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明細書 :医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2008-184406 (P2008-184406A)
公開日 平成20年8月14日(2008.8.14)
発明の名称または考案の名称 医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/662       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/662
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2007-018337 (P2007-018337)
出願日 平成19年1月29日(2007.1.29)
発明者または考案者 【氏名】エルンスト ホーン
【氏名】眞島 恵介
出願人 【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
個別代理人の代理人 【識別番号】100085419、【弁理士】、【氏名又は名称】大垣 孝
【識別番号】100141955、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 宏之
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086HA09
4C086HA28
4C086MA01
4C086NA14
4C086ZB26
要約 【課題】より強い抗癌活性を有する医薬組成物をより安価に提供する。
【解決手段】この発明の医薬組成物は、癌治療用であって、かつマンガンを中心金属とする金属錯体であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brを有効成分として含有している。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
Mn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brを有効成分として含有することを特徴とする癌治療用医薬組成物。
【請求項2】
生理学的に許容される担体、希釈剤及び賦形剤のいずれか又はこれらを組み合わせて含有することを特徴とする請求項1に記載の癌治療用医薬組成物。
【請求項3】
ヒト又は動物の癌を治療するための医薬を製造するための請求項1又は2に記載の癌治療用医薬組成物の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、医薬組成物に関し、特に抗癌活性を有する有機金属錯体であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Br(以下、単にMn(CO)3(dppp)Brとも記載する。ここで又は以下、dpppとは1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを意味する。)を有効成分とする癌(悪性腫瘍)治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガンを含む有機金属錯体を、酸化ストレスに起因する疾患及び癌の治療に使用する例が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、例えばMn(CO)3(1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)Br及びMn(CO)3(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)Brといったマンガン金属錯体の合成、赤外線分光解析、及びX線構造解析に関する研究成果が本発明者らにより研究集会において発表されている(例えば、非特許文献1参照。)。

【特許文献1】特表2006-520752号公報
【非特許文献1】XXXVIth International Conference on Coordination Chemistry, book of abstracts
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆる抗癌剤として、従来、シスプラチン(シス-ジアンミンジクロロ白金(II))といった白金製剤が用いられている。このような白金製剤は、貴金属である白金(プラチナ)を中心金属として含んでいる。すなわち白金を中心金属とする金属錯体を有効成分として含有している。従って、白金製剤は、高価である。
【0005】
そこで、この発明の目的は、白金製剤と同等、又はそれ以上の生理活性、すなわち抗癌活性を有する医薬組成物をより安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題点を解決するために、本発明者らは鋭意研究を進める中で、マンガンを中心金属とする有機金属錯体であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brに、癌細胞に対する極めて高い増殖阻害活性、すなわち抗癌活性があることを見い出し、この発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、この発明の医薬組成物は、特に癌治療に適用して好適であり、かつMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brを有効成分として含有している。
【0008】
この発明の医薬組成物の有効成分であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brは中心金属がマンガンであるため、極めて安価に製造することができる。
【0009】
この発明の医薬組成物は、好ましくは例えば、さらに生理学的に許容される担体、希釈剤及び賦形剤のいずれか又はこれらを組み合わせて含有するのがよい。
【0010】
この発明の医薬組成物は、ヒト又は動物の癌を治療するための医薬を製造するために使用して好適である。
【0011】
この発明の医薬組成物の有効成分であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brは、動物、特にヒトの癌細胞に対して、極めて優れた抗癌活性、すなわち増殖阻害活性を有している。よって、この発明の医薬組成物は特にヒトの癌治療に適用される医薬の製造に好適であると考えられる。
【発明の効果】
【0012】
この発明のMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brを有効成分とする医薬組成物によれば、従来の金属錯体を有効成分とする組成物、すなわち抗癌剤と比較して、より高い抗癌活性を有する医薬組成物をより安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態につき説明する。なお、以下の説明において、特定の材料、条件及び数値条件等を用いることがあるが、これらは好適例の1つに過ぎず、従って、この発明は何らこれらに限定されない。
【0014】
この発明の医薬組成物の有効成分であるMn(CO)3(dppp)Brは、癌細胞に対する極めて優れた増殖阻害活性、すなわち抗癌活性を有している。従って、Mn(CO)3(dppp)Brを有効成分として含有するこの発明の医薬組成物は、いわゆる抗癌剤として使用して好適である。
【0015】
Mn(CO)3(dppp)Brは、動物、特にヒト由来の癌細胞に対して、極めて優れた抗癌活性を有している。よって、この発明の医薬組成物は特にヒトの癌治療に適用される医薬の製造に好適であると考えられる。
【0016】
また、ここでいう癌治療において、この発明の医薬組成物を適用して好適な癌(悪性腫瘍)の種類については特に限定されない。
【0017】
この発明の医薬組成物は、有効成分であるMn(CO)3(dppp)Brと、通常製剤化に用いられ、かつ生理学的に許容される任意好適な薬剤用担体、希釈剤、賦形剤その他の添加剤を単独又は任意好適に組み合わせたものを用い、常法に従って所望の性状に調製することができる。
【0018】
この発明の医薬組成物を経口投与する場合には、好ましくは例えば錠剤、丸剤、カプセル、顆粒剤、散剤、或いは液剤といった任意好適な剤形で行うことができる。
【0019】
また、この発明の医薬組成物を非経口投与とする場合には、好ましくは静注、筋注等の注射剤、座剤、又は経鼻、経粘膜、若しくは経皮といった所望の投与態様に好適な剤形とすることができる。
【0020】
この発明の医薬組成物を経口投与する場合には、好ましくは例えば錠剤、散剤、又は顆粒剤といった性状として用いられる。
【0021】
このような経口投与のための医薬組成物においては、有効成分であるMn(CO)3(dppp)Brを、不活性な希釈剤、好ましくは例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む群から選択される1又は2以上の成分と混合するのがよい。
【0022】
また、この発明の医薬組成物は、上述した従来公知の希釈剤以外の添加剤、好ましくは例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤や繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。
【0023】
この発明の医薬組成物を錠剤又は丸剤といった固形状に調製する場合には、所望により好ましくは例えばショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
【0024】
また、この発明の医薬組成物を液体状に調製する場合には、好ましくは例えば薬剤学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤のいずれか又はこれらを任意好適に組み合わせて溶解又は含有させることができる。
【0025】
また、この発明の医薬組成物は、一般的に用いられる不活性な液体状の希釈剤、好ましくは例えば精製水、エタノールに含有させてもよい。
【0026】
さらにまた、この発明の医薬組成物は、上述したような不活性な希釈剤以外に、好ましくは例えば湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、香味剤、芳香剤及び防腐剤のいずれか又はこれらを任意好適な組み合わせで含有していてもよい。
【0027】
この発明の医薬組成物を注射剤として調製する場合には、好ましくは例えば無菌の水性或いは非水性の溶液剤、懸濁剤、及び乳濁剤のいずれか又はこれらの任意好適な組み合わせとして混合するのがよい。
【0028】
このような水性の溶液剤、懸濁剤としては、好ましくは例えば注射用蒸留水又は生理食塩水を用いるのがよい。
【0029】
非水溶性の溶液剤、懸濁剤としては、好ましくは例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油といった植物油、エタノールといったアルコール類、及びポリソルベート80といった非イオン性界面活性剤のいずれか又はこれらを任意好適に組み合わせて用いるのがよい。
【0030】
この発明の医薬組成物は、好ましくはさらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等といった補助剤を含んでいてもよい。
【0031】
この発明の医薬組成物は、好ましくは例えばフィルタを通す濾過処理、殺菌剤の配合又は紫外線といった光線照射処理によって無菌化しておくのがよい。
【0032】
また、この発明の医薬組成物を無菌の固体組成物とし、使用前に無菌化処理した水又は無菌化した注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0033】
この発明の医薬組成物の投与対象に対する投与量は、年令、性別、体重等を考慮して個々の症状に応じて適宜決定することができる。
【0034】
実施例1
Mn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brの合成
この発明の医薬組成物の有効成分であるMn(CO)3(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)Brは、R.J. Angeliciらの方法(R.J. Angelici, F. Basolo, A.J. Poe, J. Am. Chem. Soc. 85 (1963) 2215を参照されたい。)を参考にして以下の工程により合成した。
【0035】
まず、出発物質としてMn(CO)5Br 0.1 g (3.75×10-4 mol)(STREM CHEMICALS製)を、溶媒であるトルエン20 mlに溶かしてMn(CO)5Br溶液を調製した。
【0036】
dppp 4.125×10-4 Mを溶媒であるトルエン20 mlに溶かしてdppp溶液を調製した。
【0037】
調製したMn(CO)5Br溶液及びdppp溶液を混合し、約100℃で還流しながら反応させた。
【0038】
この反応は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)(日本分光株式会社製)でIRスペクトルを測定してMn(CO)3(dppp)Brに特徴的な波長のピークを検出しつつ進行させる。
【0039】
FT-IRで測定したIRスペクトルでMn(CO)3(dppp)Brに特徴的な波長のピークの高さが変化しないようになった時点で反応を停止させた。
【0040】
ロータリーエバポレータで溶媒を濃縮し、明るい黄色の固形物としてMn(CO)3(dppp)Brを得た。フィルタで集めた固形物をトルエンに溶かし、ロータリーエバポレータで再濃縮して得られた固形物を再度フィルタで集めた。
【0041】
これらの操作を数回繰り返して、未反応の出発材料等を取り除き、Mn(CO)3(dppp)Brを精製した。
【0042】
精製終了後、綺麗な結晶が得られるまで結晶化工程を繰り返し行った(この結晶化工程については後述する。)。なお、収率は70%から80%程度の範囲内であった。
【0043】
上記工程で得られた固形物の同定は、X線結晶解析により行った。
【0044】
まず、得られた固形物を結晶化工程により結晶とした。得られた固形物、すなわち得られたMn(CO)3(dppp)Brをジクロロエタンに溶かし、溶けない固形物をフィルタで除いた後、冷蔵庫(4℃)の中で遮光して放置することにより結晶を得た。
【0045】
得られた結晶をX線回折法を用いる常法に従うX線結晶解析により構造決定した。
【0046】
表1、図1(A)及び(B)にその結果を示す。表1は、X線結晶解析データを示す表である。
【0047】
【表1】
JP2008184406A_000002t.gif

【0048】
図1(A)は得られた結晶の解析結果である結晶構造(3次構造)を示す図であり、図1(B)は一分子の3次構造を示す図である。
【0049】
以上のように得られた結晶にはMn(CO)3(dppp)Brが含まれている。すなわち既に説明した工程によりMn(CO)3(dppp)Brが得られたことが確認された。
【0050】
実施例2
ヒト癌細胞(培養細胞株)に対する増殖阻害活性の測定
1)溶解液の調製
得られたMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチン(ALDRICH製)それぞれを、溶媒であるDMSO(Dimethyl Sulfoxide)に溶解して、Mn(CO)3(dppp)Br溶解液、Mn(CO)5Br溶解液、dppp溶解液及びシスプラチン溶解液を調製した。
【0051】
2)細胞株
ヒト子宮頚癌から樹立された上皮様の細胞株であるHeLa細胞、ヒト白血病T細胞から樹立された細胞株であるMOLT-4細胞及びJurkat細胞を使用した。
【0052】
3)培養条件
これらの細胞株は、5%炭酸ガスを含む大気下、37℃のCO2インキュベータで培養した。
【0053】
HeLa細胞は、10%ウシ胎児血清と抗生物質とを含むDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)培地(Sigma-ALDRICH製)で培養した。
【0054】
また、MOLT-4細胞及びJurkat細胞は、いずれも非働化した10%ウシ胎児血清と抗生物質とを含むRPMI-1640培地(Sigma-ALDRICH製)で培養した。
【0055】
4)増殖阻害活性の測定
測定は以下の手順で行った。
【0056】
i)既に説明した3種の細胞を、12ウエルプレートの各ウエルに1ウエルあたり5×104個となるように、既に説明した培地0.995 mlとともに加えた。
【0057】
ii)各ウエルに、測定対象である既に説明したMn(CO)3(dppp)Br溶解液、Mn(CO)5Br溶解液、dppp溶解液及びシスプラチン溶解液それぞれを、Mn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの最終濃度が0μM(サンプル0:コントロール)、5μM(サンプル1)、10μM(サンプル2)、及び20μM(サンプル3)になるように5μlを加えた。
【0058】
iii)既に説明した培養条件で48時間培養した後、生存している細胞の数をヘモサイトメータ(サンリード硝子有限会社)で顕微鏡下で直接数えることにより生存率を割り出した。1つのサンプルについて、少なくとも3回以上の実験を行いデータを収集した。
【0059】
5)測定結果
以下に、図2、図3及び図4を参照して、上述した手順で行われた測定結果(増殖阻害活性)につき説明する。
【0060】
なお、各図面に示したグラフは、横軸に測定対象の濃度(μM)及び縦軸に生存率(%)を表している。得られた結果の平均値をプロットし、各プロットに付されたエラーバーは得られた結果の最大値と最小値の範囲を示している。
【0061】
i)MOLT-4細胞
図2は、MOLT-4細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
【0062】
グラフAはMn(CO)3(dppp)Brの測定結果を示しており、グラフBはシスプラチンの測定結果を示しており、グラフCはdpppの測定結果を示しており、及びグラフDはMn(CO)5Brの測定結果を示している。
【0063】
シスプラチンがMOLT-4細胞の増殖を50%阻害する濃度(以下、細胞の増殖を50%阻害する測定対象の濃度を単にIC50と表記する。)は、6.8 μMであると報告されている。
【0064】
グラフBからも理解されるように、シスプラチンのMOLT-4細胞に対するIC50を求めたところ、約6.5 μMと、既に報告されているIC50とほぼ同じ値が得られた。
【0065】
グラフCに示すように、dpppは、シスプラチンと同程度のIC50を有することがわかった。
【0066】
グラフDに示すように、Mn(CO)5Brは、20 μM以下の濃度において、MOLT-4細胞の増殖にはほとんど影響を及ぼさなかった。
【0067】
グラフAに示すように、Mn(CO)3(dppp)Brは、dppp及びMn(CO)5Brのいずれよりも強くMOLT-4細胞の増殖を阻害した。
【0068】
Mn(CO)3(dppp)Brの増殖阻害活性はシスプラチンの増殖阻害活性よりも極めて強く、10 μMでMOLT-4細胞はほとんど増殖できなかった。IC50を算定すると約2.7 μMとなった。
【0069】
図3は、Jurkat細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
【0070】
グラフAはMn(CO)3(dppp)Brの測定結果を示しており、グラフBはシスプラチンの測定結果を示しており、グラフCはdpppの測定結果を示しており、及びグラフDはMn(CO)5Brの測定結果を示している。
【0071】
グラフBに示すように、シスプラチンは、実験した濃度の範囲ではJurkat細胞の増殖を強く阻害することはなかった。Jurkat細胞に対するIC50は、本実験では算定することができなかった。
【0072】
この結果は、Jurkat細胞はMOLT-4細胞と同様のヒト白血病由来の細胞株であってもシスプラチンに対して耐性を有していることを示している。
【0073】
グラフCに示すように、dpppはシスプラチンよりもJurkat細胞の増殖をより強く阻害し、そのIC50は約13.5 μMであった。
【0074】
グラフDに示すように、Mn(CO)5Brは20 μM以下の濃度では、Jurkat細胞の増殖にほとんど影響を及ぼさなかった。
【0075】
グラフAに示すように、Mn(CO)3(dppp)Brは、シスプラチンやdpppよりもより強くJurkat細胞の増殖を阻害し、そのIC50は約7.5 μMであった。
【0076】
図4は、HeLa細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
【0077】
グラフAはMn(CO)3(dppp)Brの測定結果を示しており、グラフBはシスプラチンの測定結果を示しており、グラフCはdpppの測定結果を示しており、及びグラフDはMn(CO)5Brの測定結果を示している。
【0078】
グラフBに示すように、シスプラチンはHeLa細胞の増殖阻害効果を有しており、そのIC50は約12 μMであった。
【0079】
これより、シスプラチンのHeLa細胞に対する増殖阻害効果は、MOLT-4細胞より弱いが、Jurkat細胞より明らかに強いことがわかる。
【0080】
グラフDに示すように、Mn(CO)5Brは20 μM以下の濃度では、HeLa細胞の増殖にはほとんど影響を及ぼさなかった。
【0081】
グラフCに示すように、dpppはシスプラチンよりも強くHeLa細胞の増殖を阻害し、そのIC50は約7 μMであった。
【0082】
グラフAに示すように、Mn(CO)3(dppp)Brはシスプラチン及びdpppのいずれよりも強くHeLa細胞の増殖を阻害した。
【0083】
この増殖阻害活性は極めて強く、濃度10 μMではHeLa細胞はほとんど増殖できなかった。IC50を算定すると約3.5 μMであった。
【0084】
以上より、シスプラチンはMOLT-4細胞に対しては非常に強い増殖阻害活性を有するが、Jurkat細胞やHeLa細胞に対してはさほどの増殖阻害活性を有していなかった。特にJurkat細胞には非常に低い増殖阻害活性しか示さなかった。
【0085】
Mn(CO)3(dppp)Brは、シスプラチンが効果的であるMOLT-4細胞に対しても、シスプラチンよりも強い増殖阻害活性を有することがわかった。
【0086】
また、Mn(CO)3(dppp)Brは、シスプラチンに対して耐性を示すJurkat細胞に対しても、IC50が約7.5 μMと、極めて強い増殖阻害活性を有することがわかった。
【0087】
さらに、Mn(CO)3(dppp)Brは、HeLa細胞においても、シスプラチンと比較して、より強い増殖阻害活性を有することがわかった。
【0088】
よって、この発明の医薬組成物は、ヒトの癌治療、特に子宮頸癌及び白血病の治療に適用して好適であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(A)は得られた結晶の解析結果である結晶構造(3次構造)を示す図であり、(B)は一分子の3次構造を示す図である。
【図2】MOLT-4細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
【図3】Jurkat細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
【図4】HeLa細胞におけるMn(CO)3(dppp)Br、Mn(CO)5Br、dppp及びシスプラチンそれぞれの増殖阻害活性を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3