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明細書 :半導体発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4931141号 (P4931141)
公開番号 特開2009-026816 (P2009-026816A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
公開日 平成21年2月5日(2009.2.5)
発明の名称または考案の名称 半導体発光素子
国際特許分類 H01L  33/36        (2010.01)
FI H01L 33/00 200
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2007-185948 (P2007-185948)
出願日 平成19年7月17日(2007.7.17)
審査請求日 平成22年4月7日(2010.4.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
発明者または考案者 【氏名】末宗 幾夫
【氏名】田中 和典
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
【識別番号】100110582、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 昌聰
審査官 【審査官】土屋 知久
参考文献・文献 特開平3-109788(JP,A)
特開平6-168961(JP,A)
I. Suemune et. al.,Superconducyor-Based Quantum-Dot Light-Emmitting Diodes:Role of Cooper Pairs in Generating Entangled Photon Pairs,Jpn. J. of Appl. Phys.,2006年,Vol.45 No.12,p9264-9271
I. Suemune,Prospects of Superconducting Photonics,Ninth International Symposium on Contemporary Photonics Technology,2006年,p39-42
調査した分野 H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上の第1領域に設けられた第1導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた第2導電型の第3半導体層と、
前記第3半導体層上に設けられた超伝導の第1電極および超伝導の第2電極と、
前記第1半導体層上の第2領域に設けられた第3電極と、
前記第1電極が設けられた領域の下方であって前記第2半導体層と前記第3半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域と、
を備え、
前記第1電極のうち前記半導体量子ドット領域の上方部分に貫通孔が設けられ、
前記第1電極と前記第2電極との間に間隙が設けられている、
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた超伝導の第1電極および超伝導の第2電極と、
前記半導体基板の他方の主面上に設けられた第3電極と、
前記第1電極が設けられた領域の下方であって前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域と、
を備え、
前記第1電極のうち前記半導体量子ドット領域の上方部分に貫通孔が設けられ、
前記第1電極と前記第2電極との間に間隙が設けられ、
前記第3電極のうち前記半導体量子ドット領域の下方部分に貫通孔が設けられている、
ことを特徴とする半導体発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体発光素子として発光ダイオードやレーザダイオードが挙げられる。これらの半導体発光素子では、互いに接合されたp型半導体層およびn型半導体層を挟んで一対の電極が設けられており、この一対の電極の間に順バイアス電圧が印加されると、p型半導体層とn型半導体層とのpn接合部の近傍に活性領域が形成され、この活性領域において電子と正孔との対消滅(再結合)によって光が生成される。
【0003】
また、従来より格段に処理速度の速い量子情報処理や安全性の高い量子情報通信に用いるために、レーザ光をパラメトリック下方変換して光子対を生成する方法等,量子もつれ合い(互いに区別することのできない)光子対を生成する技術が開発されてきている(非特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、レーザ光をパラメトリック下方変換する方法では、(a) 光子対を発生するタイミングを制御することができない、(b) 一度にただ一つの光子対だけを生成することができず必ずある確率で複数の光子対が生成されてしまう、(c) 光子対を生成する速度が遅い、という課題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決すべく、超伝導電極において近接効果によって発生した電子クーパー対を半導体量子ドット領域に注入し、この電子クーパー対と2個の正孔とを半導体量子ドット領域において同時に再結合させることによって、2つの互いに区別できない光子を同時に生成する技術が提案されている(非特許文献2を参照)。

【非特許文献1】P. G. Kwiat, K. Mattle, H. Weinfurter, A. Zeilinger, A. V.Sergienko, and Y. Shih, "New high-intensity source ofpolarization-entangled photon pairs," Physical Review Letters, Vol.75,No.24 (1995) pp.4337-4341.
【非特許文献2】I. Suemune, "Prospects of superconducting photonics,"CPT2006 Technical Digest, pp.39-42.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2で提案されている技術では、近接効果による半導体量子ドット領域へのクーパー対の注入の状態は、わずかな温度変化により変化するだけでなく、注入する半導体層の膜厚や抵抗値などによっても変化する。したがって、安定した動作を得るには、半導体層量子ドット領域に注入されたクーパー対の状態を評価することが重要となるが、そのような技術は知られていない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、量子情報処理や量子情報通信に用いるのに好適であって動作評価が可能な半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体発光素子は、基板と、基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上の第1領域に設けられた第1導電型の第2半導体層と、第2半導体層上に設けられた第2導電型の第3半導体層と、第3半導体層上に設けられた超伝導の第1電極および超伝導の第2電極と、第1半導体層上の第2領域に設けられた第3電極と、第1電極が設けられた領域の下方であって第2半導体層と第3半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域とを備え、第1電極のうち半導体量子ドット領域の上方部分に貫通孔が設けられ、第1電極と第2電極との間に間隙が設けられている、ことを特徴とする。ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。基板は、半絶縁性の材料からなるのが好適である。また、基板、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層及び半導体量子ドット領域それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。
【0009】
この半導体発光素子では、超伝導の第1電極と第3電極との間に順バイアス電圧が印加されると、第2半導体層と第3半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から電子クーパー対が注入されるとともに、第2半導体層から正孔が注入され、これら電子クーパー対と正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。或いは、第2半導体層と第3半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から正孔クーパー対が注入されるとともに、第2半導体層から電子が注入され、これら正孔クーパー対と電子とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。また、この半導体発光素子では、2つの超伝導の第1電極および第2電極が間隙を隔てて配置されていて、これら2つの超伝導の電極の間の超伝導電流を評価することにより、半導体層に注入されたクーパー対の状態を評価することができる。
【0010】
或いは、本発明に係る半導体発光素子は、第1導電型の半導体基板と、半導体基板の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、第2半導体層上に設けられた超伝導の第1電極および超伝導の第2電極と、半導体基板の他方の主面上に設けられた第3電極と、第1電極が設けられた領域の下方であって第1半導体層と第2半導体層との間に設けられた半導体量子ドット領域とを備え、第1電極のうち半導体量子ドット領域の上方部分に貫通孔が設けられ、第1電極と第2電極との間に間隙が設けられ、第3電極のうち半導体量子ドット領域の下方部分に貫通孔が設けられている、ことを特徴とする。ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。また、半導体基板、第1半導体層、第2半導体層及び半導体量子ドット領域それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。
【0011】
この半導体発光素子では、超伝導の第1電極と第3電極との間に順バイアス電圧が印加されると、第1半導体層と第2半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から電子クーパー対が注入されるとともに、第1半導体層から正孔が注入され、これら電子クーパー対と正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。或いは、第1半導体層と第2半導体層とのpn接合部には、超伝導の第1電極から正孔クーパー対が注入されるとともに、第1半導体層から電子が注入され、これら正孔クーパー対と電子とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。また、この半導体発光素子でも、2つの超伝導の第1電極および第2電極が間隙を隔てて配置されていて、これら2つの超伝導の電極の間の超伝導電流を評価することにより、半導体層に注入されたクーパー対の状態を評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、量子情報処理や量子情報通信に用いるのに好適であって動作評価が可能な半導体発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係る半導体発光素子の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体発光素子1の構成を示す図である。同図(a)は平面図である。同図(b)は同図(a)のA-A線での断面図である。また、同図(c)は同図(a)のB-B線での断面図である。
【0015】
この図に示されるように、第1実施形態に係る半導体発光素子1は、基板10と、基板10の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層11と、第1半導体層11上の第1領域に設けられた第1導電型の第2半導体層12と、第2半導体層12上に設けられた第2導電型の第3半導体層14と、第3半導体層14上に設けられた超伝導の第1電極15および超伝導の第2電極16と、第1半導体層11上の第2領域に設けられた第3電極17と、第1電極15が設けられた領域の下方であって第2半導体層12と第3半導体層14との間に設けられた半導体量子ドット領域13と、を備える。また、半導体発光素子1は、第1電極15のうち半導体量子ドット領域13の上方部分に貫通孔18が設けられ、第1電極15と第2電極16との間に間隙19が設けられている。
【0016】
第2半導体層12と第3電極17とは、第1半導体層11上の互いに異なる領域に設けられている。図1(a)の平面図で見たとき、第2半導体層12および第3半導体層14は、貫通孔18が設けられた位置(すなわち、半導体量子ドット領域13が設けられた位置)を挟んで両側に延在して設けられていて、両端部分が幅広となっている。同じく平面図で見たとき、第3半導体層14上の第1電極15および第2電極16は、スリット状の間隙19を挟んで各々端部へ向かって延在して設けられていて、両端部分が幅広となってワイヤボンディング用パッド領域となっている。また、同じく平面図で見たとき、第3電極17は、貫通孔18が設けられた位置(すなわち、半導体量子ドット領域13が設けられた位置)の近くに、第2半導体層12および第3半導体層14と接しないように設けられている。
【0017】
ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。基板10は、半絶縁性の材料からなるのが好適である。また、基板10、第1半導体層11、第2半導体層12、第3半導体層14及び半導体量子ドット領域13それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。例えば、基板10はCrドープGaAsからなり、第1半導体層11はp型GaAsからなり、第2半導体層12はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はGaSbからなり、第3半導体層14はn型GaAsからなる。このような構成を有する半導体発光素子1を製造する方法として、例えばMOCVD,MBE,MOMBE等の広範な技術が適宜に採用される。
【0018】
このような半導体発光素子1において、超伝導の第1電極15と第3電極17との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔がp型AlGaAs半導体層12からGaSb半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子クーパー対が超伝導の第1電極15からn型GaAs半導体層14を経てGaSb半導体量子ドット領域13に注入されて、これら電子クーパー対と2個の正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。生成された1対の光子は互いに反対方向に放出されて、一方の光子は貫通孔18を通過して放出され、他方の光子はCrドープGaAs基板10を通過して放出される。
【0019】
半導体量子ドット領域13における一つの量子準位に注入される正孔の数は、フェルミ粒子に対するパウリの排他律により、2個までに制限される。一方、ボーズ粒子であるクーパー対には、そのような個数についての制限はない。したがって、発生する光子の数は、半導体量子ドット領域13の量子準位に注入された正孔の数で決まり、2個となる。半導体量子ドット領域13の量子準位に注入された2つの正孔は、互いに等しいエネルギを有し、区別不可能な状態にある。電子クーパー対は、2つの電子が結合した状態であり、互いに区別できない状態であることから、2つの正孔と同時に再結合する。この再結合により、2つの互いに区別できない光子が同時に発生する。
【0020】
半導体量子ドット領域13の量子準位は複数存在するが、再結合時間より短い幅を持つパルス電流を電極15,17の間に注入すれば、上の準位の正孔から消滅していき、最後に再結合する基底準位の正孔対を用いれば、一度にただ一つの光子対を生成することができる。光子対の生成速度は、パルス電流の繰り返し時間で決まり、再結合時間程度の短時間で繰り返すことができる。
【0021】
n型GaAs半導体層14の厚さは、GaSb半導体量子ドット領域13にクーパー対を注入するための輸送効率で決定され、実測結果から100nm程度である。p型AlGaAs半導体層12のAl組成は、電子クーパー対がこの層に進入するのを防ぐことから決定され、15%程度が必要である。電極15に設けられる貫通孔18の径は、単一の量子ドットからの発光を取り出す条件から決定され、量子ドットの表面密度が1μm平方に1個程度の場合には直径1μm程度が必要である。また、再結合時間は通常1ns程度であり、パルス電流の繰り返しとそれに伴う光子対生成速度とは1GHz程度まで可能である。
【0022】
また、半導体発光素子1において、第3電極17にバイアス電圧が印加されると、n型GaAs半導体層14中の空乏層の厚さが変化し、n型GaAs半導体層14の導電層の厚さが調整され得る。このとき、半導体発光素子1は、いわゆる接合型電界効果トランジスタとして動作する。
【0023】
図2に示されるように、導電層14Aと空乏層14Bとから構成されるn型GaAs半導体層14の厚さが薄い場合は、n型GaAs半導体層14において電子クーパー対注入領域14Cは導電層14Aと一致する。この場合、超伝導の第1電極15と超伝導の第2電極16との間に電流を流すと、電子クーパー対がn型GaAs半導体層14を経て超伝導電極15,16の間に流れるので、電流-電圧特性はジョセフソン電流Iによる超伝導特性を示す。
【0024】
一方、図3に示されるように、n型GaAs半導体層14の厚さが厚い場合は、n型GaAs半導体層14における導電層14Aは、電子クーパー対注入領域14Cと準粒子領域14Dとから構成される。この場合、超伝導の第1電極15と超伝導の第2電極16との間で電流を流すと、電子クーパー対によるジョセフソン電流Iと準粒子の電子によるオーミック電流Iとが混在するので、超伝導電極15,16の間の電流-電圧特性はなまった超伝導特性を示す。
【0025】
ここで、第3電極17にバイアス電圧が印加されると、n型GaAs半導体層14において、空乏層14Bが広がる一方で、導電層14Aが狭くなり、導電層14Aが電子クーパー対注入領域14Cに限定される。すると、図4に示されるように、超伝導電極15,16間を流れるのはジョセフソン電流Iのみとなり、n型GaAs半導体層14の厚さが薄い場合と同様に、電流-電圧特性は明瞭な超伝導特性を示す。また、第3電極17に印加されたバイアス電圧の値からn型GaAs半導体層14の空乏層14Bの厚みを概算することができるので、これによりGaSb半導体量子ドット領域13に電子クーパー対を注入するために適したn型GaAs半導体層14の厚さを確認することができる。
【0026】
なお、基板10、第1半導体層11、第2半導体層12、半導体量子ドット領域13および第3半導体層14それぞれの組成については多種の態様があり得る。例えば、基板10はCrドープGaAsからなり、第1半導体層11はp型GaAsからなり、第2半導体層12はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はZnTeからなり、第3半導体層14はn型ZnSeからなるものであってもよい。この場合には、超伝導の第1電極15と第3電極17との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔がp型AlGaAs半導体層12からZnTe半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子クーパー対が超伝導の第1電極15からn型ZnSe半導体層14を経てZnTe半導体量子ドット領域13に注入されて、これら電子クーパー対と2個の正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【0027】
また、例えば、基板10はCrドープGaAsからなり、第1半導体層11はn型GaAsからなり、第2半導体層12はn型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域13はInPからなり、第3半導体層14はp型GaAsからなるものであってもよい。この場合には、超伝導の第1電極15と第3電極17との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔クーパー対が超伝導の第1電極15からp型GaAs半導体層14を経てInP半導体量子ドット領域13に注入されるとともに、電子がn型AlGaAs半導体層12からInP半導体量子ドット領域13に注入されて、これら正孔クーパー対と2個の電子とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。
【0028】
以上のように、第1実施形態に係る半導体発光素子1は、半導体p-n接合をベースとしつつ、一方の電極に超伝導体を用い、その超伝導体の電極からクーパー対を半導体層に注入するとともに、人造原子とも言われる半導体量子ドットの量子準位を使って、伝導帯または価電子帯の各量子準位に2つの電子または2つの正孔を分布させて、一度にただ一対だけの量子もつれ合い光子対を生成することができる。したがって、この半導体発光素子1は、処理速度の速い量子情報処理や安全性の高い量子情報通信において好適に用いられ得る。また、第1実施形態に係る半導体発光素子1では、2つの超伝導の第1電極および第2電極が間隙を隔てて配置されていて、これら2つの超伝導の電極の間の超伝導電流を評価することにより、半導体層に注入されたクーパー対の状態を評価することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る半導体発光素子の第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る半導体発光素子2の構成を示す図である。同図(a)は平面図である。同図(b)は同図(a)のA-A線での断面図である。
【0030】
この図に示されるように、第2実施形態に係る半導体発光素子2は、第1導電型の半導体基板20と、半導体基板20の一方の主面上に設けられた第1導電型の第1半導体層22と、第1半導体層22上に設けられた第2導電型の第2半導体層24と、第2半導体層24上に設けられた超伝導の第1電極25および超伝導の第2電極26と、半導体基板20の他方の主面上に設けられた第3電極27と、第1半導体層22と第2半導体層24との間に設けられた半導体量子ドット領域23とを備える。また、半導体発光素子2は、第1電極25のうち半導体量子ドット領域23の上方部分に貫通孔28が設けられ、第1電極25と第2電極26との間に間隙29が設けられ、第3電極27のうち半導体量子ドット領域23の下方部分に貫通孔30が設けられている。
【0031】
図5(a)の平面図で見たとき、第1半導体層22および第2半導体層24は、貫通孔28が設けられた位置(すなわち、半導体量子ドット領域23が設けられた位置)を挟んで両側に延在して設けられていて、両端部分が幅広となっている。同じく平面図で見たとき、第2半導体層24上の第1電極25および第2電極26は、スリット状の間隙29を挟んで各々端部へ向かって延在して設けられていて、両端部分が幅広となってワイヤボンディング用パッド領域となっている。
【0032】
ここで、第1導電型および第2導電型のうち、一方はp型であり、他方はn型である。基板20、第1半導体層22、第2半導体層24及び半導体量子ドット領域23それぞれは、化合物半導体からなるのが好適である。例えば、半導体基板20はp型GaAsからなり、第1半導体層22はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域23はGaSbからなり、第2半導体層24はn型GaAsからなる。このような構成を有する半導体発光素子2を製造する方法として、例えばMOCVD,MBE,MOMBE等の広範な技術が適宜に採用される。
【0033】
このような半導体発光素子2において、超伝導の第1電極25と第3電極27との間に順バイアス電圧が印加されると、正孔がp型AlGaAs半導体層22からGaSb半導体量子ドット領域23に注入されるとともに、電子クーパー対が超伝導の第1電極25からn型GaAs半導体層24を経てGaSb半導体量子ドット領域23に注入されて、これら電子クーパー対と2個の正孔とが同時に再結合して、2つの互いに区別できない光子が同時に生成される。生成された1対の光子は互いに反対方向に放出されて、一方の光子は貫通孔28を通過して放出され、他方の光子は貫通孔30を通過して放出される。
【0034】
また、この半導体発光素子2でも、第3電極27にバイアス電圧が印加されると、n型GaAs半導体層24において、空乏層が広がる一方で、導電層が狭くなり、導電層が電子クーパー対注入領域に限定される。すると、超伝導電極25,26間を流れるのはジョセフソン電流のみとなり、電流-電圧特性は明瞭な超伝導特性を示す。また、第3電極27に印加されたバイアス電圧の値からn型GaAs半導体層24の空乏層の厚みを概算することができるので、これによりGaSb半導体量子ドット領域23に電子クーパー対を注入するために適したn型GaAs半導体層24の厚さを確認することができる。
【0035】
なお、第2実施形態においても、基板20、第1半導体層22、半導体量子ドット領域23および第2半導体層24それぞれの組成については多種の態様があり得る。例えば、半導体基板20はp型GaAsからなり、第1半導体層22はp型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域23はZnTeからなり、第2半導体層24はn型ZnSeからなるものであってもよい。或いは、例えば、半導体基板20はn型GaAsからなり、第1半導体層22はn型AlGaAsからなり、半導体量子ドット領域23はInPからなり、第2半導体層24はp型GaAsからなるものであってもよい。
【0036】
以上のように、第2実施形態に係る半導体発光素子2も、第1実施形態に係る半導体発光素子1と同様に、一度にただ一対だけの量子もつれ合い光子対を生成することができ、処理速度の速い量子情報処理や安全性の高い量子情報通信において好適に用いられ得る。また、第2実施形態に係る半導体発光素子2でも、2つの超伝導の第1電極および第2電極が間隙を隔てて配置されていて、これら2つの超伝導の電極の間の超伝導電流を評価することにより、半導体層に注入されたクーパー対の状態を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態に係る半導体発光素子1の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体発光素子1において第3半導体層14が薄い場合に超伝導電極15,16間に流れる電流を説明する図である。
【図3】第1実施形態に係る半導体発光素子1において第3半導体層14が厚く且つ空乏層14Bが薄い場合の超伝導電極15,16間に流れる電流を説明する図である。
【図4】第1実施形態に係る半導体発光素子1において第3半導体層14が厚く且つ空乏層14Bが厚い場合の超伝導電極15,16間に流れる電流を説明する図である。
【図5】第2実施形態に係る半導体発光素子2の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…半導体発光素子、10…基板、11…第1導電型の第1半導体層、12…第1導電型の第2半導体層、13…半導体量子ドット領域、14…第2導電型の第3半導体層、14A…導電層、14B…空乏層、14C…電子クーパー対注入領域、14D…準粒子領域、15…超伝導の第1電極、16…超伝導の第2電極、17…第3電極、18…貫通孔、19…間隙。
2…半導体発光素子、20…基板、22…第1導電型の第1半導体層、23…半導体量子ドット領域、24…第2導電型の第2半導体層、25…超伝導の第1電極、26…超伝導の第2電極、27…第3電極、28…貫通孔、29…間隙、30…貫通孔。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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