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明細書 :カルボニル基に対する水素化用触媒、及びその製造方法、並びに該触媒を使用する不飽和アルコールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4862162号 (P4862162)
登録日 平成23年11月18日(2011.11.18)
発行日 平成24年1月25日(2012.1.25)
発明の名称または考案の名称 カルボニル基に対する水素化用触媒、及びその製造方法、並びに該触媒を使用する不飽和アルコールの製造方法
国際特許分類 B01J  23/46        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
B01J  27/185       (2006.01)
C07C  29/141       (2006.01)
C07C  33/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/46 Z
B01J 23/42 Z
B01J 27/185 Z
C07C 29/141
C07C 33/02
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2007-534412 (P2007-534412)
出願日 平成18年9月5日(2006.9.5)
国際出願番号 PCT/JP2006/317493
国際公開番号 WO2007/029667
国際公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
優先権出願番号 2005259630
優先日 平成17年9月7日(2005.9.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年6月25日(2008.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】井上 泰宣
【氏名】西山 洋
【氏名】斉藤 信雄
【氏名】竹内 順一
個別代理人の代理人 【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特開2003-284954(JP,A)
特開平1-159059(JP,A)
特開平8-198786(JP,A)
特開平8-57325(JP,A)
特開昭58-146446(JP,A)
特開2003-306480(JP,A)
特開平3-127750(JP,A)
特開2006-198503(JP,A)
Maria A. ARAMENDIA, et al.,Catalytic transfer hydrogenation of citral on calcined layered double hydroxides,Applied Catalysis A: General,2001年,vol.206,p.95-101
Francisco DOMINGUEZ,et al.,Gallia as support of Pt in benzene hydrogenation reaction,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2005年 3月16日,vol.228,no.1/2,p.319-324
調査した分野 B01J 21/00-37/36
C07C 29/141
C07C 33/02
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
オキシ水酸化ガリウム及びリン酸ガリウムから選ばれたガリウム化合物担体上に貴金属が担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒。
【請求項3】
ガリウム化合物担体上に0.1~10重量%のルテニウムが担持されていることを特徴とする請求項1に記載の水素化用触媒。
【請求項4】
さらに0.1~10重量%の白金が担持されていることを特徴とする請求項3に記載の水素化用触媒。
【請求項5】
1)オキシ水酸化ガリウム及びリン酸ガリウムから選ばれたガリウム化合物担体を水中に懸濁させる工程、
2)該懸濁液中に触媒活性成分である貴金属塩の溶液を加える工程、
3)ついで水溶性還元剤を加えて触媒活性成分を還元し、担体上に触媒活性成分を析出させる工程、
を含むことを特徴とする、オキシ水酸化ガリウム及びリン酸ガリウムから選ばれたガリウム化合物担体上に貴金属が担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒の製造方法。
【請求項6】
さらに、
4)担体上に触媒活性成分を析出させた触媒を担体懸濁液の水相から分離する工程、及び
5)分離した触媒を乾燥する工程、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の水素化用触媒の製造方法。
【請求項7】
工程3)の水溶性還元剤が、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ホスフィン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム又はヒドラジンから選択されたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の水素化用触媒の製造方法。
【請求項8】
工程2)の触媒活性成分がルテニウムの塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酸化物、水酸化物、アセチルアセトネート錯体、ピピリジン錯体又はアンミン錯体であることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の水素化用触媒の製造方法。
【請求項9】
工程3)で担体上に触媒活性成分としてルテニウムを析出させた後に、3-1)分離した触媒を再び水中に懸濁させる工程、3-2)該懸濁液中に白金塩の溶液を加える工程、及び、3-3)水溶性還元剤を加えて白金塩を還元し、触媒上に更に白金を析出させる工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の水素化用触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1、3又は4のいずれかに記載された水素化用触媒の存在下に、次の式(1)で表される不飽和カルボニル化合物を水素化することを特徴とする、式(2)で表される不飽和アルコールの製造方法:
【化1】
JP0004862162B2_000009t.gif
[式中、RおよびRの各々は、同一であるかあるいは異なり、水素原子、C1~C10の飽和又は不飽和の脂肪族基、飽和又は不飽和の脂環族基、又は芳香族基を表わし、RおよびRの少なくとも一方はエチレン系二重結合を含有するか、あるいはRおよびRは一緒になってエチレン系不飽和脂環族基を形成し、前記脂肪族基、脂環族基又は芳香族基の各々はC1~C4のアルキル基、ヒドロキシル基又はC1~C4のアルコキシ基の1又は2以上の同一又は異なる基で置換されていてもよい]
【請求項11】
式(1)で表されるカルボニル化合物が、α、β-不飽和カルボニル化合物であることを特徴とする請求項10に記載の不飽和アルコールの製造方法。
【請求項12】
式(1)で表されるカルボニル化合物が、シトラールであることを特徴とする請求項10又は11に記載の不飽和アルコールの製造方法。
【請求項13】
不飽和カルボニル化合物を溶媒で希釈せずに水素化することを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の不飽和アルコールの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリウム化合物担体上にルテニウム(Ru)、白金(Pt)等の貴金属が担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒、及びその製造方法、並びに該水素化用触媒を使用して不飽和カルボニル化合物を選択的に水素化し、不飽和アルコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネロール、ゲラニオール等の不飽和アルコールは、合成樹脂、医薬品、香料等として有用な有機化合物を製造するための中間体として重要な化合物である。この不飽和アルコールは、水素化触媒の存在下に、対応する不飽和カルボニル化合物を水素化することによって製造される。
【0003】
従来、不飽和アルコールの製造に使用される水素化触媒としては種々のものが知られており、例えば炭素に担持されたルテニウム/鉄触媒が挙げられる(特許文献1、2参照)。また、水溶性配位子と会合したルテニウム誘導体又はルテニウムと水溶性配位子との錯塩からなる触媒も提案されている(特許文献3、4参照)。

【特許文献1】特開昭58-27642号公報
【特許文献2】特開2003-24555号公報
【特許文献3】特許第2520461号公報
【特許文献4】特許2549158号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の先行技術は、炭素担体、ルテニウム及び鉄の3成分を使用することを必須の構成とするものであり、触媒の製造が煩雑になる。さらに、不飽和カルボニル化合物から不飽和アルコールへの選択的水素化率を改善するために、メタノール及びトリメチルアミンが触媒反応系に添加され、反応生成物からこれらの成分を分離する後処理工程が必要となる。そして、特許文献3、4の先行技術では、有機溶媒を含む媒質中で水素化反応を行うものであり、コストが高くなる。また、有機溶媒を除去するために、蒸留工程が必要となるといった問題点がある。
【0005】
さらに、触媒担体に、VIII族から選択された少なくとも1種の金属と、ゲルマニウム、錫、鉛、レニウム、ガリウム、インジウム、金、銀及びタリウムからなる群から選択された少なくとも1種の追加元素Mを担持させた触媒も知られている(特許文献5参照)。しかしながら、この水素化触媒は触媒担体を含めて3成分を使用することを必須の構成とするものであり、触媒の製造が煩雑になる。また、この触媒では、その製造方法からみて追加元素Mとして使用されるガリウムは、金属の状態で存在するものと考えられる。そして、この触媒を使用して不飽和カルボニル化合物から不飽和アルコールへの選択的水素化を行う際に、不飽和アルコールの選択率を上げるには、n-ヘプタンのような溶媒を用いて原料となる不飽和カルボニル化合物を希釈する必要があり、有機溶媒を除去するために蒸留工程が必要となる。

【特許文献5】USP6,294,696
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は上記従来技術の問題点を解消して、簡単な工程で経済的に、高い選択率で不飽和カルボニル化合物を水素化して不飽和アルコールを製造することができるカルボニル基に対する水素化用触媒、及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。本発明は、また、該水素化用触媒を使用する不飽和アルコールの実用的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、ガリウム化合物からなる担体上に触媒成分としてルテニウム、Pt等の貴金属を担持して水素化用触媒を構成することにより上記課題が解決されることを発見し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明では次の1~13の構成を採用する。
1.酸素を含有するガリウム化合物担体上に貴金属が担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒。
2.酸素を含有するガリウム化合物がオキシ水酸化ガリウム、酸化ガリウム、リン酸ガリウムから選ばれたものであることを特徴とする1に記載の水素化用触媒。
3.酸素を含有するガリウム化合物担体上に0.1~10重量%のルテニウムが担持されていることを特徴とする1又は2に記載の水素化用触媒。
4.さらに0.1~10重量%の白金が担持されていることを特徴とする3に記載の水素化用触媒。
5.1)酸素を含有するガリウム化合物担体を水中に懸濁させる工程、
2)該懸濁液中に触媒活性成分である貴金属塩の溶液を加える工程、
3)ついで水溶性還元剤を加えて触媒活性成分を還元し、担体上に触媒活性成分を析出させる工程、
を含むことを特徴とする、酸素を含有するガリウム化合物担体上に貴金属が担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒の製造方法。
6.さらに、
4)担体上に触媒活性成分を析出させた触媒を担体懸濁液の水相から分離する工程、及び5)分離した触媒を乾燥する工程、
を含むことを特徴とする5に記載の水素化用触媒の製造方法。
7.工程3)の水溶性還元剤が、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ホスフィン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム又はヒドラジンから選択されたものであることを特徴とする5又は6に記載の水素化用触媒の製造方法。
8.工程2)の触媒活性成分がルテニウムの塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酸化物、水酸化物、アセチルアセトネート錯体、ピピリジン錯体又はアンミン錯体であることを特徴とする5~7のいずれかに記載の水素化用触媒の製造方法。
9.工程3)で担体上に触媒活性成分としてルテニウムを析出させた後に、3-1)分離した触媒を再び水中に懸濁させる工程、3-2)該懸濁液中に白金塩の溶液を加える工程、及び、3-3)水溶性還元剤を加えて白金塩を還元し、触媒上に更に白金を析出させる工程を含むことを特徴とする8に記載の水素化用触媒の製造方法。
10.1~4のいずれかに記載された水素化用触媒の存在下に、次の式(1)で表される不飽和カルボニル化合物を水素化することを特徴とする、式(2)で表される不飽和アルコールの製造方法:
【化1】
JP0004862162B2_000002t.gif
[式中、RおよびRの各々は、同一であるかあるいは異なり、水素原子、C1~C10の飽和又は不飽和の脂肪族基、飽和又は不飽和の脂環族基、又は芳香族基を表わし、RおよびRの少なくとも一方はエチレン系二重結合を含有するか、あるいはRおよびRは一緒になってエチレン系不飽和脂環族基を形成し、前記脂肪族基、脂環族基又は芳香族基の各々はC1~C4のアルキル基、ヒドロキシル基又はC1~C4のアルコキシ基の1又は2以上の同一又は異なる基で置換されていてもよい]
11.式(1)で表されるカルボニル化合物が、α、β-不飽和カルボニル化合物であることを特徴とする10に記載の不飽和アルコールの製造方法。
12.式(1)で表されるカルボニル化合物が、シトラールであることを特徴とする10又は11に記載の不飽和アルコールの製造方法。
13.不飽和カルボニル化合物を溶媒で希釈せずに水素化することを特徴とする10~12のいずれかに記載の不飽和アルコールの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
カルボニル基に対する水素化用触媒として、酸素を含有するガリウム化合物を担体として使用することは新規であり、本発明はつぎのような顕著な効果を奏する。
1)本発明の水素化触媒は、基本的に酸素を含有するガリウム化合物からなる担体とルテニウムの2成分からなるものであり、製造が簡単で低コストで製造することができる。
2)本発明の新規触媒を使用することによって、不飽和カルボニル化合物を高い選択率で水素化して不飽和アルコールを製造することができる。
3)溶媒や助剤を使用せずに不飽和アルコールを製造することができるので、不飽和アルコールの製造工程が簡単なものとなり、コストを大幅に低下させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られたオキシ水酸化ガリウム担体の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた酸化ガリウム担体の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られたガリウムリン酸塩担体の電子顕微鏡写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、酸素を含有するガリウム化合物担体上に触媒成分としてルテニウム等の貴金属を担持させて、カルボニル基に対する水素化用触媒を構成する。ガリウム化合物に対する触媒成分の担持量は、0.1~10重量%、特に1~3重量%とすることが好ましい。
【0011】
担体として使用する酸素を含有するガリウム化合物に特に制限はないが、好ましいガリウム化合物としては、オキシ水酸化ガリウム、酸化ガリウム、リン酸ガリウム等が挙げられる。これらのガリウム化合物は、水素化触媒を製造する際に定法により調製してもよいが、市販品を使用することもできる。また、多孔質シリカのような他の担体の表面に、ガリウム化合物をコーティングしたものを担体として使用することもできる。担体の形状やサイズには特に制限はないが、通常は1~30μm程度の微粒子状、又はフレーク状、或いは多孔質体が使用される。
金属ガリウムを担体としてルテニウム等を担持した場合には、金属ガリウムの融点が29.8℃であることから、カルボニル化合物の水素化条件下ではガリウムが溶けてしまい、凝集が激しく生じて触媒として機能しなくなる。本発明では、酸素を含むガリウム化合物を担体として使用することによって、このような問題点を解消したものである。
【0012】
以下、触媒活性成分としてルテニウムを使用する場合を例にとり、本発明のカルボニル基に対する水素化用触媒について説明する。
本発明の水素化触媒は、例えば次の手順により製造することができる。
1)酸素を含有するガリウム化合物担体を水中に懸濁させる工程、
2)該懸濁液中に触媒活性成分であるルテニウムの金属塩溶液を加える工程、
3)ついで水溶性還元剤を加えて触媒活性成分を還元し、担体上に触媒活性成分を析出させる工程。
上記の工程3)に代えて、3’)触媒活性成分を加えた担体懸濁液を蒸発乾固させ、200~500℃で空気中で焼成後、水素気流中で200~600℃で還元する工程、を採用することもできる。
【0013】
また、通常は上記の工程の後に、
4)担体上に触媒活性成分を析出させた触媒を担体懸濁液の水相から分離する工程、及び
5)分離した触媒を乾燥する工程、
が採用される。
【0014】
上記工程2)の触媒活性成分としては、ルテニウムの塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酸化物、水酸化物、アセチルアセトネート錯体、ピピリジン錯体又はアンミン錯体等が用いられる。これらの触媒成分は、通常水溶液として担体懸濁液中に加えられる。また、触媒活性成分とともに、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの塩化物、硝酸塩、炭酸塩等の、アルカリ金属塩を加えてもよい。
【0015】
上記工程3)の水溶性還元剤としては、例えばメタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ホスフィン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム又はヒドラジン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0016】
また、工程3)で担体上に触媒活性成分としてルテニウムを析出させた後に、3-1)分離した触媒を再び水中に懸濁させる工程、3-2)該懸濁液中に白金塩の溶液を加える工程、及び、3-3)水溶性還元剤を加えて白金塩を還元し、触媒上に更に白金を析出させる工程を採用し、触媒成分としてルテニウム及び白金を担持した水素化用触媒を製造してもよい。このような触媒は、一段と高い触媒活性を発揮することができる。
【0017】
つぎに、担体として酸化ガリウム、オキシ水酸化ガリウム及びガリウムリン酸塩を使用して、本発明の水素化触媒を製造する例についてさらに詳細に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
【0018】
(ルテニウム/酸化ガリウム触媒の製造)
硝酸ガリウムをエタノールに加え溶解し、攪拌しながら、アンモニア水溶液を滴下しpHを上昇させて、pH5~6の範囲を保ち1~3時間攪拌を続け、水酸化ガリウムのゲル状の沈殿を得る。得られた水酸化ガリウムの沈殿を吸引濾過し、大気中で500℃~800℃の温度で焼成することにより、酸化ガリウム担体を得る。
また、市販されている酸化ガリウムを担体として用いることもできる。
【0019】
得られた酸化ガリウム担体を蒸留水中に懸濁させ[工程1)]、活性成分であるルテニウムを金属塩溶液の形態で加え、30分~1時間攪拌する[工程2)]。次に、懸濁液の温度を室温~70℃として、水溶性還元剤をゆっくり加え、活性成分であるルテニウムの担持および還元を同時に行う[工程3)]。
次に、この懸濁溶液を吸引濾過し、ルテニウム/酸化ガリウム触媒を水相から分離し[工程4)]、イソプロピルアルコールまたはエタノールを用いて洗浄を行い、大気中室温で乾燥を行う[工程5)]。
上記の工程2)において、アルカリ金属塩及びランタノイド金属塩を同時に、又はそれぞれ加えることができる。
また、液相還元を用いる前述の方法の代替法として、触媒活性成分を加えた担体懸濁液を蒸発乾固させ、その成分を200℃~500℃の温度で空気中で焼成した後、水素気流中200℃~600℃で還元する方法を採用してもよい。
【0020】
(ルテニウム/ガリウムリン酸塩触媒の製造)
蒸留水中に硝酸ガリウムを溶解させ、この溶液にリン酸を加え攪拌し、アンモニア水溶液を滴下することによりpHを上昇させ、pH4~6の範囲で1~3時間攪拌し、白色沈殿を得る。沈殿を吸引濾過し、100~200℃の温度で乾燥し、大気中800℃~1200℃の温度で焼成することによりガリウムリン酸塩担体を得る。
【0021】
得られたガリウム担体を蒸留水中に懸濁させ[工程1)]、活性成分であるルテニウムを金属塩溶液の形態で加え、30分~1時間攪拌する[工程2)]。次に、懸濁液の温度を室温~70℃として、水溶性還元剤をゆっくり加え、活性成分であるルテニウムの担持および還元を同時に行う[工程3)]。
次に、この懸濁溶液を吸引濾過し、ルテニウム/ガリウムリン酸塩触媒を水相から分離し[工程4)]、イソプロピルアルコールまたはエタノールを用いて洗浄を行い、大気中室温で乾燥を行う[工程5)]。
【0022】
上記の工程2)において、アルカリ金属塩及びランタノイド金属塩を同時に、又はそれぞれ加えることができる。
また、液相還元を用いる前述の方法の代替法として、触媒活性成分を加えた担体懸濁液を蒸発乾固させ、その成分を200℃~500℃の温度で空気中で焼成した後、水素気流中200℃~600℃で還元する方法を採用してもよい。
【0023】
(ルテニウム/オキシ水酸化ガリウム触媒の製造)
硝酸ガリウム水溶液にアンモニアか、尿素か、あるいは、ヘキサメチレンテトラミンを加え、液温20℃~50℃で一晩の間攪拌する。さらに、70℃~90℃の液温で2時間攪拌することにより、白色沈殿を得る。沈殿を冷却濾過し、イソプロピルアルコールまたはエタノールを用いて洗浄した後、室温~350℃で乾燥することによりオキシ水酸化ガリウム担体が得られる。
また、硝酸ガリウムを乳鉢で粉砕し、大気中で200~400℃の温度範囲で5~20時間焼成することによりδ-酸化ガリウムを得、このδ-酸化ガリウムを蒸留水と混合し、オートクレーブ中で150~300℃の温度範囲で24~48時間水熱合成を行うことにより、オキシ水酸化ガリウム担体が得られる。
さらに、市販されているオキシ水酸化ガリウムを担体として用いることもできる。
【0024】
得られたオキシ水酸化ガリウム担体を蒸留水中に懸濁させ[工程1)]、活性成分であるルテニウムを金属塩溶液の形態で加え、30分~1時間攪拌する[工程2)]。次に、懸濁液の温度を室温~70℃として、水溶性還元剤をゆっくり加え、活性成分であるルテニウムの担持および還元を同時に行う[工程3)]。
次に、この懸濁溶液を吸引濾過し、ルテニウム/オキシ水酸化ガリウム触媒を水相から分離し[工程4)]、イソプロピルアルコールまたはエタノールを用いて洗浄を行い、大気中室温で乾燥を行う[工程5)]。
【0025】
上記の工程2)において、アルカリ金属塩及びランタノイド金属塩を同時に、又はそれぞれ加えることができる。
また、液相還元を用いる前述の方法の代替法として、触媒活性成分を加えた担体懸濁液を蒸発乾固させ、その成分を200℃~500℃の温度で空気中で焼成した後、水素気流中200℃~600℃で還元する方法を採用してもよい。
本発明の水素化触媒は、基本的に酸素を含有するガリウム化合物からなる担体とルテニウムの2成分からなるものであり、製造が簡単で低コストで製造することができる。
【0026】
本発明のカルボニル基に対する水素化触媒を使用することによって、次の式(1)で表される不飽和カルボニル化合物を選択的に水素化し、式(2)で表される不飽和アルコールを効率良く製造することができる。
【0027】
【化2】
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【0028】
[式中、RおよびRの各々は、同一であるかあるいは異なり、C1~C10の水素原子、飽和又は不飽和の脂肪族基、飽和又は不飽和の脂環族基、又は芳香族基を表わし、RおよびRの少なくとも一方はエチレン系二重結合を含有するか、あるいはRおよびRは一緒になってエチレン系不飽和脂環族基を形成し、前記脂肪族基、脂環族基又は芳香族基の各々はC1~C4のアルキル基、ヒドロキシル基又はC1~C4のアルコキシ基の1又は2以上の同一又は異なる基で置換されていてもよい]
【0029】
およびRの具体例としては、例えば水素;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプテニル、オクチル、ノニル、デシル;1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、イソプロペニル、1-ブテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニルまたはデセニル;ベンジル、フェニルまたはナフチル;等が挙げられる。これらの各々は、C1~C4のアルキル基、ヒドロキシル基又はC1~C4のアルコキシ基の1又は2以上の同一又は異なる基で置換されていてもよい。
【0030】
式(1)で表される、好ましい不飽和カルボニル化合物としては、例えばシトロネラール、H-ゲラニルアセトン、H-ネロリドール、メチルビニルケトン、メシチルオキサイド、プソイドイオノン、ジヒドロファルネシルアセトン、リスメラール、メチルへキセノン等が挙げられる。特に好ましい不飽和カルボニル化合物としては、シトロネラールまたは、アクロレイン、メタアクロレイン、クロトンアルデヒド、プレナール、ファルネサールもしくはシトラール等のα、β-不飽和カルボニル化合物が挙げられる。これらの中でも、シトラールが一段と好ましい。
【0031】
シトラールには、次の式(3)で表されるシトラールA(トランス体)及び式(4)で表されるシトラールB(シス体)があり、そのカルボニル基を選択的に水素化すると、目的とする式(5)で表されるゲラニオール、式(6)で表されるネロールのほかに、副生物として式(7)のシトロネラール、式(8)のシトロネロール、さらには式(9)のテトラヒドロゲラニオール等が生成する。
【0032】
【化3】
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【0033】
本発明の水素化触媒を使用した場合には、従来の水素化触媒で必要とされる原料を希釈するための溶媒や、トリメチルアミン等の添加剤を使用せずに、高い選択率でアルデヒド基のみを水素化することができる。また、副生物の生成を抑制して、高収率で目的とする、ゲラニオールやネロールを得ることができる。したがって、目的とする生成物の分離や精製を簡単に行うことができるので、生成物の製造コストを大幅に低下させることが可能となる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これらの具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1:ルテニウム/オキシ水酸化ガリウム触媒の製造)
1Lのセパラブルフラスコに蒸留水500mLを加え、硝酸ガリウム13.64gを溶解した。この溶液にヘキサメチレンテトラミン70.13gを加え、室温で12時間攪拌した後、90℃で2時間攪拌した。溶液を冷却後、得られた沈殿を吸引濾過し、イソプロピルアルコールで沈殿の洗浄を行った後、大気中で300℃で乾燥し、オキシ水酸化ガリウム担体を得た。得られたオキシ水酸化ガリウム担体の電子顕微鏡写真を図1に示す。
このオキシ水酸化ガリウム2.0gを200mLの蒸留水中に懸濁させ、塩化ルテニウム0.1314gを加え攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム2gを蒸留水50mLに溶解した溶液をゆっくり滴下し、2時間攪拌を続け液相還元を行い、2.5重量%のルテニウムの担持を行った。
つぎに、ルテニウムを担持した触媒懸濁液を吸引濾過し、蒸留水およびエタノールを用いて触媒の洗浄を行い、大気中で室温で乾燥させ、ルテニウム/オキシ水酸化ガリウム触媒を得た。
【0035】
(実施例2:ルテニウム/酸化ガリウム触媒の製造)
500mLのビーカーにエタノール200mLを加え、硝酸ガリウム13.7gを溶解した。この溶液にアンモニア水溶液を滴下し、溶液のpHを5.2に上昇させた。室温で2時間攪拌し、ゲル状の水酸化ガリウムの沈殿を得た。得られた沈殿を吸引濾過し、大気中で800℃で焼成し、酸化ガリウム担体を得た。得られた酸化ガリウム担体の電子顕微鏡写真を図2に示す。
この酸化ガリウム1.5gを30mLのエタノールに懸濁させ、ルテニウムアセチルアセトネート錯体0.148gを加え、60℃で3時間攪拌した。懸濁液を蒸発乾固させ空気中150℃で加熱した後、水素気流中で400℃で還元処理することにより、2.5重量%のルテニウムを担持したルテニウム/酸化ガリウム触媒を得た。
【0036】
(実施例3:ルテニウム/ガリウムリン酸塩触媒の製造)
500mLのビーカーに蒸留水200mLを加え、硝酸ガリウム15.5gを溶解した。この溶液にリン酸を4.8g加え攪拌した。この溶液にアンモニア水溶液を滴下し、溶液のpHを5.0に上昇させた。攪拌を1時間行い、白色沈殿を得た。沈殿を吸引濾過し、大気中で160℃で2時間加熱し、大気中で1000℃で焼成を行い、ガリウムリン酸塩担体を得た。得られたガリウムリン酸塩担体の電子顕微鏡写真を図3に示す。
このガリウムリン酸塩1.5gを30mLのエタノールに懸濁させ、塩化ルテニウム0.0986gおよび硝酸ルビジウム0.026gを加え、60℃で3時間攪拌した。懸濁液を蒸発乾固させ空気中150℃で1時間加熱した後、水蒸気流中で400℃で還元処理することにより、2.5重量%のルテニウムを担持したルテニウム/ガリウムリン酸塩触媒を得た。
【0037】
(実施例4:シトラールの選択的水素化)
実施例1で得られた触媒粉末2gを容積200mLのオートクレーブに導入し、これに130mLのシトラールを添加した。オートクレーブを密封した後、攪拌しながら1MPaの圧力で窒素ガスを導入および排気を3回繰り返した後、窒素ガスを1.3MPaの水素ガスで置換し、120℃まで加熱した。水素化中、一定の時間間隔で反応容器からサンプルを採取してガスクロマトグラフィーにより分析した。
シトラールの転換率及び該転換率において生成するネロール/ゲラニオールの選択率、並びに副生物を表1に示す。
【0038】
【表1】
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【0039】
(実施例5)
実施例2で得られた触媒粉末1.5gを容積100mLのオートクレーブに導入し、これに65mLのシトラールを添加した。オートクレーブを密封した後、攪拌しながら1MPaの圧力で窒素ガスを導入および排気を3回繰り返した後、窒素ガスを1.3MPaの水素ガスで置換し、120℃まで加熱した。水素化中、一定の時間間隔で反応容器からサンプルを採取してガスクロマトグラフィーにより分析した。
シトラールの転換率及び該転換率において生成するネロール/ゲラニオールの選択率、並びに副生物を表2に示す。
【0040】
【表2】
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【0041】
(実施例6)
実施例3で得られた触媒粉末1.5gを容積100mLのオートクレーブに導入し、これに65mLのシトラールを添加した。オートクレーブを密封した後、攪拌しながら1MPaの圧力で窒素ガスを導入および排気を3回繰り返した後、窒素ガスを1.3MPaの水素ガスで置換し、120℃まで加熱した。水素化中、一定の時間間隔で反応容器からサンプルを採取してガスクロマトグラフィーにより分析した。
シトラールの転換率及び該転換率において生成するネロール/ゲラニオールの選択率、並びに副生物を表3に示す。
【0042】
【表3】
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【0043】
(実施例7)
実施例1の手順で作製したオキシ水酸化ガリウム2.0gを200mLの蒸留水中に懸濁させ、塩化ルテニウム0.134gを加え攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム2gを蒸留水50mL中に溶解した溶液をゆっくり適下し、2時間攪拌を続け液相還元を行い、2.5重量%のルテニウム担持を行った。ルテニウムを担持した触媒懸濁溶液を吸引濾過し、蒸留水およびエタノールを用いて触媒の洗浄を行った。この触媒を再び200mLの蒸留水中に懸濁させ、この懸濁溶液に塩化白金(IV)酸六水和物を0.133g溶解した。ついで、水素化ホウ素ナトリウム2gを蒸留水50mL中に溶解した溶液をゆっくり滴下し、2時間攪拌を続け液相還元を行い、2.5重量%のルテニウムを担持したオキシ水酸化ガリウム触媒に、さらに2.5重量%のプラチナを担持した。この触媒懸濁溶液を吸引濾過し、蒸留水およびエタノールを用いて触媒の洗浄を行ったあと空気中で乾燥させることにより触媒成分としてルテニウム及び白金を含有する触媒とした。
【0044】
(実施例8)
実施例7で得られた触媒粉末2gを容積200mLのオートクレーブに導入し、これに130mLのシトラールを添加した。オートクレーブを密封した後、攪拌しながら1MPaの圧力で窒素ガスを導入および排気を3回繰り返した後、窒素ガスを1.3MPaの水素ガスで置換し、120℃まで加熱した。水素化中、一定の時間間隔で反応容器からサンプルを採取してガスクロマトグラフィーにより分析した。
シトラールの転換率及び該転換率において生成するネロール/ゲラニオールの選択率、並びに副生物を表4に示す。
【0045】
【表4】
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【0046】
以上、本発明として、ガリウム化合物担体上にルテニウムが担持されたカルボニル基に対する水素化用触媒について説明したが、本発明では触媒活性成分としてPt、Rh、Ir等の貴金属、或いはCo等を使用することができる。
例えば、触媒活性成分としてPtを使用した場合には、同じ反応時間で比較するとルテニウムに比べてシトラールの転換率は減少するが、ネロール/ゲラニオールの選択率は100%となる。したがって、用途に応じて、触媒活性成分として他の貴金属を選択することができる。
【0047】
(実施例9:Pt/オキシ水酸化ガリウム触媒の製造)
オキシ水酸化ガリウム2.0gを200mLの蒸留水に懸濁させ、塩化白金酸0.133gを加えて攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム2gを蒸留水50mLに溶解した溶液をゆっくり滴下し、2時間攪拌を続けて液相還元を行ない、2.5重量%のPtの担持を行った。
つぎに、Ptを担持した触媒懸濁液を吸引濾過し、蒸留水及びエタノールを用いて触媒の洗浄を行い、大気中で室温で乾燥させて、Pt/オキシ水酸化ガリウム触媒を得た。
触媒活性成分としては、塩化白金酸に代えて、塩化第一白金アンモニウム、塩化第二白金アンモニウム等を用いることができる。
【0048】
(実施例10)
実施例9で得られた触媒粉末2gを容積200mLのオートクレーブに導入し、これに130mLのシトラールを添加した。オートクレーブを密封した後、攪拌しながら1MPaの圧力で窒素ガスを導入および排気を3回繰り返した後、窒素ガスを1.3MPaの水素ガスで置換し、120℃まで加熱した。水素化中、一定の時間間隔で反応容器からサンプルを採取してガスクロマトグラフィーにより分析した。
反応時間6時間において、シトラールの転換率は9.8%であり、ネロール/ゲラニオールの選択率は100%であった。



図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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