TOP > 国内特許検索 > 半導体発光素子 > 明細書

明細書 :半導体発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4787083号 (P4787083)
公開番号 特開2008-004672 (P2008-004672A)
登録日 平成23年7月22日(2011.7.22)
発行日 平成23年10月5日(2011.10.5)
公開日 平成20年1月10日(2008.1.10)
発明の名称または考案の名称 半導体発光素子
国際特許分類 H01L  33/06        (2010.01)
H01L  33/40        (2010.01)
H01S   5/042       (2006.01)
FI H01L 33/00 112
H01L 33/00 220
H01S 5/042 612
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2006-171184 (P2006-171184)
出願日 平成18年6月21日(2006.6.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年1月11日 独立行政法人情報通信研究機構主催の「Ninth International Symposium on Contemporary Photonics Technology(CPT2006)」において文書をもって発表
審査請求日 平成19年9月11日(2007.9.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
発明者または考案者 【氏名】末宗 幾夫
【氏名】赤崎 達志
【氏名】田中 和典
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100110582、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 昌聰
審査官 【審査官】佐藤 俊彦
参考文献・文献 特開平03-109788(JP,A)
特開平09-326506(JP,A)
特開2004-363436(JP,A)
特開2006-222394(JP,A)
調査した分野 H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた超伝導の第1電極と、
前記半導体基板の他方の主面上に設けられた第2電極と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域と、
を備え、
再結合時間より短い幅を持つパルス電流を前記第1電極と前記第2電極との間に注入して、前記半導体量子ドット領域において、前記第1電極から注入される電子クーパー対と前記第1半導体層から注入される2個の正孔とを同時に再結合させるか、或いは、前記第1電極から注入される正孔クーパー対と前記第1半導体層から注入される2個の電子とを同時に再結合させる、
ことを特徴とする半導体発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体発光素子として発光ダイオードやレーザダイオードが挙げられる。これらの半導体発光素子では、互いに接合されたp型半導体層およびn型半導体層を挟んで一対の電極が設けられており、この一対の電極の間に順バイアス電圧が印加されると、p型半導体層とn型半導体層とのpn接合部の近傍に活性領域が形成され、この活性領域において電子と正孔との対消滅(再結合)によって光が生成される。
【0003】
また、従来より格段に処理速度の速い量子情報処理や安全性の高い量子情報通信に用いるために、レーザ光をパラメトリック下方変換して光子対を生成する方法等,量子もつれ合い(互いに区別することのできない)光子対を生成する技術が開発されてきている(非特許文献1を参照)。

【非特許文献1】P. G. Kwiat, K. Mattle, H. Weinfurter, A. Zeilinger, A. V.Sergienko, and Y. Shih: "New high-intensity source ofpolarization-entangled photon pairs," Physical Review Letters, Vol.75,No.24 (1995) pp.4337-4341.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザ光をパラメトリック下方変換する方法では、(a) 光子対を発生するタイミングを制御することができない、(b) 一度にただ一つの光子対だけを生成することができず必ずある確率で複数の光子対が生成されてしまう、(c) 光子対を生成する速度が遅い、という課題があった。本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、量子情報処理や量子情報通信に用いるのに好適な半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る半導体発光素子は、第1導電型の半導体基板と、半導体基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、第2半導体層上に設けられた超伝導の第1電極と、半導体基板の他方の主面上に設けられた第2電極と、第1半導体層と第2半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域と、を備えることを特徴とする。さらに、本発明に係る半導体発光素子は、再結合時間より短い幅を持つパルス電流を第1電極と第2電極との間に注入して、半導体量子ドット領域において、第1電極から注入される電子クーパー対と第1半導体層から注入される2個の正孔とを同時に再結合させるか、或いは、第1電極から注入される正孔クーパー対と第1半導体層から注入される2個の電子とを同時に再結合させることを特徴とする。ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。また、半導体基板,第1半導体層,第2半導体層および半導体量子ドット領域それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。
【0006】
この半導体発光素子では、第1導電型の半導体基板の一方の主面上に、順に、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層および超伝導の第1電極が設けられている。また、第1導電型の半導体基板の他方の主面上に第2電極が設けられている。また、第1半導体層と第2半導体層との間に半導体量子ドット領域設けられている。このような構成を有する半導体発光素子において、第1電極と第2電極との間に順バイアス電圧が印加されると、第1半導体層と第2半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から電子クーパー対が注入されるとともに、第1半導体層から正孔が注入され、これら電子クーパー対と正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。或いは、第1半導体層と第2半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から正孔クーパー対が注入されるとともに、第1半導体層から電子が注入され、これら正孔クーパー対と電子とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る半導体発光素子は、量子もつれ合い(互いに区別することのできない)光子対を生成することができ、量子情報処理や量子情報通信において好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る半導体発光素子1の断面図である。この図に示されるように、本実施形態に係る半導体発光素子1は、第1導電型の半導体基板11と、半導体基板11の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層12と、第1半導体層12上に設けられた第2導電型の第2半導体層14と、第2半導体層14上に設けられた超伝導の第1電極15と、半導体基板11の他方の主面上に設けられた第2電極16と、を備える。さらに、この半導体発光素子1は、第1半導体層12と第2半導体層14との間に設けられた半導体量子ドット領域13を備える。ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。また、半導体基板11,第1半導体層12,第2半導体層14および半導体量子ドット領域13それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。
【0010】
例えば、半導体基板11はp型GaAsからなり、第1半導体層12はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はGaSbからなり、第2半導体層14はn型GaAsからなる。このような構成を有する半導体発光素子1を製造する方法として、例えばMOCVD,MBE,MOMBE等の広範な技術が適宜に採用される。
【0011】
このような半導体発光素子1において、超伝導の第1電極15と第2電極16との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔がp型AlGaAs半導体層12からGaSb半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子クーパー対が超伝導の電極15からn型GaAs半導体層14を経てGaSb半導体量子ドット領域13に注入されて、これら電子クーパー対と2個の正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【0012】
半導体量子ドット領域13における一つの量子準位に注入される正孔の数は、フェルミ粒子に対するパウリの排他律により、2個までに制限される。一方、ボーズ粒子であるクーパー対には、そのような個数についての制限はない。したがって、発生する光子の数は、半導体量子ドット領域13の量子準位に注入された正孔の数で決まり、2個となる。半導体量子ドット領域13の量子準位に注入された2つの正孔は、互いに等しいエネルギを有し、区別不可能な状態にある。電子クーパー対は、2つの電子が結合した状態であり、互いに区別できない状態であることから、2つの正孔と同時に再結合する。この再結合により、2つの互いに区別できない光子が同時に発生する。
【0013】
半導体量子ドット領域13の量子準位は複数存在するが、再結合時間より短い幅を持つパルス電流を電極15,16の間に注入すれば、上の準位の正孔から消滅していき、最後に再結合する基底準位の正孔対を用いれば、一度にただ一つの光子対を生成することができる。発生した光子は、電極15および電極16それぞれに設けられた開口から外に取り出される。光子対の生成速度は、パルス電流の繰り返し時間で決まり、再結合時間程度の短時間で繰り返すことができる。
【0014】
この場合、n型GaAs半導体層14の厚さは、GaSb半導体量子ドット領域13にクーパー対を注入するための輸送効率で決定され、実測結果から100nm程度である。p型AlGaAs半導体層12のAl組成は、電子クーパー対がこの層に進入するのを防ぐことから決定され、15%程度が必要である。電極15および電極16それぞれに設けられる開口は、単一の量子ドットからの発光を取り出す条件から決定され、量子ドットの表面密度が1μm平方に1個程度の場合には直径1μm程度が必要である。また、再結合時間は通常1ns程度であり、パルス電流の繰り返しとそれに伴う光子対生成速度とは1GHz程度まで可能である。
【0015】
或いは、半導体基板11はp型GaAsからなり、第1半導体層12はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はZnTeからなり、第2半導体層14はn型ZnSeからなるものであってもよい。この場合には、超伝導の第1電極15と第2電極16との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔がp型AlGaAs半導体層12からZnTe半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子クーパー対が超伝導の電極15からn型ZnSe半導体層14を経てZnTe半導体量子ドット領域13に注入されて、これら電子クーパー対と2個の正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【0016】
これまでに説明した実施形態では半導体基板11はp型半導体からなるものとしたが、半導体基板11はn型半導体からなるものであってもよい。後者の場合、例えば、半導体基板11はn型GaAsからなり、第1半導体層12はn型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はInPからなり、第2半導体層14はp型GaAsからなる。この場合には、超伝導の第1電極15と第2電極16との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔クーパー対が超伝導の電極15からp型GaAs半導体層14を経てInP半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子がn型AlGaAs半導体層12からInP半導体量子ドット領域13に注入されて、これら正孔クーパー対と2個の電子とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【0017】
その他、半導体基板11,第1半導体層12,半導体量子ドット領域13および第2半導体層14それぞれの組成については多種の態様があり得る。
【0018】
以上のように、本実施形態に係る半導体発光素子は、半導体p-n接合をベースとしつつ、一方の電極に超伝導体を用い、その超伝導体の電極からクーパー対を半導体に注入するとともに、人造原子とも言われる半導体量子ドットの量子準位を使って、伝導帯または価電子帯の各量子準位に2つの電子または2つの正孔を分布させて、一度にただ一対だけの量子もつれ合い光子対を生成することができる。したがって、この半導体発光素子は、処理速度の速い量子情報処理や安全性の高い量子情報通信において好適に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る半導体発光素子1の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…半導体発光素子、11…第1導電型の半導体基板、12…第1導電型の第1半導体層、13…半導体量子ドット領域、14…第2導電型の第2半導体層、15…超伝導の第1電極、16…第2電極。
図面
【図1】
0