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明細書 :ビタミンC含量が高められたトウガラシ属植物の果実の生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360697号 (P5360697)
公開番号 特開2009-124965 (P2009-124965A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成21年6月11日(2009.6.11)
発明の名称または考案の名称 ビタミンC含量が高められたトウガラシ属植物の果実の生産方法
国際特許分類 A01G   1/00        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
A01P  21/00        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
FI A01G 1/00 301Z
A01G 7/00 605Z
A01P 21/00
A01N 63/00 F
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2007-301377 (P2007-301377)
出願日 平成19年11月21日(2007.11.21)
審査請求日 平成22年6月11日(2010.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】津田 新哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】小島 寛史
参考文献・文献 特許第3133605(JP,B2)
特開2005-130712(JP,A)
特開2005-237345(JP,A)
特開2000-201535(JP,A)
小坂能尚,弱毒ウイルスによるウイルス病害防除の歩みと展望,バイオコントロール研究会レポート,日本,日本植物病理学会,1999年 4月 5日,第6号,p.61-65
調査した分野 A01G 1/00
A01G 7/00
A01P 21/00
A01N 63/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下(A)に記載のトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスをCapsicum annuumに属する植物の苗に接種し、栽培することを特徴とする、Capsicum annuumに属する植物の果実のビタミンC含量を向上させる方法
(A): Pepper milde mottle virus No.13株, Pepper milde mottle virus No.16株, 又はこれらから選抜したウイルス株, であって、以下(B-1)及び(B-2)に記載の性質を有するもの。
(B-1): Capsicum annuumに属する植物に感染した際に、当該感染した植物に対する生育形態への影響が皆無である性質。
(B-2): Capsicum annuumに属する植物に感染した際に、果実のビタミンC含量を向上させる性質。
【請求項2】
前記Capsicum annuumに属する植物がピーマンである、請求項1に記載の方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機能が向上された園芸作物の生産方法に関し、詳しくは、トバモウイルス(Tobamovirus)属の弱毒系統ウイルスを接種することにより、ビタミンC含量が高められたトウガラシ(Capsicum)属植物の果実の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康食品ブームにより、作物が持つ機能性をさらに向上させた食品の開発が望まれている。
植物病原性を示さない微生物を農業に利用する技術は、病害虫防除技術のひとつとして研究開発されてきた。
これまでに、その様な観点から植物に病原性を示さない多数の有用微生物や弱毒ウイルスが開発され、特許出願されている。
【0003】
しかしながら、それら非病原性の有用微生物や弱毒ウイルスを作物に接種した後に得られる収穫物の食品成分についての分析は、これまでのところ特許文献1にあるようにキュウリモザイクウイルスを利用した方法に限られている。
特許文献1には、ククモウイルス属に分類されるキュウリモザイクウイルスを用いて、主にトマトを対象とした、農作物のビタミンC含量のみを高める技術に関する発明が記載されている。また、トマト以外で適応可能性がある野菜類として、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、キュウリ、ナス、アスパラガス、ウド、ホウレンソウ、スイカ、メロン、モモ、リンゴ、柑橘類が列記されている。
【0004】
ところでトウガラシ属植物には、数十の種が世界中に分布し、数百を超える栽培品種が存在する。これらには、辛味成分のカプサイシンを含むものが多いが、栽培品種の一種であるピーマン、パプリカのように、辛味が抑制されたものもある。特に、ピーマンは、多くの食材に利用されており、我が国の主要な農作物の一つである。
また、トウガラシ属植物、特にはピーマンに多量に含有されるビタミンPは、ビタミンCの熱による破壊を軽減していると考えられており、例えばレモンよりも遥かに多くのビタミンCの摂取が可能である。即ち、栄養学的にビタミンCの摂取に極めて好適な農作物である。
従って、トウガラシ属植物の果実のビタミンC含量を高めることによって、特には、ビタミンC含量のみを高めることによって、トウガラシ植物の果実を、ビタミンCの摂取のためには栄養学的に極めて有用な食材とすることができるものと期待される。
【0005】
しかしながら、キュウリモザイクウイルスがトウガラシ属植物のビタミンC含量を高めるとの報告は、これまでなされていない。
上記した特許文献1にも、ピーマン、トウガラシ、パプリカ、シシトウガラシ等のトウガラシ属の植物に関する記載は全く認められない。
なお、キュウリモザイクウイルスが、トウガラシ、ピーマンに感染する例は知られているが、特許文献1を含め他の文献等においても、キュウリモザイクウイルスがトウガラシ属植物のビタミンC含量を高めるとの報告は、これまでなされていない。
【0006】
また、果物やトマトなどの栽培方法において、果実の糖度を高めるために潅水を少なめに調節して栽培することにより、糖度の以外の有効成分の全体の含量を向上させる栽培方法も報告されているが、特殊な栽培方法や設備が必要となり、さらには純粋に果実のビタミンC含量のみを向上させることはできない。
従って、特別な設備や栽培方法を必要とせず、常法による栽培方法によって、トウガラシ属植物の果実のビタミンC含量のみを高める技術は確立されておらず、その技術開発が期待されている。
【0007】

【特許文献1】特許第3133605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、特別な設備や栽培方法を必要とせず、常法による栽培方法によって、ビタミンC含量、特にはビタミンC含量のみが高められた、トウガラシ属植物の果実の生産方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、トバモウイルス(Tobamovirus)属の弱毒系統ウイルスをトウガラシ属植物に接種し、その後に収穫された果実のビタミンC含量が、無接種のものと比較して顕著に高くなることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
即ち、請求項1に係る本発明は、以下(A)に記載のトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスをCapsicum annuumに属する植物の苗に接種し、栽培することを特徴とする、Capsicum annuumに属する植物の果実のビタミンC含量を向上させる方法を提供するものである。
(A): Pepper milde mottle virus No.13株, Pepper milde mottle virus No.16株, 又はこれらから選抜したウイルス株, であって、以下(B-1)及び(B-2)に記載の性質を有するもの。
(B-1): Capsicum annuumに属する植物に感染した際に、当該感染した植物に対する生育形態への影響が皆無である性質。
(B-2): Capsicum annuumに属する植物に感染した際に、果実のビタミンC含量を向上させる性質。
請求項に係る本発明は、前記Capsicum annuumに属する植物がピーマンである、請求項1に記載の方法を提供するものである。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特別な設備や栽培方法を必要とせず、常法による栽培方法によって、ビタミンC含量、特にはビタミンC含量のみが高められた、トウガラシ属植物の果実を生産することを可能にする。
即ち、本発明によれば、トバモウイルス(Tobamovirus)属の弱毒系統ウイルスをトウガラシ属植物の苗に接種し、常法により栽培することによって、トウガラシ属植物の果実のビタミンC含量を高めることができる。
本発明で用いるトバモウイルス属の弱毒系統ウイルスは、自然界から得られた人畜無害で、かつ、植物病原性を示さないことから、環境に優しく、安全性に優れているという特色を有している。
本発明によれば、ビタミンC含量、特にはビタミンC含量のみが高められた高機能性作物が生産できることから、現代の健康志向にマッチした農作物を提供できることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ビタミンC含量が高められたトウガラシ属植物の果実の生産方法に関し、トバモウイルス(Tobamovirus)属の弱毒系統ウイルスをトウガラシ属植物の苗に接種し、栽培することを特徴とするものである。
なお、本発明において高めることができるビタミンCとはL-アスコルビン酸である。
【0013】
本発明で用いるトバモウイルス属のウイルスとしては、弱毒系統ウイルスを用いることができる。
本発明において弱毒系統とは、栽培において接種したトウガラシ属植物の生育に影響が皆無のもの、影響が軽微なものを指し、正常な果実の生産が可能な程度に影響が少ないものを含む。好ましくは、接種した植物の生育に影響が皆無のものであることが望ましい。
本発明におけるトバモウイルス属の弱毒系統ウイルスは、既に公的機関において開発された弱毒系統を用いることができる。具体的には、農林水産省北海道農業試験場で開発されたトウガラシマイルドモットウイルスの弱毒系統ウイルス株のPa18株(これは、(独)農業生物資源研究所ジーンバンクにおいて、トウガラシマイルドモットルウイルス弱毒系統、MAFF No.104086株として保存されている。)、千葉県のC-1421株、大分県のIPO-2-19株を用いることができる。
なお、農業生物資源研究所ジーンバンクにおいて保存されている、トウガラシマイルドモットルウイルス弱毒系統、MAFF No.104086株の学名は Pepper milde mottle virus (Tobamovirus)、登録時学名が Pepper milde mottle virus (Tobamovirus)であり、植物病原性であるものの、人体への直接の危険性はないものである。
【0014】
また、例えば後記調製例に示されるように、強毒系統ウイルスを植物体に感染させて、感染植物体個体への生育形態への影響の皆無のものや、軽微なものを選択し、栽培特性に合う弱毒系統ウイルスを選抜してもよい。
具体的には、(独)農業生物資源研究所ジーンバンクで保存されているトウガラシマイルドモットルウイルスの強毒系統ウイルス(例えば、MAFF No.104032株)をトウガラシ属植物やタバコ属植物に接種し、高温ストレス条件下での育成及びえそ斑点選抜を行うことで、生育形態への影響の皆無のものや、軽微なものを選択し、栽培特性に合う弱毒系統ウイルスを選抜することができる。
後記調製例1に示すトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.13株は、このようにして得られた弱毒系統ウイルスの一つである。
なお、高温ストレス条件下での育成及びえそ斑点選抜は、必要に応じて数回繰り返して栽培特性に合う弱毒系統ウイルスを選抜してもよい。
前記した農業生物資源研究所ジーンバンクにおいて保存されている、トウガラシマイルドモットルウイルス弱毒系統、MAFF No.104032株の学名は Pepper milde mottle virus (Tobamovirus)、登録時学名が Tobacco mosaic virus (Tobamovirus)であり、植物病原性であるものの、人体への直接の危険性はないものである。
【0015】
本発明においては、トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスとして、このようにして得られ、かつ、後記調製例1に示すトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.13株を用いることができる。このNo.13株はウィルスであることから、日本国特許庁長官の指定する寄託機関である、独立法人産業総合研究所の特許生物寄託センターと、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターのいずれにも寄託の受け入れが認められないものである。このため、本出願人は、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.13株の分譲申請がある場合には、その分譲申請に応ずる用意がある。
また、本発明においては、トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスとして、後記調製例2に示すトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.16株を用いることができる。このNo.16株も、上記No.13株と同様にウィルスであることから、日本国特許庁長官の指定する寄託機関である、独立法人産業総合研究所の特許生物寄託センターと、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターのいずれにも寄託の受け入れが認められないものである。このため、本出願人は、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.16株の分譲申請がある場合には、その分譲申請に応ずる用意がある。
【0016】
本発明において用いるトバモウイルス属の弱毒系統ウイルスの種類は、対象とするトウガラシ属植物の品種や使用目的などを考慮して適宜決定すればよい。
なお、本発明においては、弱毒系統でない、強毒系統のウイルスを用いた場合でも果実のビタミンC含量を向上させることができるが、感染による病状が生育形態に表われ、成長阻害による果実の着果数の減少、奇形果やモザイク果の発生などにより、出荷可能な収穫量が著しく低下し経済性が損なわれるため好ましくない。
【0017】
本発明で用いるトバモウイルス属ウイルスは、ククモウイルス属に分類されるキュウリモザイクウイルスとはウイルス学的に異なるものであり、ウイルス粒子形態、ゲノム構造、媒介様式、感染植物域などの性質が大きく異なるものである。
また、両者は、特に、ウイルス複製の点で増殖のメカニズムが異なり、また、宿主となる感染した植物側の抵抗性遺伝子や感染後の病徴発現に関わる応答反応も異なる。
本発明に用いることができるトバモウイルス属のウイルスとしては、トウガラシ属の植物に感染し、果実のビタミンC含量を高める影響を及ぼすものであれば如何なるものでもよいが、具体的には、トウガラシマイルドモットウイルス(PMMoV)、タバコモザイクウイルス(TMV)、トマトモザイクウイルス(ToMV)などを挙げることができる。特に、トウガラシ属のウイルス抵抗性遺伝子との関係からトウガラシマイルドモットウイルス(PMMoV)を用いることが好適である。
【0018】
なお、トバモウイルス属のウイルスは、トウガラシ属を含むナス科植物、ウリ科植物、ユリ科植物などの特定の植物種にのみ感染する植物ウイルスであり、ヒト、家畜、野生動物に対して全く無害なウイルスである。
また、本発明に用いるトバモウイルス属のウイルスは、弱毒系統であるため、感染による病状が宿主植物の生育形態に影響を与えないものである。
特に、本発明に主として用いるトウガラシマイルドモットルウイルスはトウガラシ属にしか感染しないウイルスであり、また、弱毒系統は感染植物体内における増殖量が強毒系統と比較して20~30%程度であるため野外の植物や他の農作物への影響も心配されない。
従って、本発明は、環境への影響や食品としての安全性にも優れた技術である。
【0019】
本発明においては、上記トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスを接種することによって、トウガラシ属(Capsicum)に分類される特徴を持つ植物の果実のビタミンC含量を高めることができる。
トウガラシ属植物には、数十の種が世界中に分布し、数百を超える栽培品種が存在する。これらには、辛味成分のカプサイシンを含むものが多い。
本発明において用いることができるトウガラシ属に分類される植物としては、Capsicum annuum(広義のトウガラシ)、Capsicum baccatum(アヒ・アマーリジョ)、Capsicum cardenasii(ウルピカ)、Capsicum chinense Jacq.Heser&Smith(ハバネロの仲間)、Capsicum frutescens(キダチトウガラシ(タバスコの材料))、Capsicum pubescens Ruiz&Rav.(ロコト)などを挙げることができる。
【0020】
本発明は、特にCapsicum annuum(広義のトウガラシ)の果実のビタミンC含量を高めるのに好適である。
ここでCapsicum annuum(広義のトウガラシ)としては、例えばピーマン、トウガラシ、パプリカ、シシトウガラシ、ホンタカ、ハラペーニョ、タカノツメなどの主要な農作物の品種が挙げられ、重要な食材である。なお、これらの農作物品種は、生物学的に(生殖的隔離がなく交配が可能な)全く同一の種であり、米におけるコシヒカリやササニシキ等の間の関係に相当する、遺伝的に極めて近い関係にある。
本発明では、これらの中でも、ピーマン、トウガラシ、パプリカ、シシトウガラシが好ましく、特にピーマンが最も好適である。従って、本発明は、ピーマンの果実のビタミンC含量を高めるのに最も好適である。
【0021】
トウガラシ属植物の果実とは、花器受粉後に肥大化する次世代の種子を含む子房を指す。果実の中身は、種子、胎座、隔壁以外殆ど空洞であることから、肉厚の果肉を食する。
本発明においては、具体的には、可食部である果肉部の組織のビタミンC含量を高めることができる。
なお、上記トウガラシ属植物、特にはピーマンには、多量のビタミンPが含有されている。ビタミンPは、ビタミンCの熱による破壊を軽減していると考えられており、トウガラシ属植物を食することにより、例えばレモンよりも遥かに多くのビタミンCの摂取が可能である。即ち、トウガラシ属植物は、栄養学的にビタミンCの摂取に極めて好適な農作物である。
【0022】
本発明は、上記トバモウイルス属のウイルスを、トウガラシ属植物の苗に接種し感染させることによって、トウガラシ属植物の果実のビタミンC含量が高められるという知見を得たことに基づくものである。特に本発明は、ビタミンC含量のみが高められ、他の成分含量にはほぼ影響を与えない効果が奏されるものである。
【0023】
従来技術においては、果実の糖度を高める方法として、潅水を少なめに調節して栽培することにより、糖度の以外の有効成分(ビタミンC等も含む)の全体の含量を向上させる栽培方法も報告されていた。しかし、この場合には、特殊な栽培方法や設備が必要となり、さらには純粋に果実のビタミンC含量のみを向上させることはできないという課題があった。
本発明においては、上記のような特別な設備や栽培方法を必要とせず、常法による栽培方法によって、トウガラシ属植物の果実のビタミンC含量のみを高めることが可能となる。
なお、本発明において常法による栽培とは、園芸栽培圃場において作物を栽培するために必要な土壌肥料を施用した土耕栽培を指す。例えば、本発明は、茨城県等の全国各地のピーマン産地における一般的な慣行栽培の方法に従って栽培することができる。
換言すると、本発明においては、育苗、施肥、薬剤散布などの栽培管理は、それぞれの対象作物に応じた一般的な栽培管理方法に準じて行えばよい。
【0024】
本発明において、トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスのトウガラシ属植物への接種は、具体的には以下のようにして行うことができる。
まず、上記トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスが感染した植物の葉を、リン酸緩衝液中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕する。約1gの葉を用いる場合、これを0.01~10L程度、好ましくは1L程度のリン酸緩衝液の磨砕液とすることが好ましい。
上記トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスが感染した植物の葉とは、例えばタバコ植物、トウガラシ属植物などの葉、具体的にはNicotiana benthamianaの葉を用いることができる。
また、リン酸緩衝液としては、0.05M程度、pH7.0程度のものを用いることができる。
【0025】
前記トバモウイルス属の弱毒系統ウイルスをトウガラシ属植物の苗に接種する時期としては、感染性の点から、幼苗期が好ましい。但し、他の時期でも接種は可能である。
接種時期として具体的には、トウガラシ属植物の播種後、10~20日後、好ましくは14日程度経過後の、完全に双子葉が展開した苗に、前記の葉の磨砕液に含まれるウイルスを接種する処理を行う。
接種方法としては、双子葉に研磨剤を振りかけ、そこに前記の葉の磨砕液を染みこませた脱脂綿等で軽くこすりつけることで、苗にウイルスを接種する。研磨剤としては、例えば、400~600メッシュ程度のカーボランダムを用いることができる。
【0026】
本発明においては、その後、前記したような常法により栽培することで、ビタミンC含量が高められたトウガラシ植物の果実を生産することができる。
上記の苗へのウイルス接種する処理は、野外で行ってもよく温室内で行ってもよいが、当該処理を温室内で行った場合、本葉が10枚程度になるまで温室内で育成した後、野外、ハウス内、圃場、プランター等に定植させて栽培することが望ましい。なお、常法による栽培とは、上記したように、例えば、一般的な慣行栽培の方法に従って栽培することができる。
【0027】
上記苗へのウイルス接種処理により、処理後のトウガラシ属植物はトバモウイルス属の弱毒系統ウイルスが全身感染したトウガラシ植物体を得ることができる。
当該トウガラシ属植物は、ビタミンC含量、特に他の成分含量にはほぼ影響を与えずにビタミンC含量のみが高められた果実を生産することができる。
【0028】
なお、具体的には、ピーマンの苗に対してトウガラシマイルドモットウイルスの接種処理を行った後、上記所定の日数経過後に当該苗を圃場に定植し、一般的な慣行栽培の方法に従って約3ヶ月栽培した場合、収穫した果実のビタミンC含有量は、未処理のものに比べて、約1.3~2.0倍に高めることができる。また、約4ヶ月栽培した場合、収穫した果実のビタミンC含有量は、未処理のものに比べて、約1.4~2.0倍程度に高めることができる。
なお、他の成分含量として、例えば、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維含量には、本発明におけるトバモウイルス属の弱毒系統ウイルス接種の影響はみられない。
【0029】
このようにしてトバモウイルス属の弱毒系統ウイルスをトウガラシ属植物の苗に接種し、常法により栽培することにより、ビタミンC含量の高められたトウガラシ属植物の果実を生産することができる。
如上の如く、上記の方法で生産されたトウガラシ植物の果実は、栄養学的にビタミンCの摂取に極めて好適な農作物であり、ビタミンCの摂取のためには栄養学的に極めて有用な食材とすることができるものと期待される。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
調製例1(トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.13株の調製)
以下の実施例で用いるトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスを選抜した。
まず、(独)農業生物資源研究所ジーンバンクに保存されているトウガラシマイルドモットルウイルスの強毒系統ウイルス株(MAFF No.104032)が感染したピーマンの感染植物組織を、50倍量のリン酸緩衝液(中性付近の0.1Mリン酸緩衝液)を加えて磨砕した。なお、当該MAFF No.104032株は、感染したピーマン植物体の生長点近傍の本葉に奇形を伴うモザイク病徴を発症させ、果実には奇形の緑色の条斑モザイクを縦方向に発生させ、生育が抑えられるため一作を通した収量を激減させる強毒系統ウイルス株である。
この磨砕液を用い、本葉8~10枚期程度にまで生育したピーマン(品種:ニュー土佐ひかり)苗の主茎にウイルスを接種した。当該ウイルスの接種処理は、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を苗の主茎に振りかけ、前記の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることにより行った。ウイルス接種後、苗は3~4週間程度37~40℃の高温ストレス条件下において陽光恒温器で育成した。
【0032】
育成後、前記強毒系統ウイルスを接種した主茎だけを切り出し、100倍量のリン酸緩衝液(中性付近の0.1Mリン酸緩衝液)を加えて磨砕した。この磨砕液を用い、本葉10枚期程度に生育したNicotiana tabacum cv. Xanthi ncの本葉第5~8葉にウイルスの接種処理を行った。当該ウイルスの接種処理は、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を葉に振りかけ、前記の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることにより行った。
【0033】
ウイルス接種後、3~4日目の接種葉上にウイルス感染によって形成された多数のえそ斑点を一個ずつ分離し、50μL程度のリン酸緩衝液(中性付近の0.1Mリン酸緩衝液)を加えてそれぞれ粗汁液とした。
えそ斑点毎に調製したそれぞれの粗汁液を子葉期のピーマン苗に接種した。当該ウイルスの接種処理は、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を苗に振りかけ、前記の粗汁液をガラスベラで軽くこすりつけることにより行った。ウイルス接種後、23~25℃にて一定のガラス温室で約1ヶ月間育成した。
その後、育成したピーマン植物体について症状調査を行い、生育の異常が認められたピーマン株(強毒系統の感染)、ウイルス感染していないピーマン株を取り除き、ウイルス症状が皆無なピーマン株からトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスを分離した。このトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスをNo.13株とした。
なお、前記したように、このNo.13株はウィルスであることから、日本国特許庁長官の指定する寄託機関である、独立法人産業総合研究所の特許生物寄託センターと、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターのいずれにも寄託の受け入れが認められないものであった。このため、本出願人は、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.13株の分譲申請がある場合には、その分譲申請に応ずる用意がある。
【0034】
上記操作を経て選抜したNo.13株が感染したピーマンの葉を50倍量のリン酸緩衝液(中性付近の0.1Mリン酸緩衝液)を加えて磨砕した。この磨砕液を、本葉10枚期程度に生育したNicotiana benthamianaの本葉第5~8葉に接種した。当該ウイルスの接種処理は、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を葉に振りかけ、前記の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることにより行った。ウイルス接種後5日目の接種葉を回収し、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルス(No.13株)が感染したNicotiana benthamiana葉(接種源)として、以下の実施例に用いた。
【0035】
調製例2(トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.16株の調製)
1996年に茨城県のピーマン産地にて、強毒系統ウイルス株が感染したピーマン植物組織を採取した。なお、当該強毒系統ウイルス株は、前記調製例1で用いたMAFF No.104032株と同様に、感染したピーマン植物体の生長点近傍の本葉に奇形を伴うモザイク病徴を発症させ、果実には奇形の緑色の条斑モザイクを縦方向に発生させ、生育が抑えられるため一作を通した収量を激減させる強毒ウイルス系統株である。
調製例2では、当該1996年に茨城県のピーマン産地で採取した強毒系統ウイルス株の感染植物組織を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、以下の実施例で用いるトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスを分離した。
この調製例2で選抜されたトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスをNo.16株とし、このトウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルス(No.16株)を接種した5日後のNicotiana benthamiana接種葉を以下の実施例に用いた。
なお、前記したように、このNo.16株も、上記No.13株と同様にウィルスであることから、日本国特許庁長官の指定する寄託機関である、独立法人産業総合研究所の特許生物寄託センターと、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターのいずれにも寄託の受け入れが認められないものであった。このため、本出願人は、トウガラシマイルドモットルウイルスの弱毒系統ウイルスNo.16株の分譲申請がある場合には、その分譲申請に応ずる用意がある。
【0036】
実施例1
調製例1で得られたトウガラシマイルドモットウイルス(No.13株)の弱毒系統ウイルスが感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。
また、強毒系統ウイルス(MAFF No.104032株)が感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。
次いで、ピーマン(品種:ニュー土佐ひかり(南国種苗))の種を播種(2006年2月21日)し、播種してから14日経過後に完全展開した双子葉に、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を振りかけ、そこに前記の葉の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることで、苗にウイルスの接種処理を行った。
その後、本葉が10枚程度になるまで温室内で育成した後、茨城県水戸市鯉渕学園のパイプハウス圃場に定植し(2006年4月7日)、栽培した。なお、育苗、施肥、薬剤散布などの栽培管理は、一般的な栽培管理方法に合わせて行った。
定植してから約4ヶ月経過した後(2006年8月10日)に、生育したピーマンの果実を収穫し、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維の含量を測定した。測定は、ビタミンC、ビタミンE、αーカロテン、βーカロテンは「HPLC法」、ナイアシンは「微生物定量法」、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に関しては「プロスキー変法」(「新・食品分析法」、社団法人 日本食品科学工学会 編)により行い、果実100gあたりの値を求めた。
なお、標準的な農作物の値との比較の意味で、五訂増補日本食品標準成分表からの値を表1に示す。
【0037】
収穫したピーマンの果実において、弱毒ウイルスの接種処理を行ったものから収穫した果実を本発明実施品1、強毒ウイルスの接種処理したものから収穫した果実を比較製造品1、ウイルス接種処理を行わなかったものから収穫した果実を比較製造品2とした。結果を表2に示す。
【0038】
【表1】
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【0039】
【表2】
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【0040】
表2が示すように、トウガラシマイルドモットウイルス(No.13株)の弱毒系統ウイルスをピーマンの苗に接種し、定植してから約4ヶ月間常法により栽培することにより(本発明実施品1)、未接種の場合(比較製造品2)と比べて、果実のビタミンC含量が1.4倍に高められることが示された。なお、他の成分含量として測定した、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の含量にはほとんど相違が見られなかった。また、ウイルス接種による生育形態への影響も見られなかった。
また、強毒系統ウイルスを接種した場合(比較製造品2)、果実のビタミンC含量のみを高める効果に関しては、弱毒系統ウイルスを接種した本発明実施品1と同様の結果が得られたが、成長が抑制され、着果数が激減し、しかもウイルス感染が引き起こす生育形態への影響(奇形果、モザイク果などの異常果)が観察された。
【0041】
実施例2
調製例2で得られたトウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスが感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。また、強毒系統ウイルス(1996年に茨城県のピーマン産地で採取した強毒株)が感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。
次いで、ピーマン(品種:みおぎ(日本園芸生産研究所))の種を播種(2006年2月20日)し、播種してから14日経過後に完全展開した双子葉に、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を振りかけ、そこに前記の葉の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることで、苗にウイルスの接種処理を行った。
その後、本葉が10枚程度になるまで温室内で育成した後、茨城県水戸市鯉渕学園の圃場に定植し(2006年4月7日)、栽培した。なお、育苗、施肥、薬剤散布などの栽培管理は、一般的な栽培管理方法に合わせて行った。
定植してから約3ヶ月経過した後(2006年7月5日)及び同じく約4ヶ月経過した後(2006年8月2日)に、それぞれ生育したピーマンの果実を収穫し、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維の含量を測定した。測定は、ビタミンC、ビタミンE、αーカロテン、βーカロテンは「HPLC法」、ナイアシンは「微生物定量法」、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に関しては「プロスキー変法」(「新・食品分析法」、社団法人 日本食品科学工学会 編)により行い、果実100gあたりの値を求めた。
【0042】
収穫したピーマンの果実において、定植してから約3ヶ月経過した弱毒ウイルスの接種処理を行ったものから収穫した果実を本発明実施品2、強毒ウイルスの接種処理したものから収穫した果実を比較製造品3、ウイルス接種処理を行わなかったものから収穫した果実を比較製造品4とした。結果を表3に示す。
また、収穫したピーマンの果実において、定植してから約4ヶ月経過した弱毒ウイルスの接種処理を行ったものから収穫した果実を本発明実施品3、強毒ウイルスの接種処理したものから収穫した果実を比較製造品5、ウイルス接種処理を行わなかったものから収穫した果実を比較製造品6とした。結果を表4に示す。
【0043】
【表3】
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【0044】
【表4】
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【0045】
表3に示すように、トウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスをピーマンの苗に接種し、定植してから約3ヶ月間常法により栽培することにより(本発明実施品2)、未接種の場合(比較製造品4)と比べて、果実のビタミンC含量が1.67倍に高められることが示された。
また、表4に示すように、定植してから約4ヶ月間常法により栽培した場合(本発明実施品3)にも、未接種の場合(比較製造品6)に比べて、果実のビタミンC含量が1.52倍に高められることが示された。
なお、他の成分含量として測定した、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の含量にはほとんど相違が見られなかった。また、ウイルス接種による生育形態への影響も見られなかった。
また、強毒系統ウイルスを用いた場合には、果実のビタミンC含量のみを高める効果に関しては、表3、表4に示すように(比較製造品3、比較製造品5)、弱毒系統ウイルスと同様の結果が得られたが、成長が抑制され、着果数が激減し、しかもウイルス感染が引き起こす生育形態への影響(奇形果、モザイク果などの異常果)が観察された。
【0046】
実施例3
調製例2で得られたトウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスが感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。また、強毒系統ウイルス(1996年に茨城県のピーマン産地で採取した強毒株)が感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。
次いで、ピーマン(品種:みおぎ(日本園芸生産研究所))の種を播種(2006年2月20日)し、播種してから14日経過後に完全展開した双子葉に、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を振りかけ、そこに前記の葉の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることで、苗にウイルスの接種処理を行った。
その後、本葉が10枚程度になるまで温室内で育成した後、茨城県つくば市中央農研の圃場に定植し(2006年4月7日)、栽培した。なお、育苗、施肥、薬剤散布などの栽培管理は、一般的な栽培管理方法に合わせて行った。
定植してから約3ヶ月経過した後(2006年7月5日)及び同じく約4ヶ月経過した後(2006年8月2日)に、生育したピーマンの果実を収穫し、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維の含量を測定した。測定は、ビタミンC、ビタミンE、αーカロテン、βーカロテンは「HPLC法」、ナイアシンは「微生物定量法」、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に関しては「プロスキー変法」(「新・食品分析法」、社団法人 日本食品科学工学会 編)により行い、果実100gあたりの値を求めた。
【0047】
収穫したピーマンの果実において、定植してから約4ヶ月経過した弱毒ウイルスの接種処理を行ったものから収穫した果実を本発明実施品4、強毒ウイルスの接種処理したものから収穫した果実を比較製造品7、ウイルス接種処理を行わなかったものから収穫した果実を比較製造品8とした。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
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【0049】
表5に示すように、トウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスをピーマンの苗に接種し、定植してから約4ヶ月間常法により栽培することにより(本発明実施品4)、未接種の場合(比較製造品8)と比べて、果実のビタミンC含量が1.51倍に高められることが示された。
なお、他の成分含量として測定した、ビタミンE、ナイアシン、α-カロテン、β-カロテン、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の含量にはほとんど相違が見られなかった。また、ウイルス接種による生育形態への影響も見られなかった。
また、強毒系統ウイルスを用いた場合(比較製造品7)には、果実のビタミンC含量のみを高める効果に関しては、弱毒系統ウイルスと同様の結果が得られたが、成長が抑制され、着果数が激減し、しかもウイルス感染が引き起こす生育形態への影響(奇形果、モザイク果などの異常果)が観察された。
【0050】
実施例4
調製例2で得られたトウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスが感染したNicotiana benthamianaの葉1gを、0.05Mのリン酸緩衝液(pH7.0)1L中で、乳鉢と乳棒を用いて磨砕し、葉の磨砕液を調製した。
次いで、ピーマン(品種:みおぎ(日本園芸生産研究所))の種を播種(2006年11月6日)し、播種してから14日経過後に完全展開した双子葉に、研磨剤(400~600メッシュ程度のカーボランダム)を振りかけ、そこに前記の葉の磨砕液を脱脂綿に染み込ませて軽くこすりつけることで、苗にウイルスの接種処理を行った。
その後、本葉が10枚程度になるまで温室内で育成した後、茨城県つくば市中央農研の圃場に定植し(2007年1月22日)、栽培した。なお、育苗、施肥、薬剤散布などの栽培管理は、一般的な栽培管理方法に合わせて行った。
定植してから約4ヶ月経過した後(2007年5月17日)に、生育したピーマンの果実を収穫し、ビタミンC含量を測定した。測定は、ビタミンC、ビタミンE、αーカロテン、βーカロテンは「HPLC法」、ナイアシンは「微生物定量法」、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維に関しては「プロスキー変法」(「新・食品分析法」、社団法人 日本食品科学工学会 編)により行い、果実100gあたりの値を求めた。
【0051】
収穫したピーマンの果実において、弱毒ウイルスの接種処理を行ったものから収穫した果実を本発明実施品5とし、ウイルス接種処理を行わなかったものから収穫した果実を比較製造品9とした。
収穫したピーマンの果実100gあたりビタミンCの含量を図1に、栽培後の植物体の生育形態、収穫した果実の形態を図2にそれぞれ示す。
【0052】
図1に示すように、トウガラシマイルドモットウイルス(No.16株)の弱毒系統ウイルスをピーマンの苗に接種し、定植してから約4ヶ月間常法により栽培することにより(本発明実施品5)、未接種の場合(比較製造品9)と比べて、果実のビタミンC含量が有意に高められ、平均値で1.46倍に高められることが示された。
また、図2に示すように、ウイルス接種による植物体の生育形態及び果実の形態への影響も見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
また、本発明によれば、ビタミンC含量、特にはビタミンC含量のみが高められた高機能性作物が生産できることから、現代の健康志向にマッチした農作物を提供できることが期待される。また、本発明は、特別な設備や栽培方法を必要とせず、常法による一般的な栽培方法によって実施が可能であることに加えて、環境に優しく、安全性に優れた方法であり、農業、食品分野への幅広い応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例4において、収穫したピーマン果実のビタミンC含量を示すグラフである。
【図2】実施例4において、栽培後の植物体の生育形態及び収穫した果実の形態を示す写真像図である。
図面
【図1】
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【図2】
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