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明細書 :抗微生物蛋白質、それをコードする遺伝子及びそれらの利用法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4214225号 (P4214225)
登録日 平成20年11月14日(2008.11.14)
発行日 平成21年1月28日(2009.1.28)
発明の名称または考案の名称 抗微生物蛋白質、それをコードする遺伝子及びそれらの利用法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
A01N 63/00 A
C12N 5/00 A
A61P 31/04
C07K 14/435
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
A61K 37/02
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 10
全頁数 24
出願番号 特願2003-536270 (P2003-536270)
出願日 平成14年10月15日(2002.10.15)
国際出願番号 PCT/JP2002/010651
国際公開番号 WO2003/033532
国際公開日 平成15年4月24日(2003.4.24)
優先権出願番号 2001317255
優先日 平成13年10月15日(2001.10.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年9月2日(2005.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】冨江 哲也
【氏名】田川 道人
【氏名】山川 稔
【氏名】石橋 純
個別代理人の代理人 【識別番号】100062007、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 義雄
【識別番号】100113332、【弁理士】、【氏名又は名称】一入 章夫
【識別番号】100114188、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 誠
【識別番号】100103920、【弁理士】、【氏名又は名称】大崎 勝真
【識別番号】100124855、【弁理士】、【氏名又は名称】坪倉 道明
審査官 【審査官】水落 登希子
参考文献・文献 Eur.J.Biochem.,1998年,Vol.255,p.734-738
調査した分野 C12N 1/00ー15/90
C07K 14/00-14/825
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)または(b)の蛋白質;
(a)配列番号6乃至10の何れか1つに記載のアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号6乃至10の何れかのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有する蛋白質。
【請求項2】
請求項1に記載の蛋白質をコードするDNA。
【請求項3】
以下の(a)または(b)のDNA;
(a)配列番号1乃至5の何れかに記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1乃至5の何れかのDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ抗微生物活性を有する蛋白質をコードする、請求項2に記載のDNA。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のDNAを含む組換えベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換細胞。
【請求項6】
形質転換細胞が植物由来である、請求項5に記載の形質転換細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の形質転換細胞から再生された病原微生物に抵抗性を示す植物体又はその子孫。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の形質転換細胞を培養し、培地または細胞抽出物から目的の抗微生物活性を有する蛋白質を回収することを特徴とする、請求項1に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の蛋白質の何れかを有効成分とする殺菌剤、抗菌剤、又は工業用抗菌・抗カビ剤。
【請求項10】
農園芸用、医薬用または工業用である、請求項9に記載の殺菌剤、抗菌剤又は工業用抗菌・抗カビ剤。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、抗微生物活性を有する新規な蛋白質、上記蛋白質をコードする遺伝子、並びに上記蛋白質および上記遺伝子の利用法に関する。
背景技術
昆虫由来の抗微生物蛋白質は、多くの種類の昆虫より150種類近くが見つかっている。この中で糸状菌に対して活性のあるものとしては、双翅目昆虫のDrosomycin[J.Biol.Chem.,1994;269(52):33159-33163]や鱗翅目昆虫のHeliomicin(J.Biol.Chem.1999;274(14):9320-9326)]や半翅目昆虫のThanatin(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996;93:9320-9326)などが報告されている。
一方、鞘翅目昆虫であるタイワンカブトムシ(Oryctesrhinoceros)からは抗細菌ペプチドとして、トリファシン(特開平8-283291)、オリクチン(特開平8-283292)、ライナサラシン(特開平8-283294)、Defensin[Eur.J.Biochem.1999;266:616-623)]が報告されているが、糸状菌に活性を示す抗微生物蛋白質はいまだ知られていない。
近年、昆虫より得られた抗微生物蛋白質遺伝子を植物に導入し、病害抵抗性を付与する試みが行われている。センチニクバエより得られたSarcotoxin IAを導入したタバコ[Mol.Plant.Microbe.Interact.2000;13(8)860-868]、カイコより得られたCecropin Bを導入したイネ(FEBSLetters 2000;484:7-11)などが報告されているが、実用化には至っていない。その理由の一つとして、導入した遺伝子が、植物に多大な被害を与える植物病原糸状菌に対して活性のある蛋白質の遺伝子として得られたものではなかったことが考えられる。従って、従来の抗微生物蛋白質より糸状菌に対して活性のある抗微生物蛋白質およびその遺伝子を同定して、利用することが望まれている。
また、工業用抗菌・抗カビ剤としては、これまでに有機窒素系化合物、有機窒素イオウ系化合物、有機ハロゲン系化合物、含窒素脂肪族ポリマー及び重金属配位化合物等が使用されている。しかしこれらは刺激性があり労安法上問題になる薬剤、使用薬量が多く環境保護の観点から問題になる薬剤、ホルマリン或いはハロゲンを遊離し、人体への影響及び環境汚染が懸念される薬剤及び重金属による環境汚染が懸念される薬剤を含んでおり、工業用抗菌・抗カビ剤全体が、好ましい薬剤のみで構成されているとは言えない。
一方、医薬分野において、メチシリンやバンコマイシン等の抗生物質に耐性を示す多剤耐性細菌が問題となっており、これらの多剤耐性菌に対して効果がある有効な薬剤が望まれている。
発明の開示
本発明は、比較的低濃度で様々な植物病原菌の生長を抑止できる新規な抗微生物蛋白質を探索、同定し、さらに該蛋白質をコードする遺伝子をクローニングしてその塩基配列を特定し、本発明の遺伝子を適当な宿主生物(微生物、動物または植物など)に導入して形質転換体を作出し、本発明の遺伝子の利用を図ることである。また、本発明の別の目的は、本発明の抗微生物蛋白質を含む農園芸用殺菌剤、医薬品又は工業用抗菌・抗カビ剤を提供することである。
課題を解決するための手段
本発明者らは、先ず、イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)に対するin vitroでの抗微生物活性を検定するためのアッセイ系を確立した。次いで、タイワンカブトムシ体液から蛋白質成分を抽出し、各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせ、各画分を上記アッセイ系に供試することにより、抗微生物蛋白質画分を同定し、抗微生物蛋白質を単離・精製することに成功した。
さらに本発明者らは、精製蛋白質の部分アミノ酸配列を決定し、このアミノ酸配列に基づき合成したオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用するRT-PCR法により当該蛋白質をコードする完全長のcDNAを単離し、全塩基配列を決定した。上記の通り、本発明者らは、タイワンカブトムシ由来の新規な抗微生物蛋白質の単離とそれをコードするDNAのクローニングに成功し、また当該蛋白質のアミノ酸配列と当該DNAの塩基配列を決定して、本発明を完成するに至った。
(DNA)
本発明のDNAは、後述する5種類の抗微生物活性を有する蛋白質をそれぞれコードするDNAである。
該DNAは、タイワンカブトムシの幼虫から抽出したDNA及びRNAから単離同定することもできるが、本明細書に開示された配列を基に、一般的なハイブリダイゼーション等の遺伝子工学的手法を用いたクローニングやホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製されるDNAであってもよい。その形態としてはcDNA、ゲノムDNAの他、化学合成DNAなどが含まれるが、特に制限はない。また、本発明のDNAは1本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して2重鎖、3重鎖を形成していても良い。また、当該DNAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などの酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
本発明のDNAの塩基配列が提供されれば、これより導かれるRNAの配列や、相補的なDNAおよびRNAの配列などは一義的に決定されるので、本発明は、本発明のDNAに対応するRNAあるいは本発明のDNAと相補的な配列を有するDNAおよびRNAもまた提供するものと理解すべきである。
さらに、本発明のDNAには、配列番号1乃至5に記載の各塩基配列からなるDNAの何れかとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAをも含むものである。
配列番号1乃至5に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされる蛋白質が抗微生物活性を保持する範囲内において、塩基配列のバリエーションが許容される。例えば、いわゆるコドン縮重による同一アミノ酸残基をコードする複数のコドンの存在や、種々の人為的処理例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異・欠失・連結等により、部分的にDNA配列が変化したものであっても、これらDNA変異体が配列番号1乃至5に記載のDNAのいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗微生物活性を有する蛋白質をコードするDNAであれば、配列番号1乃至5に示したDNA配列との相違に関わらず、本発明の範囲内のものである。
上記のDNA変異の程度は、配列番号1乃至5に記載のDNA配列と70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の相同性を有するものであれば許容範囲内である。また、ハイブリダイズする程度としては、通常の条件下、例えばDIG DNA Labeling kit(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、32℃DIG Easy Hyb溶液(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1603558)中でハイブリダイズさせ、室温で0.5×SSC溶液(0.1%(w/v)SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションで、配列番号1乃至5に記載の核酸の何れかにハイブリダイズする程度であればよい。
本発明のDNAは、適当なベクターに組換えることによって、それらにコードされる抗微生物活性を有する蛋白質の遺伝子組換え手法による好適な組換えベクター、好ましくは発現ベクターとすることができる。該組換えベクターは環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。また、該組換えベクターは、本発明のDNAに加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。
遺伝子組み換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明のDNAに付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させあるいは消失させることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、本発明のDNAを基に任意かつ容易に加工することができる。
また本発明のDNAを保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることも可能であり、特に制限はない。
本発明の配列番号1乃至5の何れかに記載のDNAにハイブリするヌクレオチド配列からなるオリゴヌクレオチド、例えば配列番号12乃至18の何れかに記載のオリゴヌクレオチドは、タイワンカブトムシ幼虫の脂肪体のcDNAを鋳型にしてRT-PCRを行うときのプライマーとなる。このPCR法により、本発明の抗菌蛋白質をコードする完全長cDNAクローンを単離することが容易となり、本発明の遺伝子の単離方法が提供される。
(抗微生物活性を有する蛋白質)
本発明の蛋白質は、配列番号6乃至10に示されるアミノ酸配列からなる、抗微生物活性を有する蛋白質である。ここにいう抗微生物活性とは、種々の糸状菌及び種々の細菌に及ぶ、幅広い微生物の生育を抑制あるいは死滅させる活性を意味する。特に、農業上重大な被害を与える植物病原糸状菌や細菌、医学上重篤な感染症を引き起こす糸状菌や細菌、産業上重大な被害を与える糸状菌や細菌に対して、生育抑制あるいは死滅活性を意味する。
本発明の蛋白質は、植物病原菌に対して抗菌効果のあるタイワンカブトムシ幼虫、特に3齢幼虫の体液から調製することができるが、本明細書に記載した特徴を有する限り、その起源、製法などは限定されない。即ち、天然由来の蛋白質、遺伝子工学的手法により組換えDNAから発現させた蛋白質、あるいは化学合成蛋白質の何れでもよい。
配列番号6に記載の蛋白質は全長66アミノ酸残基からなる蛋白質である。この蛋白質がプロセッシングを受けてN末端及び/又はC末端が切断されることにより、配列番号7に示される全長36アミノ酸残基からなる蛋白質(SP4080)、配列番号8に示される全長38アミノ酸残基からなる蛋白質(SP4266)、配列番号9に示される全長38アミノ酸残基からなる蛋白質(SP4337)、配列番号10に示される全長40アミノ酸残基からなる蛋白質(SP4523)が、それぞれ生じていると想定される。この様に、配列番号7乃至10に示されるアミノ酸配列は、すべて配列番号6に示されるアミノ酸配列の部分配列に相当する。
本発明の抗微生物活性を有する蛋白質のアミノ酸配列について、公知の蛋白質データーベースに対して相同性検索を行った結果、50%を超える高い相同性を示す公知のアミノ酸配列は確認できなかった。このことから、本発明の抗微生物活性を有する蛋白質は、これまでにない特徴的なアミノ酸配列からなる蛋白質であると考えられる。
配列番号6乃至10の蛋白質は、いずれも100℃、10分間の熱処理を行った後も、植物病原菌に対して抗微生物活性を有する蛋白質である。
本発明の蛋白質は、植物病原菌であるイネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、コムギ葉枯病菌(Septoria tritici)、シバブラウンパッチ病菌(Rhizoctonia solani)、トマト疫病菌(Phytophthora infestance)、衛生病原菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)などの、糸状菌から細菌にわたる幅広い菌種に対して生育抑制あるいは死滅活性を示すものである。特に、イネ紋枯病菌、シバブラウンパッチ病菌、黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対して顕著な抗微生物活性を示す。
なお、上記の抗微生物活性を有する限り、配列番号6乃至10に示す蛋白質のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、欠失、および/若しくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいは蛋白質も本発明の範囲内である。
蛋白質の構成要素となるアミノ酸残基側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるが、実質的に蛋白質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が知られている。例えば、アミノ酸残基の置換については、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)、等が挙げられる。また、上述の意味の保存性を損なう場合でも、なおその蛋白質の本質的な機能、本発明においては抗微生物活性を有する、を失わない変異も当業者に多く知られている。さらに、異なる生物種間に保存される同種の蛋白質が、幾つかのアミノ酸が集中あるいは分散して欠失あるいは挿入されていてもなお本質的な機能を保持している例も多く認められている。
従って、配列番号6乃至10に示したアミノ酸配列上の置換、挿入、欠失等による変異蛋白質であっても、その変異が本発明の本質的機能である抗微生物活性を有する蛋白質であれば、これらは本発明の範囲内にあるものと言うことができる。
このようなアミノ酸の改変は、遺伝子多形等によって生ずる変異の様に自然界において認められる他、当業者に公知の方法、例えばNTGなどの変異誘発剤を用いた突然変異誘発法や種々の組換遺伝子手法を用いた部位特異的変異法を利用して、人為的に行うことができる。アミノ酸の変異部位および個数は、変異蛋白質が抗微生物活性を保持する限り特に制限はないが、変異個数は通常十数アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内である。
(形質転換植物)
本発明の形質転換植物は、植物細胞内で機能しうる適当なプロモーターの制御下に置いた本発明の遺伝子を用い、これをそのままあるいは適当なベクターに組み込んで形質転換した宿主植物細胞を基に再生した、本発明の抗微生物活性を有する蛋白質を発現することにより植物病原菌等に耐性を示す植物体あるいはその子孫である。
本発明の形質転換植物は、その植物体中に本発明である抗微生物活性を有する蛋白質を発現することができる。
本発明の形質転換植物には全ての植物種が含まれるが、例えば、単子葉植物ではイネ科、ヤシ科、ユリ科、ラン科、サトイモ科等が挙げられる。
イネ科植物としては、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、シバ、ヨシ、サトウキビ、トウモロコシ、アワ、ヒエ等が挙げられる。
ユリ科植物としては、ネギ、ユリ、チューリップ等が挙げられる。
双子葉植物では、ブナ科、サボテン科、ツバキ科、アオイ科、ウリ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、トウダイグサ科、ブドウ科、ミカン科、セリ科、ナス科、シソ科、キク科、サクラソウ科等が挙げられる。
ツバキ科植物としては、チャ等が挙げられる。
アオイ科植物としては、ワタ等が挙げられる。
ウリ科植物としては、キュウリ、メロン、カボチャ等が挙げられる。
アブラナ科植物としては、アブラナ、シロイヌナズナ、ダイコン、ワサビ、キャベツ等が挙げられる。
バラ科植物としては、ウメ、モモ、リンゴ、ナシ、バラ等が挙げられる。
マメ科植物としては、ダイズ、アズキ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ等が挙げられる。
ナス科植物としては、タバコ、ナス、ジャガイモ、トマト等が挙げられる。
キク科植物としては、キク、シュンギク、ヒマワリ、レタス等が挙げられる。
サクラソウ科植物としては、サクラソウ、シクラメン等が挙げられる。
また、スギ科、マツ科、ヒノキ科等の裸子植物に属する植物体も含まれる。
(抗菌剤、殺菌剤、工業用抗菌・抗カビ剤)
本発明の抗菌剤、殺菌剤、又は工業用抗菌・抗カビ剤は、抗微生物活性を有する蛋白質を有効成分として、そのままあるいはこれと適当な賦形剤等を組合せることで調製されるものである。有効成分である抗微生物活性を有する蛋白質の広範な抗菌スペクトルを有するという特性から、農園芸用殺菌剤、医薬用抗菌剤、工業用抗菌・抗カビ剤としての使用に好適である。
何れの場合でも、本発明の抗微生物蛋白質を単独で使用してもよく、また必要により、他の公知の農薬、医薬、工業用抗菌・抗カビ成分、防虫活性成分等と組み合わせて使用することは差し支えない。更に、本発明において有効成分として使用する抗微生物活性を有する蛋白質は、単一の蛋白質或いは数種類の蛋白質の混合物から構成されていてもよい。
本発明の農園芸用殺菌剤の対象となる植物病害は極めて多岐に渡り、イネのいもち病(Pyricularia oryzae)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis f.SP.hordei、f.SP.tritici)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、網斑病(Pyrenophora teres)、赤かび病(Gibberella zeae)、さび病(Puccinia striiformis、P.graminis、P.recondita、P.hordei)、雪腐病(Typhula SP.、Micronectriella nivais)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U.nuda)、アイスポット(Pseudocercosporella herpotrichoides)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、カンキツの黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、果実腐敗病(Penicillium digitatum、P.italicum)、リンゴのモニリア病(Sclerotinia mali)、腐らん病(Valsa mali)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria mali)、黒星病(Venturia inaequalis)、ナシの黒星病(Venturia nashicola)、黒斑病(Alternaria Kikuchiana)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、モモの灰星病(Sclerotinia cinerea)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、ブドウのべと病(Plasmopara viticola)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki、Mycosphaerella nawae)、ウリ類のべと病(Pseudoperenospora cubensis)、炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、トマトの疫病(phytophthora infestans)、萎ちょう病(Fusarium oxysporum)、輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvam)、ナスの褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracoarum)、アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cerocosporella brassicae)、ネギのさび病(Puccinia allii)、ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseololum)、インゲンの炭そ病(Colletotrichum lindemuthianum)、ラッカセイの黒渋病(Mycosphaerella personatum)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi)、ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli)、チャの網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、タバコの赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、キクの褐斑病(Septoria chrysanthemiindici)、白さび病(Puccinia horiana)、ベントグラスのブラウンパッチ(Phizoctonia solani)、ピシウムブライト(Pythium spp.)、ダラースポット(Sclerotinia homoeocarpa)、各種雪腐病(Typhula spp、Fusarium nivale、 Sclerotinia borealis)、ヘルミントスポリウム病(Helminthosporium sorokinianum、H.erythrospilum)、ノシバ、コウライシバの各種ピシウム病(Pythium periplocum、P.graminicola、P.vanterpoolii)、葉腐病(Rhizoctonia solani)、種々の作物の灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)等が挙げられる。従って、本発明の抗微生物活性を有する蛋白質は、畑地、水田、芝生地、果樹園、牧草地、温室その他非耕地の植物病害防除剤の有効成分として用いることができる。
本発明の医薬用抗菌剤は、黄色ブドウ球菌、大腸菌、アスペルギルス症発病菌(Aspergillus属菌)、カンジダ症発病菌(Candida属菌)、ムコール症発病菌(Mucor属菌、Absidia属菌)、クリプトコッカス症発病菌(Cryptococcus属菌)、北アメリカ分芽菌症発病菌(Blastomyces属菌)、パラコクシジオイデス症発病菌(Paracoccidioides属菌)、コクシジオイデス症発病菌(Coccidioides属菌)、スポロトリコーシス発病菌(Sporothrix属菌)、クロモミコーシス発病菌(Phialophora属菌)、ヒストプラズマ症発病菌(Histoplasma属菌)、皮膚糸状菌症発病菌(Trichophyton属菌、Microsporum属菌、Epidermophyton属菌)、その他の病原微生物に抗菌効果を示す点で有用である。
本発明の工業用抗菌・抗カビ剤において有効成分として使用する抗微生物活性を有する蛋白質は、適当な担体及び補助剤、例えば、結合剤、安定剤などと配合して混合し、常法によって液剤、水和剤、乳剤、ゾル剤(フロアブル剤)及びその他の適当な剤形に製剤化して使用される。
本発明の抗微生物活性を有する蛋白質を有効成分として含む工業用抗菌・抗カビ剤は、水性の塗料、接着材、ラテックス、アクリル等のエマルジョン製品、デンプン、顔料、炭酸カルシウム等のスラリー製品及びジョイントセメントの中の細菌、真菌の生長抑制;建材(建築建材、土木建材等)の木材の防腐;工場の製造設備及びビル空調等における冷却塔、パルプ及び製紙工場等の殺菌及びスライム生成防止;繊維、織物及び皮革への噴霧または浸漬処理による抗菌・抗カビ処理;塗料皮膜、特に外装塗料の塗料皮膜が風雨に曝されている間に発生する細菌・真菌による攻撃からの防御;塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、変性シリコン、ナイロン、エポキシ等の樹脂から成る内装・外装材(住宅用、医療施設用)、建材(建築建材、土木建材等)、家電製品、家庭用雑貨、スポーツ用品等の抗菌・抗カビ;サトウキビ及びテンサイ糖の製造装置へのスライム堆積の防護;エアーウオッシャー、スクラッバーシステム及び工業用淡水供給システムにおける微生物蓄積及び堆積の防止;食品工場等の衛生環境保持;製造設備の洗浄時、下水処理場、し尿処理場等の消臭殺菌;紙被覆材及び被覆加工における細菌及び真菌の生育防止;化粧品及びトイレタリー製品の微生物汚染の防止;プール、冷却水等の微生物の生育防止;農業用配合物、電着システム、診断及び薬剤製品、医療機器等の微生物汚染の防止;写真処理における微生物蓄積の防止;などに使用することができる。
製剤化された本発明の工業用抗菌・抗カビ剤は、各種の製剤をそのまま、又は水若しくは適当な有機溶媒で希釈して、各種の工業用原材料中にまたは製品中に添加混合する方法、各種の工業用原材料や製品の表面に塗布または噴霧する方法または各種の工業用原材料や製品を本発明の工業用抗菌・抗カビ剤の希釈液中に浸漬する方法、等を含め、これまでに一般的に行われてきた工業用抗菌・抗カビ剤の使用方法に従って各種の方法により使用できるが、いずれの特定の方法のみに限定されるものではない。
以上に述べた本発明の殺菌剤、抗菌剤、工業用抗菌・抗カビ剤の剤形は、溶液剤、懸濁剤、乳濁剤などを混合して調製した剤形であってもよく、例えば、錠剤、丸剤、散剤、頼粒剤、液剤、水和剤、乳剤、注射剤、塗布剤、座剤、エアゾール剤、ゾル剤(フロアブル剤)などの剤形を挙げることができる。
発明の実施の形態
(DNA)
本発明のDNAは、本発明の実施例に従ってタイワンカブトムシ幼虫、特に3齢幼虫から抽出したDNA又はRNAを基にクローニングすることが可能であり、本発明によって開示された塩基配列またはその一部を利用して、ハイブリダイゼーションやPCRという遺伝子工学の基本的手法を用いて、他の生物種からも同様の抗微生物活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を単離することができる。また、DNA合成機を用いて一部あるいは全てを化学合成することも可能である。
タイワンカブトムシ以外の生物由来の相同遺伝子をスクリーニングするためのハイブリダイゼーション条件は、特に限定されないが、一般的にはストリンジェントな条件が好ましく、例えば、6×SSC、5×Denhardt’S、0.1%SDS、25℃~68℃などのハイブリダイゼーション条件を使用することが考えられる。ホルムアミド濃度、塩濃度及び温度などのハイブリダイゼーション条件を適宜設定することにより、ある一定の相同性以上の相同性を有する塩基配列を含むDNAをクローニングできることは当業者に周知である。
上記のようなハイブリダイゼーションを使用してクローニングされる相同遺伝子は、配列番号1乃至5に記載の塩基配列に対して少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有するものが好ましい。
また、配列番号12~18の何れかに記載のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドも、DNA合成機を用いて合成することができる。このプライマーは、配列番号6及び10のアミノ酸配列に基づいて、各々の蛋白質をコードする遺伝子断片のクローニングのためのPCR用プライマーとして設計すればよく、当該アミノ酸をコードすることが可能な全ての塩基をミックスしたプライマーとしても使用することができる。これらのプライマーを用いて、大腸菌を接種して免疫したタイワンカブトムシ幼虫脂肪体cDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、本発明の配列番号1乃至5の何れかのDNAを増幅させ、単離することができる。
本発明の組換えベクターは、例えばSambrook、J.ら,Molecular cloning、A Laboratory Manual、second edition、Cold Spring HarborLaboratory、1.53(1989)に記載の方法などにより、適当なプラスミドなどのベクターに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込むことで調製することができる。
ベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(例えば、プラスミドDNAなど)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターの具体例としては、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
所望の蛋白質を生産する目的においては、いわゆる発現ベククーが有用である。発現ベクターの種類は、原核細胞および/または真核細胞の各種の宿主細胞中で所望の遺伝子を発現し、所望の蛋白質を生産する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、大腸菌用発現ベクターとして、pQE-30、pQE-60、pMAL-c2、pMAL-P2、pSE420などが好ましく、酵母用発現ベクターとしてpYES2(サッカロマイセス属)、pPIC3.5k、pPIC9k、pAO815(以上ピキア属)、昆虫用発現ベクターとしてpBacPAK8/9、pBK283、pVL1392、pBIueBac4.5などが好ましい。
宿主細胞として酵母、植物細胞、動物細胞または昆虫細胞を用いて本発明の蛋白質を生産する場合には、一般に発現ベクターは、少なくともプロモーター、開始コドン、所望の抗微生物蛋白質をコードする遺伝子、終止コドン、ターミネーターを含んでいることが好ましい。またシグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、選択マーカー領域または複製可能単位などを適宜含んでいてもよい。
本発明のベクターにおいて、好適な開始コドンとしては、メチオニンコドン(ATG)が例示される。また、終止コドンとしては、常用の終止コドン(例えば、TAG、TGA、TAAなど)が例示される。
複製可能単位とは、宿主細胞中でその全DNA配列を複製することができる能力をもつDNAを意味し、天然のプラスミド、人工的に修飾されたプラスミド(天然のプラスミドから調製されたプラスミド)および合成プラスミド等が含まれる。好適なプラスミドとしては、E.coilではプラスミドpQE30、pETまたはpCALもしくはそれらの人工的修飾物(pQE30、pETまたはpCALを適当な制限酵素で処理して得られるDNAフラグメント)が、酵母ではプラスミドpYES2もしくはpPIC9kが、また昆虫細胞ではプラスミドpBacPAK8/9等があげられる。
使用するプロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーター等を例示できるが、当然ながらこれらには限定されない。また、エンハンサー配列、ターミネーター配列については、例えば、それぞれSV40に由来するもの等、当業者において通常使用されるものを用いることができる。
選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子などが例示される。
発現ベクターは、少なくとも、上述のプロモーター、開始コドン、所望の抗微生物蛋白質をコードする遺伝子、終止コドン、およびターミネーター領域を連続的かつ環状に適当な複製可能単位に連結することによって調製することができる。またこの際、所望により制限酵素での消化やT4DNAリガーゼを用いるライゲーション等の常法により適当なDNAフラグメント(例えば、リンカー、他の制限酵素部位など)を用いることができる。
DNAをベクターに導入する方法は公知である(J.Sambrookなど、Molecular Cloning,a Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク(New York),1989年、参照)。すなわち、DNAとベクターをそれぞれ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片を、DNAリガーゼを用いてライゲーションさせればよい。
このようにして得られる組換えベクター、好ましくは組換えプラスミドは、適当な宿主細胞に組み込むことができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現ベクターに適合し、形質転換され得るものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然の細胞、または人工的に樹立された組換え細胞など種々の細胞を用いることが可能である。宿主細胞としては、大腸菌、酵母または昆虫細胞が好ましく、具体的には、大腸菌ではM15、JM109、BL21など、酵母ではINVScl(サッカロマイセス属)、GS115、KM71(以上ピキア属)など、昆虫細胞ではBmN4、カイコ幼虫などが例示される。また、動物細胞としてはマウス由来、アフリカツメガエル由来、ラツト由来、ハムスター由来、サル由来またはヒト由来の細胞若しくはそれらの細胞から樹立した培養細胞株などが例示される。さらに、植物細胞に関しては、細胞培養が可能であれば特に限定されないが、例えば、タバコ、アラビドプシス、イネ、トウモロコシ、コムギ由来の細胞などが例示される。
形質転換体は、所望の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。DNAを宿主細胞に導入する方法としては、Sambrook,J.ら,Molecular Cloning,ALaboratory Manual,second edition),Cold Spring Harbor Laboratory,1.74(1989)に記載の塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
特に、細菌(E.coil、Bacillus subtilis等)の場合は、例えばCohenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1972;69:2110)、プロトプラスト法(Mol.Gen.Genet.1979;168:,111)やコンピテント法(J.Mol.Biol.1971;56:209)によって、Saccharomyces cerevisiaeの場合は、例えばHinnenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1978;75:1927)やリチウム法(J.Bacteriol.1983;153:163)によって、植物細胞の場合は、例えばリーフデイスク法(Science,1985;227:129)、エレクトロポレーション法(Nature.1986;319:791)によって、動物細胞の場合は、例えばGrahamの方法(Virology.1973;52:456)、昆虫細胞の場合は、例えばSummersらの方法(Mol.Cell.Biol.1983;3:2156-2165)によってそれぞれ形質転換することができる。
(形質転換植物)
本発明の形質転換植物は、植物細胞内で機能しうる適当なプロモーターの制御下に置いた本発明の遺伝子を用い、これをそのままあるいは適当なベクターに組み込んで形質転換した宿主植物細胞を基に再生した、植物病原菌等に耐性を示す植物体あるいはその子孫である。
本発明の形質転換植物は、その植物体中に本発明である抗微生物活性を有する蛋白質を発現することができる。
本発明の遺伝子を植物細胞に形質転換する方法に使用し得る発現ベクターとしては、pUC系ベクター(例えばpUC118、pUC119)、pBR系ベクター(例えばpBR322)、pBI系ベクター(例えばpBI112、pBI221)、pGA系ベクター(pGA492、pGAH)、pNC(日産化学社製)などが挙げられる。また、この他にもウイルスベクターなども挙げることができる。また、連結するターミネーター遺伝子としては、35Sターミネーター遺伝子やNosターミネーター遺伝子が挙げられる。
構築した発現ベクターの植物への導入方法としては、間接導入法及び直接導入法が挙げられる。間接導入法としては、たとえばアグロバクテリウムを用いた方法が挙げられる。直接導入法としては、たとえばエレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、マイクロインジェクション法、シリコンカーバイド法等があげられる。
形質転換させた植物細胞から植物固体を再生させる方法は、従来知られた手法を用いればよく、特別な制限はない。
(抗微生物活性を有する蛋白質)
本発明の蛋白質は、例えば後述の実施例に従って、種々のカラムクロマトグラフィー(C18、C8、ゲル濾過、イオン交換)などの蛋白質精製および単離のために慣用される方法を適宜組み合わせることで製造することができる。特に、タイワンカブトムシ幼虫の体液を100℃、10分間の熱処理を行うことにより、より容易に精製を行うことができる。
この様に、本発明の蛋白質は、天然に発現しているタイワンカブトムシから調製することができるが、ペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー430A型、パーキンエルマージャパン(株)製)を使用した化学合成法でも、また原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製することができる。その純度の面から、化学合成蛋白質あるいは遺伝子工学的な手法による生産ならびに組換え型蛋白質が好ましい。
汎用されるペプチド合成装置を用いて、配列番号6乃至10のアミノ酸配列からなる蛋白質を合成するには、格別の工夫は必要とせず、一般的な合成条件に従って行えばよい。
また、配列番号1乃至5のDNA配列の何れかを有し、先に例示したような所望の宿主で増幅可能な発現ベクターを用いて大腸菌、酵母、昆虫あるいは動物細胞を形質転換させ、該形質転換細胞を適当な培養条件で培養することにより、当該蛋白質を組換え体として大量に得ることができる。
形質転換体の培養は、一般的な方法で行うことができる。形質転換体の培養については各種の成書(例えば、「微生物実験法」社団法人日本生化学会編、株式会社東京化学同人、1992年、参照)があるので、それらを参考にして行うことができる。
培養混合物から本発明の蛋白質を精製する方法としては、蛋白質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
また、本発明の蛋白質を他の蛋白質やタグ(例、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインA、ヒキサヒスチジンタグ、FLAGタグその他)との融合蛋白質として発現させることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ(例、トロンビンその他)を用いて切り出すことが可能であり、ときとして蛋白質の調製をより有利に行うことが可能となる。本発明の蛋白質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせて行えばよく、特に融合蛋白質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精製法を採用することが好ましい。
また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(J.Sambrook,et al.:Molecular Cloning 2nd ed.(1989年))で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
この様に本発明の蛋白質は、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質の形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本願発明の蛋白質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合など、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。また、用いる宿主によっては糖鎖の付加の有無あるいはその程度にも違いが認められる。かかる場合にあっても、抗微生物活性を有する蛋白質として機能する限りにおいて、なお、本発明の思想下にあるというべきである。
(殺菌剤、抗菌剤、工業用抗菌・抗カビ剤)
本発明の抗菌剤、殺菌剤又は工業用抗菌・抗カビ剤は、本発明の蛋白質を単独で、あるいは必要に応じて、溶液剤、懸濁剤、乳濁剤などを混合して、調製することができる。水性または非水性の溶液剤、懸濁剤としては、一つまたはそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤として混合される。水性の希釈剤としては、例えば蒸留水、食塩水などが挙げられる。非水性の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類などが挙げられる。
このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散別または安定化剤(例えばアルギニン、アスパラギン酸など)などの補助剤を含んでいてもよい。これらは、必要に応じてバクテリア保留フイルターを通す濾過、別の殺菌剤の配合または照射によって無菌化される。これらはまた、例えば凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物の形態で製造し、使用前に無菌の蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することもできる。
このようにして得られる抗菌剤、殺菌剤または工業用抗菌・抗カビ剤の剤形としては、使用する用途に応じて決めればよく、上記のような添加物と混合し、錠剤、丸剤、散剤、頼粒剤、液剤、乳剤等の形態により散布することができる。
本発明の抗微生物活性を有する蛋白質を有効成分とする農園芸用の殺菌剤等は、真菌類あるいは細菌が関与する植物の疾患予防及び治療などに利用することが可能である。本発明の殺菌剤等は通常、植物の全身または局所的に散布することができる。
抗微生物活性を有する蛋白質の植物病害防除剤としての施用薬量は、適用場面、施用時期、施用方法、栽培作物等により差異はあるが、一般には有効成分量として1ha当たり0.001~10kg程度、好ましくは0.001~5kg程度が適当である。散布は、植物の種類、生育段階、症状、散布方法、処理時間、散布する蛋白質の種類(全長の蛋白質、該蛋白質の一部を置換、欠失、挿入及び/又は付加したクンパク質など)、生育している場所の気候、生育している場所の土壌などにより異なるが、一日一回から複数回散布することができる。
本発明の医薬用の抗菌剤等は、本発明の蛋白質を単独で、あるいは必要に応じて医薬として許容される賦形剤、活性成分、補充剤などと混合して所望の剤形に調製することができる。剤形としては、注射剤(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内注射)、液状塗布剤、ゲルおよび軟膏剤、座剤、エアゾール剤などによる非経口投与剤形、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、液剤、乳剤、縣濁剤液剤等による経口投与剤形を挙げることができる。
経口投与用の錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤の調製には、例えば白糖、乳糖、ブドウ糖、澱粉、マンニットなどの賦形剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えば澱粉、カルボキシメチルセルロース又はそのカルシウム塩、微結晶セルロース、ポリエチレングリコールなどの崩壊剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、シリカなどの潤沢剤、例えばラウリル酸ナトリウム、グリセロールなどの潤滑剤、等が使用される。
注射剤、液剤、乳剤、縣濁剤、シロップ剤及びエアゾール剤の調製には、例えば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの活性成分の溶剤、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、水素添加ヒマシ油のポリオキシエチレンエーテル、レシチンなどの界面活性剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、メチルセルロース等のセルロース誘導体、トラガント、アラビアゴム等の天然ゴム類などの縣濁剤、例えばパラオキシ安息香酸のエステル、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸塩などの保存剤、等が使用される。
経皮吸収型製剤である軟膏の調製には、例えば白色ワセリン、流動パラフィン、高級アルコール、マクロゴール、水性ゲル基剤等が用いられる。座剤の調製には、例えばポリエチレングリコール、ラノリン、ココナット油等が使用される。
本発明の抗微生物活性を有する蛋白質を含有する上記の医薬組成物は、全組成物の重量に対して、本蛋白質を約0.1~99.5%、好ましくは約0.5~95%を含有する。本蛋白質又は本蛋白質を含有する組成物に加えて、他の薬学的に活性な化合物を含ませることができ、本発明の蛋白質の複数を含ませてもよい。
本蛋白質の臨床的投与量は、年齢、体重、患者の感受性、症状の程度等により異なるが、通常効果的な投与量は、成人一日0.003~1.5g好ましくは0.01~0.6g程度である。しかし、必要により上記の範囲外の量を用いることもできる。
本発明の工業用抗菌・抗カビ剤を調製する場合には、有効成分である本蛋白質は液剤、水和剤、乳剤、ゾル剤及びその他の適当な製剤が調製できる限りにおいて濃度に上限はないが、これら製剤の重量に対し、1-90質量%、好ましくは3-40質量%の割合で配合される。
使用できる担体としては、工業用抗菌・抗カビ剤に常用されるものであれば固体又は液体のいずれも使用でき、特定のものに限定されるものではない。固体担体の例としては、鉱物質粉末、例えばカオリン、ベントナイト、クレー、モンモリロナイト等が挙げられる。液体担体の例としては、水、アルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
また、これらの他に、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアゴム、ザンサンガム、ヒドロキシプロピルセルロース等の増粘剤及び各種補助剤を配合することができる。さらに必要に応じて紫外線吸収剤等のような安定化剤を適量加えることができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されることはない。
実施例
実施例1:抗微生物活性を有する蛋白質の精製
1)タイワンカブトムシ幼虫からの体液採取
タイワンカブトムシの3齢幼虫に大腸菌(JM109、10cell/頭)を接種し、抗微生物活性を有する蛋白質の発現を誘導した後、15時間後にプロテアーゼインヒビターを溶解した生理食塩水に体液を採取した。得られた体液を100℃で10分間熱処理し、遠心分離により不溶物を除き、熱処理体液とした。
2)カラムクロマトグラフィーによる抗微生物蛋白質の精製
後述する抗糸状菌活性評価法を用いて、抗微生物蛋白質の単離を行った。
熱処理体液を0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)で平衡化したSep-pak Vac C18(Waters)に透過し、抗微生物蛋白質を吸着させた。Sep-pakカラムを0.05%TFAで洗浄した後、20、40、60%アセトニトリル(0.05%TFA)で抗微生物蛋白質を溶出した。各溶出画分を遠心エバポレーターで濃縮しアセトニトリルを除去した後、抗糸状菌活性評価を行った。最も強い活性を示した40%溶出画分について、AKTA(Pharmasia)に接続したResourse RPC 1mlカラム(Pharmacia)に透過させた後、20-40%アセトニトリル(0.05%TFA)のグラジエント、1ml/minの流速で抗微生物蛋白質の溶出を行った。この条件下で26~32%で溶出される活性画分について回収を行い、遠心エバポレーターで濃縮を行った。この得られた活性画分を、Waters HPLC(600E System controller、486 Tunable Absorbance Detector、626 Pump)に接続したSenshupak VP-318 φ4.6×250mm(Senshu)に透過し、20-26%アセトニトリル(0.05%TFA)のグラジエント、1ml/minの流速で抗微生物蛋白質の溶出を行った。
220nmの吸収でモニターリングしながらピークごとに分取を行い、各ピークについて抗糸状菌活性評価を行った。22-23%アセトニトリルで溶出される活性ピークについて、さらにWaters HPLCに接続したSenshupak VP-318 φ4.6×250mm(Senshu)に透過し、30-40%アセトニトリル[0.05%heptafluorobuthanoic acid(HFBA)]のグラジエント、1ml/minの流速で抗微生物蛋白質の溶出を行った。220nmの吸収でモニターリングしながらピークごとに分取を行い、各ピークについて抗糸状菌活性評価を行った。24-27%アセトニトリルで溶出される活性ピークについて、SMART(Pharmasia)に接続したSephasil C8 SC 2.1/10カラム(Pharmasia)に透過し、20-26%アセトニトリル(0.05%TFA)のグラジエント、0.1ml/minの流速で溶出した。220nmの吸収でモニターリングしながらピークごとに分取を行い、各ピークについて抗糸状菌活性評価を行った(第1図)。活性の確認されたピークについて、Matrix-assisted Laser Desorption Ionization Time-of-flight Mass Spectrometry(MALDI-TOF MS、Voyager BioSpectrometry Workstation、Perseptive Biosystems)での分析を行った。得られた画分は分子量4080Daの成分をメイン(第1成分)として含み、分子量4266Da(第2成分)も含んでいた(第2図)。これらの成分については種々のカラムを用いて精製を試みたが、分離することは困難であった。
3)抗糸状菌活性評価系
イネ紋枯病菌をポテトデキストロース(PD)培地(Difco)を用いて、25℃、5日間培養した後、ホモジナイザーで菌糸を細断した。得られた菌糸細断溶液より菌糸塊を除いた後、遠心分離で菌糸を回収し、PD培地を用いて菌糸10個/mlに調整した。菌糸溶液250μlに溶解させたPDA培地を添加し5mlにした後、シャーレ(直径8.4cm)に広げた。培地が固まった後、活性評価用試料1μlをスポットし、24時間、25℃で培養した後、スポットした地点の周りにできた阻止円の大きさを計測した。
実施例2:抗微生物ペプチドのcDNAの単離
1)抗微生物蛋白質のアミノ酸分析
実施例1の2)の第1、第2の両成分を含む活性画分についてプロテインシーケンサー(492cLC Protein Sequenser、PE Appliod Biosystems)を用いたエドマン分解法によりN末端のアミノ酸配列の解析を行った。その結果、第1成分のN末端配列はELPKLPDDKVLIRSRSNXPKであり、第2成分はDAELPKLPDDであった。分子量の違いおよびN末端の10残基目までのアミノ酸配列より、第2成分は第1成分のN末端に2残基アミノ酸がついた蛋白質であることが推測された。
さらにアミノ酸配列を解析するため、エンドプロテアーゼArg-C(ベーリンガー・マンハイム)を用いて抗微生物蛋白質を部分消化し、アミノ酸配列の解析を行った。その結果、21残基目以降はGKVWDGFであり、N末端より27残基目までのアミノ酸配列を決定することができた。
2)3’-RACE用ディジェネレートプライマーの設計
上記で決定されたアミノ酸配列を基に、考えられる全ての塩基がミックスされたプライマーを3つ合成した(Tmは50~55℃)。P4080-1(5-aarytnccngaygayaargt-3’)(配列番号12)、P4080-2(5’-ccngaygayaargtnytnat-3’)(配列番号13)、P4080-3(5’-gaygcngarytnccnaa-3’)(配列番号14)、(ただし、rはaまたはg、yはcまたはt、nはaまたはtまたはcまたはd、をそれぞれ示す)。
3)タイワンカブトムシ幼虫脂肪体からのcDNAの合成
大腸菌接種6時間後のタイワンカブトムシ3齢幼虫の脂肪体よりmRNAをISOGEN(ニッポンジーン)を用いて抽出し、このうち3μgをFirst-strand cDNA synthesis kit(Amashamphalmasia)に供試しcDNAの合成を行った。すべての手順はキット添付の説明書に従った。
4)3’-RACE
上記で合成したプライマーおよびキット添付のNotI-dtプライマーを用いて2)で合成したcDNAを鋳型にPCRを行い、抗微生物蛋白質の3‘領域のスクリーニングを行った。増幅した断片について、ゲル精製を行った後、TA Cloning kit(Invitrogen)を用いてクローニングを行った。増幅断片のDNA配列をDNAシーケンサー(377 DNA Sequencer、PE Applied Biosystems)により決定した。DNA配列より推測されるアミノ酸配列が、プロテインシーケンサーより得られた配列と一致する増幅断片を得、抗微生物蛋白質の3’領域のDNA配列を決定した。
5)5’-RACE用ディジェネレートプライマーの設計
3’-RACEで決定したDNA配列を基に5’-RACE用のプライマー3つを合成した(Tmは50~65℃)。P4080-4(5’-cgatatacaagcatcaatgc-3’)(配列番号15)、P4080-5(5’-gcgaacggtgatttacagtcaaatccattc-3’)(配列番号16)およびP4080-6(5’-gccttttggacagttactcctacttctaat-3’)(配列番号17)。
6)5’-RACE
上記の脂肪体より回収したmRNAについて、上記合成のプライマーを用いて5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA End Reagent Assembly(GIBCO BRL)を用いて5’領域のcDNAを合成した。
2つのプライマーとキット添付のUniversal Amplification Primerを用いて、上記で合成した5’領域のcDNAのスクリーニングを行った。増幅した断片についてクローニングを行い、DNA配列の決定を行った。DNA配列より推測されるアミノ酸配列が、プロテインシーケンサーより得られた配列と一致する増幅断片を得、抗微生物蛋白質の5’領域のDNA配列を決定した。
7)完全長cDNAの取得
5’RACEより得られた上流配列を基にプライマーを合成し(P4080-7、5’-aagggacgatcaaaatgaaa-3’)(配列番号18)、NotI-dtプライマーとともに上記で合成したcDNAのスクリーニングを行った。増幅した断片についてクローニングを行い、DNA配列の決定を行った。3’、5’-RACEで得られたDNA配列と完全に一致する完全長cDNAを得た。その結果、本発明のタイワンカブトムシ幼虫体液由来の抗微生物蛋白質をコードするcDNAは全長201塩基からなり、66個のアミノ酸をコードしていた。また、アミノ酸配列とDNA配列についてデーターベース(SWISS PROT)の相同性検索(BLAST)を行うと、高い相同性のある配列は存在していないことから、本蛋白質は新規な蛋白質であると考えられた。
なお、上記した4080Daの配列中で唯一決定されなかった第18番目のアミノ酸は、その部分に相当するcDNA配列からシステイン(Cys)であることが明らかとなった。エドマン分解では、システインは解析できないためアミノ酸シーケンシングの際に検出不能であったと思われる。
また、完全長cDNAより推定される蛋白質と、タイワンカブトムシ幼虫体液より得られた蛋白質の分子量に258Daの差があることより、天然蛋白質のC末端の解析をSequazyme C-peptide Sequence kit(Perseptive Biosystems)およびMALDI-TOF MSを用いて行った。その結果、タイワンカブトムシ幼虫体液より精製によって得られた抗微生物蛋白質は、C末端よりセリン(Ser)、フェニルアラニン(Phe)、アラニン(Ala)であると推定され、cDNAより予想される成熟蛋白質のC末端のリジン(Lys)の2残基が切れていることがわかった。
実施例3:合成蛋白質の活性評価
1)蛋白質の合成
cDNAより推定されるアミノ酸配列を基に成熟蛋白質と思われる4種類の蛋白質(SP4080、SP4266、SP4337、SP4523)の合成を蛋白質自動合成機(9050 Plus Pepsynthesizer、Perseptive Biosystems)を用いて、F-mok法で行った。
2)ジスルフィド結合の形成
合成によって得られた蛋白質約30mgを、90mlの10mM Tris-HCl(ph8.0)に溶解した後、5mMの2,2’-bispyridyl disulfide5mlを添加し、室温で10分間撹拌してジスルフィド結合を形成させた。
3)合成蛋白質の精製
ジスルフィド結合を形成させた溶液を、AKTAに接続したμBondasphere φ20×150mm(Waters)カラムに透過し、25-32%アセトニトリル(0.05%TFA)グラジエント、流速12ml/minで溶出を行った。220nmの吸収でモニターリングしながらピークごとに分取を行い、各ピークについてMALDI TOF MS分析を行った。目的の分子量を示すピークを含む画分について、遠心エバポレーターでアセトニトリルを除いた後、AKTAに接続したμBondasphere φ20×150mm(Waters)カラムに透過し、35-40%アセトニトリル(0.05%HFBA)グラジエント、流速12ml/minで溶出を行った。220nmの吸収でモニターリングしながらピークごとに分取を行い、各ピークについてMALDI TOF MS分析を行い目的の分子量を示すピークを回収した。得られた画分をAgilent 1100 Series(Hewlett Packard)に接続したPEGASIL ODS φ4.6×250mmカラム(Senshu)、20-30%アセトニトリルグラジエントで分析し、90%以上の純度を示すことを確認した。また得られた合成蛋白質について、プロテインシーケンサーでアミノ酸配列を確認し、cDNAより推測される蛋白質と同じことを確認した。
4)合成蛋白質の抗微生物活性評価
上記の抗イネ紋枯病菌活性評価方法を用いて、4種類の合成蛋白質の活性評価を行った。その結果、いずれの蛋白質もほぼ同様の活性を示した(表1)。
JP0004214225B2_000002t.gifまた、抗微生物蛋白質の活性スペクトラムを調べるため、イネいもち病菌、コムギ葉枯病菌、シバブラウンパッチ病菌、トマト疫病菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌等の菌株を用いて活性評価を行った。
イネいもち病菌、ムギ葉枯病菌、シバブラウンパッチ病菌についてはイネ紋枯病菌と同様の方法で抗糸状菌活性評価を行った。トマト疫病菌は培地にV8ジュース培地を使用し、20℃で培養を行った。黄色ブドウ球菌、大腸菌は培地にNutrient broth(NB)培地(Difco)を用いて37℃で12時間培養し、A595=0.01になるように調整後、菌溶液500μlに溶解させたNBA培地を全量が5mlになるように添加し、シャーレ(直径8.4cm)に広げ、活性評価用プレートとした。各菌株について抗微生物蛋白質50μgをスポットして、その周りにできた生育阻止円を計測した(表2)。
JP0004214225B2_000003t.gif本抗微生物蛋白質はイネ紋枯病菌、シバブラウンパッチ病菌、黄色ブドウ球、大腸菌に対して4mm以上の生育阻止円を形成する強い活性を示し、イネいもち病菌、コムギ葉枯病菌、トマト疫病菌に対しても活性を示した。
以上のことより、本発明のタイワンカブトムシ幼虫体液由来の抗微生物蛋白質は、種々の植物病原糸状菌および病原細菌に対して抗微生物活性を持つことが示された。
発明の効果
本発明の蛋白質を有効成分として含む製剤を作出すれば、強力かつスペクトラムの広い農園芸用殺菌剤または医薬用抗菌剤としての利用が期待できる。
【配列表】
JP0004214225B2_000004t.gifJP0004214225B2_000005t.gifJP0004214225B2_000006t.gifJP0004214225B2_000007t.gifJP0004214225B2_000008t.gifJP0004214225B2_000009t.gif
【図面の簡単な説明】
図1は、タイワンカブトムシ幼虫体液からの抗微生物蛋白質の最終精製のチャートを表す。
図2は、タイワンカブトムシ幼虫体液から精製した抗微生物蛋白質のMALDI-TOF MS分析を表す。
図面
【図1】
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【図2】
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