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明細書 :アスペルギルス属菌の新規薬剤耐性組換え選択マーカー遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5257972号 (P5257972)
公開番号 特開2009-124961 (P2009-124961A)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発行日 平成25年8月7日(2013.8.7)
公開日 平成21年6月11日(2009.6.11)
発明の名称または考案の名称 アスペルギルス属菌の新規薬剤耐性組換え選択マーカー遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/02        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
C12Q   1/32        (2006.01)
C12R   1/66        (2006.01)
C12R   1/69        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/02
C12N 1/15
C12Q 1/04
C12Q 1/32
C12N 1/15
C12R 1:66
C12N 1/15
C12R 1:69
請求項の数または発明の数 12
全頁数 19
出願番号 特願2007-301034 (P2007-301034)
出願日 平成19年11月20日(2007.11.20)
審査請求日 平成22年11月18日(2010.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】伊藤 康博
【氏名】矢部 希見子
【氏名】嶋 羊子
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】鶴 剛史
参考文献・文献 特開2003-301034(JP,A)
Database Swiss-Prot [online], Accession No. Q2TWM0<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/Q2TWM0> 28-NOV-2006 uploaded, Definition:Succinate dehydrogenase. [retrieved on 2013.01.25]
調査した分野 C12N 15/09
C12N 1/15
C12N 9/02
C12Q 1/04
C12Q 1/32
C12R 1/66
C12R 1/69
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)又は(2)のタンパク質をコードするDNA。
(1)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(2)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換され、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質
【請求項2】
配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなるDNA。
【請求項3】
配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNA。
【請求項4】
配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなるDNA。
【請求項5】
配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNA。
【請求項6】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項7】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列において、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか記載のDNAを含む組換えベクター。
【請求項9】
請求項8記載の組換えベクターが導入されたアスペルギルス属に属する微生物からなる形質転換体。
【請求項10】
アスペルギルス属に属する微生物が、アスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・パラシチカスであることを特徴とする請求項9記載の形質転換体。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか記載のDNAを、アスペルギルス属に属する微生物のマーカー遺伝子として使用する方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか記載のDNAと目的遺伝子とが組み込まれた組換えベクターでアスペルギルス属に属する微生物を形質転換し、得られた形質転換体を酢酸を炭素源とするカルボキシン含有培地で培養し、カルボキシン耐性を指標として前記形質転換体を選抜する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸を炭素源とする培地で、アスペルギルス属に属するカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質や、該タンパク質をコードするカルボキシン耐性マーカー遺伝子等に関する。
【背景技術】
【0002】
アスペルギルス属は、菌類真菌門に属し、形態的には、無色の分岐した長い菌糸を有することから子のう菌門の糸状菌の一種とされ、有性生殖を行わず無性生殖で無性胞子を作って繁殖する不完全菌類に属する。清酒、味噌、醤油などの発酵食品生産に古くから利用されているアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)といった有益な種がある一方、自然界で最も強力な発ガン性と急性毒性を持つアフラトキシンを産生するアスペルギルス・パラシチカス(Aspergillus parasiticus)などの有害な種も存在する。アスペルギルス・オリゼに関しては、食品生産のための発酵効率向上のための育種のみならず、高いタンパク質分泌生産能力を有することから、組換えタンパク質生産又は各種有用物質生産の宿主として利用され、そのための研究開発も盛んに行われている。他方、アスペルギルス・パラシチカスに関しては、特に熱帯・亜熱帯地域で収穫される穀物に対するアフラトキシンによる汚染が世界的な問題となっており、その制御のための研究が重要視されている。
【0003】
遺伝子組換え法は、ある生物から取り出した有用な遺伝子を種の壁を越えて他の生物に導入することができるため、宿主生物の改良の範囲を画期的に拡大できるという利点がある。また生体内において遺伝子を操作できるため、遺伝子機能の研究に必須の技術でもある。上述のとおりアスペルギルス属の菌は有性生殖が見い出されておらず、多くの生物と異なり交雑による遺伝子交換ができないので古典的遺伝学が適用できず、変異遺伝子を別の変異株から移すことができない。そのため、アスペルギルス属の菌の遺伝子の改変による育種、又は遺伝子機能研究については特に遺伝子組換え法の適用が有効な手段である。
【0004】
遺伝子組換え法による遺伝子導入の効率については、導入処理した細胞のうち数万分の1以下しか導入された遺伝子を保持する組換え細胞になっていないことが多い。大多数の組換えが起こっていない細胞の中から組換え細胞を選抜するためには、選択マーカー遺伝子を同時に導入し、目的の組換え細胞を選抜する方法が現在広く用いられている。すなわち、組換え処理後の細胞を培養する際、選択マーカー遺伝子が導入されていなければ生存できない条件下で培養することで、組換え体だけを選んでくるという方法である。
【0005】
一般的に、組換え体選択マーカーとして利用される遺伝子は2つに分けられる。一つは栄養要求性相補遺伝子に代表される、変異によりある条件で生育できない変異細胞に対してその変異を相補する変異相補性遺伝子であり、もう一つは通常の細胞に対して生育阻害を示す薬剤に対する薬剤耐性遺伝子である。前者は遺伝子組換え試験を始める前の準備として、宿主となる細胞にあらかじめ選抜に必要な変異を導入しておく必要があるのに対し、後者は通常の細胞のいずれにも利用できるため、適用範囲が広く実用性が高い。アスペルギルス・オリゼで利用されている変異相補性遺伝子としては、アルギニン要求性相補遺伝子argB(非特許文献6参照)、ウラシル要求性相補遺伝子pyrG(非特許文献2参照)、アデニン要求性相補遺伝子adeA, adeB(非特許文献3参照)、硝酸塩資化遺伝子niaD(非特許文献4参照)、硫酸資化遺伝子sC(非特許文献5参照)等がある。しかしながら、アスペルギルス・オリゼやアスペルギルス・パラシチカスで現在利用されている薬剤耐性遺伝子は薬剤ピリチアミンに対するptrA(特許文献1及び非特許文献1参照)のみである。
【0006】
一方、担子菌においても、組換え体選択マーカーとして栄養要求性相補遺伝子が多く使われてきたが、最近、薬剤耐性遺伝子としてカルボキシアミド系の薬剤、特にカルボキシンに対する耐性遺伝子が単離され、選択マーカーとして利用されている。カルボキシン及びその類縁体は主として担子菌が原因となる作物病害に効果を示す農薬である。カルボキシン耐性はコハク酸脱水素酵素複合体(Sdh)の中のIpサブユニット又は膜サブユニット(SdhC)のいずれかの遺伝子の変異により獲得されることが知られている(特許文献2及び非特許文献7~10参照)。また、カルボキシンに感受性が弱いアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)を酢酸を炭素源とする培地で培養すると、カルボキシンに対する感受性が強くなったという報告がある(非特許文献11参照)。
【0007】

【特許文献1】特開2000-308491号公報
【特許文献2】特開2001-69987号公報
【非特許文献1】Biosci. Biotechnol. Biochem.. 64, 1416-1421(2000)
【非特許文献2】Biochem. Biophys. Res. Commun., 112, 284-289,(1983)
【非特許文献3】Biosci. Biotechnol. Biochem.. 68, 656-62(2004)
【非特許文献4】Gene, 111, 149-155 (1992)
【非特許文献5】Gene. 84, 329-334(1989)
【非特許文献6】Agric. Biol. Chem. 51, 2549-2555 (1987)
【非特許文献7】Curr. Genet. 19, 475-481(1991)
【非特許文献8】Curr. Genet. 37, 209-212(2000)
【非特許文献9】Biosci. Biotechnol. Biochem., 67, 2006-2009 (2003)
【非特許文献10】Mol.Genet.Genomics 272, 328-335 (2004)
【非特許文献11】Gunatilleke et. al., Genet. Res. Camb. 26. 297-305 (1976)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のとおり、アスペルギルス属においては、遺伝子組換え法が効果的な育種又は研究手法であり、育種・研究の用途において、複数の外来遺伝子を導入するには複数のマーカー遺伝子が必要であるが、実際に利用されている薬剤耐性遺伝子は市販されているピリチアミン耐性遺伝子のみである。他の生物の生育を阻害する薬剤の多くについてアスペルギルス属の菌は耐性を示し、使用できる薬剤が限られていることが新たなマーカー遺伝子の開発の大きな障害となっている。しかし、アスペルギルス・オリゼでは全ゲノム解析が終了し、複雑な生命現象の解析が可能となった今、複数の遺伝子が関わる形質の改変、物質生産経路の導入等の研究開発が今後ますます増加する。また、例えばアスペルギルス・オリゼで自己の遺伝子の改変による組換え体を産業的に利用する場合を考えると、マーカー遺伝子もアスペルギルス・オリゼ由来のものを用いるとセルフクローニングとして法令上の遺伝子組換え生物等の使用には当たらず、産業的な価値が大きい。そのため、新たなマーカー遺伝子の開発が強く求められている。本発明の課題は、アスペルギルス属微生物において有用な新たな薬剤耐性マーカー遺伝子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、担子菌で利用可能となったカルボキシン耐性(特許文献2参照)について、アスペルギルス属について実験を試みたが、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・パラシチカスとも通常の培養条件ではカルボキシンに対して感受性が大変弱く、培地に加える薬剤の実用範囲内で菌糸生育を完全に抑えることは不可能であった。また、担子菌のカルボキシン耐性遺伝子はそれぞれの種でのみ機能するらしく、担子菌ヒラタケの変異遺伝子は属が異なるシイタケに耐性を付与することはない。従って担子菌亜門のヒラタケの耐性遺伝子を子嚢菌門(アスペルギルス属は不完全菌だがここに分類されると考えられている)のアスペルギルス属で利用することは不可能だと考えられた。
【0010】
本発明者らは、アスペルギルス属に属する微生物であるアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・パラシチカスを、酢酸を炭素源とする培地で培養することにより、該微生物がカルボキシン感受性となり、さらにこれらアスペルギルス属に属する微生物に突然変異誘発処理を行うことにより、カルボキシン耐性微生物が出現し、カルボキシン耐性突然変異遺伝子が生じたことが予測された。そこで、アスペルギルス・オリゼRIB40の全塩基配列から、担子菌のカルボキシン耐性遺伝子として知られているコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子に対応する遺伝子を検索することによって、該遺伝子に変異が生じていることを確認した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0011】
すなわち本発明は、[1](1)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質、又は(2)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換され、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードする単離されたDNAに関する。
【0012】
また本発明は、[2]配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなる単離されたDNAや、[3]配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNAや、[4]配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなるDNAや、[5]配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNAに関する。
【0013】
さらに本発明は、[6]配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質や、[7]配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列において、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質や、[8]上記[1]~[5]のいずれか記載のDNAを含む組換えベクターや、[9]上記[8]記載の組換えベクターが導入されたアスペルギルス属に属する微生物からなる形質転換体や、[10]アスペルギルス属に属する微生物が、アスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・パラシチカスであることを特徴とする上記[9]記載の形質転換体や、[11]上記[1]~[5]のいずれか記載のDNAを、アスペルギルス属に属する微生物のマーカー遺伝子として使用する方法や、[12]上記[1]~[5]のいずれか記載のDNAと目的遺伝子とが組み込まれた組換えベクターでアスペルギルス属に属する微生物を形質転換し、得られた形質転換体を酢酸を炭素源とするカルボキシン含有培地で培養し、カルボキシン耐性を指標として前記形質転換体を選抜する方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、アスペルギルス属微生物において有用カルボキシン耐性マーカー遺伝子を提供することができ、その結果、カルボキシン感受性のアスペルギルス属に属する微生物を宿主微生物とした遺伝子組換え系において、酢酸を炭素源とする培地でアスペルギルス属微生物を培養することにより、目的とする形質転換体をカルボキシン耐性を指標として効率よく選別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のDNAとしては、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAや、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが、他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列において、さらに249番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNAや、配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2における塩基番号940~942の塩基が、CAT、TAA、TAG又はTGA以外のコドンに置換された塩基配列からなるDNA(配列表の配列番号2における塩基番号940~942の塩基が、CAC、CAT、TAA、TAG又はTGA以外のコドンに置換された配列番号2の塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNA)や、配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3における塩基番号745~747の塩基が、CAT、TAA、TAG又はTGA以外のコドンに置換された塩基配列からなるDNA(配列表の配列番号3における塩基番号745~747の塩基が、CAC、CAT、TAA、TAG又はTGA以外のコドンに置換された配列番号3の塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNA)や、上記いずれか記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードするDNAであれば特に制限されず、上記カルボキシン感受性微生物としては、アスペルギルス属に属する微生物を好適に例示することができ、また、上記「カルボキシン」とは、以下の式(I)で表される化合物(Carboxin;5,6-dihydro-2-methyl-1,4-oxathiine-3-carboxanilide)を意味し、通常カルボキシンは、担子菌が原因の作物病害に使用される農薬として使用されている。
【0016】
【化1】
JP0005257972B2_000002t.gif

【0017】
上記配列表の配列番号2に示される塩基配列は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)DOGANのデータベースにその配列が明らかにされているアスペルギルス・オリゼRIB40の遺伝子の全塩基配列(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/Top)から、担子菌のコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子に対応する遺伝子であり、また、上記配列表の配列番号3は、配列表の配列番号2に示される塩基配列からイントロン部分を除いたcDNAの塩基配列であり、上記配列表の配列番号1は、上記配列番号3に記載の塩基配列より推測されるアミノ酸配列である。
【0018】
また、上記「配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列」としては、上記配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが、例えばアスパラギン、ロイシン又はチロシンに置換されているアミノ酸配列を挙げることができ、中でもロイシン又はアスパラギンに置換されているアミノ酸配列を好適に例示することができる。また、本発明において「1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1~10個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個の任意の数のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列をいう。
【0019】
上記配列番号2における塩基番号940~942や配列番号3における塩基番号745~747の塩基が、CAC(ヒスチジンコドン)、CAT(ヒスチジンコドン)、TAA(ストップコドン)、TAG(ストップコドン)又はTGA(ストップコドン)以外のコドンとしては、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG、TAT又はTACであることがカルボキシン耐性付与の強さの点で好ましく、中でもCTC又はAACであることが特に好ましい。
【0020】
上記「酢酸を炭素源とする培地におけるカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質」とは、炭素源として酢酸のみを含む培地においてカルボキシン感受性微生物に、その発現によりカルボキシン耐性を付与することができ、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンがロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質のカルボキシン耐性付与活性に比べて同程度のカルボキシン耐性付与活性を2倍以下の濃度で奏するタンパク質をいう。例えば、炭素源がグルコースであるGY培地(1%グルコース、0.5%イーストエキストラクト、2%寒天)では、カルボキシンに対して強い感受性を示さず完全な生育阻害が観察されないが、培地の炭素源をグルコースから酢酸に代えたAY培地(144mM酢酸バッファーpH6.5、0.5%イーストエキストラクト、2%寒天)で28℃にて2日間培養することにより、カルボキシンに対する強い感受性を示し、50μg/mLのカルボキシンの濃度で生育を完全に阻害されるアスペルギルス・オリゼRIB40に、カルボキシン耐性付与機能を有するタンパク質をコードするDNAで形質転換した形質転換アスペルギルス・オリゼRIB40を、50μg/mL以上カルボキシンを含有する144mM酢酸バッファーpH6.5、0.5%イーストエキストラクト、2%寒天を含むAY培地にて28℃で4~5日間培養後、形質転換株が生存しうる機能を有するタンパク質を挙げることができる。
【0021】
上記「ストリンジェントな条件下」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、具体的には、50~70%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である65℃、1×SSC、0.1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件を挙げることができる。例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げることができ、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAを好適に例示することができる。
【0022】
本発明のDNAの取得方法や調製方法は特に限定されるものでなく、本明細書中に開示した配列番号2又は3に示される塩基配列情報、あるいは配列番号1に示されるアミノ酸配列情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いて、当該遺伝子が存在することが予測されるゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより目的のDNAを単離したり、常法に従って化学合成により調製することができる。例えば上記プローブやプライマーは、通常のDNA自動合成機(例えばアプライドバイオシステム社製)を用いて、公知のDNA合成法(例えばホスホアミダイト法)によって調製することができる。また、酢酸を炭素源とする培地でのカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸を置換、欠失、又は付加して塩基配列を改変することによっても取得することができる。さらに、一般的にタンパク質のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、種間、株間、変異体間、変種間でわずかに異なることが知られているので、実質的に同一のタンパク質をコードするDNAは、アスペルギルス属に属する微生物の種、株、変異体、変種から得ることも可能である。
【0023】
前記ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAの一例として、1若しくは数個の塩基が置換、欠失、又は付加された塩基配列からなるDNA(変異DNA)を好適に挙げることができ、これらの変異DNAは、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。具体的には、配列番号2又は3に示される塩基配列からなるDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的な手法等を用いて、これらDNAに変異を導入することにより、変異DNAを取得することができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual,3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 2001.(以後"モレキュラークローニング第3版"と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1~38, John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。この変異DNAを適切な発現系を用いて発現させることにより、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質を得ることができる。
【0024】
本発明のタンパク質としては、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質や、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが、他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列において、さらに249番目以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質であれば特に制限されず、上記「配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の249番目のヒスチジンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列」としては、ヒスチジンが、例えばアスパラギン、ロイシン、チロシン等に置換されているアミノ酸配列を挙げることができ、中でもロイシン又はアスパラギンに置換されているアミノ酸配列を好適に例示することができる。
【0025】
本発明のタンパク質の取得・調製方法は特に限定されず、天然由来の変異タンパク質として、化学合成したタンパク質として、遺伝子組換え技術により作製した組み換えタンパク質として調製することができる。天然由来の変異タンパク質として取得する場合には、かかるタンパク質を発現している微生物細胞からタンパク質の単離・精製方法を適宜組み合わせることにより、本発明のタンパク質を取得することができる。化学合成によりタンパク質を調製する場合には、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のタンパク質を合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。遺伝子組換え技術によりタンパク質を調製する場合には、該タンパク質をコードする塩基配列からなる本発明のDNAを好適な発現系に導入することにより本発明のタンパク質を調製することができる。これらの中でも、比較的容易な操作でかつ大量に調製することが可能な遺伝子組換え技術による調製が好ましい。
【0026】
例えば、遺伝子組換え技術によって、本発明のタンパク質を調製する場合、かかるタンパク質を細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。特に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体等の抗体を結合させたカラムや、上記本発明のタンパク質に通常のペプチドタグを付加した場合は、このペプチドタグに親和性のある物質を結合したカラムを用いることにより、これらのタンパク質の精製物を得ることができる。
【0027】
本発明の組換えベクターとしては、上記本発明のDNAを1種以上含み、かつ宿主細胞においてカルボキシン耐性遺伝子を発現することができる組換えベクターであれば特に制限されず、ベクターの種類としては、例えばプラスミド、コスミド等を挙げることができる。本発明の組換えベクターは、本発明のDNAが発現するベクターに適切にインテグレイトすることにより構築することができる。かかる発現ベクターとしては、宿主細胞において自律複製可能であるものや、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものが好ましく、また、本発明のDNAが発現できる位置にプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等の制御配列を含有しているものを好適に使用することができる。上記選択マーカー遺伝子としてのカルボキシン耐性遺伝子と、目的遺伝子を組み込むことができるクローニングサイトとを備えた形質転換用発現ベクターとしては、カルボキシン耐性を選択マーカーとして形質転換体のスクリーニングに用いられるものであって、前記クローニングサイトに目的遺伝子を挿入することにより、上記形質転換用組換えベクターとしうるものであればどのようなものでもよく、上記クローニングサイトは、ポリリンカークローニングサイトを有することが好ましい。また、本発明の組換えベクターは、宿主細胞内で自律的に増殖しうる多コピー型ベクターであってもよいし、宿主細胞のゲノムDNAとの間で組換え可能なゲノム挿入型ベクターであってもよい。具体的には、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119、pBR322、pBluescriptII、pSP72、pBI121(いずれも大腸菌で自律複製)等の一般的なクローニングベクターに、アスペルギルス属菌の遺伝子プロモーター、ターミネーター等の制御配列を含むDNAを組み込むことによりゲノム挿入型ベクターとすることができ、また、pAUR316、pPTRII等を用いることにより宿主細胞内で自律的に増殖しうる多コピー型ベクターとすることができ、これらのベクターに本発明のDNAを作動可能なように組み込むことにより、アスペルギルス属菌の系に適した本発明の組換えベクターを構築することができる。
【0028】
上記本発明のアスペルギルス属に属する微生物の形質転換体としては、上記本発明の組換えベクターが導入され、かつカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質を発現するアスペルギルス属に属する微生物の形質転換体であれば特に制限されず、該形質転換体は、所定の濃度のカルボキシンを含有する酢酸を炭素源とする培地で、カルボキシン耐性株として生存することができる。
【0029】
上記本発明のアスペルギルス属に属する微生物の形質転換体を作製するための組換えベクターの宿主への導入方法としては、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びモレキュラークローニング第3版等に記載されている方法に準じて行うことができるなどの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、プロトプラスト-PEG法、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、アグロバクテリウム法等により行うことができるが、プロトプラスト-PEG法、エレクトロポレーション、アグロバクテリウム法が好ましい。
【0030】
本発明のアスペルギルス属に属する微生物としては、真菌の子嚢菌門の不完全菌類アスペルギルス属に属するものであれば特に制限されず、例えば、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus lutiensismut.kawachi)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・パラシチカス、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavas)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ベルシコロル(Aspergillus versicolor)、アスペルギルス・カンジタス(Aspergillus candidus)、アスペルギルス・ウスタス(Aspergillus usutus)等を挙げることができ、さらに、該アスペルギルス属に属する微生物を親株として人為的改変した株、又は天然に存在する変異株なども包含されるが、中でもアスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・パラシチカス、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・フラバス等が好ましく、アスペルギルス・オリゼやアスペルギルス・パラシチカスがより好ましい。
【0031】
具体的には、本発明のアスペルギルス属に属する微生物としては、本発明のDNAで形質転換されたアスペルギルス・オリゼRIB40株やアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999株を挙げることができる。アスペルギルス・オリゼRIB40株、及びアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999株はいずれもAmerican Type Culture Collectionより入手可能である。なお、本発明のDNAで形質転換されたアスペルギルス・オリゼRIB40株及びアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999株は、実施例の記載等により再現性をもって作製可能であるが、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所にて保管されており、一定条件下で分譲可能である。
【0032】
本発明のアスペルギルス属に属する微生物のマーカー遺伝子として使用する方法としては、炭素源が酢酸である培地で確認されるカルボキシン感受性に対する選択マーカー遺伝子としての使用であれば特に制限されず、例えば、カルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子と目的遺伝子とを組み込んだ組換えベクターが宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞中において選択マーカー遺伝子としてのカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子と目的遺伝子とを発現させることで宿主を形質転換し、カルボキシン耐性を選択マーカーとして形質転換体をスクリーニングすることができる。この場合、組換えベクターは、宿主細胞内で自律的に増殖しうる多コピー型ベクターであっても、染色体組込型ベクターでもよい。
【0033】
目的遺伝子としては、アスペルギルス属に属する微生物において発現するものであれば特に制限されず、例えば、フィターゼ、リアーゼ、ペクチナーゼ等のペクチン分解酵素、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、イソメラーゼ、インベルターゼ、トランスフェラーゼ、リボヌクレアーゼ、キチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、又はカルボキシペプチダーゼ遺伝子などを挙げることができるが、セルフクローニングをする場合には、宿主と同種の微生物に由来することが必要である。また、目的遺伝子には、上記タンパク質をコードするものに限らず、アンチセンス又はRNAiのようなジーンサイレンシング機能を有し、産業上不要な酵素や低分子の生産を抑制するポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0034】
さらに、本発明のアスペルギルス属に属する微生物のマーカー遺伝子として使用する方法としては、上記組換えベクターにカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子と目的遺伝子とを組み込んだ本発明のマーカー遺伝子にさらに既知の他の選択マーカーを組込み、多重選択マーカーとして使用することも可能である。多重選択マーカーの作製方法としては、例えば薬剤耐性マーカーであるピリチアミン耐性遺伝子ptrA、アルギニン要求性相補遺伝子argB、ウラシル要求性相補遺伝子pyrG、アデニン要求性相補遺伝子adeA, adeB、硝酸塩資化遺伝子niaD、硫酸資化遺伝子sC等の栄養要求性マーカー等から選択される1種以上の選択マーカーを作動可能なように組み込み、該組換えベクターが宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞中において多重選択マーカーとして使用する方法であれば特に制限されないが、ピリチアミン耐性遺伝子との二重マーカーが、事前に栄養要求変異体の作製が不要である点で好ましい。これら多重マーカーを含むベクターも、本発明の組換えベクターであり、例えば二次代謝産物の遺伝子組換え代謝物の生産において有用であるなどの利点がある。
【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
(アスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・パラシチカスにおけるカルボキシン感受性試験)
アスペルギルス・オリゼRIB40及びアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999を通常培養するGY培地(1%グルコース、0.5%イーストエキストラクト、2%寒天)に0、50、150、250μg/mLのカルボキシン(和光純薬工業株式会社製)を添加し、28℃にて2日間培養してカルボキシンに対する感受性を確認したが、完全な生育阻害は起こらなかった(表1参照)。
【0037】
【表1】
JP0005257972B2_000003t.gif

【0038】
培地の炭素源をグルコースから酢酸に代えたAY培地(144mM酢酸バッファーpH6.5、0.5%イーストエキストラクト、2%寒天)で28℃にて2日間培養すると50μg/mLのカルボキシンの濃度で生育を完全に阻害することができた(表1参照)。炭素源をグルコースから酢酸に変更することでカルボキシンに対する感受性が向上することが明らかになったため、以後カルボキシン耐性試験や形質転換実験にはAY培地を使用した。
【0039】
(アスペルギルス・オリゼRIB40からのカルボキシン耐性突然変異株の取得)
アスペルギルス・オリゼRIB40からカルボキシン耐性突然変異株の取得を試みた。変異原導入法として紫外線照射法を採用した。
【0040】
アスペルギルス・オリゼRIB40を胞子形成斜面培地(ポテトデキストロースアガー:DIFCO社製)で28℃にて7日間培養後、胞子を0.05%Tween80に懸濁し、目開き160μmのナイロンメッシュでろ過した。ろ液を5,000rpmで5分間遠心して上清を捨て、0.05%Tween80に再懸濁した。この作業を3回繰り返し、胞子液を洗浄するとともに濃縮を行った。最終的に胞子濃度1×10/mLとなるように再懸濁した。
【0041】
この胞子液4mLを直径5cmのプラスチックシャーレに入れ、約15cm離れた距離から紫外線を105秒又は60秒間照射し、その後30分間遮光した。紫外線照射した胞子を150μg/mLのカルボキシン入りのAY培地で28℃にて4~5日間培養した。この時の生存率は約80%だった。各プレート培地に生成したコロニーから胞子を採取し、さらに100μg/mLのカルボキシン入りのAY培地で4日間培養して精製したところ、最終的に13株のカルボキシン耐性変異株を単離することができた。
【0042】
(アスペルギルス・オリゼゲノムデータベースからのコハク酸脱水素酵素Ipサブユニットをコードする遺伝子の探索)
担子菌ではコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子における変異により、カルボキシン耐性が獲得されることが知られている(Keon et. al., Curr. Genet. 19, 475-481 (1991)、 Honda et. al., Curr. Genet. 37, 209-212 (2000)、及びIrie et. al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 67, 2006-2009(2003))ので、アスペルギルス・オリゼRIB40のゲノムデータベース(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/Top)より当該遺伝子と思われる遺伝子を検索した(配列番号2参照)。また、この遺伝子から推測されるアミノ酸配列は配列番号1に示した。
【0043】
上記カルボキシン耐性変異株13株について、ゲノムDNAよりPCR法を用いてコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子の増幅を行った。PCR反応は、プライマー1(フォワード)(5’-CTCCCTTCGACTTCATCTCG-3’;配列番号4)及びプライマー2(リバース)(5’-GACGGCCTCAAGAACCGA-3’;配列番号5)を使用し、DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-(東洋紡株式会社製)を用いた。PCRサイクルの条件は、94℃にて2分の後、94℃にて15秒、58℃にて30秒、68℃にて1分20秒を32サイクルした後、68℃にて7分処理し、15℃で保存した。その結果、約1.3Kbのゲノム遺伝子産物を確認した。得られたPCR産物をプロメガのWizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up Systemで精製し、DNA塩基配列決定を行った。
【0044】
プライマー1及び2に加えて、プライマー3(フォワード)(5’- GAACTGCACAGGATCCCAAC -3’; 配列番号6)とプライマー4(リバース)(5’- CCTCACTGTTCCACCAGTAC -3’; 配列番号7)を塩基配列決定に使用した。
【0045】
上記耐性変異株13株のうち9株において、コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子にアミノ酸の置換を伴う変異が見つかった(図1参照)。すなわち、5株において、開始コドンから940番目のシトシンがチミンに置換され、別の1株で940番目と942番目のシトシンがそれぞれチミンに置換されたことにより、249番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシンに置換された(以後、チロシン置換株とする)。さらに別の2株で941番目のアデニンがチミンに置換されたことにより、249番目のアミノ酸がヒスチジンからロイシンに置換された(以後、ロイシン置換株とする)。さらにまた別の1株で940番目のシトシンがアデニンに置換されたことにより、249番目のアミノ酸がヒスチジンからアスパラギンに置換された(以後、アスパラギン置換株とする)。上記耐性変異株13株のうち4株ではコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子には変異が見られなかった(以後、ヒスチジン耐性株とする)。
【0046】
(カルボキシン耐性変異株間のカルボキシン耐性度の比較)
置換されたアミノ酸の相違によりカルボキシン耐性に違いが見られるかを確認するために、カルボキシン耐性試験を行った。カルボキシンの濃度を0、25、50、100、150μg/mLとしたAY培地に14×10/mLの各上記耐性変異株の胞子を0.5μLずつ接種し、28℃にて2日間培養し、カルボキシン耐性度を試験した。
【0047】
各上記耐性変異株につきカルボキシンの濃度ごとにコロニー直径を測定し、カルボキシンを添加していない場合の各耐性変異株のコロニー直径を100%とした場合の割合を計算して、耐性度の評価基準とした(図2-a参照)。なお、カルボキシンを添加していない場合のコロニー直径は野生株及び耐性変異株間で大きな差はなかった。同一のアミノ酸が変異した株間ではカルボキシン耐性に差が見られなかったため、各アミノ酸変異株の代表株(アスパラギン置換株#14、ロイシン置換株#9、チロシン置換株#4)及びヒスチジン耐性株#3、並びに野生株(WT)のコロニー形成の様子を図2-bに示す。4種の耐性変異株のうちロイシン置換株とアスパラギン置換株のカルボキシン耐性がもっとも強いレベルであった。次にチロシン置換株が強い耐性度を示したが、ヒスチジン耐性株は、野生株に比べ明確な耐性を示すものの、そのレベルは他の耐性変異株の中ではもっとも低かった。この結果、野生株が強く生育阻害を示す50μg/mLカルボキシンが添加された培地を用いれば、変異型コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子をカルボキシン耐性選択マーカーとして利用でき、その際、耐性度がもっとも強かったロイシン又はアスパラギンに置換したタイプの遺伝子の使用がもっとも適切であることが判明した。
【0048】
(カルボキシン耐性選択マーカーを組み込んだベクターの構築)
上記のロイシン又はアスパラギンに置換したタイプの遺伝子のベクターへの組込みを試みた。まず、249番目のヒスチジンがロイシンに置換されたコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子につき、DNAポリメラーゼとしてKOD-Plus-を用いてPCRを行った。PCRプライマーとして、プライマー5(フォワード)(5’-CAGTGGGCTGGCTTATAGTGGA-3’; 配列番号8)とプライマー6(リバース)(5’- CTTGGAGACCACCTTGAGACAACTTA -3’ ; 配列番号9)を使用した。PCRサイクルの条件は、94℃にて2分の後、94℃にて15秒、60℃にて30秒、68℃にて3分を35サイクルした後、68℃にて7分処理し、15℃で保存した。その結果、約3Kbのゲノム遺伝子産物を得た。
【0049】
得られたPCR産物をプロメガのWizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up Systemで精製し、それを制限酵素EcoRIとBglIIとを用いて37℃にて15時間処理した。かかる処理によって得られたDNA断片に対し、EcoRIとBamHIで処理したpSP72ベクター(プロメガ社製)を混合し、T4DNAリガーゼ(プロメガ社製)を用いて16℃にて7時間反応した反応液を大腸菌に形質転換した。この組換えプラスミドを持つ大腸菌からプラスミドを精製し、正確にカルボキシン耐性遺伝子を有することを、精製したプラスミドベクターの塩基配列を決定することにより確認した。このプラスミドをpCBR-L(ロイシン置換型プラスミド)とした。
【0050】
上記と同様の方法で、249番目のヒスチジンがアスパラギン置換されたコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子を、pSP72ベクターに組み込み、かかるプラスミドをpCBR-N(アスパラギン置換型プラスミド)とした。
【0051】
(プロトプラスト-PEG法によるアスペルギルス属に属する微生物の形質転換)
上記で得られた2種類のプラスミドをベクターとして、プロトプラスト-PEG法を用いて、アスペルギルス・オリゼRIB40及びアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999の形質転換を試みた。まず、アスペルギルス・オリゼをCD液体培地(ツアペックドックス液体培地;1%グルコース、0.6%硝酸ナトリウム、0.052%塩化カリウム、0.152%リン酸二水素カリウム、2mM硫酸マグネシウム、0.1%硫酸鉄、0.88%硫酸亜鉛、0.04%硫酸銅、0.01%ホウ酸ナトリウム、0.005%モリブデン酸アンモニウム、水酸化カリウムにてpH6.5に調整)で28℃にて、18~20時間静置培養後、ガラスビーズ(5mm~6mm;三商社製)を加え、30℃にて24時間振とう培養した。続いて菌糸をガラスフィルター(1G)でろ過して回収し、滅菌水と0.8M食塩水で洗浄した。十分に脱水後、菌体を10mLプロトプラスト化溶液〔0.8M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム緩衝液、15mg/mLヤタラーゼ(宝酒造株式会社製)、10mg/mLセルラーゼ(ヤクルト社製)、1mM DTT〕に懸濁した。30℃にて振とうさせながら2時間反応させた後、ミラクロス(22~25μm;CALBIOCHEM社製)でろ過し、ろ液を2,000rpmで5分間遠心した。上清を捨て、ソリューション1(0.8M塩化ナトリウム、10mM塩化カルシウム、10mM Tris-HCl pH8.0)を1mL添加し、再度遠心した。プロトプラストが2×108/mLとなるようにソリューション1を加え、0.2容量のソリューション2(40%(W/V)ポリエチレングリコール(PEG4000)、50mM塩化カルシウム、50mMTris-HCl)と1mMとなるようにDTTを加え、よく混合した。0.1mLプロトプラスト溶液につき5μg又は10μgのpCBR-L又はpCBR-Nを加えた。氷上で30分放置後、0.5mLのソリューション2を加え、室温で20分放置した。その後、5mLのソリューション1を加えてよく混合後、2,000rpmで5分間遠心し、上清を除いた後、沈殿した細胞を0.15mLのソリューション1に懸濁した。カルボキシンを濃度が50μg/mLとなるように添加したAYプレート培地(656mM塩化ナトリウムを含む)の中央に50μLの細胞懸濁液を置いた。これに、カルボキシンの濃度を50μg/mLとしたAY軟寒天培地(144mM酢酸pH6.5、0.5%イーストエキストラクト、0.5%軟寒天、656mM塩化ナトリウム)を煮沸により溶解後、約40℃に冷まし、5mLをAYプレート培地上の細胞懸濁液に加え、混合したのち固まるまで静置した。AY培地とAY軟寒天培地に撒かれた細胞懸濁液を28℃にて4~5日間培養した。その結果、アスペルギルス・オリゼのカルボキシン耐性を獲得した転換体を得ることができた。アスペルギルス・パラシチカスについてもプロトプラスト化溶液に20mg/mLのヤタラーゼを用い、カルボキシンの濃度を75μg/mLとしたことの他は、上記アスペルギルス・オリゼRIB40と同様の方法で、カルボキシン耐性を獲得した転換体を得ることができた。
【0052】
(簡便な組換え体の検出方法)
遺伝子組換えによってカルボキシン耐性を獲得した、アスペルギルス・オリゼRIB40及びアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999について、カルボキシン耐性遺伝子が導入されたかどうかの確認を試みた。
【0053】
変異遺伝子が導入されたかどうかを確認するためにDNAの解析が必要である場合がある。なぜならば、内在の遺伝子が組換え処理中に突然変異を起こし、カルボキシン耐性を獲得することも大変低いが可能性があるためである。しかし、変異遺伝子はもともと内在の遺伝子の1塩基置換であるため、通常のPCR法では区別をつけることは困難であり、時間がかかり作業が煩雑なサザン解析でしかその確認ができない。そこで迅速に組換え法で導入した遺伝子を検出するために、カルボキシン耐性遺伝子がコードするアミノ酸配列を代えず、1塩基を置換することにより制限酵素MspI認識部位の導入を試みた(図3参照)。
【0054】
pCBR-Lを制限酵素StyI(EcoT14I)を用いて37℃にて11時間処理し、63塩基を除いたDNA断片を作製した。この除いた部分に相当するDNA配列に対して1塩基置換によりMspI認識部位を創出したDNA断片を合成するために、センスオリゴヌクレオチド(5’-ACGCCTTGGATAACAGCATGAGCGTCTACCGGTGCCTCACCATTCTTA-3’配列番号10)(図4に示されるように、配列の下線部は左からStyI、MspI、及び変異が入った塩基配列でコードされるアミノ酸のロイシン(CTC)を含む)と、アンチセンスオリゴヌクレオチド
(5’-GACCCTTGGGGCAAGTCCGCGAGCAGTTAAGAATGGT-3’; 配列番号12)を作製し、これらを混合した後、プロメガのPCRマスターミックスを用いて下記の反応により二本鎖DNAを合成した(図4参照)。反応条件は、94℃にて30秒の後、37℃にて3分、72℃にて1分であった。得られた断片をStyIを用いて37℃にて13時間処理し、エタノール沈殿して精製した。これをStyIで処理したpCBR-LにT4DNAリガーゼを用いて16℃にて、4時間処理してライゲーションし、この反応液を大腸菌に形質転換した。この組換えプラスミドを持つ大腸菌からプラスミドを精製し、正確に置き換えたDNA断片を有することを精製したプラスミドの塩基配列を決定することにより確認した。このプラスミドをロイシン置換型のpCBR-LMとした。また、センスオリゴヌクレオチド(5’-ACGCCTTGGATAACAGCATGAGCGTCTACCGGTGCAACACCATTCTTA-3’;配列番号11)(配列番号10と同様に、左からStyI、MspIを含む。また、変異が入った塩基配列でコードされるアミノ酸のアスパラギン(AAC)を含む)を用いたことのほかは上記と同様の方法で、アスパラギン置換型のpCBR-NMを作製した。アスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・パラシチカスNRRL2999に対しpCBR-LM又はpCBR-NMを上記プロトプラスト-PEG法を用いて形質転換を行った。選択培地上に増殖した耐性コロニーから菌体を取って50μg/mLのカルボキシン入りのAY培地上で28℃にて2日間培養して、安定した耐性が得られた株を選抜した。増殖した菌体から簡便な核酸抽出法(Wen et al., Appl. Environ. Microbiol., 71,3192-3198 (2005))を用い、ゲノムDNAを抽出した。野生型株のゲノムDNAも同様に抽出を行った。抽出したゲノムDNAに対しプロメガのPCRマスターミックスを用いてPCRを行い、コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子の増幅を試みた。PCRのプライマーは、プライマー7(フォワード)(配列番号13)(5’- CTGGTGCCCGATCTGAC -3’)とプライマー8(リバース)(5’-GCCGATCCATAACCTTCA -3’; 配列番号14)を使用した。PCRサイクルの条件は、95℃にて4分の後、95℃にて30秒、56℃にて30秒、72℃にて50秒を30サイクルした後、72℃にて7分処理し、15℃で保存した。その結果、野生型株、形質転換株とも約0.83Kbのゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR産物を制限酵素MspIを用いて37℃にて18時間ほど処理し、それをアガロースゲルで電気泳動した(図5参照)。その結果、試験した全てのカルボキシン耐性株において、約0.46Kbと約0.37Kbのバンドが得られた一方で、野生型株ではこれらの切断断片は生じなかった。この結果から、カルボキシン耐性株はすべて組換え体であることが確認された(表2参照)。アスペルギルス・オリゼの形質転換効率は表3に、アスペルギルス・パラシチカスの形質転換効率は表4に示す。
【0055】
【表2】
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【0056】
【表3】
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【0057】
【表4】
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【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のカルボキシン耐性変異株13株のうち9株におけるコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子におけるアミノ酸の置換を伴う変異の箇所を示す図である。
【図2】4種の耐性変異株のコロニーの直径の割合(%)を図2-aに示す。各アミノ酸変異株の代表株(アスパラギン置換株#14、ロイシン置換株#9、チロシン置換株#4)及びヒスチジン耐性株#3、並びに野生株(WT)のコロニー形成の様子を図2-bに示す。
【図3】カルボキシン耐性遺伝子へ導入した制限酵素認識部位を示す図である。カルボキシン耐性遺伝子に対して、さらに遺伝子操作を行い制限酵素MspIによって切断できる部位を導入した。これによるコードするアミノ酸(アルギニン)に変化はない。
【図4】カルボキシン耐性ベクターへMspIサイトの導入の様子を示す図である。
【図5】制限酵素認識部位導入カルボキシン耐性遺伝子による遺伝子組換え検出の様子を示した図である。図3に示した制限酵素認識部位導入カルボキシン耐性遺伝子を用いて組換え処理を行い、得られた耐性株について、簡便法でDNA抽出、PCR処理、制限酵素MspI処理を行い電気泳動により結果を確認した。試験したいずれの株も、明確に組換え遺伝子が導入されていることが確認できた。
図面
【図1】
0
【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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