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明細書 :相関器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4560717号 (P4560717)
公開番号 特開2006-108987 (P2006-108987A)
登録日 平成22年8月6日(2010.8.6)
発行日 平成22年10月13日(2010.10.13)
公開日 平成18年4月20日(2006.4.20)
発明の名称または考案の名称 相関器
国際特許分類 H04B   1/707       (2006.01)
FI H04J 13/00 413
H04J 13/00 420
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2004-291411 (P2004-291411)
出願日 平成16年10月4日(2004.10.4)
審査請求日 平成19年10月4日(2007.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000080
【氏名又は名称】タマティーエルオー株式会社
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
発明者または考案者 【氏名】伊与田 健敏
【氏名】渡辺 一弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100078237、【弁理士】、【氏名又は名称】井出 直孝
【識別番号】100083518、【弁理士】、【氏名又は名称】下平 俊直
審査官 【審査官】岡 裕之
参考文献・文献 特開平10-312373(JP,A)
特開平11-112384(JP,A)
特開平07-221802(JP,A)
特開2006-340213(JP,A)
調査した分野 H04J 13/00 - 13/06
H04B 1/69 - 1/713
特許請求の範囲 【請求項1】
受信されたスペクトル拡散信号と擬似乱数との相関値を演算する相関器において、
受信した信号の1チップ期間の信号をそれぞれ足し合わせ開始タイミングをずらして並列に積分する複数Nc個の1チップ累算手段と、
この1チップ累算手段からの積分値をそれぞれ格納する1チップデータ用メモリと、
前記1チップデータ用メモリに格納されたL個(Lは複数)のデータを読み出してLチップ分の擬似乱数の組み合わせ値との積和演算を行なって積和演算結果のそれぞれを出力するLチップ予備計算手段と、
前記演算されたLチップ予備計算結果をそれぞれ格納するLチップデータ用メモリと、
拡散符号の一部であるL個の擬似乱数の値と時刻に相当する値に対応する前記Lチップデータ用メモリに格納されたLチップ予備計算結果を順次取り出して加算し、拡散符号1周期分の相関値を得る相関計算手段と
を備えたことを特徴とする相関器。
【請求項2】
受信された信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換されたスペクトル拡散受信信号に搬送波信号と周波数および位相が一致する信号とを乗算し前記1チップ累算手段に入力する乗算器とを含む
請求項1記載の相関器。
【請求項3】
情報処理装置にインストールすることにより、当該情報処理装置に相関器の機能として、
ディジタル信号に変換されたスペクトル拡散受信信号に搬送波と周波数および位相が一致する信号を乗算する乗算機能と、
この乗算された信号の1チップ期間の信号をそれぞれ足し合わせ開始タイミングをずらして並列に積分する複数Nc個の1チップ累算機能と、
この1チップ累算機能からの積分値を1チップデータ用メモリにそれぞれ格納する機能と、
前記1チップデータ用メモリに格納されたL個(Lは複数)のデータを読み出してLチップ分の擬似乱数の組み合わせ値との積和演算を行なって積和演算結果のそれぞれを出力するLチップ予備計算機能と、
前記演算されたLチップ予備計算結果をLチップデータ用メモリにそれぞれ格納する機能と、
前記拡散符号の一部であるL個の擬似乱数の値と時刻に相当する値に対応する前記Lチップデータ用メモリに格納されたLチップ予備計算結果を順次取り出して加算し、拡散符号1周期分の相関値を得る相関計算機能と
を実現させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はスペクトル拡散信号の検出・復調を行うに必要な相関器に関する。特に受信したスペクトル拡散信号に対する同期捕捉を行うための擬似乱数(PN符号)との相関値の演算を高速で行うことができ、回路規模が大きくならない相関器に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル拡散信号は、搬送波を擬似乱数によって拡散変調した信号であり、その例を図3に示す。この図3の例を式で表すと
【数1】
JP0004560717B2_000002t.gif
M(t)は擬似乱数で+1もしくは-1の値をとる。sinωtは搬送波を表す。ここではデータを送信することについては考えないので、送信データによる変調は含まれていない。
【数2】
JP0004560717B2_000003t.gif

【0003】
受信信号R(τ)の中から、このようなスペクトル拡散信号を検出するためには式2で表されるような逆拡散処理を行う。tは時刻を表し、TMは擬似乱数の1周期の時間を表す。この逆拡散処理は、検出の対象となる信号を作成した際に用いられるものと同じ擬似乱数M(τ+p)と搬送波sin(ωt+φ)を用いて相関値を計算することである。sin(ωt+φ)のφは検出したい信号に含まれる搬送波と位相を一致させるパラメータで、これを調整して位相を一致させる。なお、位相を一致させる方法は本願とは関係が小さいのでその説明は省略する。そして、この状態で擬似乱数の位相を制御するパラメータpを変化させると、擬似乱数の位相が一致しているときだけ相関値が大きな値をとるので、それによってスペクトル拡散信号の検出を行うことができる。むしろ大きな相関値を検出することによってしかスペクトル拡散信号の検出ができないので、パラメータpを変化させながら、その度に計算を行って、相関値の値を調べ直すことが要求され、信号の検出を素早く行うためには、相関値の計算をできるだけ高速に行うことが要求される。
【0004】
相関値の計算は、受信信号をA/D変換によってディジタル値に変換し、これを積和演算をすることにより演算することができる。
【0005】
このような積和演算を行うディジタル回路のもっとも単純な回路例を図4に示す。図4に示す相関器は、搬送波sin(ωt+φ)の値を掛ける乗算器以外には、乗算器、加算器、レジスタ、それぞれ1個から構成されており、もっとも回路規模が小さいものである。計算に必要なクロック数は積和演算するデータの個数と同じであり、データの個数が増えるとそれに比例して計算時間が増大する。
【0006】
一方、回路をパイプライン化することで高速に相関演算を行うことができる回路例を図5に示す。この回路を構成するレジスタの個数は積和演算するデータの個数の2倍程度、加算器の個数はデータの個数程度になる。そのためにデータの個数が増えるにつれて回路規模が膨大となる。一方、計算に要するクロック数は、加算処理の部分も含めてパイプライン化されているため、実質1クロックである。
【0007】

【特許文献1】特開平10-312373号公報
【非特許文献1】山根,伊与田,崔,久保田,渡辺:擬似乱数M系列によるスペクトル拡散音波の距離計測への応用,計測自動制御学会論文集,Vol.39 No.10, 879/885, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の図4に示す回路は、回路規模を最小とするものであり、また図5の回路は計算時間を最小とする構成である。相関値を演算する場合には積和演算をするデータの個数と要求される計算時間は、目的・用途によってさまざまであるが、ここでは、データの個数が1~2万個を前提に、その計算時間を数μs程度に収めることを目標に図4、5の回路について考察してみる。
【0009】
図4の回路の場合、回路規模は大変に小さく、回路規模の面からいうと、その作成は容易である。しかし、計算時間はデータの個数に比例するので、計算時間を数μsに抑えるには、動作クロックを少なくとも数GHzレベルにする必要がある。このような動作速度を実現するには最新の半導体技術を使って専用ICを作成する必要があるが、コストは膨大なものとなり、実現は困難である。
【0010】
図5のパイプライン化した回路の場合、データの個数にかかわらず、積和演算に要する時間は1クロックであるので、計算時間を数μsに収めることは可能である。しかし、回路の規模はデータの個数に比例して増大するので、データが1~2万個の場合には、レジスタを構成するD-FF(フリップフロップ)は十数万個から三十数万個となり、それに加えて、加算回路を構成するゲートを少なくとも数十万個が必要となる。このような規模になると、集積度が向上したとはいっても、大規模PLD(プログラマブルロジックデバイス)を用いて回路を作製することは困難である。仮に実現できたとしてコストの高いものとなり、また専用ICとすると、さらにコストが嵩むものとなる。
【0011】
本発明はこのような問題を解決するもので、回路規模をできるだけ小さくし、かつ計算時間を短縮することができるスペクトル拡散信号の相関器を実現することを目的とする。本発明では無駄な再計算を減少して相関値を演算するときに必要なデータの個数を削減し、計算時間を短縮することができるスペクトル拡散信号の相関器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、スペクトル拡散信号は擬似乱数M(t)で変調されているが、その変調の周期(1チップ)は搬送波の数周期分に相当し、その間は、M(t)の値は変化しないことに着目した。この1チップ間は、擬似乱数の値は変化しないから、1チップ分の信号は、ディジタル的には、Nc個のデータで表現されるので、このようなデータの足しあわせ(積分または累算)を予め行っておくことによって、相関値を計算する際のデータ量は1/Ncに削減される。この1チップ分のデータを足しあわせたものを1チップデータと呼ぶ。
【0013】
次に、1チップデータをもとにして、予めLチップ分の相関値を計算する(これを予備計算と呼ぶことにする)。Lは、複数であるが、上述の数万個のデータに比べるとその数は小さい。相関値を計算するためには計算で用いられる擬似乱数M(t)の値が決まっている必要があるが、予め計算する段階では決めることができない。そこで、考えられる擬似乱数M(t)の値すべてについて計算をすることにする。Lチップ分の相関値を計算する場合、M(t)の値は2Lとおり考えられるので、それらについてすべて計算を行い、その値(これをLチップデータと呼ぶ)をメモリに記憶させておくようにする。ここで注意すべき点はLの値が大きくなるとM(t)の値のパターンが文字どおり指数的に大きくなるので、計算時間とメモリのサイズが指数的に増大する。このため、Lの値はそれらを考慮しながら、決定する。
【0014】
すなわち、本発明は、受信されたスペクトル拡散信号と擬似乱数との相関値を演算する相関器において、受信した信号の1チップ期間の信号をそれぞれ足し合わせ開始タイミングをずらして並列に積分する複数Nc個の1チップ累算手段と、この1チップ累算手段からの積分値をそれぞれ格納する1チップデータ用メモリと、前記1チップデータ用メモリに格納されたL個(Lは複数)のデータを読み出してLチップ分の擬似乱数の組み合わせ値との積和演算を行なって積和演算結果のそれぞれを出力するLチップ予備計算手段と、前記演算されたLチップ予備計算結果をそれぞれ格納するLチップデータ用メモリと、拡散符号の一部であるL個の擬似乱数の値と時刻に相当する値に対応する前記Lチップデータ用メモリに格納されたLチップ予備計算結果を順次取り出して加算し、拡散符号1周期分の相関値を得る相関計算手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
なお、受信された信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換されたスペクトル拡散受信信号に搬送波信号と周波数および位相が一致する信号とを乗算し前記1チップ累算手段に入力する乗算器とを含むことができる。
【0016】
また、本発明は、ソフトウェアとして実現でき、情報処理装置にインストールすることにより、当該情報処理装置に相関器の機能として、ディジタル信号に変換されたスペクトル拡散受信信号に搬送波と周波数および位相が一致する信号を乗算する乗算機能と、この乗算された信号の1チップ期間の信号をそれぞれ足し合わせ開始タイミングをずらして並列に積分する複数Nc個の1チップ累算機能と、この1チップ累算機能からの積分値を1チップデータ用メモリにそれぞれ格納する機能と、前記1チップデータ用メモリに格納されたL個(Lは複数)のデータを読み出してLチップ分の擬似乱数の組み合わせ値との積和演算を行なって積和演算結果のそれぞれを出力するLチップ予備計算機能と、前記演算されたLチップ予備計算結果をLチップデータ用メモリにそれぞれ格納する機能と、前記拡散符号の一部であるL個の擬似乱数の値と時刻に相当する値に対応する前記Lチップデータ用メモリに格納されたLチップ予備計算結果を順次取り出して加算し、拡散符号1周期分の相関値を得る相関計算機能とを実現させるところにある。
【発明の効果】
【0017】
このように、予備計算によってLチップ分の相関値を計算し、Lチップデータとしてメモリに記憶しておけば、実際に相関値の計算を行う場合にそれを用いることによって、取り扱うデータの個数は元のデータの個数の1/(Nc×L)になり、計算時間を大幅に削減することができる。これによって、回路を動作させるクロック信号の周波数を低くすることができる。また、相関値の計算に用いるデータを記憶するためにレジスタではなく、メモリ素子を用いるので、それ以外の計算処理などを行う部分のハードウエア規模を比較的小さくすることができ、小規模で入手な可能なPLD回路を用いてコストの安い相関器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明の実施例の相関器の回路例を示す。
【0019】
本実施例は、A/D変換器1、乗算器2、1チップ累算器3、1チップデータ用メモリ4、Lチップ予備計算器5、Lチップデータ用メモリ6、相関計算器7とが順次接続された構成である。
【0020】
受信されたスペクトル拡散信号はA/D変換器1によりディジタルデータに変換される。このスペクトル拡散受信信号は、乗算器2によって検出したい信号に含まれる搬送波と位相・周波数が一致している信号sin(ωt+φ)と掛け合わされる。このデータは、1チップ累算器3に入力されて、Nc個の累算器311~31Nc でそれぞれ1チップ分が足し合わされて1チップデータ用メモリ4に記憶される。検出したい信号において、擬似乱数M(t)による拡散変調の周期(1チップ)の区切りは既知ではないので、1チップ累算器3内の累算器31は、1チップに含まれるデータの個数と同じNc個用意し、各累算器31の足しあわせ計算の開始タイミングをずらすことによって、チップの区切りがどのタイミングであっても対応できる。
【0021】
さらに、1チップデータ用メモリ4に記憶されたデータは、Lチップ予備計算器5によって、L個分読み出され、L個のレジスタ511~51Lに入力され、L個の乗算器521~52LでL個の擬似乱数が設定されている記憶素子(レジスタ)541~54Lからの擬似乱数の値(L個の+1もしくは-1の値)と掛け合わされ上で加算器53で加算される。ここでは、L個の擬似乱数の値については考えられるすべてのパターンについて計算が行われるので、L個の1チップデータから得られるLチップデータは2L個である。すなわち、ここではLチップ予備計算器5は、図1に示すように、擬似乱数のL個の組み合わせに対して2L個並列に用意するか、あるいはひとつのLチップ予備計算器5で擬似乱数の値を変えながら2L回積和計算を行うことになる。ただ、ひとつのLチップ予備計算器5で2L回積和計算する方式であると、回路数は少なくなるが、Lチップ予備計算器5のクロック周波数を高速にする必要がある。このLチップ予備計算器5で予備計算された2L個のデータは、Lチップデータ用メモリ6に記憶される。
【0022】
相関計算器7は、擬似乱数の値と時刻に相当する値をLチップデータ用メモリ6に与えることによって、それに対応するLチップデータを即時に取り出して足しあわせていく。これにより、相関計算器7は、相関値の計算し出力する。この相関計算器7で用いる擬似乱数の値は任意に選ぶことができるので、必要に応じて擬似乱数の種類や位相を変えることで、検出したいスペクトル拡散信号に対応した相関値を計算することができる。
【0023】
図2は、この図1に示す回路構成でのスペクトル拡散信号の相関計算を説明する図であり、上から、受信されたスペクトル拡散信号に、搬送波と周波数・位相が一致したsin(ωt+φ)を乗算し、それを1チップデータを累算する。この1チップデータをL個(ここでは、L=3である)取り出し、Lチップデータの予備計算を行う。3個の擬似乱数に対する組み合わせは、8通りあるので、予備計算は8通り行い、8個のLチップデータの予備計算値をLチップデータメモリに格納する。相関計算器7は、このうちの相関計算を行う擬似乱数と時刻に相当する値をLチップデータメモリに入力することで、対応するLチップデータを取り出して足しあわせることで、相関値を得ることができる。
【0024】
なお、本発明は、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置をスペクトル拡散受信信号の相関演算を行うディジタル相関器として機能させるソフトウェアとしても実現することができる。すなわち、ディジタル相関器の機能として、ディジタル信号に変換されたスペクトル拡散受信信号に搬送波と周波数および位相が一致する信号を乗算する乗算機能と、この乗算された信号の1チップ期間の信号を積分する複数の1チップ累算機能と、前記積分された積分値を1チップデータ用メモリ4に格納する機能と、前記1チップデータ用メモリに格納されたデータに基づいてLチップ(Lは複数)分の擬似乱数の組み合わせ値との積和演算を行うLチップ予備計算機能と、前記演算されたLチップ予備計算結果をLチップデータ用メモリ6に格納する機能と、前記Lチップデータ用メモリに格納されたLチップ予備計算結果のデータに基づいてスペクトル拡散信号と擬似乱数との相関値を演算する相関演算機能とを実現させるプログラムを情報処理装置にインストールすることによりディジタル相関器として実現することもできる。このプログラムは、記録媒体に記録し、あるいは通信回線を介して情報処理装置にインストールすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明では、GPSによる位置検出のようなスペクトル拡散信号を利用した位置検出において、高速でかつ小さな回路規模でスペクトル拡散信号に対する同期捕捉を行うことができるため、スペクトル拡散信号を用いた位置検出に利用することができる。特に、超音波を用いて建物内で自己の位置を知る必要がある自律走行型ロボットなどにおいて、その位置検出に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明実施例の相関器の構成を示すブロック図。
【図2】実施例による相関検出を説明する図。
【図3】スペクトル拡散を説明する図。
【図4】もっとも単純な相関器の回路例。
【図5】パイプライン構成の相関器の回路例。
【符号の説明】
【0027】
1 A/D変換器
2 乗算器
3 1チップ累算器
4 1チップデータ用メモリ
5 Lチップ予備計算器
6 Lチップデータ用メモリ
7 相関計算器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4