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明細書 :サブミクロンハニカム構造の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4682332号 (P4682332)
登録日 平成23年2月18日(2011.2.18)
発行日 平成23年5月11日(2011.5.11)
発明の名称または考案の名称 サブミクロンハニカム構造の製造法
国際特許分類 B29C  41/12        (2006.01)
C08J   9/28        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
B29K 105/04        (2006.01)
FI B29C 41/12
C08J 9/28 CEW
C08J 9/28 CEY
B82B 3/00
B29K 105:04
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2006-532591 (P2006-532591)
出願日 平成17年8月25日(2005.8.25)
国際出願番号 PCT/JP2005/015456
国際公開番号 WO2006/022341
国際公開日 平成18年3月2日(2006.3.2)
優先権出願番号 2004247852
優先日 平成16年8月27日(2004.8.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年7月15日(2008.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】下村 政嗣
【氏名】藪 浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
【識別番号】100131587、【弁理士】、【氏名又は名称】飯沼 和人
審査官 【審査官】原田 隆興
参考文献・文献 特開平08-311231(JP,A)
特開2001-157574(JP,A)
特開2003-294905(JP,A)
特開2005-232238(JP,A)
調査した分野 B29C 41/12
C08J 9/28
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含む、直径10~00nmの細孔を有する、非水溶性ポリマーからなる厚さ10~1000nmのハニカム状多孔質体の製造方法。
1)50dyn/cm以下の表面張力γLを有する水不和合性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解して非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を調製する工程;
2)工程1)で調製された前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を基板の表面に塗布する工程、
ここで、前記基板の表面張力γSは、前記水不和合性有機溶媒の表面張力γLならびに前記基板と前記水不和合性有機溶媒との間の表面張力γSLに対してγS-γSLγLの関係を満たし、
前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜厚は、1~50μmである
3)工程2)で前記基板上に塗布された前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液に相対湿度30%以上の空気を接触させて、前記水不和合性有機溶媒を蒸発させる工程、
ここで、前記水不和合性有機溶媒の蒸発速度は、前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の前記基板表面への塗布時の液膜厚が1秒以内に1/5にまで減少する速度である。
【請求項2】
工程2)は、
前記基板を一軸方向に移動させながら、前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を前記基板の表面に塗布する工程と、
前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を塗布された基板を、前記基板との間隙が1~50μmとなるように設置された金属板の下側をくぐらせる工程と、
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、ガラス板もしくは金属板である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程3)は、前記基板の表面に塗布された前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を、相対湿度30%以上の湿度を有する流速10~100L/分の気流に接触させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記水不和合性有機溶媒は、フッ化炭素溶媒である、請求項1に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
微細な周期構造を持つ薄膜は、様々な分野において有用な材料である。電子材料の分野では、電界トランジスタのチャネルの微細化が求められており、実際に100nm以下の作製プロセスが実用化されている(ゲルジンゲら、IEEEスペクトラム(IEEE Spectrum)1989年、第89巻、第43頁)。光学材料の分野では、回折格子やフォトニック結晶などが、次世代の光機能素子として注目されている(ノダら、ネイチャー(Nature)、2000年、第407巻、第608頁)。また光の波長以下の周期構造は可視光領域で透明であり、光の散乱などを防止する効果が期待できる。また、近年再生医療分野においても、表面の微細構造が培養細胞に影響を与えるなどの報告がなされている(チェンら、サイエンス(Science)、1997年、第276巻、1425頁)。
【背景技術】
【0002】
従来、サブミクロンサイズのハニカム状構造体を作製する技術としては、フォトリソグラフィーやソフトリソグラフィー(ホワイトサイドら、Angew.Chem.Int.Ed.,1998年、第37巻、第550-575頁)などが知られている。このように物質を細かく切断することにより作製する微細化プロセスは、トップダウン型の作製プロセスと呼ばれる。一般的に、トップダウン型の作製プロセスは分子間の結合を切断することに基づいているため、本質的に高エネルギーが必要である。そのため、これらの方法は多段階で高コストのプロセスであり、また回折限界などの問題から、単純な周期構造を作製する方法としては解決すべき問題が多い。
【0003】
これに対して、材料を分子レベルから積み上げることで微細周期構造を作製する試みがなされている。例えば、10nmスケールの微細構造作製プロセスとして、ブロックコポリマーの相分離が知られている(アルブレヒトら、マクロモレキュール(Macromolecules)、2002年、第35巻、第8106-8110頁)。また、フランソワら(Nature、1994年、第369巻、第387頁)はポリスチレン-ポリパラフェニレン(PS-PPP)ブロックコポリマーからなる規則的な形態を有する構造体の調製を報告している。相溶性の異なる高分子の末端を共有結合でつなげたブロックコポリマーは、相溶性と各セグメントの長さによって、相分離構造の周期を可変できる。しかしながらこの方法も複雑な有機合成プロセスが必要であり、合成できるブロックコポリマーも限られている。
【0004】
さらに、サブミクロンのコロイド微粒子を集積することで、2次元、3次元の周期構造が作製する方法(グら、ラングミュア(Langmuir)、第17巻)、これを鋳型にすることでインバースドオパール構造を作製する方法(カルソら、ラングミュア(Langmuir)、1999年、第15巻、第8276-8281頁)が報告されているが、いずれも、単一粒径の微粒子を調製しなくてはならず、また、型を取った後に鋳型を分解しなくてはならないなど、様々なプロセス上の問題がある。
【0005】
これらの方法とは異なる原理に基づくものとして、水滴を鋳型として簡便にハニカム状多孔質体を作製する方法が報告されている(特開平8-311231)。具体的には、高分子の非水性有機溶媒溶液表面上に水滴を結露させ、該水滴を鋳型としてハニカム状の多孔質体を調製するものである。また、特開2001-157574にはポリL-乳酸のクロロホルム溶液をガラス基板にキャストしたのち、徐々に溶媒を飛ばすことでハニカム状多孔質体を製造する方法が開示されている。ここでハニカム状多孔質体とは、高分子(ポリマー)からなる薄膜構造体であって、膜の垂直方向に向けられた微小な孔あるいは窪みが構造体の平面方向に蜂の巣状に設けられているものを意味する。本発明におけるハニカム状多孔質体も同じである。
【0006】

【特許文献1】特開平8-311231
【特許文献2】特開2001-157574
【非特許文献1】ゲルジンゲら、IEEEスペクトラム(IEEE Spectrum)1989年、第89巻、第43頁
【非特許文献2】ノダら、ネイチャー(Nature)、2000年、第407巻、第608頁
【非特許文献3】チェンら、サイエンス(Science)、1997年、第276巻、1425頁
【非特許文献4】ホワイトサイドら、Angew.Chem.Int.Ed.,1998年、第37巻、第550-575頁
【非特許文献5】アルブレヒトら、マクロモレキュール(Macromolecules)、2002年、第35巻、第8106-8110頁
【非特許文献6】フランソワら、Nature、1994年、第369巻、第387頁
【非特許文献7】グら、ラングミュア(Langmuir)、第17巻
【非特許文献8】カルソら、ラングミュア(Langmuir)、1999年、第15巻、第8276-8281頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この水滴を鋳型とする方法では、0.2μm以下のサイズの孔径を有するハニカム状多孔質体は製造できないと報告されている。本発明の目的は、水滴を鋳型とする方法において、200nm以下の周期を持つハニカム状多孔質体とその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水滴を鋳型とするハニカム状多孔質体の作製方法において、溶媒の蒸発時間を制御すること、具体的にはより短時間で溶媒を蒸発させることで、多孔質体の孔径を10~200nmというレベルで制御できることを見出し、下記の本発明を完成した。
【0009】
本発明の方法は、水滴を鋳型とする従来のハニカム状多孔質体の製造法において、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液から溶媒を蒸発させる時間を制御することで、鋳型となる水滴のサイズを調節し、孔径を200nm以下に制御するものである。
【0010】
具体的には、本発明は以下のa)~e)に関する。
【0011】
a)以下の工程を含む、直径10~200nmの細孔を有する、非水溶性ポリマーからなる厚さ10~1000nmのハニカム状多孔質体の製造方法。
【0012】
1)50dyn/cm以下の表面張力γLを有する水不和合性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解して非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を調製する工程;
2)工程1)で調製された前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を基板の表面に塗布する工程、ここで、前記基板の表面張力γSは、前記水不和合性有機溶媒の表面張力γLならびに前記基板と前記水不和合性有機溶媒との間の表面張力γSLに対してγS-γSLγLの関係を満たし、前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜厚は、1~50μmである
3)工程2)で前記基板上に塗布された前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液に相対湿度30%以上の空気を接触させて、前記水不和合性有機溶媒を蒸発させる工程、ここで、前記水不和合性有機溶媒の蒸発速度は、前記非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の前記基板表面への塗布時の液膜厚が1秒以内に1/5にまで減少する速度である。
【0013】
b)工程2)において基板に塗布される非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜厚が1μm~100μmである、a)に記載の製造方法。
【0014】
c)工程2)が基板を一軸方向に移動させながら非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を基板の表面に塗布することにより行われる、a)に記載の製造方法。
【0015】
d)基板がガラス板もしくは金属板である、a)に記載の方法。
【0016】
e)工程3)が基板の表面に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液ポリマー溶液を相対湿度30%以上の湿度を有する流速10~100L/分の気流に接触させる工程である、a)に記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明のハニカム状多孔質体(孔径100nm)の拡大図である。
【図2】図2は本発明のハニカム状多孔質体の一部(孔径20nm)の拡大図である。
【図3】図3は本発明のハニカム状多孔質体を連続的に製造する装置を示す。
【図4】図4は本発明のハニカム状多孔質体の拡大図である。
【図5】図5は本発明のハニカム状多孔質体(孔径150nm)の拡大図である。
【図6】図6は本発明のハニカム状多孔質体(孔径200nm)の拡大図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な態様としては、ガラス製または金属製の基板の表面に非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を塗布して液膜を調製し、この液膜に相対湿度30%以上の湿度を有する空気を流速10~100L/分の範囲で接触させることにより水不和合性有機溶媒を急速に蒸発させ、水滴の成長を200nm以下とすることによりハニカム状多孔質体の孔の径を200nm以下に制御するものである。
【0019】
本発明の製造方法を構成する工程1)は、50dyn/cm以下の表面張力γLを有する水不和合性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解して非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を調製する工程である。
【0020】
本発明で利用することのできる水不和合性有機溶媒としては、50dyn/cm以下の表面張力を有し、かつ該溶液表面に結露した水滴を保持し得る程度の水不和合性と、大気圧下の沸点が0~150℃、好ましくは10~50℃であれば、何れも利用可能である。具体的には、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性のケトン類、二硫化炭素などを挙げることができる。
【0021】
これらの中から、具体的に使用する非水溶性ポリマーに対する溶解性を考慮して、適宜選択して使用することができる。
【0022】
また、フッ素化アルキルを側鎖に持つポリアクリレートやメタクリレートの側鎖の水素をフッ素に置換したフッ素系ポリマーを用いてハニカム状多孔質体を製造する際には、フッ素系の有機溶媒(AK-225等)の使用も良好な結果を与える。
【0023】
本発明で使用する非水溶性ポリマーは、水に不溶性でかつ上記の水不和合性有機溶媒に可溶な、あるいは適当な界面活性剤の存在下で水不和合性有機溶媒に溶解し得るポリマーであれば特別の制限はなく、製造されるハニカム状多孔質体に期待される機能、特性を与え得る非水溶性ポリマーを適宜選択して使用することができる。
【0024】
例えば、ポリ乳酸やポリヒドロキシ酪酸のような生分解性ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、両親媒性ポリマー、光機能性ポリマー、電子機能性ポリマーなどを挙げることができる。
【0025】
上記の水不和合性有機溶媒と非水溶性ポリマーとの具体的な組み合わせの例としては、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアルキルシロキサン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアルキルアクリルアミド、およびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、二硫化炭素などの有機溶媒を組み合わせて使用することができる。また、フッ素化アルキルを側鎖に持つアクリレート、メタクリレートおよびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、AK-225(旭硝子株式会社製)などのフッ化炭素溶媒、トリフルオロベンゼン、フルオロエーテル類などの使用も良好な結果を与える。
【0026】
本発明では、水不和合性有機溶媒に溶解し得る非水溶性ポリマーを、同溶媒に対して0.1g/L~10g/Lに溶解して使用することが好ましい。ここで、溶液中の非水溶性ポリマー濃度は、製造されるハニカム状多孔質体に求める特性、物性並びに使用する水不和合性有機溶媒に応じて、適宜定めることができる。
【0027】
本発明を構成する別の工程は、上記工程1)で調製される非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を基板表面に塗布する工程である。ここで該基板表面の表面張力γSは、塗布される水不和合性有機溶媒の表面張力γLならびに該基板と該溶媒との間の表面張力γSLに対して、γS-γSLγLの関係を満たす。ここでγSは基板表面の表面張力を表し、γSLは基板と該溶媒との間の表面張力を表す。

【0028】
本発明の場合、非水溶性ポリマー溶液の水不和合性有機溶媒溶液を塗布する基板自体の、用いられる水不和合性有機溶媒に対する濡れ性が、基板上に形成される液膜の厚みに影響を与え得る。そのため、基板には、塗布される非水溶性ポリマー溶液の水不和合性有機溶媒溶液との親和性が高いものであることが好ましく、具体的には、水不和合性有機溶媒の表面張力γLを指標にして上記式で表すことのできる表面張力を示す表面を有する基板を利用すればよい。そのような基板の好適な例としては、ガラス板、シリコン製板あるいは金属板などを挙げることができる。
【0029】
また、水不和合性有機溶媒溶液との親和性を高めることのできる加工を表面に施した基板の使用も可能である。この様な基板表面の濡れ性の改良は、基板と使用する水不和合性有機溶媒に合わせて、自体公知の方法、例えばガラス製や金属製の基板に対してはそれぞれシランカップリング処理やチオール化合物による単分子膜形成処理方法などを利用することができる。
【0030】
例えば、クロロホルムなどの疎水性有機溶媒を水不和合性有機溶媒として用いる場合の基板としては、十分に洗浄されたSi基板や、アルキルシランカップリング剤などで表面を修飾したガラス基板などの使用が好ましい。また、フッ素系溶媒を用いる場合は、テフロン(登録商標)基板、あるいはフッ素化アルキルシランカップリング剤などで修飾したガラス基板などの使用が好ましい。
【0031】
本発明では、上記に例示したような非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を基板に塗付して、同溶液の液膜を形成させるが、その際の液膜厚としては1μm~100μm、好ましくは30μm以下とすることが望ましい。
【0032】
基板に非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を塗付する方法としては、基板に同溶液を滴下する方法の他、バーコート、ディップコート、スピンコート法などを挙げることができ、バッチ式、連続式の何れも利用することができる。
【0033】
本発明では、微細孔を有するハニカム状多孔質体を製造するという観点から、移動可能な基板に非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を塗付して液膜を調製する方法が好ましい。例えば、概ね図3に示すような構造を有する装置を利用することで、かかる方法を実施し得る。図3の装置は、所定の速度で図の右から左方向に移動可能な基板1と、基板1上に設けた金属板2と、所定の相対湿度を有する空気を吹き付けるノズル3を有している。ここで、金属板2は、所望の液膜厚に相当する間隙を伴って基板1の上に設置される。
【0034】
この装置では、非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を塗付した基板1を金属板の下側をくぐらせることで、基板1に塗付された液膜の厚さを基板1と金属板2との間隙とほぼ等しい厚みへと調整することができる。また、金属板2と基板との間隙を調節して基板上の液膜の厚みを変化させることによっても、ハニカム状多孔質体に形成させる孔の径を制御することも可能である。基板1の移動速度は、0.1μm~10mm/秒、特に1~5mm/秒へと調節することが望ましい。
【0035】
この方法を用いると、基板上に形成されるハニカム状多孔質体を連続的に基板から回収することができるので、本発明のハニカム状多孔質体の工業的生産方法としても有利である。
【0036】
本発明を構成する工程の一つは、前記工程2)で基板表面に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を相対湿度30%以上の空気に接触させて水不和合性有機溶媒を蒸発させる工程である。ここで溶媒の蒸発速度は非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の基板表面への塗布時の液膜厚が1秒以内に1/5にまで減少する速度である。
【0037】
従来法のように、非水溶性ポリマーの有機溶媒溶液を相対湿度の高い環境中に放置して、該溶媒表面への結露と有機溶媒の蒸発を待つのでは、水滴の径を200nm以下に制御することはできず、その結果、200nm以下、特に10~100nmの細孔を有するハニカム状多孔質体を製造することはできない。
【0038】
本発明では、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液を相対湿度が30%以上である空気に接触させて水不和合性有機溶媒溶液を速やかに蒸発させるとともに、溶液表面で結露する水滴の成長を抑制して、ハニカム状多孔質体に200nmより小さい孔、好ましくは10~100nmの孔を設けるものである。
【0039】
これを実施する方法としては、基板上に塗布した非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜の面方向に対してほぼ平行ないし上方向に10L(リットル)/分以上の空気層の流れを形成して水不和合性有機溶媒を蒸発させる方法、不和合性有機溶媒の沸点未満かつ液膜に接触する空気の露点未満で非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液が塗布された基板を加熱(例えばベルチェ素子を用いて加熱)して水不和合性有機溶媒を蒸発させる方法、あるいは不和合性有機溶媒の沸点ならびに液膜に接触する空気の露点を超えないような減圧下に基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液をおいて水不和合性有機溶媒を蒸発させる方法、等を挙げることができる。ここで、露点とは、ある温度におかれた空気の中に含まれている水蒸気が飽和に達して凝結する温度をいい、相対湿度と絶対温度に対して定まる値である。
【0040】
本発明の好適な例としては、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜に対してほぼ平行ないし上方向に相対湿度30%以上の湿度を有する流速10~100L/分の気流を発生させることである。気流の流速は、用いる水不和合性有機溶媒の揮発度や基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜の厚さに応じて適宜調製すればよいが、概ね10L~100L/分、好ましくは10L~50L/分とすればよい。また気流は、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜に対して斜め上方向から、あるいは垂直方向から気流を当たるような配置では、気流による風圧によって液膜に歪みや亀裂が発生することもあり得る。その様な場合には、気流は基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不和合性有機溶媒溶液の液膜に平行に、あるいは上方向に生じさせることが好ましい。この場合、気流はその上流からの陽圧あるいは下流からの負圧の何れによって発生させても構わない。例えば、基板に向けて設置したノズルから所定の空気を噴射しても、基板上部の空気を一方向から吸引しても、何れでも良い。
【0041】
以下に実施例を示し、本発明の詳細を説明する。ただし、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0042】
フッ素樹脂化合物である下記式1の化合物(特開2000-143726号)のAK-225溶液を1.0g/Lの濃度で調製した。この溶液30μLをガラス基板上に滴下し、これを相対湿度40%を有する空気(流速10L/分)に対して平行に置いた。
【0043】
溶媒は瞬時に(1秒以内に)蒸発し、垂直方向から目視観察して透明な薄膜を与えた。この作製された薄膜中に形成された構造を走査型電子顕微鏡で観察を行った結果、孔径100nm以下のハニカム構造が形成されていることが観察された(図1)。さらに、エッジ部分では最小20nm程度の孔も観察された(図2)。
【0044】
【化1】
JP0004682332B2_000002t.gif

【実施例2】
【0045】
100nm以下の孔径の細孔を有するハニカム状多孔質体の薄膜を連続製造するために、図3に示す装置を組み立てた。図3の装置において、基板1は、フッ素化アルキルシランカップリング剤である1H,1H,2H,2H,パーフルオロオクチルトリクロロシラン(アズマックス社)によって処理し、フッ素コート化した洗浄済みガラス基板を用いた。また、金属板2を、基板1上に50μmの間隙を伴って設置した。
【0046】
実施例1と同じ有機溶媒溶液を塗付した基板1を図の右から左に向けて2mm/秒の速度で移動させ、基板上の薄膜の厚みを50μmに調整した後、ノズル3から相対湿度40%を有する空気(流速10L/分)を供給した。この方法により、100nm以下の孔径を有するハニカム状多孔質体が連続的に製造された(図4)。
【0047】
また、上記の方法において金属板2の位置を調整して液膜を75μmあるいは100μmnとすることで、150nmの孔径(図5)ならびに200nmの孔径(図6)を有するハニカム状多孔質体を得た。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5