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明細書 :解析用四面体メッシュ生成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4664023号 (P4664023)
公開番号 特開2006-072531 (P2006-072531A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年4月6日(2011.4.6)
公開日 平成18年3月16日(2006.3.16)
発明の名称または考案の名称 解析用四面体メッシュ生成装置
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
FI G06F 17/50 612J
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2004-252933 (P2004-252933)
出願日 平成16年8月31日(2004.8.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年3月9日 社団法人情報処理学会発行の「情報処理学会 第66回全国大会(平成16年) 講演論文集」に発表
審査請求日 平成19年3月29日(2007.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
発明者または考案者 【氏名】金井 理
【氏名】伊達 宏昭
【氏名】岸浪 建史
【氏名】西垣 一朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100098017、【弁理士】、【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
【識別番号】100066979、【弁理士】、【氏名又は名称】鵜沼 辰之
審査官 【審査官】加舎 理紅子
参考文献・文献 特開2003-132099(JP,A)
特開2005-242647(JP,A)
特開2005-242651(JP,A)
伊達宏昭 他,細分化と簡略化に基づくメッシュ品質向上手法,2003年度精密工学会北海道支部学術講演会講演論文集,2003年 9月 6日,p.41-42
調査した分野 G06F 17/50
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
物品のソリッドモデルおよび解析条件を取り込み、少なくとも設定要素サイズに基づいて前記解析条件が設定された要素に識別符号を付して高密度の四面体メッシュを生成する四面体メッシュ生成部と、
前記四面体メッシュ生成部により生成されかつ前記識別符号が付された高密度の四面体メッシュと、設定された性質制御パラメータとを取り込み、前記解析条件が設定された要素を保存しながらエッジコラプス処理を適用してメッシュの数を減らして解析用の低密度の四面体メッシュを生成する多重解像度四面体メッシュ生成部とを、コンピュータを用いて構成してなる解析用四面体メッシュ生成装置であって、
前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、高密度の四面体メッシュを構成する稜線の両端の頂点を1つに統合するための新頂点の位置を算出し、算出された前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して前記エッジコラプス処理の適用可能性を評価し、前記エッジコラプス処理が適用可能と評価された稜線を有効稜線として前記エッジコラプス処理を実行し、
前記エッジコラプス処理の適用可能性の評価は、前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して、四面体メッシュの性質を制御するパラメータとして予め設定された要素形状品質の下限値τST、メッシュサイズの上限値τSZ、メッシュ形状近似誤差の上限値τTL、頂点評価の上限値τVLを満たすことで評価する解析用四面体メッシュ生成装置
【請求項2】
前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、前記エッジコラプス処理が適用可能と評価された稜線を有効稜線として、前記エッジコラプス処理を適用した場合のメッシュの品質保存度を評価し、前記品質保存度の評価が最大の稜線と前記新頂点の位置とに基づいて前記エッジコラプス処理を実行し、
前記四面体メッシュの品質保存度は、前記エッジコラプス処理を適用して得られる四面体メッシュの要素形状の下記式で示すストレッチSt(h)が0.05以上であることを基準に評価することを特徴とする請求項1に記載の解析用四面体メッシュ生成装置
St(h)=6√6V/(maxe∈h×S
ここで、V:四面体メッシュの体積
:四面体メッシュの表面積
【請求項3】
さらに、前記四面体メッシュの性質制御パラメータを変更するパラメータ変更部を備え、
前記パラメータ変更部は、前記多重解像度四面体メッシュ生成部により生成された解像度制御が可能な多重解像度の四面体メッシュと前記解析条件を用いて有限要素解析を実施する有限要素解析部の解析結果に基づいて、前記性質制御パラメータを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の解析用四面体メッシュ生成装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素解析用の四面体メッシュの生成装置に係り、具体的には、コンピュータを用いて高密度四面体メッシュから解析に適した性質を持つ解析用多重解像度メッシュを自動生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品などの物品の強度や熱変形等の物理的な性質を有限要素法(FEM)により解析する際、その物品を例えばコンピュータグラフィックス(CG)化したソリッドモデルを、細かい面分要素(メッシュ)の集合として表現したメッシュモデルが用いられる。
【0003】
従来、ソリッドモデルからメッシュを自動生成する方法として、高密度の四面体メッシュを生成できるFEMメッシャが代表的である。
【0004】
また、従来のメッシュモデルの生成法としては、例えば、非特許文献1~2に開示されたものが知られている。
【0005】

【非特許文献1】Oliver G. Staadt and Markus H. Gross: Progressive Tetra- hedralizations, proc. of IEEE Visualization 98, 397-402, 1998.
【非特許文献2】M. Garland and Paul. S. Heckbert: Surface Simplification Using Quadric Error Metrics, proc. of SIGRAPH 97, pp. 209-216, 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、製品開発のできるだけ早い段階において、有限要素解析(FEA:Finite Element Analysis)を実施して製品形状を確定することが要望されている。このような要望を満たすためには、高品質のメッシュ生成がコンピュータ援用工学(CAE)や有限要素解析(FEA)の効率化に要求され、より頑強で、かつ性質制御性の高い解析用メッシュを自動生成することが望まれている。
【0007】
しかし、有限要素解析用メッシュの自動生成おいては、複雑なソリッド形状に対する頑強で安定した低解像度メッシュの自動生成、および柔軟なメッシュの性質制御に関して、未だ改良すべき余地がある。ここで、高品質なメッシュとは、メッシュの歪が小さく、かつメッシュサイズの均一度が高いものをいう。また、頑強な解析用メッシュ生成法とは、メッシュ生成処理が安定なことをいい、所望の品質を有するメッシュを短時間で得る処理が望まれる。さらに、性質制御性が高いとは、解析に適した品質を有するメッシュを自由に操作できることをいう。
【0008】
本発明は、高密度四面体メッシュから解析に適した性質を持つ解析用四面体メッシュを自動生成する手法を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、FEMメッシャで安定に生成可能な高密度四面体メッシュから、簡略化手法と多重解像度表現(MRR:Multi-resolution Representation)を利用して、解析に適した性質を持つ解析用メッシュを自動生成することを基本とする。ここで、多重解像度表現とは、メッシュ簡略化の際に失われた情報を保持しておき、それらの情報と最も粗いメッシュとを保持しておく表現法である。特に、有限要素解析用メッシュに要求される性質(品質)をパラメータ等により制御可能で、かつ、メッシュを簡略化しても解析条件設定に関係する要素が簡略化後のメッシュに保存されることを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明の解析用四面体メッシュ生成装置は、物品のソリッドモデルおよび解析条件を取り込み、少なくとも設定要素サイズに基づいて前記解析条件が設定された要素に識別符号を付して高密度の四面体メッシュを生成する四面体メッシュ生成部と、前記四面体メッシュ生成部により生成されかつ前記識別符号が付された高密度の四面体メッシュと、設定された性質制御パラメータとを取り込み、前記解析条件が設定された要素を保存しながらエッジコラプス処理を適用してメッシュの数を減らして解析用の低密度の四面体メッシュを生成する多重解像度四面体メッシュ生成部とを、コンピュータを用いて構成してなる解析用四面体メッシュ生成装置であって、前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、高密度の四面体メッシュを構成する稜線の両端の頂点を1つに統合するための新頂点の位置を算出し、算出された前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して前記エッジコラプス処理の適用可能性を評価し、前記エッジコラプス処理が適用可能と評価された稜線を有効稜線として前記エッジコラプス処理を実行し、前記エッジコラプス処理の適用可能性の評価は、前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して、四面体メッシュの性質を制御するパラメータとして予め設定された要素形状品質の下限値τST、メッシュサイズの上限値τSZ、メッシュ形状近似誤差の上限値τTL、頂点評価の上限値τVLを満たすことで評価することを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記多重解像度四面体メッシュ生成部で生成された有限要素解析用の四面体メッシュと設定された前記解析条件に基づいて有限要素解析を実行する有限要素解析部を有して構成することができる。また、前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、四面体メッシュを構成する稜線の両端の頂点を1つに統合するための新頂点を算出し、算出された前記新頂点に基づいて前記簡略化処理を実行することができる。また、新頂点を算出する処理は、解析条件が設定されたメッシュ要素を保存しながら処理を実行する。例えば、稜線が解析条件が設定された稜線、または稜線の端点が解析条件が設定された頂点又は端点のとき、簡略化処理をしないことにより、解析条件が設定されたメッシュ要素を保存しながら簡略化処理をする。
【0012】
また、前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、高密度の四面体メッシュを構成する稜線の両端の頂点を1つに統合するための新頂点の位置を算出し、算出された前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して前記エッジコラプス処理の適用可能性を評価し、前記エッジコラプス処理が適用可能と評価された稜線を有効稜線として前記エッジコラプス処理を実行し、前記エッジコラプス処理の適用可能性の評価は、前記新頂点により変更された稜線を含む全ての稜線に対して、四面体メッシュの性質を制御するパラメータとして予め設定された要素形状品質の下限値τST、メッシュサイズの上限値τSZ、メッシュ形状近似誤差の上限値τTL、頂点評価の上限値τVLを満たすことで評価することができる。
【0013】
さらに、前記多重解像度四面体メッシュ生成部は、前記エッジコラプス処理が適用可能と評価された稜線を有効稜線として、前記エッジコラプス処理を適用した場合のメッシュの品質保存度を評価し、前記品質保存度の評価が最大の稜線と前記新頂点の位置とに基づいて前記エッジコラプス処理を実行し、前記四面体メッシュの品質保存度は、前記エッジコラプス処理を適用して得られる四面体メッシュの要素形状の後述する式(3)で示すストレッチSt(h)が0.05以上であることを基準に評価することができる
【0014】
この場合、有限要素解析部の解析結果に基づいて、メッシュの性質制御パラメータを変更するパラメータ変更部を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高密度四面体メッシュから解析に適した性質を持つ解析用四面体メッシュを自動生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。図1に、本発明の一実施の形態の有限要素解析用の四面体メッシュの生成方法を適用した有限要素解析システム(CAEシステム)の構成図を示す。図示のように、本実施形態のシステムは、解析条件設定部1と、高密度四面体メッシュ生成部2と、多重解像度四面体メッシュ生成部3と、有限要素解析部4とを含んで構成されている。これらの各部は、コンピュータおよびコンピュータプログラムにより実現することができる。
【0017】
解析条件設定部1は、コンピュータ援用設計(CAD)によって形成された製品のソリッドモデルのデータを取り込み、入力される材質、荷重、拘束条件および境界条件などの解析条件をソリッドモデルに設定する。
【0018】
高密度四面体メッシュ生成部2は、例えば公知のFEMメッシャを用いて構成され、ソリッドモデルのデータおよび解析条件を取り込むとともに、入力設定される要素サイズおよびトレランス(形状近似の誤差の上限)に基づいて、高密度の四面体メッシュを生成する。このとき、解析条件設定に利用された要素(以下、解析条件設定要素という。)に識別符号のラベルを付した四面体メッシュを生成する。
【0019】
多重解像度四面体メッシュ生成部3は、本発明の特徴部であり、高密度四面体メッシュ生成部2により生成された高密度の四面体メッシュのデータと、解析条件設定要素および入力設定されるメッシュの性質制御パラメータとを取り込み、解析用メッシュを自動生成する。本実施形態では、メッシュの数を減らしてメッシュを簡略化する処理と、多重解像度表現(MRR)を利用して解析に適した性質を有する解析用メッシュを生成する。この多重解像度四面体メッシュ生成部3によれば、後述するように、複雑な形状でも確実な、さらに解析条件生成に必要な解析条件設定要素を保存しながら、メッシュの性質を柔軟に制御できる。
【0020】
有限要素解析部4は、多重解像度四面体メッシュ生成部3により生成された解像度制御が可能な多重解像度の四面体メッシュを取り込むとともに、解析条件設定部1で設定された解析条件を用いて有限要素解析を実施し、製品の設計形状の評価を行う。
【0021】
以下に、本発明の特徴部である多重解像度四面体メッシュ生成部3を詳細に説明する。
[1]メッシュの性質制御
まず、有限要素解析においては、解析時間短縮および精度向上の観点からメッシュの性質が適切であることが要求される。本実施形態では、メッシュの性質のうち、要素形状品質、サイズ、形状近似誤差、頂点(節点)価数を考慮している。つまり、ユーザが指定するメッシュの性質制御パラメータとして、要素形状品質の下限値τST、サイズの上限値τSZ、形状近似誤差の上限値τTL、頂点評価の上限値τVLを入力設定することにより、メッシュ性質を制御可能にしている。
【0022】
さらに、図示していないが、有限要素解析の結果に基づいて、必要に応じて、メッシュの性質制御パラメータを変更し、多重解像度四面体メッシュ生成部3にフィードバックして繰返しメッシュ簡略化処理を行うことにより、解析に適した性質を有する解析用メッシュを生成するようにすることが好ましい。
[2]解析条件設定要素の保存
解析条件設定部1でソリッドモデルの形状表面に解析条件が設定されたソリッド要素(図2(a))に対応するメッシュ要素は、解析用メッシュ上になければならない。本実施形態では、高密度四面体メッシュ生成部2で、解析条件設定要素にラベル付して四面体メッシュを生成する。すなわち、メッシュに解析条件設定(ACS)要素を定め、多重解像度四面体メッシュ生成部3におけるメッシュ簡略化の過程で、ACS要素を保存することにより、解析条件設定に必要な要素を簡略化された低解像度メッシュ上に残すようにする。例えば、解析条件ソリッド頂点に対してはACS頂点、稜線および面分に対してはACS稜線を図2(b)のように定める。
[3]四面体メッシュ簡略化
FEMメッシャなどにより高密度四面体メッシュ生成部2において生成された四面体メッシュは高密度であるから、メッシュ操作の自由度が高いことが知られている。この自由度の高さを利用して、四面体メッシュ簡略化処理により品質を考慮しながら高密度の四面体メッシュを簡略化して、解析に適した四面体メッシュを生成することが本発明の特徴である。
【0023】
四面体メッシュ簡略化処理は、図3に示すように、各四面体メッシュを構成する稜線の両端の頂点i,jを1つの新頂点kに統合することにより簡略化する処理であり、いわゆるEC(Edge Collapse)処理として知られている手法である(非特許文献1参照)。このメッシュ簡略化処理は、図4に示すように、ステップS1~S3の処理を繰り返す処理である。
【0024】
(S1:新頂点算出)
ステップS1においては、高密度四面体メッシュ生成部2から高解像度メッシュのデータおよびACS要素のデータを取り込み、全ての稜線に対してEC適用後の頂点位置を算出する。この処理は、ステップS3のEC適用により変更された稜線に対しても行われる。すなわち、稜線を構成する2頂点(i,j)を、新たな1つの頂点kに統合する。このEC法は、例えば、Oliver G. Staadt and Markus H. Gross: Progressive Tetrahedralizations, proc. Of IEEE Visualization 98, 379-402, 1998 に開示されている。
【0025】
(S2:EC適用稜線決定)
ステップS2においては、ステップS1で算出された新頂点位置と、高密度四面体メッシュ生成部2で生成された高解像度メッシュおよびACS要素と、性質制御パラメータτST、τSZ、τTL、τVLをそれぞれ取り込み、EC適用により変更された稜線を含む全ての稜線に対してEC適用可能性を評価する。そして、EC適用可能と判定された稜線を有効稜線とする。さらに、有効稜線に対してEC適用による品質保存度の評価値を定める。なお、有効稜線がなければ、処理を終了する。
【0026】
(S3:EC適用)
ステップS3においては、ステップS2において求められた評価値が最大の稜線(i、j)と、高密度四面体メッシュ生成部2で生成された高解像度メッシュ、およびステップS1で定めた新頂点位置pkを用い、ECを適用してメッシュの簡略化処理を実行して、ステップS1に戻る。このようにして、ステップS1~S3を繰り返すことにより、高解像度メッシュを簡略化処理して、解析に適した低解像度のメッシュを生成して有限要素解析部4に出力する。
[4]メッシュ評価法
ここで、ステップS2におけるEC適用による品質保存度のメッシュ評価法を詳細に説明する。本実施形態では、形状近似誤差、要素サイズおよび要素形状に基づいてメッシュを評価する。
[4.1]形状近似誤差
2つの頂点i,jを1つの新頂点kに統合するEC(i,j)→k処理により生ずる誤差dij(k)を、形状近似誤差に対しては頂点kと形状表面面分間の自乗距離により評価する(非特許文献2参照)。また、ACS稜線に対しては、それを構成する稜線と頂点k間の自乗距離により評価する。
【0027】
誤差dij(k)は、次式(1)で定義するものである。
【0028】
【数1】
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[4.2]要素サイズ
要素のサイズは、leを稜線eの長さとして式(2)で表される四面体要素hの最長辺長さSz(h)として定義する。
【0029】
【数2】
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[4.3]要素形状
要素形状の品質は、有限要素解析の分野で多く利用されている式(3)のストレッチSt(h)で評価する。
【0030】
【数3】
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ここで、V、Sは、四面体要素hの体積と表面積である。St(h)の値は、正四面体で1、要素形状が歪むにつれて0に近づき、0.05以上のメッシュが解析において推奨されている。
[5]EC適用後の新頂点算出
図5に、頂点および稜線に付するACS要素を識別するラベルの一例を示す。同図の上欄は形状表面稜線を、下欄は内部稜線を示している。また、左欄(a)はHalf-EC適用稜線を、右欄(b)は非有効稜線を示している。図中に示すように、上欄の形状表面稜線には、各稜線(i、j)にラベル(a、b,c)が付されている。a,b=1は、i,jがACS稜線上にあることを表し、a,b=2はi,jはACS頂点又はACS稜線端点を表す。また、a,b=3はi,jは普通の頂点を表す。c=1は稜線(i,j)がACS稜線上にあり、c=2は稜線(i,j)が普通の稜線であることを表す。一方、下欄の内部稜線には、ラベル(a,b)が付され、a,b=1はi,jが形状表面上にあることを表し、a,b=2はi,jが形状内部にあることを表している。なお、図5中の*は、1または2のどちらでもよいことを意味する。
【0031】
稜線e=(i,j)に対するEC適用後の新頂点kの位置pは、形状およびACS要素保存のために、図5(a)に示す特定の稜線に対してp=pを適用する。つまり、頂点対を1つに統合する際に、頂点対の一方の頂点を新たな頂点位置として利用するHalf—EC(Edge Collapse)法を適用する。また、非有効稜線の場合は、ECを適用しないと判断する。その他は、EC適用後の部分メッシュで品質を高く保つことが可能な頂点iと頂点jの1近傍の、つまり隣接する頂点集合の重心とする。ここで、1近傍の頂点集合において、形状表面上の稜線に対しては、表面上の頂点のみの集合とする。さらに、形状表面上の稜線は、稜線(i,j)に接する面分、並びに、ACS稜線との自乗距離を最小化する頂点位置p=-(A+A)-1(B+B)を第二候補とし、以下に述べる評価結果に応じて順次利用する。
[6]EC適用稜線の決定
[6.1]有効稜線の抽出
本実施形態では、メッシュ品質を保証するため、次の条件を満たす稜線をEC適用可能な有効稜線として抽出する。
【0032】
条件A:形状・ACS稜線近似誤差の上限値保証:dij(k)≦τTL
条件B:要素形状品質保証:∀∈h(k);S(h)≧τST
条件C:要素サイズ上限値保証:∀∈h(k);S(h) ≦τSZ
条件D:価数上限値保証:
│ν*(i)│+│ν*(j)│-│f*(i)∩f*(j)│-2≦τVL
ここで、h(i)は頂点iに接続する四面体要素集合、f*(i)は頂点iに接続する面分集合、ν*(i) は頂点iに接続する頂点集合である。また、条件A~Dは形状表面上の稜線に対し評価し、条件B~Dは形状内部の稜線に対し評価する。さらに、ACS要素保存と非多様体生成回避のため、図5の(b)に示すタイプの稜線を非有効稜線と判定する。この非有効稜線については、EC適用の対象としない。
[6.2]稜線評価値計算
EC処理を適用しても高い要素形状品質を保存でき、並びに要素サイズの均一化を図ることが重要である。そこで、EC処理が適用可能な有効稜線と判定された稜線のうち、簡略化による統合後の近傍メッシュにおけるストレッチが大きく、その近傍の要素辺の長さが短いものから優先的にEC処理を適用すると決定する。このための稜線(i,j)に対する評価値εijを次式(4)で定める。そして、評価値εijの大きい稜線からECを適用すると決定する。
【0033】
【数4】
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【実施例】
【0034】
上述した実施形態を具体的な物品に適用した実施例のメッシュの変化を図6に示す。図6(a)に示す高密度四面体メッシュ(要素数157,083)に対して本実施形態を適用した結果、同図(b)、(c)に要素数の異なる低解像度メッシュ1、2が得られた。各メッシュの評価結果を図7に示す。図7に示すように、本実施形態によれば、性質制御パラメータを満足するメッシュを生成でき、それらの性質制御パラメータの変更により、メッシュの性質制御が容易に行えることが確認された。
【0035】
図8に、上述した実施形態を具体的な物品に適用した他の実施例のメッシュの変化を示す。同図(a)に示す解析条件設定に必要な要素を含む高密度メッシュに対し、本実施形態を適用した結果、同図(b)に示すように、解析条件設定に必要な頂点、稜線および面分形状が低解像度メッシュ上で保存されていることが確認できる。
【0036】
これらの実施例により、本発明の手法により、解析条件設定に必要な要素を保存でき、高いメッシュ性質制御特性を持つ解析用四面体メッシュを生成できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態の有限要素解析用の四面体メッシュの生成方法を適用したCAEシステムの構成図である。
【図2】解析条件が設定されたソリッド要素に対応するメッシュ上のACS要素を保存して四面体メッシュを生成することを説明する概念図である。
【図3】四面体メッシュを簡略化するEC処理の一例を説明する概念図である。
【図4】四面体メッシュ簡略化処理の処理手順を示すブロック図である。
【図5】四面体メッシュ簡略化処理における稜線の種類に対するEC適用の考え方を示す図である
【図6】高密度四面体メッシュに対して本実施形態を適用して得られる要素数の異なる低解像度メッシュの実施例を示す図である。
【図7】図6の各メッシュの評価結果を示す図である。
【図8】本実施形態を適用して得られる低解像度メッシュ上に、解析条件設定に必要な頂点、稜線および面分形状が保存されていることを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 解析条件設定部
2 高密度四面体メッシュ生成部
3 多重解像度四面体メッシュ生成部
4 有限要素解析部
S1 新頂点算出
S2 EC適用稜線決定
S3 EC適用
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7