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明細書 :バイオマスの糖化・回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5263859号 (P5263859)
公開番号 特開2008-266228 (P2008-266228A)
登録日 平成25年5月10日(2013.5.10)
発行日 平成25年8月14日(2013.8.14)
公開日 平成20年11月6日(2008.11.6)
発明の名称または考案の名称 バイオマスの糖化・回収方法
国際特許分類 C07H   3/06        (2006.01)
C08B  15/08        (2006.01)
C08B  15/00        (2006.01)
C08B  30/12        (2006.01)
C08B  37/08        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
B01D  15/08        (2006.01)
B01J  20/18        (2006.01)
B01J  20/12        (2006.01)
G01N  30/02        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
FI C07H 3/06
C08B 15/08
C08B 15/00
C08B 30/12
C08B 37/08 A
B09B 3/00 304Z
B01D 15/08
B01J 20/18 B
B01J 20/12 A
G01N 30/02
G01N 30/88 N
G01N 30/88 H
G01N 30/88 201X
請求項の数または発明の数 14
全頁数 15
出願番号 特願2007-112671 (P2007-112671)
出願日 平成19年4月23日(2007.4.23)
審査請求日 平成22年4月5日(2010.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】徳安 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】井上 明子
参考文献・文献 特開2005-229822(JP,A)
特開2005-194241(JP,A)
特開2007-246497(JP,A)
特開昭62-202806(JP,A)
特開昭62-178598(JP,A)
特表2001-511418(JP,A)
特表平11-506934(JP,A)
調査した分野 C07H 3/06
B01D 15/08
B01J 20/12
B01J 20/18
B09B 3/00
C08B 15/00
C08B 15/08
C08B 30/12
C08B 37/08
G01N 30/02
G01N 30/88
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
バイオマス原料の硫酸処理後に溶出した多糖あるいはオリゴ糖を、タルク、パイロフィライト、ゼオライト、スメクタイト、酸性白土、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト、マイカ、緑泥石、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、蛇紋石、およびモンモリロナイトからなる群から選ばれた1種以上の鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする不溶性素材を用いて、硫酸水溶液と分離することを特徴とする、バイオマスの糖化・回収方法。
【請求項2】
不溶性素材の有効成分が活性白土である、請求項1に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項3】
硫酸水溶液と分離した後、不溶性素材に結合した多糖あるいはオリゴ糖を加水分解し、低分子オリゴ糖あるいは単糖として溶出させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項4】
硫酸水溶液と分離した後、不溶性素材に接触させる硫酸水溶液濃度を64wt%以下に低下させて、不溶性素材に対する糖の結合性を低下させることによって、不溶性素材に結合した糖を遊離させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項5】
不溶性素材がカラムに充填され、カラムクロマト法により不溶性素材と糖の結合および硫酸水溶液と糖の分離を行うことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項6】
不溶性素材を再使用することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項7】
バイオマス原料がセルロースを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項8】
バイオマス原料が、稲わら、籾殻、麦わら、コーンストーバ、バガス、単子葉植物茎葉、竹、芋、双子葉草本植物茎葉、広葉樹材、および針葉樹材からなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項9】
バイオマス原料が澱粉および/または砂糖を蓄積する植物体の一部または全部であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項10】
バイオマス原料がキチンを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法。
【請求項11】
タルク、パイロフィライト、ゼオライト、スメクタイト、酸性白土、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト、マイカ、緑泥石、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、蛇紋石、およびモンモリロナイトからなる群から選ばれた1種以上の鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする、硫酸水溶液中の多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤。
【請求項12】
鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物が活性白土である、請求項11に記載の多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の吸着剤を用いた、糖分析用または糖分取用カラム。
【請求項14】
請求項13に記載のカラムを用いた、糖の分析または分取方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスの硫酸糖化工程に関連するものである。セルロース、澱粉やキチンなどを含む原料を硫酸加水分解した際に生成する、硫酸可溶性オリゴ糖や多糖に対して適度な親和性をもつ不溶性素材を利用して、硫酸と糖の分離を行う。また、該不溶性素材に吸着したオリゴ糖や多糖を希硫酸条件下で加水分解し、低分子オリゴ糖や単糖に変換して回収する。
【背景技術】
【0002】
バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると考えられている。
【0003】
リグノセルロース系バイオマスの糖化技術開発は200年の歴史を有している。酸糖化を中心に展開した糖化技術開発については、一時は、硫酸を用いた国産実用機の稼働に漕ぎ着けたが、硫酸回収プロセス上の問題が顕在化し、間もなく操業停止となり、硫酸回収問題は、「濃硫酸法の生命線」といわれてきた。もしも、糖分離・硫酸回収技術が開発された場合には、これまでの硫酸糖化法の見直しが急速に加速し、実用化の可能性が飛躍的に向上する。
【0004】
また、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、稲、ムギ、キャッサバ、サゴ等をホールプラントとして利用してエタノールを生産する際には、澱粉とセルロースを両方含む混合物からの簡単な糖化法の開発が求められる。単数あるいは複数ステップの硫酸処理により澱粉とセルロースを両方抽出し、グルコースの回収率を向上させるための技術開発がポイントとなる。
【0005】
また、食品産業等では、様々な多糖バイオマスを酸糖化により低分子化し、オリゴ糖または単糖を回収する工程、特に用いる酸を効率的に回収する工程の開発が求められている。キチン質バイオマスの低分子化に際しても、糖質の回収時に酸を希釈する必要があるため、酸の回収・再利用が困難となる。その他の植物、海藻、動物、微生物由来のバイオマス原料からも、有用な糖質を安価に回収する技術が求められている。
【0006】
さらに、糖質を効率的に吸着し、その相互作用の程度の差により、異なる構造の糖質の分離、または糖質と糖質以外の物質との分離を行うための吸着剤や分析・分取方法などが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
糖加水分解後の、多糖やオリゴ糖を含む65wt%以上の濃度の硫酸溶液については、イオン交換樹脂により、中性糖と硫酸の分配係数の差を利用して分離する方法が検討されている。そのなかでも、疑似移動層を用いたクロマト分離装置を用いた発明が注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。カラムクロマトグラフィーの場合、水を溶離液として両者を分離し、中性糖は希薄硫酸溶液とともに溶出することから、水酸化カルシウムなどにより中和し、硫酸を石膏として回収する。遅れて溶出する硫酸は、回収後に濃縮して再利用する。しかしながら、この方法でも、高価な樹脂の劣化が起こり、製造コストに反映されることから、現時点で実用技術にはなっていない。陰イオン交換樹脂膜や電気透析膜を利用した分離技術についても検討されているが、糖漏れや膜の劣化等の問題が発生する。
【0008】
また、硫酸を石膏や硫安等として回収した後に、硫酸を再生するための技術についても検討されてきたが(例えば、非特許文献1参照)、有効な方法とはならなかった。石膏や硫安が大量に生成する場合には、安定的かつ大規模な需要の確保が不可欠となる。
食品産業や糖質素材産業では、多糖の低分子化を目的として酸を使用する場合が多い。その際の酸は回収しない場合が多く、中和工程も含めて製造コストに影響することとなる。
【0009】
<patcit num="1"><text>特表平11-506934号公報</text></patcit><patcit num="2"><text>特表2001-511418号公報</text></patcit><nplcit num="1"><text>鈴木宏之著「バイオマスの科学的転換利用とエンジニアリングアプローチ」、武田書店、H12年発行</text></nplcit>
【課題を解決するための手段】
【0010】
セルロースやキチンなどの結晶性多糖は65wt%以上90wt%以下、好ましくは72wt%以上85wt%以下の硫酸水溶液と接触させることにより、結晶構造が膨潤するとともに部分的に加水分解を受けて、硫酸水溶液中に溶出する。植物系バイオマス原料中などに存在するセルロースを糖化する際には本処理が有効であり、高分子セルロースの殆どは、多糖またはオリゴ糖の形で硫酸水溶液中へ溶出する。この混合物を希釈して希酸加水分解すれば、多糖やオリゴ糖は単糖にまで加水分解される。しかしながら、希硫酸処理後にグルコースと希硫酸を分離することが困難であるほか、回収された希硫酸を再度、65wt%以上に濃縮する際には相当のエネルギーを要する。
【0011】
このような多糖の硫酸糖化を行う際の問題に対して、本発明者は、濃度の高い硫酸により多糖を糖化する際には、重合度の高い状態で糖を硫酸水溶液に溶出させた後、濃度の高い硫酸と重合度の高い糖とを、可能な限り硫酸の濃度を下げずに分離してしまうことが重要であると考えた。大部分の硫酸と分離された重合度の高い糖は、残存する硫酸を希釈した後に、再度加水分解を行うことにより、低分子のオリゴ糖や単糖にまで加水分解できる。そこで、硫酸処理後に溶解する糖質を吸着する活性をもつ不溶性素材をスクリーニングした結果、例えば、鉱物の硫酸処理物などが糖を吸着する現象を見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【0012】
すなわち、請求項1に係る本発明は、バイオマス原料の硫酸処理後に溶出した多糖あるいはオリゴ糖を、タルク、パイロフィライト、ゼオライト、スメクタイト、酸性白土、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト、マイカ、緑泥石、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、蛇紋石、およびモンモリロナイトからなる群から選ばれた1種以上の鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする不溶性素材を用いて、硫酸水溶液と分離することを特徴とする、バイオマスの糖化・回収方法である。
請求項2に係る本発明は、不溶性素材の有効成分が活性白土である、請求項1に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、硫酸水溶液と分離した後、不溶性素材に結合した多糖あるいはオリゴ糖を加水分解し、低分子オリゴ糖あるいは単糖として溶出させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、硫酸水溶液と分離した後、不溶性素材に接触させる硫酸水溶液濃度を64wt%以下に低下させて、不溶性素材に対する糖の結合性を低下させることによって、不溶性素材に結合した糖を遊離させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、不溶性素材がカラムに充填され、カラムクロマト法により不溶性素材と糖の結合および硫酸水溶液と糖の分離を行うことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、不溶性素材を再使用することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、バイオマス原料がセルロースを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、バイオマス原料が、稲わら、籾殻、麦わら、コーンストーバ、バガス、単子葉植物茎葉、竹、芋、双子葉草本植物茎葉、広葉樹材、および針葉樹材からなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項に係る本発明は、バイオマス原料が澱粉および/または砂糖を蓄積する植物体の一部または全部であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項10に係る本発明は、バイオマス原料がキチンを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のバイオマスの糖化・回収方法である。
請求項11に係る本発明は、タルク、パイロフィライト、ゼオライト、スメクタイト、酸性白土、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト、マイカ、緑泥石、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、蛇紋石、およびモンモリロナイトからなる群から選ばれた1種以上の鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする、硫酸水溶液中の多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤である。
請求項12に係る本発明は、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物が活性白土である、請求項11に記載の多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤である。
請求項13に係る本発明は、請求項11又は12に記載の吸着剤を用いた、糖分析用または糖分取用カラムである。
請求項14に係る本発明は、請求項13に記載のカラムを用いた、糖の分析または分取方法である。


【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオマス原料の硫酸処理後における糖質及び硫酸の効率的な回収技術を提供することが可能となる。
また、ヘミセルロース、非晶性セルロース、澱粉等のように64wt%以下の希硫酸処理によって加水分解することにより低分子オリゴ糖や単糖となる糖質と65wt%以上の濃度の硫酸処理によって膨潤・溶解する結晶性セルロースの両方を含むバイオマス原料を用いる場合は、例えば、先に希硫酸処理によって前者を低分子化させた後に、結晶性セルロースを含む画分を不溶物として分離し、この不溶物に対して65wt%以上の濃度の硫酸で処理を行い、本発明の方法を用いて糖液および硫酸を分離・回収することにより、低分子オリゴ糖や単糖を得るための効率的工程を構築することができる。
さらに本発明によれば、植物系バイオマス原料の他にキチンを含むバイオマス原料にも適用可能であり、N-アセチルグルコサミンやグルコサミン塩などの有用物質を効率よく回収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、バイオマス原料の硫酸処理後に溶出した多糖あるいはオリゴ糖を、硫酸水溶液中における多糖あるいはオリゴ糖との結合活性を有する不溶性素材を用いて、硫酸水溶液と分離することを特徴とする、バイオマスの糖化・回収方法を提供する。
本発明は、現在、主流となっている、糖を早く、硫酸を遅く溶出させるクロマトグラフィー技術とは逆に、硫酸存在下で糖を吸着させる不溶性素材を用いて糖と硫酸を分離するという、全く新規な発明に基づいている。
【0015】
本発明におけるバイオマス原料とは、再生可能な、生物由来の有機性資源のうち化石資源を除いたものである。植物、動物や微生物由来のバイオマス原料として、農作物、樹木、雑草等の高等植物、海藻類、動物や微生物のほか、産業上の目的等により、それらに対して分離処理、混合処理、物理学的、化学的または生物学的処理等を施した資源が挙げられる。例えば、植物としてのダイズ、その一部分である大豆(種子)、ダイズの茎葉や根、大豆をゆでて圧搾して絞った豆乳、絞りかすのオカラはいずれもバイオマス原料である。
【0016】
本発明におけるバイオマス原料としては、セルロースを含むものが好適に用いられ、例えば稲、稲わら、籾殻、麦、麦わら、トウモロコシ、コーンストーバ、バガス、その他の単子葉植物茎葉、竹、芋、豆、サゴヤシ、双子葉草本植物茎葉、広葉樹材、針葉樹材、キャッサバ絞りかす、製紙スラッジ、濾紙粉末セルロースなどが挙げられる。セルロース及び澱粉を両方蓄積するバイオマス原料としては、例えば稲、芋、トウモロコシ、豆、サゴヤシ、麦等が挙げられる。セルロース及び砂糖を両方蓄積するバイオマス原料としては、例えばサトウキビ、ビート、ソルガム等が挙げられる。これら植物系バイオマス原料は、植物体の全部を用いても、種子、茎、葉、根など一部のみを用いても良い。
また、本発明におけるバイオマス原料としてはキチンを含むものも好適に用いられ、例えばエビ殻、カニ殻などが挙げられる。
なお、これらバイオマス原料は、1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
バイオマス原料の多くには、構造多糖あるいは貯蔵多糖としてのセルロース、ヘミセルロース、キシログルカン、ペクチン、澱粉、マンナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、キチン、キトサン、イヌリン、アルギン酸、寒天、フコイダン、ラミナリン、β-グルカン、プルランなどの少なくとも1種類が含まれている。バイオマス原料に存在するこれらの多糖を加水分解して低分子のオリゴ糖や単糖に変換することによって、付加価値の高い最終製品とすることができる。さらに、これらの低分子オリゴ糖や単糖を糖源として微生物発酵を行ったり、化学変換したりすることにより、バイオエタノール、ポリ乳酸、アミノ酸、キシリトールやエリスリトールなどの糖アルコール類などの、付加価値や産業ニーズの高い有用物質を製造することができる。本発明は、このような、バイオマス原料中に含まれる多糖の効率的な酸分解工程に関するものである。
【0018】
本発明におけるバイオマス原料の硫酸処理条件は、バイオマス原料に含まれる多糖の殆どが、重合度2以上のオリゴ糖または多糖の形に分解される条件であれば良く、バイオマス原料の種類や形状に応じて適宜設定することができる。ここで、硫酸処理後に溶出する多糖またはオリゴ糖の具体例としては、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、ジ-N-アセチルキトビオース、トリ-N-アセチルキトトリオース、テトラ-N-アセチルキトテトラオース、ペンタ-N-アセチルキトペンタオース、ヘキサ-N-アセチルキトヘキサオースなどが挙げられる。例えば、酸性白土では、セロオリゴ糖の重合度が高いほど、不溶性素材に対する吸着性が高く、単糖であるグルコースでは、吸着がみられなかった。この場合、不溶性素材に対して多糖またはオリゴ糖を吸着させるには、吸着の前段階としての硫酸処理において不溶性多糖の液相への遊離を促しつつ、その加水分解による低分子オリゴ糖やグルコースの遊離を最低限に抑えるような条件設定が有効である。
【0019】
結晶性セルロースを例とした場合、65wt%以上90wt%以下の濃度、望ましくは72wt%以上85wt%以下の硫酸で0℃以上100℃以下、望ましくは10℃以上40℃以下の温度で1分間から2時間程度処理することにより、硫酸が浸入してセルロースの結晶構造が壊れ、多糖または重合度の高いオリゴ糖が効果的に遊離する。セルロースの硫酸処理条件、特に硫酸濃度、反応温度や反応時間については、これまでに詳細に検討されているところである(社団法人木材資源利用合理化推進本部編、木材化学調査研究報告書(S34年発行))。
【0020】
バイオマス原料に対する硫酸処理の際に硫酸の浸透性を向上するためには、上記硫酸処理に先立ち、バイオマス原料を乾燥させたり、平均粒径数十μmから数cm程度に粉砕または細砕したりする前処理を行うことが望ましい。また、上記硫酸処理において試料の実質的な硫酸濃度を高く保ち、硫酸の使用量を節約するためにも、乾燥させたバイオマス原料を用いることが望ましい。
【0021】
また、ヘミセルロース、非晶性セルロース、澱粉等のように64wt%以下の希硫酸処理によって加水分解することにより低分子オリゴ糖や単糖となる糖質と65wt%以上の濃度の硫酸処理によって膨潤・溶解する結晶性セルロースの両方を含むバイオマス原料を用いる場合は、予め希硫酸処理を行って前者を低分子化させ、さらに結晶性セルロースを含む画分を不溶物として分離した後、この不溶物に対して上記した65wt%以上の濃度の硫酸処理を行なうことが好ましい。
【0022】
本発明で用いる不溶性素材とは、硫酸水溶液中の多糖又はオリゴ糖との結合活性を有するものを指す。このようなものは、例えば、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とするものである。
本発明における鉱物には、無機物の結晶質、有機物を含む結晶質や人工結晶も含まれ、例えば、タルク、パイロフィライト、ゼオライト、スメクタイト、酸性白土、セピオライト、パリゴルスカイト、バーミキュライト、マイカ、緑泥石、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、蛇紋石などが挙げられる。これらは1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明における鉱物の酸処理物は、上記した鉱物を適宜、粉砕あるいは成型し、硫酸などの強酸(例えば72wt%の硫酸)で処理することにより、金属イオンの溶出を経て特性を改変し、イオン交換能を付与したものである。その方法には、様々なものがあり、鉱物の種類、原料の入手場所、粒径、酸処理条件、他の処理との併用等によって、処理後に得られる鉱物の特性は大きく異なる。
これら鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物は、強酸処理を行っているため、強酸に対して不溶性であり、高濃度の硫酸中での安定性が比較的高く、硫酸水溶液と糖質の分離に用いた後も、再利用が可能である。本発明の特徴の一つは、硫酸水溶液中に存在する多糖やオリゴ糖を吸着する活性を有する不溶性素材を再利用することができることである。
【0024】
例えば、活性白土は、酸性白土をはじめとするモンモリロナイトやハロイサイトなどを強酸で処理することにより、結晶構造内の金属を部分的に溶出させるとともに、表面積を増して吸着能や触媒能を向上させたものである。活性白土は、製造時に強酸処理を行っていることから、高濃度の硫酸中での安定性が比較的高く、再利用が可能である。
活性白土は、石油や油脂の脱色、接触分解、脱水・乾燥剤、医薬などに用いられている。活性白土による物質の吸着機構については、イオン交換反応以外には不明な点が多い。非イオン性の糖質が吸着する可能性を考えた場合、層間における特異的吸着、包接などが寄与する可能性についても推測されている。各用途に対応した活性白土の処理技術が開発されており、既知の技術を利用して、本発明における吸着特性を最適化することは容易に行うことができる。
また、バッチ法以外に、分離操作の効率化を目的として、粒径の大きい鉱物を用いた硫酸処理、焼成処理や、他の無機物または有機物との混合・重合処理などを含むような既知の成型工程を経て、容易にビーズや膜などの形状に組み立てることが可能である。
【0025】
本発明の不溶性素材としては、上記した鉱物を酸処理して得られた無機物を有効成分として含むものであれば良く、当該無機物自体をそのまま不溶性素材としても良いし、適当な助剤や支持体を併用して吸着剤として適当な形態に加工したものであっても良い。
【0026】
本発明では、バイオマス原料の硫酸処理により溶出した多糖あるいはオリゴ糖を、硫酸水溶液中に存在する多糖やオリゴ糖を結合(吸着)する活性を有する不溶性素材を用いて、硫酸水溶液と分離する。具体的には、粉末状又は粒状の不溶性素材を硫酸水溶液中に加えて混合する、いわゆるバッチ法により吸着操作を行うことが可能である。その他には、バッチ法と同様の原理を活用しつつ、既知の方法を用いて、不溶性素材を充填したカラムに糖を含む硫酸水溶液を流すことによって不溶性素材と糖の結合および硫酸水溶液と糖の分離を行うカラムクロマト法や、不溶性素材を固定した膜に糖を含む硫酸水溶液を通過させる膜分離法としたプロセスで分離することが可能である。カラムとしては、例えば、サンプル添加、カラム洗浄、溶出等の操作が簡易なスピンカラムとして組み立てることが可能である。
【0027】
この分離処理における温度条件は室温でよく、硫酸水溶液に対する不溶性素材の使用量は糖の重量の10倍から1000倍量、好ましくは20から50倍程度とすることが好ましい。
バッチ法による分離処理の具体例としては、糖を含む硫酸水溶液中に粉末状又は粒状の不溶性素材を加えて混合し、室温下で15分間以上静置して糖を不溶性素材に結合させ、これを固液分離して糖が吸着した不溶性素材を回収する方法が挙げられる。ここで固液分離法としては、遠心分離法、濾過法などの既知の方法が挙げられる。
【0028】
本発明では、このようにして糖を不溶性素材に吸着させて分離した後、適当な方法により不溶性素材から糖を遊離させて回収する。
例えば、セロオリゴ糖の活性白土に対する結合性は、重合度が上昇するほど大きく、また、硫酸存在下で大きい。つまり、オリゴ糖の重合度を下げるような加水分解処理を行うか、結合を強くする硫酸濃度を下げることなどにより、不溶性素材からの低分子オリゴ糖または単糖の遊離が可能となる。
【0029】
本発明において、不溶性素材に結合した糖の重合度を下げる方法としては、具体的には、不溶性素材ごと、つまり硫酸水溶液と不溶性素材の共存下で希酸加水分解を行なった後、固液分離操作によって液層に遊離した低分子オリゴ糖や単糖を回収するというプロセスが例として挙げられる。ここで、糖の重合度は6糖以下に下げるのが好ましく、単糖にまで下げるのが特に好ましい。
糖が結合した活性白土などの不溶性素材を希硫酸中に置き、加熱して希酸加水分解を行うことにより、結合性の低い低分子オリゴ糖や単糖が遊離する。希酸加水分解処理の条件は、例えば0.5wt%以上64wt%以下、好ましくは0.5wt%以上15wt%以下の硫酸存在下で、40℃以上250℃以下、好ましくは90℃以上200℃以下で1分間以上とすることができる。
この加水分解法については、不溶性素材に対して希硫酸を加えることにより希硫酸に置換する方法以外にも、水を加えて不溶性素材中に残存硫酸を発熱させる方法、熱水を加えて加水分解を行う方法などの様々な方法で行うことができる。
【0030】
本発明において、不溶性素材に接触させる硫酸水溶液濃度を下げる方法としては、具体的には、遠心分離などの固液分離操作により不溶性素材を硫酸水溶液から分離した後、水や低濃度の酸水溶液を加えることによって、残存する硫酸を希釈あるいは置換することが例示できる。ここで、硫酸濃度は64wt%以下に下げるのが好ましく、10wt%以下に下げるのが特に好ましい。
【0031】
低分子オリゴ糖や単糖は活性白土に対する結合性が低いことから、容易に不溶性素材と解離して希硫酸溶液の方に遊離する。グルコースの溶解した希酸水溶液は、酸濃度が低いことから、水酸化カルシウム等のアルカリを用いて中和し、適宜、糖液の濃縮を行うことにより、発酵工程等に供することができる。水酸化カルシウムを用いて中和した際に生じる硫酸カルシウムは石膏として用いることが可能となる。

【0032】
以上に説明した本発明の方法は、植物系バイオマス原料の硫酸処理を、ヘミセルロース分離・回収のための希硫酸前処理と、その不溶性残渣に対する65wt%以上の硫酸によるセルロース由来糖質の溶出のための処理とを含むような、二段階処理とする場合にも、二段階目で溶出した糖質を回収するために有効である。一段階目に溶出する五炭糖を中心とした糖質は、単糖にまで分解されやすいことから、五炭糖のみを先に別画分として回収しておくことは、全体の糖収率増加、薬液の節約という観点からも重要である。
【0033】
また、本発明は、植物体に含まれる複数種類の多糖類を効率的に回収・糖化する際の基盤技術として有用性が高い。例えば、稲全体のような、澱粉とセルロースの両方を含むバイオマス原料については、二段階酸糖化工程により双方由来の糖を回収することが可能となる。
【0034】
本発明は、植物系バイオマスの糖化目的以外にも、食品産業等における有用物質生産のために活用することができる。例えば、カニ殻、エビ殻等のキチンを含むバイオマス原料等に存在するキチンを低分子化して、低級オリゴ糖や単糖を回収する際に本技術を用いることにより、薬液の再利用が容易になる。単糖のN-アセチルグルコサミンやグルコサミン塩は、機能性糖質として注目されている。
【0035】
本発明はまた、多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤も提供する。この吸着剤は、前記した不溶性素材からなり、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物、好ましくは活性白土を有効成分とするものである。ここでいう鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物、活性白土および不溶性素材については、以上で説明した通りであり、不溶性素材としては、上記した鉱物を酸処理して得られた無機物を有効成分として含むものであれば良く、当該無機物自体をそのまま不溶性素材としても良いし、適当な助剤や支持体を併用して吸着剤として適当な形態に加工したものであっても良い。
本発明の吸着剤は、スピンカラムなどといった適当なカラムに充填してカラムクロマト法による糖の分取や分析などの用途に用いることができる。このとき、当該カラムに用いる本発明の吸着剤の形態は特に限定されない。また当該カラムには、本発明の不溶性素材以外にも、同様の目的で通常用いられる他の吸着剤も適宜併用することができる。
【0036】
不溶性素材と硫酸中の溶質との相互作用が弱い場合には、溶質を不溶性素材に対して接触させた後に、水、希硫酸や塩溶液などの移動相をカラムに流すことにより、相互作用の差を利用して溶質と硫酸とを分離することが可能となる。また、その溶質と不溶性素材との相互作用の差により、溶質を形成する複数の糖を効率的に分離することが可能となる。 本発明では、糖質と相互作用(結合)する性質を有する、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする、多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤を用いることにより、糖質の分離が可能となることを見出した。また、本発明の吸着剤は、糖質の大量分取・回収レベルのみならず、分析レベルでも活用することが可能となる。
【0037】
例えば、活性白土に対しては、セロオリゴ糖の重合度が増加して4以上になると、硫酸非存在下でも吸着性が上がり、重合度4よりも5の方が高い吸着性を示す。例えば、希硫酸を移動相として、硫酸濃度を64wt%程度から0wt%程度まで変化させることによって、始めは不溶性素材との親和性が低い低分子の糖が溶出し、次第に親和性の高い高分子の糖が溶出してくる。また、同じ重合度のグルコース重合物でも、マルトペンタオースとセロペンタオースのような構造異性体については、その吸着挙動が異なる。このように、重合度や構造により相互作用が異なることから、本発明のカラムを用いた糖質分離が可能となる。
なお、糖と糖の分離以外にも、糖と他の物質との分離についても、それぞれの相互作用特性に応じた分離技術の開発が可能となる。これまで、酸処理した無機物を有効成分とした糖質の分析・分取技術は開発されていない。
【0038】
本発明の吸着剤を用いたカラムにより糖の分析・分取を行う際の移動相は、糖と不溶性素材に対する相互作用を維持する、あるいは弱める作用を有する液体が用いられる。例えば、水、希硫酸、濃硫酸などの酸溶液、アルカリ溶液、塩溶液、メタノールなどの親水性有機溶媒などやそれらの少なくとも二種類以上から構成される混合物が挙げられる。
公知のクロマト分離技術にならい、目的物の分離・分取条件が最適化するように、相互作用を制御することができる。
また、本発明の糖の分析または分取方法を実施する際の条件は、糖溶液濃度や、用いる移動相、併用する他の吸着剤の種類、混合割合などにより適宜設計することができる。
温度条件も特に限定されないが、糖が分解されない程度の条件とすることが望ましく、65wt%以上98wt%以下の濃度の濃硫酸を移動相とする場合には、0℃以上100℃以下で行うのが好ましい。また、64wt%以下の希硫酸を移動相とする場合には、100℃以下とするのが好ましい。
【実施例】
【0039】
実施例1
風乾重量で60 mgのパリゴルスカイト粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸を1 ml加えてボルテックスミキサーにより撹拌後、室温で16時間静置した。得られた不溶物を1 mlの水で6回洗浄し、ヒートブロック上で乾燥させた後、これに対して、セロビオースまたはセロペンタオースを72wt%の硫酸に溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした糖液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した。コントロールとして、硫酸処理パリゴルスカイトと混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した。これをヒートブロック上、100℃で120分間処理し、室温に戻した後に、1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和し、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。吸着率は、双方の遊離グルコース量から、コントロールとした試料中の生成グルコース量を100%として計算した。その結果、セロビオースまたはセロペンタオースの硫酸処理パリゴルスカイトに対する吸着量は、グルコース換算でそれぞれ12%、38%であった。
【0040】
実施例2
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸または水に対してグルコース、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオースまたはセロペンタオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した。これをヒートブロック上、100℃で120分間処理し、室温に戻した後に純水で25倍に希釈し、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。吸着率は、双方の遊離グルコース量から、コントロールとした試料中の生成グルコース量を100%として計算した。その結果を表1に示す。このように、活性白土に対してオリゴ糖は吸着性を示し、重合度が高くなるに従い吸着率が高くなる傾向が見られた。また、水を溶媒とした場合と比較して、72wt%硫酸を溶媒とした際の方が吸着率は高かった。
【0041】
【表1】
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【0042】
実施例3
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、60wt%、48wt%または36wt%の硫酸に対してセロビオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した。これをヒートブロック上、100℃で120分間処理し、室温に戻した後に純水で25倍に希釈し、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。吸着率は、各試験区の遊離グルコース量から、コントロールとした試料中の生成グルコース量を100%として計算した。その結果、60wt%、48wt%および36wt%の硫酸濃度条件に対して、吸着率はそれぞれ45%、32%および14%であった。このように、活性白土に対する吸着性は、硫酸濃度の低下により弱くなる傾向が見られた。
【0043】
実施例4
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸に対してセロペンタオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した。これらをヒートブロック上、100℃で120分間処理して室温に戻した後、各について1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和した。グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて各試料中の遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。その結果、88%の糖が活性白土に吸着した。
また、糖質が吸着された活性白土に対して、上澄の液層を可能な限りピペットで取り除き、72wt%硫酸400 μlで沈殿部を2回洗浄した後、9wt%硫酸を400 μl加え、ボルテックスミキサーを用いて活性白土を懸濁させた。これをヒートブロック上、100℃で120分間希酸加水分解処理した後、上記と同様に遊離グルコース量を定量した結果、加えた糖の57%がグルコースとして回収できた。
【0044】
実施例5
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸に対してマルトペンタオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した(A)。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した(B)。これらをヒートブロック上、100℃で120分間処理して室温に戻した後、各について1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和した。グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて各試料中の遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。その結果、24%の糖が活性白土に吸着していた。
また、糖質が吸着された活性白土に対して、上澄の液層を可能な限りピペットで取り除いた後に純水を560 μl加え、ボルテックスミキサーを用いて活性白土を懸濁させた後、ヒートブロック上、100℃で120分間処理し、上記と同様に遊離グルコース量を定量した結果、吸着されなかった糖の全量が希酸加水分解を受けてグルコースとして溶出した。
【0045】
実施例6
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸に対してテトラ-N-アセチルキトテトラオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した(A)。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した(B)。また、遠心分離した際の沈殿部(72wt%硫酸が70 μl程度残存)に対して、純水を560 μl加えて、ボルテックスミキサーを用いて活性白土を懸濁させた(C)。これらをヒートブロック上、100℃で120分間処理し、室温に戻した。その後、Cは遠心分離に供し、その上澄100 μlを別のチューブに移し替えたのち、各について1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和した。これを適宜希釈し、Schales変法(Imoto & Yagishita, Agric. Biol. Chem., 35, 1154-1156 (1971))により還元糖量を定量して吸着の評価を行った。標準物質としては、N-アセチルグルコサミンを用いた。その結果、コントロールのBでは12.4 mMの還元糖が生成したのに対して、Aでは還元糖は検出されなかった。また、活性白土に吸着されて、希酸加水分解処理により溶出した糖(C)は、コントロールBの還元糖量の76%であった。
【0046】
実施例7
風乾重量で50.0 mgの稲わら粉末を1.5 ml容プラスチックチューブに3本量り取り、9wt%の硫酸を1.5 ml加えて、ボルテックスミキサーにより撹拌し、ヒートブロック上で100℃で60分間処理した後に室温に戻した。これを遠心分離して五炭糖を主とする画分と沈殿物に分けた。沈殿部に対して72wt%硫酸を1 ml加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した後、60分間静置した。その後、遠心分離を行い、得られた上澄部分を回収して3本分を混合した。
別の1.5 ml容プラスチックチューブに活性白土粉末を風乾重量で60 mg、120 mgまたは180 mg量り取ったものを用意し、これに回収上澄液を400 μl加えてボルテックスミキサーにより撹拌した後、室温で15分間静置した。その後、遠心分離により上澄部分を可能な限り回収し(A)、活性白土画分(B)と分離した。A画分については、別のチューブ中で12.5 μlを87.5 μlの純水と混合した。その際のコントロールとして、活性白土処理する前の回収上澄液を用いて同様の処理を行った。60 mg、120 mgまたは180 mgの活性白土を含む沈殿画分(B)に対して、それぞれ560 μl、910 μlおよび1260 μlの純水を加え、ボルテックスミキサーで撹拌した。A画分の希釈物とB画分の希釈物をそれぞれ、ヒートブロック上100℃で120分間処理した後に室温に戻した。それぞれの試料の遠心上澄画分に対して、1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和し、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて各試料中の遊離グルコース量を定量した。その結果、活性白土60 mg、120 mgまたは180 mgを用いることにより、それぞれ49%、74%および87%の糖質(グルコース当量)が吸着した。また、各の活性白土画分を希酸加水分解に供することにより、それぞれの吸着物の67%、58%および50%(コントロールの33%、43%、および44%)がグルコースとして回収された。

【0047】
実施例8
風乾重量で60 mgの活性白土粉末の入った1.5 ml容プラスチックチューブを用意し、72wt%の硫酸を70 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌することにより、活性白土全体を湿らせた。これに560 μlの純水を加えて、ボルテックスミキサーにより撹拌した後、ヒートブロック上、100℃で120分間処理し、その後室温に戻した。遠心分離により沈殿部を回収し、これを72wt%硫酸400 μlで2回洗浄した。その後、72wt%の硫酸に対してセロペンタオースを溶かして糖濃度を0.5%(w/v)とした液を400 μl加えて、室温でボルテックスミキサーにより撹拌した。これを室温で15分間静置した後、遠心分離により固液分離し、上澄の液層を12.5 μl取り87.5 μlの純水と混合した。コントロールとして、活性白土と混合する前の糖液12.5 μlを用いて同様に試料を調製した。これらをヒートブロック上、100℃で120分間処理して室温に戻した後、各について1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和した。グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて各試料中の遊離グルコース量を定量して吸着の評価を行った。その結果、84%の糖が活性白土に吸着した。このように、活性白土の糖質吸着能は、希硫酸加水分解後も残存していた。
【0048】
実施例9
風乾重量で100 mgのポテトパルプ粉末、100 mgのバガス粉末、100 mgのビートパルプ粉末、100 mgのキャッサバ絞りかす、100 mgの製紙スラッジ、100 mgの割り箸の粗粉砕物、30 mgのコーンスターチまたは30 mgの濾紙粉末セルロースを乳鉢に量り取り、室温で1 mlの72wt%硫酸を1 ml加えて乳棒で潰しつつ、60分間、硫酸を浸透させた。これをプラスチックチューブに回収し、72wt%硫酸1 ml程度で乳鉢と乳棒を洗浄した液を加えて2mlとした。その後、遠心分離を行い、上澄液400 μlを、予め活性白土を60 mg入れた1.5 ml容プラスチックチューブに加えた。これをボルテックスミキサーにより撹拌した後、室温で15分間静置し、その後、遠心分離により上澄部分を12.5 μlとり、87.5 μlの純水と混合した。その際のコントロールとして、活性白土処理する前の回収上澄液を用いて同様の処理を行った。これらをヒートブロック上100℃で60分間処理した後に室温に戻した。それぞれの試料の遠心上澄画分に対して、1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和し、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて各試料中の遊離グルコース量を定量した。その結果、ポテトパルプ粉末、バガス粉末、ビートパルプ粉末、キャッサバ絞りかす、製紙スラッジ、割り箸の粗粉砕物、コーンスターチまたは濾紙粉末セルロース中のグルコース残基存在量(コントロールにおいて硫酸加水分解により生じたグルコース量として定義。)に対して、それぞれの29%、34%、38%、26%、57%、25%、27%および44%が吸着した。
【0049】
実施例10
72wt%硫酸に対してセロペンタオースを1.5%(w/v)になるように室温で溶解し、予め内部ユニット中に風乾した活性白土を150 mg入れてスピンカラム様にした遠心式フィルターユニット(精密ろ過親水性PTFEメンブレン装着ユニット、ウルトラフリー-MC、0.22、日本ミリポア株式会社)へ、その溶液の200 μlをカラム上部から添加した。それを室温で15分間静置し、遠心分離することにより、下部に濾液を得た。その後、活性白土カラムの上部から72wt%硫酸を200 μl注入し、遠心分離することによりフィルターユニット下部に洗浄液を回収するという洗浄操作を5回行った。最初の濾液と5回の洗浄液を合わせて試料Aとした。続いて、72wt%硫酸を8倍に希釈した希硫酸液200 μlで同様に5回、カラムを洗浄し、カラム下部に回収された洗浄液をまとめて試料Bとした。次に、スピンカラムの上部から、先の希硫酸液を200 μl 加えて、フィルターユニット全体をヒートブロック上100℃で120分間処理した後に室温に戻した。スピンカラムの上部から、72wt%硫酸を8倍に希釈した希硫酸液300 μlを注いでカラムを洗浄する操作を3回行い、遠心分離により得られた濾液を一纏めにして試料Dとした。コントロールとしては、活性白土カラムに添加する前のセロペンタオース溶液を12.5 μlとり、87.5 μlの純水と混合し、ヒートブロック上100℃で60分間処理した後に室温に戻したものを用いた(試料C)。試料Cと同様にして、試料Aも12.5 μlとり、87.5 μlの純水と混合し、ヒートブロック上100℃で60分間処理した後に室温に戻した。試料BおよびDについては、100 μlを取り出し、それぞれに対して1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和した。これらの試料中の遊離グルコース量を、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。その結果、Cのグルコース量が15.6 μmol(理論値の86.2%)、試料A、試料B、試料Dでは、それぞれ、グルコースとして2.47 μmol(理論値の13.6%)、7.12 μmol(理論値の39.3%)、3.80 μmol(理論値の21.0%)が回収された。このように、本カラムを用いて、硫酸中のセロペンタオースの72wt%硫酸洗浄液(試料A)への溶出を抑制し、硫酸濃度の低下(試料B)および希硫酸による加水分解(試料D)によりトータル6割以上をグルコースとして回収できることを確認した。
【0050】
実施例11
72wt%硫酸に対してセロヘキサオースとグルコースの両方をそれぞれ1.5%(w/v)になるように室温で溶解し、予め内部ユニット中に風乾した活性白土を150 mg入れてスピンカラム様にした遠心式フィルターユニット(精密ろ過親水性PTFEメンブレン装着ユニット、ウルトラフリー-MC、0.22、日本ミリポア株式会社)へ、その溶液の200 μlをカラム上部から添加した。それを室温で15分間静置し、遠心分離することにより、下部に濾液を得た。その後、活性白土カラムの上部から72wt%硫酸を200 μl注入し、遠心分離することによりフィルターユニット下部に洗浄液を回収するという洗浄操作を5回行った。最初の濾液と5回の洗浄液を合わせて試料Aとした。次に、72wt%硫酸200μlで5回洗浄し、試料A'とした。続いて、72wt%硫酸を8倍に希釈した希硫酸液200 μlで同様に5回、カラムを洗浄し、カラム下部に回収された洗浄液をまとめて試料Bとした。次に、スピンカラムの上部から、先の希硫酸液を200 μl 加えて、フィルターユニット全体をヒートブロック上100℃で120分間処理した後に室温に戻した。スピンカラムの上部から、72wt%硫酸を8倍に希釈した希硫酸液300 μlを注いでカラムを洗浄する操作を3回行い、遠心分離により得られた濾液を一纏めにして試料Dとした。コントロールとしては、活性白土カラムに添加する前のセロヘキサオース/グルコース溶液を12.5 μlとり、87.5 μlの純水と混合したもの(試料C0)、そしてC0をヒートブロック上100℃で60分間処理した後に室温に戻したものを用いた(試料C100)。これらに対して、1 N水酸化ナトリウム水溶液を297 μl加えて中和し、遊離グルコース量を、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。試料C0(100℃処理前の試料)中のグルコース量を、カラムにかけた元の溶液に添加したグルコース由来のものとして、また、C100(100℃処理後の試料)中のグルコース量を、セロヘキサオース由来のグルコースが加わった量として評価した。試料AおよびA'についてはC0およびC100と同様に、また、Bは100 μlを用いて加水分解を行うことにより、同様に二種類の糖の量を評価した。試料Dに遊離したグルコース量は、100 μlを用いて加水分解を行い、全量がセロヘキサオース由来のものとして評価した。
【0051】
その結果、ほぼ100%のグルコースが試料Aに溶出したのに対して、試料Aに溶出したセロヘキサオースは全体の15%であった。また、試料BおよびDにおいて、添加したセロヘキサオースのそれぞれ37%、20%が回収された。試料Cにおける[添加グルコース由来グルコース量]/[添加セロヘキサオース由来グルコース量]は、C0/(C100-C0)と計算して0.71、同様に、試料A、Bにおける両者の比は、それぞれ、5.3、0.048であった(試料A'ではセロヘキサオース由来のグルコースが検出できず。)。このように、本カラムを用いて、硫酸濃度を低下させることにより、グルコースとセロヘキサオースを分離できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、多糖を含むバイオマス原料の硫酸糖化工程におけるブレイクスルーとなり、バイオマスの効率的な糖化技術の開発に繋がるものと考えられる。
また、キチン等の多糖類を酸糖化して低分子の有用物質を調製する際に、酸の回収・再利用が可能となり、製造コスト低減に繋がるものと期待される。
さらに、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする、多糖あるいはオリゴ糖用吸着剤の開発により、硫酸存在下・非存在下の両条件下における効率的な糖質分析・分取方法を提供するものと期待される。