TOP > 国内特許検索 > 光入力方法、光入出力方法及び光入出力装置 > 明細書

明細書 :光入力方法、光入出力方法及び光入出力装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3962811号 (P3962811)
公開番号 特開2004-258303 (P2004-258303A)
登録日 平成19年6月1日(2007.6.1)
発行日 平成19年8月22日(2007.8.22)
公開日 平成16年9月16日(2004.9.16)
発明の名称または考案の名称 光入力方法、光入出力方法及び光入出力装置
国際特許分類 G02F   1/01        (2006.01)
FI G02F 1/01 D
請求項の数または発明の数 13
全頁数 13
出願番号 特願2003-048811 (P2003-048811)
出願日 平成15年2月26日(2003.2.26)
審査請求日 平成15年3月10日(2003.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
発明者または考案者 【氏名】戸田 泰則
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100102576、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 敏章
【識別番号】100108394、【弁理士】、【氏名又は名称】今村 健一
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 特開平09-260634(JP,A)
特開平10-050979(JP,A)
調査した分野 G02F 1/01
H01L 29/00
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
不均一性に基づいて異なる複数の第N励起準位(N>1)をもつ複数の微細素子を含む微細素子群の中から任意の微細素子を選択する微細素子の選択方法であって、
選択する微細素子の前記複数の第N励起準位に対応するエネルギーを有する光波束を励起光として生成する励起光生成ステップと、
前記微細素子群に対して前記励起光を非局所的に照射するステップと、
を有する光入力方法。
【請求項2】
前記励起光生成ステップは、
広い周波数帯域を持つ光パルスに対して、複数の各周波数に対して個別の位相変調を施すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の光入力方法。
【請求項3】
前記励起光生成ステップは、
前記位相変調により異なる位相変調が施された光の位相の和集合に対応する励起準位を有する微細素子のみを選択するように複数のエネルギーに対してピークを有する励起光を生成するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の光入出力方法。
【請求項4】
それぞれ異なる位相変調を加えて励起光を作成することにより、前記複数の励起準位を有する微細素子において、その基底準位の波動関数が異なる位相変調の和に対応するように位相差が略ゼロの位相変調を施すことにより基底準位が空の状態であるオン状態を生成し、位相差が略πとなるように位相変調を施すことにより基底準位のキャリアの波動関数が弱められ、基底準位が埋まっている状態でありオフ状態を生成することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の光入出力方法。
【請求項5】
前記励起光は、フェムト秒光パルスレーザ光の各エネルギーに対して異なる位相変調を施すことにより生成されたものであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の光入力方法。
【請求項6】
不均一性に基づいて異なる複数の第N励起準位を (N>1)を有する複数の微細素子を含む微細素子群のうちから選択する微細素子の前記複数の励起準位に対応するエネルギーを有する光波束を生成し前記微細素子群に対して励起光として非局所的に照射する光波束照射装置と、
該光波束照射装置からの照射光により選択された前記微細素子に基づく前記微細素子群における前記励起光を照射する前後における前記微細素子の基底準位に対応する信号光を照射することにより得られる特性変化を検知する出力部と
を有する光入出力装置。
【請求項7】
前記選択する微細素子の前記複数の励起準位の少なくともいずれかに対応するエネルギーに対するピークを有する光波束は、広い周波数帯域を持つ光パルスに対して複数の周波数に個別の位相変調を施すことにより生成されることを特徴とする請求項6に記載の光入力装置。
【請求項8】
それぞれ異なる位相変調を加えて励起光を作成することにより、前記複数の励起準位を有する微細素子において、その基底準位の波動関数が異なる位相変調の和に対応するように位相差が略ゼロの位相変調を施すことにより基底準位が空の状態であるオン状態を生成し、位相差が略πとなるように位相変調を施すことにより基底準位のキャリアの波動関数が弱められ、基底準位が埋まっている状態でありオフ状態を生成することを特徴とする請求項6又は7に記載の光入出力装置。
【請求項9】
前記光波束照射装置は、
フェムト秒光パルスを空間的に異なる波長に分解する第1の光分散素子と、
該第1の光分散素子により生成された分散光を集めて平行光として出射する集光光学装置と、
前記平行光を位相変調させる空間位相変調器と、
位相変調された前記平行光を逆変換させる第2の光分散素子と
を有することを特徴とする請求項6から8までのいずれか1項に記載の光入出力装置。
【請求項10】
さらに、前記出力部により検知された前記微細素子群の特性変化を、前記光波束と対応させて記憶する記憶部を有する制御装置を備えた
請求項6から9までのいずれか1項に記載の光入出力装置。
【請求項11】
不均一性に基づいて異なる複数の第N励起準位を (N>1)を有する複数の微細素子を含む微細素子群のうちから選択する微細素子の前記複数の励起準位に対応するエネルギーを有する光波束を前記微細素子群に対して励起光として非局所的に照射する光波束照射装置と、
該光波束装置からの照射光により選択された前記微細素子に基づく前記微細素子群の特性変化を検知する出力検出部であって、前記微細素子群に対して所定の信号光を照射する信号光照射装置と、
前記所定の信号光の変化を検出する検出部と、を有する出力検出部と
を有する光入出力装置。
【請求項12】
不均一性に基づいて異なる複数の第N励起準位を (N>1)を有する複数の微細素子を含む微細素子群のうちから選択する微細素子の前記複数の励起準位に対応するエネルギーを有する光波束を前記微細素子群に対して励起光として非局所的に照射する光波束照射装置と、
前記微細素子群に対して基底準位に対応する信号光を照射する信号光照射装置と
を有する光インターコネクション装置。
【請求項13】
整列して配置された請求項6から11までのいずれか1項に記載の複数の微細素子群と、該微細素子群の基底準位を同じに調整する調整手段とを有する微細素子ネットワークであって、
選択する微細素子の複数の励起準位に対応する特定のエネルギーのピークを有する光波束を照射することにより、基底準位が空になる前記選択された複数の励起準位を有する微細素子のみにより形成される伝導キャリアの通過経路を形成することを特徴とする
微細素子ネットワーク。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数の微細素子を含む微細素子群の光入出力技術に関し、特に量子ドットなどの微細素子における不均一な光学特性を利用する特定の微細素子の非局所的な選択技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、nmオーダのサイズを有する半導体量子ドットなどの微細素子に関する研究が盛んになってきている。半導体量子ドットなどの微細素子においては量子効果が顕著に現れるため、様々な新しいデバイスへの応用が期待される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなnmオーダのサイズを有する多数の微細素子が高密度で含まれている微細素子群を制御対象とし、微細素子群の中から特定の微細素子のみを選択しようとする場合に、選択対象ではない他の微細素子には影響を与えずに着目する微細素子のみを光学的に選択することが重要である。しかしながら、現状では光の回折限界により困難であった。
【0004】
上記の微細素子群を作成する際に、nmオーダーの寸法を有する微細素子を高精度に均一化して配列することは現状の結晶成長技術などを用いても難しい。光入出力装置においては、複数の微細素子を含む微細素子群の中から着目する微細素子のみを例えば光学的な手法により選択できる非局所的な光制御が可能であれば便利である。
【0005】
本発明は、高密度かつnmオーダーの寸法を有する複数の微細素子を含む微細素子群を含む光デバイスにおける非選択的な入出力を実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、不均一性に基づいて異なる複数の励起準位(共鳴準位)を有する複数の微細素子を含む微細素子群の中から任意の微細素子を選択する微細素子選択方法であって、異なる位相(エネルギー)を有する光波束を生成するステップと、前記微細素子群に対して前記光波束を非局所的に入力(照射)するステップとを有する光入力方法が提供される。
上記方法によれば、前記光波束に含まれるそれぞれの周波数片に対応するエネルギーを全て具備する励起準位を有する微細素子のみを選択することができる。
【0007】
本発明の他の観点によれば、不均一性に基づいて異なる(複数の)励起準位(共鳴準位)を有する複数の微細素子を含む微細素子群と、該微細素子群に対して異なる位相(エネルギー)を有する光波束を(励起光として)非局所的に照射する光波束照射装置(入力部)と、該光波束照射装置からの照射光により選択された前記微細素子に基づく前記微細素子群の特性変化を検知する検出部であって、前記微細素子群に対して所定のプローブ光を照射するプローブ光照射装置と、前記所定のプローブ光の変化を検出する検出部とを備えた光スイッチが提供される。
【0008】
上記スイッチによれば、不均一特性、各周波数で異なる位相変調をする複数の共鳴準位に対して異なる位相変調を行うことで、ユニークな共鳴準位に対応する微細素子のみを選択することができる。
【0009】
本発明のさらに他の観点によれば、不均一性に基づいて異なる励起準位を有する複数の微細素子を含む微細素子群と、選択する微細素子の励起準位に対応する特定の周波数を有する光波束を前記微細素子群に対して非局所的に照射する光波束照射装置と、前記微細素子群に対して信号光を照射する信号光照射装置と
を有する光インターコネクション装置が提供される。
【0010】
上記装置は、前記特定の周波数を有する光波束により選択された微細素子における吸収飽和特性に基づき、前記微細素子群に対して照射される信号光が透過するか吸収されるかにより、光インターコネクションデバイスとして機能する。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、整列して配置された複数の微細素子群と、該微細素子群の基底準位を同一に調整する調整手段とを有する微細素子ネットワークであって、選択する微細素子の励起準位に対応する特定の周波数を有する光波束を照射することにより、基底準位が空になる前記選択された複数の微細素子のみにより形成される伝導キャリアの通過経路を形成することを特徴とする微細素子ネットワークが提供される。
上記ネットワークによれば、ある入力に対して選択されるパスによる出力が得られることになり、量子ドット・ネットワークとして機能させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本明細書において、微細素子とは、量子効果が顕著に現れる程度のサイズ(nmオーダー)の素子のことであり、例えば、伝導キャリアである電子又は正孔、もしくは両者から成る励起子がそのボーア半径程度に閉じこめられるサイズを有する。微細素子の例としては、半導体量子ドットが挙げられる。微細素子群とは、例えば量子ドットなどの微細素子が2次元的又は3次元的に多数配置された構造を有するものである。以下の実施の形態では、(半導体)量子ドットを例にして説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る光入出力技術においては、閉じ込め効果により量子ドットが有する複数の励起準位に着目し、パルス光に位相変調を施すことにより上記励起準位に対応した周波数(エネルギー)を有するパルス光列による非局所的な選択光励起を実現するものである。これにより、量子ドットに対する選択性を向上させることができる。
【0014】
図1は、単一量子ドットの基底準位及び励起準位と対応させたPLE(励起発光スペクトル、すなわちPLエキサイテイション)発光強度の緩和エネルギー依存性を示す図である。図1に示すように、単一量子ドットにおける発光強度のピークは複数存在し、特に第1励起準位と第2励起準位とに大きな励起共鳴に起因するピークが存在する。その他、局在格子準位に対応する複数のピークが観測される。このような励起準位および局在格子準位に基づく発光強度のピークは、量子ドットのサイズと量子ドットが形成される例えば下地基板との格子定数のずれ(格子歪み)に関連しており、これらの違いに基づいて、それぞれの量子ドット毎に異なるエネルギーにピーク値が存在する。
【0015】
すなわち、各量子ドットにおける複数の励起共鳴に起因する発光強度のピークはあたかも人間の指紋のようにユニークであり、それぞれの量子ドットが固有に有する特性である。加えて、単一量子ドットの励起準位においては、電子の散乱確率が減少するため、コヒーレントに光励起された励起子は、原子同様の高いコヒーレンスを有する。
【0016】
そこで、特定の量子ドットが有する複数の励起準位に位相(エネルギー)が合うように、例えばフェムト秒光パルスに対して光波整形を施した光波束を多数の量子ドットを含む量子ドット群に照射すると、非局所な光励起方法であっても特定の励起準位を有する量子ドットのみをコヒーレントに選択することが可能である。量子ドット群に照射する光波束によって、1又は複数の量子ドットを選択することも可能である。
【0017】
上記考察に基づいて、本発明の一実施の形態による光入出力技術について図面を参照しつつ説明を行う。以下の実施の形態においては、高密度かつnmオーダーの寸法を有する量子ドットを多数含む半導体量子ドット群を対象とし、その中に含まれる特定の量子ドットを非局所的な光励起により選択する技術について説明する。
【0018】
図2は、同じ発光エネルギーを持つ単一量子ドットと、複数の量子ドットを含む量子ドット群と、のそれぞれにおいて得られるPLE(励起発光スペクトル)発光強度のスペクトル図である。縦軸に発光強度を、横軸に励起エネルギー(上軸に対応する緩和エネルギーを示す。)をとっている。尚、図において下方のスペクトルが単一量子ドットの特性を示し、上方のスペクトルが量子ドット群の特性を示している。
【0019】
単一量子ドットにおいて励起準位および局在格子準位の存在するエネルギー帯は離散的な共鳴ピークを持っているが、複数の量子ドットからなるスペクトルは不均一広がりに対応する広い共鳴を有している。この分散帯域は数THzのオーダーであり、フェムト秒パルスレーザーの周波数帯域で十分カバーすることができる。
【0020】
尚、量子ドット群の作製技術に関しては、例えば、InGaAs/GaAs歪み系による自己形成量子ドット(Self-assembled Qdots)のコヒーレント光特性に関しては、例えば以下の文献に記載されている。
Y. Toda, T. Sugimoto, M. Nishioka, and Y. arakawa, "Near-field coherent excitation spectroscopy of InGaAs/GaAs self-assembled quantum dots", Applied Physics Letters, Volume 76, No. 26 (2000), p.3887-3889.
【0021】
図3は、量子ドット群に関するPL強度のPLエネルギー依存性を示すスペクトル図である。図3には、主として8つのPL強度のピークが観測されている。そのうち高いPL強度を有する5つのピークを、低エネルギー側から順にA、B、C、D,Eと称する。
【0022】
図4は、上記量子ドット群に関するPLE(励起発光スペクトル)によるPL発光強度の励起エネルギー依存性を示す図である。横軸は緩和エネルギーであり、縦軸はPL強度であり、A~Eまでがそれぞれの単一量子ドットに関する特性であり図1に対応する図である。
【0023】
A~Eまでのそれぞれのスペクトルにおいて、これらの励起共鳴に起因するスペクトルは、図4に示すように光学活性な電子準位および格子準位からなる離散的共鳴を有しており、そのスペクトル構造(複数の発光ピークの緩和エネルギー位置)は個々の量子ドットA~Eのそれぞれにおいて明らかに異なっている。従って、特定の励起エネルギーに対する個々の量子ドットA~Eまでの特性は、共鳴条件に応じて変化することとなる。これらの共鳴の分散は不均一広がりに起因しており、その分散帯域は数THzのオーダーである。
【0024】
本実施の形態による光入力技術は、図3に例示されるような量子ドットA~Eまでに示されるような励起共鳴のばらつきを利用して、非局所的な選択光励起を行うものである。非局所的な選択光励起を行うためには、広いスペクトルバンド幅を持つ励起光源を必要とするとともに、個々の共鳴準位に同期させるように位相変調を加える必要がある。そこで、本実施の形態による光入出力技術においては、上記の要件を満たす光源としてフェムト秒パルスレーザー光を用いる。フェムト秒パルスレーザー光を用いると、例えば、100fsにおいて10THzの帯域をカバーすることができる。すなわち、複数の量子ドットを含む量子ドット群中から特定の量子ドットのみを選択するために、フェムト秒パルスレーザー光において単一量子ドットにおいて複数の共鳴に対して励起光を後述する波形整形光学系により位相変調を施す。これにより、対応する量子ドットの基底準位における状態数は、各位相変調の和周波数による変調を受ける。以上から特定の入出力信号をフィルタリングすることが可能となる。
【0025】
いま、ひとつの共鳴に対して位相変調を施すと、対応する励起準位の波動関数は同等の位相変調を有することになる。ここで同時にエネルギーの異なる他の共鳴に対して異なる位相変調を加えると、基底準位の波動関数は両者の和に対応する位相変調を受けることになる。位相差0の場合は基底準位のキャリアが強め合う(オン状態)ような波動関数の足し合わせが実現され、状態数として2倍の強度を持つようになる。これを複数の共鳴に拡張して考えると、複数の共鳴に対してコヒーレントに応答可能な基底準位のみがオン状態を実現することが可能となる。逆に位相差πを持つように変調を施すと、基底準位のキャリアの波動関数は弱めあうため、オフ状態を実現することができる。
【0026】
次に、図5から図10までを参照して、実際に特定の量子ドットを選択する技術について説明する。図5(A)~図7(A)は、励起パルス光(多波長光波束)の例を示す図である。図5(B)~図7の(B)は、対応する励起パルス光により励起される量子ドットの分布を示す図である。図8は、フェムト秒パルスレーザー光に基づいて多波長光波束を生成する空間位相変調器を利用した光波整形光学系装置の概略構成を示す図である。
【0027】
図8の光波整形光学系装置についてまず説明する。図8に示す光波整形光学系装置Aは、フェムト秒光パルスレーザー光の各周波数に対して異なる位相変調を施す装置であって、対向配置された2つの凹面鏡(又はレンズ)5、7(集光光学装置)と、凹面鏡5(入力側)にフェムト秒パルスレーザー光1の光を分散させた分散光を生成するための回折格子(光分散素子)3と、2つの凹面鏡(又はレンズ)5、7間に1次元に配列され例えば液晶素子からなる空間位相変調器11と、凹面鏡7からの位相変調された分散光に基づいて多波長光波束21を生成する回折格子15とを有している。
【0028】
より詳細には、フェムト秒光パルスレーザー光1は、回折格子3により長波長側L1から短波長側L2まで分散される。この分散光は、符号L3とL4とで示されるように、凹面鏡5により平行光となり、それぞれの波長を有する光に対して、その詳細が符号11aで示され1次元的に配置された液晶素子(11)により空間位相変調を施こすことができる。空間位相変調を施された光(L5、L6)は、凹面鏡7により集光され、回折格子15により多波長パルス列21が生成される。すなわち、入力側レンズの焦点面には回折格子3によって分解された周波数スペクトルが形成される。焦点位置と周波数は一対一に対応しており、焦点位置における液晶素子11により周波数ごとに異なる位相変調を施すことが可能となる。液晶素子(11)内の液晶分子を液晶セル11b毎に例えば透明電極により駆動することにより、各波長を有する光に対して位相変調を施すことができる。
【0029】
図5から図7までは、励起光の違いによる量子ドットの選択の様子を模式的に示す図である。図5(A)に示すブロードなエネルギー分布を有する励起光を非局所的に多数の不均一量子ドットを含む光素子に照射すると様々な励起準位を有する多数の不均一量子ドットが励起され、図5(B)に示すように、選択される量子ドット群の分布は大きなエネルギー半値幅を有する。図6(A)に示すように、例えば2つのエネルギーに対してピークを有する励起光を光素子に照射すると(光の位相をφ1及びφ2とする)、φ1とφ2の和集合(φ1+φ2)で表される励起準位(共鳴準位)を具備する量子ドットのみがコヒーレントに励起(選択)され、図6(B)に示すように、量子ドットの分布は図4(B)に比べて離散的になる(図6(B)の集合の図参照。)。さらに、図7(A)に示すように、例えば3つのエネルギーに対してピークを有する励起光を光素子に照射すると(光の位相をφ1、φ2及びφ3とする)、φ1、φ2及びφ3の和集合(φ1+φ2+φ3)で表される励起準位(共鳴準位)を具備する量子ドットのみがコヒーレントに励起(選択)され、図7(B)に示すように、量子ドットの分布は非常に離散的になり、単一或いは数個の量子ドットのみを選択することができる(図7(B)中の集合の図を参照)。
【0030】
以上に説明したように、本実施の形態による光入出力技術においては、対応する量子ドットの基底準位状態数は各位相変調の和から成る変調を受け、オン/オフ状態を実現することができ、特定の量子ドット(素子)(1又は複数)を選択することが可能となる。尚、上記コヒーレントの意味するところは、各励起状態に生成される波動関数が同期して足し合わせられることにより量子ドットにおける状態数が増加することを意味する。
【0031】
図9及び図10を参照して、実際に得られた実験結果について説明する。図9は、図3及び図4に示した量子ドット群において、異なる励起光を照射した場合の特性を示すチャートである。縦軸はPLエネルギーを示し、横軸は位相φ(rad.)を示す。別途物件提出書に添付したカラーのチャートにおいては、図9に示す2次元平面上においてPL強度分布が色により識別できるように示されている。尚、図9の横軸は、AからDまでの量子ドットに対応するPLエネルギー範囲を含む限定された範囲のみを示しており、破断線の途中のエネルギーに対応するスペクトルは省略されている。
【0032】
符号aの条件下(励起光照射条件、以下、同様である。)でのチャートにおいては、量子ドットA~Eまでの全てを選択することができる励起光を照射している。符号bの条件下でのチャート図においては、量子ドットA~Eまでのうち量子ドットEのみを選択することができる励起光を照射している。符号cの条件下でのチャート図においては、量子ドットCとEとを選択することができる励起光を照射している。
【0033】
図9の結果より明らかなように、励起光で選択を試みた量子ドット(条件aでは、A~Eまでの全量子ドット、条件bではEの量子ドット、条件cではC及びEの量子ドット)は、位相πにおいてPL強度が小さくなるオフ状態(例えばbの場合で、πと3πの位置)と、PL強度が大きくなるオン状態(例えばbの場合で、0、2π及び4πの位置)と、が観測されており、条件bの場合には、量子ドットEのみが励起光照射により選択されていることが確認できる。条件aの場合には、全ての量子ドットA~Eまでにおいて、PL強度のオン/オフが観測されており、条件cの場合には、量子ドットCとEとにおいて、PL強度のオン/オフが観測されている。
【0034】
図10は、図9の条件bの場合における規格化されたPL強度と位相φとの関係をプロットした図である。図10に示すように、黒塗りの丸印で示される量子ドットEの上記条件bの場合においては、位相φに対して2πの周期で強度の最大値及び最小値を有する(いわゆるコサインカーブ)周期的なオン/オフ特性が観測されている。一方、量子ドットCに関しては、上記のような周期性は観測されず、規格か強度は位相φに対してほぼ一定の値を有していることがわかる。すなわち、上記bの条件下においては、量子ドットEが選択されているが、量子ドットCは選択されていないことは明らかである。
【0035】
以上の結果より、ある量子ドットを選択する励起光照射条件下において、予想通りの量子ドットが選択できていること、任意の複数量子ドットに対して選択的にオン/オフが可能であることがわかる。すなわち、本実施の形態による素子選択技術を用いることにより、単一の量子ドットのみならず、任意の組み合わせの複数の量子ドットをも一括して選択することができることがわかる。
【0036】
以下に、上記実施の形態による光入出力技術の応用例について図面を参照して説明する。図11は、本実施の形態による光入出力技術を利用した光メモリ装置の構成例を示す図である。図11に示すように、光メモリ装置Bは、多数の量子ドット31a、31b、31c・・・を含む量子ドット素子31と、量子ドット素子31に励起光EL、例えば符号37で示される光波束を非局所的に照射できる光波整形光学装置33と、コンピュータシステム35とを有している。コンピュータシステム35による制御信号S1により、光波整形光学装置33はある光パルス列37を生成し、この光パルス列37を量子ドット素子31に対して照射するように命令する。
【0037】
これにより、量子ドット素子31内の特定の量子ドット、例えば量子ドット31aのみを選択することができる。特定の量子ドット31aが選択された状態をコンピュータシステム35内に設けられたメモリ35aに、上記光波束の特性(位相φ、強度Iなど)とともに記憶する。この操作は複数の量子ドット、例えば量子ドット31a、31b、31cに対して同時に行うことが可能であり(図9、図10参照)、一般的な半導体メモリ装置における記憶場所のアドレスのように量子ドットのアドレスを記憶させることもできる。すなわち、上記特性を記憶することにより、量子ドット素子31に関するいわゆる検量線(アドレス・データベース)を作成することができる。
【0038】
このように構成すれば、量子ドット素子31に照射する光波束37の特性により、プローブ光(図示せず)を照射した際には常に同じ出力特性が得られることになり、一種のメモリ装置として機能させることができる。
【0039】
図12は、本実施の形態による光入出力技術を光スイッチとして機能させる構成を例示した図である。図12に示すように、光スイッチCは、量子ドット素子41と、これに対してプローブ光と励起光とを照射できる装置である。励起光により、ある量子ドット41aのみを選択した後にプローブ光を照射することにより、選択された量子ドット41aに特有の特性、例えば波長λ1における吸収飽和特性などを検知することができる。これにより、波長λ1に関する光スイッチがオン状態(又はオフ状態)になったと考えることができる。それぞれの量子ドットに関して同様にスイッチングすることができる。
【0040】
基底準位のオン/オフにより経路が選択される。選択パルス(励起光)により選択されると基底準位がオンとなり信号光(プローブ光)は透過し、基底準位がオフの場合は吸収される。従って、上記構成は、光インターコネクションデバイスとして応用可能である。
【0041】
次の応用例は、例えば、二次元的に配列した複数の量子ドット群を用い、ネットワークを構成する例である。この場合、基底準位はすべて同一にし、励起準位又は局在格子準位のみに不均一性が存在するような素子を作製する必要がある。図13は、上記構成を例示した図である。このデバイスでは量子ドット素子の基底準位を一致させることが必要であるが、これは例えば各素子に電界を印加することによりバンド構造を操作することで可能である。但し、この場合、局所的な格子場、歪の影響は残るため各素子の局在振動準位は異なっている。
【0042】
図13に示すネットワーク素子において、複数の量子ドット素子51aから51dまでを、2次元的に配列し、最適化された光波束によって同時に選択し、基底準位を電子で満たされた状態にする。この際、トンネル効果により量子ドット間を移動できるのは、基底準位が空である量子ドット51e~51iのみであるため、電子の通過経路(パス)は矢印で示される1通りのパスに限定されることになり、ある入力に対して選択されたパスによる出力が得られることになり、量子ドット・ネットワークとして機能する。
【0043】
以上、本実施の形態による光入出力技術を用いると、多数の量子ドットを含む量子ドット群の中から、非局所的な励起光により特定の量子ドットのみを1又は複数だけ選択することができ、光入出力を簡単にすることができるという利点がある。
以上、本実施の形態に沿って説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0044】
【発明の効果】
以上、本発明の光入出力技術を用いると、多数の微細素子を含む微細素子群中から、非局所的な励起光により特定の1又は複数の微細素子のみを選択することができ、光入出力を簡単にすることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体量子ドットのエネルギー準位と、対応するPL及びPLの発光強度の緩和エネルギー依存性(PLE)と、を示す図である。
【図2】図2は、半導体量子ドット群のPLE発光強度分布の典型例であり、上方の特性は複数の量子ドットを含む量子ドット群の、下方の特性は単一量子ドットの特性を示す図である。
【図3】半導体量子ドット群に含まれる半導体量子ドット(A~Eまで)のPL強度のPLエネルギー依存性を示す図である。
【図4】A~Eまでの異なる5つの量子ドットに関するPLEの特性を示す図である。
【図5】図5(A)は半導体量子ドット群に照射する励起光のエネルギー分布図であって広い分布を有する励起光の場合のエネルギー分布を示す図であり、図5(B)は、図5(A)に示す励起光により選択された量子ドット全体のエネルギー分布を示す図である。
【図6】図6(A)は半導体量子ドット群に照射する励起光のエネルギー分布図であって、φ1とφ2との2つの光パルス列を有する励起光の場合のエネルギー分布を示す図であり、図6(B)は、図6(A)に示す励起光により選択された量子ドットのエネルギー分布を示す図である。
【図7】図7(A)は半導体量子ドット群に照射する励起光のエネルギー分布図であって、φ1、φ2及びφ3との3つの光パルス列を有する励起光の場合のエネルギー分布を示す図であり、図7(B)は、図7(A)に示す励起光により選択された量子ドットのエネルギー分布を示す図である。
【図8】フェムト秒パルスレーザー光に基づいて多波長パルス光を生成する空間位相変調器を利用した光波整形光学系装置の概略構成を示す図である。
【図9】A~Eまでの5つの量子ドットに関して、PLエネルギーと位相φとの関係を示した図であり、合わせて2次元平面上にPL強度分布を示した図である。a~cまでは、異なる量子ドットの選択条件下での特性を示すものである。
【図10】図9のb条件下(量子ドットEのみを選択する条件下)での、量子ドットEとCとに関する規格化強度と位相φとの関係を示す図である。
【図11】本実施の形態による光入出力技術を利用した光メモリ装置の構成例を示す図である。
【図12】本実施の形態による光入出力技術を光スイッチとして機能させる構成を例示した図である。
【図13】本実施の形態による光入出力技術により量子ドット素子をネットワーク状に関連付けさせたネットワーク素子の概略的な構成図である。
【符号の説明】
A…光波整形光学系装置、1…フェムト秒パルスレーザー光、3、15…回折格子、5、7…凹面鏡、11…空間位相変調器、21…多波長パルス列、B…光メモリ装置、31…量子ドット素子、31a、31b、31c…量子ドット、33…光波整形光学装置、35…コンピュータシステム、37…光パルス列。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12