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明細書 :衝突励起型EL用蛍光体、衝突励起型EL用蛍光体薄膜の製造方法、薄膜EL素子、薄膜ELディスプレイ及び薄膜ELランプ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283166号 (P5283166)
公開番号 特開2009-256573 (P2009-256573A)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成21年11月5日(2009.11.5)
発明の名称または考案の名称 衝突励起型EL用蛍光体、衝突励起型EL用蛍光体薄膜の製造方法、薄膜EL素子、薄膜ELディスプレイ及び薄膜ELランプ
国際特許分類 C09K  11/78        (2006.01)
C09K  11/00        (2006.01)
H05B  33/14        (2006.01)
FI C09K 11/78 CPB
C09K 11/00 F
H05B 33/14 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 7
出願番号 特願2008-222217 (P2008-222217)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
優先権出願番号 2008082126
優先日 平成20年3月26日(2008.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月4日(2011.8.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】南 内嗣
【氏名】宮田 俊弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】馬籠 朋広
参考文献・文献 特開2003-303690(JP,A)
特開平08-138866(JP,A)
特開2007-157501(JP,A)
特開2002-114974(JP,A)
青色発光Bi付活La2O3ベース多元系酸化物蛍光体薄膜EL素子の作製,映像情報メディア学会技術報告,2008年 1月24日,Vol.32, No.4, p.1-4
Bi-Activated Phosphors Using Various Oxide Host Materials for Thin-Film EL Devices,IDW'07 Proceedings of The 14th International Display Workshops,2007年12月 6日,Vol.2, p.937-940
調査した分野 C09K 11/78
C09K 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
化ランタン(La)からなる母体材料に、付活剤としてビスマス(Bi)を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体。
【請求項2】
活剤としてのビスマス(Bi)をLaに対して0.1~10原子%含有することを特徴とする請求項1に記載の衝突励起型EL用蛍光体。
【請求項3】
フォトルミネッセンススペクトルのピーク波長が450~500nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の衝突励起型EL用蛍光体。
【請求項4】
フォトルミネッセンススペクトルの半値幅が100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の衝突励起型EL用蛍光体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の衝突励起型EL用蛍光体を基体上に薄膜として形成した後、不活性ガスもしくは弱酸化性ガス雰囲気中で1050℃以下で熱処理することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体薄膜の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の衝突励起型EL用蛍光体薄膜を発光層として使用することを特徴とする薄膜EL素子。
【請求項7】
前記発光層の片面もしくは両面に励起効率の向上を目的としてキャリア加速層が挿入されている構造であることを特徴とする請求項6に記載の薄膜EL素子。
【請求項8】
記キャリア加速層が硫化亜鉛(ZnS)であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜EL素子。
【請求項9】
絶縁性の基体と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の衝突励起型EL用蛍光体を用いて前記基体の上に形成された発光層と、
前記発光層の上に形成された保護層と、
を備える薄膜EL素子。
【請求項10】
前記保護層は、硫化亜鉛(ZnS)を含むことを特徴とする請求項に記載の薄膜EL素子。
【請求項11】
1kHz正弦波交流電圧を前記発光層に印加した場合のエレクトロルミネッセンススペクトルのピーク波長が450~500nmの範囲であることを特徴とする請求項9または10に記載の薄膜EL素子。
【請求項12】
エレクトロルミネッセンススペクトルの半値幅が100nm以下であることを特徴とする請求項11に記載の薄膜EL素子。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれか1項に記載の薄膜EL素子を用いる薄膜ELディスプレイ。
【請求項14】
請求項6乃至12のいずれか1項に記載の薄膜EL素子を用いる薄膜ELランプ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子に好適な蛍光体及びエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衝突励起型薄膜エレクトロルミネッセンス素子(以下薄膜EL素子と呼ぶ)用蛍光体としては、古くから硫化亜鉛(ZnS)を中心とする硫化物が多用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の硫化物系蛍光体は化学的に不安定であり、特に水分に対して極めて不安定であることから薄膜EL素子の作製時において、水分を完全に除去するための特別な封止処理を施さなければならず、それが素子の作製コストを押し上げるという致命的な欠点がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、化学的に極めて安定な化合物もしくは複合酸化物を母体材料とする新規なフルカラーの発光が実現できる衝突励起型EL用蛍光体、該蛍光体薄膜の製造方法、該蛍光体薄膜を発光層に用いる薄膜EL素子及び該薄膜EL素子を用いる屁句膜ELディスプレイ、ELランプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の第1の態様は、構成元素として少なくともランタン(La)及び酸素(O)を含む化合物もしくは複合酸化物からなる母体材料に、付活剤として少なくとも1種類以上の金属元素を含有することを特徴とする衝突励起型エレクトロルミネッセンス(以降ではELと略記する)用蛍光体にある。
【0006】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、LaNbOもしくはLaNbOを含む複合酸化物からなる母体材料に付活剤として少なくとも1種類以上の金属元素を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0007】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、酸化ランタン(La)からなる母体材料に付活剤として少なくとも1種類以上の金属元素を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0008】
本発明の第4の態様は、第2または3の態様において、Laをガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)もしくはスカンジウム(Sc)の中の少なくとも1種類以上で置換した化合物もしくは複合酸化物からなる母体材料に付活剤として少なくとも1種類以上の金属元素を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0009】
本発明の第5の態様は、第1~4の態様において、付活剤としてビスマス(Bi)を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0010】
本発明の第6の態様は、第1~5の態様において、付活剤としてBiと遷移金属元素及び希土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0011】
本発明の第7の態様は、第1~5の態様において、付活剤としての金属元素をLaに対して0.1~10原子%含有することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体にある。
【0012】
本発明の第8の態様は、第1~7の態様において、衝突励起型EL用蛍光体を任意の成膜方法を用いて任意の基体上に薄膜として形成した後、不活性ガスもしくは弱酸化性ガス雰囲気中で1050℃以下で熱処理することを特徴とする衝突励起型EL用蛍光体薄膜の製造方法にある。
【0013】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、衝突励起型EL用蛍光体薄膜を発光層として使用することを特徴とする薄膜EL素子にある。
【0014】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、薄膜EL素子の発光層の片面もしくは両面に励起効率の向上を目的としてキャリア加速層が積層されている、あるいは、挿入されている構造であることを特徴とする薄膜EL素子にある。
【0015】
本発明の第11の態様は、第10の態様において、キャリア加速層が硫化亜鉛(ZnS)であることを特徴とする薄膜EL素子にある。
【0016】
本発明の第12の態様は、絶縁性の基体と、第1~7の態様の衝突励起型EL用蛍光体を用いて基体の上に形成された発光層と、発光層の上に形成された保護層と、を備える薄膜EL素子にある。
本発明の第13の態様は、第12の態様において、保護層は、硫化亜鉛(ZnS)を含むことを特徴とする薄膜EL素子にある。
本発明の第14の態様は、第9~13の態様において、薄膜EL素子を用いる薄膜ELディスプレイにある。
【0017】
本発明の第15の態様は、第9~13の態様において、薄膜EL素子を用いる薄膜ELランプにある。
【0018】
本発明では、該衝突励起型EL用薄膜蛍光体を不活性ガス雰囲気中でのスパッタリング法、化学気相結晶成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法、活性化反応性蒸着(ARE)法、クラスタイオンビーム(ICB)法、イオンビームスパッタ(IBS)法、原子層エピタキシャル(ALE)成長法、分子線エピタキシャル成長(MBE)法、ガスソースMBE(またはCBE)法、エレクトロンサイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを利用する結晶成長法等公知の薄膜堆積技術を用いて作製し、不活性ガスまたは弱酸化性ガス雰囲気中で、700~1050℃、好ましくは900~1000℃程度で熱処理を施し、良好な多結晶膜を形成することにより、衝突励起型EL素子用発光層としての十分な機能を付与することが可能になり、十分実用に耐える輝度を実現できることを特徴とする。また、該衝突励起型EL用薄膜蛍光体の化学的な安定性をいかして、従来の湿式の化学的成膜方法、例えば溶液塗布法あるいはゾル・ゲル法を用いる成膜法も有効である。
【0019】
本発明による該Bi添加酸化ランタン系酸化物蛍光体薄膜を700~1050℃、好ましくは900~1000℃程度の不活性ガス雰囲気中で熱処理を施す製造方法を駆使することにより作製した薄膜EL素子において青色発光が実現できた。また、キャリア加速層として該Bi添加酸化ランタン系酸化物蛍光体薄膜上に硫化亜鉛(ZnS)薄膜を積層して作製した薄膜EL素子において青色発光の輝度を大幅に向上させることを実現した。
【0020】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明者らは、発光中心材料として種々の金属元素を添加した酸化物蛍光体薄膜の製造方法ならびに作製条件等について様々な検討を重ねた結果、Laと酸素を含む化合物及び複合酸化物を母体材料とし、発光中心材料としてBiを添加して成膜した該蛍光体薄膜を不活性ガスもしくは弱酸化性雰囲気中で熱処理を施して高品質の多結晶酸化ランタン系蛍光体薄膜を作製することにより、青色発光を実現できる作用効果を持つ新しい該衝突励起型EL用薄膜蛍光体ならびに該蛍光体薄膜を発光層に用いる薄膜EL素子を発明した。また、キャリア加速層として該Bi添加酸化ランタン系酸化物蛍光体薄膜上に硫化亜鉛(ZnS)薄膜を積層して作製した薄膜EL素子において青色発光の輝度を大幅に向上させることが可能であり、EL素子の高輝度化に対して極めて有利であるという作用効果がある。また、Biに加えて他の複数の発光中心を共添加することにより、発光スペクトルを変化させる作用効果も期待できる。
【0022】
以下、本発明の実施形態を実施例により説明するがあくまで例示であり本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
酸化ランタン(La)粉末に発光中心材料として酸化ビスマス(Bi)粉末をLaに対して、Biが1.0原子%含有するように十分混合した後、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中にて1000℃で1時間焼成することにより、Bi添加酸化ランタン蛍光体粉末を作製した。該酸化物蛍光体粉末を用いてスパッタリングターゲットを作製し、焼結チタン酸バリウム(BaTiO)セラミック基体兼絶縁体層上に、アルゴン(Ar)ガス中、ガス圧力6Pa、スパッタ投入電力100W、基体温度275℃、基体-ターゲット間距離25mmの条件下でBi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層を形成した。その後、Arガス雰囲気中において、1000℃で1時間のアニール処理を行った。
【0024】
図1に該蛍光体薄膜発光層のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを示す。同図に示すように、約450nmにピークを有する強い青色PLを示した。
【0025】
そして該発光層薄膜上にアルミニウム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、背面には金属Al電極を形成しEL素子を作製した。該EL素子に1kHz正弦波交流電圧を加えたところ、図2に示すような、波長約450nm及び約490nmにピークを有する青色ELを実現できた。図3に該EL素子の1kHz正弦波交流電圧駆動時の典型的な輝度(L)-印加電圧(V)特性を示す。同図に示すように印加電圧600Vにおいて約1.7cd/m2の青色発光を実現できた。これにより、該Bi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層がEL素子用発光層薄膜として十分機能した。
【0026】
(実施例2)
酸化ランタン(La)粉末に発光中心材料として酸化ビスマス(Bi)粉末をLaに対して、Biが1.0原子%含有するように十分混合した後、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中にて1000℃で1時間焼成することにより、Bi添加酸化ランタン蛍光体粉末を作製した。該酸化物蛍光体粉末を用いてスパッタリングターゲットを作製し、焼結チタン酸バリウム(BaTiO)セラミック基体兼絶縁体層上に、アルゴン(Ar)ガス中、ガス圧力6Pa、スパッタ投入電力100W、基体温度275℃、基体-ターゲット間距離25mmの条件下でBi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層を形成した。その後、Arガス雰囲気中において、1000℃で1時間のアニール処理を行った。その後、硫化亜鉛(ZnS)粉末を用いてスパッタリングターゲットを作製し、Bi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層上にZnS薄膜を成膜した。成膜後、Ar雰囲気中500℃で熱処理を施しキャリア加速層としての機能を付与した。
【0027】
そして該ZnS薄膜上にアルミニウム添加酸化亜鉛(ZnO:Al)透明電極を、背面には金属Al電極を形成しEL素子を作製した。図4に該EL素子の1kHz正弦波交流電圧駆動時の典型的な輝度(L)-印加電圧(V)特性を示す。同図に示すように印加電圧600Vにおいて約23cd/mの高輝度青色発光を実現できた。キャリア加速層としてのZnS薄膜をBi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層上に形成することにより、輝度の大幅な向上を実現できた。
【0028】
(剥離の有無)
本発明者らは、雰囲気中の不純物から発光層を保護する保護層の有無により、基板と発光層の剥離の傾向に違いがあることを見いだした。つまり、不純物の透過を抑制、遮断する保護層の有無により素子の信頼性や安定性に違いが生じ得ることを以下の検討結果から見いだした。具体的には、光を透過させる半導体物質である前述のZnS薄膜が形成されているEL素子およびZnS薄膜が形成されていないEL素子における、基板と発光層との剥離の有無について検討した。
【0029】
ZnS薄膜がBi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層上に形成されていない場合、空気中での数日程度の放置によりいくつかのEL素子において基板から発光層が剥離するという現象が見られた。一方、実施例2に示すようなBi添加酸化ランタン蛍光体薄膜発光層上にZnS薄膜を成膜した場合、空気中での数日程度の放置では基板と発光層との間の剥離は生じなかった。このような差が生じた要因としては、ZnS薄膜によってEL素子内部への空気中の水分等の侵入が遮断され、基板と発光層との界面に到達する水分等の量が抑制されたためと考えられる。つまり、ZnS薄膜は雰囲気中の不純物の侵入から発光層等を保護する保護層として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】La:Bi薄膜のPLスペクトルを示すグラフである。
【図2】La:Bi薄膜EL素子のELスペクトルを示すグラフである。
【図3】La:Bi薄膜EL素子の輝度-印加電圧特性を示すグラフである。
【図4】ZnS/La:Bi薄膜EL素子の輝度-印加電圧特性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3