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明細書 :核酸合成を促進する化合物を含む組成物およびその利用、並びに当該化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4761265号 (P4761265)
公開番号 特開2009-096766 (P2009-096766A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成21年5月7日(2009.5.7)
発明の名称または考案の名称 核酸合成を促進する化合物を含む組成物およびその利用、並びに当該化合物の製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12P  19/34        (2006.01)
C07C 227/08        (2006.01)
C07C 227/18        (2006.01)
C07C 229/10        (2006.01)
C07C 229/16        (2006.01)
C07C 227/40        (2006.01)
C07C 227/42        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12P 19/34 A
C07C 227/08
C07C 227/18
C07C 229/10
C07C 229/16
C07C 227/40
C07C 227/42
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 39
出願番号 特願2007-270700 (P2007-270700)
出願日 平成19年10月17日(2007.10.17)
審査請求日 平成22年9月7日(2010.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】397022911
【氏名又は名称】学校法人甲南学園
発明者または考案者 【氏名】甲元 一也
【氏名】杉本 直己
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 特表2002-505886(JP,A)
特表平09-511133(JP,A)
米国特許第06114150(US,A)
甲元一也 他,核酸の構造安定性に及ぼす細胞内共存基質のモレキュラークラウディング効果,高分子学会予稿集,2006年 9月 5日,Vol.55, No.2,pp.5298-5299(3X13)
調査した分野 C12N 15/00- 15/90
C07C 227/00-229/76
C12Q 1/68
C12P 19/34
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(3’)で表される化合物と一般式(4’)で表される化合物とを、酢酸エチルの存在下で反応させて生成物を沈殿させる反応工程と、
上記反応工程によって得られた沈殿物を濾過によって分離し、当該沈殿物からベタインを精製する工程と、
を含むことを特徴とするベタインの製造方法:
【化1】
JP0004761265B2_000059t.gif
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり;
【化2】
JP0004761265B2_000060t.gif
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、
当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
7はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX1はハロゲンを表す。
【請求項2】
上記一般式(3’)は、さらに下記の(I)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のベタインの製造方法:
(I)R1、R2、およびR3が炭素数2以上の基である。
【請求項3】
上記R1、R2、およびR3が炭素数2~4の基であることを特徴とする請求項2に記載のベタインの製造方法。
【請求項4】
上記一般式(3’)において、R1、R2、およびR3が同一の基であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のベタインの製造方法。
【請求項5】
核酸の融解温度を低下させるために使用される組成物であって、
当該組成物が、以下の化合物4、化合物5、化合物6および化合物8からなる群から選択される1つ以上の化合物、またはそれらの塩を含むことを特徴とする組成物。
【化3】
JP0004761265B2_000061t.gif

【請求項6】
核酸の融解温度を低下させるために使用されるキットであって、請求項5に記載の組成物を含むことを特徴とするキット。
【請求項7】
請求項5に記載の組成物と核酸とを少なくとも含む混合物を、加熱する工程を含むことを特徴とする核酸の熱変性方法。
【請求項8】
請求項5に記載の組成物、鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも一対のプライマー、および1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を、加熱する工程を含むことを特徴とする核酸の合成方法。
【請求項9】
ポリメラーゼ連鎖反応により行われる、請求項8に記載の核酸の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下「PCR法」という)をはじめとする核酸合成法において、核酸合成効率を向上させることができる化合物を含む組成物、および当該組成物を用いた核酸の変性方法、核酸の合成方法、並びに当該化合物の効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCR法をはじめとする核酸合成法は、分子生物学のみならず、臨床検査、DNA鑑定、食品分析などの様々な分野においてきわめて有用な技術である。例えば、PCR法については例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
PCR法は、(1)一般的には約90~100℃における鋳型DNAの熱変性、(2)約37~75℃における鋳型DNAとプライマーとのアニーリング、および(3)約55~80℃におけるプライマーの伸長反応からなる反応サイクルを繰り返すことで、プライマーに区切られた領域のDNAを高度に増幅する技術である。
【0004】
ところでDNAの熱安定性は2つの塩基対(A(アデニン)-T(チミン)、G(グアニン)-C(シトシン))の含量に依存して変化することが知られている。GC含量が増大するとその熱安定性は高くなる、つまり融解温度が高くなることが一般的に知られている。
【0005】
このようにGC含量が高いDNA領域をPCR法によって増幅する場合、融解温度が熱変性温度よりも高い場合がある。かかる場合、通常の熱変性温度では鋳型DNAの熱変性が十分に起こらない。また熱変性温度をいたずらに高くすれば、DNAポリメラーゼが失活してしまう。よって、GC含量の高いDNA領域を、PCR法で増幅することは困難な場合が多々見られた。特に鋳型DNAとして用いられるゲノムDNA上にはGC含量が高い領域が多く、かかる領域を増幅することは困難であった。
【0006】
上記問題点を解決するために、これまでに耐熱性のDNAポリメラーゼが種々開発され利用されている。また、上記問題を解決するために、高いGC含量のDNA領域の融解温度を低下させるための添加剤(「融解温度調整剤」という)が種々開発され、利用されるようになった。ここで上記融解温度調整剤としては、グリシンベタイン、メチルグリシン、サルコシン、グリシン、プロリン、グリセロール、エクトイン、アミン-N-オキシド、スルホキシド(DMSOなど)、多糖、PEG、非イオン性界面活性剤(Tween20、NP40など)、アミド(DMF、ホルムアミドなど)、カルボン酸誘導体(クエン酸、シュウ酸など)、SSBタンパク質、BSAなどが報告されている。これらの融解温度調整剤は、単独または混合物として、PCRの反応バッファー中へ調整剤に固有の最適濃度となるように(例えばグリシンベタインの場合、0.5~3.0Mの濃度となるように)添加される。そして、DNAの融解温度を熱変性温度以下に降下させている。例えば、特許文献1~5には、核酸合成の反応溶液中に上記で例示した各種融解温度調整剤を添加することが開示されている。融解温度調整剤としては、グリシンベタインが一般的に利用されている。

【非特許文献1】Nature, 324巻(6093), 1986年, p.13-19
【特許文献1】特開平8-38198号公報(公開日:平成8年(1996)2月13日)
【特許文献2】特開2000-342287号公報(公開日:平成12年(2000)12月12日)
【特許文献3】特表2002-505886号公報(公表日:平成14年(2002)2月26日)
【特許文献4】特開2003-144169号公報(公開日:平成15年(2003)5月20日)
【特許文献5】特開2004-141105号公報(公開日:平成16年(2004)5月20日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ホルムアミド、DMSOなどの溶剤系融解温度調整剤は融解温度を降下させる効果が比較的高い。ただし、それと同時にDNAポリメラーゼを失活させてしまうという問題点を溶剤系融解温度調整剤は有している。よって結果として、GC含量高いDNA領域を合成することは依然困難な場合が多い。また、グリセロール、エクトイン、グリシンベタイン、ポリエチレングリコールなどの非溶剤系融解温度調整剤はDNAポリメラーゼを失活させることはほとんどないが、融解温度を降下させる効果が低いという問題点を有しており、非溶剤系融解温度調整剤を高濃度添加しなければならない。また融解温度調整剤を種々混合する場合であっても、融解温度を効果的に降下させるために、DNAやポリメラーゼ等の反応条件に応じて、融解温度調整剤の配合割合を変化させなければならない。よって従来公知の融解温度調整剤は、十分に満足が得られるものではなかった。
【0008】
ところで、グリシンベタインをはじめとするベタインは、双性イオン化合物であるため、極性が高くベタインを液相で合成しても分離精製が極めて困難である。例えば、ベタインの液相合成については非特許文献2および3に記載されている。よってベタインは、固相合成で製造されている(例えば非特許文献4および5参照)。そのため、ベタインを大量に合成することができないという問題点もある。
<nplcit num="2"><text>J. W. Conforth, A. J. Henry, J. Chem. Soc., 9巻, 1952年, p.601-602</text></nplcit><nplcit num="3"><text>A. Le Berre, A. Delacroix, Bull. Soc. Chim. Fr.,1973年, p.2404-2410</text></nplcit><nplcit num="4"><text>A. Cosquer, V. Pichereau, D. Le Mee, M. Le Roch, J. Renault, B. Carboni, P. Uriac, T. Bernard, Toxicity and osmoprotective activities of analogues of glycine betaine obtained by solid phase organic synthesis towards Sinorhizobium meliloti, Bioorg. Med. Chem. Lett., 9巻, 1999年, p.49-54</text></nplcit><nplcit num="5"><text>A. Cosquer, M. Ficamos, M. Jebbar, J. - C. Corbel, G. Choquet, C. Fontenelle, P. Uriac, T. Bernard, Antibacterial acitivity of glycine betaine analogues: involvement of osmoporters, Bioorg. Med. Chem. Lett., 14巻, 2004年, p.2061-2065 そこで本発明は、DNAをはじめとする核酸の融解温度を降下する効果が高く、かつDNAポリメラーゼ等の核酸合成酵素を失活させない化合物を見出し、核酸合成の際に使用する組成物、核酸合成に使用するキット、並びに当該組成物を用いた核酸の変性方法および核酸の合成方法を提供することを目的とした。</text></nplcit>
【0009】
さらに本発明は上記化合物の効率的な製造方法を提供することを目的とした。より具体的には効率的なベタインをはじめとする双性イオン化合物の製造方法を本発明は提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の構造を有するベタインが融解温度調整剤として顕著に優れているということを本発明者らが発見し、本発明を完成させるに至った。さらに、本発明者らはベタインをはじめとする双性イオン化合物を簡便かつ効率的に製造できる方法を見出すことに成功した。すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
【0011】
本発明にかかる組成物は、核酸を合成する際に使用される組成物であって、
当該組成物が、以下の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体を含むことを特徴としている:
【0012】
【化1】
JP0004761265B2_000002t.gif

【0013】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
1は長周期型周期表における5B族元素、かつ、
1は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表し、かつ、
下記の(I)または(II)の1つ以上を満たす:
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(II)R6が炭素数3以上の基である;
【0014】
【化2】
JP0004761265B2_000003t.gif

【0015】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15およびR16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、また2つのR16は同一であっても異なっていてもよく、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
11およびA12は長周期型周期表における5B族元素を表し、同一であっても異なっていてもよく、かつ、
11は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表し、2つのZ11は同一であっても異なっていてもよく、かつ、
下記の(III)または(IV)の1つ以上を満たす:
(III)R11、R12、R13およびR14のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(IV)R15およびR16のいずれか1つ以上が炭素数3以上の基である。
【0016】
また本発明にかかる組成物は、核酸を合成する際に使用される組成物であって、
当該該組成物が、以下の一般式(1’)および一般式(2’)で表される化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体を含むことを特徴とする組成物であってもよい:
【0017】
【化3】
JP0004761265B2_000004t.gif

【0018】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
下記の(I)または(II)の1つ以上を満たす:
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(II)R6が炭素数3以上の基である;
【0019】
【化4】
JP0004761265B2_000005t.gif

【0020】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15およびR16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、また2つのR16は同一であっても異なっていてもよく、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
下記の(III)または(IV)の1つ以上を満たす:
(III)R11、R12、R13およびR14のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(IV)R15およびR16のいずれか1つ以上が炭素数3以上の基である。
【0021】
また本発明にかかる組成物は、上記R1、R2、R3、R11、R12、R13、およびR14が、末端に極性官能基を含まない基であることが好ましい。
【0022】
また本発明にかかるキットは、核酸を合成する際に使用されるキットであって、上記本発明にかかる組成物を含むことを特徴としている。
【0023】
また本発明にかかる核酸の熱変性方法は、上記本発明にかかる組成物と核酸とを少なくとも含む混合物を、加熱する工程を含むことを特徴としている。
【0024】
また本発明にかかる核酸の合成方法は、上基本発明にかかる組成物、鋳型となる核酸分子、核酸合成酵素、少なくとも一対のプライマー、および1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を、加熱する工程を含むことを特徴としている。
【0025】
また本発明にかかる核酸の合成方法は、ポリメラーゼ連鎖反応により行われることが好ましい。
【0026】
一方、本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、以下の一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを、エステル系溶媒の存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴としている:
【0027】
【化5】
JP0004761265B2_000006t.gif

【0028】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、A1は長周期型周期表における5B族元素を表し、;
【0029】
【化6】
JP0004761265B2_000007t.gif

【0030】
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
7はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX1はハロゲンを表し、
1は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表す。
【0031】
また本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、以下の一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを、エステル系溶媒の存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴としている:
【0032】
【化7】
JP0004761265B2_000008t.gif

【0033】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、A1は長周期型周期表における5B族元素を表し、;
【0034】
【化8】
JP0004761265B2_000009t.gif

【0035】
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
7はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX1は、ハロゲンを表し、Z1は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表し、
さらに下記の(I)または(II)の1つ以上の条件を満たす:
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(II)R6が炭素数3以上の基である。
【0036】
また上記本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、上記エステル系溶媒が酢酸エチルであることが好ましい。
【0037】
また本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、以下の一般式(5)で表される化合物と、一般式(6)で表される化合物とを、アルコールの存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴としている:
【0038】
【化9】
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【0039】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、A11およびA12は長周期型周期表における5B族元素を表し、同一であっても異なっていてもよく;
【0040】
【化10】
JP0004761265B2_000011t.gif

【0041】
16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
17はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX11はハロゲンを表し、
11は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表す。
【0042】
また本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、以下の一般式(5)で表される化合物と、一般式(6)で表される化合物とを、アルコールの存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴とする双性イオン化合物の製造方法:
【0043】
【化11】
JP0004761265B2_000012t.gif

【0044】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
11およびA12は長周期型周期表における5B族元素を表し、同一であっても異なっていてもよく;
【0045】
【化12】
JP0004761265B2_000013t.gif

【0046】
16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
17はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、
11は、ハロゲンを表し、
11は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表し、
さらに下記の(III)または(IV)の1つ以上を満たす:
(III)R11、R12、R13およびR14のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(IV)R15およびR16のいずれか1つ以上が炭素数3以上の基である。
【0047】
また本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、上記アルコールがエタノールであることが好ましい。
【0048】
また上記本発明にかかる双性イオン化合物の製造方法は、上記反応工程によって得られた沈殿物から双性イオン化合物を精製する工程を含む方法であってもよい。
【0049】
一方、本発明にかかるベタインの製造方法は、以下の一般式(3’)で表される化合物と一般式(4’)で表される化合物とを、エステル系溶媒の存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴としている:
【0050】
【化13】
JP0004761265B2_000014t.gif

【0051】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり;
【0052】
【化14】
JP0004761265B2_000015t.gif

【0053】
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
7はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX1はハロゲンを表す。
【0054】
また本発明にかかるベタインの製造方法は、以下の一般式(3’)で表される化合物と一般式(4’)で表される化合物とを、エステル系溶媒の存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴とする方法であってもよい:
【0055】
【化15】
JP0004761265B2_000016t.gif

【0056】
ここで、R1、R2、およびR3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり;
【0057】
【化16】
JP0004761265B2_000017t.gif

【0058】
6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
7はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX1は、ハロゲンを表し、
さらに下記の(I)または(II)の1つ以上の条件を満たす:
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(II)R6が炭素数3以上の基である。
【0059】
また上記本発明にかかるベタインの製造方法は、上記エステル系溶媒が酢酸エチルであることが好ましい。
【0060】
また本発明にかかるベタインの製造方法は、以下の一般式(5’)で表される化合物と、一般式(6’)で表される化合物とを、アルコールの存在下で反応させる反応工程を含むことを特徴とする方法であってもよい:
【0061】
【化17】
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【0062】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり;
【0063】
【化18】
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【0064】
16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
17はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、かつX11は、ハロゲンを表す。
【0065】
また本発明にかかるベタインの製造方法は、以下の一般式(5’)で表される化合物と、一般式(6’)で表される化合物とを、アルコールの存在下で反応させる反応工程を含む方法であってもよい:
【0066】
【化19】
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【0067】
ここで、R11、R12、R13、およびR14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよく、当該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基は官能基を含んでいてもよい基であり、かつ、
15は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり;
【0068】
【化20】
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【0069】
16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基であり、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基は官能基を含んでいてもよい基であり、
17はアルキル基、アリール基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、
11は、ハロゲンを表し、
さらに下記の(III)または(IV)の1つ以上を満たす:
(III)R11、R12、R13およびR14のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(IV)R15およびR16のいずれか1つ以上が炭素数3以上の基である。
【0070】
また上記本発明にかかるベタインの製造方法は、上記アルコールがエタノールであることが好ましい。
【0071】
また本発明にかかるベタインの製造方法は、上記反応工程によって得られた沈殿物からベタインを精製する工程を含む方法であってもよい。
【発明の効果】
【0072】
上記本発明にかかる組成物は、DNAの融解温度を低下させる効果に関し、融解温度調整剤として一般的に利用されており、かつその効果が高いとされているグリシンベタインと比較して10倍以上の効果を奏するものである。また本発明の組成物は、タンパク質の高次構造に影響を与えない、すなわちタンパク質を変性させないものである。よって、本発明にかかる組成物を用いることによって、PCR等の核酸合成の反応液中に対する融解温度調整剤の添加量を少なくすることができる。また、本発明にかかる組成物はDNAポリメラーゼ等の核酸合成酵素を失活させないために、核酸合成反応を効率よく、継続的に行うことができる。
【0073】
したがって、本発明によれば、これまで困難であったGC含量の高い核酸領域を熱変性させることが可能となり、当該GC含量の高い核酸領域を効率よく合成することができるという効果を享受できる。
【0074】
また本発明にかかる分子内に1組の双性イオンを持つ双性イオン化合物(例えばベタイン)の製造方法は、反応溶媒として酢酸エチルをはじめとするエステル系溶媒を用いて行うことを特徴としている。そうすることで、前駆体(例えばベタイン前駆体)が生成と共に沈殿する。それゆえ、前駆体(例えばベタイン前駆体)を濾過のみで簡便に分離精製することができる。さらに前駆体(例えばベタイン前駆体)を水に溶解させ、陰イオン交換樹脂に通過させて乾燥させると、目的物である双性イオン化合物(例えばベタイン)へ定量的に転化することができる。
【0075】
また本発明にかかる分子内に2組の双性イオンを持つ双性イオン化合物(例えばベタイン)の製造方法は、反応溶媒としてアルコール(例えばエタノール)を用いて行うことを特徴としている。そうすることで、反応中間体であるモノ付加体が沈殿することなく、反応の進行と共に目的物である前駆体(例えばベタイン前駆体)のみが沈殿する。その後、前駆体(例えばベタイン前駆体)を水に溶解させ、陰イオン交換樹脂に通過させ乾燥させると、目的物である双性イオン化合物(例えばベタイン)へ定量的に転化することができる。それゆえ、目的物である双性イオン化合物(例えばベタイン)を簡便に分離精製することができる。
【0076】
したがって、本発明にかかる双性イオン化合物(例えばベタイン)の製造方法によれば、これまで大量製造が困難であった双性イオン化合物(例えばベタイン)を簡便かつ効率的に製造することができるという効果を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り「☆☆~★★」は、「☆☆以上、★★以下」を意味する。
【0078】
<本発明にかかる組成物>
本発明にかかる組成物は、核酸を合成する際に使用される組成物に関する。ここで「核酸を合成する」とは、PCRをはじめとする核酸増幅、逆転写反応、および塩基配列決定反応等の核酸合成反応を意味する。また上記「核酸」にはDNAおよびRNAが含まれる。ただし本発明にかかる組成物は、これまで融解温度が高いことが原因でPCR等の合成反応が困難であった核酸の融解温度を低下させることを原理として効果を奏するものであるため、本発明の説明における「核酸」は特に二本鎖を意味する。また本発明にかかる組成物は、特にGC含量の高い核酸を合成する際に有効である。ここで「GC含量が高い」とは、GC含量が50%以上、より好ましくは60%以上であることを意味する。
【0079】
本発明にかかる組成物は、既述の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体を含む組成物である。一般式(1)および(2)で表される化合物は、その構造から双性イオン化合物であることがわかる。特に記述の一般式(1’)および一般式(2’)で表される化合物は、ベタインに属することがわかる。なお、一般に「グリシンベタイン=トリメチルグリシン」のことを単に「ベタイン」と称する場合があるが、本発明の説明においては「グリシンベタイン=トリメチルグリシン」を「ベタイン」の下位概念であるとして、それぞれを区別する。
【0080】
一般式(1)において、R1、R2、R3は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択される基である。R1、R2、R3は全て同一であっても、異なっていてもよい。また上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基には、エーテル、エステル、カルボニル、アミド、アミノ、ハロ、ニトロ、ニトリル、スルホン、スルフィド等の官能基が含まれていてもよい。ただし、上記R1、R2、R3の末端には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、エポキシ基をはじめとする極性官能基が含まれないことが好ましい。上記R1、R2、R3の末端に極性官能基が含まれない方が、核酸の融解温度を降下させる効果が高い場合があるからである。
【0081】
また一般式(1)において、R6はアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基である。そして上記アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基には、エーテル、エステル、カルボニル、アミド、アミノ、ハロ、ニトロ、ニトリル、スルホン、スルフィド等の官能基が含まれていてもよい。
【0082】
また一般式(1)においてA1は、窒素(N)、リン(P)をはじめとする長周期型周期表における5B族元素を表す。
【0083】
また一般式(1)において、Z1は-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表す。
【0084】
さらに一般式(1)において下記の(I)または(II)の1つ以上が満たされる。
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(II)R6が炭素数3以上の基である。
【0085】
なお、R1、R2、R3およびR6の炭素数は、一般式(1)で表される化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体(以下「化合物等」という)が核酸合成を行う反応溶液中に溶解する程度の条件であれば、炭素数の上限は特に限定されるものではない。
【0086】
また一般式(2)において、R11、R12、R13、R14は、水素を除く、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基からなる群より独立して選択される基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。また上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基には、エーテル、エステル、カルボニル、アミド、アミノ、ハロ、ニトロ、ニトリル、スルホン、スルフィド等の官能基が含まれていてもよい。ただし、上記R11、R12、R13、R14の末端には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、エポキシ基をはじめとする極性官能基が含まれないことが好ましい。上記R11、R12、R13、R14の末端に極性官能基が含まれない方が、核酸の融解温度を降下させる効果が高い場合があるからである。
【0087】
また一般式(2)におけるR15、R16は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基からなる群より独立して選択され、同一であっても異なっていてもよい。なお、一般式(2)において2つ存在するR16同士についても、同一であっても異なっていてもよい。また上記アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基には、エーテル、エステル、カルボニル、アミド、アミノ、ハロ、ニトロ、ニトリル、スルホン、スルフィド等の官能基が含まれていてもよい。
【0088】
また一般式(2)におけるA11およびA12は、窒素(N)、リン(P)をはじめとする長周期型周期表における5B族元素を表し、同一であっても異なっていてもよい。
【0089】
また一般式(2)におけるZ11は、-COO、-SO3、-NO3、または-HPO4を表す。なお一般式(2)において2つ存在するZ11同士についても、同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
そして一般式(2)において下記の(III)または(IV)の1つ以上が満たされる。
(III)R11、R12、R13およびR14のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である、
(IV)R15およびR16のいずれか1つ以上が炭素数3以上の基である。
【0091】
なお、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の炭素数は、一般式(2)で表される化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体(以下「化合物等」という)が核酸合成を行う反応溶液中に溶解する程度の条件であれば、炭素数の上限は特に限定されるものではない。
【0092】
本発明にかかる組成物は、上記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物かららなる群から選択される1つ以上の化合物が含まれていればよい。また本発明にかかる組成物には上記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物の塩、またはそれらの誘導体であってもよい。また2つ以上の化合物等が組成物に含まれる場合の配合比率は特に限定されるものではなく、核酸の合成反応に適した配合比率を適宜検討のうえ、採用すればよい。
【0093】
なお本発明にかかる組成物に含まれる一般式(1)および一般式(2)で表される化合物は、分子内に少なくとも1組以上のカチオンとアニオンとの双性イオンを有する双性イオン化合物(例えばベタイン)であって、(a)カチオンとアニオンと間のスペーサー長が少なくともC3以上である、および/または(b)アンモニウム基の置換基がC2以上である双性イオン化合物(例えばベタイン)であるとも表現できる。
【0094】
また本発明にかかる組成物には、核酸合成時に好適に使用されている緩衝剤または塩類が含まれていてもよい。上記、緩衝剤としては特に限定されるものではないが、トリス(TR1S)、トリジン(TRlC1NE)、ビスートリシン(BlS-TR1C1NE)、へペス(HEPES)、モプス(MOPS)、テス(TES)、タプス(TAPS)、ピペス(P1PES)、及びキャプス(CAPS)等が挙げられる。また上記塩としては特に限定されるものではないが、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウ七、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム、酢酸リチウム等が挙げられる。
【0095】
さらに本発明にかかる組成物には、融解温度調整剤として公知である、グリシンベタイン、メチルグリシン、サルコシン、グリシン、プロリン、グリセロール、エクトイン、アミン-N-オキシド、スルホキシド(DMSOなど)、多糖、PEG、非イオン性界面活性剤(Tween20、NP40など)、アミド(DMF、ホルムアミドなど)、カルボン酸誘導体(クエン酸、シュウ酸など)、SSBタンパク質、BSA等が、補助成分として含まれていてもよい。
【0096】
さらに本発明にかかる組成物には、核酸合成活性を有する酵素(「核酸合成酵素」という)が含まれていてもよい。上記核酸合成酵素は、DNAポリメラーゼであっても、RNAポリメラーゼであっても、逆転写酵素であってもよい。
【0097】
さらに本発明にかかる組成物には、核酸合成に必要なヌクレオチド成分(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、dITP、dUTP、α-チオ-dNTP類、ビオチン-dUTP、フルオレセイン-dUTP、シゴキシゲニン-dUTP等)が含まれていてもよい。
【0098】
また本発明にかかる組成物の状態は、特に限定されるものではなく、液体であっても、固体の状態であってもよい。
【0099】
また上記本発明にかかる組成物を用いて、核酸を合成する際に使用されるキット(「核酸合成キット」という)を構成することができる。本発明にかかる核酸合成キットには、本発明の組成物の他に、既述の緩衝剤、塩類、核酸合成酵素、ヌクレオチド成分等が含まれていてもよい。また本発明にかかる核酸合成キットには、核酸合成に必要なプライマー、鋳型となる核酸が含まれていてもよい。また上記核酸合成キットを構成する成分を格納するための1つ以上の容器(例えば、バイアル、管、アンプル、ビンなど)が含まれていてもよい。
【0100】
<本発明にかかる組成物の製造方法>
上記で説示した、本発明にかかる組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、当業者が通常行い得る合成方法を用い、一般式(1)または(2)、あるいは一般式(1’)または一般式(2’)で表される化合物等を製造することによって達成される。なお、以後の説明において、一般式(1’)で表される化合物、および一般式(2’)で表される化合物の製造方法を一実施形態として説明するが、一般式(1)または(2)で表される他の化合物についても同様に製造することができる。なお、一般式(1’)で表される化合物のことを「ベタイン1」と称し、一般式(2’)で表される化合物のことを「ベタイン2」と便宜上称する。ベタイン1および2は、例えば、非特許文献2や3に記載された方法(液相合成)、または非特許文献4や5に記載された方法(固相合成)にしたがって合成され得る。ただし、目的とするベタイン1および2は双性イオン化合物であるため、極性が高い。よって上記液相合成でベタイン1および2を合成しても、分離精製が極めて困難である。一方、固相合成では、ベタイン1および2を大量に合成することができないという問題点もある。
【0101】
そこで、本発明者らは、ベタイン1およびベタイン2を効率よく合成し得る方法(以下「本方法」という)を独自に完成させた。本方法によれば、目的物であるベタイン1の前駆体およびベタイン2の前駆体が反応液中に沈殿する。よって、目的物の分離精製が極めて簡便に行うことができる。なお、本方法は、ベタイン1およびベタイン2のみに適用されるわけではなく、ベタイン全般の合成に利用可能であるということを当業者は容易に理解する。
【0102】
以下に本方法の一実施形態を、図2を用いて説明する。なお本方法はこれに限定されるものではない。図2(a)はベタイン1の製造方法を示し、同図(b)はベタイン2の製造方法を示す図である。
【0103】
図2(a)に示される方法では、まず既述の一般式(3’)で表される化合物(便宜上「化合物III」と称する)と、既述の一般式(4’)で表される化合物(便宜上「化合物IV」と称する)とを、酢酸エチルの存在下で反応させる反応工程を経て前駆体1を製造している。そして反応工程によって得られた前駆体1を水に溶解し、陰イオン交換カラム(陰イオン交換樹脂:Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402、ローム アンド ハース社製)を用いてベタイン1を取得している。より具体的に説明すれば以下の通りである。
(a)化合物IIIを酢酸エチルに溶解して溶液とし、化合物IVを当該溶液に滴下し反応させることによって前駆体1が溶液中に沈殿物として生成させる(反応工程)。
(b)反応工程で得られた前駆体1を濾別し、これを蒸留水(またはイオン交換水)に溶解する。この前駆体1の水溶液を、陰イオン交換カラム(陰イオン交換樹脂:Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402、ローム アンド ハース社製)に通液する。陰イオン交換カラムに吸着したベタイン1を、蒸留水またはイオン交換水を用いて溶離させる。その後、溶離液を真空乾燥させて最終的にベタイン1を取得する(精製工程)。
【0104】
上記反応工程において化合物IIIを酢酸エチルに溶解する際の比率は特に限定されるものではなく適宜設定され得る。また反応工程において化合物IVを、化合物IIIの酢酸エチル溶液に滴下し、反応させる際には、反応効率の観点から、溶液を撹拌することが好ましい。撹拌は従来公知の撹拌手段を用いればよい。また上記反応時間は、特に限定されるものではく、前駆体1の生成量を指標に適宜設定すればよい。また反応温度についても特に限定されるものではないが、安全性の観点から室温で行うことが好ましい。
【0105】
一方、精製工程においては、Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402が充填されたカラムを使用しているが、本方法はこれに限定されるものではなく、ベタインを吸着し得る陰イオン交換樹脂が利用可能である。Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402の他に、本方法に適用可能なイオン交換樹脂としては例えば、DOW社製 Dowex1x8が挙げられる。ベタイン1の溶離条件はイオン交換樹脂に応じて最適な条件を適宜採用すればよい。
【0106】
なお図2(a)では一般式(4’)のR7がエチル基(図2(a)中「Et」で示す)である場合、および酢酸エチル(図2(a)中「AcOEt」で示す)を溶媒として用いる場合について示しているが、本方法はこれに限定されない。また、一般式(3’)および一般式(4’)におけるR1~R6の説明は、一般式(1’)の説明と共通するために省略する。一般式(4’)におけるR7は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基であれば特に限定されるものではない。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基の炭素数は、1~12であることが好ましい。またアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0107】
ベタイン1を製造する際に利用可能な溶媒は、上記酢酸エチルに限られず、酢酸メチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒が適用可能である。そして、製造する化合物に応じて適宜最適な溶媒を選択すればよい。
【0108】
一方、一般式(4’)におけるX1はF、Cl、Br、I等のハロゲンを表す。上記X1としては、特にBrが好ましい。
【0109】
また本方法を、本発明にかかる組成物を構成する化合物以外に利用し得る。この場合、例えば、一般式(3’)および一般式(4’)は、下記(I)および(II)の条件を満たす必要はない。
(I)R1、R2、およびR3のいずれか1つ以上が炭素数2以上の基である。
(II)R6が炭素数3以上の基である。
【0110】
一方、図2(b)は既述の一般式(5’)で表される化合物(便宜上「化合物V」と称する)と、既述の一般式(6’)で表される化合物(便宜上「化合物VI」と称する)とを、エタノールの存在下で反応させる反応工程を経て、前駆体2を製造している。そして反応工程によって得られた前駆体2を水に溶解し、陰イオン交換カラム(陰イオン交換樹脂:Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402、ローム アンド ハース社製)を用いてベタイン2を取得している。より具体的に説明すれば以下の通りである。
(c)化合物Vをエタノールに溶解して溶液とし、化合物VIを当該溶液に滴下し反応させることによって前駆体2が溶液中に沈殿物として生成させる(反応工程)。
(d)反応工程で得られた前駆体2を濾別し、これを蒸留水(またはイオン交換水)に溶解する。この前駆体2の水溶液を、陰イオン交換カラム(陰イオン交換樹脂:Amberlite(アンバーライト:登録商標)IR-402、ローム アンド ハース社製)に通液する。陰イオン交換カラムに吸着したベタイン2を、蒸留水またはイオン交換水を用いて溶離させる。その後、溶離液を真空乾燥させて最終的にベタイン2を取得する(精製工程)。
【0111】
ベタイン1の製造方法と共通する事項については、ベタイン2の製造方法の説明においてそれを援用する。
【0112】
上記反応工程において化合物Vをエタノールに溶解する際の比率は特に限定されるものではなく、適宜設定され得る。
【0113】
なお図2(b)では一般式(6’)のR7がエチル基(図2(b)中「Et」で示す)である場合、およびエタノール(図2(b)中「EtOH」で示す)を溶媒として用いる場合について示しているが、本方法はこれに限定されない。また、一般式(5’)および一般式(6’)におけるR11~R16の説明は、一般式(2’)の説明と共通するために省略する。一般式(6’)におけるR17は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基であれば特に限定されるものではない。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基の炭素数は、1~12であることが好ましい。またアルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0114】
ベタイン2を製造する際に利用可能な溶媒は、上記エタノールに限られず、メタノール、ブタノール等のアルコールが適用可能である。そして、製造する化合物に応じて適宜最適な溶媒を選択すればよい。
【0115】
一方、一般式(6’)におけるX11はF、Cl、Br、I等のハロゲンを表す。上記X1としては、特にBrが好ましい。
【0116】
なお、一般式(1)で表される双性イオン化合物は、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物を用いて製造され得る。この場合は、上記ベタイン1の製造方法における化合物IIIを一般式(3)で表される化合物と読み替え、化合物IVを一般式(4)で表される化合物と読み替えればよい。また一般式(3)および一般式(4)において一般式(1)と共通する官能基に関する説明については、一般式(1)のそれを援用する。
【0117】
また、一般式(2)で表される双性イオン化合物は、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物を用いて製造され得る。この場合は、上記ベタイン2の製造方法における化合物Vを一般式(5)で表される化合物と読み替え、化合物VIを一般式(6)で表される化合物と読み替えればよい。また一般式(5)および一般式(6)において一般式(2)と共通する官能基に関する説明については、一般式(2)のそれを援用する。
【0118】
<本発明にかかる組成物の利用>
本発明にかかる組成物は、核酸の融解温度を降下させる効果が極めて高いものである。それゆえ、これまで融解温度が高く熱変性させることが困難であった核酸、特にGC含量の高い核酸領域を容易に熱変性させることが可能である。融解温度が高く熱変性させることが困難であった核酸、特にGC含量の高い核酸領域を容易に熱変性させることが可能となることで、これまで熱変性させることができなかったことが原因で合成することが困難であった核酸領域を合成することが可能となる。ここで「熱変性させる」とは、二本鎖の核酸を熱作用によって一本鎖にすることを意味する。また「核酸の溶解温度を降下させる」とは、熱変性する温度を降下させる効果のことを意味する。
【0119】
ここで核酸が熱変性したどうかについては、核酸溶液中の紫外線吸収スペクトルを測定することによって判断できる。溶液中において核酸は二本鎖を形成することで紫外可視吸収スペクトルにおける極大吸収波長(おおよそ260nm付近)の吸光度の減少(「淡色効果」という)が確認される。この淡色効果の消失を確認することによって、核酸が二本鎖から一本鎖になった(熱変性した)ことを判断することができる。また、温度-吸光度からなるシグモイド状の曲線(融解曲線)における変曲点(融解温度)の変化を確認することによって、核酸の融解温度の変化を確認することができる。
【0120】
本発明にかかる組成物を用いて核酸を熱変性させる場合、本発明にかかる組成物と熱変性させようとする核酸とを少なくとも含む混合物(反応液)に含まれていることが好ましい双性イオン化合物(例えばベタイン1、ベタイン2)またはそれらの塩もしくは誘導体の濃度は、変性させようとする核酸の種類や濃度によって異なるために特に限定されるものではないが、通常、GC含量が60%を超えるものでは、0.0001~3.0Mの濃度で含まれていることが好ましく、0.001~1.0Mの濃度で含まれていることがさらに好ましく、0.01~0.1Mの濃度で含まれていることが最も好ましい。また、GC含量が60%未満のものに関してはさらに低い濃度で適宜、調整を行う。本発明にかかる組成物は、核酸の融解温度を降下させる効果が極めて高いために、上記のごとく低い濃度であっても十分な効果が得られる。
【0121】
また本発明にかかる組成物を用いて核酸を合成する場合は、PCR等の核酸増幅反応、逆転転写反応、塩基配列決定時の核酸合成反応における反応溶液中に本発明にかかる組成物が含まれるようにすればよい。よって、核酸を合成する反応の詳細については特に限定されるものではない。例えば、PCR法による核酸合成において本発明にかかる組成物を用いる場合は、当該組成物、鋳型となる核酸、核酸合成酵素、少なくとも1対のプライマー、および1種類以上のヌクレオチドを少なくとも含む混合物を反応溶液として、熱変性→アニーリング→伸長のサーマルサイクルを繰り返し実施すればよい。この反応溶液中に含まれていることが好ましい双性イオン化合物(例えばベタイン1、ベタイン2)またはそれらの塩もしくは誘導体の濃度については既述の通りである。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0123】
〔合成例1〕前駆体1の合成
分子内に1組の双性イオンを持つベタイン(「ベタイン1」という)は、アルキル鎖長や組み合わせによらず、図2(a)に示すスキームに従って合成することが可能である。ここでは、一例として図2(a)のR1、R2、R3がエチル基で、R6がメチレン基である前駆体1(2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-酢酸エチルエステル臭化物塩)の合成例を示す。なお、その他の前駆体1の合成は、下記に準じて行われた。
【0124】
トリエチルアミン100mlを酢酸エチル100mlに溶解させた。この溶液に対してブロモ酢酸エチル(37.5g)をゆっくりと滴下した。滴下後、この溶液を室温で一晩攪拌した。その後、生成した沈殿を濾別した。得られた沈殿を真空乾燥して、前駆体1(2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-酢酸エチルエステル臭化物塩)を得た(収量50.2g、収率86%)。
【0125】
上記で得られた化合物の同定は、IR、および1H NMRによって行われた。表1にIR解析の結果を、表2に1H NMR解析の結果を示す。
【0126】
【表1】
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【0127】
【表2】
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【0128】
IR、および1H NMRの結果、目的物である2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-酢酸エチルエステル臭化物塩(すなわち、図1における化合物4の前駆体)が合成されたことが確認できた。
【0129】
図1における化合物2の前駆体を合成した結果を、表3(IR)および表4(1H NMR)に示す。表3および4によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0130】
【表3】
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【0131】
【表4】
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【0132】
図1における化合物3の前駆体を合成した結果を、表5(IR)および表6(1H NMR)に示す。表5および6によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0133】
【表5】
JP0004761265B2_000026t.gif

【0134】
【表6】
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【0135】
図1における化合物5の前駆体を合成した結果を、表7(IR)および表8(1H NMR)に示す。表7および8によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0136】
【表7】
JP0004761265B2_000028t.gif

【0137】
【表8】
JP0004761265B2_000029t.gif

【0138】
図1における化合物6の前駆体を合成した結果を、表9(IR)および表10(1H NMR)に示す。表9および10によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0139】
【表9】
JP0004761265B2_000030t.gif

【0140】
【表10】
JP0004761265B2_000031t.gif

【0141】
図1における化合物7の前駆体を合成した結果を、表11(IR)および表12(1H NMR)に示す。表11および12によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0142】
【表11】
JP0004761265B2_000032t.gif

【0143】
【表12】
JP0004761265B2_000033t.gif

【0144】
図1における化合物8の前駆体を合成した結果を、表13(IR)および表14(1H NMR)に示す。表13および14によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0145】
【表13】
JP0004761265B2_000034t.gif

【0146】
【表14】
JP0004761265B2_000035t.gif

【0147】
〔合成例2〕前駆体2の合成
分子内に2組の双性イオンを持つベタイン(「ベタイン2」という)は、アルキル鎖長や組み合わせによらず、図2(b)のスキームに従って合成することが可能である。ここでは、一例として図2(b)のR11、R12、R13、R14がメチル基で、R15がエチレン基、R16がメチレン基である前駆体2(1,2-ビス{[N,N-ジメチル-N-(酢酸エチルエステル-2-イル)]-アンモニウム-N-イル}エタン二臭化物塩)の合成例を示す。なお、その他の前駆体2の合成は、下記に準じて行われた。
【0148】
N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン25.0gをエタノール400mlに溶解させ、ブロモ酢酸エチル(100ml)をゆっくりと滴下した。滴下後、この溶液を室温で4日間攪拌を続け、生成した沈殿を濾別した。得られた沈殿を真空乾燥して、前駆体22-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-酢酸エチルエステル臭化物塩を得た(収量66.6g、収率69%)。
【0149】
上記で得られた化合物の同定は、IR、および1H NMRによって行われた。表15にIR解析の結果を、表16に1H NMR解析の結果を示す。
【0150】
【表15】
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【0151】
【表16】
JP0004761265B2_000037t.gif

【0152】
表15および16によれば、IR、および1H NMRの結果、目的物である1,2-ビス{[N,N-ジメチル-N-(酢酸エチルエステル-2-イル)]-アンモニウム-N-イル}エタン二臭化物塩(すなわち、図1における化合物9の前駆体)が合成されたことを確認することができた。
【0153】
〔実施例1〕ベタインの合成
ベタイン1およびベタイン2は、共通の方法で定量的に合成することができる。ここでは、一例としてR1、R2、R3がエチル基でR6がメチレン基であるベタイン1(2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-アセテート)の合成方法を示す。
【0154】
合成例1にて得られた前駆体1(2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-酢酸エチルエステル臭化物塩)1.0gを蒸留水10mlに溶解した。この溶液を陰イオン交換カラム(アンバーライト:登録商標IR-402、ローム アンド ハース社製)を充てんしたカラムに通した。溶離液をエバポレーターで減圧濃縮し、五酸化二リンの共存下、減圧乾燥し、ベタイン1(2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-アセテート)を得た(0.59g、100%)。
【0155】
上記で得られた化合物の同定は、IRおよび1H NMRによるエステルピークの消失確認と、C、H、N元素分析による塩の混入の有無を確認することで行った。表17にIR解析の結果を、表18に1H NMR解析の結果を、表19に元素分析の結果を示す。
【0156】
【表17】
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【0157】
【表18】
JP0004761265B2_000039t.gif

【0158】
【表19】
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【0159】
表17~19の結果、目的物である2-(N,N,N-トリエチルアンモニウム)-アセテート(すなわち、図1における化合物4)が得られたことが確認された。
【0160】
図1における化合物2を合成した結果を、表20(IR)、表21(1H NMR)、および表22(元素分析)に示す。表20~22によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0161】
【表20】
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【0162】
【表21】
JP0004761265B2_000042t.gif

【0163】
【表22】
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【0164】
図1における化合物3を合成した結果を、表23(IR)、表24(1H NMR)、および表25(元素分析)に示す。表23~25によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0165】
【表23】
JP0004761265B2_000044t.gif

【0166】
【表24】
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【0167】
【表25】
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【0168】
図1における化合物5を合成した結果を、表26(IR)、表27(1H NMR)、および表28(元素分析)に示す。表26~28によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0169】
【表26】
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【0170】
【表27】
JP0004761265B2_000048t.gif

【0171】
【表28】
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【0172】
図1における化合物6を合成した結果を、表29(IR)、表30(1H NMR)、および表31(元素分析)に示す。表29~31によれば目的とする化合物が合成されたことを確認することができた。
【0173】
【表29】
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【0174】
【表30】
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【0175】
【表31】
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【0176】
図1における化合物7を合成した結果を、表32(IR)、表33(1H NMR)、および表34(元素分析)に示す。表32~34によれば目的とする化合物が合成されたことが確認できた。
【0177】
【表32】
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【0178】
【表33】
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【0179】
【表34】
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【0180】
図1における化合物8を合成した結果を、表35(IR)、表36(1H NMR)、および表37(元素分析)に示す。表35~37によれば目的とする化合物が合成されたことが確認できた。
【0181】
【表35】
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【0182】
【表36】
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【0183】
【表37】
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【0184】
〔試験例1〕ベタインのカチオンとアニオンと間のスペーサー長が二本鎖DNAの安定性に与える影響
図1に示す化合物2(スペーサー長:C3)および化合物3(スペーサー長:C5)を用いて、ベタインのカチオンとアニオンと間のスペーサー長が二本鎖DNAの安定性に与える影響を評価した。
【0185】
比較例として、市販のグリシンベタイン(化合物1、スペーサー長:C1)を用いた。また、二本鎖DNAとしては、DNA1(5’-CGGCGCCG-3’(配列番号1)/5’-CGGCGCCG-3’(自己相補鎖、配列番号2))を用いた。
【0186】
融解温度の測定は、100mM NaCl存在下、10mMトリス緩衝溶液中(pH8.0)に、3種類のベタイン(化合物1、化合物2、化合物3)のそれぞれ、およびDNA1を添加し、融解温度の測定を行った。DNAの濃度は、DNA1が40μMとなるように反応液に添加した。また、ベタインの濃度は0.5Mで行った。またベタインを添加していない場合の融解温度の測定を行った。融解温度は下記の通り行われた。UV融解曲線は、ペルチェ素子でサンプルセル内の温度を自動制御できるUV-1700(島津社製)を用いて測定された。融解曲線を測定するためのサンプル溶液は、測定前に一度90℃まで加熱し一本鎖DNAに完全に融解させた後、2℃/分の速度で0℃までゆっくりと降温させ、二本鎖DNAを完全に形成させた。その後、0℃で30分放置し、0.5℃/分の速度でサンプル溶液の温度を昇温させながら各温度における260nmの吸光度を測定し、UV融解曲線を得た。UV融解曲線の変曲点より融解温度を算出した。
【0187】
図3に化合物1を反応液に添加した場合の融解温度の変化量を示す。図3の縦軸は、化合物を反応液に添加しない場合の融解温度に対して化合物を添加した場合の融解温度の変化量を示す。図3よりスペーサー長が長くなるにつれて融解温度が低下することがわかる。グリシンベタイン(化合物1、スペーサー長:C1)の場合、0.5Mの添加濃度ではほとんど融解温度を降下させる効果(不安定化効果)を奏さない。これに対して化合物2(スペーサー長:C3)および化合物3(スペーサー長:C5)を用いた場合、0.5Mの添加濃度であっても十分な不安定化効果があることがわかった。またスペーサー長が長くなるにつれて、不安定化効果が高くなることが確認された。特に化合物3(スペーサー長:C5)を用いた場合は、特に顕著な不安定化効果が確認された。
【0188】
〔試験例2〕ベタインのカチオン基の特性が二本鎖DNAの安定性に与える影響
アンモニウム基に連結した置換基の化学構造の効果を、図1に示す化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8を用いて検討した。
【0189】
比較例として、市販のグリシンベタイン(化合物1、R1=R2=R3=CH3)を用いた。また、二本鎖DNAとしては、GC含量および鎖長が異なる3つの配列(DNA1:5’-CGGCGCCG-3’(配列番号1)/5’-CGGCGCCG-3’(自己相補鎖、配列番号2)、DNA2:5’-ATGCGCAT-3’(配列番号3)/5’-ATGCGCAT-3’(自己相補鎖、配列番号4)、DNA3:5’-GAAACCACAACGGTTACCTGACCATGTCTTGATACGATCG-3’(配列番号5)/5’-CGATCGTATCAAGACATGGTCAGGTAACCGTTGTGGTTTC-3’(配列番号6))を用いた。
【0190】
融解温度の測定は、100mM NaCl存在下、10mMトリス緩衝溶液中(pH8.0)に、3種類のベタイン(化合物1、化合物2、化合物3)のそれぞれ、および上記3種類のDNA(DNA1、DNA2、DNA3)のそれぞれを添加し、融解温度の測定を行った。DNAの濃度は、DNA1=40μM、DNA2=40μM、DNA3=20μMとなるように反応液に添加した。また、ベタインの濃度は0.5Mで行った。またベタインを添加していない場合の融解温度の測定を行った。その他の融解温度の測定方法については試験例1と同様にした。
【0191】
図4に化合物1、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、または化合物8を反応液に添加した場合の融解温度の変化量を示す。図4の化合物4、化合物5、化合物6の不安定化効果を比較した結果、アンモニウム基の構造が嵩高くなればなるほど、その効果は高くなることが示された。特に化合物6を用いた場合の不安定化効果は、比較例(化合物1)を用いた場合の10倍を超えるものであった。また、置換基の末端に極性官能基を持つ化合物7と、置換基の末端に極性官能基を持たない化合物8との不安定化効果を比較したところ、アンモニウム基の構造の嵩高さだけでなく、置換基の末端には親水性の置換基(極性官能基)を持たないことが重要であるということがわかった。
【0192】
〔試験例3〕ベタインのイオン対の数が二本鎖DNAの安定性に与える影響
ベタインの分子内に存在する双性イオンの数の効果を、図1に示す化合物9を用いて検討した。測定条件は試験例1の条件と同一の条件で行った。比較例として、市販のグリシンベタイン(化合物1、双性イオン数:1)を用いた。
【0193】
図5に化合物1または化合物9を反応液に添加した場合の融解温度の変化量を示す。図5より、類似したスペーサー長およびアンモニウム基の化学構造を持つベタイン同士を比較すると、双性イオンの数が多い方が不安定化効果が高くなるということが示された。
【0194】
〔試験例4〕ベタインの添加濃度と不安定化効果の検討
図1に示す化合物6を用いて添加濃度と融解温度を降下させる効果と関係を検討した。DNA3を使用し、化合物の添加濃度を種々変化させる以外は、試験例1と同一の条件下で行った。比較例として、市販のグリシンベタイン(化合物1)を用いた。
【0195】
図6に化合物1または化合物6を反応液に添加した場合の融解温度の変化量を示す。図6における直線の傾きがDNAに対する不安定化効果を示すものである。図6よれば市販のグリシンベタイン(化合物1)の直線の傾きが-2.1(℃/M)であったのに対して、化合物6の直線の傾きは-23.2(℃/M)であった。すなわち、化合物6の直線の傾きは、市販のグリシンベタイン(化合物1)の直線の傾きに対して11倍であるということがわかった。この結果は、化合物6を用いてグリシンベタイン(化合物1)と同様の効果を得るためには、グリシンベタイン(化合物1)の11分の1の添加量で足りるということを示している。
【0196】
〔試験例5〕ベタインがタンパク質の高次構造に与える影響
本発明にかかる組成物を構成するベタインのタンパク質の高次構造に与える影響を、図1に示す化合物6を用いて検討した。タンパク質としては、αへリックス、βシートなどの高次構造の含量の異なる3つの一般的なタンパク質(γグロブリン、コンカナバリンA、牛血清アルブミン)を用いて評価した。評価は、100mM NaCl存在下、10mMトリス緩衝溶液中(pH8.0)に、化合物6(添加濃度:0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5M)、および上記3種類のタンパク質(γグロブリン、コンカナバリンA、または牛血清アルブミン)を添加し、円二色性スペクトルを測定することにより行われた。タンパク質の添加濃度は、[γグロブリン]=1.0mg/ml、[コンカナバリンA]=0.8mg/ml、[牛血清アルブミン]=0.2mg/mlであった。
【0197】
図7に円二色性スペクトルの結果を示す。図7(a)はγグロブリンの結果、(b)はコンカナバリンAの結果、(c)は牛血清アルブミンの結果を示す。図7に示すいずれの結果においても、ベタイン濃度の上昇に伴って円二色性スペクトルの強度が変化することはなかった。よって、本発明にかかる組成物を構成するベタイン(化合物6)はタンパク質の高次構造を変化させない、すなわちタンパク質を変性させないということが明らかとなった。
【0198】
〔試験例6〕本発明にかかる組成物を構成するベタインがPCRに与える効果
本発明にかかる組成物を構成するベタインを添加することによって、高いGC含量を有し、一般的なPCR条件下では増幅されないDNA配列を増幅し得るかどうかについて、図1に示す化合物6を用いて検討した。比較例として、市販のグリシンベタイン(化合物1)を用いた。
【0199】
上記検討は、ヒトゲノム中のDIP2A(アンプリコンのGC含量は71%、1185bp)をPCR増幅することによって行われた。当該DNA配列は融解温度が極めて高く非常に安定である。よって、添加剤を添加しない通常の条件下でのPCRでは、当該DNA配列を全く増幅することができない。DIP2AおよびそのPCRについては「M. Ralser, R. Querfurth, H. - J. Warnatz, H. Lehrach, M. - L. Yaspo, S. Krobitsch, Biocem. Biophys. Chem. Commun., 347, 747-751 (2006)」を参照のこと。
【0200】
ゲノムDNAは発明者の口腔粘膜細胞を採取し、DNeasy Tissue Kit(キアゲン社製、登録商標)にて精製した。プライマーは5‘-aggggaaggaagcaggact-3’(配列番号7)、5‘-cagctcagccaggctctc-3’(配列番号8)を用いた。PCRは30μlのvolumeで行い、DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-ver.2(東洋紡社製、登録商標)を使用した。またプライマー濃度は0.6μM、dNTP濃度は25μM、DNAポリメラーゼは0.5Uに調整し、鋳型となるゲノムDNAは50ngの濃度で添加した。サイクルは94℃で4分の後、94℃で1分→72℃で2分を40回繰り返し、最後に72℃で9分間、伸長反応を行った。
【0201】
図8に化合物1または6を10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、100mM、200mM、400mM、800mM、1000mMの濃度添加してPCRを行った場合の増幅産物の電気泳動図を示す。図8の結果より、添加剤(化合物1または6)を加えることによって、目的とするアンプリコンが増幅するということが確認された。アンプリコンの増幅は、比較例として用いた化合物1の場合でも、化合物6の場合でも確認されたが、化合物1では400mM以上を添加しなければ増幅されないのに対して、本発明にかかる組成物を構成する化合物6ではその20分の1の濃度である20mMであっても増幅が確認された。よって、本発明にかかる組成物を構成する化合物6によれば、低濃度であっても、これまで増幅が困難であった高いGC含量のDNAを十分増幅できるということがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0202】
上記の通り本発明によれば、これまで困難であったGC含量の高い核酸領域を熱変性させることが可能となり、当該GC含量の高い核酸領域であっても効率よく合成することができるという効果を享受できる。また本発明によれば、GC含量の高い核酸領域の合成を可能にするベタインを、簡便かつ効率的に製造することができるという効果を享受できる。
【0203】
PCRをはじめとする核酸合成技術は、分子生物学等の学術分野のみならず、(a)髪の毛、口腔粘膜細胞から抽出したゲノムDNAを使った遺伝子鑑定、(b)遺伝子診断、(c)食品の原産地検査や品種鑑定、(d)犯罪捜査における遺伝子鑑定、(e)細胞内におけるmRNAの産生を調査するRT-PCR等、広範な分野においてに利用可能である。それゆえ本発明は、PCR等の核酸合成を利用する全ての産業(医薬品産業、農業、食品産業、水産業、畜産業等)において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】各種ベタイン(化合物1~9)の構造を示す図である。
【図2】本発明にかかるベタインの製造方法のスキームを示す図であり、(a)は分子内に1組の双性イオンを持つベタインの製造スキームを示し、(b)は分子内に2組の双性イオンを持つベタインの製造スキームを示す。
【図3】化合物1、化合物2、または化合物3を反応液に添加した場合における二本鎖DNA(DNA1)の融解温度の変化量を示す図である。
【図4】化合物1、または化合物4~8を反応液に添加した場合における二本鎖DNA(DNA1、2、3)の融解温度の変化量を示す図である。
【図5】化合物1、または化合物9を反応液に添加した場合における二本鎖DNA(DNA1、2、3)の融解温度の変化量を示す図である。
【図6】化合物1、または化合物6の反応液への添加量と、二本鎖DNA(DNA3)の融解温度の変化量との関係を示す図である。
【図7】化合物6の各種タンパク質に対する影響を円二色性スペクトルを測定することによって評価した結果であり、(a)はγグロブリンの結果、(b)はコンカナバリンAの結果、(c)は牛血清アルブミンの結果をそれぞれ示す。
【図8】PCRの反応液に、化合物1または6を、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、100mM、200mM、400mM、800mM、1000mMとなるように添加してPCRを行った場合の増幅産物のアガロースゲル電気泳動像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7