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明細書 :過剰なアポトーシスを生ずるトランスジェニック魚類

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4235725号 (P4235725)
公開番号 特開2003-339274 (P2003-339274A)
登録日 平成20年12月26日(2008.12.26)
発行日 平成21年3月11日(2009.3.11)
公開日 平成15年12月2日(2003.12.2)
発明の名称または考案の名称 過剰なアポトーシスを生ずるトランスジェニック魚類
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12Q 1/02
A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
C12N 5/00 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2002-154851 (P2002-154851)
出願日 平成14年5月29日(2002.5.29)
審査請求日 平成17年4月4日(2005.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】山下 倫明
【氏名】北条 弥作子
個別代理人の代理人 【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也
審査官 【審査官】中村 正展
参考文献・文献 Annual meeting of the society for integrative and comparative biology,2002年 1月,Abstract 71.3,http://www.sicb.org/meetings/2002/schedule/abstractdetails.php3?id=182, American Zoologist (2001.12) vol. 41, no. 6, p. 1428
平成13年度日本水産学会春季大会 講演要旨集,2001年,158 (908)
Biochem. J.,2001年,vol. 360,39-47
Genesis,2001年,vol. 30,195-197
Nature Cell Biol.,2000年,vol. 2,549-552
平成11年度日本水産学会秋季大会 講演要旨集,1999年,115 (835)
Fish. Sci.,2001年,vol. 67,333-340
平成13年度日本水産学会春季大会 講演要旨集,2001年,159 (909)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2001年,vol. 98,9977-9982
FEBS Lett.,1997年,vol. 403,61-69
J. Biol. Chem.,1999年,vol. 274,30778-30783
調査した分野 C12Q 1/02
A01K 67/027
C12N 15/00-15/90
C12N 5/00- 5/10
PubMed
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CA/DISSABS/SCISEARCH(STN)
JSTPlus(JDreamII)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター制御下にアポトーシス誘導因子であるカスパーゼ3遺伝子を配置した遺伝子発現系を遺伝子導入することによって得られる過剰なアポトーシスが生じるトランスジェニックゼブラフィッシュ
【請求項2】
ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター制御下にアポトーシス誘導因子であるカスパーゼ3遺伝子を配置した遺伝子発現系を遺伝子導入した後、さらに、カスパーゼ阻害剤を添加した培養液中で培養することによって得られる過剰なアポトーシスが生じる系統化されたトランスジェニックゼブラフィッシュ。
【請求項3】
カスパーゼ3遺伝子がゼブラフィッシュのカスパーゼ3遺伝子である請求項1又は2に記載のトランスジェニックゼブラフィッシュ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のトランスジェニック魚類を用いてin vivoでアポトーシス誘導を解析する方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を遺伝子導入したトランスジェニック魚類及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
アポトーシスは、自己細胞死、プログラム細胞死などとも呼ばれ、発生、形態形成、細胞分化、発がん、免疫、生殖、老化など高等動物のもつ高次な生命現象に密接にかかわることが知られている(Ellis RE et al., Annu. Rev. Cell Biol. 7,663-698,1991年; Cohen JJ et al., Annu. Rev. Immunol. 10,267-293,1992年; Granerus M and Engstrom W: 29,309-314,1996年; Jacobson MD et al., Cell 88,347-354,1997年)。また、熱、放射線、紫外線などストレス刺激、セラミド、Fas抗原などの薬剤投与の刺激によっても誘導されることが明らかにされている。これまでアポトーシス解析のモデル実験系としてほ乳類培養細胞が研究に用いられていた。培養細胞におけるアポトーシスの発現は、トリパンブルー、エオシン等色素で細胞染色して死細胞を計数する方法、アネキシンV蛍光染色法、DNA断片化の電気泳動分析、核の凝集、断片化の顕微鏡観察、TUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated dUTP nick-end labeling)染色法、フローサイトメトリー等の細胞生物学的手法で観察される(新アポトーシス実験法:辻本賀英・刀称重信・山田武編、羊土社1999年)。
【0003】
魚類においても、アポトーシスは、発生、成長、組織の分化及び器官形成に障害をもたらすだけでなく、不妊化、性転換など生殖に関わる生理機能にも影響することが知られている(Yabu T et al., Fisheries Sci.,67,333-340,2001年; Yabu T et al., Biochem. J.,360,39-47,2001年)。アポトーシス細胞の特徴である断片化DNAを特異的に染色することができるTUNEL染色法で、ヒラメ、ゼブラフィッシュなど魚類の胚を直接染色することにより、熱、紫外線などの環境ストレスに対して感受性の高い組織・細胞を同定することができる(Yabu T et al., Fisheries Sci.,67,333-340,2001年)。
【0004】
今後さらに、動物個体を用いて、in vivoでアポトーシスが果たす生理的役割の解明が進むと、その成果は、新規生理活性物質のスクリーニングやアポトーシスを指標とするバイオアッセイに利用できるので、医学、製薬、水産業、農業、畜産業、バイオテクノロジーなどのさまざまな分野で産業的な応用開発が期待される。しかしながら、脊椎動物の通常の生育条件では、各組織・器官においてアポトーシスが生じる頻度は非常に低いので、アポトーシスを指標とするバイオアッセイはその利用用途は限られており、トランスジェニック動物を用いた例としては、カスパーゼ-3を心臓で発現させたトランスジェニックマウスが心臓疾患モデルとして報告された例があるにすぎない(Condorelli G. et al., PNAS,98,9977-9982,2001年)。そのため、それぞれのアポトーシス誘導因子の作用によって誘発されるアポトーシスの発現を個体レベルで容易に観察することができ、形態形成異常、成長、組織の分化などの生物現象における個々のアポトーシス誘導因子の作用を解析できるモデル脊椎動物の開発が望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するため、アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を遺伝子導入することによって、そのアポトーシス誘導因子の作用によって過剰なアポトーシスを発現するトランスジェニック魚類を提供することを目的とする。
さらに、本発明はこのようなトランスジェニック魚類を用いてアポトーシス誘導を解析することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を魚類で発現するプロモーターの下流に連結し、それを魚類に遺伝子導入することによって、過剰なアポトーシスを発現したトランスジェニック魚類の系統に関する。
また、本発明は、このようなトランスジェニック魚類を用いてin vivoでアポトーシス誘導を解析する方法に関する。
本発明におけるアポトーシス誘導因子にはカスパーゼが、魚類としてはゼブラフィッシュが好ましい例として示される。
【0007】
【発明の実施の形態】
アポトーシス誘導因子としてアポトーシス誘導の分子機構を担う多数のタンパク質が報告されている。その報告例として、以下のアポトーシス誘導因子が挙げられる。カスパーゼ-3等のカスパーゼファミリーに属するプロテアーゼ(Alnemri ES et al., Cell, 87,171,1996年; Dorstyn L et al.,J. Biol. Chem. 274,30778-30783,1999年; Goltsev YV et al.,J. Biol. Chem.,272,19641-19644,1997年; Nakajima K et al.,J. Biol. Chem. 275,10484-10491,1997年; Nicholson DW and Thornberry NA, Trends Biochem. Sci. 22,299-306,1997年; Yabu T et al.,Biochem. J.,360, 39-47,2001年; Yuan J et al. Cell,75,641-652,1993年)、スフィンゴミエリナーゼ(Tepper AD et al. Biochem. Biophys. Res. Commun.,280,634-639,2001年)、GADD45(Takekawa M and Saito H, Cell,95,521-530,1998年)、protein kinase C (PKC) delta(Ghayur T et al.,J. Exp. Med.,184,2399-2404,1996年)、GADD153(Matsumoto M et al., FEBS Lett, 395, 143-147, 1996年)、 MAPキナーゼASK1 (Ichijo H et al.,Science 275,90-94,1997年)、アミロイド前駆タンパク質APP (Giambarella U et al.,EMBO J.,16,4897-4907,1997年)、Bax(Pastorino JG et al., J. Biol. Chem., 7770-7775, 1998年)、キナーゼMst1(Graves JD et al., EMBO J., 17, 2224-2234,1998年)などのアポトーシス誘導因子はいずれも培養細胞にそれらの遺伝子発現系を遺伝子導入して過剰に発現させることによって、アポトーシスを誘導する、又は外部刺激による誘導性を向上させるという特徴をもっており、本発明に利用できる。このようなアポトーシス誘導は、脊椎動物に共通の分子機構によって制御されるものと推定される。このことから、動物由来のアポトーシス誘導因子をコードする遺伝子を魚類で利用可能なプロモーターの下流に連結した遺伝子発現系を作製し、それを魚類に遺伝子導入して次世代を得ることによって、過剰なアポトーシスがプロモーターの特性に応じて発現するトランスジェニック魚類の系統が作製できる。
【0008】
魚類におけるアポトーシス誘導因子として、カスパーゼ-3の構造及び性質が明らかにされている(Yabu T et al., Biochem. J., 360,39-47, 2001年)。ゼブラフィッシュ胚からクローン化されたカスパーゼ-3は、282残基のアミノ酸からなり、哺乳類カスパーゼ-3とのアミノ酸配列の相同性は61.0~61.8%であった。カスパーゼ遺伝子はmRNA母性因子として初期胚に分布していた。カスパーゼcDNAをヒトサイトメガロウイルスプロモーター下流に連結し、魚類培養細胞に導入した結果、カスパーゼの一過的過剰発現によりアポトーシスが生じ、成熟酵素へのプロセッシング及びセラミド量の増加が観察された。これらのことから、本酵素は哺乳類で報告されたカスパーゼ-3タイプに相当するアポトーシス実行分子であり、アポトーシスは脊椎動物に共通の反応経路によって活性化されることが明らかにされた。このように、アポトーシス誘導に関わる作用は、アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を培養細胞に遺伝子導入し、発現させることによって、調べることができる。
【0009】
アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を導入し得る魚類としては、ゼブラフィッシュ、メダカ等の小型魚類やコイ科、サケ科、ヒラメ、ティラピアなどの養殖魚を例示することができる。本発明では、用途に応じた種々のトランスジェニック魚類を作出するために使用することができる。
【0010】
本発明においては、アポトーシス誘導因子の遺伝子を魚類で発現するプロモーターの下流に連結した遺伝子発現系を作製する。プロモーターは組織特異性、発生段階特異性、ストレス誘導性、ホルモン誘導性、構成的発現性などの種類があるので、アポトーシス誘導因子の発現を期待する組織・器官、時期及び発現レベルに応じて目的のプロモーターを選択することができる。そして、この遺伝子発現系を魚類に遺伝子導入する。魚類に遺伝子導入するには、受精卵にマイクロインジェクション法で顕微注入する方法や培養細胞・受精卵への電気穿孔法、パーティクルガン法等の当業者に周知の方法を使用することができる(山下倫明:比較内分泌ニュース,No. 88,p.22-29,1998)。
【0011】
アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系を導入したトランスジェニック魚は、発生の過程で過剰なアポトーシスが生じるため、生残率が低いが、カスパーゼ阻害剤Z-VAD-fmk(Calbiochem社)等のアポトーシス阻害剤を胚の培養液中に1~100μM添加して投与することによってアポトーシスを阻害して生残率を向上させることができる。生残した個体を飼育し、成魚から受精卵を採取することによって、次世代を得て系統化する必要がある。このようなアポトーシスを過剰に発現する魚類の系統を維持して、魚類の胚、仔稚魚及び成魚をアポトーシスの解析に利用することができる。
【0012】
アポトーシス誘導因子の遺伝子発現系が導入されたトランスジェニック魚類の系統では、特定のアポトーシス誘導因子が高レベルで発現しているので、その因子が関与するアポトーシスの誘導経路が活性化され、顕著なアポトーシスを容易に観察することができる。そのため、正常な魚類個体ではほとんど観察できないアポトーシスによる形態形成異常、生理障害、臓器機能不全等の異常、例えば目の小型化、脳、脊髄、脊索等脳神経系の異常、心臓の形成異常、顎・鰭の欠損、卵黄の異常代謝などを調べるためのモデル脊椎動物としての利用が可能である。
【0013】
また、セラミドなどアポトーシス誘導剤、プロテアーゼ阻害剤等の薬剤を魚類に投与して、アポトーシスの誘導に基づく発生異常、形態形成異常及び生理機能障害の誘導と抑制を観察することによって、各薬剤の生理活性やその作用機構を解析することが可能である。アポトーシス誘導に基づくin vivoでのバイオアッセイは、さまざまな化合物のスクリーニングや生理活性の評価及びアポトーシス誘導経路に関する分子メカニズムの解析に利用でき、医薬品、食品添加物、食品素材、化粧品、餌飼料、農薬等の製品開発に役立つ。
【0014】
魚類におけるアポトーシスの発現は、組織抽出液中のカスパーゼ活性を測定する方法、胚または組織切片をTUNEL染色してアポトーシス細胞を染色する方法で検出することができる(Yabu T et al., Fisheries Sci., 67, 333-340, 2001年)。また、過剰なアポトーシスによって引き起こされる形態形成異常、魚類組織の形態観察又は組織切片の顕微鏡観察によって調べることができる。
【0015】
以下実施例によって、本発明をさらに詳細に記載するが、この実施例の記載は、いかなる意味においても、請求項に記載した本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0016】
【実施例1】
本実施例では、主要なアポトーシス誘導因子であるカスパーゼ-3の遺伝子発現系の作製法について説明する。制限酵素部位を含む2種類のプライマー(5’-AAGCGGTTGGAGATGAACGGAGACTGT-3’(配列表配列番号1)及び5’-TTAGTGGTGGTGGTGGTGGTGAGGAGTGAAGTACATCTCTTTGGT-3’(配列表配列番号2)を合成し、ExTaq酵素キット(宝酒造株式会社)を用いるPCR法(94℃・20秒間、60℃・1分間、72℃・1分間のサイクルを30回)によって[ゼブラフィッシュカスパーゼ-3遺伝子のcDNA断片(2.0 kbp)]を増幅した。このPCR産物を1%アガロースゲルを用いる電気泳動によって分離したのち、DNA断片を調製して、pTARGET Mammalian Expression Vector System(Promega社)を用いてpTARGETベクター(Promega社)に同製品のマニュアルに従ってサブクローン化し、pTARGET-CASPASEと名付けた。さらに、この発現ベクターpTARGET-CASPASEのゼブラフィッシュカスパーゼ-3cDNA挿入部位の下流側を制限酵素Sal I(pTARGET上のnt1303)及びNot I (pTARGET上のnt1311)で切断した。蛍光タンパク質遺伝子発現系を含む発現プラスミドpEGFP-C1(Clontech社)を鋳型として、PCRプライマー(配列表配列番号3:5'-GGGAGATCTCGAGAATAAATTACGGGGTCATTAGTTCAT-3'及び配列表配列番号4:5'-GGGGATCCGCGGCCGCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCC-3';下線部は制限酵素部位を示す)を用いて、pEGPClのヒトサイトメガロウイルスプロモーターが連結されたGFP遺伝子の領域(nt19~1330)のDNAをExTaq酵素キット(宝酒造株式会社)を用いるPCR法(94℃・20秒間、60℃・1分間、72℃・1分間のサイクルを30回)によって増幅した。PCRプライマーに含まれる制限酵素Xho I及びNot I切断部位で切断したのち1%アガロースゲルを用いてDNA断片を作製し、上述のSal I及びNot I で切断したpTARGET-CASPASEにDNA Ligation Kit Ver. 2(宝酒造株式会社)を用いて連結し、大腸菌DH5α株コンピテントセル(GibcoBRL社)に形質転換して、GFP発現系を含むのゼブラフィッシュカスパーゼ-3の発現プラスミドpTARGET-CASPASE-GFPを構築した(図1)。プラスミドDNAとプロモーターDNAとの連結部分の塩基配列はDNAシークエンサーで分析して確認した。
【0017】
【実施例2】
トランスジェニック魚類の作製は、山下の方法(山下倫明:比較内分泌ニュース, No. 88, p.22-29, 1998)に従って以下のように行った。マイクロインジェクションにはpTARGET-CASPASE-GFPプラスミドDNAを10 μg/mlになるように滅菌蒸留水で希釈した。ゼブラフィッシュ(Danio rerio)の受精卵1細胞期の細胞質にベクターのDNA溶液をガラスキャピラリーを用いて、マイクロインジェクション法により注入した。DNAを導入した胚を滅菌水中で28.5℃で培養した。受精後12時間から48時間の胚を蛍光実体顕微鏡(SZX12、 オリンパス光学工業株式会社)で観察し、GFPの蛍光を発する遺伝子導入個体を選別した。このF0世代の胚を成魚まで飼育した。孵化した仔魚には培養したゾウリムシ、アルテミア幼生及び市販配合餌料(テトラミンTM、Tetra社)を与えて成魚まで飼育した。成熟したF0世代の遺伝子導入個体と野生型魚を交配して、F1世代の受精卵を得た。F0世代の胚の場合と同様に、蛍光実体顕微鏡下で、GFPの蛍光を発するF1世代の遺伝子導入個体を選別した。このようにして、導入遺伝子が次世代(F1~F3世代)に伝達され、GFPが発現しているトランスジェニックゼブラフィッシュを系統化した。
【0018】
【実施例3】
カスパーゼ活性の測定
アポトーシス誘導の指標としてカスパーゼ活性を、Yabuらの方法(Yabu T, Todoriki S, Yamashita M. (2001) Fisheries Sci., 67, 333-340)に従って測定した。基質として4μM Ac-Asp-Glu-Val-Asp-メチルクマリルアミド(MCA)(ペプチド研究所株式会社)を用いて、250 mM ショ糖、50 mM 塩化カリウム、2.5 mM 塩化マグネシウム及び1 mM ジチオスレイトールを含む 20 mM HEPES(pH7.5)バッファー中で37℃で反応させた。培養温度28.5℃で培養した各発生ステージ(受精3時間、6時間、9時間、24時間)のゼブラフィッシュ胚20個を1検体として、10倍量の同バッファーでホモジナイズしたのち、10000×g、10分間遠心後、その上清を活性測定に用いた。37℃・1時間で、1 nmolの基質を水解する活性を1 単位として定義した。活性測定に用いた上清中のタンパク質濃度をプロテインアッセイキット(バイオラット社)で定量し、タンパク質1μg当りの活性値を測定した。
測定は合計3回行い、その平均値を図2に示した。図2から明らかなようにトランスジェニックゼブラフィッシュの胚では発生ステージが長くなるに従って、カスパーゼ活性が野生型にくらべていちじるしく高くなっており、カスパーゼが発現していることがわかる。
【0019】
【実施例4】
TUNEL染色法によるアポトーシス細胞の検出
胚を10%ホルマリン4℃で一晩固定した。Yabuらの方法(Yabu T et al., Fisheries Sci., 67, 333-340, 2001年)に従って、断片化された核DNAにFITC-dUTP(Roche社)をターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Roche社)で付加するTUNEL染色法を用いて、アポトーシスが生じた細胞を特異的に染色した。
その結果を図3に示した。トランスジェニック魚(casp,図3B、DおよびE)では多くの細胞で強い蛍光が見られた。卵黄付近の蛍光は自家蛍光による。比較として野生型の観察像(wild-type,図3AおよびC)を示した。
【0020】
【実施例5】
トランスジェニック魚の形態形成異常の観察とin vivoバイオアッセイ
実施例2から得られたアポトーシス誘導因子としてカスパーゼ-3を過剰に発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの胚を組織培養用6穴マイクロプレート(コーニング社)に滅菌水道水を一穴当たり2ml入れて、一穴当たり30個の胚を28.5℃で培養した。受精3日後の胚を実体顕微鏡で野生型(wide-type)およびトランスジェニック魚(casp)を観察した。形態異常の発現を実体顕微鏡で観察した結果を図4に示した。図4にみられるように、カスパーゼを過剰発現するトランスジェニック魚では、眼の小型化、脊索・卵黄部・心臓の形成異常が見られ(矢印で示した部分)、これらの形態形成異常にカスパーゼ-3のアポトーシス誘導経路が関与することが明らかとなった。
【0021】
また、受精後12時間の胚にYabuらの方法(Yabu T et al., Fisheries Sci., 67, 333-340, 2001年)で紫外線照射したのち、28.5 ℃で培養して胚の生残率を計測した。すなわち、
受精後12時間の胚に紫外線を2、5及び10 mJ/cmで照射したのち、一穴当たり30個の胚を6穴マイクロプレートに入れ28.5 ℃で培養し、一日毎に生残率を計測した。この実験を3回行い、その平均値を図5に示した。その結果、トランスジェニック魚の胚は2及び5 mJ/cmの紫外線を照射した胚で野生型と比べて生残率が低く、ストレスに対して感受性が高いことが明らかとなった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、アポトーシス誘導因子の遺伝子DNAを魚類で発現するプロモーターの下流に連結し、それを魚類に遺伝子導入することによって、過剰なアポトーシスを発現するトランスジェニック魚類の系統を提供する。このように本発明のトランスジェニック魚類は、魚類に導入した外来遺伝子のアポトーシス誘導作用によって、生体におけるアポトーシスを容易に観察することができるので、アポトーシスを指標とするバイオアッセイを行う上で、多くの目的に適用し得る。
【0023】
【配列表】
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【0024】
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【0025】
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【0026】
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【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のトランスジェニック魚の作製に用いられる遺伝子発現系の模式図を示す。
【図2】実施例3のトランスジェニック魚の胚におけるカスパーゼ活性を野生型魚と比較した結果を示す。
【図3】実施例4のアポトーシス細胞の有無をTUNEL染色法によって調べた結果を示す。
【図4】実施例5の受精3日後の野生型(wild-type)およびトランスジェニック魚(casp)の胚を実体顕微鏡で観察した結果を示す。
【図5】実施例5の受精後12時間後の胚に紫外線を照射し、その生存率を測定した結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4