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明細書 :過冷却促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4869347号 (P4869347)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月8日(2012.2.8)
発明の名称または考案の名称 過冷却促進剤
国際特許分類 C09K   5/00        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C07H  17/07        (2006.01)
FI C09K 5/00 Z
C09K 3/00 102
C07H 17/07
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2008-524809 (P2008-524809)
出願日 平成19年7月11日(2007.7.11)
国際出願番号 PCT/JP2007/063784
国際公開番号 WO2008/007684
国際公開日 平成20年1月17日(2008.1.17)
優先権出願番号 2006193468
優先日 平成18年7月14日(2006.7.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年8月5日(2009.8.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
発明者または考案者 【氏名】藤川 清三
【氏名】春日 純
【氏名】橋床 泰之
【氏名】荒川 圭太
【氏名】福士 幸治
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】中野 孝一
参考文献・文献 国際公開第2004/074397(WO,A1)
特開昭59-109897(JP,A)
調査した分野 C09K5/00-5/20、
A01N1/02、
C07H17/07、
C09K3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式
【化1】
JP0004869347B2_000007t.gif
(式中、X~Xのうち、少なくとも一つは単糖又はオリゴ糖の還元末端部分のヘミアセタール水酸基の水素原子を除いた糖残基であり、その他は水酸基又は水素原子であり、R~Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、水酸基又はメトキシ基である。)で表されるフラボノイド配糖体から成る過冷却促進剤。
【請求項2】
前記Xが、グルコース、マンノース又はガラクトースの糖残基であり、X、X及びXが、それぞれ同じであっても異なってもよく、水酸基又は水素原子であり、R~Rが、水素原子である請求項1に記載の過冷却促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過冷却促進剤を水又は用途に応じた添加物を含む水溶液に溶解させてなる不凍性液体であって、該不凍性液体中に該過冷却促進剤を0.01g/L以上含む不凍性液体。
【請求項4】
凍害防止剤を単独又は組み合わせて1~40容積%含有する請求項3に記載の不凍性液体。
【請求項5】
生物材料を含み、0~-15℃に冷却された請求項3又は4に記載の不凍性液体。
【請求項6】
凍害防止剤を単独又は組み合わせて20~100容積%含有し、残余が水又は用途に応じた添加物を含む水溶液であるガラス化液に、請求項1又は2に記載の過冷却促進剤を0.01g/L以上含んで成るガラス化液。
【請求項7】
前記水又は用途に応じた添加物を含む水溶液を40容積%以上含有する請求項6に記載のガラス化液。
【請求項8】
生物材料を含み、液体窒素温度に冷却された請求項6又は7に記載のガラス化液。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、フラボノイド配糖体から成る過冷却促進剤、並びにこのフラボノイド配糖体を含有する不凍性液体及びガラス化液に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地に生育する樹木の細胞水が低温で液体状態を保つことが知られている。このような樹木は、木部柔細胞内の水が外界から分離された水滴のため、水の物理的特性により-40℃まで過冷却すると考えられている(非特許文献1)。すなわち、木部柔細胞を取り囲む細胞壁が、細胞外に氷ができても、細胞からの脱水及び細胞外の氷が細胞内に浸入することを防ぐバリアーとして働くために細胞内の水は外界から孤立した水滴として振る舞うために過冷却すると考えられている。
また、越冬植物に含まれるフェノール化合物が凍結防御物質として機能することが示唆されている(非特許文献2)。
また、生殖細胞等を培養するための凍結培地にフラボノイドを用いることや(特許文献1)、内燃機関等の冷却液として用いる不凍液の成分としてフラボノイドを用いることが開示されている(特許文献2)。
なお本願発明の過冷却促進剤であるフラボノイド配糖体は、二次代謝物として非常に多くの種類が樹木を含む植物や生物由来の物質に存在することが知られている(非特許文献3)。
【0003】

【特許文献1】特表2000-500327 (WO97/14785)
【特許文献2】再表WO2004/074397
【非特許文献1】化学と生物 vol.43, No.5, 280-282 (2005)
【非特許文献2】化学と生物 vol.37, No.12, 778-780 (1999)
【非特許文献3】"FLAVONOIDS Chemistry, Biochemistry and Applications" published in 2006 by CRC Press Taylor and Francis Group
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配糖体ではないフェノール物質(フラボノイド)が過冷却活性を有するらしいことは知られていたが(非特許文献2)、フラボノイド配糖体(非特許文献3)が水の過冷却活性を促進するということは知られていなかった。
本発明者は、寒冷地に生育する樹木の細胞水が低温で液体状態を保つメカニズムを研究する過程で、その原因物質を特定する研究を行っていた。その結果、本発明者は、樹木中に存在する過冷却促進物質を特定することに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、自然界で数週間の長期にわたり、-40℃以下まで安定的に過冷却を続ける樹木の木部柔細胞に着目し、樹木の木部から過冷却活性を指標として成分抽出を行った。その結果、これら細胞が安定的に過冷却する原因物質がフラボノイド配糖体であることを明らかにした。さらに、明らかにされた化学構造特性に基づき、類似構造のフラボノイド配糖体にも水溶液の過冷却能力を著しく促進する能力があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記一般式
【化1】
JP0004869347B2_000002t.gif
(式中、X~Xのうち、少なくとも一つは単糖又はオリゴ糖の還元末端部分のヘミアセタール水酸基の水素原子を除いた糖残基であり、その他は水酸基又は水素原子であり、R~Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、水酸基又はメトキシ基である。)で表されるフラボノイド配糖体から成る過冷却促進剤である。
【0006】
また本発明は、この過冷却促進剤を水又は用途に応じた添加物を含む水溶液に溶解させてなる不凍性液体であって、該不凍性液体中に該過冷却促進剤を0.01g/L以上含む不凍性液体である。
更に、本発明は、凍害防止剤を単独又は組み合わせて20~100容積%含有し、残余が水又は用途に応じた添加物を含む水溶液であるガラス化液に、この過冷却促進剤を0.01g/L以上含んで成るガラス化液である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の過冷却促進剤は、生物由来又は合成したフラボノイド配糖体を添加することにより水が過冷却することを可能にするため、低温保存や凍結状態の制御などへ応用することができる。
本発明の過冷却促進剤は、水や水を含む物質の凍結温度を、本来水が凍結する温度より15℃前後低下させることができる。この過冷却促進剤は、バルクの水を低温で長期にわたって安定的に過冷却させることができる。
また、本発明の過冷却促進剤は、水と混合することにより、約-15℃程度で利用できる不凍性液体となり、この不凍性液体中で生物材料等を長期間低温保存することが可能である。
本発明の過冷却促進剤は、水や用途に応じて添加物を含んだ水溶液、又は水を含む物質に溶解させて凍結させて、氷晶の大きさをコントロールする凍結制御剤として使用することができる。当該物質の添加により、過冷却により凍結開始温度が低下するために形成される氷晶の大きさを小さくすることができる。このため当該物質を加えた水溶液を、冷却速度をかえたり、添加物の組成や濃度を変えたりして、凍結することにより、氷の大きさを様々に変える凍結制御剤として使用することができる。
更に、凍害防止剤を高濃度で含むガラス化液に、本発明の過冷却促進剤を添加することにより、ガラス化液の濃度を下げることが可能であり、ガラス化液への浸せきによる毒性を軽減することができ、液体窒素温度などの超低温に於いて効率的にガラス体をもたらすことができ、超低温のガラス体中でこれまでガラス保存が困難であった生物材料等を保存することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の過冷却促進剤であるフラボノイド配糖体は下式で表される。
【化2】
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式中、X~Xのうち、少なくとも一つ、好ましくはXとX又はXとX、より好ましくはXとX、最も好ましくはX、は単糖又はオリゴ糖の還元末端部分のヘミアセタール水酸基の水素原子を除いた糖残基である。天然にはXとXあるいはXとXに糖残基がグルコシド結合したもののみが知られているが、これらを含めて、合成が可能な複数箇所の水酸基(Xなど)がグルコシル化されたものを除外するものではない。
【0009】
なお、ヘミアセタール水酸基は、例えば、下式の単糖や二糖の基本骨格のC1炭素に結合する水酸基をいう。
【化3】
JP0004869347B2_000004t.gif
この単糖として、グルコース、マンノース、ガラクトース、オリゴ糖としてルチノース、ラフィノース等が挙げられるが、糖残基は、好ましくはグルコース、マンノース、ガラクトースの単糖である。
この糖残基以外のX~Xは、水酸基又は水素原子であり、このうち少なくとも一つは水素原子であることが好ましく、Xが水酸基でありXが水素原子であることがより好ましい。
【0010】
~Rは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、水酸基又はメトキシ基をあらわす。
このなかで、Rは好ましくは水素原子又は水酸基、より好ましくは水素原子であり、Rは好ましくは水素原子又はメトキシ基、より好ましくは水素原子であり、R、R、R及びRは好ましくは水素原子である。
【0011】
本発明で用いるフラボノイド配糖体は樹木などのすべての生物体に含まれるため、この生物体や生物由来の物質から抽出してもよいし、また合成してもよい。
この樹木としては、寒冷地に育成する樹木に当該過冷却促進物質が多量に含有されているため適していると考えられる。このような針葉樹として、例えば、カラマツ、ニオイヒバ、イチイ、スギ、ウラジロモミ、トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツ、キタゴヨウ、ストローブマツ、アカマツ、クロマツなど、広葉樹としてシラカンバ、ヤマナラシ、クリ、ナナカマド、ハクウンボク、ミズナラ、ハルニレ、カツラなどが挙げられる。また量の多少を問わなければ、寒冷地以外の地域に育成する樹木にも含まれている。このフラボノイド配糖体は、これら樹種の辺材、心材を含む木部のみならず、樹皮、冬芽、葉などからも抽出される。また、これらの物質は、生きている細胞(柔細胞)内にあるものと考えられるが、細胞外に存在している可能性もある。また、これら物質は安定的で生立木のみならず、枯死木や長期貯蔵された木材からも抽出することができる。
【0012】
本発明の過冷却促進剤は-0.1~-15.0℃の過冷却活性を示す。
なお、本発明において、過冷却活性(又は氷核形成阻害活性ともいう)は、以下の方法で測定したもので表す。氷核活性細菌(Erwinia ananas)の死滅菌体を含む緩衝液に被測定物0.5mg/mLを混合した溶液を用意する。温度コントロールができる銅板上に、この溶液の2μLの液滴を多数載せ、銅板を0.2℃/minで冷却して凍結する液滴数を肉眼的に観察し、50%の液滴が凍結した温度を凍結温度とする。被測定物と氷核活性細菌を含む溶液の凍結温度と、氷核活性細菌と緩衝液のみからなる溶液の凍結温度の差(℃)を過冷却活性とする。
過冷却促進剤(又は過冷却物質ともいう。)とは、低濃度(一般に1%容積又は重量%以下)で水に添加することにより、添加濃度に依存した凝固点降下を遥かに越える過冷却活性をもたらす物質をいう。塩、糖、糖アルコールなどの一般的な物質では凝固点降下温度の2倍程度の過冷却活性の増進を示すが、過冷却促進物質は10倍以上、時には100倍以上の過冷却活性を示す。
【0013】
この本発明のフラボノイド配糖体の過冷却活性は、以下のような他の過冷却物質といわれるものの過冷却活性に比べて優れている。
1)種々植物(桃など)の種子から抽出した未同定の粗抽出物は-2.6~-8.1℃の水の過冷却活性を示す(Caple et al., (1983) Cryoletters, 4, 59-64.)。しかし、この値は、氷核形成物質としては能力の低いヨウ化銀のみを用い、用いた冷却速度も1℃/minと本発明の過冷却促進剤の冷却速度より遙かに速く、一時的な過冷却をし易い条件である。
2)丁子から抽出したオイゲノールとその類似物質が-0.2~-2.5℃の水の過冷却活性を示す(Kawahara and Obata (1996) J. Antibact. Antifung. Agents, 24, 95-100.)。添加濃度は1mg/mLであり、冷却速度も1℃/minと本発明の過冷却促進剤の冷却速度より遙かに速く、一時的な過冷却をし易い条件である。
3)ヒノキチオールとその類似物質は-0.4~-2.1℃の水の過冷却活性を示す(Kawahara et al., (2000) Biosci. Biotechnol. Biochem., 64, 2651-2656.)。添加濃度は10mMであり、冷却速度も1℃/minと本発明の過冷却促進剤の冷却速度より遙かに速く、一時的な過冷却をし易い条件である。
4)細菌から抽出した130kDaのキチン多糖は0~-4.2℃の水の過冷却活性を示す(Yamashita et al., (2002) Biosci. Biotechnol. Biochem., 66,948-954)。添加濃度は50μg/mLであるが、用いた冷却速度は1℃/minと本発明の過冷却促進剤の冷却速度より遙かに速く、一時的な過冷却をし易い条件である。
5)様々な不凍蛋白質が最大-7.8℃の水の過冷却活性を示す(Duman (2002) J. Comp. Physiol., 172, 163-168.)。しかしこの最大の値が得られる添加不凍蛋白質濃度が不明であるとともに、0.5Mという高濃度のクエン酸を添加した時に得られた値である。不凍蛋白質のみでは-1.2℃、過冷却を促進するのみである。
【0014】
本発明の過冷却促進剤は、上記のフラボノイド配糖体から成る。
このフラボノイド配糖体は通常水溶液として用い、通常水に0.01g/L以上、好ましくは0.01~30g/L、より好ましくは0.01~10g/L、更に好ましくは0.1~1.0g/L溶解させて不凍性液体として用いることができる。
この不凍性液体は、通常はこのフラボノイド配糖体を水に溶解させて得られるが、水の代わりに、用途に応じた添加物を含む水溶液を用いてもよい。このような添加物として、例えば、動植物細胞の培地の成分、生物材料の保存液の成分などが挙げられる。水溶液中の添加物の濃度は用途に応じて適宜定めればよい。
【0015】
また、この不凍性液体は、この他の過冷却促進剤や凍害防止剤を含んでもよい。
凍害防止剤を含む場合、凍害防止剤を単独又は組み合わせて1~40容積%、好ましくは1~20容積%含有してもよい。
凍害防止剤とは、生物材料やこれらを浸漬させた水溶液に添加することにより、凍結による傷害を軽減する物質をいう。凍害防止剤といわれる物質はいずれも、濃度依存の凝固点降下をもたらす、氷晶の形成量を軽減する、凍結材料の塩濃度の上昇を軽減する、ガラス化を容易にする、などのうち、一つあるいは複合的な効果を有する。
このような凍害防止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトアミド、DMSO、ホルムアルデヒド、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、プロリン、グルコース、ソルビトール、シュークロース、トレハロース、ポリエチレングリコール、デキストラン10-150、PVP、アルブミン、フィコール、HESなどが挙げられる。
【0016】
このような不凍性液体は、凍害防止剤を全く加えない場合、あるいは凝固点降下にはほとんど影響を与えない濃度(1重量%程度以下)で凍害防止剤などの添加物を加えた場合には、長期間(1~2週間)-15℃付近まで液体状態を保たせることができる。
この不凍性液体中に生物材料(植物や動物の細胞や組織、食用や観賞用等の魚介類、野菜などの植物そのものなど、又はその一部をいう。)を入れて冷却することにより、通常約5℃以下の低温で用いられるが、0℃以下、特に約0~-15℃の温度範囲で凍結を起こさずに、長期低温保存が可能になる。
この不凍性液体は、過冷却により凍結開始温度が下がることにより氷晶の大きさを小さくすることができ、また単独又は凍害防止剤などとの併用により、凍結乾燥により調製をする医薬品や食品などの凍結制御剤として使用できる。
上記物質を含む樹木などの生物材料からの抽出物(粗抽出液等)においても同様の応用が可能である。
【0017】
一方、上記の凍害防止剤を高濃度で含む水溶液は「ガラス化液」と呼ばれ、超低温(例えば、液体窒素温度)においても水は結晶を形成せず、ガラス体(非晶質の氷)になる(新野孝男ら編「植物超低温保存マニュアル」農業生物資源研究所発行 2006年)。
ガラス化液とは上記凍害防止剤を単独又は幾つか組み合わせて20~100容積%、好ましくは40~100容積%含有し、残余が水である溶液をいう。この水として動植物培養液などの溶媒を用いてもよい。
動植物の培養や保存に用いる場合には、水や動植物培養液を30容積%以上、特に40容積%以上混合することが好ましい。現在、最も多く用いられているガラス化液PVS2は、30容積%グリセリン、15容積%エチレングリコール、15容積%DMSO、0.4Mシュークロースを、培地溶液に加えたものである。培地溶液の種類や濃度は培養や保存する材料によって適宜変更する。
本発明においては、このガラス化液に本発明の過冷却促進剤(上記フラボノイド配糖体)を通常0.01g/L以上、好ましくは0.01~30g/L、より好ましくは0.01~10g/L、更に好ましくは0.1~1.0g/L添加する。
このようなガラス体は、ガラス化液の凍結温度以下、例えば?15℃以下、特に?60℃~?273℃の温度範囲、例えば液体窒素温度(77K)で非晶質状態を保たせることができる。
【0018】
ガラス化による凍結保存では、通常予め保存したい材料を室温あるいは0℃以上の温度で、短時間浸漬処理する。この凍結前処理により、材料中の水は高濃度のガラス化液で脱水されると共に、ガラス化液が材料内水分と置換される。このため、これら材料を液体窒素に投入すると材料内外の水は氷晶を形成せずにガラス化する。植物などの生物材料をガラス化液に入れて液体窒素に投入すると、生物材料内外の水はガラス体(非晶質の氷)になり、ガラス状態では凍結による傷害がおこらないため、生物材料を超低温のガラス化液中で凍結保存することができる。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0019】
北海道札幌地区に自生するカツラから枝を採集した。このカツラの枝の木部組織を鉛筆削りで小片化した後、液体窒素で凍結し、乳鉢と乳棒で可能な限り小片に粉砕した。得られた木部組織の粉砕物3.7Kgをメタノール20Lに2週間浸漬した。得られた抽出液を14、000Gで遠心分離し(Hitachi: HIMC CF15R)、上清を回収した。これらを乾燥して、乾燥物93.8gを300mLの水に溶かした。
この粗抽出物の水懸濁液を20℃で14,000Gで遠心分離し、上清を回収した。この上清300mLと酢酸エチル600mLを混合し、分液ロートにて、水可溶部と酢酸エチル可溶部に分け乾燥した。
これらの過冷却活性は以下の方法で測定した。氷核活性細菌(Erwinia ananas)の死滅菌体(和光純薬)を含む緩衝液(50mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)に被測定物0.5mg/mLを混合し、温度コントロールされた銅板上に2μLの液滴を載せ、銅板を0.2℃/minで冷却して凍結する液滴数を肉眼的に観察し、50%の液滴が凍結した温度を凍結温度とした。この凍結温度と上記緩衝液の凍結温度の差(℃)を測定した。水可溶部では-2℃程度の、酢酸エチル可溶部では-4℃程度の過冷却活性が得られた。
【0020】
より高い過冷却活性を示した乾燥した酢酸エチル可溶画分を「ヘキサン・2-プロパノール・水」、「クロロホルム・メタノール・水」を用いて自作のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで30程のフラクションに分けた。このシリカゲルカラムクロマトグラフを図1に示す。次に、各フラクションの物質について、過冷却活性を上記と同様の方法で測定した。その結果、図2に示すように、画分9と10が最大過冷却値を示した。
【0021】
上記で得られた画分9と10を、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Wakosil 5C18HG、溶媒:メタノール:水=1:1、流速1 mL/min)で分析した結果、図3に示すように7つの物質の存在を示すピーク(1~7)が得られた。
これらのピークのうち、過冷却活性を示したのは4,5,6,7のピークのみであり(以下、それぞれ化合物1~4(Cj4~7)と呼ぶ。)、その活性はそれぞれ-1.8℃(化合物1)、-7.7℃(化合物2)、-0.2℃(化合物3)、-2.5℃(化合物4)であった。
【0022】
これら4種の物質について、質量分析装置(JMS-AX500:JEOL)にてnegative-HRFAB-MS分析を行った。これら物質のそれぞれの質量は463.0893(Cj4)、447.0942(Cj5)、477.1038(Cj6)、447.0958(Cj7)であり、分子式はC212012(Cj4)、C212011(Cj5)、C222212(Cj6)、C212011(Cj7)と予想された。
【0023】
更に、これらの物質をアセチル化し、高分解能核磁気共鳴装置(BRUKER:AMX-500)により反応生成物の各種1次元及び2次元NMRスペクトル分析を行った。アセチル化反応は、約10mgの乾燥試料を200μLのメタノールで溶解し、そこに2mLの無水酢酸と1mLのピリジンを加え、70℃で1.5時間処理することで行った。得られたアセチル化物は分取TLCで精製した後、重クロロホルムに溶解し、H-NMR、13C-COM、DEPT、H-H COSY、HMBC、HSQCのNMRスペクトル分析を行った。
【0024】
これらの物質はいずれも250~270nmと300~380nmに吸収ピークを持つ特徴的なUVスペクトルを示したことからフラボノール骨格を持つことが予想された。それぞれのアセチル化物のH-NMRスペクトルを図4~7に示す。
化合物1(Cj4)のアセチル化物のH-NMRスペクトルを化合物4(Cj7)のものと比較すると、化合物1ではアセチル基によるシグナル(δ 1.92~2.45)は8つであり、B環の2'、5'、6'に結合した水素のよるシグナル(δ 7.33、7.93、7.96)が見られた。この結果とHMBC相関から化合物1はケルセチン-3-O-β-グルコシドであった(図4)。
化合物2(Cj5)のアセチル化物のH-NMRスペクトルは、化合物4(Cj7)のものと同様に7つのアセチル基によるシグナル(δ 1.92~2.45)、B環の2'、3'、5'、6'位の水素によるシグナル(δ 7.27、7.84)、芳香環に結合した2つの水素によるシグナルを示した(δ 6.73、7.01)。また、化合物2の酸加水分解をアセチル化して得られた構成糖のアセチル化物のH-NMRスペクトルは、アセチル化したグルコースのH-NMRスペクトルと一致した(図5)。構成糖の1位の水素とアグリコンの7位の炭素との間にHMBC相関が見られたことから化合物2はケンフェロール-7-O-β-グルコシドであった。
【0025】
化合物3(Cj6)のアセチル化物のH-NMRスペクトルを化合物4(Cj7)のものと比較すると、化合物3では芳香環に結合した水素は1つであり(δ 6.79)、メトキシル基によるシグナル(δ 4.01)が現れていた。この結果とHMBC相関から化合物3は8-メトキシケンフェロール-3-O-β-グルコシドであった(図6)。
化合物4(Cj7)のアセチル化物のH-NMRスペクトルは、7つのアセチル基によるシグナル(δ 1.92~2.45)、B環の2'、3'、5'、6'位の水素によるシグナル(δ 7.23、8.04)、芳香環に結合した2つの水素によるシグナルを示した(δ 6.84、7.30)。また、β-グルコース残基の存在も確認された(δ 3.60、3.96、5.04、5.17、5.28、5.53)。グルコースのアノメリック炭素に結合した水素とアグリコンの3位の炭素との間にHMBC相関が見られた。以上の結果から化合物4はケンフェロール-3-O-β-グルコシドであった(図7)。
【0026】
これら質量分析及びNMRスペクトル分析の結果から、これら物質はいずれもフラボノイド配糖体であり、アグリコンは、ケルセチン、ケンフェロール、8-メトキシケンフェロールのいずれかであり、これらアグリコンにグルコースが1個ついた配糖体であると結論された。
【0027】
即ち、抽出された過冷却促進物質は、下式で表されるフラボノイド配糖体であった。式中の番号は化合物の番号を示す。
【化4】
JP0004869347B2_000005t.gif

【0028】
合成例1
本合成例では、化合物5(Chrycin 7-O-β-D-glucopyranoside)を合成した。
クリシン(Chrycin、東京化成工業(株)製)0.51g (2.0mmol), K2CO3 1.38g (10mmol), ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド0.12g (0.4mmol)及びCHCl3 (10ml) をマグネットで攪拌し、室温でテトラ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシル ブロミド(関東化学(株)製)1.61g (3.8mmol)を加えた後、2時間加熱還流した。さらに、上記の臭化物1.00g (2.4mmol)を加え1時間加熱還流を続けた。 反応混合物を2N塩酸20mlと振盪した後、有機層を分離し乾燥(MgSO4)した。減圧濃縮して得られた残部をヘキサン‐エタノールから結晶化し、Chrycin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 1.03g(収率88%)を得た。生成物の分析値を以下に示す。
FAB-MS: m/z 585 (M+H, 57%), 331 (29), 255 (100). FAB-HR-MS: m/z 585.1599 (calc. for C29H28O13+H, 585.1609)
1H NMR (DMSO-d6) δ1.97 (3H, s), 2.02 (9H, s), 4.11 (1H, br d, J=12.4), 4.19 (2H, dd, J=5.3, 12.4), 4.35 (1H, m), 5.01 (1H, t like, J=9.6), 5.10 (1H, dd, J=7.9, 9.6), 5.39 (1H, t like, J=9.6), 5.76 (1H, d, J=7.9), 6.47 (1H, d, J=1.6), 6.84 (1H, d, =1.6), 7.08 (1H, s), 7.55-7.65 (3H, m), 8.09 (2H, d, J=7.9), 12.85 (1H, s, OH).
上記で得たChrycin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 0.23g (0.39mmol)をCH3OH‐Et3N (2:1) 10mlに加え12時間加熱還流した後、濃縮乾固した。得られた粗結晶をヘキサン‐エタノールから結晶化し、目的物0.12g(収率72%)を得た。生成物(化合物5)の分析値を以下に示す。
FAB-MS: m/z 417 (M+H, 15% ), 307 (32), 255 (34), 154 (100). FAB-HR-MS: m/z 417.1180 (calc. for C21H20O9+H, 417.1182)
1H NMR (DMSO-d6) δ3.1-3.6 (5H, m), 3.70 (1H, m), 4.62 (1H, br s, OH), 5.08 (2H, d like, J=6.9, anomeric H, OH), 5.15 (1H, br s, OH), 5.43 (1H, br s, OH), 6.47 (1H, d, J=2.0), 6.87 (1H, d, J=2.0), 7.06 (1H, s), 7.45-7.70 (3H, m), 8.09 (2H, d, J=6.5), 12.72 (1H, br s, OH).
13C NMR (DMSO-d6) δ60.5, 69.5, 73.0, 76.4, 77.1, 94.9, 99.6, 99.7, 105.4, 105.5, 126.4, 129.0, 130.4, 132.1, 156.9, 160.9, 163.0, 163.5, 182.0.
【0029】
合成例2,3
本合成例では化合物6(Apigenin 7-O-β-D-glucopyranoside)及び化合物7(apigenin 4',7-di-O-β-D-glucopyranoside)を合成した。
(1)Apigenin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside及びapigenin 4',7-di-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranosideの合成
既報(J. Chin. Chem. Soc., 48, 201-206 (2001))の方法に従い、ナリンゲニン(Naringin、東京化成工業(株)製)をヨウ素酸化してアピゲニン(Apigenin)を調製した。アピゲニン1.66g (6.1mmol), テトラ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシル ブロミド(関東化学(株)製)3.59g (9.2mmol)及びAg2CO3 2.54g (9.2mmol) をキノリン-ピリジン(1:1) 30mlに加え、室温で1時間攪拌した。さらに、上記の臭化物1.21g (3.1mmol)及びAg2CO3 0.83g (3.0mmol)を追加し8時間反応を続けた。反応混合物にアセトン 50mlに希釈、攪拌後セライト濾過を行った。濾液を減圧濃縮して得られた残渣を酢酸エチル 100mlに再溶解し2N塩酸30mlついで飽和食塩水と振盪した後、有機層を分離し乾燥(MgSO4)した。減圧濃縮して得られた残部を二回シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=40:1及びクロロホルム:酢酸エチル=1:1)に供し、apigenin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 1.00g(収率27%)及びapigenin 4',7-di-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 0.21g(収率4%)を得た。生成物の分析値を以下に示す。
(a)Apigenin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside;
FAB-MS: m/z 601 (M+H, 30% ), 331 (41), 271 (91), 169 (100). FAB-HR-MS: m/z 601.1541 (calc. for C29H28O14+H, 601.1558)
1H NMR (DMSO-d6) δ1.97 (3H, s), 2.02 (9H, s), 4.11 (1, br d, J=12.5), 4.19 (1H, dd, J=5.3, 12.5), 4.33 (1H, m), 5.01 (1H, t like, J=9.7), 5.09 (2H, dd, J=6.9, 9.7), 5.39 (1H, 9.7), 5.74 (1H, d, J=7.9), 6.44 (1H, d, J=2.1), 6.79 (1H, d, J=2.1), 6.89 (1H, s), 6.92 (2H, d, J=8.7), 7.95 (2H, d, J=8.7), 13.02 (1H, s, OH).
(b)Apigenin 4',7-di-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside;
FAB-MS: m/z 931 (M+H, 44% ), 601 (33), 271 (66), 169 (49), 43 (100). FAB-HR-MS: m/z 931.2524 (calc. for C43H46O23+H, 931.2508)
1H NMR (DMSO-d6) δ1.97 (6H, s), 2.01 (18H, s), 4.0-4.25 (4H, m), 4.25-4.37 (2H, m), 4.95-5.15 (4H, m), 5.3-5.5 (2H, m), 5.76 (2H, br d, J=7.9, anomeric H), 6.47 (1H, d, J=2.0), 6.83 (1H, d, J=2.0), 7.05 (1H, s), 7.17 (2H, d, J=8.9), 8.10 (2H, d, J=8.9), 12.91 (1H, s, OH).
【0030】
(2)化合物6(Apigenin 7-O-β-D-glucopyranoside)及び化合物7(apigenin 4',7-di-O-β-D-glucopyranoside)の合成
上記で得たApigenin 7-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 0.21g (0.35mmol)をCH3OH‐Et3N (2:1) 10mlに加え12時間加熱還流した後、濃縮乾固した。得られた粗結晶をメタノールから結晶化し、目的物0.11g(収率73%)を得た。
同様の反応により、上記で得たapigenin 4',7-di-O-β-D-tetra-O-acetylglucopyranoside 0.17gからapigenin 4',7-di-O-β-D-glucopyranoside 78mg (71%)を得た。生成物の分析値を以下に示す。
(c)化合物6(Apigenin 7-O-β-D-glucopyranoside)
FAB-MS: m/z 433 (M+H+, 9%), 241 (96), 185(100).
m/z 431 (M-H, 7% ), 279 (20), 269 (24), 148 (100).
FAB-HR-MS: m/z 431.0993 (calc. for C21H20O10-H, 431.0978)
MS (FAB): m/z 433 (M+H+), 185, 150, 93, 75, 57, 45.
1H NMR (DMSO-d6) δ3.0-3.6 (5H, m), 3.70 (1H, dd, J=4.8, 9.4), 4.60 (1H, m, OH), 5.08 (2H, d like, J=5.1, anomeric H, OH), 5.13 (1H, d, J=4.5, OH), 5.39 (1H, d, J=4.5, OH), 6.43 (1H, d, J=2.1), 6.82 (1H, d, J=2.1), 6.89 (1H, s), 6.93 (2H, d, J=8.8), 7.95 (2H, d, J=8.8), 10.40 (1H, br s, OH), 12.95 (1H, s, OH).
13C NMR (DMSO-d6) δ60.6, 69.5, 73.0, 76.4, 77.1, 94.7, 99.4, 99.8, 103.0, 105.2, 115.9, 120.9, 128.5, 156.7, 160.9, 161.2, 162.7, 164.0, 181.8.
(d)化合物7(apigenin 4',7-di-O-β-D-glucopyranoside)
FAB-MS: m/z 595 (M+H, 0.6% ), 271 (4), 185 (56), 93 (100). FAB-HR-MS: m/z 595.1688 (calc. for C27H30O15+H, 595.1663)
1H NMR (DMSO-d6) δ3.1-3.6 (10H, m), 3.70 (2H, m), 4.55-4.65 (2H, m, OH), 5.0-5.1 (4H, m, anomeric H x2, OH x2), 5.14 (2H, d like, J=4.0, OH), 5.35-5.45 (2H, m, OH), 6.44 (1H, d, J=2.1), 6.86 (1H, d, J=2.1), 6.99 (1H, s), 6.19 (2H, d, J=8.9), 8.06 (2H, d, J=8.9), 12.88 (1H, s, OH).
13C NMR (DMSO-d6) δ60.55, 60.60, 69.5, 69.6, 73.0, 73.1, 76.4, 76.5, 77.1, 94.8, 99.5, 99.7, 104.0, 105.3, 116.5, 123.5, 128.1, 156.8, 160.2, 160.9, 162.8, 163.4, 181.8.
【0031】
合成例4
本合成例では化合物8(ロイホリン(Rhoifolin)、Apigenin 7-O-β-neohesperidoside)を合成した。
ナリンゲニン(Naringin)二水和物(東京化成工業(株)製)1.23g (2.0mmol)及びヨウ素 0.51g (2.0mmol)をピリジン(5ml)に加え、攪拌下9時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮した。得られた残部を含水エタノールから結晶化し、目的物0.47g(収率41%)を得た。生成物の分析値を以下に示す。
FAB-MS: m/z 579 (M+H, 10% ), 277 (57), 241 (63), 207 (72), 185 (100). FAB-HR-MS: m/z 579.1712 (calc. for C27H30O14+H, 579.1714)
1H NMR (DMSO-d6) δ1.19 (3H, d, J=6.1), 3.1-3.9 (9H, m), 4.47 (1H, d, J=4.4, OH), 4.6-4.75 (3H, m, OH x3), 5.12 (1H, s, anomeric H), 5.16 (1H, d, J=4.4, OH), 5.22 (H, d, J=6.6, anomeric H), 5.34 (1H, d, J=4.4, OH), 6.36 (1H, br s), 6.78 (1H, br s), 6.86 (1H, s), 6.93 (2H, d, J=8.6), 7.93 (2H, d, J=8.6), 10.40 (1H, s, OH), 12.96 (1H, s, OH).
13C NMR (DMSO-d6) δ18.1, 60.4, 68.3, 69.6, 70.35, 70.43, 71.8, 76.2, 77.0, 77.1, 94.4, 97.7, 99.2, 100.4, 103.1, 105.3, 115.9, 120.9, 128.4, 156.8, 160.9, 161.2, 162.3, 164.0, 181.7.
【実施例2】
【0032】
合成例1~4で合成したフラボノイド配糖体(下式の化合物5~8、式中の番号は化合物の番号を示す。)の過冷却活性を、実施例1と同様の方法で測定した。但し、被測定物の濃度は0.1mg/mLとした。
【化5】
JP0004869347B2_000006t.gif
その結果、化合物5(Chricin-7-0-D-glucopyranoside)の過冷却活性は-4.5℃、化合物6(apigenin 7-0-D-glucopyranoside)の過冷却活性は-12.0℃、化合物7(apigenin 4',7-di-0-D-glucopyranoside)の過冷却活性は-4.9℃、化合物8(rhoifolin)の過冷却活性は-1.8℃であった。
【実施例3】
【0033】
バッファー液(UW液、100mM lactobionic acid, 25mM KH2PO4, 5mM MgSO4, 30mM raffinose, 2.5mM adenosine, 3mM GSH, 1mM allopurinol, 0.25mg/mL streptomycin, 10UI/mL penicillin)に0.01重量%ケンフェロール-7-0-グルコシド(化合物2(Cj5)、Extrasynthese社製)と1容積%DMSO(和光純薬工業製、特級)を加えて保存液とした。DMSOはケンフェロール-7-0-グルコシドの融解性を高めるために使用したが、4℃保存試料においても生存率への影響は認められなかった(図8)。
また比較のため、ケンフェロール-7-O-グルコシドとDMSOを加えない混合液(UW液)も用意した。
ブタ肝臓5百万細胞/mLを上記保存液0.5ccに浸漬して、-5℃及び-8℃で過冷却させて、1,4,7日間保存したときの、細胞の生存率をトリファンブルー染色(GIBCO製)により評価した。
結果を図8に示す。ケンフェロール-7-0-グルコシドによる過冷却による低温保存により、動物細胞の長期間生存率の保持が可能であることが分かる。
【実施例4】
【0034】
ガラス化液としてPVS2液の75%希釈液(22.5容積%グリセリン、11.25容積%エチレングリコール、11.25容積%DMSO、0.4Mシュークロース、残余はMS培地(Murashige & Skoogの培地、DUCHEFA BIOCHEMIE BV製))を用い、これに0.05重量%のケンフェロール-7-O-グルコシド(化合物2、Extrasynthese社製)を加えた(以下「75%ガラス化液」という。)。クランベリーの茎頂はPVS2液中では、室温での浸積により処理時間とともに化学毒性で著しく生存率が下がるため、上記のようにガラス化液成分を75%に減らした混合液を用いた。
比較のため、ケンフェロール-7-O-グルコシドを加えないこの混合液も用意した。
クランベリー(北海道大学農学研究院で継代培養したもの)から茎頂(芽)を取り出し、これを室温で上記混合液に浸漬した。
ガラス化液の濃度を下げたことにより、室温での浸漬時間(loading time)に対する茎頂の生存率は、徐々に下がるが比較的高い生存率を示している(図9A及びB対照区)。
一方、室温で一定時間(loading time)ケンフェロール-7-O-グルコシドを含む75%ガラス化液に浸漬した後、液体窒素に投入して一晩凍結し、その後室温で融解した後の生存率を図9Aの凍結区に示す。同様にケンフェロール-7-O-グルコシドを含まない75%ガラス化液に浸漬した後、液体窒素に投入した後の生存率を図9Bの凍結区に示す。
ケンフェロール-7-O-グルコシドを混合しないガラス化液を用いて凍結した場合には、凍結による傷害が著しい(図9B凍結区)。
しかし、ガラス化液にケンフェロール-7-O-グルコシドを加えることにより、凍結による傷害が著しく減少し(図9A凍結区)、超低温保存が可能であることが分かる。
クランベリーの茎頂などの生物材料は、通常のガラス化液の化学毒性のためにこれまでガラス化保存が不可能であった。しかし、本願発明の過冷却促進剤をガラス化液に添加することにより、化学毒性の影響を抑える程度にガラス化液の濃度を下げてもガラス化液として十分機能することが可能になり、生物材料が高濃度のガラス化液の毒性及び凍結により損傷されずに超低温での凍結保存が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】カツラの抽出物の酢酸エチル可溶画分のシリカゲルカラムクロマトグラフを示す図である。
【図2】シリカゲルカラムクロマトグラフ画分の過冷却活性を示す図である。横軸は、液滴を載せた銅板の温度を示し、縦軸は凍結した液滴の割合を示す。
【図3】上記画分9と10を併せた画分の高速液体クロマトグラフを示す図である。
【図4】化合物1のアセチル化物のH-NMRスペクトルを示す。
【図5】化合物2のアセチル化物のH-NMRスペクトルを示す。
【図6】化合物3のアセチル化物のH-NMRスペクトルを示す。
【図7】化合物4のアセチル化物の1H-NMRスペクトルを示す。
【図8】ブタ肝臓小片をケンフェロール-7-0-グルコシド(K7G)を含む低温(-5℃及び-8℃)の保存液中で過冷却状態で保存した後の細胞の生存率を示す図である。横軸は保存期間(日数)を示し、縦軸は生存率(%)を示す。
【図9】クランベリーの茎頂(芽)を、室温で75%ガラス化液に一定時間浸漬した後の生存率(対照区)と、その後液体窒素に浸してから室温に融解した後の生存率(凍結区)を示す図である。Aはケンフェロール-7-0-グルコシドを含むガラス化液を用い、Bはケンフェロール-7-0-グルコシドを含まないガラス化液を用いた場合を示す。横軸は浸漬時間(分)を示し、縦軸は生存率(%)を示す。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
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【図5】
3
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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