接触搬送装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4543181号 (P4543181)
登録日 平成22年7月9日(2010.7.9)
発行日 平成22年9月15日(2010.9.15)
発明の名称または考案の名称 超電導磁気浮上による非接触搬送装置
国際特許分類 B60L  13/04        (2006.01)
B61B  13/08        (2006.01)
B65G  49/00        (2006.01)
B61F   3/00        (2006.01)
B65G  49/07        (2006.01)
B65G  54/02        (2006.01)
H01L  21/677       (2006.01)
FI B60L 13/04 ZAAL
B61B 13/08 B
B65G 49/00 A
B61F 3/00 C
B65G 49/07 ZAAD
B65G 54/02
H01L 21/68 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2006-548795 (P2006-548795)
出願日 平成17年12月8日(2005.12.8)
国際出願番号 PCT/JP2005/022577
国際公開番号 WO2006/067974
国際公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
優先権出願番号 2004368136
優先日 平成16年12月20日(2004.12.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】小森 望充
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
審査官 【審査官】安池 一貴
参考文献・文献 特開平5-236610(JP,A)
特開平3-103086(JP,A)
特開昭63-310304(JP,A)
特開2003-209963(JP,A)
特開2003-7533(JP,A)
調査した分野 B60L 13/04
B61B 13/08
B61F 3/00
B65G 49/00
B65G 49/07
B65G 54/02
H01L 21/677
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の永久磁石が底部に設けられ、搬送対象物を運ぶ搬送台と、
前記搬送台の各永久磁石の直下に配置される超電導体を備えた搬送案内手段と、
前記搬送案内手段に設けられて、前記搬送台と前記搬送案内手段との距離を検知する距離センサと、
前記搬送案内手段に設けられて、通電によって前記搬送台を制振するための磁界を発生させる制振コイルと、
前記距離センサの信号によって前記搬送台の変位を検知し、前記制振コイルに流す電流を制御する制御部とを有することを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台は密閉容器内に配置され、前記搬送案内手段は前記密閉容器外に設けられていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記超電導体は複数に分割されたリング状となって、該リング状となった超電導体の底部に前記制振コイルが実質同心状に設けられていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台の中央位置に磁性体が設けられ、前記制振コイルは前記磁性体の直下位置に配置されていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項5】
請求項4記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記磁性体は第2の永久磁石であって、前記制振コイルは空心コイルからなることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記距離センサは、前記搬送案内手段の上に配置されたホール素子からなることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項7】
請求項6記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記ホール素子は前記超電導体の上に配置されていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台に設けられている永久磁石はハルバッハ配列されて、該搬送台の下方にのみ前記永久磁石の磁極が向いていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記制御部は、前記距離センサによって検知された前記搬送台と前記搬送案内手段との距離の微分制御を主体としていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記超電導体は冷媒又は冷凍機によって冷却されていることを特徴とする超電導磁気浮上による非接触搬送装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、気密室(特殊ガス雰囲気チャンバー、及び真空チャンバーを含む)や温度が外気と異なる隔離室等での半導体チップや精密部品の搬送、無菌室等での試料の搬送、その他物体(部品、完成品、液状又は固形状物、動物、及び植物を含む)を非接触(又は隔離状態)で搬送する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体製造においては、ミクロンサイズでのゴミの存在も許容されないクリーンな真空室(真空槽)で行う必要がある。この真空室等でシリコンウェーハ等を移動させるには、無発塵のクリーンロボットを用いる必要があり、半導体の製造装置自体から隔離され、密閉された真空室内で全ての処理工程を完了することが望まれている。
このような真空室(又は密閉室)内にある物体を真空室外から操作して移動させるには、例えば、超電導による磁気浮上搬送装置を用いることが好ましい。このような超電導を用いた磁気浮上装置が、例えば、日本国特開昭63-310304号公報に開示されている。
【0003】
日本国特開昭63-310304号公報に開示の技術は、磁石を配列した磁石列と超電導体とを互いに反発させ、その一方を浮上させるようにしたものであり、いずれか一方(通常、超電導体)を移動させて磁石列(搬送体)を搬送可能とするものである。しかしながら、この特許公報の技術において、超電導体に衝撃等の外乱があった場合、浮上している磁石列に振動が発生する。そして、この磁石列はピン止め効果によって自由空間に浮上状態であるので、振動が永続するという問題があった。
【発明の開示】
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、超電導磁気浮上によって非接触で搬送している搬送物(具体的には搬送台)又は超電導体に外乱があっても、短時間のうちにその振動が収まり、安定して搬送物を搬送可能な超電導磁気浮上による非接触搬送装置を提供することを目的とする。
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置は、複数の永久磁石が底部に設けられ、搬送対象物を運ぶ搬送台と、
前記搬送台の各永久磁石の直下に配置される超電導体を備えた搬送案内手段と、
前記搬送案内手段に設けられて、前記搬送台と前記搬送案内手段との距離を検知する距離センサと、
前記搬送案内手段に設けられて、通電によって前記搬送台を制振するための磁界を発生させる制振コイルと、
前記距離センサの信号によって前記搬送台の変位を検知し、前記制振コイルに流す電流を制御する制御部とを有する。
【0006】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置においては、搬送案内手段を移動させることによって、搬送案内手段とは隙間を有して配置された搬送台を移動させることができる。そして、仮に搬送案内手段に振動が発生し、又は搬送台に直接振動が発生した場合であっても、距離センサによってその変位を検知し、制振コイルに電流を流して、短時間のうちにその振動を抑制することができる。
【0007】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台は密閉容器(例えば、真空容器)内に配置され、前記搬送案内手段は前記密閉容器外に設けることもでき、これによって、搬送案内手段を移動させることによって、密閉容器内の搬送台及びそれに載っている搬送対象物(例えば、シリコン等)が移動する。
【0008】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記超電導体は複数に分割されたリング状となって、該リング状となった超電導体の底部に前記制振コイルが実質同心状に設けられているものであってもよい。これによって、リング状の超電導体の内孔は制振コイルの磁束が有効に通過でき、更に周囲の超電導体によってこの磁束が収束又は強化されるので、制振コイルを超電導体の下部に配置しても、搬送台の永久磁石に対する制振コイルの磁気作用が減衰することがない。従って、結果として制振コイルを超電導体の下に配置できるので、超電導体から搬送台までの距離を小さくすることができる。
【0009】
また、本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台の中央位置に磁性体が設けられ、前記制振コイルは前記磁性体の直下位置に配置されているものであってもよい。これによって、制振コイルが一つで済み装置自体の簡略化が可能となる。この場合、前記磁性体は第2の永久磁石であって、前記制振コイルは空心コイルからなるようにするのが、より効率的に、大きな力で短時間のうちに制振作用を発揮できる。
【0010】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記距離センサは、前記搬送案内手段の上に配置されたホール素子から構成することも可能である。これによって搬送台に設けられた永久磁石の磁気を検知し、搬送台と搬送案内手段との距離を測定できる。この場合、ホール素子が制振コイルによって発生する磁気の影響を受ける場合には、制振コイルによって発生する磁場の出力を最終出力から差し引いて出力することになる。なお、ここで、前記ホール素子は前記超電導体の上に配置することも可能である。
【0011】
また、本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記搬送台に設けられている永久磁石はハルバッハ配列されて、該搬送台の下方にのみ前記永久磁石の磁極が向いているのがより好ましい。これによって永久磁石の磁束をより有効に利用できると共に、搬送台の上に磁束が漏洩しないので、搬送対象物が磁場による影響を受けないことになる。
【0012】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、前記制御部は、前記距離センサによって検知された前記搬送台と前記搬送案内手段との距離の微分制御を主体としているのがよい。超電導体の上に永久磁石を有する搬送台を配置する場合には、ピン止め効果によって永久磁石は超電導体の上に浮上し、上下した場合には超電導体から発生する磁束によって移動する方向と反対方向に磁力が発生するので、自身が所謂比例制御の要素を有している。一方、搬送台に振動が発生した場合には、この振動を超電導体と永久磁石との間の力によって抑制できるので、搬送台の位置(変位)を微分した値を制御要素とする所定の大きさの電流を、搬送台が制動する方向に制振コイルに流すと、急速に搬送台の振動を止めることができる。
【0013】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置において、超電導体は、冷媒(例えば液体窒素、液体ヘリウム、液体アルゴン、液体水素等)で冷却することもできるが、冷凍機で冷却するのがよい。これによって、装置を連続的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置の説明図である。
【図2】同非接触搬送装置の搬送台の底面部である。
【図3】(A)、(B)は同非接触搬送装置の超電導体の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置の説明図である。
【図5】(A)、(B)は同非接触搬送装置の超電導体の説明図である。
【図6】実験例で使用した装置の概略構成図である。
【図7】ホール素子の出力値とギャップとの関係を示すグラフである。
【図8】制振コイルを作動させない場合の搬送台の変位と時間の関係を示すグラフである。
【図9】制振コイルを使用した場合の搬送台の変位と時間の関係を示すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置10は、搬送対象物の一例であるシリコンウェーハ11を運ぶ搬送台12と、この搬送台12を誘導する搬送案内手段13とを有している。搬送台12は密閉容器の一例である真空容器(又は真空室)14内に収納され、搬送案内手段13は真空容器14の外部でかつ搬送台12の直下に設けられている。真空容器14の底板15は非磁性体物質、例えばオーステナイトステンレス鋼からなっている。
【0016】
搬送台12は上側が非磁性物質で下側が磁性物質からなって、図2に示すように、搬送台12の底部4隅に永久磁石16~19が設けられている。永久磁石16~19の磁極は隣り合う磁極が異極となるように配置されている。なお、この実施例では搬送台12はシリコンウェーハ11を搬送するためのものであるが、密閉容器が例えば、特殊な環境の気密室であって、所定の温度条件が保持され、細菌や特殊な動植物を搬送する場合もある。また、この実施例では4つの永久磁石16~19が設けられているが、場合によってその他の数、例えば、3又は5以上であってもよい。
【0017】
搬送案内手段13は、図示しない非磁性体からなるフレームを備え、このフレームに4つの超電導体20が、前記した永久磁石16~19に対応してその直下に設けられている。各超電導体20の上部には距離センサの一例であるホール素子21が設けられている。各超電導体20は、図3(A)に示すように、導体が中央で絶縁状態で2分割されたリング状となって、中央に内孔22が形成されている。図3(B)に示すように、超電導体20の上下には非磁性かつ絶縁体の板23、24が設けられ、板23の上にホール素子21が配置されている。超電導体20の底部には同心状に制振コイル25が設けられている。
更には、各超電導体20の周囲は図示しない熱絶縁物で覆われていると共に、搬送案内手段13に付設する冷凍機26によって臨界温度以下(例えば、マイナス3K)に冷却されている。
搬送案内手段13には、周知構造の図示しない上下移動機構と横移動機構(XY移動機構)が設けられ、必要によって上昇及び下降並びに所定方向への横移動ができるようになっている。
【0018】
各超電導体20の上部に設けられているホール素子21は、その直上に設けられている永久磁石16~19の磁束密度を検知しそのアナログ量を制御部27に出力するようにしている。制御部27ではこのホール素子21のアナログ信号をデジタル信号に変換し、内部の制御手段(例えば、コンピュータ)に入力するようになっている。この制御手段では、このホール素子21の信号から各超電導体20の上方に設けられている永久磁石16~19までの距離を演算し、必要な場合、制振コイル25に電流を流して永久磁石16~19に反発力又は吸引力を与えて発生する振動を抑制するようになっている。
この場合、制振コイル25に電流を流すと、内孔22を貫通する磁場が発生し、これによって、ホール素子21の出力にも影響が現れるので、制御手段内部で、制振コイル25によって発生する磁束密度の分だけホール素子21の測定値からキャンセルして、ホール素子21の測定値が正しい値となるように補正している。
【0019】
制御手段においては、ホール素子21に測定された超電導体20とその上の永久磁石16~19との距離Lを連続的に入力し、この時間微分値を増幅(即ち、比例定数:k)して制振コイル25に流して、距離Lの変動分を抑制している。これによって、搬送台12が衝撃等で上方又は下方に移動すると、超電導体20から逆方向の力が働き、これによって搬送台12に上下振動が発生するが、制振コイル25に流す電流によってこの振動を抑制することになる。
この場合、超電導体20は2つ割りされており、超電導体20内を流れる電流は図3(A)の矢印方向e、f又はその反対方向になるので、内孔22には制振コイル25の磁束が通過でき、更には、超電導体20のために収束されるので、磁束を減衰させることなく永久磁石16~19に作用させることができる。
【0020】
続いて、この超電導磁気浮上による非接触搬送装置10の動作について不足する部分を説明する。
まず、搬送台12の上に所定の搬送対象物(シリコンウェーハ11)を載置した状態で、搬送案内手段13をその直下に配置し、各永久磁石16~19の直下に各超電導体20(なお、詳細にはこの状態では、超電導体20は冷却していないので通常の導体である)を位置させる。この状態で、搬送案内手段13を上昇させて、搬送台12との間で所定の距離を保つようにする。この所定の距離は、4つの超電導体20で、搬送台12を持ち上げることが可能な距離とする。次に、超電導体20を冷凍機26で冷却して、各超電導体20が超電導性を発揮する温度にする。この状態で、搬送案内手段13を所定の長さ上昇させると、これに伴い搬送台12が真空容器14内で浮上し、搬送案内手段13を横移動させると、これに伴い搬送台12も横移動し、結果として搬送台12に搭載されている搬送対象物を搬送できる。
【0021】
この状態で、搬送台12又は搬送案内手段13に上下方向の衝撃が加わると、搬送台12は上下方向に振動を始めるが、この振動の変位をホール素子21で検知し、この変位の微分成分に比例する電流を制振コイル25に流す。なお、制振コイル25の時定数は十分に小さい。制振コイル25によって発生する制動力Fは、搬送台12の振動時の速度又は加速度αに搬送台12と搬送対象物の合計重量mを掛けた値Bの0.1~1.0倍程度がよい。この値Bが小さいと制動力Fが小さくなって、制動が掛からず搬送台12を制動させるのに時間がかかり、値Bが大きいと大電流を必要とし、過制動になる。これによって比較的短時間に、搬送台12の振動を止めることができる。
【0022】
続いて、図4、図5を参照しながら、本発明の第2の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置30について説明する。なお、第1の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置10と同一の構成要素については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
図4に示すように、本発明の第2の実施例に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置30は、搬送台31と搬送案内手段32とを有している。搬送台31は搬送台12と同じように底部周囲に永久磁石16~19を有しているが、搬送台31の底部中央にも磁性体の一例である第2の永久磁石33を備えている。一方、搬送案内手段32は、永久磁石16~19に符合する位置に超電導体34をそれぞれ備え、第2の永久磁石33に符合する位置には空心コイルからなる制振コイル35を備えている。
なお、ここで示す永久磁石16~19、33及び、更に不足する分を追加した永久磁石を、ハルバッハ配列にすることもできる。これによって、搬送台31の上側は磁束が無くなるか、著しく減少する。
【0023】
超電導体34は、図5(A)、(B)に示すように円形の板からなって、必要な場合、周囲を冷凍機によって冷却され、超電導性を示すようになっている。また、搬送案内手段32の上部中央には、距離センサの一例であるホール素子36が設けられ、搬送台31に設けられている第2の永久磁石33の磁気を検知し、その強さから搬送台31と搬送案内手段32との距離を検知している。なお、制振コイル35から発生する磁場は制振コイル35に流す電流で決定されるので、制御部37内で制振コイル35によって発生する磁場に対応する値を、ホール素子36の出力から差し引いて、搬送台31と搬送案内手段32との距離を測定している。
【0024】
この実施例においても同様、制御部37には所定のプログラムが記載された制御手段が設けられ、通常はピン止め効果によって搬送台31を搬送案内手段32の上に浮上させ、搬送案内手段32を動かすことによって搬送台31を移動させる。この場合、ホール素子36は搬送案内手段32に一つしか設けられていないので、全体の回路が簡略化するという利点がある。
また、搬送案内手段32又は搬送台31の動作異常又は負荷異変(例えば、搬送台31の搬送対象物を取り除く又は載置する)等で、搬送台31に振動が発生した場合、ホール素子36で検知された搬送台31と搬送案内手段32との距離信号を微分し、この微分した信号を増幅して制振コイル35に流す。これによって、搬送台31の振動に急激にブレーキが掛かり、振動が抑制される。
【実験例】
【0025】
次に、本発明の作用、効果を確認するために行った実験例について説明する。
図6に示すように、実験例に使用した装置40は、図3に示す2分割型の超電導体20を使用し、この超電導体20の底部に制振コイル25を配置している。距離センサの一例であるホール素子41は、超電導体20の上に載せて、模擬搬送台を構成する円板状の永久磁石42の上下方向の変位(即ち、永久磁石42と超電導体20とのギャップ)を検知している。図7にはこのホール素子41の出力値とギャップとの関係を示すが、永久磁石42が所定の位置にある場合を基準としてギャップを変えた場合、ホール素子41の出力とギャップとは比例することが分かる。
【0026】
ホール素子41の信号はAD変換器43、微分回路44、DA変換器45及び増幅回路46を介して制振コイル25にフィードバックされ、ホール素子41が検知した変位が減少方向、即ち、永久磁石42が下降した場合には、永久磁石42を上昇させるように制振コイル25に電流を流している。増幅回路46にはその増幅を変えるボリウム(可変抵抗器)が設けられて、DA変換されたアナログ信号を任意の大きさに増幅することができ、実際は永久磁石42の振動が最小限になるように予め調整しておくことになるが、具体的には、永久磁石42の発生する速度又は加速度Pに対応する大きさの負の速度又は加速度Q(Q=0.1P~P)を加えている。
【0027】
図8は制振コイル25に電流が流れないようにして、永久磁石42の上に所定重量の搬送対象物を載せた場合の、変位と時間の関係を測定したものであるが、相当長期の時間にわたって永久磁石42が上下に振動していることが分かる。図9は制振コイル25にホール素子41で検知した信号を微分した信号を加えた場合の永久磁石42の変位を測定しているが、短時間のうちに永久磁石42の振動が収束している。
以上の実験例から、超電導磁気浮上による非接触搬送においては、制振コイルに距離センサで測定した信号を微分する信号をフィードバックする制御(即ち、微分制御)が有効であることが分かる。
【0028】
前記実施例及び実験例においては、距離センサとしてホール素子を用いたが、例えば、渦電流センサ、超音波センサ、静電容量センサ、又は光センサ等を用いることもできる。
搬送台はこの実施例では平板状としたが、用途に合わせて例えば容器状のものを採用することもできる。
また、前記実施例において、搬送案内手段内に配置された超電導体と制振コイルとを別々に設けているが、これらを兼用させることもできる。即ち、制振コイルを超電導物質によって構成すると、装置自体を更にコンパクトに構成できる。
更には、超電導体の冷却を冷凍機で行っているが、所定温度以下の冷媒を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る超電導磁気浮上による非接触搬送装置は、非接触状態で物体を搬送可能であるので、例えば、異なる雰囲気及び/又は温度条件にあるチャンバー内にある物体や物質を外部から動かすことができ、チャンバー内にある半導体素子やその部品等の移動や搬送、又は無菌室等での試料や細菌の搬送に特に有効に利用できる。
また、搬送台に載った搬送対象物が浮いているので、外部からの振動に対して影響を受けることが少なく、搬送途中に外部から振動があっても、搬送対象物に伝わる振動を抑制しながら搬送できる。
更に、制振コイルに流す電流を制御することによって搬送台に載った搬送対象物を上下動させることもでき、従って、搬送台の水平移動と合成すると、搬送対象物の三次元空間移動が可能となる。
特に、搬送台をロボットハンドの先に取付けて前後左右させた場合には、搬送対象物を搬送台から隔離状態で遠隔操作できる。従って、例えば、搬送対象物が高電位を有する場合、アース状態にある搬送台から絶縁状態で搬送対象物を移動させることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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