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明細書 :特定区画の推定方法及び特定区画の確定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4753169号 (P4753169)
公開番号 特開2005-229886 (P2005-229886A)
登録日 平成23年6月3日(2011.6.3)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発明の名称または考案の名称 特定区画の推定方法及び特定区画の確定方法
国際特許分類 A01B  69/00        (2006.01)
G01C  21/26        (2006.01)
FI A01B 69/00 301
G01C 21/00 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2004-042445 (P2004-042445)
出願日 平成16年2月19日(2004.2.19)
審査請求日 平成19年1月26日(2007.1.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】西村 洋
【氏名】林 和信
個別代理人の代理人 【識別番号】100087480、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 修平
審査官 【審査官】石川 信也
参考文献・文献 特開2002-186309(JP,A)
特開平09-146635(JP,A)
特開2003-270321(JP,A)
特開2001-235342(JP,A)
特開2001-311623(JP,A)
特開2001-251906(JP,A)
特開平06-342498(JP,A)
調査した分野 A01B 69/00
A01C 11/02
G01C 21/00- 21/12
E02F 9/20
特許請求の範囲 【請求項1】
複数に区画化されている領域で、移動体が作業している特定区画を推定する方法であって、
前記移動体に搭載したGPS受信装置が受信するGPS信号から得られる前記移動体の移動軌跡に基づいて前記特定区画の重心位置を算出する第1のステップと、
予め準備した前記複数の区画それぞれの重心位置データを含む位置データを用いて、前記第1のステップで算出した前記重心位置と、前記重心位置データとを比較し、前記算出した重心位置に最も近い所にある重心位置データに対応する区画を前記特定区画として抽出する第2のステップとを含むことを特徴とする特定区画の推定方法。
【請求項2】
前記第1のステップでは、ループ状に移動する前記移動体の軌跡に基づいて、前記特定区画の重心位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の特定区画の推定方法。
【請求項3】
コンピュータに、移動体に搭載したGPS受信装置が受信するGPS信号から得られる前記移動体の移動軌跡に基づいて前記特定区画の重心位置を算出する第1のステップと、
予め準備した前記複数の区画それぞれの重心位置データを含む位置データを用いて、前記第1のステップで算出した前記重心位置と、前記重心位置データとを比較し、前記算出した重心位置に最も近い所にある重心位置データに対応する区画を前記特定区画として抽出する第2のステップとを実行させて、複数に区画化した領域で移動体が作業している特定区画を推定するプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、領域の所定区画で作業を行う作業者が自己位置を正確に確認できるようにする技術に関する。また、領域の特定区画に入って作業を行おうとする者が作業開始前にその区画を認識できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、農地は広い領域であり、複数の圃場(区画)に分けられている。そして、従来から圃場毎に栽培されている作物が管理されていた。また、近年においては、精密農業など生産効率及び環境への負荷低減を目的とした新たな農法が注目されている。また、安全な農産物供給が強く求められている。そのために、農産物に関する生産管理データを作成するためには、圃場単位での細かい生産履歴情報が必要となる。よって、最近においては特に、圃場毎の詳細な情報を取得することが重要であり、作業者が作業を行っている所定の圃場を特定することが必要となっている。ところが、農地は広大であり目標物が無い場合が多いので、作業者が自己位置を確認するこが極めて困難である。

【0003】
そこで、農地内で何処の圃場にいるかを認識するため、例えば特許文献1に記載されるようにGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)を利用して農用作業車の位置を確認できるようにした提案がある。
【0004】
上記特許文献1の農用作業車は、GPS受信装置、圃場に関する管理情報データベースを備えており、複数の圃場における任意の圃場の所在地をディスプレイ表示し、また、GPS受信装置に基づく自己位置確認機能を使用して自動操行する。このような機能を備えた農用作業車であれば、作業者は自己がいる圃場をディスプレイで確認できるので圃場を確認でき、更に自動操行するので効率よい農作業が行える。
【0005】

【特許文献1】特開2001-251906号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圃場内での任意の自己位置を正確に確認し、さらに自動操行も行うようにするには誤差が少ない高性能のGPS受信装置が必要となる。このような高性能のGPS受信装置は高価であり、農用作業車に搭載するとコストが著しく上昇してしまう。よって、現時点においては特許文献1に開示する技術は実用的でない。
【0007】
ところで、近年、色々なタイプのGPS受信装置が提供されている。一般に単独測位タイプのGPS受信装置は、低価格であるが数メートルから十数メートルの誤差を含んでいる。これに対して、ディファレンシャルGPS(DGPS)受信装置は誤差補正を行うようにしており、誤差が数メートル以下となる。さらに、最近では極めて高精度なRTK(Real Time Kinematic)-GPS受信装置も提供されるようになっており、その誤差は数cmにまで縮小している。
【0008】
特許文献1で示される農用作業車を作製するためには、DGPS受信装置より高度なRTK-GPS受信装置を搭載することが必要となる。しかし、このRTK-GPS受信装置は現時時点で極めて高価であり、農用作業車に搭載することはコスト面から現実的ではない。広く普及を図るためには、コストを低く抑えることが重要な要素の1つである。
【0009】
その一方で、価格が安く、カーナビゲーション装置等で利用されている単独測位タイプのGPS受信装置は、上記のように誤差が大きいため圃場で利用することについて検討がされていないという実情がある。しかし、例えば収穫等の農作業を行う場合などは、刈取り作業が完了した時に圃場を確認できればその収穫データの活用を図ることができる。すなわち、行う作業によっては、作業開始時に作業者が正確な自己位置を確認することを必要としない場合がある。
【0010】
上記とは逆に、播種作業、施肥作業等を行う場合には圃場毎に行うべき作業が異なり、また種子や肥料の繰出量が予め決定されているので、作業者は作業前に対象となる圃場を確認することが必要となる。しかし、自己位置を確認することに関し全てをGPS受信装置に依存する必要はない。すなわち、誤差の大きなGPS受信装置を採用した場合でも、作業者に負担とならない操作を行うだけで対象の圃場を特定できるのであれば、高価格のGPS受信装置を用いる必要は無い。
【0011】
よって、本発明の第1の目的は、価格が比較的安価なGPS受信装置を活用し、作業を行いながら自己位置を確認できる特定区画の推定方法を提案することである。また、第2の目的は、最後に作業者に選択させることで、価格が比較的安価なGPS受信装置を活用して、作業前に対象となる特定区画を確定できる特定区画の確定方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記第1の目的は、複数に区画化されている領域で、移動体が作業している特定区画を推定する方法であって、前記移動体に搭載したGPS受信装置が受信するGPS信号から得られる前記移動体の移動軌跡に基づいて前記特定区画の重心位置を算出する第1のステップと、予め準備した前記複数の区画それぞれの重心位置データを含む位置データを用いて、前記第1のステップで算出した前記重心位置と、前記重心位置データとを比較し、前記算出した重心位置に最も近い所にある重心位置データに対応する区画を前記特定区画として抽出する第2のステップとを含む特定区画の推定方法により達成できる。

【0013】
本発明では、まず前記移動体の移動軌跡に基づいて作業を行っている特定区画の重心位置が算出され、次に予め準備された位置データとの比較により最も近い所に実際の重心位置がある区画が前記特定区画であると推定される。よって、移動体に位置を測位するために搭載するGPS受信装置が、ある程度の誤差を含んでいる場合でも、作業を行っている特定区画を確実に推定できる。これにより、価格なGPS受信装置を活用して、低コストで特定区画を確認できるようになる。この場合、前記位置データには前記複数の区画それぞれの重心位置データを含んでおり、前記第2のステップでは前記第1のステップで算出した重心位置と前記重心位置データとを比較して、前記特定区画を抽出する。このように、位置データの1つとして各区画の重心位置データが準備されていれば、GPS信号から得た図形上の重心位置との比較で短時間に特定区画を推定できる。また、各区画に関して1つの重心位置データでよいので、データ量を抑制できる。

【0014】
前記第1のステップでは、ループ状に移動する前記移動体の軌跡に基づいて、前記特定区画の重心位置を算出するという手法を採用することができる。移動体がループ状に移動し元の場所近くに戻ったときに、その軌跡が円形、多角形等の図形を描くこの図形を利用して特定区画のおおよその重心を求めることができる。
【0016】
また、上記目的は、コンピュータに、移動体に搭載したGPS受信装置が受信するGPS信号から得られる前記移動体の移動軌跡に基づいて前記特定区画の重心位置を算出する第1のステップと、予め準備した前記複数の区画それぞれの重心位置データを含む位置データを用いて、前記第1のステップで算出した前記重心位置と、前記重心位置データとを比較し、前記算出した重心位置に最も近い所にある重心位置データに対応する区画を前記特定区画として抽出する第2のステップとを実行させて、複数に区画化した領域で移動体が作業している特定区画を推定するプログラムによっても同様に達成できる。

【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1の発明によれば、比較的低価格のGPS受信装置を用いて作業中に作業を行っている区画を推定できる。第2の発明によれば、比較的低価格ののGPS受信装置を用いて作業前に作業対象の区画を確定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施例1では特定区画の推定方法の一例を示す。また、実施例2では特定区画の確定方法の一例を示す。より具体的には、実施例1では、作業者が収穫等の農作業を行っている特定の圃場(特定区画)を認識する方法を示している。また、実施例2は、作業者が施肥等の農作業を行う特定の圃場(特定区画)を作業前に確定する方法を示している。
【実施例1】
【0023】
作業者が広大な農地(領域)の一区画(圃場或いはメッシュと称される)で作業している場合に、その圃場を正確に認識することは極めて困難である。その一方で精密農業等を行うためには各圃場の収穫データを正確に収集することが必要となる。前述のように高精度のGPS受信装置を用いることで正確に自己位置を知ることができる。しかし、このようなGPS装置は著しく高価であり、これを用いることは現時点で実用的でない。よって、ある程度の誤差(数m~数十m程度の誤差)を含む廉価なGPS受信装置(低価格GPS装置と称す)を活用し農作業をしている圃場(特定区画)を確認できる様にしたのが実施例1である。
【0024】
実施例1の詳細な説明を行う前に、図1を参照して、その大略を説明する。図1は広い農地(領域)TEの特定圃場(1区画)H内で、作業者がコンバインFVを運転して収穫作業を行っている様子を模式的に示した図である。通常の収穫作業は、矢印で示すように、先ず外側の作物を環状に刈取り、順次に作業半径を狭めて内側にある作物の刈取りを行う。このように圃場H内を移動するコンバインFVは、ループ状の軌跡を描いて徐々に内側に移行する。なお、ここで言うループ状とは、円形或いは図1で示すように四角形の軌跡のみを意味するものではない、実際の圃場の形状は多岐であるので特定の形状というものはない。よって、コンバインFVが刈取り行って元の場所の近くに戻り、続いて先の場合より内側に入って同じ動作を行う。このように移動するコンバインFVの軌跡をここではループ状と称している。なお、コンバインFVは中心へ向かうように移動することになるので全体の軌跡は渦巻き状と見ることもできる。
【0025】
さて、本実施例1では低価格GPS受信装置を利用する。前述したように低価格GPS受信装置は、比較的大きな誤差を含んでいるのでコンバインFVの現在位置を正確に知ることは困難である。しかし、誤差は含んでいるものの、ある圃場内をコンバインFVが移動した場合、所定の移動軌跡は取得できる。上記のように刈取り作業を行うコンバインFVは、ループ状に移動するので圃場内を一周して元の場所に近い所に戻る。このときのコンバインFVの軌跡に着目すると、所定の形状を繰り返し、描いている。図1で示した例では圃場が正方形であるので、圃場内を一周したコンバインFVは略正方形の軌跡を描くことになる。この正方形の重心位置GCは低価格GPS受信装置から供給されるGPS信号を数学的に解析して求めることができる。すなわち、GPS信号には測位した場所の緯度経度情報等の位置情報を含むので、これに基づいてコンバインFVが移動した軌跡から正方形の図形を特定できる。そして、この図形の重心位置GCは演算により求めることができる。
【0026】
一方、圃場の位置データを予め準備しておく。この位置データには少なくとも各圃場の正確な重心位置MGCのデータ(重心位置データ)が含まれている。この重心位置データと、前記のようにGPS信号から求めた重心位置GCとを比較する。そして、重心位置GCから最も近い所に地図データ上の重心位置MGCがある圃場を、コンバインFVが作業をしている特定の圃場であると推定する。
【0027】
上記のようにGPS信号から求める重心位置GCは、低価格GPS受信装置を用いるのでGPS信号自体に誤差を含んでおり、また、コンバインFVの軌跡を用いるので作業をしている圃場の正確な重心位置を知ることはできない。しかし、1つの圃場は一般に30アール程度もあり、十数m以内の所に隣の圃場の重心位置が存在することはない。よって、低価格GPS装置を使用して誤差を含んだ図形上の重心位置GCを求め、この位置から近い所に重心位置MGCがある圃場を、作業をしている圃場であると推定できる。実施例1の圃場の推定方法は以上の理論に基づいている。以下、実施例1の詳細な構成を説明する。
【0028】
図2は、圃場の推定方法を実施する際に利用するナビゲート装置1のハード構成例を示した図である。本ナビゲート装置1はGPS信号を取得するためのアンテナ2を備えたGPS(Global Positioning systems)受信装置3、I/O(インプット/アウトプット)コントローラ4、メインコントローラ5を備えている。GPS受信装置3は、GPS衛星からの電波(GPS信号)を受信し、ナビゲート装置1の現在位置を測位する。特にこのGPS受信装置3には、単独測位型の低価格GPS受信装置を採用することができる。I/Oコントローラ4は、GPS受信装置3とメインコントローラ5との間で情報の入出力を制御する。メインコントローラ5はナビゲート装置1の全体を制御する他、特にGPS信号を用い前述したような作業圃場を推定するための各種処理を実行する。メインコントローラ5は、作業者が種々の入力を行うための複数の指示入力キー6及び画面表示を行うためのディスプレイ7を備えている。このナビゲート装置1は、例えばコンバインの計器類が収納されている表示パネル部にセットして使用する。メインコントローラ5はデータの読取、書込が行えるメモリカード9を使用できるように設計されていることがより望ましい。
【0029】
図3は、図2に示したナビゲート装置1のメインコントローラ5の詳細が確認できるように示した機能ブロック図である。メインコントローラ5は、インターフェース部11、記憶部12、入力部13、制御部14、表示部15、カードインターフェース16、バス17を有する。インターフェース11は、I/Oコントローラ4との間で情報の受け渡しをコントロールする。カードインターフェース16は、バス17とメモリカード9との間でデータの受け渡しを行う。なお、ナビゲート装置1は、カードインターフェース16を介してメモリカード9に格納された情報を受け取ったり、取得した情報をメモリカード9に格納して外部のコンピュータで利用できるようになっている。
【0030】
記憶部12には、圃場に関する地図データが記録され、また制御部14が実行する圃場位置を推定するためのプログラム等が格納されている。例えば記憶部12は、CD-ROM、DVD-ROM或いはHDD等の記憶装置により構成される。記憶部12に記憶されている上記地図データは、圃場に関する緯度経度データ等の位置データを含めることができる。少なくともこの位置データには、各圃場の正確な重心位置が算出できる重心位置データが含まれている。
【0031】
入力部13は作業者からの入力を受け付けるためのもので、図2に示した指示入力キー6が相当する。制御部14はCPU等を中心に構成したマイクロコンピュータである。この制御部14は、記憶部12に記録された所定のプログラムをロードし、ナビゲート装置1の全体を制御する。そして、GPS受信装置3からのGPS信号及び記憶部12の地図データを利用して、コンバインの移動軌跡から作業圃場を推定するための演算処理を行う。この処理の詳細な内容については、後に詳述する。表示部15は、作業者に対して情報提供の画面や入力画面等の種々の画面を表示する。この表示部15に自己位置を示すナビゲーション画面を表示できるように設定してもよい。図2に示したディスプレイ7がこれに相当する。
【0032】
図4は、制御部14が記憶部12から圃場位置を推定するプログラムを読み出し、実行する処理の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは例えば作業者が収穫作業を行うため、ある圃場に入ったときに所定のスイッチ(図3の13)がオンされたとき制御部14により実行される。
【0033】
制御部14は、GPS受信装置3から供給されるGPS信号に基づいてループ状の軌跡を描いているか、否かを監視する(S11)。ここでは、GPS信号に含む緯度経度情報を利用することができる。ループ状に移動するコンバインは、測位を開始した場所に近い所に戻る。よって、緯度経度データを確認することでコンバインがループ状の動作を行っているかを確認できる。なお、コンバインは一周すると徐々に内側へと移行するので、厳密には元の位置には戻らない。そこで、制御部14は逐次に測位される緯度経度値が、測位を開始した場所から所定範囲内に入ったときにコンバインがループ状に移動している、すなわち軌跡がループ状であると判断する。制御部14のこのような判断は、正確を期するため2回連続して上記の移動状態を確認したときに軌跡がループ状であるとの判断を行うようにしてもよい。
【0034】
制御部14は、軌跡がループ状であると判断すると、コンバインが描いた軌跡の形状を特定し(S12)、その図形の重心位置を算出する(S13)。GPS信号を受信する周期が短い場合には、この軌跡は複雑な形状となる。ここで求める図形の重心位置はラフなものでよいので、採用するGPS信号を省いて近似的に図形を定めてもよい。図形が確定すれば、その重心位置は比較的簡単に求めることができる。よって、GPS信号から収穫作業をしている圃場の重心位置(図形の重心位置)の緯度経度を算出できる。前述したように、このように求めた図形の重心位置には誤差が含まれている。
【0035】
続いて、制御部14は記憶部12から地図データを読み出し、この地図データとステップ13で求めた図形の重心位置とを比較する(S14)。地図データに、各圃場の重心位置データとして詳細な緯度経度の情報まで含んでいる場合にはこれを用いることができる。地図データに圃場4隅等のポイントとなる緯度経度の情報が含まれる場合には、制御部14はこれを用いて演算を行って正確な重心位置を算出する。地図データに各圃場の重心位置データが準備されている場合には、GPS信号に基づく図形の重心位置と重心位置データとを比較するという簡単な処理となる。また、このように重心位置データが準備されていれば、重心位置を求めるためのデータ量を少なくできる。
【0036】
そして、制御部14は、GPS信号から求めた図形の重心位置に、最も近い所に重心がある圃場を抽出し(S15)、その圃場を現在、収穫作業が行われている圃場であると推定して処理を終了する(S16)。以上のように、本実施例1によると、比較的大きな誤差を含むGPS受信装置3を用いても作業と並行して圃場位置を確認できる。なお、図4で示したフローチャートは、コンバインが1周してループ状の軌跡を描いた場合に、これに基づいて1度だけ図形の重心位置を求める処理となっている。しかし、このような処理に限らず、例えばコンバインが3周するまで連続して図形の重心位置を算出し、3回の平均値を真の図形の重心位置として採用し、これを地図データと比較するようにしてもよい。
【0037】
また、実施例1の方法を実施すると、作業者は圃場を確認することなく作業を開始しても収穫作業が完了したときには、その圃場が農地内の何番地の圃場であるかを確認できる。よって、作業完了時に収穫データと圃場データとを関連付けることができる。そのために例えば本ナビゲート装置1に付加的な機能として、収穫データを収集できるように設定してもよい。このような農業情報データはディスプレイ7に表示して作業者が確認できる。また、この農業情報データをメモリカード9に書込ば、外部のコンピュータでも利用でき精密農業に利用できる。
【0038】
なお、図2に示したナビゲート装置1は、位置を測位するためにGPS受信装置3を採用した場合を例示している。しかし、更に方位センサやコンバインに車速センサ等を設け、これらセンサをI/Oコントローラを介して、メインコントローラ5に接続してもよい。このようにメインコントローラ5に新たな情報を供給すると、GPS受信装置3の誤差が小さくなるように補正できる。よって、精度を上げて圃場の推定を行うことができる。以上説明した実施例1の方法は、価格が廉価なGPS受信装置を利用して圃場の推定ができるので実用的価値が高い。なお、実施例1ではコンバインを用いた収穫作業を行う場合を例示したが、作業は収穫作業に限るものではない。
【実施例2】
【0039】
実施例1は収穫作業と並行して作業していた圃場を認識する方法である。しかし、播種、施肥等の農作業を行う場合には、播種量や施肥量が圃場毎で異なる。そのため、圃場毎に種子繰出や肥料繰出の機械設定をしなければならない。よって、これらの作業を行う前には、対象とする圃場を特定することが必要となる。実施例2の場合も、実施例1の場合と同様に低価格で汎用タイプのGPS受信装置を用いるのではあるが作業前に作業対象の圃場を特定できるようにした点が異なっている。
【0040】
実施例1の場合と同様に、実施例2の詳細な説明を行う前に、図5を参照して、その大略を説明する。図5は広い農地(領域)TEで施肥作業を行う特定圃場(圃場H-A)に自律型の施肥装置MVが向かっている様子を模式的に示した図である。農地は広大で目印が無いと施肥作業を行うべき圃場H-Aと、隣の圃場H-Bとを間違える可能性が出てくる。特に両圃場の入り口AEとBEとが隣接している場合には誤りが発生し易い。なお、各圃場を区別できるように地番標(標識)を立てる等の対処で、作業前に圃場を確認することは可能である。しかし、標識を作製して、圃場毎に立てるという作業は費用が係り、大変な面倒である。また、標識を定期的に交換することが必要となり、非効率的でもある。また、高精度のGPS受信装置を利用すれば、ナビゲーション機能を利用して目的の圃場H-Aを確実に特定できるが、前述したように極めて高価であるため現実的でない。
【0041】
その一方、前述したように低価格GPS受信装置は比較的大きな誤差を含んでいるので施肥装置MVの現在位置を正確に知ることは困難である。図5で示す場合、施肥装置MVが農道上を走行しているにもかかわらず、ナビゲート装置のディスプレイはずれた位置を表示することになる。しかし、農地は広大であり、GPS受信装置が誤差を含んでいても自己の現在位置と進行方向はある程度の精度で確認できる。図6(A)はナビゲート装置のディスプレイ7に自己位置SPを表示させた場合の例であり、自己位置SPの位置がずれている。しかし、広い農地内ではどの圃場の近くに居るか、またどの方向へ進行しているかは確認できる。そこで、図6(B)に示すように目的の圃場H-Aの周辺に来たときに、作業者がその周辺を確認できるようにディスプレイ7に表示する。その際、予め準備した地図データを利用して圃場の番地も合わせてディスプレイ7に表示するようにすれば、作業者は目的の圃場を簡単に選択できる。このように作業前に作業対象の圃場を確認できれば、その圃場に対して行う播種や施肥の設定条件を確認してから作業が行える。よって、従来のように、圃場を誤ることが無くまた、目的の作業を確実に実行できる。実施例2の圃場の確定方法は以上の理論に基づいている。以下、実施例2の詳細な内容を説明する。
【0042】
本実施例2で使用するナビゲート装置は、図2及び図3で示した実施例1のハード構成と同様である。よって、本実施例2で使用するナビゲート装置1について重複する説明は省略し、実施例1と異なる点を説明する。実施例1の場合にはディスプレイ7上に自己位置を示すナビゲーション画面を表示することは必須ではなかった。しかし、本実施例2ではGPS受信装置3のGPS信号に基づいてディスプレイ7上にナビゲーション画面を表示する。そして、GPS信号から推定して目的の圃場(H-A)の周辺に近付いたときに、少なくとも圃場の入り口が確認できる程度の拡大表示を行う。このように表示を行うことで作業者が自らの選択で目的の圃場を確認(特定)して作業を開始できる。なお、本実施例2の場合には、作業対象の圃場を確定するためのプログラムが記憶部12に格納されており、メインコントローラ5の制御部14がこのプログラムを読出して所定の処理を実行する。なお、記憶部12には圃場毎の種子繰出量や肥料繰出量に関する設定データを格納しておき、圃場の確定後に制御部14がこれらデータを読み出して播種装置や施肥装置等の設定を自動で行うようにしておくことが望ましい。
【0043】
図7は、制御部14が記憶部12から作業対象の圃場を確定するためのプログラムを読み出して、実行する処理の一例を示したフローチャートである。このフローチャートは、例えば作業者が所定のスイッチ(図3の13)で施肥作業を行う圃場がH-Aであると指示入力を行ったときに制御部14により実行される。
【0044】
制御部14は、GPS受信装置3から供給されるGPS信号に基づいて、自己位置(ナビゲート装置1の位置)をディスプレイ7上に通常の状態で表示する(S21)。この表示では、自己位置SPが正確ではなく誤差があるが、農地内でのおおよその位置や周辺の圃場は推定できる(図6(A)参照)。なお、このステップ21では、制御部14が地図データを読み出して、周辺圃場の番地(図示の例ではH-B、H-C)を合わせて表示するのが好ましい。このように番地を合わせて表示すれば、作業者が目的の圃場までの距離感を得やすくなる。
【0045】
制御部14は、ステップ21の通常のナビゲーション表示を行いながら、入力指示のあった圃場H-Aの近くまで移動したかを監視する(S22)。このとき、制御部14はGPS受信装置3から供給されるGPS信号から得る位置情報と、地図データをマッチングさせて自己位置がどの当たりであるかを確認する。そして、制御部14は、例えばGPS信号から推定される自己位置が地図上の圃場H-Aから100m以内に入ったら、ディスプレイ7の表示を圃場の入り口が確認できる程度に拡大画像を表示(描画)する(S23)。GPS信号には誤差を含むが、圃場の入り口が確認できる程度のスケールで周辺領域を表示する場合には殆ど問題とならない。作業者はディスプレイ7に表示された画像を参考にして、簡単に作業対象の圃場を特定する。
【0046】
そして、制御部14は、圃場が特定されたことを確認すると、その圃場に関する種子繰出量や肥料繰出量の設定データを記憶部12から読み出して、必要な設定を播種装置や施肥装置等の機械に自動設定して(S24)、このフローチャートによる処理を終了する。このように圃場確定後における自動設定まで行えば、圃場での作業を効率的に行える。
【0047】
以上のように、ナビゲート装置1の表示が切替わるので、作業者は目的の圃場H-Aに近付いたときにその周辺をディスプレイ7の画面で確認しながら進行できる。よって、作業者は圃場H-Aの入り口AEを確実に確認してから、圃場内に入り施肥作業を行うことができる。以上のように本実施例2によると、誤差を含む低価格のGPS受信装置を活用して圃場を特定するための表示を行い、最終的に対象圃場を判断するのは作業者に委ねるという手法を採用するので低コストで圃場を特定できる。

【0048】
また、実施例2の方法を実施すると作業者は圃場を誤ることなく施肥等の作業を確実に行える。よって、実施例1の場合と同様に、作業完了時に施肥データと圃場データとを関連付けることができる。このような農業情報データはディスプレイ7に表示して作業者が確認できる。また、この農業情報データをメモリカード9に書込めば、外部のコンピュータでも利用でき精密農業に活用できる。
【0049】
なお、本実施例2についてもナビゲート装置1に方位センサや速度センサ等を設け、これらセンサをI/Oコントローラを介して、メインコントローラ5に接続してもよい。このようにメインコントローラ5に新たな情報を供給すると、GPS受信装置3の誤差が小さくなるように補正できる。よって、精度を上げて作業をすべき圃場を確定できる。以上説明した実施例2の方法は、価格が廉価なGPS受信装置を利用して圃場の推定ができるので実用的価値が高い。
【0050】
以上、本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。前述した実施例では領域の一例として農地、移動体の一例としてコンバイン、施肥装置等の農業用車両を挙げたがこれに限定するものではない。本発明は複数に区画化されている領域を移動する際に特定の区画を推定する必要がある場合に適用される。同様に、本発明は複数に区画化されている領域を移動体が作業すべき特定区画を確定する必要がある場合に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】農地の特定圃場内で、作業者がコンバインを運転して収穫作業を行っている様子を模式的に示した図である。
【図2】圃場の推定方法を実施する際に利用するナビゲート装置のハード構成例を示した図である。
【図3】図2に示したナビゲート装置のメインコントローラの詳細が確認できるように示した機能ブロック図である。
【図4】制御部が記憶部から圃場を推定のプログラムを読み出して、実行する処理の一例を示したフローチャートである。
【図5】施肥作業を行う特定圃場に自律型の施肥装置が向かっている様子を模式的に示した図である。
【図6】(A)はナビゲート装置のディスプレイに自己位置を表示させた例を示した図、(B)は目的の圃場H-Aの周辺に来たときのディスプレイの表示を示した図である。
【図7】制御部が記憶部から作業対象の圃場を確定するためのプログラムを読み出して、実行する処理の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 ナビゲート装置
2 アンテナ
3 GPS受信装置
4 I/Oコントローラ
5 メインコントローラ
7 ディスプレイ
12 記憶部
14 制御部
H 圃場
GC 重心位置
FV コンバイン
MV 施肥装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6