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明細書 :パターニングされた物質の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4876261号 (P4876261)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
発明の名称または考案の名称 パターニングされた物質の製造方法
国際特許分類 B29C  59/02        (2006.01)
H01L  21/027       (2006.01)
G03F   7/20        (2006.01)
B29C  33/38        (2006.01)
B81C   3/00        (2006.01)
FI B29C 59/02 B
H01L 21/30 502D
G03F 7/20 501
B29C 33/38
B81C 3/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2007-542331 (P2007-542331)
出願日 平成18年10月19日(2006.10.19)
国際出願番号 PCT/JP2006/320806
国際公開番号 WO2007/049494
国際公開日 平成19年5月3日(2007.5.3)
優先権出願番号 2005309601
優先日 平成17年10月25日(2005.10.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年9月10日(2009.9.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】藪 浩
【氏名】下村 政嗣
【氏名】居城 邦治
【氏名】松尾 保孝
【氏名】山本 貞明
【氏名】田中 賢
個別代理人の代理人 【識別番号】100131587、【弁理士】、【氏名又は名称】飯沼 和人
【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
審査官 【審査官】佐藤 健史
参考文献・文献 特開平9-300317(JP,A)
特開2005-230947(JP,A)
特開平11-315150(JP,A)
特開2005-189128(JP,A)
特開2004-363584(JP,A)
調査した分野 B29C 59/00~59/18
B29C 33/00~33/76
G03F 7/20
H01L 21/027
B81C 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
物質を腐食もしくは溶解することのできる液体を含浸させた鋳型を該物質に押し当て、鋳型が有するパターンを物質に転写する、パターニングされた物質を製造する方法。
【請求項2】
物質が熱収縮性フィルムもしくは熱収縮性シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物質が非水溶性ポリマーフィルムもしくは非水溶性ポリマーシートであり、鋳型に含浸させる液体が該フィルムもしくはシートを溶解することのできる有機溶媒である、パターニングされたポリマーフィルムもしくはポリマーシートを製造する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
鋳型のパターンを熱収縮性フィルムもしくは熱収縮性シートに転写した後に、該フィルムもしくはシートを加熱収縮させる、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
物質が金属もしくは半導体であり、鋳型に含浸させる液体が該金属もしくは半導体を腐食させることのできる酸性液体である、パターニングされた金属もしくは半導体を製造する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鋳型がポリジメチルシロキサンよりなる、請求項1~5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
鋳型が水溶性ゲルよりなる、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項8】
鋳型のパターンがレリーフ及び/又はスリットからなるパターンである、請求項1~5の何れかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、任意のパターン、特に微細なパターンを有する金属やポリマーなどからなる物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工を実現するためのパターン転写技術であるリソグラフィ技術において、半導体集積回路やフォトニクス分野における微細化、集積化のさらなる要求に対応するため、リソグラフィ技術の高精度化は非常に重要な課題である。しかしながらもっとも一般的な技術であるフォトリソグラフィは、光露光の光源波長以下の微細なパターンの作製を行うことができないという問題を有していることから、光源波長以下という微細なスケールにも利用可能な新しいパターニング技術の開発が待たれている。
【0003】
近年、ホワイトサイドは、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)等のソフトリソグラフィー法によって簡便に微細パターンを提供できることを示した(非特許文献1)。この方法は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーにチオール誘導体を塗布し、これを金表面に転写することで自己集合単分子膜(SAMs)を形成させ、これをマスクキングとしてエッチングを行い、微細パターンを転写する方法である。
【0004】
また、パターン化された電子基板を作製する方法として、基板上に形成したいパターンと同じパターンの凹凸を有するスタンパを、被転写基板表面に形成されたレジスト膜層に対して型押しすることで所定のパターンを転写するナノインプリント技術、特にTg付近に加熱したポリマーフィルムに堅い鋳型を押し込むことによりパターンを転写する技術も報告されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
しかしながらこれらの方法は、いずれも有機溶媒に溶解する非水溶性ポリマーや熱分解性のポリマーからなるフィルムやシートの表面へのパターニングには利用することはできない。この様なポリマーは有機溶媒や熱への耐性が低いので、有機溶媒を用いた従来のエッチング法も加熱を利用したナノインプリンティング法もフィルムやシートを毀損してしまうからである。一方、ポリイミドなどの高耐熱性ポリマーや金属に対して加熱を伴うナノインプリンティング技術によってパターニングを行うことは相当の高温を要することとなり、事実上困難である。

【非特許文献1】Y. Xia, G. M. Whitesides, Angew. Chem. Int. Ed. 37, 550-575(1998)
【特許文献1】米国特許5,259,926号公報
【特許文献2】米国特許5,772,905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、従来のマイクロコンタクトプリンティング法やナノインプリント技術とは異なる、微細なパターンを形成し得る新たなパターニング技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、パターニングを行おうとする物質、例えば金属やポリマーに対して、これらを毀損するおそれから本来的に使用が忌避されてきた液体を局部的にアプライすることで、該物質のパターニングが可能であることを見いだし、以下の各発明を完成した。
【0008】
1)物質を腐食もしくは溶解することのできる液体を含浸させた鋳型を該物質に押し当て、鋳型が有するパターンを物質に転写する、パターニングされた物質を製造する方法。
【0009】
2)物質が非水溶性ポリマーフィルムもしくは非水溶性ポリマーシートであり、鋳型に含浸させる液体が該フィルムもしくはシートを溶解することのできる有機溶媒である、パターニングされたポリマーフィルムもしくはポリマーシートを製造する1)に記載の方法。
【0010】
3)非水溶性ポリマーフィルムもしくは非水溶性ポリマーシートが熱収縮性フィルムもしくは熱収縮性シートである、2)に記載の方法。
【0011】
4)鋳型のパターンを熱収縮性フィルムもしくは熱収縮性シートに転写した後に、該フィルムもしくはシートを加熱収縮させる、3)に記載の製造方法。
【0012】
5)物質が金属もしくは半導体であり、鋳型に含浸させる液体が該金属もしくは半導体を腐食させることのできる酸性液体である、パターニングされた金属もしくは半導体を製造する1)に記載の方法。
【0013】
6)鋳型がポリジメチルシロキサンよりなる、1)~5)の何れかに記載の方法。
【0014】
7)鋳型のパターンがレリーフ及び/又はスリットからなるパターンである、1)~5)の何れかに記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ナノピラー構造体の模式図である。
【図2】実施例1で作製した熱収縮前のフィルムAの構造を示すSEM写真である。
【図3】実施例1で作製した熱収縮後のフィルムAの構造を示すSEM写真である。
【図4】実施例1で作製した熱収縮前のフィルムBの構造を示すSEM写真である。
【図5】実施例1で作製した熱収縮後のフィルムBの構造を示すSEM写真である。
【図6】実施例1で作製した熱収縮前のフィルムCの構造を示すSEM写真である。
【図7】実施例1で作製した熱収縮後のフィルムCの構造を示すSEM写真である。
【図8】実施例2で作成した熱収縮後のフィルムDの構造を示すSEM写真である。
【図9】実施例2で作成した熱収縮後のフィルムEの構造を示すSEM写真である。
【図10】実施例2で作成した熱収縮後のフィルムFの構造を示すSEM写真である。
【図11】実施例3で調製した多重網目構造型の水溶性ゲルからなるネガティブモールドの構造を示す光学顕微鏡写真である。
【図12】実施例3で作成したPVAフィルムの構造を示す光学顕微鏡写真である。
【図13】試験例で調製したポリアクリルアミドゲルからなるネガティブモールドの構造を示す光学顕微鏡写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法は、パターニングを行おうとする物質、該物質を腐食もしくは溶解することのできる液体、これを浸漬させた所望のパターンを有する鋳型を用い、該鋳型を物質に押し当てて鋳型のパターンを物質に転写するものである。
【0017】
本発明の方法は、パターニングが要求される物質の全てを対象とすることが可能である。例えば、金、銀、ニッケルなどの金属、シリコンなどの半導体、ポリマー、ガラス(酸化ケイ素)や酸化チタン等の無機酸化物などを対象としてパターニングすることができる。
【0018】
特に本発明の方法は、これまで有効なパターニング法がなかった熱や有機溶媒に耐性の低い非水溶性ポリマーに対して、効果的にパターニングすることができる点で特に有用性が高い。
【0019】
本発明の方法によるパターニングが可能な非水溶性ポリマーの代表的な例を挙げれば、スチレン系ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアルキルシロキサン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレート、ポリブタジエンやポリイソプレン等の共役ジエン系高分子、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン類、ポリアルキルアクリルアミド、ポリカーボネート類、ポリエステルアミド類、ポリアンヒドリド類、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリシアノアクリレート類、ポリエーテルエステル類、ポリ(ジオキサノン)類、ポリ(アルキレンアルキレート)類、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン混合物、またはこれらのコポリマー、スチレン-無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-酢酸ビニルのポリマー及びアシル置換酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン類、これらの混合物及びこれらのコポリマーなどを挙げることができる。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは上記の非水溶性ポリマーから形成されるフィルムもしくはシートを基にして、パターニングされたポリマーフィルムもしくはポリマーシートを製造する方法に関する。以下、本明細書では、薄膜を意味するフィルムと平板を意味するシートをまとめて、単にフィルム等と表記することにする。
【0021】
より微細化されたパターンを有するポリマーフィルム等を形成するためには、ポリカーボネートやポリシクロオレフィンなどのポリマーを原料として1軸あるいは2軸延伸して製造される熱収縮性フィルム等の利用が特に好ましい。鋳型のパターンを熱収縮フィルム等に転写した後、これを加熱処理して収縮させることで、転写後のパターンがさらに縮小された微細なパターンを有するポリマーフィルム等を製造することができる。なお、熱収縮性フィルムは、上記のポリカーボネートやポリシクロオレフィンなどのポリマーを原料とするものには限られず、加熱によって収縮する特性を有するポリマーからなるフィルムであれば、非水溶性ポリマーフィルムであっても水溶性ポリマーフィルムであっても、いずれも利用可能である。
【0022】
パターニングを行おうとする物質を腐食もしくは溶解することのできる液体とは、上記に説明した物質を変質させ、破壊しあるいは溶かすことのできる液体を意味する。例えば金属に対しては希塩酸や希硫酸などの酸性の液体、非水溶性ポリマーに対しては有機溶媒、水溶性ポリマーに対しては水溶液、ガラスに対してはフッ酸溶液などの液体などである。パターニングを行おうとする物質を腐食もしくは溶解することのできる具体的な液体は該物質によってそれぞれ異なるが、その様な液体は物質毎に公知であることから、該液体の選択あるいは決定は物質に応じて簡単に選択することができる。
【0023】
非水溶性ポリマーを例にすれば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアルキルシロキサン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアルキルアクリルアミド、およびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、二硫化炭素などを、上記ポリマーを溶解することのできる有機溶媒(以下、良溶媒と表記する)として使用することができる。
【0024】
本発明では、パターニングしようとする物質を腐食もしくは溶解することのできる液体の該物質への選択的なアプライを、かかる液体を含浸させた鋳型を介して行う。具体的な操作は、任意のパターンを有する鋳型を予め選択した液体に浸漬することで鋳型内部に該液体を含浸させておき、この鋳型をパターニングしようとする物質に押し当てるというものである。
【0025】
ここで用いることのできる鋳型は、パターニングしようとする物質を腐食もしくは溶解することのできる液体には耐性を有し、かつこれを含浸することのできる材質から形成されることが必要である。かかる材質としては、架橋性ポリジメチルシロキサンエラストマー、架橋ポリビニルアルコールゲル、ビスフェノール系架橋樹脂、オレフィン系架橋樹脂、架橋ゴムなどを挙げることができる。中でも架橋性ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーがもっとも好ましい。
【0026】
本発明では、上記の材質から成る鋳型に、任意のパターン、特にレリーフ及び/またはスリットからなるパターンを形成させることが必要である。本発明に言うレリーフとは鋳型の表面に設けられた凹凸を意味し、従ってレリーフからなるパターンとは、固体表面に設けられた凹凸によって描かれる任意の模様をいう。また、本発明に言うスリットとは、鋳型を貫通するように形成された、細長い溝に限られず円、多角形その他の任意の形状を有する空隙部分を意味し、従ってスリットからなるパターンとは、鋳型を貫通するように形成された、細長い溝に限られず円、多角形その他の任意の形状を有する空隙部分によって描かれる任意の模様をいう。なお、レリーフならびにスリットは一つの鋳型に共存していてもよい。
【0027】
鋳型へのパターニングは、従来公知の方法であればいずれも利用することができ、例えばリソグラフィやソフトリソグラフィーその他の等の方法(高分子学会編、「微細加工技術」(基礎編)、2002年、エヌ・ティー・エスなど)、または前述のインプリンティング技術などを使用して、直接鋳型をパターニングすることができる。また、本発明の鋳型は、所望のパターンを有する物質の表面に上記の各材質のプレポリマー(例えばPDMSプレポリマー)を加え、硬化・重合することによってネガティブモールドとして作製してもよい。
【0028】
鋳型へ液体を含浸させるには、鋳型を全部あるいはパターニングしようとする物質と接触する部分を液体に浸漬すればよい。浸浸時間は鋳型の大きさや浸透速度に合わせて適宜調節すればよいが、概ね10秒~10時間程度の範囲内で行うことができる。
【0029】
鋳型をパターニングしようとする物質に押し当てる圧力は、鋳型が物質内に陥入する量(鋳型凸部が物質に陥入していく高さ)を観測しながら調節することが好ましい。この調節によって任意の凹部深さを有するパターンを物質に形成することができる。
【0030】
鋳型を熱収縮性の材料、例えばN-イソプロピルアクリルアミドなどを用いて調製すれば、鋳型にパターニングを行った後に熱処理を行うことで、鋳型のパターンをより微細化することができる。また、水分を含むポリマー、例えばポリアクリルアミドゲル等の水溶性ゲルにパターニングを施したものをアセトン等の非水溶媒に浸漬して、あるいは風乾して当該ゲルに含まれる水を排除してゲルを収縮させることで、鋳型のパターンをより微細化することもできる。例えば、所望のパターンを有する物質の表面にプレポリマーを加え、硬化・重合することによってネガティブモールドを作成する場合において、所望のパターンを有する物質として非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体を採用し、この上から水溶性ゲルのプレポリマー(アクリルアミドなど)を加えてゲル化させた後、ハニカム状多孔質体をクロロホルム等を加えて溶解してポリアクリルアミドゲルからなるネガティブモールドを作成することができる。ここでハニカム状多孔質体とは、膜の垂直方向に向けられた微少な孔(窪みを含む)が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている構造を有する、多孔性の薄膜である(例えば、特許文献として特開平8-311231)。孔は平面方向に存在する周囲の孔と膜の内部で連通していてもよい。この様なハニカム状という規則的な配置で均一な孔径を有する孔が設けられている多孔質性の薄膜は、孔の口径、形状あるいは深さなどがまちまちである不規則な孔を有する通常の多孔質性の薄膜とは全く異なる構造体として理解される。
【0031】
上記の方法によって調製されるポリアクリルアミドゲルからなるネガティブモールドは、ハニカム状多孔質体の孔に相当する突起からなるパターンを有する。このネガティブモールドを50%もしくは70%アセトンに浸漬すると、ゲルに含まれる水分がアセトンに移行し、その結果ネガティブモールド全体が収縮して、突起状のパターンが微細化されることになる。
【0032】
なお、上記の水溶性ゲルを用いてネガティブモールドを作成する場合、ネガティブモールドに対する最初の鋳型となるハニカム状多孔質体等のプレポリマーと接触する側の面を、例えば紫外線-オゾン処理(Yabuら、文献 Colloids and Surfaces A, 284-285, 301-304 (2006))その他の公知の方法によって処理して親水性にすることが好ましい。この様な物質表面を親水性とする方法は、紫外線-オゾン処理の他にもゼラチンコートやポリビニルアルコールコートなどの親水性コーティング、酸素プラズマ、コロナ放電などを挙げることができ、本発明ではいずれの方法も利用可能である。また、水溶性ゲルとしては、ポリアクリルアミドゲルの他に、アガロースゲル、化学架橋PVAゲル、Cu2+で架橋されたポリビニルアルコールゲル、Fe3+で架橋されたポリアクリル酸ゲルなどが利用可能である。また、国際公開第03/093337号パンフレットに記載されている多重網目構造型ゲルも、本発明で利用可能である。この多重網目構造型ゲルは機械的強度に優れており、パターニングを行おうとする物質に対してより高い圧力で押しつけることができる点で有利である。
【0033】
以下に実施例を示し、本発明の詳細を説明する。ただし、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0034】
図1に示す構造(凸部が直径1000nm×高さ(凹凸の高低差)1000nmの円柱で、凸部間隔が1000nm)を有するポリスチレンからなるナノピラー構造体A(3.3mm×3.3mm)を、Chouらの方法(Nature,417,836-838(2002))に従って作製した。
【0035】
直径9cmのシャーレに置いたナノピラー構造体Aの上からダウコーニング社製SILPOT184W/C(PDMS)と架橋触媒を10:1で混合したもの20gをキャストし、200℃で2時間架橋反応を行った後、ナノピラー構造体をベンゼンで溶解して除去し、ネガ型のPDMS製鋳型Aを作製した。この鋳型A全体をベンゼン中に1分間浸漬した後、鋳型Aを取り出してその表面を乾燥させた。
【0036】
10mm×10mmの熱収縮性フィルム(三井化学製、APL8008T、MD×TD1.5倍延伸)の上に上記で作製した鋳型Aを置いて圧縮した。圧縮の強度は鋳型がフィルムに陥入する量を測定しながら制御した。圧縮を1分間保持した後、鋳型Aを剥離してパターン化されたフィルムAを回収した。作製したフィルムAの表面構造を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM、SPI400)を用いて観察をした後、フィルムをホットステージ上で90~95℃まで加熱して熱収縮させ、再び表面構造を観察した。
【0037】
AFMによる構造観察では、熱収縮前(図2)のフィルムAにおいて、凸部頂部の直径1000nm、凹凸の高低差が820nm、凸部の間隔が1000nmのナノピラー構造が観察された。また熱収縮後(図3)のフィルムAにおいて、凸部頂部の直径780nm、凹凸の高低差が750μm、凸部の間隔が690nmのナノピラー構造が観察された。
【0038】
さらに、凸部が直径750nm×高さ750nmの円柱で、凸部の間隔が750nmであるポリスチレンからなるナノピラー構造体B(3.3mm×3.3mm)を作製し、上記と同様の操作を行って、凸部頂部が直径480nm、凹凸の高低差が600μm、凸部の間隔が580nmであるナノピラー構造を有するフィルムB(図4)を作製した。さらにこのフィルムBをホットステージ上で90~95℃まで加熱して熱収縮させ、凸部頂部の直径440nm、凹凸の高低差が530nm、凸部の間隔が500nmのナノピラー構造を有するフィルム(図5)を作製した。
【0039】
また、凸部が直径500nm×高さ500nmの円柱で、凸部の間隔が500nmであるポリスチレンからなるナノピラー構造体C(3.3mm×3.3mm)を作製し、上記と同様の操作を行って、凸部頂部の直径200nmの円柱、凹凸の高低差が160nm、凸部の間隔が400nmであるナノピラー構造を有するフィルムC(図6)を作製した。さらにこのフィルムをホットステージ上で90~95℃まで加熱して熱収縮させ、凸部頂部の直径200nm、凹凸の高低差が130nm、凸部の間隔が240nmのナノピラー構造を有するフィルム(図7)を作製した。
【実施例2】
【0040】
ポリスチレンとCapポリマーを10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(5mg/mL)12ml、5ml及び2mlをそれぞれ9cmのシャーレにキャストし、これを相対湿度70%の空気流中においてクロロホルムを蒸発させて、直径9cmのハニカム状多孔質体D~F(D:孔径8μm、膜厚15μm、E:孔径4.4μm、膜厚10μm、F:孔径1.3μm、膜厚5μm)をそれぞれ作製した。
【0041】
ハニカム状多孔質体の上からダウコーニング社製SILPOT184W/C(PDMS)と架橋触媒を10:1で混合したもの20gをキャストし、減圧して気泡の除去を行った後、200℃で2時間架橋反応を行った。ハニカム状多孔質体をベンゼンで溶解して除去し、ハニカム状多孔質体のネガ型に相当するPDMS製の鋳型D~Fを作製した。この鋳型全体をベンゼン中に1分間浸漬した後、鋳型を取り出してその表面を乾燥させた。
【0042】
10mm×10mmの熱収縮性フィルム(三井化学製、APL8008T、MD×TD1.5倍延伸)の上に上記で作製した各鋳型を置いて圧縮した。圧縮の強度は鋳型がフィルムに陥入する量を測定しながら制御した。圧縮を1分間保持した後、鋳型を剥離して、パターン化されたフィルムD~Fを回収した。作製したフィルムの表面構造を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM、SPI400)を用いて観察をした。
【0043】
フィルム状には、ハニカム状に整列したくぼみが観察された。くぼみ中心間距離はフィルムDが10μm、フィルムEが4.7μm、フィルムFが1.5μmであった。さらに、各フィルムをホットステージ上で90~95℃まで加熱して熱収縮させ、再び表面構造を観察したところ、ハニカム状に整列しているという規則性は維持しつつ、くぼみ中心間距離はフィルムDが6.7μm(くぼみの深さはおよそ250nm、図8)へ、フィルムEが3.0μmへ(図9)、フィルムFが1.0μm(図10)へとそれぞれ変化した。また、熱収縮後の各フィルムには若干のしわが寄っているものの、光の干渉色が明確に観察され、透過性を有していた。
【実施例3】
【0044】
ポリスチレンとCapポリマーを10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(5mg/mL)10mlを9cmのシャーレにキャストし、これを相対湿度70%の空気流中においてクロロホルムを蒸発させて、直径9cmのハニカム状多孔質体G(孔径11μm、膜厚10μm)を作製した。このハニカム状多孔質体の片面を岩崎電子OC-250615-D+Aによって、30分間紫外線-オゾン処理を行った。
【0045】
紫外線-オゾン処理後のハニカム状多孔質体に、25.0重量%のアクリルアミドと23.8重量%の下記式で示されるAWP(東洋合成製)を含む溶液20mLを加え、360nmの紫外線を照射して架橋させ、多重網目構造型の水溶性ゲルを形成させた。
【化1】
JP0004876261B2_000002t.gif

【0046】
架橋後、クロロホルムを加えてハニカム状多孔質体を溶解除去して、多重網目構造型の水溶性ゲルからなるネガティブモールド(20mm×20mm)を得た(図11)。このネガティブモールドは、径が10μm、高さが10μmの円柱に近い形の突起が約10μmの周期でハニカム状に整列したパターンを有していた。
【0047】
15mm×15mmのポリビニルアルコールフィルムを10重量%のポリビニルアルコール水溶液を0.2mLガラス基板上にキャストし、室温で製膜することで作製した。このフィルム上に上記で作製したネガティブモールドを置き、50N/cmの圧力でネガティブモールドをPVAフィルムに押しつけた。圧縮を1分間保持した後、鋳型を剥離して、パターン化されたフィルムGを回収した。作製したフィルムの表面構造を光学顕微鏡を用いて観察をした(図12)。フィルムにはハニカム状に整列したくぼみが観察された。
【試験例】
【0048】
ポリスチレンとCapポリマーを10:1の割合で混合したクロロホルム溶液(5mg/mL)10mlを9cmのシャーレにキャストし、これを相対湿度70%の空気流中においてクロロホルムを蒸発させて、直径9cmのハニカム状多孔質体H(孔径11μm、膜厚10μm)を作製した。このハニカム状多孔質体の片面を岩崎電子OC-250615-D+Aによって、30分間紫外線-オゾン処理を行った。
【0049】
このハニカム状多孔質体に、アクリルアミド、25.0重量%のN,N'-メチレンビスアクリルアミド、過酸化硫化アンモニウムを含む水溶液 20mLを加え、さらにN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンを加えてアクリルアミドを架橋させた。アクリルアミドの濃度は1.0mmol、0.69mmol、0.33mmolの3種類を用意した。架橋後、クロロホルムを加えてハニカム状多孔質体を溶解除去して、ポリアクリルアミドゲルからなるネガティブモールド(8mm×15mm)を得た。このモールドは、径が11μm、高さが10μmの円柱に近い形の突起が約11μmの間隔でハニカム状に整列したパターンを有していた(図13)。
【0050】
ポリアクリルアミドゲルからなるネガティブモールドを脱気しながら2時間乾燥させると、突起の間隔は8.2μmとなった。また65℃に加温して4時間乾燥させると、突起の間隔は4.9μmとなった。さらに65℃に加温して4時間乾燥させたネガティブモールドを水中に2時間及び12時間置くと、突起の間隔はそれぞれ7.0μmと9.3μmとなった。
【0051】
次に、1.0mmol、0.69mmol、0.33mmolの3種類のアクリルアミド濃度からなるネガティブモールドをそれぞれ100%の水、50%アセトン、75%アセトンに2時間漬けたところ、各アクリルアミド濃度からなるネガティブモールドを100%の水に漬けたときの突起の周期を1としたときに、1.0mmolでは0.95/50%アセトン、0.90/75%アセトン、0.69mmolでは0.83/50%アセトン、0.56/75%アセトン、0.33mmolでは0.60/50%アセトン、0.56/75%アセトンであった。
【0052】
また1.0mmol、0.69mmol、0.33mmolの3種類のアクリルアミド濃度からなるネガティブモールドを45℃で30時間乾燥させたところ、乾燥開始前の各ネガティブモールドの突起の周期を1としたとき、1.0mmolでは突起の周期が0.44に、0.69mmolでは突起の周期が0.32に、0.33mmolでは突起の周期が0.23にそれぞれ変化した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の方法は、従来のマイクロコンタクトプリンティング法やナノインプリント技術とは異なる発想に基づくものであり、パターニングされた種々の金属やポリマーを製造することができる。特に、熱収縮性ポリマーフィルムもしくは熱収縮性ポリマーシートを基にして、回折限界を超えたマイクロパターニングを有するポリマーフィルムもしくはポリマーシートを製造することができる。このようなフィルムもしくはシートは、光拡散フィルム等の光学フィルム、その中でも可視光の波長以下の構造が求められるモスアイ型の反射防止膜の製造に利用可能である、また、細胞培養の基板としても利用可能である。
図面
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【図3】
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【図13】
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