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明細書 :3次元デザイン支援装置及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4669941号 (P4669941)
公開番号 特開2006-285685 (P2006-285685A)
登録日 平成23年1月28日(2011.1.28)
発行日 平成23年4月13日(2011.4.13)
公開日 平成18年10月19日(2006.10.19)
発明の名称または考案の名称 3次元デザイン支援装置及びプログラム
国際特許分類 G06F  17/50        (2006.01)
G06T  19/00        (2011.01)
FI G06F 17/50 612A
G06F 17/50 622A
G06T 17/40 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 25
出願番号 特願2005-105262 (P2005-105262)
出願日 平成17年3月31日(2005.3.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年3月1日 社団法人精密工学会発行の「2005年度 精密工学会春季大会 学術講演会講演論文集」に発表
審査請求日 平成19年3月29日(2007.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】金井 理
【氏名】岸浪 建史
【氏名】遠藤 維
【氏名】持丸 正明
【氏名】河内 まき子
【氏名】宮田 なつき
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100120455、【弁理士】、【氏名又は名称】勝 治人
審査官 【審査官】加舎 理紅子
参考文献・文献 特開2004-298430(JP,A)
特開平09-016550(JP,A)
Nancy S. Pollard,Closure and Quality Equivalence for Efficient Synthesis of Grasps from Examples,The International Journal of Robotics Research,2004年 6月 1日,Vol.23, No.6,p.595-613
持丸正明 他,デジタルハンドによる製品適合性の事前評価,日本機械学会2004年度年次大会講演資料集(8),2004年 9月 4日,p.189-190
調査した分野 G06F 17/50
G06T 17/40
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
IEEE Xplore
特許請求の範囲 【請求項1】
デジタルハンドモデルのデータを保持するデジタルハンドモデルデータベースと、
製品形状データを入力する製品形状データ入力部と、
入力手段による外部からの「大きい」-「小さい」及び「ごつい」-「華奢」の2軸で与えられるハンドサイズの決定指標の入力に基づき、ハンドサイズを決定するハンドサイズ設定部と、
前記デジタルハンドモデルデータベースのデータを呼び出し、前記ハンドサイズ設定部の決定したハンドサイズを反映させた3次元デジタルハンドモデルを作成するデジタルハンドモデル作成部と、
前記製品形状データ入力部から入力された製品形状データに基づき仮想的な製品形状モデルを作成する製品形状モデル作成部と、
入力手段による外部からの前記製品形状モデル作成部の作成した製品形状モデルとデジタルハンドモデル作成部の作成したデジタルハンドモデルとの接触点候補を指定する入力を受け付け、前記製品形状モデルとデジタルハンドモデルとに接触点候補を設定する接触点候補設定部と、
前記接触点候補設定部による接触点候補の指定に基づき、前記製品形状モデルに対する複数のデジタルハンドモデルの基本把持姿勢候補を生成し、かつ、当該複数の基本把持姿勢候補の中から前記デジタルハンドモデルの指の前記製品形状モデルに対する接触点の最も多い基本把持姿勢候補を最適な基本把持姿勢と決定する基本把持姿勢生成部と、
前記基本把持姿勢生成部の決定したデジタルモデルハンドの前記製品形状モデルに対する基本把持姿勢の3次元モデルを表示する表示装置とを備えたことを特徴とする3次元デザイン支援装置。
【請求項2】
把持の種類を「PowerGrasp」とするか「PrecisionGrasp」とするかの入力設定のためのグラスプ設定部を備え、
前記基本把持姿勢生成部は、前記グラスプ設定部により設定された把持の種類に応じた基本把持姿勢を算定することを特徴とする請求項1に記載の3次元デザイン支援装置。
【請求項3】
入力手段による製品形状データの入力を受け付ける製品形状入力ステップと、
入力手段による外部からの「大きい」-「小さい」及び「ごつい」-「華奢」の2軸で与えられるハンドサイズの決定指標の入力に基づき、ハンドサイズを決定するハンドサイズ設定ステップと、
デジタルハンドモデルデータベースの保持するデジタルハンドモデルのデータを呼び出し、前記ハンドサイズ設定ステップにて決定したハンドサイズを反映させた3次元デジタルハンドモデルを作成するデジタルハンドモデル作成ステップと、
前記入力された製品形状データに基づき仮想的な製品形状モデルを作成する製品形状モデル生成ステップと、
入力手段による外部からの前記製品形状モデル作成ステップにて作成した製品形状モデルとデジタルハンドモデル作成ステップにて作成したデジタルハンドモデルとの接触点候補を指定する入力を受け付け、前記製品形状モデルとデジタルハンドモデルとに接触点候補を設定する接触点候補設定ステップと、
前記接触点候補設定ステップにおける接触点候補の指定に基づき、前記製品形状モデルに対する複数のデジタルハンドモデルの基本把持姿勢候補を生成し、かつ、当該複数の基本把持姿勢候補の中から前記デジタルハンドモデルの指の前記製品形状モデルに対する接触点の最も多い基本把持姿勢候補を最適な基本把持姿勢と決定する基本把持姿勢生成ステップと、
前記基本把持姿勢生成ステップにて決定したデジタルモデルハンドの前記製品形状モデルに対する基本把持姿勢の3次元モデルを表示する出力ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする3次元デザイン支援プログラム
【請求項4】
入力手段による「PowerGrasp」とするか「PrecisionGrasp」とするかの設定入力を受け付け、把持の種類を決定するグラスプ設定ステップを有し、
前記基本把持姿勢生成ステップにおいて、前記グラスプ設定ステップにて設定された把持の種類に応じた基本把持姿勢を算定することを特徴とする請求項3に記載の3次元デザイン支援プログラム
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、製品をユーザの手で把持する際の把持姿勢を提示する製品モデルの把持姿勢を模擬する3次元デザイン支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCADシステムの普及に伴い、デジタルモックアップによるスタイルデザインが本格化しているが、製品に対するエルゴノミクス評価は未だに物理モックアップに頼っているのが現状であり、これをデジタル化することで、開発コストや時間の削減を行いたいという要求が高まっている。工業製品のうち、パームトップで用いるIT機器に対して仮想エルゴノミクス評価を行うには、豊富なサイズバリエーションや高精度な幾何形状・運動生成機能をもつ手のモデルや、製品形状やユーザインタフェース(UI)操作仕様と手のモデルを連携させたシミュレーション機能などが求められる。
【0003】
これまでに、Jack、RAMSIS、Safeworkといったデジタル・ヒューマンを用いたシミュレーションソフトウェア(非特許文献1)が市販され、自動車・航空機などの設計に活用されているが、これらは、スタイルデザインにおけるエルゴノミクス評価において要求される手のモデルの再現精度やシミュレーション機能を、必ずしも満たすものではない。また特開2002-245484号公報(特許文献1)に記載のようにコンピュータマネキンに関連する技術は知られているが、人の手による製品モデルの把持姿勢を仮想的に作成し提示する技術は知られていない。
【0004】
また、操作対象の物体の支持位置を指定して人間モデル側の動作を自動決定する研究が、次の論文「Onosato, M., Kawano, T., Iwata, K.; "Virtual Affordance Protocol: Communication between Digital Human and Virtual Working Environment for Task Motion Planning". Digital Human Modeling Conference VDI-berichite NR. 1675, 2002 (The Proc. Digital Human Modeling Conference 2002), pp. 329-342, 2002.6.(非特許文献2)」に記載されている。しかしながら、この技術は、人間の全身の動作生成を対象としており、手の動作生成そのものは取り扱っていない。
【0005】
さらに、人の手指型のロボットマニプレータの動作生成において、与えられた物体モデルの形状から、安定に把持できるロボットハンドと物体との接触点群の配置を多数の候補点群の中から探索で見つけ出す研究が次の論文「Ch. Borst, M. Fischer and G. Hirzinger; "Grasping the Dice by Dicing the Gap". Proceedings of the 2003 IEEE/RSJ Int. conf. on Intelligent Robots and Systems, (Las Vegas) Oct. 2003, pp3692-3697.(非特許文献3)」に記載されている。しかしながら、この技術は、ロボットハンド・フィンガーの動作生成が目的であり、安定に把持できる点がもともと少ない特殊な物体形状に対して適用すると、多くの探索時間が必要となる問題点があり、また、候補点群をランダムに発生し評価するので必ずしも最適な把持を発見できるとは限らない問題点があった。

【特許文献1】特開2002-245484号公報
【非特許文献1】http://www.ugs.jp/product/efactory/jack.html
【非特許文献2】Onosato, M., Kawano, T., Iwata, K.; "Virtual Affordance Protocol: Communication between Digital Human and Virtual Working Environment for Task Motion Planning". Digital Human Modeling Conference VDI-berichite NR. 1675, 2002 (The Proc. Digital Human Modeling Conference 2002), pp. 329-342, 2002.6.
【非特許文献3】Ch. Borst, M. Fischer and G. Hirzinger; "Grasping the Dice by Dicing the Gap". Proceedings of the 2003 IEEE/RSJ Int. conf. on Intelligent Robots and Systems, (Las Vegas) Oct. 2003, pp3692-3697.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、製品モデルのユーザが手に取った時の把持姿勢を自動生成し、実被験者を用いずに仮想エルゴノミクス評価に供することができる製品モデルの基本把持姿勢を作成する3次元デザイン支援装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の3次元デザイン支援装置は、デジタルハンドモデルのデータを保持するデジタルハンドモデルデータベースと、製品形状データを入力する製品形状データ入力部と、入力手段による外部からの「大きい」-「小さい」及び「ごつい」-「華奢」の2軸で与えられるハンドサイズの決定指標の入力に基づき、ハンドサイズを決定するハンドサイズ設定部と、前記デジタルハンドモデルデータベースのデータを呼び出し、前記ハンドサイズ設定部の決定したハンドサイズを反映させた3次元デジタルハンドモデルを作成するデジタルハンドモデル作成部と、前記製品形状データ入力部から入力された製品形状データに基づき仮想的な製品形状モデルを作成する製品形状モデル作成部と、入力手段による外部からの前記製品形状モデル作成部の作成した製品形状モデルとデジタルハンドモデル作成部の作成したデジタルハンドモデルとの接触点候補を指定する入力を受け付け、前記製品形状モデルとデジタルハンドモデルとに接触点候補を設定する接触点候補設定部と、前記接触点候補設定部による接触点候補の指定に基づき、前記製品形状モデルに対する複数のデジタルハンドモデルの基本把持姿勢候補を生成し、かつ、当該複数の基本把持姿勢候補の中から前記デジタルハンドモデルの指の前記製品形状モデルに対する接触点の最も多い基本把持姿勢候補を最適な基本把持姿勢と決定する基本把持姿勢生成部と、前記基本把持姿勢生成部の決定したデジタルモデルハンドの前記製品形状モデルに対する基本把持姿勢の3次元モデルを表示する表示装置とを備えたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の3次元デザイン支援装置において、把持の種類を「PowerGrasp」とするか「PrecisionGrasp」とするかの入力設定のためのグラスプ設定部を備え、前記基本把持姿勢生成部は、前記グラスプ設定部により設定された把持の種類に応じた基本把持姿勢を算定することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明の3次元デザイン支援プログラムは、入力手段による製品形状データの入力を受け付ける製品形状入力ステップと、入力手段による外部からの「大きい」-「小さい」及び「ごつい」-「華奢」の2軸で与えられるハンドサイズの決定指標の入力に基づき、ハンドサイズを決定するハンドサイズ設定ステップと、デジタルハンドモデルデータベースの保持するデジタルハンドモデルのデータを呼び出し、前記ハンドサイズ設定ステップにて決定したハンドサイズを反映させた3次元デジタルハンドモデルを作成するデジタルハンドモデル作成ステップと、前記入力された製品形状データに基づき仮想的な製品形状モデルを作成する製品形状モデル生成ステップと、入力手段による外部からの前記製品形状モデル作成ステップにて作成した製品形状モデルとデジタルハンドモデル作成ステップにて作成したデジタルハンドモデルとの接触点候補を指定する入力を受け付け、前記製品形状モデルとデジタルハンドモデルとに接触点候補を設定する接触点候補設定ステップと、前記接触点候補設定ステップにおける接触点候補の指定に基づき、前記製品形状モデルに対する複数のデジタルハンドモデルの基本把持姿勢候補を生成し、かつ、当該複数の基本把持姿勢候補の中から前記デジタルハンドモデルの指の前記製品形状モデルに対する接触点の最も多い基本把持姿勢候補を最適な基本把持姿勢と決定する基本把持姿勢生成ステップと、前記基本把持姿勢生成ステップにて決定したデジタルモデルハンドの前記製品形状モデルに対する基本把持姿勢の3次元モデルを表示する出力ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の3次元デザイン支援プログラムにおいて、入力手段による「PowerGrasp」とするか「PrecisionGrasp」とするかの設定入力を受け付け、把持の種類を決定するグラスプ設定ステップを有し、前記基本把持姿勢生成ステップにおいて、前記グラスプ設定ステップにて設定された把持の種類に応じた基本把持姿勢を算定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、実被験者を用いずに、設計された製品形状モデルをユーザが把持する時の基本把持姿勢を表示装置上で3次元モデルにして提示することができ、仮想エルゴノミクス評価に供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態の製品モデルの基本把持姿を作成する3次元デザイン支援装置を示すブロック図である。本実施の形態の3次元デザイン支援装置の機能は、運動学的、形状的に精密かつ豊富なサイズバリエーションをもつデジタルハンドモデルのデータを保持するデジタルハンドモデルデータベース1、製品形状データを入力する製品形状データ入力部2、デジタルハンドのサイズ、「大-小」、「ごつい-華奢」の種類を入力設定するハンドサイズ設定部3、把持の種類を「PowerGrasp」とするか「PrecisionGrasp」とするかの入力設定のためのグラスプ設定部4、デジタルハンドモデルデータベース1のデータを利用し、ハンドサイズ設定部3のデジタルハンドのサイズの設定入力をパラメータにして3次元の仮想的な動きの表示を可能とするデジタルハンドモデルを作成するデジタルハンドモデル作成部5、製品形状データ入力部2から入力された製品形状データに基づき仮想的な製品形状モデルを作成して表示する製品形状モデル作成部6、製品形状モデル作成部6の作成した製品形状モデルと、デジタルハンドモデル作成部5で作成されたデジタルハンドモデルとの接触点候補を指定する接触点候補設定部7、この接触点候補設定部7による接触点候補の指定に基づき、入力された製品形状モデルに対するデジタルハンドモデルの基本把持姿勢を算定し、その結果を表示する基本把持姿勢生成部8、そして入力手段としてのキーボード11、マウスのようなポインティングデバイス12、出力手段としての表示装置13を備えている。尚、本装置は、上記各部の機能を果たすプログラムをインストールし、それを実行させることにより後述する諸機能を発揮するコンピュータシステムにて実現されるものであり、コンピュータとしてはネットワーク接続により他のコンピュータと接続し、データ通信することができる。従って、大容量のデジタルハンドモデルデータベース1へのデジタルハンドモデルデータの書込みや製品形状データ記憶部10への製品形状データの書込みはネットワークを通じて行うことができる。また、デジタルハンドモデルデータのうち、手指ハンドリンクモデルのデータ、ハンド外表皮三角形メッシュモデルのデータは、独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センターにて作成されたデータを利用している。
【0013】
次に、上記構成の製品モデルの基本把持姿勢を作成する3次元デザイン支援装置による3次元デザイン支援方法は、ある製品形状モデルに対する基本把持姿勢を生成するものであり、図2のフローチャートに示すように、デジタルハンドモデルを作成し(ステップSQ11)、製品形状モデルを作成し(ステップSQ12)、当該製品形状モデルを把持する手の接触点候補を指定し(ステップSQ13)、基本把持姿勢の3次元モデルを生成をする(ステップSQ14)。
【0014】
まず、デジタルハンドデータベース1に登録されているデジタルハンドデータに基づくデジタルハンドモデルの生成処理を説明する。図3はデジタルハンドモデルの作成処理のフローチャートを示しており、デジタルハンドデータベース1はこの処理にて生成されたデジタルハンドデータを保持している。
【0015】
図4に示すように、人の手と指の関節構造は、例えば、上腕(Forearm)のように6自由度(DOF)を持つ関節、手首(Wrist)や各指の付け根の関節のように3自由度(DOF)を持つ関節、そして各指の第1、第2関節のように1自由度(DOF)を持つ関節があり、全体で31自由度を有している。また、人の手指はサイズ的に「大きい」-「小さい」、そして「ごつい」-「きゃしゃ」の2軸でほぼ全員の手の種類を決定できる。例えば、大きい男性のように「大きくて、ごつい」手、小さい男性のように「小さくて、ごつい」手、大きい女性のように「大きくて、華奢な」手、小さい女性や子供のように「小さくて、華奢な」手という分類ができる。これにより、ハンドサイズ設定部3によってモデリングするハンドサイズを決定する。
【0016】
デジタルハンドモデル作成部は、図3のフローチャートによりデジタルハンドモデルを作成する。ここでは、手を開いた状態から握り状態への自然な経路を各指についてサンプリングしたものを、各指のMP、PIP、DIPでのx軸回転に対する「自然把持経路」として用いる(ステップSQ)。後述する把持において、添えている指(従属把持指)はこの経路に従うものとして計算する。
【0017】
続いて、各関節の回転角を与え、また手指のリンク長Lを与え、順運動学にデータに基づき、手指リンクモデルを作製する(ステップSQ)。各関節の運動学的制約として、Leeらが論文にまとめた以下の制約条件を用いる(J.Lee et al.: "Model-Based Analysis of HandPosture", IEEE Computer Graphics and Applications, vol.15,no 5, 77-86,1995)。
【0018】
1つめの条件は、静的および動的な各関節の最大・最小回転角についてである。
【0019】
2つめの条件は、各指
【数1】
JP0004669941B2_000002t.gif

【0020】
のDIPとPIPの回転角度関係
【数2】
JP0004669941B2_000003t.gif

【0021】
についてである。
【0022】
3つめの条件は、握り(clench)状態において、第2~5指のDIP・PIPを結ぶ直線が1点に収束する性質についてである。
【0023】
図5、図6は小指のリンクモデルを示したものである。これにはまず、Σiから見たΣjの位置姿勢を表す同時変換行列を求め、続いて、ワールド座標系から見た小指先端PTIPの位置姿勢をBASEPTIPを求める。他の指に関しても同様に求める。
【数3】
JP0004669941B2_000004t.gif
【数4】
JP0004669941B2_000005t.gif

【0024】
次に、各リンク位置姿勢に対して、デジタルハンドデータベース1に保持されているハンド外表皮三角形メッシュモデルを参照し、メッシュ変形アルゴリズムを適用することによって、手指リンクモデルにハンド外表皮を付け、仮想的な手の像を作成し、手指リンクモデルの各関節回転角をもとに以下の式によって変形する(SQ)。
【数5】
JP0004669941B2_000006t.gif


【0025】
ここで、Wは頂点vでの変形に関する関節jの重み、は上述した数1式の関節jのRPY回転角に基づく同時変換行列である。
【0026】
このようにして、すべての手指に対して図7(a)に示す初期状態から同図(b)に示すようにここでは人差し指(Index)を動かす動きを表現するデジタルハンドを作成することができる。
【0027】
デジタルハンドモデルを作製すると、続いて、製品形状モデルを作成する。この製品形状モデルの作成は、通常の3次元メッシュモデル作成ツールにより作成する。尚、デジタルハンド表皮形状および製品形状モデルは、論文(T.Kurihara et al.: "Modeling Deformable CG Model of Human Hands from Medical Images", The Eurographics/SIGGRAPH Symposium on Computer Animation 2004,pp.357-365., 2004)に表されているように、それぞれ三角形メッシュM=<V,K>、M=<V、K>で表現される。
【0028】
そして、デジタルハンドモデルと製品形状モデルとを作成すれば、次に、図8のフローチャートに示す処理により、このデジタルハンドモデルと製品形状モデルを使用して、製品基本把持姿勢を作成する。まず、デジタルハンドと製品形状モデルとの接触点候補を指定し(ステップSQ21)、把持姿勢可能解を生成し(ステップSQ22)、最適把持姿勢を導出し(ステップSQ23)、把持安定性を評価する(ステップSQ24)。
【0029】
ステップSQ21の接触点候補指定の方法は4つのステップからなる。第1のステップは、Cutkosky(M.R.Cutcosky: "On Grasp Choice,Grasp Models, and the Design of Hands for Manufacturing Tasks", IEEE Trans. on Robotics and Automation, vol.5, no.3, 1989)によれば、把持(Grasp)はPowerGraspとPrecisionGraspに大別されることを提案している。本実施の形態ではこの理論を応用し、母指内転筋の境界付近で把持力が発生するものを図9(a)に示すようなPowerGrasp、そうでないものを同図(b)に示すようなPrecisionGraspと定義する。ユーザは、まず求める把持がこのどちらに当たるかをグラスプ設定部4にて選択する。PrecisionGraspについては、PowerGraspと同様の処理で把持姿勢を生成できるので、以下はPowerGraspを選択した場合について述べる。
【0030】
第2のステップは、
【数6】
JP0004669941B2_000007t.gif

【0031】
の各指について、把持において能動的に握っているものと、単に添えているだけの指があると考える。前者を主把持指
【数7】
JP0004669941B2_000008t.gif

【0032】
、後者を従属把持指
【数8】
JP0004669941B2_000009t.gif

【0033】
と定義する。この場合、どちらも製品との接触点が存在する可能性はあるが、従属把持指は上述した自然把持経路を用いてその接触点が探索できると仮定する。そこで、次にユーザは、第2指~第5指を主把持指と従属把持指に分類する。図10に薬指を主把持指、他を従属把持指とした例を示している。
【0034】
第3のステップは、母指内転筋の境界線上にあるハンド表皮頂点集合
【数9】
JP0004669941B2_000010t.gif

【0035】
の1頂点
【数10】
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【0036】
および対応する製品メッシュ表面上の1頂点
【数11】
JP0004669941B2_000012t.gif

【0037】
をそれぞれ選択する。
【0038】
第4のステップは、全ての主把持指、および従属把持指の任意の1指について、各指
【数12】
JP0004669941B2_000013t.gif

【0039】
の表皮頂点集合
【数13】
JP0004669941B2_000014t.gif

【0040】
からそれぞれ1頂点
【数14】
JP0004669941B2_000015t.gif

【0041】
を選択し、さらにその各指が接触するであろう製品表面上の頂点
【数15】
JP0004669941B2_000016t.gif

【0042】
を選択する。
【0043】
ステップSQ22の把持姿勢可能解生成の方法は3つのステップからなり、図11は本実施の形態の把持姿勢解生成のシーケンス図である。ステップSQ31は、
【数16】
JP0004669941B2_000017t.gif

【0044】
の頂点位置
【数17】
JP0004669941B2_000018t.gif

【0045】
が、
【数18】
JP0004669941B2_000019t.gif

【0046】
の頂点位置
【数19】
JP0004669941B2_000020t.gif

【0047】
に一致するように、デジタルハンドを平行移動する。
【0048】
ステップSQ32は、
【数20】
JP0004669941B2_000021t.gif

【0049】
のMPのz軸回転角(離散値)の決定方法についてであり4つステップで決定する。ステップSQ32aは、
【数21】
JP0004669941B2_000022t.gif

【0050】

【数22】
JP0004669941B2_000023t.gif

【0051】
を結ぶ直線を軸とする製品の回転角(離散値)について、
【数23】
JP0004669941B2_000024t.gif

【0052】
について、
【数24】
JP0004669941B2_000025t.gif

【0053】
となるように、主把持指の各関節回転角を逆運動学で決定する。尚、届かない場合は回転角を最小値とする。
【0054】
ステップSQ32bは、
【数25】
JP0004669941B2_000026t.gif

【0055】
と、
【数26】
JP0004669941B2_000027t.gif

【0056】
を結ぶ直線を軸とする製品の回転角(離散値)について、各
【数27】
JP0004669941B2_000028t.gif

【0057】
のMPのz軸回転角を主把持指のそれと上述の一点収束性から求める。
【0058】
ステップSQ32cは、
【数28】
JP0004669941B2_000029t.gif

【0059】

【数29】
JP0004669941B2_000030t.gif

【0060】
を結ぶ直線を軸とする製品の回転角(離散値)について、各
【数30】
JP0004669941B2_000031t.gif

【0061】
について、ハンドと製品が干渉するまで自然把持経路を探索し、
【数31】
JP0004669941B2_000032t.gif

【0062】
の各関節x軸回転角を決定する。
【0063】
また、母指
【数32】
JP0004669941B2_000033t.gif

【0064】
についても同経路により同様に、各関節のx軸回転角を決定する。
【0065】
ステップSQ32dは、
【数33】
JP0004669941B2_000034t.gif

【0066】

【数34】
JP0004669941B2_000035t.gif

【0067】
を結ぶ直線を軸とする製品の回転角(離散値)について、各関節回転角より、基本把持姿勢候補を求める。
【0068】
ステップSQ33は、基本把持姿勢候補の中から指がM内に接触点の最も多い姿勢を選び、基本把持姿勢可能解とする。
【0069】
ここで、干渉チェック、つまり非接触、接触、干渉の識別について、図12を用いて説明する。デジタルハンド表皮と製品モデルとの干渉/接触評価には、ハンド表皮各頂点
【数35】
JP0004669941B2_000036t.gif

【0070】
の製品モデルの閉じたメッシュMに対する内側にあるか外側にあるかのIN/OUT評価を行う。そして、全ての頂点がOUTなら、デジタルハンドモデルは製品モデルに対して非接触、よって非干渉とする。他方、頂点vのMに対する干渉深さdを頂点の法線方向にとり、全てのデジタルハンドモデルの頂点のdがしきい値以下なら、接触とする。このしきい値は実験により最適な値に設定する。
【0071】
図8のフローチャートにおけるステップSQ23の最適把持姿勢導出は、干渉点数が最大になるように、把持姿勢を最適化する。続くステップSQ24の把持安定性評価では、得られた最適把持姿勢に対し、Force-Closureを満たすかどうかを評価し、安定性評価指標に基づき、把持安定性を定量評価する。これを満たさない場合、ステップSQ21から繰り返す。Force-Closureは、(N.S.Po1lard: "Closure and Quality Equivalence for Efficient Synthesis of Grasps from Examples", The Intenational Journal of Robotics Research, 23(6)595-613, 2004)に提案されたものである。
【0072】
図13~図16に上の基本把持姿勢導出の各処理段階の具体例を示している。図13は、(i) 母指内転筋境界線上の指定頂点とプロダクトの対応点とを一致させる処理を示している。図14は、(ii) (i)の一致頂点を中心とするハンドのあるRPY回転で、主把持指の自然把持経路上のある把持姿勢について、主把持指の指定頂点とプロダクトの対応点が最近になるRPY回転角と主把持指の把持姿勢を求める処理を示している。図15は、(iii) (i)、(ii)の2対応点を結ぶ軸まわりにハンドを回転させ、「接触点」が最大となる回転角を求める処理を示している。そして図16は、(iv) 母指および従属把持指について、それぞれ自然把持経路を探索し、「接触点」が最大となる把持姿勢を求める処理を示している。
【0073】
こうして、本実施の形態の3次元デザイン支援装置による3次元デザイン支援方法によれば、ある製品形状モデルが与えられた場合に、それに対して、ユーザの手による把持姿勢がどのようなものになるのかを当該装置に製品形状モデルデータを与え、基本的な設定手続を行うだけで表示装置13に図16に示した例のように当該製品の基本把持姿勢を表示して示すことができ、3次元モデルのデザイン支援に活用することができる。
【0074】
尚、本実施の形態では、デジタルハンドを用いてパームトップIT機器について仮想的にそのエルゴノミクス評価を行うシステムの機能構成および基本把持姿勢生成アルゴリズムについて述べが、本システムに製品のUI操作タスクモデルを組み込み、その実行容易性評価を行うとともに、三次元CADシステム内への実装を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の1つの実施の形態の3次元デザイン支援システムのブロック図。
【図2】上記実施の形態による3次元デザイン支援方法のフローチャート。
【図3】上記実施の形態によるデジタルハンドモデルの生成処理のフローチャート。
【図4】上記実施の形態でデジタルハンドモデル生成のために用いるデジタルハンドリンクモデルの説明図。
【図5】上記デジタルハンドリンクモデルにおける小指のリンク構造の説明図その1。
【図6】上記デジタルハンドリンクモデルにおける小指のリンク構造の説明図その2。
【図7】上記実施の形態により生成したデジタルハンドモデルの説明図。
【図8】上記実施の形態による製品モデルに対するデジタルハンドの基本把持姿勢を生成する処理のIDEF0(アクティビティ・モデリング手法)形式のフローチャート。
【図9】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理において設定するPowerGraspとPrecisionGraspの説明図。
【図10】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理において設定する主把持指、従属把持指、接触点の設定手続の説明図。
【図11】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理における把持姿勢可能解生成のIDEF0形式のフローチャート。
【図12】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理におけるデジタルハンドモデルと製品モデルとの干渉/非干渉評価の説明図。
【図13】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理において、母指内転筋境界線上の指定頂点と製品モデルの対応点とを一致させる処理の説明図。
【図14】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理において、主把持指の指定頂点と製品モデルの対応点が最近になるRPY回転角と主把持指の把持姿勢を求める処理の説明図。
【図15】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理において、製品モデルに対して主把持指と母指との接触点が最大となる回転角を求める処理の説明図。
【図16】上記実施の形態によるデジタルハンドの基本把持姿勢生成処理によって求めた製品モデルに対するデジタルハンドの基本把持姿勢の説明図。
【符号の説明】
【0076】
1 デジタルハンドデータベース
2 製品形状モデルデータ入力部
3 ハンドサイズ設定部
4 グラスプ設定部
5 デジタルハンドモデル作成部
6 製品形状モデル作成部
7 接触点候補設定部
8 基本把持姿勢生成部
10 製品形状モデルデータ記憶部
11 キーボード
12 ポインティングデバイス
13 表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図8】
3
【図11】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図9】
9
【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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