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明細書 :X線透過窓、X線吸収微細構造測定用セルおよび反応システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4587290号 (P4587290)
公開番号 特開2006-162506 (P2006-162506A)
登録日 平成22年9月17日(2010.9.17)
発行日 平成22年11月24日(2010.11.24)
公開日 平成18年6月22日(2006.6.22)
発明の名称または考案の名称 X線透過窓、X線吸収微細構造測定用セルおよび反応システム
国際特許分類 G01N  23/06        (2006.01)
G21K   5/00        (2006.01)
G21K   5/02        (2006.01)
FI G01N 23/06
G21K 5/00 W
G21K 5/02 X
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2004-356564 (P2004-356564)
出願日 平成16年12月9日(2004.12.9)
審査請求日 平成19年10月12日(2007.10.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】朝倉 清高
【氏名】河合 寿秀
【氏名】阪東 恭子
【氏名】角谷 均
【氏名】田旺 帝
個別代理人の代理人 【識別番号】100120640、【弁理士】、【氏名又は名称】森 幸一
審査官 【審査官】鹿戸 俊介
参考文献・文献 特開平03-054440(JP,A)
特開2001-188052(JP,A)
特開平10-054809(JP,A)
特開平04-315953(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00-23/227
G21K 5/00-5/02
特許請求の範囲 【請求項1】
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セル。
【請求項2】
上記X線透過窓が平坦な平板状の形状を有することを特徴とする請求項1記載のX線吸収微細構造測定用セル。
【請求項3】
上記X線透過窓がステンレス鋼またはタングステンからなる基台上に接合されていることを特徴とする請求項1または2記載のX線吸収微細構造測定用セル。
【請求項4】
上記X線透過窓を互いに対向して一対有し、それらの間に固体触媒を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のX線吸収微細構造測定用セル。
【請求項5】
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システム。
【請求項6】
上記X線吸収微細構造測定用セルは反応に用いる固体触媒の反応活性の度合いをモニターするためのものであることを特徴とする請求項5記載の反応システム。
【請求項7】
上記X線吸収微細構造測定用セルは主反応管をバイパスする副反応管の途中に設置されていることを特徴とする請求項5または6記載の反応システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、X線透過窓、X線吸収微細構造測定用セルおよび反応システムに関し、特に、高温高圧反応条件下で固体触媒の活性点構造の評価に用いて好適なX線吸収微細構造測定用セルおよびこれを用いた反応システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油の水素化脱硫反応などにおいて反応中の触媒作用を正確に理解するためには、実際の反応と同じ高温高圧下での固体触媒の活性点構造を知ることが不可欠である。X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure,XAFS)法は、測定雰囲気によらず、物質の構造を調べることができる有効な手法である(非特許文献1)。このため、in-situ
XAFS測定により活性点構造が決定されてきた(非特許文献2~5)。

【非特許文献1】"EXAFS of dispersed metal catalysts", G.H.Via,J.H.Sinfelt and F.W.Lytle, J.Chem.Phys.,71,690(1979)
【0003】

【非特許文献2】"Dynamic Behavior of Active Sites of a SiO2-attached Mo(VI)-dimer Catalyst during Ethanol Oxidation Observed by means of EXAFS", Y.Iwasawa,K.Asakura,H.Ishii and H.Kuroda,Z.Phys.Chem.N.F.,144,105-115(1985)
【0004】

【非特許文献3】"Metal-Assisted CO Insertion Reaction on a New Surface Rh Dimer Catalyst Observed by an In-situ Extended X-ray Absorption Fine Syructure Techniques",K.Asakura,K.K.Bando,K.Isobe,H.Arakawa and Y.Iwasawa,J.Am.Chem.Soc.,112,3242-3244(1990)
【0005】

【非特許文献4】"In-situ XAFS analysis system for high pressure catalytic reactions and its application to CO2 hydrogenation over a Rh/Y-zeolite catalyst",K.K.Bando,T.Saito,T.Tanaka,F.Dumeignil,M.Imamura,N.Matsubayashi and H.Shimada,J.Synchrotron Rad.,8,581(2001)
【0006】

【非特許文献5】"Recent development in the in-situ XAFS and related work for the characterization of catalyst in Japan.",K.Asakura,Cataly.Surv.Asia,7,177-182(2003)
【0007】
しかしながら、従来の方法では、液体反応物が共存する反応条件でのin-situ XAFS測定は非常に困難である。このため、液体反応物が共存する脱硫触媒の構造を知ることは困難であった。すなわち、従来用いられてきた気相反応を扱う固体触媒用in-situ XAFS測定では、X線透過窓を試料から離し、このX線透過窓のみ冷却することでセルの耐圧性を維持し、気密性を保つことができる。ところが、液体を扱う場合、光路に存在する液体によるX線の吸収を無視できないため、X線透過窓と試料とを近づける必要がある上、液体の熱伝導率が高いので、X線透過窓を冷却することで耐圧性を維持し、気密性を保つ従来の技術を用いることができない。このとき問題になるのがX線透過窓の強度であり、標準的な水素化脱硫反応の条件である高圧(例えば150気圧程度)、高温(例えば500℃程度)の両方に耐えることができる設計・素材選定を行う必要がある。
【0008】
X線透過窓と試料とを近づけることができ、しかも高温高圧に耐えることができるX線透過窓を実現する従来の技術として、薄い石英製の細い円筒状キャピラリーに試料を詰める技術がある。このキャピラリーは円筒形をしているため、キャピラリーに均一に圧力がかかり、耐圧性が高いものが得られる。この技術は、すでに高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography,HPLC)で確立している技術を転用することができる。
一方、高温高圧に耐えることができるX線透過窓を平板な窓材を用いて実現する従来の技術として、窓材としてベリリウムやダイアモンドを用いる技術がある。
【0009】
なお、高純度立方晶窒化ホウ素多結晶体の合成法およびその特徴については非特許文献6に開示されている。

【非特許文献6】角谷 均、上坂伸哉、NEW DIAMOND 、Vol.15 No.4 、14-19
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、薄い石英製の細い円筒状キャピラリーを用いる従来技術では、この円筒形のキャピラリーは細いので、このキャピラリーの中を通すためにX線のビームを絞る必要があり、X線の強度の損失が大きくなるとともに、セッティングが困難であるという現実的な問題に加えて、試料がキャピラリーの壁に沿って、湾曲して存在するため、厚みむらが生じて、XAFS測定の信頼性を損なう問題がある。
一方、窓材としてベリリウムやダイアモンドを用いる従来技術では、ダイアモンドは高価であるだけでなく、回折X線を出すためにXAFS測定用セルの窓材として用いるには必ずしも良い材料ではなく、また、ベリリウムは毒性を持ち、酸化雰囲気で容易に酸化されるという点に問題がある。
【0011】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、高温高圧に耐えることができ、毒性がなく安全で、酸化雰囲気で酸化されにくく、回折X線の影響が少なくXAFS測定を高い信頼性で行うことができ、X線透過性に優れ、平坦な形状とすることができ、しかも安価なX線透過窓、このX線透過窓を用いた高性能なX線吸収微細構造測定用セルおよびこのX線吸収微細構造測定用セルを用いた反応システムを提供することである。
上記課題およびその他の課題は、添付図面を参照した本明細書の以下の記述により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来技術が有する上記の課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、XAFS測定用セルの窓材として、立方晶窒化ホウ素(cBN)を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体、最も好ましくは、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、窒化ホウ素以外の不純物を含まない高純度多結晶体(非特許文献6参照)あるいはポリベンズイミダゾールを用いることにより、上記課題を一挙に解決することができることを見出した。そして、この多結晶体あるいはポリベンズイミダゾールにより平坦なX線透過窓を形成し、これを用いてin-situ XAFS測定用セルを組み立て、脱硫触媒などのin-situ 構造解析を行い、有効性を確認した。
【0013】
この発明は、上記の検討に基づいて案出されたものである。
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セルである。
ここで、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体は、最も好ましくは、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、窒化ホウ素以外の不純物を含まない多結晶体(非特許文献6参照)である。ここで、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物とはNi、Cu、Coなどである。例えば、NiまたはCuが10~100ppm含まれると、良好なスペクトルを得ることは困難となる。この多結晶体は微細な粒子からなり、また粒界に介在物をほとんど含まないため、優れた機械的特性や耐熱性を有し、高温高圧に耐え得るものであり、X線が当たっても回折X線を出さず、X線の吸収損失がほとんどなく、毒性がなく、ダイアモンドに比べてはるかに安価であり、酸化雰囲気中でも酸化されず、X線吸収微細構造測定用セルの窓材として極めて優れたものである。この多結晶体は、立方晶窒化ホウ素単相からなるのが好ましいが、立方晶以外の窒化ホウ素、例えば六方晶窒化ホウ素(hBN)、あるいは圧縮型六方晶窒化ホウ素を最大2体積%含む多結晶体でも使用することができる。これは、立方晶窒化ホウ素以外の窒化ホウ素の含有量が2体積%以下であれば、多結晶体の硬さや強度に大きな影響を及ぼさないからである。この多結晶体は、例えば、超高圧高温下で原料の六方晶窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素に変換させることにより合成することができる。
【0014】
X線透過窓は、好適には、平坦な平板状の形状を有する。
X線透過窓は、セルの気密性を保つ観点より、好適には、ステンレス鋼またはタングステンからなる基台、例えばステンレス鋼製フランジ上に溶接などにより接合される。これは、上記の多結晶体は、不均一な締め付けに弱いので、直接セル本体に締め付けると容易に割れてしまうため、この問題を避ける意味で有効な方法である。典型的には、このX線吸収微細構造測定用セルは、X線透過窓を互いに対向して一対有し、それらの間にX線吸収微細構造測定を行う固体試料、例えば固体触媒を有する。
X線吸収微細構造(XAFS)には、X線吸収広域微細構造(Extended X-ray Absorption Fine Structure, EXAFS)と吸収端近傍X線吸収微細構造(Near-edge X-ray Absorption Fine Structure,NEXAFS)とが含まれる。
このX線吸収微細構造測定用セルは、流通反応器にもバッチ反応器にも使用することができ、また、液相反応のみならず、気相反応にも使用することができる。
【0015】
第2の発明は、
立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システムである。
ここで、X線吸収微細構造測定用セルは、例えば、反応に用いる固体触媒の反応活性の度合いをモニターするために用いることができる。すなわち、固体触媒を使用し続けると反応活性が次第に低下し、やがては失活することから、この固体触媒の活性点構造の変化をX線吸収微細構造測定によりモニターすることができる。典型的な一つの例では、このX線吸収微細構造測定用セルは、触媒装置が取り付けられた主反応管をバイパスする副反応管の途中に設置する。
第2の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
【0016】
第3の発明は、
ポリベンズイミダゾールからなることを特徴とするX線透過窓である。
ここで、このX線透過窓は、温度や圧力が比較的低い場合(例えば、温度は400℃程度まで、圧力は50気圧程度まで)に用いて好適なものである。
第4の発明は、
ポリベンズイミダゾールからなるX線透過窓を用いたことを特徴とするX線吸収微細構造測定用セルである。
第5の発明は、
ポリベンズイミダゾールからなるX線透過窓を用いたX線吸収微細構造測定用セルを少なくとも一つ有することを特徴とする反応システムである。
第3~第5の発明においては、その性質に反しない限り、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、X線吸収微細構造測定用セルに、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体あるいはポリベンズイミダゾールからなるX線透過窓を用いることにより、触媒反応条件下におけるX線吸収微細構造測定が低エネルギーから高エネルギーにわたって可能になる。取り分け、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、X線吸収微細構造測定に支障を生じる不純物を実質的に含まない多結晶体、最も好ましくは、立方晶窒化ホウ素を主成分とし、窒化ホウ素以外の不純物を含まない多結晶体からなるX線透過窓を用いることにより、高温高圧下の液相と固体触媒との不均一系触媒反応系において、固体触媒の反応前の構造、反応中の構造および反応後の構造をそれぞれ決定することができ、その固体触媒の活性点構造に関する知見を得ることが可能となる。また、このX線吸収微細構造測定用セルを反応システムに用い、その測定結果を利用することで、主反応管に取り付ける触媒装置の固体触媒の反応活性の低下の度合いを間接的にモニターすることができ、その結果に応じて固体触媒の反応活性を回復させる処置を施すことにより、固体触媒の反応活性を常に高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルについて説明する。
図1~図4はこのin-situ XAFS測定用セルを示し、図1は上面図、図2は側面図、図3は図1のIII-III線に沿っての断面図、図4は固体触媒の近傍の拡大断面図である。
【0019】
図1~図4に示すように、このin-situ XAFS測定用セルにおいては、上部フランジ1の一方の面(下面)の中央部に設けられた円柱状の凸部1aの先端に高純度立方晶窒化ホウ素多結晶体からなるX線透過窓2が設けられ、下部フランジ3の一方の面(上面)の中央部に設けられた円柱状の凸部3aの先端に同じく高純度立方晶窒化ホウ素多結晶体からなるX線透過窓4が設けられている。そして、これらのX線透過窓2、4が、それらの間に円形ディスク状の固体触媒5を挟んだ状態で互いに対向するように、上部フランジ1および下部フランジ3がボルト6~9およびナット10~17で締結されている。上部フランジ1および下部フランジ3は同じ大きさの正方形状の平面形状を有し、例えばステンレス鋼製である。これらの上部フランジ1および下部フランジ3のそれぞれの中央部にはX線の通路となる貫通穴18、19が設けられている。この場合、これらの貫通穴18、19は凸部1a、3aの側から順に、同径の直線部、より径の大きい直線部および外側に向かって径が大きくなる末広がり部の三つの部分からなる。
【0020】
上部フランジ1の凸部1aおよび下部フランジ3の凸部3aはそれぞれ、上部フランジ1および下部フランジ3と同じ大きさの原料流通部材20の中央部に設けられた収容穴21、22に嵌め込まれている。この原料流通部材20は例えばステンレス鋼製である。これらの収容穴21、22は、それらの間に設けられた、より径の小さい固体触媒収容穴23を介して互いに連通している。この原料流通部材20の互いに対向する一対の側面には、固体触媒収容穴23の側面に達する円形断面の原料流通口24、25が同軸に設けられている。これらの原料流通口24、25は、固体触媒収容穴23に向かって段階的に径が小さくなっている。これらの原料流通口24、25には、外部の管(図示せず)との連結用の連結具26、27が取り付けられている。
【0021】
上部フランジ1にはヒータ28、29が取り付けられ、これらのヒータ28、29に外部から電流を流すことによりこの上部フランジ1を加熱することができるようになっている。同様に、下部フランジ3にはヒータ30、31が取り付けられ、これらのヒータ30、31に外部から電流を流すことによりこの下部フランジ3を加熱することができるようになっている。また、原料流通部材20にはヒータ32、33が取り付けられ、これらのヒータ32、33に外部から電流を流すことによりこの原料流通部材20を加熱することができるようになっている。上部フランジ1、下部フランジ3および原料流通部材20にはそれぞれ熱電対34、35、36が取り付けられ、これらの上部フランジ1、下部フランジ3および原料流通部材20の温度を測定することができるようになっている。
【0022】
X線透過窓2、4は実際には台座に保持されている。X線透過窓4が保持されている台座を図5に示す。X線透過窓2が保持されている台座も同様である。ここで、図5Aは上面図、図5Bは断面図である。この台座の各部の寸法の一例を図中に示してある。この台座は例えばステンレス鋼製である。X線透過窓2、4はこのステンレス鋼製の台座に、例えば圧力0.1Torr、Arキャリアガス雰囲気、温度850℃の条件で銀ロウ付けされている。
このin-situ XAFS測定用セルにおいては、ボルト6~9を十分に締めつけた状態で、X線透過窓2、4と固体触媒5および原料流通部材19とが密着しており、固体触媒5が置かれた空間の気密性が保たれるようになっている。
このin-situ XAFS測定用セルの主要部の寸法の例を挙げると、上部フランジ1および下部フランジ3の一辺の長さは75cmで厚さは25cm、凸部1a、3aの直径は16mm、X線透過窓2、4の厚さは2mm、貫通穴18、19の径が最も小さい部分の径は6mm、X線透過窓2、4の間隔、すなわち固体触媒5の厚さは2mm、原料流通部材20の厚さは16mm、原料流通口24、25の径が最も小さい部分の径は1mmである。
【0023】
固体触媒5としては、触媒反応に応じて適切なものが用いられるが、石油などの水素化脱硫反応を行う場合には、例えばNi2 P(カリウム超安定化Y型(KUSY)ゼオライトに担持されたものも含む)、PtPdなどを用いることができる。テトラリン水素化反応などの気相反応の固体触媒5としては、例えば、PtをAl2 3 に担持したものなどが用いられる。この固体触媒5は、例えばこれらの触媒の粉末をディスク状に成形することにより得ることができる。
【0024】
次に、このin-situ XAFS測定用セルの使用方法について説明する。
原料流通部材20の原料流通口24、25の連結具26、27にそれぞれ原料輸送用の管(図示)を接続し、連結具26に接続された管から原料を原料流通口24に導入し、この原料を固体触媒5に通し、この固体触媒5から出てくる原料を原料流通口25を通して連結具27に接続された管に流す。原料は液相、気相のいずれであってもよい。このとき、外部に設けられたX線発生装置(図示せず)により発生したX線を上部フランジ1の貫通穴18からX線透過窓2を通して固体触媒5に入射させ、透過X線をX線透過窓4を通して外部に取り出し、下部フランジ3の貫通穴19から外部に出てくるX線をX線検出器(図示せず)により検出し、in-situ XAFS測定を行う。
【実施例1】
【0025】
上記のin-situ XAFS測定用セルを用いたEXAFS測定実験を高エネルギー加速器研究機構放射光施設物質構造科学研究所(Photon Factory) 内にあるビームライン(7C)にて行った。固体触媒5としては、KUSYに担持されたNi2 Pを厚さ2mmのディスク状に成形したものを用いた。EXAFSの測定条件は、リングエネルギー2.5GeV、リングの電流値は約350mAであった。また、分光結晶にはSi(111)を用い、X線は集光して実験を行った。測定したエネルギーの範囲は8000~9200eVで、透過法にてNiのK吸収端の測定を行った。
図6に、500℃における水素流通下の還元雰囲気の測定で得られたEXAFSスペクトルを示す。また、図7に反応前および高温高圧反応条件下におけるEXAFS振動構造とその差のスペクトルとを示す。図6および図7から分かるように、良好なEXAFS振動を得ることができた。
【0026】
この第1の実施形態によれば、高純度立方晶窒化ホウ素多結晶体からなるX線透過窓2、4は、高温高圧に耐えることができ、毒性がなく安全で、酸化雰囲気で酸化されにくく、回折X線の影響が少なくXAFS測定を高い信頼性で行うことができ、X線透過性に優れ、平坦な形状とすることができ、しかも安価であることにより、例えば石油の水素化脱硫反応などの高温高圧条件下における固体触媒5の活性点構造の知見を得ることができ、それによって触媒反応のメカニズムを解明することができ、触媒調製の基本的な指針を得ることができる。
【0027】
次に、この発明の第2の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルについて説明する。
このin-situ XAFS測定用セルにおいては、X線透過窓2、4の素材としてポリベンズイミダゾールを用いる。
その他のことは、第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルと同様であるので、説明を省略する。
【0028】
次に、この発明の第3の実施形態による反応システムについて説明する。
図8にこの反応システムを示す。
図8に示すように、この反応システムにおいては、主反応管51に、固体触媒を用いた触媒装置52が取り付けられている。主反応管51の上流には、この主反応管51に流す原料の制御のためのバルブ53が設けられている。原料は液相、気相のいずれであってもよい。触媒装置52とバルブ53との間にはガス管54が接続されている。このガス管54には、このガス管54に流すガスの制御のためのバルブ55が設けられている。主反応管51には、触媒装置52の直ぐ上流と下流とをバイパスする形で副反応管56が接続されている。副反応管56には、第1または第2の実施形態によるin-situ XAFS測定用セル57が接続されている。このin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5は、触媒装置52に用いる固体触媒と同一のものである。このin-situ XAFS測定用セル57と触媒装置52の上流部の主反応管51との間にはバルブ58が設けられている。また、このin-situ XAFS測定用セル57と触媒装置52の下流部の主反応管51との間にはバルブ59が設けられている。一方、このin-situ XAFS測定用セル57の両側にはX線発生装置60およびX線検出器61が設置されている。X線検出器61の出力はコンピュータを用いたXAFS解析装置62に送られ、このXAFS解析装置62による解析結果に応じてバルブ53、55の開閉を制御することができるようになっている。
【0029】
次に、この反応システムの使用方法について説明する。
バルブ53、55、58、59をすべて開いた状態で主反応管51の上流から原料を流し、触媒装置52で触媒反応を行い、反応後の原料を下流に流す。主反応管51から流す原料は副反応管56にも流れ、in-situ XAFS測定用セル57を通って主反応管51に合流する。このin-situ XAFS測定用セル57においては、定期的、連続的あるいは任意の時刻でX線発生装置60からX線を発生させてX線検出器61により検出することでin-situ XAFS測定を行い、固体触媒5の状態をモニターする。そして、X線検出器61による検出結果をXAFS解析装置62により処理し、その処理結果から、固体触媒5の反応活性の度合いが予め定めたしきい値を下回ったと判断された場合には、バルブ53を閉じて主反応管51に原料を流すのを一時的に停止する。このとき、ガス配管54から、触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を回復させるためのガスを流し、活性の度合いを予め定めた基準値以上に回復させる。こうして触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を回復させたら、バルブ53を開いて主反応管51に再び原料を流す。
【実施例2】
【0030】
上記の反応システムにおいて、触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5としてPtをAl2 3 に担持したものを用いた。この反応システムで行う反応は、硫化水素(H2 S)共存下におけるテトラリン(C1012)の水素化反応であり、主反応管52にテトラリンおよび100ppmのH2 Sを流し、ガス管54に20%H2 /Heを流す。この反応は常圧気相反応である。反応温度は553Kとした。
【0031】
このときのin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性の変化をin-situ
EXAFS測定により測定した結果を図9に示す。ただし、図9の縦軸はPtのLIII 吸収端EXAFS(k3 x(k))のフーリエ変換、横軸は距離を示す。図9から分かるように、固体触媒5の反応活性は、H2 Sの影響で固体触媒5の構造変化が起こるのに伴って急激に低下し、最終的には最初の1/25になる。これを同時にEXAFSで追跡すると、Pt-Sのピークが増えてPt自体が硫化されることが分かる。こうしてin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の活性の変化を検出することができるので、予め決めたしきい値、例えば反応活性が最初の1/2に落ちたときに、主反応管51にガスを流すのを一時停止し、ガス管54からH2 を流すことにより、触媒装置52の固体触媒およびin-situ XAFS測定用セル57の固体触媒5の反応活性を最初の状態に回復させた。
以上により、H2 S共存下におけるテトラリンの水素化反応を高い収率で良好に行うことができた。
【0032】
以上のように、この第3の実施形態によれば、主反応管51に設けられた触媒装置52の上流と下流とをバイパスする形で副反応管56を設け、この副反応管56にin-situ XAFS測定用セル57を設け、このin-situ XAFS測定用セル57によるin-situ XAFS測定の結果に基づいて触媒装置52の固体触媒の反応活性を回復させるようにしていることにより、固体触媒の活性を高い状態に保ちながら原料に対して触媒反応を行わせることができる。
【0033】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値、材料、原料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、原料、形状、配置などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルを示す上面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルを示す側面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルを示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルの固体触媒の近傍の拡大断面図である。
【図5】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルのX線透過窓を保持するための台座を示す上面図および断面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルを用いてin-situ XAFS測定を行った結果を示す略線図である。
【図7】この発明の第1の実施形態によるin-situ XAFS測定用セルを用いてin-situ XAFS測定を行った結果を示す略線図である。
【図8】この発明の第3の実施形態による反応システムを示す略線図である。
【図9】この発明の第3の実施形態による反応システムにおいてin-situ XAFS測定用セルを用いてin-situ XAFS測定を行った結果を示す略線図である。
【符号の説明】
【0035】
1…上部フランジ、2、4…X線透過窓、3…下部フランジ、5…固体触媒、51…主反応管、52…触媒装置、56…副反応管、57…in-situ XAFS測定用セル、60…X線発生装置、61…X線検出器、62…XAFS解析装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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