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明細書 :コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431713号 (P4431713)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
発明の名称または考案の名称 コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液
国際特許分類 C07D 491/22        (2006.01)
A61K  31/4745      (2006.01)
A61K  36/24        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07D 491/22
A61K 31/4745
A61K 35/78 P
A23L 1/30 B
A61P 3/10
A61P 43/00 111
A61P 43/00 105
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2008-503846 (P2008-503846)
出願日 平成19年3月5日(2007.3.5)
国際出願番号 PCT/JP2007/054195
国際公開番号 WO2007/102467
国際公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
優先権出願番号 2006060533
優先日 平成18年3月7日(2006.3.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年9月22日(2008.9.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】梅澤 一夫
【氏名】藤井 幹夫
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000176、【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
審査官 【審査官】天野 貴子
参考文献・文献 国際公開第2005/099485(WO,A1)
国際公開第2004/099215(WO,A1)
国際公開第2004/024070(WO,A1)
特開2003-171294(JP,A)
特開2000-226330(JP,A)
特開平10-045763(JP,A)
特開平09-067377(JP,A)
国際公開第2004/050058(WO,A1)
岡野定輔 編,新・薬剤学総論,日本,南江堂,1987年 4月10日,改訂第3版,p.177-178,257-260
松本光雄他,薬剤学マニュアル,日本,南山堂,1989年 3月20日,第1版,p.29
OGATA, T. et al.,Diabetes,2004年10月,Vol.53,p.2596-2602
UMEZAWA, K. et al.,Biomedicine & Pharmacotherapy,2003年,Vol.57,p.341-350
KAM, T.-S. et al.,Journal of Natural Products,1993年11月,Vol.56/No.11,p.1865-1871
調査した分野 C07D 491/22
A61K 31/4745
A61K 36/24
A23L 1/30
A61P
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/
BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造する製造方法であって、
コノフィリン及び/又はコノフィリジンを含有するpH4以下の酸性水溶液に、ペクチン及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを溶解させる工程を包含することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により得られたペクチン及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを含有する、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの食品組成物又は医薬組成物製造用の水溶液。
【請求項3】
コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製方法であって、
pH4以下の酸性水溶液で抽出された、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を中和する中和工程と、
前記中和工程により中和した前記抽出物を分子量50000以下で分画する分画工程と、
前記分画工程により得られる高分子量画分を回収する回収工程と、
を含むことを特徴とする精製方法。
【請求項4】
前記植物がタベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)であることを特徴とする請求項3に記載の精製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コノフィリン及び/若しくはコノフィリジンの水溶液又は精製方法、前記水溶液の製造方法、食品組成物又は医薬組成物に有用なコノフィリン及び/若しくはコノフィリジンを含有する水溶性組成物又はその製造方法、前記水溶性組成物を含有する食品組成物又は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病には1型と2型があり、1型は膵β細胞の破壊で若年から発病し、2型は生活習慣病として高年齢層に多い。いずれの場合も糖尿病は一旦発症すると、食事療法、運動療法及び降血糖剤(経口剤またはインスリン注射)投与等による対症療法を生涯にわたって続けなければならず、抜本的な治療法が存在しない疾病であり、今後ますますターゲット人口が増加すると考えられている。
【0003】
糖尿病の発症前には、インスリンの分泌不全やインスリン作用の低下(インスリン抵抗性)がしばしば見出され、発症前の段階から適切なインスリン産生能を維持することが疾病の発症抑制に特に重要である。しかしながら、医薬品においては、糖尿病の発症に伴う高血糖を抑制し、合併症の発症原因を除去することに主眼が置かれており、糖尿病の根本原因を取り除くような治療法は確立されていない。また、糖尿病予防やリスク低減を狙った健康食品も多数市場に存在しているが、有している機能は食後の高血糖状態を抑制するものであることから、抜本的な発症原因の除去にはつながらないものである。
【0004】
インスリン産生のβ細胞を再生させることは、抜本的な糖尿病の治療及び予防作用となりうるが、β細胞の再生手段として現在、研究成果が出ているものは、臓器又は細胞の移植、または遺伝子治療を手段として用いるものであり、これらは臓器移植手術や生体内高分子(蛋白質)の注射等に頼らざるを得ず、患者に対して多大な負担を強いることになり、QOL(quality of life)を著しく低下させるものであることから、経口投与により臓器、特に膵β細胞の再生を活性化することができる組成物が望まれていた。
【0005】
従来、コノフィリンやコノフィリジンなどの物質(Anticancer Res. 14: 2413-2418, 1994 ; J. Nat. Prod. 56: 1865-1871, 1993)が、膵β細胞の再生を活性化することが知られている(Biomed. Pharmacol. 57, 341-350, 2003)。また、コノフィリンは新生児糖尿病モデル動物の腹腔内に投与することにより、血糖値の上昇を有意に抑制する作用を有することが知られている(Diabetes 53, 2596-2602, 2004)。
【0006】
さらに、コノフィリンは、膵臓由来の非腫瘍細胞のインスリンの生成能や分泌能の増加、インスリンの欠乏が関与する疾患の予防/治療、血糖値の低下、膵臓由来の非腫瘍細胞からインスリン生成細胞への分化誘導などに有用であるとされている(国際公開第04/099215号パンフレット)。また、コノフィリンを生産する植物の葉やその葉の乾燥物、及び、それらの抽出物などは、AR42J細胞をインスリン生成細胞へと分化誘導したり、血糖値を低下したりすることから、糖尿病の予防や改善、血糖値の低下などの健康食品として有用であるとされている(国際公開第05/099485号パンフレット)。
【0007】
しかしながら、これらの物質は水に難溶性であるため有機溶媒で抽出されており、経口投与に適したコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液、前記水溶液からコノフィリン及び/又はコノフィリジンを精製する方法、前記水溶液の製造方法、食品組成物又は医薬組成物に有用なコノフィリン及び/若しくはコノフィリジンを含有する水溶性組成物又はその製造方法、並びに、前記水溶性組成物を含有する食品組成物又は医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、使用形態を変更しやすい、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を得るために鋭意努力した結果、タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)を酸性水溶液で抽出したり、その抽出物を中和したりすることにより、コノフィリンやコノフィリジンの水溶液を製造できることを見出した。特に、一旦pH4以下の酸性水溶液で処理することにより、従来では製造できなかった、2μg/ml以上の濃度で溶解したコノフィリン又はコノフィリジンの水溶液を製造できることを明らかにした。
【0010】
しかしながら、部分精製されたコノフィリン及び/又はコノフィリジンは、酸性水溶液には溶解するが、中性に戻すとほとんどが沈殿した。本発明者らは、酸性水溶液で抽出された前記抽出物を中和する前に分子量10000で分画し、低分子量画分を中和すると、ほとんどのコノフィリン及び/又はコノフィリジンが沈殿するが、上記粉砕物を酸性水溶液で抽出した抽出物を中和した後に分子量50000以下で分画すると、高分子量画分にほとんどのコノフィリン及び/又はコノフィリジンが残存することを見出した。このことは、コノフィリンやコノフィリジンの溶解には、タベルネモンタナ・ディヴァリカタの乾燥葉に含まれる高分子物質が関与していることを示唆し、本発明者らは鋭意努力の結果、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子が、その高分子物質の一つであることを明らかにした。
【0011】
また、本発明者らは、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の乾燥葉のエタノール抽出物を乾燥することによって得られた粗抽出物を、親水性溶媒に懸濁して糖尿病モデルラットに経口投与したところ、コノフィリンやコノフィリジンが血中に吸収されること、一定期間血中に安定に保持されること、膵β細胞数や血中インスリン値が有意に上昇すること、糖尿病の発症により上昇した血糖値を有意に低下させることを見出した。このようにして、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る水溶液は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液である。前記水溶液は、コノフィリン又はコノフィリジンが2μg/ml以上の濃度で溶解しているものが好ましい。
【0013】
本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造方法は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを含有するpH4以下の酸性水溶液に、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子を溶解させる工程を含む。
【0014】
また、本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造方法は、界面活性剤を含有する親水性溶媒にコノフィリン及び/又はコノフィリジンを溶解させる工程を含む。
【0015】
さらに、本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造方法は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物からpH4以下の酸性水溶液で抽出する工程を含む。
【0016】
また、本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造方法は、pH4以下の酸性水溶液で抽出した、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を中和する工程を含む。
【0017】
本発明に係る水溶液は、上述のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液の製造方法により得られたコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液である。
【0018】
本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製方法は、pH4以下の酸性水溶液で抽出された、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を分子量10000で分画する分画工程と、前記分画工程により得られる低分子量画分を回収する回収工程と、を含む。なお、本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製方法においては、前記低分子量画分を中和することによって沈殿した沈殿物を回収することとしてもよい。
【0019】
また、本発明に係る、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製方法は、pH4以下の酸性水溶液で抽出された、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を中和する中和工程と、前記中和工程により中和した前記抽出物を分子量50000以下で分画する分画工程と、前記分画工程により得られる高分子量画分を回収する回収工程と、を含む。
【0020】
本発明に係る水溶性組成物は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを含有する水溶性組成物であって、水に混合させたときに2μg/ml以上の濃度のコノフィリン又はコノフィリジンの水溶液を作製し得るものである。また、本発明に係る水溶性組成物は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンと、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子とを含有する。さらに、本発明に係る水溶性組成物は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンと、界面活性剤とを含有する。
【0021】
本発明に係る水溶性組成物の製造方法は、例えば、2μg/mlより濃度が高いコノフィリン及び/又はコノフィリジンの酸性水溶液や中性水溶液を調製する工程、前記酸性水溶液や中性水溶液を乾燥させて粉末を得る工程などを含む。また、本発明に係る水溶性組成物の製造方法は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを含有するpH4以下の酸性水溶液に、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子を溶解させる工程を含む。さらに、本発明に係る水溶性組成物の製造方法は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを、界面活性剤を含有する親水性溶媒に混合する工程を含む。
【0022】
本発明に係る食品組成物及び医薬組成物は、上述の水溶性組成物を含有することを特徴とする。本発明に係る食品組成物は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品などを構成する。また、本発明に係る医薬組成物は、経口投与用製剤を構成する。
【0023】
なお、上述の水溶性組成物は、例えば、β細胞の増殖、血糖値の降下、インスリンの上昇、糖尿病の予防又は改善などに有用である。
【0024】
また、上述の植物としては、例えば、タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)などを用いることができる。
【0025】
==関連文献とのクロスリファレンス==
本願は、2006年3月7日付けで出願した日本国特願2006-60533号に基づく優先権を主張する。この文献を本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例において、粗抽出物IをSTZラットに継続投与した場合の血糖値の変化を示す図である。なお、図中の「●」、「△」、及び「◇」は、それぞれ対照群、50mg/kg/日投与群、及び200mg/kg/日投与群の平均値を示し、縦線は標準誤差を示す。また、図中の「*」は対照群に対して5%有意であることを示す。各群の動物数は8匹である。
【図2】本発明の一実施例において、粗抽出物IをSTZラットに15日間継続投与した後の血中インスリン値を示す図である。なお、縦線は標準誤差を示し、図中の「*」及び「**」は対照群に対してそれぞれ5%及び1%有意であることを示す。
【図3】本発明の一実施例において、クエン酸により抽出した、コノフィリン及びコノフィリジンを含む水溶性組成物の保存安定性を示す図である。
【図4】本発明の一実施例において、GKラットのうち、随時血糖の上昇の変化が大きくないGKラットを用いて粗抽出物IIの吸収試験を示す図である。
【図5】本発明の一実施例において、用量を変化させて粗抽出物IIをGKラットに継続投与した場合の随時血糖値の変化を示す図である。なお、縦線は標準誤差を示し、図中の「*」はコントロール群に対して有意水準5%で有意であることを示す。
【図6】本発明の一実施例において、用量を変化させて粗抽出物IIをGKラットに継続投与した場合の空腹時血糖値の変化を示す図である。なお、図中の各データは、コントロール群の空腹時血糖値を100(%)とした場合の相対値で示す。また、縦線は標準誤差を示し、図中の「*」はコントロール群に対して有意水準5%で有意であることを示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、実施例において市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0028】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0029】
==コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液==
コノフィリンやコノフィリジンは、基本的に、中性の水溶液にはほとんど溶解しなかった。しかしながら、
(1)コノフィリンやコノフィリジンを、一旦、酸性の水溶液に溶解させること、
(2)コノフィリンやコノフィリジンが溶解した酸性水溶液に、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子を溶解させること、
の2つの条件が満たされるとき、コノフィリンやコノフィリジンは、高濃度に、中性の水溶液に溶解するようになる。
【0030】
例えば、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の生葉又はその乾燥物(乾燥粉末を含む。以下同じ。)からコノフィリン及び/又はコノフィリジンを主成分として含有する抽出物を得るために水で抽出することとしてもよいが、中性の水溶液ではコノフィリンやコノフィリジンが溶解しにくいため、抽出効率が低く実用的ではない。しかしながら、上述のように、pH4以下の酸性水溶液を用いることにより、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の生葉又はその乾燥物からコノフィリンやコノフィリジンを効率よく抽出でき、コノフィリン又はコノフィリジンが2μg/ml以上の濃度で溶解したコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造できる。例えば、pH4以下の酸性水溶液で抽出したコノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を中和し、遠心分離することにより得られた上清には、ほとんどのコノフィリン及び/又はコノフィリジンが存在する。
【0031】
また、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の生葉又はその乾燥物からエタノールで抽出を行い、その後、エタノールを除去した抽出物は、中性の水溶液では溶解できないが、pH4以下の酸性水溶液には溶解することができ、こうして、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造できる。
【0032】
さらに、上述のように製造した、コノフィリンやコノフィリジンを含有するpH4以下の酸性水溶液を中和することにより、中性付近のpHを有するコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造できる。この水溶液を分子量50000以下で分画すると、高分子量画分にほとんどのコノフィリン及び/又はコノフィリジンが存在し、この場合、植物の葉からカルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子が供給されていると考えられる。
【0033】
(部分)精製されたコノフィリンやコノフィリジンの場合、一旦酸性溶液に溶解させた後中和しても、ほとんど溶解しない。例えば、上述のpH4以下の酸性水溶液で抽出した抽出物を中和する前に分子量10000で分画し、得られた低分子量画分を中和すると、ほとんどのコノフィリン及び/又はコノフィリジンが沈殿する。従って、分子量10000での分画により得られる低分子量画分のような、(部分)精製コノフィリン及び/又は(部分)精製コノフィリジンを含有するpH4以下の酸性水溶液に、カルボキシル基を有する陰イオン性水溶性高分子(例えば、ペクチン、ポリアクリル酸、アルギン酸等のポリウロン酸など)を溶解させることにより、中性付近で、高濃度のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造できるようになる。
【0034】
さらに、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)を含有する親水性溶媒にコノフィリン及び/又はコノフィリジンを溶解することにより、pHにかかわらず、高濃度のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を製造できる。
【0035】
上述のように製造されたコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液は、有機溶媒を含んでいないので安全性の面で優れており、食品用途及び医薬品用途としての利用に期待できる。
【0036】
なお、前記親水性溶媒は、例えば、純水、酸性水溶液などである。前記酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、クエン酸などの公知の水溶液を挙げることができるが、コノフィリンやコノフィリジンの抽出効率を高めるためにpH4以下の酸性水溶液を用いることが好ましく、酸性水溶液を用いて抽出した抽出物の風味の点から、塩酸やクエン酸を用いることがより好ましい。なお、塩酸や他の強酸を用いる場合には、規定度として、0.01乃至1規定、好ましくは0.02乃至0.2規定の酸を用いることが好ましい。また、有機酸(弱酸)を用いる場合には、0.01モル/リットル以上のクエン酸溶液又は0.03モル/リットル以上の酢酸等が利用できる。
【0037】
また、前記コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物としては、例えば、キョウチクトウ科の植物であるエルバタミア・ミクロフィラ(Ervatamia microphylla)、タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)などを用いることができる。なお、エルバタミア・ミクロフィラ(Ervatamia microphylla)は、例えば、タイ国で採取することができ、タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)は、例えば、東南アジア諸国、日本等で採取することができる。
【0038】
前記植物の葉の乾燥物(乾燥粉末を含む。)は、上述の植物の葉又は粉砕した植物の葉を、自然乾燥、凍結乾燥、温風乾燥などの方法によって乾燥したり、上述の植物の葉を乾燥して粉砕したりすることにより得ることができる。なお、上記粉砕は、例えば、家庭用ミル、ミキサー等の公知の装置を用いて行うことができる。
【0039】
なお、上述のpH4以下の酸性水溶液を用いたコノフィリンやコノフィリジンの抽出において、酸性水溶液に少量のエタノールを加えることとしてもよいし、酸性水溶液に熱(好ましくは30~50℃)を加えることとしてもよい。これにより、抽出効率を高めることが可能となる。
【0040】
==コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製方法==
コノフィリン及び/又はコノフィリジンの、以上のような性質を利用して、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを効率よく精製できる。例えば、分画処理(例えば、限外濾過法、ゲル濾過法などの公知の方法)を行わずにpH4以下の酸性水溶液で抽出した、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを生産する植物の抽出物を分子量10000で分画した後、得られた低分子量画分を中和して沈殿物を公知の分離方法(例えば、遠心分離法、濾紙や濾布を用いた濾過法など)により回収したり、上述の抽出物を中和した後、分子量50000以下で分画して高分子量画分を回収したりすればよい。
【0041】
==コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶性組成物==
上述のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液は、経口投与することによって、短時間で血中のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの濃度を上昇させること、β細胞の重量を増加させる、すなわちβ細胞を増殖させること、血糖値を降下させること、及びインスリンを上昇させる。従って、上述のコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶性組成物は、β細胞の増殖、血糖値の降下、インスリンの上昇、糖尿病の予防又は改善等に有用な食品組成物(例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、補助食品など)や医薬組成物(例えば、経口投与用製剤など)などに用いることができる。また、弱酸性から中性の水溶性組成物は、経口にて摂取することができることから、インスリン産生能が低下した糖尿病患者や、糖尿病リスク保持者のインスリン産生能を、臓器移植や注射等の苦痛を伴う処置を行うことなく、正常なレベルへと改善・維持することが可能である。
【0042】
ここで、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶性組成物とは、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを含有し、水に混合させたとき、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液を作製できれば限定されない。例えば、この水溶性組成物には、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの酸性水溶液や中性水溶液、これらの水溶液をフリーズドドライさせた粉末などが含まれる。
【0043】
なお、本発明に係る水溶性組成物は、溶液の安定性を高めるために、ビタミンA、C、Eやポリフェノール等の抗酸化物質をさらに含有してもよいし、味、風味を調整するために食品添加物や香料等を含有してもよい。
【0044】
さらに、糖尿病が発症した場合には、生体は常に高血糖の状態にさらされており、高血糖による糖毒性が生体内の酸化ストレスを高める。膵β細胞は酸化ストレスに対する感受性が特に高い細胞であり、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの作用で膵β細胞が一旦再生しても、再生した細胞は引き続き酸化ストレスによる影響を受けると考えられることから、血糖値を極力正常な状態に維持しておくことがコノフィリン及び/又はコノフィリジンの効果を高めるために特に重要である。そのために、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを単独で投与するよりも、他の血糖降下剤、例えばαグルコシダーゼ阻害剤、ビグアナイド系薬剤、チアゾリジン系薬剤、スルホニル尿素系薬剤や、生体内酸化ストレスを軽減させる薬剤、たとえばビタミンA、C、又はEやポリフェノール類などを同時に摂取することが望ましい。他の血糖降下剤や抗酸化剤と併用することにより、さらに少ないコノフィリン及び/又はコノフィリジンの投与で膵β細胞を再生させることが可能となる。
【0045】
==コノフィリン及び/又はコノフィリジンの保存==
ところで、コノフィリン及び/又はコノフィリジンは、保存温度に関係なく、遮光して保存することにより、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの分解を防止することができる。従って、本発明に係るコノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液、水溶性組成物、食品組成物、医薬品組成物等は遮光することにより室温で保存可能である。また、上述の水溶液、水溶性組成物、食品組成物、医薬品組成物等の製造は暗所で行うことにより、効率よく製造することが可能である。
【実施例】
【0046】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製及び分析方法は以下のように実施した。
【0047】
1.コノフィリン及び/又はコノフィリジンの精製
沖縄県宮古島で栽培したタベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)の葉を60℃の温風乾燥機により16時間乾燥させ、得られた乾燥葉約4kgからエタノール抽出、酸溶解、限外濾過(分画分子量10000)、逆相オープンカラムによる精製、および逆相HPLCによる精製プロセスを経て、コノフィリン(500mg)とコノフィリジン(100mg)を精製した。このようにして得られた各精製物の純度はLC/MSの分析により99%以上であったことから、以下の実施例においてこれらの精製物を標準物質として利用した。なお、コノフィリンのエタノール中でのモル吸光計数は、分析の結果、ε(335nm)=32,100であることが明らかになった。また、コノフィリジンのモル吸光計数は、文献(Kam et al., J Nat Prod, 56, 1865-1871, 1993)値ε(335nm)=12,300を採用した。
【0048】
2.コノフィリン及びコノフィリジンの分析方法
コノフィリン及びコノフィリジンの分析は逆層HPLCにより行った。カラムはYMC Pack ProC18RS(4.6mm×250mm;YMC社製)を用い、移動層として、A液に1容量%酢酸を、B液にアセトニトリルを用い、高圧グラディエントにより分析を行った。なお、グラディエントプログラムは、流速を1ml/分とし、25分間でB液の割合が10%から55%にリニアに上昇するように設定した。カラム温度は40℃とし、335nmのUV吸収でモニタリングした。標準コノフィリン及びコノフィリジン溶液は測定の直前に調製し、調製した溶液の335nmにおける吸光度より濃度を算出した。
【0049】
[実施例1]
糖尿病モデル動物の血糖値及びインスリン値に対する粗抽出物の経口投与による効果を調べるため、以下の実験を実施した。
【0050】
(1)飼育条件
5週齢で購入したラット(Crj:CD(SD)IGS、SPF、雄)30匹を1週間馴化した。詳しくは、温度20乃至26℃、相対湿度40乃至70%、喚起回数10乃至20回/時間、照明時間12時間(7:00~19:00)に設定した飼育室で飼育し、固形飼料FR-2(船橋農場)及び上水道水を自由摂取させた。
【0051】
(2)糖尿病の誘発及び群分け
馴化が終了したラットを24時間絶食させ、ストレプトゾトシン(以下「STZ」と略す。)60mg/kgを腹腔内投与した。STZ投与24時間後の血糖値をフリースタイルキッセイメーター(C-D036-01014、キッセイ薬品工業)を用いて測定し、血糖値が250mg/dl以上の動物を糖尿病ラットと見なして実験に使用した。コンピューターを用いた完全無作為抽出方法により、3群に群分けした(1群8匹)。
【0052】
(3)試験物質の調製と投与
沖縄県宮古島で栽培したタベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)の葉を60℃の温風乾燥機により16時間乾燥させて乾燥葉を得た。乾燥葉300gを家庭用ミルで粉砕し、3Lの60容量%のエタノールを加えてコノフィリン及びコノフィリジンを抽出した。遠心分離により上清を回収し、沈殿に再度60容量%のエタノールを3L加えて再度抽出操作を行い、上清を回収した。回収した上清を混合し、エバポレーターでエタノールの除去と濃縮を行った後に凍結乾燥し、約50gの乾燥物を得た(粗抽出物I)。
【0053】
0.4gの粗抽出物IにTween80を1滴加え、さらに注射用水10mlを添加して懸濁させた。この懸濁液を体重kg当り5mlとなるように毎日ゾンデを用いて強制経口投与した(200mg/kg投与群)。この場合のコノフィリン及びコノフィリジンの投与量はそれぞれ0.46mg/kg/日及び0.32mg/kg/日となる。また0.1gの粗抽出物IにTween80を1滴と10mlの注射用水を加えた懸濁液も同様に毎日投与した(50mg/kg投与群)。この場合のコノフィリン及びコノフィリジンの投与量はそれぞれ0.11mg/kg/日及び0.08mg/kg/日となる。さらに注射用水10mlにTween80を1滴添加したものをコントロール群に毎日投与した。試験物質は全て毎日投与直前に調製した。
【0054】
(4)血糖値及びインスリンの測定
試験物質投与開始日より5日間隔で血糖値を測定した。血糖値を測定する場合には、動物は前日より血糖値測定までの間16時間絶食させた。血液は尾静脈より採血し、フリースタイルキッセイメーター(C-D036-01014、キッセイ薬品工業)を用いて血糖値を測定した。15日目の血糖値を測定後、腹部大動脈から全血を採血し、遠心分離により血清を分離した。これらにつきレビス インスリン-ラット-T(シバヤギ)を用いてインスリンを分析した。
【0055】
(5)β細胞重量の測定
投与最終日翌日に膵臓を摘出し、膵臓重量を測定した。重量測定後、膵臓を10%ホルマリンに固定し、情報に従って厚さ約4μmのパラフィン切片を作製した。膵臓β細胞の標識は、一次抗体として抗インスリン(anti-insulin H-86、Code No.sc9168、Santa Cruz Biotechnology Inc.、×100)を、二次抗体として抗ウサギイムノグロブリン(Code No.E0353、DakoCytomation、×400)を用いたLabelled Strepto-Avidin Biotin法(DAKO LSAB+/HRP kit、Code No.K0690、DakoCytomation)による免疫組織化学染色により行った。画像解析は、全例の抗インスリン免疫組織化学染色標本を、フィルムスキャナー(PrimeFilm 1800I、Pacific Image Electronics)を用いてデジタル化した画像について、NIH Image PPC Ver.1.62(Wayne Rusband、NIH)を用いて膵臓断面積を計測した。さらに各切片上の全てのβ細胞領域をEclipse E600及びCOOLPIX Microsystem(Nikon)を用いて、対物10倍の倍率でデジタル化した画像について、NIH Image PPC Ver.1.62を用いてβ細胞領域面積を計測した。得られた成績より、下式に従ってβ細胞重量(mg)を算出した。β細胞重量は解析時、ラ氏島内またはラ氏島外(腺房内、導管上皮又は導管周囲等、ラ氏島構造を有さない領域に弧在性に認められるβ細胞)に分類して計測し、両者の合計を総量として表示した(表1)。
式:β細胞数(mg)=膵臓重量(mg)×β細胞領域面積(mm)/膵臓断面積(mm
【0056】
(6)統計学的手法
対照群との有意差検定はStudentのt検定を行った。
粗抽出物Iを15日間継続して経口投与した場合の血糖値の変化を図1に、15日後のインスリン値を図2に示す。
【0057】
(7)結果
【表1】
JP0004431713B2_000002t.gif

【0058】
表1に示すように、β細胞重量は総量、ラ氏島内、ラ氏島外とも容量依存的に増加した。また、図1及び図2に示すように、試験物質の投与により、血糖値は容量依存的に低下し、インスリンは容量依存的に増加した。なお、体重はコントロール群との間で差はなかった。
【0059】
[実施例2]
実施例1で得られた乾燥葉の一部をミルで粉砕した後、粉砕物10gを100mlの60容量%エタノール水溶液で抽出した。その後、遠心分離を行い、コノフィリン濃度が約33μg/ml、コノフィリジン濃度が27μg/mlの上清を回収した。これを3mlずつ5本の遠心チューブに分注後、遠心濃縮により乾固させた。これに、0.1Mクエン酸溶液と0.1Mクエン酸ナトリウム溶液を適宜混合することにより調製したpH2.6乃至pH6.0の緩衝液(クエン酸水溶液又はクエン酸ナトリウム緩衝液)を0.1mlずつ添加し、10分間激しく攪拌した後、再度遠心分離を行い、上清を50%エタノール水溶液で10倍に希釈した。希釈後、0.2μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去し、HPLCによりコノフィリン及びコノフィリジンの含量を測定した(表2)。
【表2】
JP0004431713B2_000003t.gif

【0060】
このように、コノフィリン及びコノフィリジンはpH3.0以下の水溶液に溶解し、pH4でも若干量のコノフィリン及びコノフィリジンが溶解した。
【0061】
[実施例3]
次に、各種溶媒を用いて抽出実験を行った。実施例2と同様の操作で得られた乾燥葉粉砕物を2mg乃至100mg秤量し、表3に示す各種溶媒を1ml添加して室温又は50℃で10分間攪拌して抽出を行い、抽出物のpHを測定した。溶媒は0.1N塩酸、0.1Mクエン酸、0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)、0.3M酢酸、0.1Mクエン酸とエタノールの90:10混合液、同80:20混合液を用いた。
【0062】
その後、抽出物を遠心分離により不要物を除去し、HPLCを用いてコノフィリン及びコノフィリジンの含量を分析した(表3)。
【表3】
JP0004431713B2_000004t.gif

【0063】
表3に示すように、コノフィリン及びコノフィリジンはpH3.0以下の溶液で効率良く抽出され、溶媒の添加倍率を高めること、抽出温度を高めること、少量のエタノールを添加することにより抽出効率が高まった。
【0064】
[実施例4]
実施例2と同様の操作で得られた乾燥葉の粉砕物を10mgずつエッペンドルフチューブに採取し、これに蒸留水、0.005規定乃至1規定の塩酸を1mlずつ加えて50℃で15分間保温攪拌して抽出を行い、抽出物のpHを測定した。その後、遠心分離により残渣を除去し、上清に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、さらに等量のエタノールを加えた後、HPLCでコノフィリン及びコノフィリジンの含量を測定した(表4)。
【表4】
JP0004431713B2_000005t.gif

【0065】
表4に示すように、コノフィリン及びコノフィリジンは塩酸濃度が0.01規定以上で効率よく抽出され、抽出効率は塩酸濃度が0.02乃至0.2規定で特に良好であった。
【0066】
[実施例5]
実施例2と同様の操作により得られた乾燥葉の粉砕物4gに200mlの0.1規定塩酸を加えて50℃で30分間抽出を行った。濾紙濾過により残渣を除去し、これを旭化成社製のペンシル型モジュールSLP-0053(分画分子量10,000)で限外濾過し、165mlの濾液を回収した。濾液に炭酸ナトリウム水溶液を徐々に添加して溶液のpHを6.0に調整し、生じた沈殿を遠心分離により回収し、これを真空乾燥することにより、70mgの乾燥物を得た。この乾燥物1mg中には9.8μgのコノフィリンと13.3μgのコノフィリジンが含まれていた。
【0067】
[実施例6]
実施例5と同様に抽出し、濾紙濾過を行って残渣を除去した抽出清澄液(抽出液)100mlに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.0に調整した。この液50mlを遠心分離(1,500×g、5分間)し、上清(遠心上清)と沈澱物(遠心沈殿)に分離した。次に、沈殿物を等量の50%エタノール水溶液で溶解し、抽出液、遠心上清、及び遠心沈殿における有効成分(コノフィリン及びコノフィリジン)の含量をHPLCにより測定した。なお、タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)の乾燥葉の粉砕物4gに200mlの蒸留水を加えて50℃で30分加熱した後、1,500×g、5分間で遠心分離することによって得られた上清(破砕液)についても、HPLCにより有効成分の含量を測定した。これらの結果を表5に示す。
【表5】
JP0004431713B2_000006t.gif

【0068】
このように、コノフィリン及びコノフィリジンの殆どは遠心上清に存在し、沈殿に含まれるコノフィリン及びコノフィリンは僅かであった。
【0069】
また、上述の抽出液1mlに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.0に調整し、アドバンテック社製限外濾過膜USY-5(分画分子量50,000)で処理し、膜を通過した濾液(UF濾液)を回収するとともに、膜上に残存した成分を50%エタノール1mlを用いて溶解・回収し(UF残渣)、UF濾液及びUF残渣における有効成分の含量をHPLCにより測定した(表5)。コノフィリン及びコノフィリジンは濾液中からは全く検出されず、ほぼ全量が限外濾過膜非透過画分に存在していた。
【0070】
[実施例7]
本実施例では、コノフィリン及びコノフィリジンを含む水溶性組成物の安定性を調べた。
【0071】
実施例2と同様の操作により得られた乾燥葉の粉砕物に0.1Mクエン酸を加え、60℃で15分間攪拌した。不溶物を濾別した後に0.1N水酸化ナトリウムでpH6.0に中和し、これを1mlずつ試験管に分注して遠心濃縮乾固させた。
【0072】
先ず、試験管の1本に1mlの50容量%エタノールを加えて固形分を溶解し、0.2μmのメンブランフィルター濾過を行った後HPLCでコノフィリンとコノフィリジンを分析した。
【0073】
次に、残りの試験管を5つのグループに分け、それぞれ-30℃(遮光)、4℃(遮光)、4℃(遮光なし)、30℃(遮光)、50℃(遮光)で保存し、一定期間経過後に50容量%エタノールを加えて溶解し、フィルター濾過後、HPLC分析を行った。その結果を図3に示す。図3に示すように、コノフィリン及びコノフィリジンは遮光保存した場合には保存温度にかかわらず非常に安定であったが、遮光しない場合には徐々に減少(分解)した。
【0074】
[実施例8]
本実施例においては、コノフィリン及びコノフィリジンを抽出した場合、乾燥・粉砕葉を投与した場合より、血中濃度増加のピークが早くなることを示す。
【0075】
タベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)の乾燥葉を家庭用ミルで粉砕し、その1gに20mlの0.3M酢酸溶液を加えてホモゲナイザー処理し、50℃で30分間攪拌して有効成分を抽出した。遠心分離により上清を回収し、これを濃縮乾固させて0.3gの粉末を回収した(酢酸抽出エキス)。なお、この粉末にはコノフィリン及びコノフィリジンがそれぞれ1.0mg/g、0.8mg/g含有していた。
【0076】
また、乾燥粉砕葉1gに蒸留水を20ml加えてホモゲナイザー処理後、濃縮乾固したもの1gを得た(乾燥・粉砕葉)。なお、有効成分量はそれぞれ0.40mg/g、0.35mg/gであった。
【0077】
次に、酢酸抽出エキス0.2g、乾燥・粉砕葉0.5gをそれぞれ5mlの注射用水に懸濁した。これらを、5週齢の通常ラット(Crj:CD(SD)IGS、SPF、雄)各2匹に体重kg当り5mlとなるようにゾンデを用いて強制経口投与した。経口投与前、投与後1.5時間、3時間、6時間、12時間、24時間後にそれぞれ眼窩静脈叢より採血し、遠心分離により血清を回収した。血清に2倍量のアセトニトリルを加えてタンパクを沈殿させ、上清をHPLC分析することにより血中のコノフィリン及びコノフィリジン濃度を測定した(表6)。
【表6】
JP0004431713B2_000007t.gif

【0078】
表6に示すように、酢酸抽出エキスを投与した場合には、投与後1.5時間で最大の血中濃度を示し、その後徐々にコノフィリン及びコノフィリジンの血中濃度が低下した。一方、乾燥・粉砕葉を投与した場合には、血中濃度のピークが数時間遅くなる傾向を示した。
【0079】
[実施例9]
本実施例では、コノフィリン及びコノフィリジンの抽出方法は、それらを経口投与したときの血中濃度の変化に影響を及ぼさないことを示す。
【0080】
実施例1で得られた粗抽出物I(0.05g)にTween80を1滴加え、5mlの注射用水に懸濁した。これを、5週齢のラット(Crj:CD(SD)IGS、SPF、雄)に体重kg当り5mlとなるようにゾンデを用いて強制経口投与した(n=2)。投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間後にそれぞれ眼窩静脈叢より採血し、遠心分離により血清を回収した。その後、実施例8と同様の操作を行い、血中のコノフィリン及びコノフィリジン濃度を測定した(表7)。なお、対照として、Tween80を1滴含む注射用水を体重kg当り5mlとなるように経口投与した場合についても同様に血中濃度の測定を行った(n=2)。
【表7】
JP0004431713B2_000008t.gif

【0081】
表7に示すように、含水アルコールを用いて抽出したコノフィリン及びコノフィリン(粗抽出物I)を経口で投与した場合の血中濃度の推移は、酢酸抽出エキスを投与した場合と殆ど同じであった。以上のように、アルコールで抽出した抽出物や酸性溶液で抽出した抽出物を投与しても、コノフィリンやコノフィリジンが同程度に血中に移行するため、経口での作用には差がないと判断できる。
【0082】
[実施例10]
本実施例では、分画により部分精製したコノフィリンやコノフィリジンを含有する酸性水溶液に、陰イオン性水溶性高分子を添加することにより、中和後に水溶液に溶解するコノフィリンやコノフィリジンの量が増加することを示す。ここでは、酸性水溶液として塩酸を、陰イオン性水溶性高分子としてペクチンをそれぞれ用いて実験を行った。
【0083】
実施例5で得られた乾燥物10mgを0.1Nの塩酸5mlに溶解させた。これを0.5mlずつ試験管に分注した。分注後、0.25%濃度のペクチン(ゲニュー社製、YM-150-LJ)水溶液を10μlまたは100μl添加し、さらに蒸留水を加えて2mlとした。また、分注した試験管に蒸留水のみを加えて2mlにしたものも準備した。
【0084】
続いて、炭酸ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した後、液量を2.5mlとなるようにメスアップし、これらを5,000×gで10分間遠心分離して上清を回収し、上清中のコノフィリンおよびコノフィリジンの濃度を測定した。尚、コントロールとして、分注した試験管に蒸留水のみを加えて液量が2.5mlとなるようにメスアップした溶液におけるコノフィリンおよびコノフィリジンの濃度を測定した。その結果を表8に示す。
【表8】
JP0004431713B2_000009t.gif

【0085】
このように、コノフィリンやコノフィリジンを含有する塩酸にペクチンを添加することにより、中和後に溶解するコノフィリンやコノフィリジンの量がペクチンの添加量に応じて増加した。
【0086】
[実施例11]
本実施例では、エタノール抽出により部分精製したコノフィリンやコノフィリジンを用いて、実施例10と同様の実験を行なった。
【0087】
実施例1で得られた粗抽出物I(250mg)を0.1N塩酸(5ml)に溶解した後、遠心分離(1,500×g、5分間)により不溶物を除去し、0.5mlずつ試験管に分注した。分注後、0.2%濃度のペクチン(ゲニュー社製、YM-150-LJ)の水溶液又は0.2%濃度のポリアクリル酸ナトリウム(重合度30,000~40,000、和光純薬工業社製)の水溶液を10μl、または100μl添加し、さらに蒸留水を加えて1.9mlとした。また、分注した試験管に蒸留水のみを加えて1.9mlにしたものも準備した(添加剤なし)。
【0088】
続いて、炭酸ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した後、液量を2mlとなるようにメスアップし、これを5,000×gで10分間遠心分離して上清を回収し、上清中のコノフィリンおよびコノフィリジンの濃度を測定した。尚、コントロールとして、分注した試験管に蒸留水のみを加えて液量が2mlとなるようにメスアップした溶液におけるコノフィリンおよびコノフィリジンの濃度を測定した。その結果を表9に示す。
【表9】
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【0089】
実施例10と同様に、ペクチンまたはポリアクリル酸ナトリウムを添加することにより、中和後、上清中のコノフィリン及びコノフィリジン濃度が増加した。
【0090】
[実施例12]
本実施例では、逆相カラムにより部分精製したコノフィリンやコノフィリジンを用いて、実施例10と同様の実験を行なった。
【0091】
実施例1で得られた粗抽出物I(250mg)を5mlのエタノールに溶解し、水を加えて50mlとした。これを、約5mlのODS樹脂(富士シリシア社製DM1020T)を充填したガラスカラムに通し、10mlの蒸留水でカラムを洗浄して非吸着物質を除去した後、10mlのエタノールで吸着成分を溶出した。その後、遠心濃縮により溶媒を除去し、5mlの0.1N塩酸に溶解して0.5mlずつ試験管に分注した。分注後、0.2%濃度のペクチン水溶液又は0.2%濃度のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を10μl、100μl、あるいは、1000μl添加し、実施例11と同様の操作で処理し、上清中のコノフィリンおよびコノフィリジンの濃度を測定した。その結果を表10に示す。
【表10】
JP0004431713B2_000011t.gif

【0092】
逆相カラムを用いて部分精製したコノフィリンやコノフィリジンの中性での溶解度は大幅に低下したが、実施例10や11と同様に、ペクチンまたはポリアクリル酸ナトリウムを添加することにより、コノフィリンやコノフィリジンの溶解度は増加した。
【0093】
また、陰イオン性水溶性高分子は、コノフィリン及び/又はコノフィリジンと単に共存しているのみではコノフィリンやコノフィリジンの溶解性に影響を及ぼさないが、コノフィリン及び/又はコノフィリジンを酸性水溶液に溶解した後、中和することにより、コノフィリンやコノフィリジンの溶解性を向上させることができることが確認された。このような作用を示す陰イオン性水溶性高分子の例としては、ペクチンやポリアクリル酸のほかにアルギン酸等のポリウロン酸などを挙げることができるが、ポリリン酸ナトリウムのように、カルボキシル基を有さない陰イオン性水溶性高分子には上述の作用はみられなかった。
【0094】
[実施例13]
本実施例では、界面活性剤を親水性溶媒に添加することにより、コノフィリンやコノフィリジンの溶解度が増加することを示す。
【0095】
実施例1で得られた粗抽出物Iを10mgずつ秤量し、1mlの蒸留水または1mlの1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を加えて激しく攪拌した。5,000×gで2分間遠心分離を行い、上清中のコノフィリン及びコノフィリジンの濃度を測定した。その結果を表11に示す。
【表11】
JP0004431713B2_000012t.gif

【0096】
このように、コノフィリンやコノフィリジンは蒸留水には殆ど溶解しないが、界面活性剤を添加することにより、これらの溶解度が上昇した。
【0097】
[実施例14]
本実施例では、コノフィリン及び/又はコノフィリジンが遺伝糖尿病モデルラットの空腹時血糖値に与える効果を調べた。
【0098】
(1)動物の飼育条件
遺伝糖尿病モデルラットであるGK(Goto-Kakizaki、雄)ラット60匹(5週齢)を実施例1と同様の条件で飼育した。実施例1と同様の方法で随時血糖値をモニタリングしたところ、11週齢で随時血糖値の上昇が認められたため、11週齢における血糖値に基づき糖尿病ラットと見なして以下の実験に使用した。
【0099】
(2)試験物質の調製
沖縄県宮古島で栽培したタベルネモンタナ・ディヴァリカタ(Tabernaemontana divaricata)の葉を60℃の温風乾燥機により16時間乾燥させて乾燥葉を得た。0.025N塩酸(250L)を50℃に昇温した後、乾燥葉5kgを加えて30分間撹拌した。その後、金網を通過させることにより葉の残渣を除去し、さらにバスケット型セントルを用いて濾過し、濾液(清澄な抽出液)を回収した。
【0100】
20L容のステンレスカラムに合成吸着樹脂アンバーライトXAD16-HP(オルガノ社製)を充填し、充分に水洗した後、上記抽出液全量をカラムに100L/時で通液した。その後カラムを100Lの水、および100Lの30%エタノール水溶液で順次洗浄し、さらに純エタノール100Lを流して樹脂に吸着した成分を溶出させた。得られた溶出液を濃縮、乾燥させることにより、コノフィリン及びコノフィリジンを含む粉末状の組成物を得た。
【0101】
上記ペースト状組成物を0.1Mのクエン酸水溶液に溶解した後、pH6.0に調整した。生じた沈殿物を遠心分離により回収し、さらに真空乾燥を行うことにより、コノフィリン及びコノフィリジンをそれぞれ14mg/g及び15mg/g含む粉末を得た(粗抽出物II)。
【0102】
(3)粗抽出物IIの吸収性
試験物質の投与に先立ち、GKラットのうち、随時血糖の上昇が大きくないラット個体を用いて粗抽出物IIの吸収試験を実施した。10週齢のGKラット16匹を4匹ずつ4群に分け、2群(絶食群)には16時間絶食させ、残り2群(摂取群)には飼料と水を自由に摂取させた。各飽食群に対して粗抽出物II(Tween80含有)を4.3mg/kgまたは13mg/kg投与し、投与後1.5時間、3時間、6時間、12時間、24時間に採血を行い、血漿中のコノフィリン濃度を測定した。また、各絶食群に対しても同様に粗抽出物IIを投与し、血漿中のコノフィリン濃度を測定した。その結果を図4に示す。
【0103】
図4に示すように、コノフィリンの血中濃度は絶食群で若干高くなるものの、有意差は認められなかった。
【0104】
(4)試験物質の投与
実施例1と同様の手法を用いて、粗抽出物IIの12週齢糖尿病ラットへの投与を開始した。投与した試験物質の用量は、0mg/kg/日(コントロール群:10匹)、1.3mg/kg/日(低用量群:10匹)、4.3mg/kg/日(中用量群:10匹)、及び13mg/kg/日(高用量群:10匹)とした。投与は毎日午前中に行い、42日間継続した。
【0105】
(5)血糖値の測定
試験物質投与開始日より1週間隔で随時血糖値を測定した(図5)。また、試験物質の最終投与が終了した日の夕刻より16時間絶食させ、翌朝の血糖値(空腹血糖値)を測定した(図6)。図5に示すように、随時血糖値はバラツキはあるものの、粗抽出物IIを13mg/kgで投与した群では常に対照群よりも低い値を示し、投与開始3週間目(15週齢)においては有意に低下していた。また、図6に示すように、空腹血糖値は投与した粗抽出物IIの用量に依存して低下した。
【0106】
このように、本願の精製方法を用いて精製したコノフィリンは、実際に生体内に投与したとき食品組成物または医薬組成物として有用あるいは有効であることが示された。
【産業上の利用の可能性】
【0107】
本発明によれば、コノフィリン及び/又はコノフィリジンの水溶液、前記水溶液からコノフィリン及び/又はコノフィリジンを精製する方法、前記水溶液の製造方法、食品組成物又は医薬組成物に有用なコノフィリン及び/若しくはコノフィリジンを含有する水溶性組成物又はその製造方法、並びに、前記水溶性組成物を含有する食品組成物又は医薬組成物を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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