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明細書 :海藻の分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4122380号 (P4122380)
公開番号 特開2006-304604 (P2006-304604A)
登録日 平成20年5月16日(2008.5.16)
発行日 平成20年7月23日(2008.7.23)
公開日 平成18年11月9日(2006.11.9)
発明の名称または考案の名称 海藻の分析方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2005-115522 (P2005-115522)
出願日 平成17年4月13日(2005.4.13)
審査請求日 平成19年6月28日(2007.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
発明者または考案者 【氏名】嶌田 智
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 特開2000-217581(JP,A)
特開平11-318465(JP,A)
関税中央分析所報, 2004, 第44号, p.7-11
Phycological Research, 2003, Vol.51, No.2, p.99-108
Microbes and Environments, 2003, Vol.18, No.4, p.216-222
大藤道衛著、「バイオ実験トラブル解決超基本Q&A」、株式会社羊土社、2002年、p.110-111
関税中央分析所報, 2005, 第45号, p.11-14
調査した分野 C12Q 1/00-1/70
C12N 15/00-15/70
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
CAplus(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法であって、
被検試料に含まれるDNAを鋳型として、
アオノリ属の海藻であるウスバアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリのそれぞれの遺伝子における種特異的な配列に相補的な3種類の配列である、配列表に記載の配列番号1~3の塩基配列からなるDNAを一方のプライマーとし、かつ上記3種の海藻に共通する1種類の配列である、配列表に記載の配列番号4の塩基配列からなるDNAを他方のプライマーとしてPCRを行い、
PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する前記方法。
【請求項2】
アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻とを識別するために用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一方のプライマーがフォワードプライマーであり、前記他方のプライマーがリバースプライマーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
PCR産物の有無を、PCR産物を電気泳動法により確認する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被検試料に含まれるDNAを抽出し、抽出したDNAをPCRの鋳型として用いる請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
被検試料に含まれるDNAが抽出されていることを確認した後に、前記PCRを実施する請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
DNAが抽出されていることの確認は、アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻に共通する塩基配列を有する1対のプライマーを用いたPCRにより行う請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1対のプライマーが配列番号5および6の塩基配列を有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被検試料に含まれるDNAを鋳型としてPCRを行い、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法に、プライマーとして用いられる、配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列からなる4種類のDNAを含むプライマーセット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻の分析方法に関する。特に本発明は、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法およびこの方法にプライマーとして用いるDNAに関する。
【背景技術】
【0002】
実行関税率表1212.20-139に分類されるアオノリ属の海藻は、IQ該当品目(割当量が決まっている品目)である。これに対し、その代用品として使用されるアオサ属の海藻は、AA品目(自由に輸入できる品目)である。しかし、商品名がともに「青のり」であること、および輸入形態が主に粉末であることから、通関の現場での顕微鏡観察において両者を区別することは困難であった。
【0003】
ところで、アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻とは、ITS(インターナル・トランスクライブド・スペーサー)領域の塩基配列を比較することで、識別することができる。(非特許文献1~7)

【非特許文献1】Woolcott, G. W. & King, R. J. 1999. Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae, Chlorophyta) in eastern Australia: comparison of morphological features and analyses of nuclear rDNA sequences data. Aust. Sts. Bot. 12: 709-25.
【非特許文献2】Tan, I. H., Blomster, J., Hansen, G., Leskinen, E., Maggs, C. A., Mann, D. G. Sluiman, H. J & Stanhope, M. J. 1999. Molecular phylogenetic evidence for a reversible morphogenetic switch controlling the gross morphology of two common genera of green seaweeds, Ulva and Enteromorpha. Mol. Biol. Evol. 16: 1011-8.
【非特許文献3】Malta, E. J., Draisma, S. G. A. & Kamermans, P. 1999. Free-floating Ulva in the southwest Netherlands: species or morphotypes? A morphological, molecular and ecological comparison. Eur. J. Phycol. 34: 443-54.
【非特許文献4】Coat, G., Dion, P., Noailles, M. C., De Reviers, B., Fontaine, J. M., Bergaer-Perrot, Y. & Loiseaux-De Goer, S. 1998. Ulva armoricana (Ulvales, Chlorophyta) from the coasts of Brittany (France). II. Nuclear rDNA ITS sequences analysis. Eur. J. Phycol. 33: 81-6.
【非特許文献5】Blomster, J. 2000. Molecular and morphological approaches to the evolutionary history of the Enteromorpha-Ulva species complex. W. & A. de Nottbeck Foundation Sci. Rep. 20: 1-24.
【非特許文献6】Shimada, S., Hiraoka, M., Nabata, S., Iima, M. & Masuda, M. 2003. Molecular phylogenetic analyses of the Japanese Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae), with special reference to the free-floating Ulva. Phycological Research 51: 99-108.
【非特許文献7】Hayden, H.S., Blomster, J., Maggs, C. A., Silva, P.C., Stanhope, M. J. & Waaland, R.J. 2003 Linnaeus was right all along: Ulva and Enteromorpha are not distinct genera. Eur. J. Phycol. 38: 277-294.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ITS領域の塩基配列を分析することによる識別作業には、DNAシーケエンサーが必要であるが、全国の税関に、DNAシーケエンサーは配備されておらず、現実には実施できない。したがって、この方法は、許可保留扱いで分析依頼されるIQ関係貨物の分析法として現時点では適当でない。また、多検体を処理する場合、個々の検体について塩基配列を分析することは、分析に時間がかかる上、コストもかかり、この点でも問題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、DNAシーケエンサーを用いることなしに、簡便かつ低コストで、検体が、アオノリ属の海藻であるか否かを分析する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[請求項1]被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法であって、
被検試料に含まれるDNAを鋳型として、
アオノリ属の海藻であるウスバアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリのそれぞれの遺伝子における種特異的な配列に相補的な3種類の配列を一方のプライマーとし、かつ上記3種の海藻に共通する1種類の遺伝子配列を他方のプライマーとして
PCRを行い、
PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する前記方法。
[請求項2]アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻とを識別するために用いられる請求項1に記載の方法。
[請求項3]前記一方のプライマーがフォワードプライマーであり、前記他方のプライマーがリバースプライマーである請求項1または2に記載の方法。
[請求項4]前記一方のプライマーが配列表に記載の配列番号1~3の塩基配列を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]前記他方のプライマーが配列表に記載の配列番号4の塩基配列を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]PCR産物の有無を、PCR産物を電気泳動法により確認する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項7]被検試料に含まれるDNAを抽出し、抽出したDNAをPCRの鋳型として用いる請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]被検試料に含まれるDNAが抽出されていることを確認した後に、前記PCRを実施する請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]DNAが抽出されていることの確認は、アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻に共通する塩基配列を有する1対のプライマーを用いたPCRにより行う請求項8に記載の方法。
[請求項10]前記1対のプライマーが配列番号5および6の塩基配列を有する請求項9に記載の方法。
[請求項11] 被検試料に含まれるDNAを鋳型としてPCRを行い、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法に、プライマーとして用いられるDNAであって、配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列を有するDNA、または配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつ塩基数が15以上であるDNA。
[請求項12]被検試料に含まれるDNAを鋳型としてPCRを行い、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法に、プライマーとして用いられる、配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列を有する4種類のDNAを含むか、または前記4種類のDNAの少なくとも1種が配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつ塩基数が15以上であるDNAであるプライマーセット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、DNAシーケエンサーを用いることなしに、簡便かつ低コストで、検体が、アオノリ属の海藻であるか否かを分析する方法ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法は、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法である。この本発明では、被検試料に含まれるDNAを鋳型として、アオノリ属の海藻であるウスバアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリのそれぞれの遺伝子における種特異的な配列に相補的な3種類の配列を一方のプライマーとし、かつ上記3種の海藻に共通する1種類の遺伝子配列を他方のプライマーとしてPCRを行う。そして、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する。
【0009】
ウスバアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリに、スジアオノリを加えた4種類が、アオノリ属の海藻の主要なものであり、通関するアオノリ属の海藻のほぼ100%がこれら4種類のいずれかに属する。但し、ウスバアオノリとスジアオノリとは、別種とされているが、ITS領域は共通しており、ウスバアオノリの種特異的な配列を用いることで、スジアオノリについても検出できる。したがって、ウスバアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリの3種類の海藻についてPCR産物が得られるか否かを検討することで、実質的に、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを判定できる。
【0010】
そこで、本発明では、これら3種類の海藻の遺伝子、例えば、ITS配列において、種特異的な領域を探査し、これら種特異的な配列に相補的な3種類の配列を一方のプライマーとして用いる。また、これら3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列を他方のプライマーとして用い、PCRを行う。被検試料がアオノリ属の海藻であれば、即ち、ウスバアオノリ、スジアオノリ、ヒラアオノリおよびボウアオノリのいずれかであれば、PCR産物が得られ、被検試料がアオノリ属の海藻であると判定できる。また、PCR産物が得られなければ、被検試料はアオノリ属の海藻ではない、と判定できる。
【0011】
このように、本発明の方法によれば、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを判定することができる。そして、例えば、税関においては、識別が難しい状態で通関手続に供されるアオノリ属の海藻とアオサ属の海藻とを識別するために用いることができる。
【0012】
上記PCRにおいて一方のプライマーとして用いる「種特異的な配列に相補的な3種類の配列」および他方のプライマーとして用いる「3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列」は、例えば、ITS配列において、種特異的な領域および3種類の海藻に共通する領域を探査することで選択することができる。上記3種類のアオノリ属の海藻にスジアオノリを加えた4種類の海藻のITS配列は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0013】
また、本発明の分析方法は、主に、アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻との識別を目的とするので、種特異的な領域は、アオサ属の海藻との比較においてアオノリ属の海藻に種特異的な領域であることを意味する。
【0014】
そのようなアオノリ属の海藻に種特異的な領域は、上記3種類の各海藻のITS配列と、アオサ属の海藻のITS配列とを比較することで、決定できる。具体的には、アオサ属の海藻の内、例えば、「青のり」として取引されることが多い、9種のアオサ属の海藻、アナアオサ、オオバアオサ、ナガアオサ、リボンアオサ、アミアオサ、コツブアオサ、ミナミアオサ、U. rigida, U. armoricanaのITS配列とを比較することで決定できる。勿論、これら以外のアオサ属の海藻のITS配列を比較対象とすることもでき、比較対象の数が多ければそれだけ種特異性を上げることができる。アオサ属の海藻のITS配列も公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0015】
一方のプライマーとして用いる「種特異的な配列に相補的な3種類の配列」は、上記手法により決定できる種特異的な領域から、プライマーとしての利用を考慮して適宜決定できる。プライマーとして鋳型と特異的にハイブリダイズという観点から、塩基数は最低15個であることが適当であり、好ましくは塩基数15~30個、より好ましくは塩基数20~30個である。この長さのプライマーであれば、鋳型DNAとの特異的なアニーリングに十分だからである。
【0016】
種特異的な配列に相補的な3種類の配列は、具体的には、配列表に記載の配列番号1~3の塩基配列を有することができる。上記配列番号1~3の塩基配列は、いずれも、アオサ属の海藻の遺伝子には相補配列が含まれておらず、アオノリ属の海藻において種特異的な配列に相補的配列である。したがって、これらの配列は種特異的な領域であり、これらの配列の一部をプライマーとして利用することもできる。即ち、これらの配列から、その5'および/または3'側の一部塩基を除いた配列をプライマーとして利用することもできる。その場合、配列の塩基数は、上記で示した数値範囲を考慮して適宜決定できる。即ち、配列表に記載の配列番号1~3の塩基配列の内、塩基数が少なくとも15である配列をプライマーとして利用することもできる。
【0017】
また、3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列は、前記3種類のアオノリ属の海藻のITS配列に共通する領域から、適宜決定できる。この場合、アオサ属の海藻のITS配列に共通する領域があってもよい。上記種特異的な配列に相補的な3種類の配列は、アオサ属の海藻のITS配列とは相違するので、3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列が、アオサ属の海藻のITS配列と共通部分が有っても、PCRの際にアオサ属の海藻の遺伝子は増幅されないからである。また、3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列は、PCRによって、増幅されるべきDNAの塩基数を考慮して、即ち、アオノリ属の海藻に種特異的な領域とのITS配列上での距離を考慮して適宜決定できる。アオノリ属の海藻に種特異的な領域(配列)と3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列との距離は、塩基数で、例えば、100~2000個の範囲であることができる。距離が短いと、増幅されるDNAの分子量が小さくPCR産物の有無の確認に支障が出る場合がある。また、距離が長い場合、被検試料に含まれるDNAに該当する配列があっても、PCRによる増幅が上手く進行せず、分析誤差の原因となる可能性がある。PCR産物の有無の確認が良好にできるという観点からは、上記距離は、塩基数で、例えば、200~1000個の範囲であることが好ましく、300~600個の範囲であることがより好ましい。
【0018】
3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列は、例えば、配列表に記載の配列番号4の塩基配列を有するものであることができる。上記配列番号4の塩基配列は、いずれも、アオサ属の海藻の遺伝子には相補配列が含まれておらず、アオノリ属の海藻において種特異的な配列に相補的配列である。したがって、この配列は種特異的な領域であり、これらの配列の一部をプライマーとして利用することもできる。即ち、これらの配列から、その5'および/または3'側の一部塩基を除いた配列をプライマーとして利用することもできる。その場合、配列の塩基数は、15個以上の範囲から適宜決定できる。
【0019】
種特異的な配列に相補的な3種類の配列は、フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかであることができ、種特異的な配列に相補的な3種類の配列がフォワードプライマーである場合、3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列をリバースプライマーとして用いることができる。また、種特異的な配列に相補的な3種類の配列がリバースプライマーである場合、3種類の海藻に共通する1種類の遺伝子配列をフォワードプライマーとして用いることができる。尚、上記配列番号1~3の塩基配列は、フォワードプライマーであり、配列番号4の塩基配列は、リバースプライマーである。
【0020】
尚、本発明は、被検試料に含まれるDNAを鋳型としてPCRを行い、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法に、プライマーとして用いられるDNAを包含し、このDNAは、配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列を有するDNA、および配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつ塩基数が15以上であるDNAである。塩基数が15以上であれば、プライマーとして機能する。
【0021】
さらに本発明は、被検試料に含まれるDNAを鋳型としてPCRを行い、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定する、被検試料がアオノリ属の海藻であるかを分析する方法に、プライマーとして用いられるプライマーセットを包含し、このプライマーセット、配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列を有する4種類のDNAを含むものである。あるいは、本発明のプライマーセットは、前記4種類のDNAの少なくとも1種が配列表に記載の配列番号1~4のいずれかの塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつ塩基数が15以上であるDNAであることもできる。
【0022】
本発明におけるPCRは常法により行うことができる。具体的には、PCRは、94℃ 45秒、50℃ 45秒、68℃ 60秒を35サイクルで行うことができる。尚、サイクル数は、サンプル中の鋳型の量等を考慮して、適宜増減することができる。PCRの試薬は、市販品を用いることができ、例えば、ex Taq (TAKARA社製)を使用することができる。また、1サンプルの試料内容は、例えば、次の通りとすることができる(Buffer 3μL、dNTP mix 2.5μL、DMSO 1.5μL、Taq 0.2μL、DW 22.3μL、合計30μL)。
【0023】
PCR法において、被検試料に含まれるDNAを鋳型とするが、具体的には、被検試料に含まれるDNAを抽出し、抽出したDNAをPCRの鋳型として用いることが適当である。被検試料に含まれるDNAの抽出は、例えば、以下に示す方法により実施できる。輸入される乾燥アオサ・アオノリ類は、約1m角に破砕され粉末状になっている。これをまず海水に浸して1片ずつに分離し、実体顕微鏡下で絵筆・ピンセットを用いてクリーニングする。クリーニングした1片を1.5mlチューブにいれ、ポンプを使って減圧乾燥を10分間行う。サンプルの入った1.5mlチューブに液体窒素を入れ、ペッスルで破砕する。破砕したサンプルから、例えば、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen社製)を用いてDNAを抽出することができる。
【0024】
さらに、被検試料に含まれるDNAの抽出を行う場合、本発明の方法におけるPCRを実施する前に、被検試料に含まれるDNAが確実に抽出されていることを確認することが好ましい。DNAが抽出されていることの確認は、例えば、アオノリ属の海藻とアオサ属の海藻に共通する塩基配列を有する1対のプライマーを用いたPCRにより行うことができる。そのような1対のプライマーは、例えば、配列番号5および6の塩基配列を有するものであることができる。上記1対のプライマーを用いたPCRを行い、PCR産物の有無を確認することで、被検試料に含まれるDNAが確実に抽出されているか否かを確認できる。尚、配列番号5および6の塩基配列の一部の配列を有するDNA対をプライマーとして用いることもできる。また、PCRは前記で説明したと同様に実施できる。
【0025】
本発明の方法におけるPCR産物の有無の確認、および上記被検試料に含まれるDNAが確実に抽出されているか否かの確認のための、PCR産物の有無の確認は、常法により行うことができる。例えば、PCR産物を電気泳動法に供し、バンドの有無からPCR産物の有無を判定することができる。電気泳動は、例えば、1%アガロースゲル(1xTAE buffer)にて行うことができる。具体的には、1サンプル4μLをローディングし、約15分通電して泳動させる。泳動後、例えば、エチジウムブロマイドで染色し、トランスイルミネータにてバンドの有無を確認することができる。
【0026】
本発明によれば、PCR産物の有無により、被検試料がアオノリ属の海藻であるか否かを決定することができる。また、必要により、PCR産物の分子量の違いから、電気泳動法の結果(バンドの位置)により、被検試料がアオノリ属の海藻である場合、ウスバアオノリ(またはスジアオノリ)、ヒラアオノリおよびボウアオノリのいずれの海藻であるかも、判別することも可能である。また、種特異的な配列に相補的な3種類の配列(プライマー)のいずれかまたはそれぞれに予め蛍光マーカー等のマーカーを付しておくことで、上記3種(4種)の海藻の識別を容易にすることもできる。
【実施例】
【0027】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
【0028】
実施例1
[主要アオノリ3種の種特異的プライマーの作製]
世界中のアオサ・アオノリ類約300検体のITS領域(Internal Transcribed Spacer region)のDNA配列から、主要アオノリ4種のそれぞれの種で特異的な領域を探した。Forward側として主要アオノリ3種に種特異的なプライマー(ウスバアオノリ/スジアオノリ:5'-CGCGTGCGCTCCCCTCGGGGGGCG-3'(配列番号1)、ヒラアオノリ:5'-TGAGGTGCGCTCCCCCGGGGGCGCGCCCCT-3' (配列番号2)、ボウアオノリ:5'-TGGGAGGGGGTGGTGGTGCTCACG-3'(配列番号3))を作製し、Reverse側は共通な5'-TGATAGGTTAAGTTCAGC-3' (配列番号4)を作製した。
【0029】
尚、ウスバアオノリとスジアオノリは現在では別種とされているが、ITS領域の研究で日本のスジアオノリはウスバアオノリと同種の可能性が報告されている(平岡雅規、嶌田智:海洋と生物2004「四万十川の特産品スジアオノリの生物学」26 (6) 508-515.)。したがって、両種については同一のプライマーを用いる。また、Reverse側のプライマーは、既に報告済みのものである(Satoshi Shimada, Masanori Hiraoka, Shinichi Nabata, Masafumi Iima & Michio Masuda. 2003. Molecular phylogenetic analyses of the Japanese Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae), with special reference to the free-floating Ulva. Phycological Research 51: 99-108.)。
【0030】
上記で作製した種特異的なプライマーが有効かどうかの検証を以下に行った。
【0031】
[サンプル]
比較のための主要アオサ9種(アナアオサ、オオバアオサ、ナガアオサ、リボンアオサ、アミアオサ、コツブアオサ、ミナミアオサ、U. rigida, U. armoricana)と主要アオノリ4種のDNAを用意した。
【0032】
[1回目のPCR]
用意したサンプルの抽出DNAを鋳型として1回目のPCRをかけた。これは抽出DNAが、PCR可能なDNAかどうかを確認するためのコントロール実験である。海藻類は多糖類やポリフェノールが多くPCRが阻害されることがある。したがって、抽出DNAをダイレクトに電気泳動で確認してもPCRが可能なサンプルであることの証拠にならない。PCRの試薬はex Taq (TAKARA社製)を使用した。1サンプルの試料内容は次の通りである(Buffer 3μL、dNTP mix 2.5μL、DMSO 1.5μL、Taq 0.2μL、DW 22.3μL、合計30μL)。プライマーはアオサ・アオノリ類のITS2領域を増幅するプライマーセット(F:5'-CTCTCAACAACGGATATCT-3'(配列番号5)、R:5'-TGATAGGTTAAGTTCAGC-3'(配列番号6))を用いた。これは既に報告済みのものである(Satoshi Shimada, Masanori Hiraoka, Shinichi Nabata, Masafumi Iima & Michio Masuda. 2003. Molecular phylogenetic analyses of the Japanese Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae), with special reference to the free-floating Ulva. Phycological Research 51: 99-108.)。
【0033】
試薬等のDNAコンタミネーションをチェックするためDNAを入れないサンプルも用意した。PCRの反応条件は次の通りである(94℃ 45秒、50℃ 45秒、68℃ 60秒を35サイクル)。1%アガロースゲルにて電気泳動でバンドの有無を確認した。結果、DNAを入れないサンプル以外すべてバンドが現れ、DNAとしての問題がないことがわかった(図1)。
【0034】
[2回目のPCR]
主要アオノリ3種にそれぞれ特異的なForwardプライマー(配列番号1~3)、Reverse側は共通なプライマー(配列番号4)を用いて、PCRを行った。試薬、プログラム等は1回目と同様の条件とした。1%アガロースゲルにて電気泳動でバンドの有無を確認した。結果、それぞれの種特異的なプライマーセットではその種でのみバンドが現れた(図2(A)~(C))。
【0035】
[確認のためのシークエンス]
2回目のPCRで現れたバンドが本当にその種のITS領域のものかを確かめるために、シークエンスを行った。PCR産物を精製し、ダイターミネーター法シンケンシングキット(BIG DYE : Applied Biosystems 社製)を用いてサイクルシーケンスを行った。反応条件は、96℃ 30秒、50℃ 15秒、60℃ 240秒の30サイクルで行った。サイクルシーケンス反応産物をDNA自動シーケンサーにより塩基配列を解読した結果、2回目のPCRで現れたバンドがそれぞれの種のITS領域のものである事を確かめられた。以上により、作製したプライマーは種特異的なバンド増幅が可能な、種特異的な配列であることが分かる。
【0036】
実施例2
[検体のクリーニング]
輸入される乾燥アオサ・アオノリ類は、約1m角に破砕され粉末状になっている。これをまず海水に浸して1片ずつに分離し、実体顕微鏡下で絵筆・ピンセットを用いてクリーニングした。クリーニングした1片を1.5mlチューブにいれ、ポンプを使って減圧乾燥を10分間行った。10サンプル用意した。
【0037】
[DNAの抽出]
サンプルの入った1.5mlチューブに液体窒素を入れ、ペッスルで破砕した。DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen社製)にてDNAを抽出した。
【0038】
[1回目のPCR]
抽出DNAを鋳型として1回目のPCRを行った。これは前述のDNA抽出サンプルがPCR可能なDNAが抽出できたかを確認するためのコントロール実験である。海藻類は多糖類やポリフェノールが多くPCRが阻害されることがある。したがって、抽出DNAをダイレクトに電気泳動で確認してもPCRが可能なサンプルであることの証拠にならない。PCRの試薬はex Taq (TAKARA社製)を使用した。1サンプルの試料内容は次の通りである(Buffer 3μL、dNTP mix 2.5μL、DMSO 1.5μL、Taq 0.2μL、DW 22.3μL、合計30μL)。プライマーはアオサ・アオノリ類のITS2領域を増幅するプライマーセット(配列番号5および6))を用いた。試薬等のDNAコンタミネーションをチェックするためDNAを入れないサンプルも用意した。PCRの反応条件は次の通りである(94℃ 45秒、50℃ 45秒、68℃ 60秒を35サイクル)。1%アガロースゲルにて電気泳動でバンドの有無を確認した。2番目のサンプルは普通のバントは異なり数本のバンドが検出された(図3)。DNAの抽出は成功しているが、おそらくアオサ・アオノリ類ではないと思われる。そのまま全サンプルを2回目のPCRにかけた。
【0039】
[2回目のPCR]
主要アオノリ3種にそれぞれ特異的なForwardプライマーと(配列番号1~3)、Reverse側は共通なプライマー(配列番号4)を用いてPCRを行った。試薬、プログラム等は1回目と同様である。1%アガロースゲルにて電気泳動でバンドの有無を確認した(図4(A)、(B))。すると、ウスバアオノリ/スジアオノリ種特異的なプライマーを使用した場合のみ1,4,5,7,10番目のサンプルで明確なバンドが確認でき、10検体中5検体が陽性であった。即ち、5検体がアオノリ属の海藻であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、海藻の種の同定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の1回目のPCR産物の電気泳動写真。
【図2】実施例1の2回目のPCR産物の電気泳動写真。
【図3】実施例2の1回目のPCR産物の電気泳動写真。
【図4】実施例2の2回目のPCR産物の電気泳動写真。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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