TOP > 国内特許検索 > チロシナーゼの活性阻害剤とその製造方法 > 明細書

明細書 :チロシナーゼの活性阻害剤とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5150894号 (P5150894)
公開番号 特開2008-056651 (P2008-056651A)
登録日 平成24年12月14日(2012.12.14)
発行日 平成25年2月27日(2013.2.27)
公開日 平成20年3月13日(2008.3.13)
発明の名称または考案の名称 チロシナーゼの活性阻害剤とその製造方法
国際特許分類 A61K  31/7034      (2006.01)
A61K   8/60        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61Q  19/02        (2006.01)
C07H  15/203       (2006.01)
C07C  41/50        (2006.01)
FI A61K 31/7034
A61K 8/60
A61P 17/00
A61Q 19/02
C07H 15/203 CSP
C07C 41/50
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2006-330017 (P2006-330017)
出願日 平成18年12月6日(2006.12.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年9月15日 平間正博発行の「第48会天然有機化合物討論会 講演要旨集」に発表
優先権出願番号 2006211538
優先日 平成18年8月3日(2006.8.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年10月23日(2009.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】二瓶 賢一
【氏名】柳沢 忠
【氏名】飯郷 雅之
【氏名】大関 宏美
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】安藤 公祐
参考文献・文献 特開2001-335472(JP,A)
Mamta Tandon,A bibenzyl xyloside from Chlorophytum arundinaceum,Phytochemistry,1993年,32(6),1624-5
Knobloch,Benzils. I. The action of cyanogen on phenols,Chemische Berichte,1948年,81,224-35
LIKHITWITAYAWUID,K. et al,A new dimeric stilbene with tyrosinase inhibitiory activity from Artocarpus gomezianus,J Nat Prod,2001年,Vol.64, No.11,p.1457-9
調査した分野 A61K 31/05
A61K 8/60
A61K 31/7034
A61P 17/00
A61P 43/00
A61Q 19/02
C07C 41/50
C07C 43/317
C07H 15/203
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
式(Ia)
【化1】
JP0005150894B2_000022t.gif
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は単糖類若しくは二糖類由来のグリコシル基を表わす)
で示されるビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤。
【請求項2】
グリコシル基が、五炭糖残基又は六炭糖残基であることを特徴とする請求項1記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤。
【請求項3】
グリコシル基が、キシロシル基であることを特徴とする請求項1記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤。
【請求項4】
がキシロシル基かつRが水素原子であるか、R及びRが共にキシロシル基であるか、Rが水素原子かつRがキシロシル基であるか、又は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする請求項1記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤。
【請求項5】
式(Iaa)
【化2】
JP0005150894B2_000023t.gif
(式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21はキシロシル基を表)で表されるビベンジル誘導体。
【請求項6】
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドを出発物質として、該化合物から得られる式(II)
【化3】
JP0005150894B2_000024t.gif
(式中、X及びXは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表す)
で表されるベンズアルデヒド誘導体と、同じく、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドから得られる式(III)
【化4】
JP0005150894B2_000025t.gif
(式中、Y及びYは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表し、Zはハロゲン原子を表す)
で表されるホスホニウム塩とを、ウィッティッヒ(Wittig)反応条件下に反応させ、式(IV)
【化5】
JP0005150894B2_000026t.gif
(式中、X、X、Y及びYは、前記と同義である)
で表されるスチルベン誘導体を得、次いで、式(IV)で表される化合物を水素添加反応に付すことにより、式(V)
【化6】
JP0005150894B2_000027t.gif
(式中、X11、X21、Y11及びY21は、同一又は異なって、水素原子又は水酸基の保護基を表す)
で表されるビベンジル誘導体を製造する工程を含む、式(Iaa)
【化7】
JP0005150894B2_000028t.gif
(式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21は水素原子又はキシロシル基を表し、R11及びR21は同時に水素原子ではない)
で表されるビベンジル誘導体の製造方法。
【請求項7】
式(VI)
【化8】
JP0005150894B2_000029t.gif
(式中、X12及びX22の少なくとも1つは水素原子を表し、他は水酸基の保護基を表し、Y及びYは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表す)
で表されるビベンジル誘導体をアグリコン部分として、式(VII)
【化9】
JP0005150894B2_000030t.gif
(式中、Sugは、糖残基の官能基が保護されたキシロシル基を表す)
で表されるイミデートでグリコシル化し、次いで、保護基を脱離することからなる、式(Iaa)
【化10】
JP0005150894B2_000031t.gif
(式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21は水素原子又はキシロシル基を表し、R11及びR21は同時に水素原子ではない)
で表されるビベンジル誘導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール類の成分が段階的に着色・ポリマー化する際にその化学反応を促進させる酸化還元酵素であるチロシナーゼに対して、その酵素機能を阻害する機能を持つレゾルシノール誘導体と結合したビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤とその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化還元酵素のポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼを含む)は動植物の細胞構成組織に含まれるフェノール類の化学反応を促進させる作用があり、人の皮膚では褐色化(日焼け)を引き起こし、青果類や魚介類などの食品では褐変による商品価値の低下や食品に含まれ有益な抗酸化活性のあるポリフェノール類を分解し、昆虫では外皮に含まれるフェノール成分を化学変化させることによって変態して成虫になれることが知られている。
このように、ポリフェノールオキシダーゼは動植物におけるフェノール類の着色・ポリマー化現象の初期反応を触媒する酸化還元酵素として知られている。
【0003】
例えば、日焼けが起きる仕組みは、過剰紫外線によって皮膚基底層の色素細胞(メラノサイト)が活性化しチロシンから生成した過剰のメラニンが皮膚に沈着する現象であるが、キシロンからドーパ、ドーパキノン、メラニンへと段階的に化学変化する過程で、酵素であるポリフェノールオキシダーゼが触媒として作用する。その際にその変化は濃度が濃くなる方向に褐色化が進んで行き、その結果、人の顔ではシミやソバカスができ、手足などの皮膚は褐色に日焼けする。
原因となる褐色色素であるメラニンは動植物に広く分布しており、弱いながらも紫外線を吸収する性質を持っているため、動物の皮膚や表皮を紫外線から守る役割を果たしているが、過剰なメラニン色素の沈着はシミやソバカスの原因となり、肌の老化を促進するとともにそのときの過剰紫外線による細胞の損傷は膚がんの主因ともなっている。
動植物における色素形成反応の初期段階には,チロシナーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ)が深く関与している。チロシナーゼは,活性中心に銅を含む酸化還元酵素で,モノフェノールのo-ヒドロキシ化と,o-ジフェノールのo-キノンへの酸化という2つの連続した反応を触媒する。最終的に,o-キノン由来の重合体が褐色色素となる。すなわち,これらの色素形成を抑制するためには,チロシナーゼの働きを阻害する必要がある。このようなチロシナーゼのポリマー化現象に係る触媒機能を阻害するための物質として、従来、コウジ酸、ビタミンC、ハイドロキノン、アルブチン、ヘキシルレゾルシノールなどがチロシナーゼ阻害剤として用いられてきた。
【0004】
このうちコウジ酸は、日本では、日焼けや褐変を防ぐものとして古くから化粧品や食品に添加されてきたが、発がん性も認められるとの理由で、現在では使用禁止薬物に指定されており使用はされていない。
また、ビタミンCやハイドロキノンは人への毒性はないが色素形成が抑制できる。この色素形成の抑制は、フェノール類の着色・ポリマー化現象を促進するチロシナーゼの触媒機能の阻害によるものではなく、着色・ポリマー化する過程でチロシナーゼで生成されたドーパキノンをドーパ(DOPA)に還元することによって色素の形成を抑制するものである。
【0005】
さらに、アルブチン及び下記特許文献1に開示されたヘキシルレゾルシノールなどのレゾルシノール構造と水溶性の性質を兼ね備えたチロシナーゼの触媒機能を阻害する化合物が、コウジ酸に代わる美白化粧剤として提案されている。その他、新規成分であるピペロナルドオキシムまたはその誘導体
【0006】

【特許文献1】特開2006-124358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのレゾルシノール構造の化合物のうちアルブチンは美白化粧剤に用いたとき、高い水溶性のために細胞毒性が低い点は評価できてもチロシナーゼ阻害活性が弱いという点ではあまり評価されていない。また、上記特許文献1に開示されたヘキシルレゾルシノール誘導体は、環境ホルモンのノニルフェノールと構造が類似し、強いチロシナーゼの活性阻害剤としての機能が認められているが、水溶性が低く細胞毒性が疑われている。そこで、本発明の課題は、動植物が持つフェノール類を段階的に着色・ポリマー化させるチロシナーゼ(EC1.14.18.1)の活性に対して高い阻害効果が得られ、生命体である動植物に対する毒性が少ないチロシナーゼの活性阻害剤と、その剤の製造方法やその剤の利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、ユリ科の薬用植物であるChlorophytum arundinaceumの抽出物中に存在する特定のビベンジル配糖体、及び化学合成誘導体が水溶性で強いチロシナーゼ阻害活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)以下の式(Ia)(式中、及びRは、同一又は異なって、水素原子又は単糖類若しくは二糖類由来のグリコシル基を表わす)で示されるビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤に関する。
【化1】
JP0005150894B2_000002t.gif


【0011】
また本発明は、()グリコシル基が、五糖残基又は六炭糖残基であることを特徴とする上記(1)記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤や、(グリコシル基が、キシロシル基であることを特徴とする上記(1)記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤や、()Rがキシロシル基かつが水素原子であるか、R及びRが共にキシロシル基であるか、Rが水素原子かつがキシロシル基であるか、又は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする(1)記載のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤に関する。
【0012】
また本発明は、(5)以下の式(Iaa)(式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21はキシロシル基を表)で表されるビベンジル誘導体に関する。
【化2】
JP0005150894B2_000003t.gif

【0013】
さらに、本発明は、()2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドを出発物質として、該化合物から得られる以下の式(II)
【化3】
JP0005150894B2_000004t.gif



(式中、X及びXは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表す)で表されるベンズアルデヒド誘導体と、同じく、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドから得られる以下の式(III)
【化4】
JP0005150894B2_000005t.gif




(式中、Y及びYは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表し、Zはハロゲン原子を表す)で表されるホスホニウム塩とを、ウィッティッヒ(Wittig)反応条件下に反応させ、以下の式(IV)
【化5】
JP0005150894B2_000006t.gif




(式中、X、X、Y及びYは、前記と同義である;波線はシス又はトランスを表す)で表されるスチルベン誘導体を得、次いで、式(IV)で表される化合物を水素添加反応に付すことにより、以下の式(V)
【化6】
JP0005150894B2_000007t.gif



(式中、X11、X21、Y11及びY21は、同一又は異なって、水素原子又は水酸基の保護基を表す)で表されるビベンジル誘導体を製造する工程を含む、以下の式(Iaa)
【化7】
JP0005150894B2_000008t.gif


式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21は水素原子又はキシロシル基を表し、R11及びR21は同時に水素原子ではない)で表されるビベンジル誘導体の製造方法や、()以下の式(VI)
【化8】
JP0005150894B2_000009t.gif



(式中、X12及びX22の少なくとも1つは水素原子を表し、他は水酸基の保護基を表し、Y及びYは、同一又は異なって、水酸基の保護基を表す)で表されるビベンジル誘導体をアグリコン部分として、以下の式(VII)
【化9】
JP0005150894B2_000010t.gif


(式中、Sugは、糖残基の官能基が保護されたグリコシル基を表す)
で表されるイミデートでグリコシル化し、次いで、保護基を脱離することからなる、以下の式(Iaa)
【化10】
JP0005150894B2_000011t.gif


式中、R11は水素原子又はキシロシル基を表し、R21は水素原子又はキシロシル基を表し、R11及びR21は同時に水素原子ではない)で表されるビベンジル誘導体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤は、皮膚褐色化防止機能性化粧品即ち皮膚の美白化粧品や、野菜など植物カット食材の鮮度保持を目的とする褐変防止機能性添加剤や昆虫のさなぎ化抑止機能による殺虫剤としての用途が期待できる。また、本発明のビベンジル誘導体を含有するチロシナーゼの活性阻害剤の製造方法は、安価なジヒドロキシベンズアルデヒドから多くて8段階程度の短い工程で合成できるため、グラムスケールでの各化合物の供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、上記式(I)で示される化合物[以下、化合物(I)という]において、置換基ORの置換数は1~2で、好ましくは2であり、その場合のORは、同一又は異なっていてもよい。また、置換基の位置は、置換可能な何れの位置でもよく、特に制限されないが、好ましくはエチレン鎖が置換している位置からオルト又はパラ位であり、上記式(Ia)で表される化合物[以下、化合物(Ia)という]がより好ましい。
【0017】
式(I)等の各基の定義において、グリコシル基は、水溶性を示す糖残基であれば特に制限されず、単糖類又はオリゴ糖類の何れの残基でもよい。単糖類としては、三~七炭糖類の何れでもよいが、好ましくは、五炭糖類又は六炭糖類である。五炭糖類の具体例としては、リボース、キシロース、アラビノース等が挙げられ、六炭糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース等が挙げられ、特に、五炭糖のキシロースが好ましい。オリゴ糖類としては、二~六糖類が好ましく、特に、二糖類が好ましい。二糖類の具体例としては、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース等が挙げられる。その他、三糖類としては、ラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノース等が、四糖類としては、スタキオース等が挙げられる。その他のグリコシル基としては、デオキシリボース、フコース、ラムノース等のデオキシ糖、グルクロン酸等のウロン酸、グルコサミン等のアミノ糖の各残基も挙げられる。また、これら糖類は、D-体、L-体又はこれらの混合物等、何れの異性体も、使用することができる。
【0018】
水酸基の保護基及び糖の官能基の保護基としては、通常の有機合成化学で常用されている保護基を使用することができ、例えば、塩基性条件化に脱保護できる、アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基等、酸性条件下で脱保護できる、メトキシメチル基、テトラヒドロフラニル基などのエーテル類等、加水素分解により脱保護できるベンジル基などがあげられる。また、目的化合物により、特定の位置の保護基を選択的に脱保護することを所望の場合は、前記保護基を適宜組み合わせて用いればよい。また、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を例示することができる。
【0019】
本発明のチロシナーゼの活性阻害剤として好ましく使用することができる具体的化合物としては、前記式(Ia)中、Rがキシロシル基を表わし、Rが水素原子を表わす下記式で示される化合物(以下「化合物(1)」という)が例示される。
【化12】
JP0005150894B2_000012t.gif

【0020】
また、式(Ia)中、R及びRが、共にキシロシル基を表わす下記式で示される化合物(以下、「化合物(2)」という)が例示される
【0021】
【化13】
JP0005150894B2_000013t.gif

【0022】
また、式(Ia)中、Rが水素原子を表わし、Rがキシロシル基を表わす下記式で示される化合物(以下、「化合物(3)」という)が例示される。
【0023】
【化14】
JP0005150894B2_000014t.gif

【0024】
さらに、式(Ia)中及びRが、共に水素原子を表わす下記式で示される化合物(以下、「化合物(4)」という)が例示される。
【0025】
【化15】
JP0005150894B2_000015t.gif

【0026】
特に、化合物(2)と化合物(3)は、天然には存在しない新規化合物であり、その合成が本願製造方法で初めて可能になった。
上記化合物(1)~(4)など、化合物(I)は、いずれもレゾルシノール誘導体と結合したビベンジル誘導体であり、レゾルシノール誘導体である従来のヘキシルレゾルシノール誘導体とはビベンジル誘導体部分が全く異なった分子構成となっている。
酸化還元酵素のチロシナーゼに対して、化学結合しやすい化学構成となっており、チロシナーゼの分子がレゾルシノール誘導体に一部置換されて別物質になり、フェノール類の着色・ポリマー化する際の酸化還元酵素としての機能が失われるため、フェノール類の着色・ポリマー化を阻害する機能を有する化合物、即ちチロシナーゼの活性阻害剤となる。
【0027】
化合物(1)は、古代の医術書であるアーユルヴェーダに薬用植物として記載され強壮剤として現在も利用されているインド産のユリ科植物Chlorophytum arundinaceumに含まれている。この物質は1993年、Tandonらがこの植物から2’,4,4’-トリヒドロキシ-2-β-D-キシロピラノシルビベンジルを単離し構造決定した。しかし,その全合成は達成されておらず、生理活性についても未だ明らかにされていない。
【0028】
本発明では、そのレゾルシノールと糖構造の両方を有するビベンジル配糖体に着目し、その物質の全合成を可能にした。
さらにレゾルシノール誘導体を持つビベンジル誘導体の化合物の化学合成に成功し、製造した各物質のチロシナーゼ阻害活性の効果を確認した。
【0029】
次に本発明のビベンジル誘導体の製造方法について、グリコシル基としてキシロシル基を用いた場合[化合物(1)~(3)]及び化合物(4)を例として、以下詳しく説明する。
【0030】
製造法A.化合物(1)の製造方法
化合物(1)は、下記[化16]及び[化17]に示す反応工程に従い製造することができる。
【化16】
JP0005150894B2_000016t.gif

【0031】
【化17】
JP0005150894B2_000017t.gif

【0032】
[化合物(5)の合成]
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドの溶媒中、ベンジルブロミド(BnBr)、塩基、触媒量のテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)を加えて反応し、4位の水酸基を選択的にベンジル(Bn)化し、4-ベンジルオキシサリチルアルデヒド(5)を得る。
この反応の際、塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化カリウムなどが用いられ、また、溶媒はアセトニトリル、アセトンなどが用いられる。
【0033】
(工程a)
アルデヒド(5)の溶液に、クロロメチルメチルエーテル(MOMC1)と塩基、触媒量のTBAIを加えて反応し、2位の水酸基をメトキシメチル(MOM)化し、2-メトキシメチル-4-ベンジルオキシベンズアルデヒド(6)を得る。
この反応の際、塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)、炭酸カリウムなどが用いられ、溶媒は、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などが用いられる。
【0034】
[化合物(7)の合成]
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドを溶媒に溶解し、BnBr、塩基を加え反応し、水酸基をベンジル化し、2,4-ジベンジルオキシベンズアルデヒドを得る。この反応の際の塩基は炭酸カリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが用いられ、溶媒は、DMF、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、THFなどが用いられ、使用する塩基に応じて選択すればよい。次いで、得られたジベンジル体を溶媒に溶解し、還元剤を加えてアルデヒド基を還元し、2,4-ジベンジルオキシベンジルアルコールを得る。 この反応の際の還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウムなどが用いられる。溶媒はメタノール(MeOH)、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類単独や、それらとジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等との混合溶媒が用いられ、使用する還元剤に応じて選択すればよい。その後、このベンジルアルコール体のベンジル位をクロロ化することによりクロロ体(7)を得る。この反応の際、クロロ化試薬としては、例えば、塩化チオニル、三塩化リン、オキサリルクロリドなどが用いられ、また、化合物(7)は、三臭化リンなどのブロモ化試薬によるブロモ化することによりブロモ体としても、以降の反応に使用することができる。溶媒は、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が用いられる。
【0035】
(工程b)
クロロ体(7)に溶媒とトリフェニルホスフィンを加えて反応し、ホスホニウム塩(8)を得る。
この反応の際の溶媒は、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類や四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が用いられる。
【0036】
(工程c)
工程aで得られるアルデヒド(6)と工程bで得られるホスホニウム塩(8)を用いてウィッティッヒ(Wittig)反応を行い、スチルベン(9)を得る。
この反応の際、塩基としては、例えば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、n-ブチルリチウム、tert-ブトキシカリウム、水素化ナトリウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)などが用いられる。また、溶媒としては、例えば、THF、アセトニトリル、ジエチルエーテル、DMFなどが用いられる。
【0037】
(工程d)
スチルベン(9)を用いて、溶媒中、パラジウム-活性炭素エチレンジアミン複合体を加えて水素添加反応を行い、スチルベンの二重結合を選択的に還元し、ビベンジル(10)を得る。この反応の際、溶媒としては、例えば、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル類、MeOH、エタノールなどのアルコール類が用いられる。
【0038】
(工程e)
ビベンジル(10)の2位のメトキシメチル基を脱保護するため、酸処理することにより、ビベンジル(11)を得る。この反応の際、酸としては、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホナート、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などが用いられる。また、溶媒としては、MeOH、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類が単独に、あるいは、それらとジエチルエーテル、THFなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類との混合溶媒として用いられる。
【0039】
[化合物(12)の合成]
キシロースをピリジンなどの溶媒に溶解し、無水酢酸及びTEAなどの塩基を加え反応し、1,2,3,4-テトラアセチルキシロースを得る。
次いで、得られたテトラアセチル体の溶液に、塩基を加えて反応し、1位のアセチル基を選択的に脱保護して、2,3,4-トリアセチルキシロースを得る。
この際、塩基としては、例えば、ピペリジン、ベンジルアミン、ヒドラジンアセテートなどが用いられ、溶媒としては、DMF、アセトニトリルなどを使用する塩基に応じて選択すればよい。さらに、このトリアセチル体の溶液に、トリクロロアセトニトリルと触媒量のDBUを加え反応し、イミデート(12)を得る。この反応では、溶媒としては、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、ベンゼンなどが用いられる。
【0040】
(工程f)
得られたイミデート(12)を用いて、工程eで合成したアグリコン(11)のグリコシル化を行う。反応は、ルイス酸存在下にカップリング反応を行い、ベンジル(13)を得る。この反応では、ルイス酸として、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル複合体、塩化スズ、塩化鉄、塩化アルミニウム、塩化チタンなどが用いられる。また、溶媒としては、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、ベンゼンなどが用いられる。
【0041】
(工程g)
ビベンジル(13)を溶媒中、触媒の存在下に加水素分解を行い、ベンジル基を脱保護し、脱ベンジル体を得る。この反応では、加水分解触媒として、例えば、水酸化パラジウム-炭素、パラジウム-炭素、酸化白金などが用いられ、溶媒としては、酢酸エチル、THF、MeOH、エタノールなどが単独あるいは混合して用いられる。
【0042】
(工程h)
工程gで得られる脱ベンジル体を溶媒中、塩基の存在下に反応し、アセチル基の脱保護を行い、目的とするビベンジル配糖体(1)を得る。この反応では、塩基として、例えば、ナトリウムメトキシド(NaOMe)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなども用いられ、溶媒も使用する塩基にあわせて、MeOH、エタノール、THFなどが、単独又は混合して用いられる。
【0043】
なお、これら各工程における反応温度は、-78℃から使用する溶媒の沸点の間で、また、反応時間は、5分から48時間の間で行われ、使用する溶媒、触媒及び塩基等により適宜選択すればよい。
【0044】
製造法B.化合物(2)の製造方法
化合物(2)は、下記[化18]及び[化19]に示す反応工程に従い製造することができる。
【化18】
JP0005150894B2_000018t.gif

【0045】
【化19】
JP0005150894B2_000019t.gif

【0046】
[化合物(14)の合成]
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドの溶液に、MOMC1と塩基を加えて反応し、2位及び4位の水酸基をメトキシメチル化し、アルデヒド(14)を得る。
この反応において使用する塩基は、例えば、TEA、DIPEA、炭酸カリウムなどが用いられ、溶媒は塩基の種類に応じて、THF、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、DMFなどが用いられる。反応時間は、-78℃から使用する溶媒の沸点の間で、また、反応時間は、5分から48時間の間で行われ、使用する溶媒及び塩基等により適宜選択すればよい。
【0047】
(工程a)
アルデヒド(14)と製造法A、工程bで得られるホスホニウム塩(8)を用いてウィッティッヒ反応を行い、スチルベン(15)を得る。反応は、製造法A、工程c記載の方法に準じて行うことができる。
(工程b)
スチルベン(15)は、水素添加反応を行い、スチルベンの二重結合を選択的に還元し、ビベンジル(16)を得る。反応は、製造法A、工程d記載の方法に準じて行うことができる。
(工程c)
ビベンジル(16)の2位、4位のメトキシメチル基を脱保護し、ビベンジル(17)を得る。反応は、製造法A、工程e記載の方法に準じて行うことができる。
(工程d)
製造法Aで得られるイミデート(12)の過剰量を用いて、アグリコン(17)のグリコシル化を行い、ビベンジル(18)を得る。反応は、製造法A、工程f記載の方法に準じて行うことができる。
(工程e)
ビベンジル(18)は、製造法A、工程g記載の方法に準じて、ベンジル基の脱保護を行うことができる。
(工程f)
次いで、製造法A、工程h記載の方法に準じて、アセチル基の脱保護を行うことにより、目的とするビベンジル配糖体(2)を得る。
【0048】
製造法C.化合物(3)の製造方法
化合物(3)は、上記[化19]に示す反応工程に従い製造することができる。
(工程g)
製造法B、工程cで得られるアグリコン(17)に、製造法Aで得られるイミデート(12)の1当量を加えて、ルイス酸存在下にカップリング反応を行い、4位がキシロシル化したビベンジル(19)を得る。反応は、製造法A、工程f記載の方法に準じて行うことができる。
(工程h)
ビベンジル(19)は、製造法A、工程g記載の方法に準じて、ベンジル基の脱保護を行うことができる。
(工程i)
次いで、製造法A、工程h記載の方法に準じて、アセチル基の脱保護を行うことにより、目的とするビベンジル配糖体(3)を得る。
【0049】
製造法D.化合物(4)の製造方法
化合物(4)は、下記[化20]に示す反応工程に従い製造することができる。
【化20】
JP0005150894B2_000020t.gif

【0050】
(工程a)
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドから、製造法A、化合物(7)の製法と同様の方法で得られる2,4-ジベンジルオキシベンズアルデヒド(20)と製造法A、工程bで得られるホスホニウム塩(8)を用いて、製造法A、工程cの方法に準じてスチルベン(21)を得る。
(工程b)
スチルベン(21)は、触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより、二重結合の還元及びベンジル基の脱保護を同時に行い、目的とするビベンジル誘導体(4)を得る。
この反応では、触媒として、例えば、水酸化パラジウム-活性炭素、パラジウム-炭素、酸化白金などが用いられ、溶媒としては、酢酸エチル、THF、MeOH、エタノールなどが、単独又は混合して用いられる。反応時間は、-78℃から使用する溶媒の沸点の間で、また、反応時間は、5分から48時間の間で行われ、使用する溶媒及び塩基等により適宜選択すればよい。
【0051】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば、中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
【0052】
なお、化合物(I)において、グリコシル基がキシロシル基以外の基を有する化合物についても、糖類等の有機合成化学で常用される保護基の導入及び脱離等の方法、また、置換基の位置についても、所望の位置に水酸基を有する原料を用いる等の手段により、上記製造法で詳述したキシロシル基についての製造法に準じて製造することができる。化合物(I)は、水又は各種溶媒との付加物として存在し、単離精製される場合もあるが、これら付加物も本発明の阻害剤として使用することができる。また、化合物(I)は、光学異性体等、各種異性体が存在するが、これら全ての可能な異性体及びそれらの混合物も本発明の阻害剤として使用することができる。
【0053】
また、上記化合物(1)~(4)における親水性をコンピュータで計算した結果を下記に示す。
(化合物) (LogP)
1 1.68
2 0.38
3 1.68
4 2.99
この表のLogPの値は、小さいほど親水性が高く、水に溶けやすいことを示している。
ビベンジル誘導体のうち、化合物(1)~(3)には糖類のキシロースを含むので毒性が少なく、安全性が高いので食品など多様な用途に使用可能となる。
【0054】
上記データから明らかなように、本発明の阻害剤として使用される化合物は、水溶性に優れており、また、チロシナーゼの活性に対してコウジ酸の5倍~20倍にもなる極めて高い阻害効果が得られる(実施例5参照)。
一般に、ビベンジル誘導体に糖類のキシロースを含む場合は毒性が少なくなることが知られているので、人体や食品等に用途が広がる可能性がある。
【0055】
化合物(I)を本発明のチロシナーゼの活性阻害剤として使用する場合、そのまま単独で使用することも可能であるが、通常、各種用途に応じた使用形態とすることが望ましく、活性成分である化合物(I)と医薬品、化粧品などに一般に用いられる各種成分、例えば、水性成分、油性成分、粉末成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、色剤、香料、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、あるいは紫外線防御剤などを1種又は2種以上を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0056】
例えば、化合物(I)や化合物(I)を含有する本発明のチロシナーゼの活性阻害剤を、水やペースト基材と混合して塗布用の異皮膚褐色化防止機能性化粧品、即ち皮膚の美白化粧品(美白効果の高い皮膚外用剤や美白用皮膚外用剤)として使用でき、また、化合物(I)や化合物(I)を含有する本発明のチロシナーゼの活性阻害剤を、水と混合して植物カット食材の褐変防止機能性添加剤や散布剤として使用すれば野菜野鮮度保持に効果が得られ、さらに昆虫のさなぎ化抑止剤、殺虫剤として人畜無害な薬剤として安全に使用することが可能となる。化合物(I)や本発明のチロシナーゼの活性阻害剤はメラニン生成を抑制することから、美白剤として有用であり、皮膚外用剤に好適に配合される。そして、本発明のピペロナルドキシムとその類似体は細胞毒性が非常に低いため、配合量を高く設定することができる。本発明の美白剤を皮膚外用剤として用いる場合、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、エステル類、シリコーン、各種界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。さらに、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤も適宜配合することができる。
【0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
2’,4,4’-トリヒドロキシ-2-β-D-キシロピラノシルビベンジル[化合物(1)]の合成
i)ホスホニウム塩(8)の合成
出発物資である2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドをDMFに溶解し、ベンジルブロマイド及び炭酸カリウムを加え、60℃で一晩攪拌して水酸基をベンジル化した。
結果、収率99%で2,4-ジベンジルオキシベンズアルデヒドを得た。
これを、ジエチルエーテルとMeOHの混合溶媒に溶解し、氷冷下で水素化ホウ素ナトリウムを加えてアルデヒド基を還元し、2,4-ジベンジルオキシベンジルアルコールを収率98%で得た。その後、このトルエン溶液に塩化チオニルを加えてベンジル位をクロロ化し、クロロ体(7)とした。反応液中の過剰の塩化チオニル及び酸を減圧下で完全に除去した後、トルエンとトリフェニルホスフィンを加えて30分間リフラックスし、ホスホニウム塩(8)を収率59%で得た。
【0059】
ii)アグリコン(11)の合成
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのアセトニトリル溶液に、ベンジルブロミド、炭酸水素ナトリウム、触媒量のテトラブチルアンモニウムヨージドを加え、16時間リフラックスし、78%の収率で4-ベンジルオキシサリチルアルデヒド(5)を得た。
アルデヒド(5)のジクロロメタン溶液に、MOMC1とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、触媒量のTBAIを加えて一晩攪拌し、2位の水酸基をMOM化し、2-メトキシメチル-4-ベンジルオキシベンズアルデヒド(6)を収率100%で得た。
このアルデヒド(6)とホスホニウム塩(8)のTHF溶液に、氷冷下でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを加え、室温で12時間、ウイッティッヒ反応を行い、収率90%でスチルベン(9)を得た。ウイッテイッヒ反応におけるシスとトランスの比率はH-NMR解析により3:2であった。スチルベン(9)は酸性条件下で不安定であったため、THF中、パラジウム-活性炭素エチレンジアミン複合体を加えて水素添加反応を行い、スチルベンの二重結合を選択的に還元し、ビベンジル(10)を収率86%で得た。
さらに、ビベンジル(10)の2位のMOM基を脱保護するため、THF/MeOH溶液中に、p-トルエンスルホン酸を加えて2時間リフラックスし、収率89%でビベンジル(11)を得た。
【0060】
iii)ビベンジル配糖体(1)の合成
ピリジンにD-(+)-キシロースを溶解し、無水酢酸、TEAを加え、一晩攪拌してテトラアセチルキシロースを収率75%で得た。次に、このTHF溶液に、ピペリジンを加えて一晩攪拌し、1位のアセチル基を選択的に脱保護して、収率53%で2,3,4-トリアセチルキシロースを得た。さらに、このジクロロメタン溶液に氷冷下でトリクロロアセトニトリルと触媒量のDBUを加え、室温で2時間攪拌し、収率72%でイミデート(12)を得た。最後に、得られたイミデート(12)を用いて合成したアグリコン(11)のグリコシル化を行った。イミデート(12)とアグリコン(11)のジクロロメタン中、氷冷下でルイス酸であるトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)を加え、5分間、カップリング反応を行った結果、収率100%でビベンジル(13)を得た。ビベンジル(13)を酢酸エチル/MeOH中、水酸化パラジウムを触媒として加水素分解を行い、ベンジル基を脱保護し(収率100%)、さらにMeOH溶液中に、氷冷下で、NaOMeを滴下し、約30分間攪拌して、アセチル基の脱保護を行った。反応液は、酸処理した後に、分取HPLCによって目的物質であるビベンジル配糖体(1)を単離し、H-NMR、13C-NMR、DEPT、HMQC及びHMBCにより、天然物と同一の構造であることを確認した。合成の総収率は51%であった。
【0061】
2’,4,4’-トリヒドロキシ-2-β-D-キシロピラノシルビベンジル化合物[化合物(1)]
1H-NMR(400MHz,CDOD)δ6.89(d,J=8.3Hz,1H),6.83(d,J=8.3Hz,1H),6.36(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),6.27(d,J=2.4Hz,1H),6.19(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),4.79(d,J=7.3Hz,1H),3.94(dd,J=5.4,11.2Hz,1H),3.60(dt,J=5.4,8.8Hz,1H),3.52(dd,J=7.3,8.8Hz,1H),3.43(t,J=8.8Hz,1H),3.36(m,1H),2.70(m,4H).
13C-NMR(400MHz,CDOD)δ157.5(s),157.3(s),156.7(s),131.8(d),131.5(d),124.2(s),121.4(s),110.0(d),107.5(d),104.0(d),103.5(d),103.4(d),77.7(d),74.9(d),71.1(d),66.9(t),32.1(t),31.9(t).
【実施例2】
【0062】
2’,4’-ジヒドロキシ-2,4-β-D-キシロピラノシルビベンジル[化合物(2)]の合成
2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドのテトラヒドフラン溶液に、氷冷下でMOM1とTEAを加えて1時間攪拌し、2位,4位の水酸基をMOM化し、アルデヒド(14)を収率100%で得た。アルデヒド(14)とホスホニウム塩(8)のTHF溶液に、氷冷下でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを加え、室温で1.5時間、ウイッティッヒ反応を行い、収率84%でスチルベン(15)を得た。ウィッテイッヒ反応におけるシスとトランスの比率はH-NMR解析により3:1であった。スチルベン(15)は酸性条件下で不安定であったため、THF中、パラジウム-活性炭素エチレンジアミン複合体を加えて水素添加反応を行い、スチルベンの二重結合を選択的に還元し、ビベンジル(16)を収率72%で得た。さらに、ビベンジル(16)の2位、4位のMOM基を脱保護するため、THF/MeOH溶液中に、p-トルエンスルホン酸を加えて30分間リフラックスし、収率100%でビベンジル(17)を得た。過剰量のイミデート(12)とアグリコン(17)のジクロロメタン溶液中、氷冷下でルイス酸であるトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)加え、カップリング反応を行った結果、収率77%でビベンジル(18)を得た。ビベンジル(18)を酢酸エチル/MeOH中、水酸化パラジウム-炭素を触媒として加水素分解を行い、ベンジル基を50%の収率で脱保護した。さらにMeOH溶液中に、氷冷下でナトリウムメトキシド(NaOMe)を滴下し、約10分間攪拌して、アセチル基の脱保護を行った。反応液は、酸処理した後に、分取HPLCによって目的物質であるビベンジル配糖体(2)を単離し、H-NMR、13C-NMRにより目的の構造であることを確認した。合成の総収率は17%であった。
【0063】
2’,4’-ジヒドロキシ-2,4-β-D-キシロピラノシルビベンジル[化合物(2)]
1H-NMR(400MHz,CDOD)δ6.99(d,J=8.3Hz,1H),6.84(d,J=2.4Hz,1H),6.81(d,J=8.3Hz,1H),6.64(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),6.27(d,J=2.4Hz,1H),6.18(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),4.81(d,J=7.4Hz,1H),4.78(m,1H),3.94(dd,J=5.4,11.2Hz,1H),3.92(dd,J=5.4,11.2Hz,1H),3.60(td,J=5.4,8.8,9.8Hz,1H),3.55(td,J=5.4,8.7,9.8Hz,1H),3.52(dd,J=7.4,8.8Hz,1H),3.43(t,J=8.8Hz,1H),3.41(m,1H),3.38(m,1H),3.36(m,1H),3.33(m,1H),2.74(m,4H).
13C-NMR(400MHz,CDOD)δ158.1(s),157.4(s,2C),156.7(s),131.8(d),131.4(d),127.4(s),121.1(s),111.1(d),107.5(d),105.9(d),103.5(d),103.4(d),103.3(d),77.7(d,2C),74.9(t),74.7(t),71.0(d,2C),67.0(d),66.9(d),31.9(t,2C).
【実施例3】
【0064】
2,2’,4’-トリヒドロキシ-4-β-D-キシロピラノシルビベンジル[化合物(3)]の合成
アグリコン(17)と1当量のイミデート(12)をジクロロメタン溶液中に加えて、氷冷下にルイス酸としてのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル存在下に、5分間カップリング反応を行った結果、4位がキシロシル化したビベンジル(19)を71%の収率で得た。得られたビベンジル(19)を酢酸エチル/MeOH中、水酸化パラジウム-炭素を触媒として、室温で1時間加水素分解を行い、ベンジル基を脱保護し(収率96%)、さらにMeOH溶液中に、氷冷下でNaOMeを滴下し、約30分間攪拌して、アセチル基の脱保護を行った。反応液は、酸処理した後に、分取HPLCによって目的物質であるビベンジル配糖体3を単離し、H-NMR、13C-NMR、DEPT、HMQC及びHMBCにより、構造を確認した。
【0065】
2,2’,4’-トリヒドロキシ-4-β-D-キシロピラノシルビベンジル[化合物(3)]
1H-NMR(400MHz,CDOD)δ6.88(d,J=8.3Hz,1H),6.76(d,J=8.3Hz,1H),6.52(d,J=2.4Hz,1H),6.42(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),6.26(d,J=2.4Hz,1H),6.16(dd,J=2.4,8.3Hz,1H),4.76(d,J=2.4,5.2Hz,1H),3.89(dd,J=5.4,11.7Hz,1H),3.53(m,1H),3.38(m,2H),3.33(m,1H),2.69(m,4H).
13C-NMR(400MHz,CDOD)δ156.5(s),155.8(s),155.5(s),155.4(s),130.0(d),129.9(d),122.9(s),119.7(s),107.0(d),105.7(d),103.4(d),101.9(d),101.6(d),76.3(d),73.3(d),69.6(d),65.4(t),31.4(t),31.3(t).
【実施例4】
【0066】
2,2’,4,4’-テトラヒドロキシビベンジル[化合物(4)]の合成
2,4-ジベンジルオキシベンズアルデヒド(20)とホスホニウム塩(8)とをTHF中、LiHMDS存在下で、室温で1時間、ウイッテイッヒ反応を行い、スチルベン(21)を42%の収率で得た。このスチルベンは不安定であったため、速やかに次の反応を行った。スチルベン(21)をTHF溶媒中、20%水酸化パラジウム-活性炭素を触媒として、室温で12時間、水素添加反応を行うことにより、二重結合の還元及びベンジル基の脱保護を同時に行い、85%の収率で白色結晶のビベンジル誘導体(4)を得た。総収率は、36%であった。得られた化合物(4)の構造は、H-NMR及び13C-NMRにより決定した。
【0067】
2,2’,4,4’-テトラヒドロキシビベンジル[化合物(4)]
1H-NMR(400MHz,CDOD)δ6.75(d,J=7.8,1H),6.23(d,J=2.4,1H),6.14(dd,J=2.4,7.8),2.63(s,2H).
13C-NMR(400MHz,CDOD)δ157.4(s),157.1(s),131.6(d),121.6(s),107.5(d),103.6(d),31.6(t).

【実施例5】
【0068】
チロシナーゼの活性阻害効果
DOPA49mgを50mlの精製水に溶解し、5mMのDOPA水溶液を調製した。
合成したビベンジル誘導体(1)~(4)とコウジ酸(対照化合物)は、それぞれDMSOに溶解し、5mMのサンプル溶液を調製した。
チロシナーゼを50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、0.67mg/mlの酵素溶液を調製した。サンプル溶液をDMSOで希釈し、その0.1mlを3ml容のキュベットに量り取った。次にキュベットに、250mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)0.6ml、DOPA溶液0.3ml、精製水1.9mlおよび酵素溶液0.1mlを加えてすばやく混合し、分光光度計で475nmの吸光値の変化を計測した。各測定は、30℃で60秒間行い、1秒ごとの吸光値をコンピュータに保存した。得られた吸光値を直線回帰し、ブランク測定時の傾きを100%として50%阻害濃度(IC50)を算出した。この実験は各サンプルに付き3回行った。結果を[表1]に示す。
【0069】
【表1】
JP0005150894B2_000021t.gif

【0070】
また、試験化合物(1)~(4)及びコウジ酸の濃度変化による阻害活性との関係について、[図1]~[図4]及び[図6]に示す。また、上記各化合物のデータを比較するために棒グラフに表したのが[図5]である。
上記[表1]のIC50に示されるデータは、50%阻害する各誘導体の濃度を示し、値が低いほどチロシナーゼに対する阻害活性が強いことを示している。また、±以下の数値は実験3回による標準誤差を示している。
【0071】
この実験データから、従来、国内で化粧品や食品にチロシナーゼ阻害剤として用いられてきたコウジ酸と比較すると、本発明のチロシナーゼ阻害剤として使用される化合物(1)では約5倍、化合物(2)は約10倍、化合物(3)及び(4)では約20倍と、いずれも非常に強いチロシナーゼ阻害活性を示しているこが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の化合物1のグラフ図である。
【図2】本発明の化合物2のグラフ図である。
【図3】本発明の化合物3のグラフ図である。
【図4】本発明の化合物4のグラフ図である。
【図5】各化合物を比較した棒グラフ図である。
【図6】従来のコウジ酸のグラフ図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5