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明細書 :乳酸菌利用による発酵即席麺の物性改良法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3873129号 (P3873129)
公開番号 特開2005-237224 (P2005-237224A)
登録日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発行日 平成19年1月24日(2007.1.24)
公開日 平成17年9月8日(2005.9.8)
発明の名称または考案の名称 乳酸菌利用による発酵即席麺の物性改良法
国際特許分類 A23L   1/16        (2006.01)
FI A23L 1/16 C
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2004-048400 (P2004-048400)
出願日 平成16年2月24日(2004.2.24)
審査請求日 平成16年2月24日(2004.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
発明者または考案者 【氏名】横田 篤
【氏名】花岡 彰宏
【氏名】鈴木 康之
【氏名】杉山 久
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】村上 騎見高
参考文献・文献 特公昭58-019268(JP,B1)
特開昭62-171651(JP,A)
特開2000-350559(JP,A)
調査した分野 A23L 1/16
特許請求の範囲 【請求項1】
pH7以上の条件で生育及び/又は発酵可能な乳酸菌の存在下に小麦粉、水及びアルカリ性添加物を含む麺生地原料から麺生地を作製し、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させることにより製造されたことを特徴とする食感の改良された即席麺。
【請求項2】
前記発酵させることに続き、加熱し、更に乾燥または凍結することにより製造されたことを特徴とする請求項1に記載の即席麺。
【請求項3】
前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする請求項1または2に記載の即席麺。
【請求項4】
pH7以上の条件で生育及び/又は発酵可能な乳酸菌の存在下に小麦粉、水及びアルカリ性添加物を含む麺生地原料から麺生地を作製する工程と、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させる工程と、を有することを特徴とする食感の改良された即席麺の製造方法。
【請求項5】
前記発酵させる工程に続き、更に、加熱する工程と、乾燥または凍結する工程と、を有することを特徴とする請求項4に記載の即席麺の製造方法。
【請求項6】
前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする請求項4又は5に記載の即席麺の製造方法。
【請求項7】
前記乳酸菌の存在下に麺生地を作製する工程において、前記小麦粉、水及びアルカリ性添加物を含む麺生地原料と共に乳酸菌を混練することを特徴とする請求項4~6に記載の即席麺の製造方法。
【請求項8】
前記乳酸菌の存在下に麺生地を作製する工程において、前記小麦粉、水及びアルカリ性添加物を含む麺生地原料を混練した後に、前記乳酸菌を添加することを特徴とする請求項4~6に記載の即席麺の製造方法。
【請求項9】
pH7以上の条件で生育及び/又は発酵可能な乳酸菌の存在下に小麦粉、水及びアルカリ性添加物を含む麺原料から麺生地を作製し、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させることを特徴とする即席麺の食感改良方法。
【請求項10】
前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする請求項9に記載の即席麺の食感改良方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、食感の改良された即席麺、そのような即席麺の製造方法及び即席麺の食感改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺は、小麦粉にかんすい又はカルシウム塩等のアルカリ性添加物を加え、アルカリ性とすることで、特有の風味と食感を生じる麺類である。また、かんすい等アルカリ性添加物の作用により、即席麺特有の黄色味を生じているものが基本である。
【0003】
即席麺の食感は、湯戻しした後の麺の歯切れ、弾力性、滑らかさ、湯伸びなど様々な要素が決定するといわれているところ、食感を改良するための様々試みがなされているが、これらの方法によってもその改良の程度は必ずしも充分とはいえない。
【0004】
一方、微生物を麺類に利用する技術としては、酵母による発酵中華麺に関する技術が特許文献1及び2等に開示されている。これらの特許公報には、酵母を添加することにより麺のつや、弾力性や麺質を改良できることが記載されているが、乳酸菌を利用した発酵即席麺は未だ知られていない。

【特許文献1】特開昭54-8744号公報
【特許文献2】特開平8-294370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な食感を有する即席麺、そのような即席麺の製造方法及び即席麺の食感改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成すべく本発明者らが鋭意研究した結果、乳酸菌の存在下にその麺生地を作製すること、及び作製した麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで麺生地を発酵させることを組み合わせることにより食感を顕著に改良できることを見出した。従来、乳酸菌は、酸性領域に至適pHを有するものが多いので、良好なグルテンネットワークを形成するためにアルカリ領域のpHが設定される麺生地に乳酸菌を添加することは当業者の技術常識としては考えられないことであった。本発明は、このような技術常識を打ち破り、乳酸菌を使用することにより、食感の改良された麺が製造できることを見出して成されたものである。また、本発明の即席麺では、その原料として使用する小麦粉として、超強力粉を含むものにすることによりさらに食感を改良できることが分かった。
【0007】
すなわち、本発明は、次の食感の改良された即席麺、その製造方法及び即席麺の食感改良方法を提供する。
【0008】
(1)乳酸菌の存在下に小麦粉及び水を含む麺生地原料から麺生地を作製し、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させることにより製造されたことを特徴とする食感の改良された即席麺。
【0009】
(2)前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする(1)に記載の即席麺。
【0010】
(3)乳酸菌の存在下に小麦粉及び水を含む麺生地原料から麺生地を作製する工程と、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させる工程とを有することを特徴とする食感の改良された即席麺の製造方法。
【0011】
(4)前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする(3)に記載の即席麺の製造方法。
【0012】
(5)前記乳酸菌の存在下に麺生地を作製する工程において、前記小麦粉及び水を含む麺生地原料と共に乳酸菌を混練することを特徴とする(3)又は(4)に記載の即席麺の製造方法。
【0013】
(6)前記乳酸菌の存在下に麺生地を作製する工程において、前記小麦粉及び水を含む麺生地原料を混練した後に、前記乳酸菌を添加することを特徴とする(3)又は(4)に記載の即席麺の製造方法。
【0014】
(7)乳酸菌の存在下に小麦粉及び水を含む麺原料から麺生地を作製し、前記麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲内になるまで発酵させることを特徴とする即席麺の食感改良方法。
【0015】
(8)前記小麦粉が、超強力粉を含む小麦粉であることを特徴とする(7)に記載の即席麺の食感改良方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の食感が改良された即席麺について詳細に説明する。なお、別段の規定がない限り、以下の説明は本発明の即席麺の製造方法及び食感改良方法に援用することができる。
【0017】
本発明の即席麺は、乳酸菌を用いることを除き、通常の即席麺と同様の原材料を使用することができる。すなわち、即席麺の原料としては、主原料として、小麦粉、その他の穀物粉と、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉等の澱粉、グルテン、卵等の蛋白質、食塩、カルシウム等の無機塩及び着色料、保存料等の食品添加物、発酵加工用の酵母等の副原料とを一種又は複数種含むことができる。
【0018】
本発明の即席麺で用いる小麦粉は、通常の即席麺類用小麦粉として市販されている準強力粉~強力粉に分類されるものを使用することができるが、使用する小麦粉は、超強力粉の含有量が高いことが食感改良(特に、弾力、硬さ、麺伸び)等の観点から好ましい。TakadaらのBreeding Science 51; 143-146 (2001)によれば、小麦粉に含有されるグルテン蛋白質には、高分子量グルテニン、低分子量グルテニン及びグリアシンが含まれるところ、これらの成分のうち、5+10高分子量グルテニン及び42kD低分子量グルテニンを併せ持つものが超強力粉の性質を示すといわれている。ここで、高分子量グルテニン及び低分子量グルテニンは、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるみかけの分子量が、それぞれ80~130kD及び10~70kDを示す(Bietz and Wall, Cereal Chem, 49, 416-430 (1972))。このような超強力粉は、Glenlea、Wildcat、Bluesky、Victoria INTA、カンザス州立大学育成品種KS831957、独立行政法人農業技術研究機構北海道農業研究センター育種系統の勝系12、勝系14、勝系33等を挙げることができる。
【0019】
本発明では、食感の改良のためには全小麦粉に占める超強力粉の割合は多いことが好ましく、使用する小麦粉の全量を超強力粉とすることもできるが、食感、外観等を考慮して強力粉の割合を決定すればよい。例えば、全小麦粉に占める強力粉の割合は、最低30重量%を超える量、好ましくは40重量%を超える量と使用することができる。
【0020】
なお、使用する小麦粉が超強力粉を含むあるいは使用する小麦粉が全て超強力粉である場合を想定して説明したが、上述した超強力粉の成分である5+10高分子量グルテニン及び42kD低分子量グルテニンを含むグルテンを、通常使用する小麦粉に別途添加した場合であっても超強力粉と同様の効果が得られれば、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0021】
本発明の即席麺は、中華、和風、欧風等いずれの種類の即席麺であってもよく、麺の種類に応じて添加物等を決定することができる。また、フライ麺あるいはノンフライ麺のいずれであってよい。
【0022】
本発明の即席麺では、食感を改良するために乳酸菌を使用することを特徴の一つとする。乳酸菌は、グラム陽性、耐好気性、カタラーゼ陰性、非運動性、無芽胞の桿菌又は球菌であり、糖質より50%以上の乳酸を生成する細菌である。本発明の即席麺では、食品に添加する乳酸菌として悪影響のない乳酸菌であればいずれをも使用することができる。好ましくは食品を分離源とする乳酸菌か食品製造にすでに使用されている乳酸菌である。
【0023】
本発明の即席麺で使用する乳酸菌は、上述した条件に加えて、即席麺製造工程中の麺生地において、生育及び/又は発酵可能な乳酸菌であることが即席麺の食感等の改良のために好ましい。ここで、乳酸菌が生育可能とは、生菌数の少なくとも一部が維持又は増加することをいう。また、発酵可能とは、乳酸菌が菌体内に取り込んだ糖等の物質を変換し、新たな代謝生成物を産生又は放出することをいう。
【0024】
具体的には、本発明で使用する乳酸菌は、おおむねpH7以上の条件で生育及び/又は発酵可能な乳酸菌であることが望ましい。通常、小麦粉等に含まれるグルテンがネットワークを形成し、麺にコシを付与できるのがそのような中性又はアルカリ条件下だからである。ここで、生育可能とは、乳酸菌を添加する基材の成分及びその含量あるいは液体、固体、半流動等の形態、温度、湿度、通気性等の環境条件、そして殺菌、滅菌の有無等の如何によらず、基材として乳酸菌培養用の合成培地や農作物、食品、飲料あるいはそれらの混合物等乳酸菌が生育可能な基材のすべてのいずれか一種に、一種又は複数の乳酸菌を添加することにより、乳酸菌菌体数の増加が、乳酸菌添加時からの経過時間や人為的なpHの調整を除く基材の温度等の環境条件等の如何を問わず、例えばコロニーの形成又はその増大、吸光度又は濁度の増加、生菌数の測定等いずれかの確認方法により認められることをいう。なお、後述するように、本発明の即席麺では、乳酸菌の存在下に麺生地を作製し、その後、麺生地のpH値が6.0~8.0の範囲になるまで発酵させて製造する。使用する乳酸菌の種類、どの程度までpH値を下げるかなどによって異なるが、使用する乳酸菌は、中性又はそれ以上の高pH値の環境が発酵最適条件のものでなくてもよい。すなわち、本発明で使用する乳酸菌は、中性又はそれ以上の高pH条件下で多少の不活化あるいは死滅化しても、最終的に麺生地のpHを所望の値まで下げることができれば差し支えない。
【0025】
本発明の即席麺で使用し得る乳酸菌の一例を挙げると、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、テトラジェノコッカス属などに属する乳酸菌が挙げられる。これら乳酸菌は乳製品、醸造、漬物、健康食品など、広く食品加工に用いられる乳酸菌であり、市販されているものを使用することができる。
【0026】
以下の表1に、使用可能な乳酸菌の株名と、その由来を示す。
【表1】
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【0027】
使用する乳酸菌は、単一の菌体でも複数の菌体でもよく添加量は、麺の原料配合等を考慮し最適な量を添加すればよく、製品重量に対して湿菌体として0.1~5%程度添加するのが適当である。
【0028】
なお、菌体が使用可能であるか否かの判定は、以下のような方法により確認することができる。
【0029】
選択培地は、グルコース又はマルトース 10g/l、肉エキス 5g/l、酵母エキス 2.5g/l、ペプトン 5g/l、Tween 80 1g/l、クエン酸三アンモニウム 1g/l、酢酸ナトリウム三水和物 2.5g、K2HPO4 1g/l、MgSO4・7H2O 0.1g/l、MnSO4・4H2O 0.025g/l、TABS 0.1Mの組成からなりNaOHの添加によりpHが8.6となる液体培地を用いる。この培地に候補となる株を接種し、嫌気状態で各菌株の至適温度で24~36時間程度培養し、グルコース、マルトースを炭素源としたとき、菌体が生存していれば使用可能とする。
【0030】
次に、本発明の食感が改良された即席麺の製造方法及び即席麺の食感改良方法について詳細に説明する。
【0031】
本発明の即席麺の製造方法としては、上述した乳酸菌の存在下に小麦粉その他の原料を混合した後、麺生地のpH値が6.0~8.0になるまで発酵させることを除き、通常の方法により製造することができる。具体的には、麺生地を作製した後、これを圧延し、麺線に切断し、加熱調理すればよい。加熱調理は、蒸す、揚げる等いずれの方法でもよく、また、加熱調理後、熱風処理等により乾燥し、製品とすることができる。また、製品は凍結して保存することもできる。
【0032】
本発明の製造方法では、乳酸菌の存在下に麺生地を作製し、そのpH値が6.0~8.0になるまで発酵させることが即席麺の食感を改良するために特に重要である。ここで、麺生地を発酵とは、乳酸菌の生育並びに生成物の作用による麺生地の変化のみならず、乳酸菌自身あるいは麺構成成分(蛋白質、澱粉等)の相互作用による麺の変化(グルテンネットワーク構築、澱粉質への水の水和等)が起こっている状態をいう。麺生地を発酵させるためには、原料を混練して均一な麺生地になった後に、さらに混練あるいは放置すればよい。この発酵中、麺生地内では乳酸菌が発酵することによりpH値が下がる。麺生地のpH値は、6.5~7.5が好ましい。このような範囲のpHにすることにより、特に、歯切れ、弾力、伸びを著しく改良することができる。また、pH値が上記範囲よりも低いと、伸びの早い麺となり、また高いとアルカリ焼けとなる傾向が見られる。
【0033】
麺生地を発酵させる環境は、pH値が上記範囲内になればどのような環境でもよいが、温度30~37℃、湿度50~90%程度が、乳酸菌生育、生地乾燥防止等の観点から好ましい。発酵時間は、使用する小麦粉及び乳酸菌の種類、原料を混練する時間、生地温度等により異なるので、麺生地のpHをモニターすることにより決定すればよい。麺生地のpHの測定方法は、実施例に記載した。
【0034】
麺生地を作製する際の乳酸菌の添加時期は、乳酸菌の生育並びに乳酸発酵生成物の作用による麺生地の変化や、乳酸菌自身あるいは麺構成成分(蛋白質、澱粉等)の相互作用による麺の変化(グルテンネットワーク構築、澱粉質への水の水和等)等のバランスが保たれ、発酵後の麺生地のpH値が6.0~8.0になり、発酵後の麺の食感が改良される限り、どの段階でもよい。上述したように、グルテンネットワークは中性又はアルカリ性条件下に形成されるので、通常は、小麦粉及び水を含む麺生地原料を混練することによりグルテンネットワークがある程度形成した後に乳酸菌を添加するが、グルテンネットワーク形成中の環境下に乳酸菌が完全には失活あるいは死滅することなく、最終的に麺生地のpH値を上記範囲にまで下げる程度に活性であれば、麺生地原料に予め乳酸菌を添加し、一緒に混練することもできる。
【0035】
乳酸菌の使用は、単一の菌株でも複数の菌株でもよく、その添加形態は、湿菌体、乾燥菌体、凍結菌体、培養液そのままや増量剤を含む形態のいずれでもよい。乳酸菌の添加方法にも特に制限はなく、菌体のまま添加してもよいし、他の原料と混合して添加してもよい。また、乳酸菌以外の原料に乳酸菌を添加したものと添加しないものをそれぞれ別々に作成した後に、それらを複合混合させることもできる。乳酸菌の使用量は、麺の原料配合等を考慮し最適な量を添加すればよく、製品重量に対して湿菌体として0.1~5%程度添加するのが適当である。
【0036】
なお、本発明では、麺生地のpH値が所望の値になった時点で発酵を停止させ、pH値が所望の値よりも下がることを防止することが食感の改良等のために好ましい。本発明の方法では、麺生地の製造段階で通常行う蒸しその他の加熱処理がこの発酵停止のための処理を兼ねることが簡便であるが、例えば、乳酸菌が不活化するまで麺生地の温度を下げる、その他の方法により発酵を停止することもできる。
【0037】
以上、説明したように、本発明の即席麺の特徴の一つは、細菌として乳酸菌のような酸生産菌を使用することにある。上述したように、従来、乳酸菌は、酸性領域に至適pHを有するものが多いので、良好なグルテンネットワークを形成するためにアルカリ領域のpHが設定される麺生地に乳酸菌を添加することは当業者の技術常識としては考えられないことであった。本発明は、このような技術常識を打ち破り、乳酸菌を使用することにより、食感の改良された麺が製造できることを見出して成されたものである。また、本発明の即席麺では、上記乳酸菌の使用と麺生地の発酵とを組み合わせ、さらに、超強力粉を使用し、これらのバランスをとることにより、即席麺の食感を著しく改良できるものである。
【0038】
上述のような本発明により即席麺の食感が改良できるとともに、良好な酸味も付与することができる。この酸味は、主として即席麺生地中のマルトースを乳酸菌が代謝し、乳酸を生成するためであると考えられる。また、風味、麺のなめらかさ、コシ等は、乳酸菌自体並びに乳酸及びそれ以外の代謝物によるものであると考えられる。
【実施例】
【0039】
次に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
[比較例1]
小麦粉(外国産準強力粉)5000g、塩100g、炭酸カリウム10g、炭酸ナトリウム6.7g、水1540gの組成物を18分間ミキシングし、荒延1回、複合1回、圧延5回の処理を行い、即席麺生地にした。
【0041】
各時間の即席麺生地を20番角刃で切り出し、1分30秒間蒸した。蒸した麺線を1%食塩水に浸し味付け後、精製パーム油で150℃、1分15秒の条件でフライングを行い冷却放冷後、完成とした。
【0042】
この即席麺について官能試験を行った。なお、官能試験は、パネラーが容器に入れた即席麺に熱湯を注いだ後所定の時間経過後、得られた麺を喫食し、滑らかさ、硬さ、歯切れ、熱湯を注いだ後の麺のもどりの速さ、麺の弾力及び熱湯を注いだ後の麺の伸びるまでの時間について、この順番で以下の表2に示す7段階で評価した(以下の実施例においても同じ)。
【表2】
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【0043】
結果を表3に示す。表3に示す数値は、15~20名のパネラーによる採点の平均値である。
【表3】
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【0044】
[実施例1及び2]
Lactobacillus plantarum NRIC 1832、Lb. Plantarum NRIC 0380を用いて即席麺を作製した。小麦粉(外国産準強力粉)5000g、塩100g、炭酸カリウム10g、炭酸ナトリウム6.7g。水1540gと、グルコース又はマルトース10g/L、肉エキス5g/L、酵母エキス2.5g/L、ペプトン5g/L、Tween 80(商品名)1g/L、クエン酸三アンモニウム1g/L、酢酸ナトリウム三水和物2.5g/L、K2HPO4 1g/L、MgSO4・7H2O 0.1g/L、MnSO4・4H2O 0.025g/Lの組成からなる液体培地で培養し、得られた菌体を蒸留水で二度洗浄した菌体の湿菌体重量50gを添加し、18分ミキシングし、荒延1回、複合1回、圧延5回の処理を行い、pH8.0になった即席麺生地にした。
【0045】
即席麺生地は、30℃で0時間、4時間、8時間、18時間、24時間、それぞれ恒温、発酵し、pHを測定した。測定結果を、図1のグラフ(横軸:発酵時間(時間);縦軸:麺のpH値)に示す。
【0046】
なお、麺のpH値は、麺生地20gをビーカーに計り取った。これに200mLのイオン交換水を加えホモジナイズし、10分放置後、HOLIBAカスタニーLAB 卓上pHメータM-12にてpHを測定した(20℃~25℃)。
【0047】
各時間の即席麺生地を20番角刃で切り出し、1分30秒間蒸した。蒸した麺線を1%食塩水に漬し味付け後、精製パーム油で150℃、1分15秒の条件でフライングを行い冷却放冷後、完成とした。
【0048】
この発酵即席麺について、官能試験を行った。結果を表4-1及び4-2に示す。
【表4-1】
JP0003873129B2_000005t.gif

【0049】
【表4-2】
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【0050】
上記表4-1及び表4-2の結果から明らかなように、食感の項目の歯切れ、弾力について、pH6.0~8.0の間では食感がよくなる傾向を示した。また、滑らかさについては、pH6.0までは適度な滑らかさを有していた。
【0051】
また、比較例1の乳酸菌無添加状態における麺の食感(表3)と比較しても、硬さ、弾力が良好な食感となった。
【0052】
[実施例3~5]
Lactobacillus plantarum NRIC 1832(原料全量に対して乳酸菌の湿菌を1%添加)を用いて実施例1に記載した手順で発酵即席麺を作製した。但し、原料小麦粉として、実施例1で使用した小麦粉の代わりに、準強力国内産小麦粉、外国産準強力小麦粉又は超強力小麦粉勝系33号を使用した。また、麺生地は、30℃で8時間恒温、発酵し、pHを測定した。
【0053】
この発酵即席麺について、実施例1と同じ官能試験を行った。結果を表5に示す。また、麺の切断応力も測定した。
【0054】
麺の切断応力は、熱湯を注いだ後3~14分まで1分おきに麺を取り出し、SMS社製テクスチャーアナライザーにより測定した。結果を図2のグラフ(横軸:熱湯を注いだ後の経過時間(分);縦軸:最大切断荷重(gf))に示す。
【表5】
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【0055】
図2及び表5に示す切断応力及び官能試験の結果より、特に、勝系33号は、乳酸発酵による食感の劣化を防止でき、乳酸発酵即席麺の製造に特に適した小麦粉であることが分かった。
【0056】
[発明の効果]
以上説明したように本発明は、従来の即席麺の製法に特別な製造条件を必要とせず乳酸菌の使用を追加し、かつ麺生地のpH値が所定の値になるまで発酵させることのみで、良好な食感を有する即席麺の提供が可能となる。また、本発明の方法により製造される即席麺には、乳酸菌が有するプロバイオティクス機能も期待することができる。このような本発明により、即席麺の需要、消費拡大への多大な寄与が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、発酵時間と麺生地のpH値との関係を示すグラフ。
【図2】図2は、湯戻し後の時間と麺の最大切断荷重との関係を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1