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明細書 :周期的な構造が形成された樹脂フィルムの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4910193号 (P4910193)
公開番号 特開2008-296502 (P2008-296502A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
発明の名称または考案の名称 周期的な構造が形成された樹脂フィルムの製造方法
国際特許分類 B29C  61/02        (2006.01)
C08J   7/04        (2006.01)
C08J   7/00        (2006.01)
G02B   5/30        (2006.01)
G02B   5/18        (2006.01)
G03F   7/20        (2006.01)
B29D   7/01        (2006.01)
B29C  59/02        (2006.01)
B29L   7/00        (2006.01)
B29L  31/60        (2006.01)
FI B29C 61/02
C08J 7/04 CERZ
C08J 7/04 CEZ
C08J 7/00 301
G02B 5/30
G02B 5/18
G03F 7/20 501
B29D 7/01
B29C 59/02 B
B29L 7:00
B29L 31:60
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2007-146849 (P2007-146849)
出願日 平成19年6月1日(2007.6.1)
審査請求日 平成22年4月26日(2010.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】西埜 文晃
【氏名】高木 斗志彦
【氏名】桑原 昌宏
【氏名】下村 政嗣
【氏名】居城 邦治
【氏名】山本 貞明
【氏名】松尾 保孝
【氏名】藪 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
審査官 【審査官】大村 博一
参考文献・文献 特開2008-296481(JP,A)
特開2007-269925(JP,A)
特開2007-269923(JP,A)
特開2007-260986(JP,A)
特開2007-004155(JP,A)
特開2007-004147(JP,A)
特開2007-004146(JP,A)
特開2007-004107(JP,A)
特開2007-001301(JP,A)
特開2005-270688(JP,A)
特開2005-262777(JP,A)
特開2004-331793(JP,A)
特開2004-330330(JP,A)
国際公開第2004/048064(WO,A1)
特開2002-347107(JP,A)
特開2001-157574(JP,A)
特開平11-221854(JP,A)
特開昭63-182135(JP,A)
調査した分野 B29C 61/00-61/10
B29C 59/00-59/18
特許請求の範囲 【請求項1】
周期的な構造が形成された樹脂フィルムの製造方法であって、
周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを準備するステップ、および前記周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するステップを含み、かつ
前記周期的なドットパターンは、ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、そのハニカムパターンを転写することにより形成されたパターンである、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記周期的な構造は、周期的なドットを有し、かつ各ドットにしわ状の凹凸を有し、前記凹凸は前記収縮する方向に繰り返される構造である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ドットパターンを有する樹脂フィルムは、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムであり、かつ
前記ドットパターンを有する樹脂フィルムの収縮は、熱、光、赤外線またはマイクロ波の照射によって行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮するステップは、
前記ドットパターンを有するフィルムを、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムに貼り合わせて複層フィルムを得る工程、および
前記複層フィルムを、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮させる工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする物理気相堆積法による転写である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする化学気相堆積法による転写である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする、塗布法、スピンキャスト法、ディップ法またはめっき法による転写である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムが、異方的に収縮する、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムが、等方的に収縮する、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ハニカム状多孔質フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液を高湿度雰囲気下でキャストする工程、
前記キャスト液から、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および
前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、
を有するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ハニカム状多孔質フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液をキャストする工程、
前記キャスト液に高湿度ガスを吹き付けて、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および
前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、
を有するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記周期的な構造が形成された樹脂フィルムは光学フィルムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、周期的な構造が形成された樹脂フィルムを製造する方法に関する。具体的には、ハニカム状多孔質フィルムのハニカムパターンを転写された、ドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮することにより、周期的な構造が形成された樹脂フィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性高分子、光硬化性高分子などの高分子材料や、石英、低融点ガラスなどの無機材料からなり、表面に数nmから数百μmの微細構造が形成された部材は、様々な分野で必要不可欠な部材である。これらの部材は、例えば、回折格子、輝度向上フィルム、偏光反射フィルム、位相差フィルム、導光板などの光学部材;CD、DVD、Blue—ray Diskなどの光記憶媒体;光導波路、光ファイバーなどの光通信部材;細胞培養基材、DNAチップなどのライフサイエンス用部材などとして用いられる。これらの部材を製造するための微細加工技術が、近年活発に研究開発されている。
【0003】
微細加工技術として、最もよく用いられる手法はフォトリソグラフィー技術である。フォトリソグラフィー技術とは、フォトレジスト材料を塗布、露光、現像、エッチングという工程で、微細加工を施す技術である。フォトリソグラフィー技術でフォトレジスト材料を露光するために用いられる活性光線には、現在KrFやArFエキシマレーザーが主流であるが、さらに短波長の光線としてF2、極端紫外線(EUV)、電子線(EB)などが研究開発されている。
【0004】
フォトリソグラフィー技術は、非常に高価な装置を必要とし、活性光線の波長に応じた新たなレジスト材料の開発を必要とし、膨大な設備投資や運用コストを必要とする。また、加工できる材料の多様性が低く、感光性材料や半導体などの無機材料に限られる。
【0005】
近年、フォトリソグラフィー技術に代わる微細加工技術として、プレス加工技術を応用したナノインプリント技術が注目されている。ナノインプリント技術は、微細構造を有する金型を樹脂にプレスすることで、金型の微細構造を樹脂に転写する技術であり、一度金型を作製すれば、大量に複製することが可能である。
【0006】
しかしながらナノインプリントの金型は、電子線リソグラフィー、X線リソグラフィーまたはフォトリソグラフィーを利用して作製されるため、大幅なコスト削減は期待できない。また、解像度が金型に依存する、樹脂の熱収縮や光硬化収縮により寸法精度が低下する、金型と樹脂の離型不良により欠陥が生じる等の問題点がある。
【0007】
一方、自己組織化手法によるマイクロパターン形成法が注目されている(例えば、非特許文献1を参照)。自己組織化によるマイクロパターン形成法は、ポリマー溶液を高湿度下でガラス基板上に塗布した後、その表面に気体を吹き付けて、溶媒を蒸発させると共に、凝結した微小水滴を鋳型にしてハニカム構造を形成する方法である。かかる方法は、空気中から自然に凝結する微小水滴と、溶液中から自然に析出するポリマーとを利用しているので、複雑な製造装置を必要とせず、極めて容易かつ安価に製膜できるという利点がある。

【非特許文献1】「自己組織化によるナノマテリアル(田中賢等)」、特集3-ナノテク/バイオなど次世代注目技術と微細加工機器・システム、「M&E」、工業調査会、(2003年8月号、p.190-195)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、周期的な微細凹凸を有する樹脂フィルムを形成する方法であって、安価かつ簡便なプロセスを提供する。さらに本発明は、周期的な微細凹凸を有する樹脂フィルムを形成する方法であって、樹脂フィルムの材質や、樹脂フィルムに周期的な構造を形成する材質を、多様な材料から選択することができる製造方法を提供する。また、これらにより光学フィルムに適用することができる樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高価な装置を必要としない自己組織化手法によって簡便かつ安価に作製される「ハニカム状多孔質フィルム」を鋳型として、そのハニカムパターンを樹脂フィルムに転写することにより、周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを得た。さらに、周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮させることにより、従来は製造が困難であった周期的な構造を有する樹脂フィルムを製造することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、以下に示す樹脂フィルムの製造方法に関する。
[1] 周期的な構造が形成された樹脂フィルムの製造方法であって、
周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを準備するステップ、および前記周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するステップを含み、かつ
前記周期的なドットパターンは、ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、そのハニカムパターンを転写することにより形成されたパターンである樹脂フィルムの製造方法。
[2] 前記周期的な構造は、周期的なドットを有し、かつ各ドットにしわ状の凹凸を有し、前記凹凸は前記収縮する方向に繰り返される構造である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記ドットパターンを有する樹脂フィルムは、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムであり、かつ前記ドットパターンを有する樹脂フィルムの収縮は、熱、光、赤外線またはマイクロ波の照射によって行われる、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記ドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮するステップは、
前記ドットパターンを有するフィルムを、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムに貼り合わせて複層フィルムを得る工程、および前記複層フィルムを、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮させる工程を含む、[1]または[2]に記載の製造方法。
[5] 前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする物理気相堆積法による転写である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする化学気相堆積法による転写である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記ハニカムパターンの転写は、前記ハニカム状多孔質フィルムをマスクとする、塗布法、スピンキャスト法、ディップ法またはめっき法による転写である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムが、異方的に収縮する、[3]または[4]に記載の製造方法。
[9] 前記熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムが、等方的に収縮する、[3]または[4]に記載の製造方法。
[10] 前記ハニカム状多孔質フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液を高湿度雰囲気下でキャストする工程、前記キャスト液から、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、を有するステップをさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 前記ハニカム状多孔質フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液をキャストする工程、前記キャスト液に高湿度ガスを吹き付けて、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、を有するステップをさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 前記周期的な構造が形成された樹脂フィルムは光学フィルムである、[1]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮させることにより、従来は製造が困難であった周期的な構造が形成された樹脂フィルムを製造する方法である。周期的な構造とは、好ましくは、周期的なドットを有し、かつ各ドット表面にしわ状の凹凸を有する構造である。
周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムは、ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として用いて、そのハニカムパターンを樹脂フィルムに転写して得ることができる。ハニカム状多孔質フィルムは、自己組織化手法によって作製することができる。また、樹脂フィルムの収縮は、熱、光、赤外線またはマイクロ波の照射によって行なえばよい。したがって本発明の製造方法に含まれる工程はいずれも、簡便かつ安価に行なうことができる。
【0012】
よって、従来技術では高価な装置を用いなければなし得なかった構造を有する樹脂フィルムを、簡便で安価に提供できるようになる。さらに、従来の微細加工技術(フォトフォトリソグラフィー技術など)と比較して、使用できる材料が多様になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る周期的な構造を形成された樹脂フィルムの製造方法は、周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮するステップを有する。
【0014】
前記周期的なドットパターンを有するフィルムは、ハニカム状多孔質フィルムを準備し;ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、そのハニカムパターンを樹脂フィルムに転写して作製することが好ましい。
【0015】
ハニカム状多孔質フィルムの作製
ハニカム状多孔質フィルムは、自己組織化手法によって作製されることが好ましい。自己組織化手法によるハニカム状多孔質フィルムの製造は、例えば、前述の非特許文献1や特開2001-157574の記載を参照して行われうる。自己組織化手法によるハニカム状多孔質フィルムの製造方法は、溶媒の蒸発過程で発生する散逸構造をフィルムに固定化することを特徴とする。
【0016】
自己組織化手法の好ましい手順の第一には、高分子材料を溶解した疎水性有機溶液を、高湿度雰囲気下でキャストする工程;該キャスト液から、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程;該結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成して、ハニカム状多孔質フィルムを製造する工程が含まれる。
【0017】
自己組織化手法の好ましい手順の第二には、高分子材料を溶解した疎水性有機溶液をキャストする工程;該キャスト液に高湿度ガスを吹き付けて、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程;該結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成して、ハニカム状多孔質フィルムを製造する工程が含まれる。
【0018】
自己組織化手法で用いられる疎水性有機溶液に溶解される高分子材料は、疎水性有機溶媒に可溶であれば特に制限されないが、水には不溶もしくは難溶であることが好ましい。高分子材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、シクロオレフィン共重合体樹脂等のビニル重合樹脂もしくはその共重合体、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポイヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどが含まれる。
【0019】
前記疎水性有機溶液の高分子材料の濃度は0.01~10重量%であり、好ましくは0.05~5重量%である。溶液の高分子材料の濃度が0.01重量%より低いと、得られるハニカム状多孔質フィルムの力学的強度が不足することがある。また、溶液濃度が10重量%より高いと、得られるハニカム状多孔質フィルムの孔の分布や孔の大きさが均一でなくなることがある。
【0020】
前記疎水性有機溶液の溶媒は、常温で液体の疎水性の有機溶媒であれば特に限定されない。前記溶媒の例には、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;二硫化炭素;アミド系溶剤;エーテル系溶剤等が含まれる。これらの疎水性有機溶媒を単独で使用しても、複数の溶媒を組み合わせて混合溶媒として使用してもよい。
前記疎水性有機溶液をキャストして形成されたキャスト液の膜に、微小水滴を形成させることができるので、その微少水滴を蒸発させればハニカムパターンが得られる。
【0021】
前記疎水性有機溶液には、両親媒性物質が共存してもよい。共存する両親媒性物質は特に限定されず、低分子物質、高分子物質のいずれも利用することができる。例えば、ドデシルベンゼンスルホンナトリウムやジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリム等の低分子物質;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリアクリルアミドを主骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基あるいはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性高分子;あるいはヘパリンやデキストラン硫酸、DNAやRNAの核酸などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス;ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水基とした両親媒性高分子を例示することができる。
【0022】
前記疎水性有機溶液は、基材にキャストされる。基材の例には、ガラス、金属、シリコンウェハー等の無機材料;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン等の高分子からなる有機材料;MICA等の鉱物系材料などが含まれる。さらに、水、流動パラフィン、液状ポリエーテル等の液体を基材として使用してもよい。さらに、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルム(収縮性フィルム)を基材としてもよい。収縮性フィルムについては後述する。
【0023】
前記疎水性有機溶液のキャストは、高湿度雰囲気下で行なってもよい。高湿度雰囲気下とは、例えば相対湿度が50~95%であることを意味する。
【0024】
キャスト液は、それに含まれる有機溶媒を蒸発させられることが好ましい。キャスト液に十分な水が含まれていない場合には、高湿度ガスを吹き付けることによって、有機溶媒を蒸発させる。高湿度ガスとは、例えば相対湿度が50~95%であることを意味する。
【0025】
いずれにしても、キャスト液から有機溶媒を徐々に蒸発させると同時に、キャスト液の表面に高湿度雰囲気成分を結露させて、微小液滴を形成する。通常は、高湿度雰囲気成分は水分であり、液滴は水滴である。
【0026】
その後、キャスト液の表面に形成された微小液滴を蒸発させると、微小液滴の形状に応じたハニカムパターンが形成された膜(ハニカム状多孔質フィルム)が得られる。
【0027】
ハニカム状多孔質フィルムの構造について
自己組織化手法により得られるハニカム状多孔質フィルムは、ハニカム状の多孔体である。例えば、微小な孔が規則的にヘキサゴナルに配列したハニカムパターンとなる。孔の直径は、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.1~10μmである。孔の直径は、微小液滴の形成の条件を調整することによって制御することができる。
【0028】
ハニカム状多孔質フィルムは、孔が膜を貫通した貫通構造、または孔が膜を貫通しない非貫通構造のいずれでもよい。貫通または非貫通構造かは、形成されるフィルムの膜厚と、微小水滴の大きさによって制御することができる。
【0029】
ハニカム状多孔質フィルムのハニカムパターンの転写について
ハニカム状多孔質フィルムは鋳型として用いられ、そのハニカムパターンは樹脂フィルムに転写される。ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として用いるとは、「マスク」として用いることを含む。マスクとして用いるためには、ハニカム状多孔質フィルムの孔が貫通していること(貫通構造)が好ましい。
【0030】
したがって、ハニカム状多孔質フィルムの孔が貫通している(貫通構造)場合は、ハニカム状多孔質フィルムを、収縮させる樹脂フィルムに貼り合わせるか;またはハニカム状多孔質フィルムを、収縮させる樹脂フィルム上に作製する(前記キャストするための基材として、収縮性フィルムを用いる)ことが好ましい。
【0031】
一方、ハニカム状多孔質フィルムの孔が貫通していない(非貫通構造)場合は、貫通構造とするための処理を施すことが好ましい。
図2を参照して、貫通構造とするための処理の例を説明する。非貫通構造のハニカム状多孔質フィルムを準備する(ステップ1)。非貫通構造のハニカム状多孔質フィルムをUVオゾン処理して酸化させる(ステップ2)。ハニカム状多孔質フィルムの孔が形成された面を、「収縮させる樹脂フィルム」に貼り合わせて複層フィルムとして、任意に複層フィルムを常温常圧で乾燥させる。さらにハニカム状多孔質フィルムの、孔が形成されていない面にシリコンラバーを接触させて応力を加える(ステップ3)。その後、シリコンラバーを剥がすことにより、収縮させる樹脂フィルムに周期的なドット(ピラー)を形成する(ステップ4)。
【0032】
「収縮させる樹脂フィルム」とは、「収縮性フィルム(後述)」であってもよく、通常の非収縮性フィルムであってもよい。収縮性フィルムを用いた場合は、後述の収縮ステップにおいて、そのフィルムに熱などを照射して収縮させることができ;非収縮性フィルムを用いた場合は、非収縮性フィルムを収縮性フィルムに貼り付けて複層フィルムとして、複層フィルムに熱などを照射して収縮させることができる。
【0033】
収縮性フィルムとは、熱、光、赤外線、マイクロ波などの作用を受けて収縮するフィルムである。収縮性フィルムの材質の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シクロオレフィン共重合体等のビニル重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリカプロラクトンやポリ乳酸等の生体適合性材料などが含まれる。これらの材質からなるフィルムを、一軸または二軸延伸したフィルムを収縮性フィルムとして用いればよい。
【0034】
収縮性フィルムは、等方的に収縮するフィルムであっても、異方的に収縮するフィルムであってもよい。収縮性フィルムの収縮率は、1.05~30倍程度であることが好ましく、1.5~3倍であることがより好ましい。
【0035】
ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、そのハニカムパターンを、収縮させる樹脂フィルムに転写する。当該転写は、例えば、ハニカム状多孔質フィルムをマスクとして、所望の材料を、収縮させる樹脂フィルムにパターニングしてドットを形成すればよい。パターニングした後、マスクとしたハニカム状多孔質フィルムを剥がすことで、収縮させる樹脂フィルムにドットパターンを形成することができる。形成されるドットパターンは、ハニカム状多孔質フィルムのハニカムパターンに応じた周期的なドットパターンとなる。
【0036】
パターニングは、物理気相堆積法、化学気相堆積法、塗布法、スピンキャスト法、ディップ法、めっき法などにより行なうことが好ましい。物理気相堆積法の例には、スパッタリング法、蒸着法等が含まれ、化学気相堆積法の例には、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等が含まれる。
【0037】
収縮される樹脂フィルムにパターニングされるドット成分は、特に限定されず、金、銀、銅、白金、鉄、アルミニウム、パラジウム、ケイ素、ニッケル、チタン等の金属や金属合金;酸化ケイ素や酸化チタン等の金属酸化物;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル等の金属窒化物;ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリアセン誘導体等の有機高分子、オキサゾ-ル誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、キナクリドン誘導体、8-キノリノール誘導体やフタロシアニン誘導体の金属錯体等の有機低分子などが挙げられる。
【0038】
ドットをパターニングされた樹脂フィルムから、鋳型またはマスクとして用いたハニカム状多孔質フィルムを除去する。ハニカム状多孔質フィルムは、粘着テープなどを用いて樹脂フィルムから剥がすことにより除去すればよい。ハニカム状多孔質フィルムの除去は、樹脂フィルムを収縮させる前および後のいずれに行ってもよい。
【0039】
フィルムの収縮について
周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを収縮させることにより、自己組織化手法のみでは困難であった構造が形成された樹脂フィルムを得ることができる。ドットパターンを有する樹脂フィルムが、収縮性フィルムである場合には、そのフィルムに熱、光、赤外線、マイクロ波などを照射して収縮させればよい。一方、ドットパターンを有する樹脂フィルムが、非収縮性フィルムである場合には、例えば収縮性フィルムに貼り付けて複層フィルムとして、複層フィルムを収縮させればよい。
【0040】
収縮性フィルムの収縮は、融点付近まで加熱して引き延ばされて変形した架橋高分子は、冷却状態では変形状態を保つが、融点近くまで再度加熱すると元の状態に戻るという、高分子の配向状態の変化に基づく現象である。
【0041】
周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムは、1回だけでなく、2回以上収縮されてもよい。2回以上収縮する場合には、周期的なドットパターンを有する樹脂フィルムを、収縮性フィルムに貼り合わせて複層フィルムとしてから収縮して;収縮した複層フィルムからドットパターンを有する樹脂フィルムを剥離して;剥離された樹脂フィルムを、再度、収縮性フィルムに貼り合わせて複層フィルムとしてから収縮すればよい。
【0042】
製造されるフィルムの周期的な構造について
本発明の方法により製造される周期的な構造が形成されたフィルムは、周期的なドットを有し、かつ各ドットにしわ状の凹凸を有する。しわ状の凹凸は、一定の方向に繰り返されていることが好ましい。つまり、前記収縮性フィルムの収縮の方向に、しわ状の凹凸が繰り返される。
【0043】
ドットの直径は、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.1~10μmであるが、特に限定されない。
ドットの周期は、好ましくは0.01~100μmであり、より好ましくは0.01~10μmであるが、特に限定されない。
また、しわ状の凹凸の大きさは、特に限定されないが、好ましくは凹凸の幅が0.001~10μm、凹凸の高さが0.001~10μm、凹凸の周期が0.001~10μmであり;より好ましくは凹凸の幅が0.01~1μm、凹凸の高さが0.01~1μm、凹凸の周期が0.01~1μmである。
【0044】
本発明の方法により製造される周期的な構造が形成されたフィルムは、材料やパターンサイズを変えることにより、種々の光学フィルムに適用することができる。例えば、ドットパターンのドット成分を銀やアルミニウムのような反射率の高い材料として、しわ状の凹凸の周期を10~1000nmに制御すれば、偏光反射フィルムとして利用されうる。凹凸と直交する電場ベクトルを有する光の成分は透過し、凹凸構造と平行な電場ベクトルを有する光の成分は反射されるためである。
【0045】
鋳型を形成した収縮性フィルムを、ハニカムパターンを転写する前に収縮させることによって、ハニカムパターンの間隔を狭小化させてもよい。その後ハニカムパターンを転写すれば、周期の短かいドットパターンを形成することができる。
【実施例】
【0046】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0047】
ハニカム状多孔質フィルムの作製
高分子材料としてポリスチレン、および以下に示す両親媒性高分子、ならびに溶媒としてクロロホルムを使用して、ハニカム状多孔質フィルムを作製した。
【0048】
【化1】
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【0049】
(実施例1)
ポリスチレンと上記両親媒性高分子(重量比で10:1)を溶解したクロロホルム溶液(5g/L)5mLを、直径9cmのシャーレにキャストした。その直後に、湿度70%の空気を吹き付けて、非貫通型のハニカム状多孔質フィルムを形成した。
フィルムを形成したシャーレをエタノールに浸漬し、ハニカム状多孔質フィルムを剥離して自己支持性ハニカム状多孔質フィルムを得た。得られたハニカム状多孔質フィルムを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した(図1)。孔が規則的に配置されていることを確認した(周期:8.0μm)。
【0050】
収縮性フィルムへのハニカムパターンの転写
作製した非貫通型のハニカム状多孔質フィルム1を準備して(図2ステップ1)、UVオゾン処理2を行うことで酸化させ、酸化したハニカム状多孔質フィルム3を得た(図2ステップ2)。
酸化したハニカム状多孔質フィルム3の孔が形成されている面を、1.5倍に2軸延伸したアペル8008Tフィルム5に貼り合わせて、複層フィルムとした。複層フィルムを常温常圧で乾燥した後、複層フィルムのハニカム状多孔質フィルム面(孔が形成されていない面)に、ポリジメチルシロキサンエラストマー4を介して応力を加えた(図2ステップ3)。その後、ポリジメチルシロキサンエラストマー4を剥がして、1.5倍に2軸延伸したアペル8008Tフィルム5にピラー構造6を形成した(図2ステップ4)。
【0051】
ピラー構造6が形成されたフィルム5に、イオンスパッタリングによってPt/Pdドット7を堆積させた(図2ステップ5)。Pt/Pdドット7を堆積させたフィルム5から、粘着テープでピラーを剥離して、キサゴナルに配列したドットパターンが形成されたフィルムを得た。得られたフィルムをSEMで観察して、周期が8.0μmのドットパターンを確認した(図3)。
【0052】
一方、Pt/Pdドット7を堆積させたフィルム5からピラー6を剥離することなく、そのフィルムを100℃のホットステージ上で熱処理して収縮させた(図2ステップ6)。収縮後のフィルム5から、粘着テープ8でピラー6を剥離した(図2ステップ7)。ピラー6を剥離したフィルム5(図2ステップ8)をSEMで観察したところ、ドット7の周期が6.5μmに狭小化され、かつ各ドットの表面に、幅約700nm;高さ約300nmのしわ状の凹凸が形成されていることが確認された(図4)。
【0053】
(実施例2)
ポリスチレンと上記両親媒性高分子(重量比で10:1)を溶解したクロロホルム溶液(5g/L)4.5mLをキャストする以外は実施例1と同様の方法で、周期7.8μmのハニカムフィルムを得た。得られたハニカムフィルムと2倍の1軸延伸したアペル8008Tフィルムを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、ドットの周期が3.8μmに狭小化され、かつ各ドットの表面に、数百nmのしわ状の凹凸が形成されていることが確認された(図5)。
【0054】
(実施例3)
ポリスチレンと上記両親媒性高分子(重量比で10:1)を溶解したクロロホルム溶液(5g/L)3mLをキャストする以外は実施例1と同様の方法で、周期5.0μmのハニカムフィルムを得た。得られたハニカムフィルムと2.5倍の1軸延伸したアペル8008Tフィルムを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、ドットの周期が2.0μmに狭小化され、かつ各ドットの表面に、数百nmのしわ状の凹凸が形成されていることが確認された(図6)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、従来は高価な装置を用いなければなし得なかった構造が形成された樹脂フィルムが、簡便かつ安価に提供される。例えば、周期的なドットを有し、各ドット表面にしわ状の凹凸を有する構造を形成された樹脂フィルムが提供される。本発明の製法により提供される樹脂フィルムは、偏光フィルム、偏光反射フィルム、回折格子、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、細胞培養基材等に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】自己組織化手法によって作製したハニカム状多孔質フィルムのSEM像である。
【図2】非貫通型のハニカム状多孔質フィルムを鋳型として用いた場合の転写プロセスを示す。
【図3】ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、2軸延伸したアペル8008Tフィルム上に、Pt/Pdをドットパターニングして得られたドットパターンのSEM像を示す。
【図4】図3に示されたフィルムを収縮させて得られたドットパターンのSEM像を示す。
【図5】ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、2軸延伸したアペル8008Tフィルム上に、Pt/Pdをドットパターニングして得られたドットパターンを形成したフィルムを収縮させて得られたドットパターンのSEM像を示す。
【図6】ハニカム状多孔質フィルムを鋳型として、2軸延伸したアペル8008Tフィルム上に、Pt/Pdをドットパターニングして得られたドットパターンを形成したフィルムを収縮させて得られたドットパターンのSEM像を示す。
図面
【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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