TOP > 国内特許検索 > アルコール発酵に適した新規酵母及びそれを用いたアルコール製造方法 > 明細書

明細書 :アルコール発酵に適した新規酵母及びそれを用いたアルコール製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5187823号 (P5187823)
公開番号 特開2009-142219 (P2009-142219A)
登録日 平成25年2月1日(2013.2.1)
発行日 平成25年4月24日(2013.4.24)
公開日 平成21年7月2日(2009.7.2)
発明の名称または考案の名称 アルコール発酵に適した新規酵母及びそれを用いたアルコール製造方法
国際特許分類 C12N   1/16        (2006.01)
C12P   7/06        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12R   1/72        (2006.01)
FI C12N 1/16 ZNAG
C12N 1/16 D
C12P 7/06
C12N 15/00 A
C12P 7/06
C12R 1:72
請求項の数または発明の数 8
微生物の受託番号 NPMD NITE P-464
全頁数 10
出願番号 特願2007-323937 (P2007-323937)
出願日 平成19年12月14日(2007.12.14)
審査請求日 平成22年9月8日(2010.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中村 敏英
【氏名】島 純
【氏名】渡辺 樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】山本 匡子
参考文献・文献 特開2006-325577(JP,A)
特開2007-314745(JP,A)
国際公開第2006/109424(WO,A1)
J. Appl. Glycosci.,2002年,Vol.49、No.2,pp.153-157
International Journal of Food Microbiology,2004年,Vol.94,pp.97-103
Bull. Fac. Bioresources, Mie Univ.,1998年,No.20,pp.31-36
調査した分野 C12N1/00-7/08
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
高濃度乳酸耐性を有するCandida属のアルコール発酵性酵母であって、Candida glabrataのNFRI 3164株(受託番号 NITE P-464)である、酵母
【請求項2】
請求項1に記載の酵母を含有する、アルコール発酵のための組成物。
【請求項3】
さらに、糖質資源の加水分解物を含有する、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記糖質資源が澱粉又はセルロースを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の酵母を含有する、乳酸存在下でのアルコール発酵のための組成物。
【請求項6】
アルコールを製造する方法であって、乳酸を含む培養液中で請求項1に記載の酵母を培養する工程を包含する、方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法であって、前記培養液が糖質資源の加水分解物を含有する、方法。
【請求項8】
前記糖質資源が澱粉又はセルロースを含む、請求項に記載の方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール発酵、特に、酸添加バイオマス糖化液のアルコール発酵に適した新規酵母、その新規酵母を含有するアルコール発酵のための組成物、および、その新規酵母を使用するアルコール製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマス糖化液のアルコール発酵には、酵母やアルコール発酵性細菌が用いられている。アルコール発酵性細菌を用いた場合には、バクテリオファージによる汚染が問題となる。これら雑菌やバクテリオファージの混入はエタノール生産性に大きな影響を与え、そして、バクテリオファージによる汚染は対処が困難であるという問題がある。
【0003】
そのため、バイオマス糖化液からのエタノール製造を工業レベルで行う場合には、酵母によるアルコール発酵の工程が必須である。この発酵工程においては、乳酸菌等の雑菌による汚染がしばしば問題となる。この問題を解決するために糖化液への抗生物質等の添加が行われているが、発酵残渣の家畜飼料としての利用を想定した場合、適切な方法ではない。なぜなら、雑菌の汚染を防ぐための糖化液への抗生物質の添加は、発酵残渣の再利用、特に家畜飼料への利用に問題があるからである。また、残存抗生物質が家畜に対して毒性を示した例が報告されており、抗生物質の使用増加に伴う耐性菌の出現も問題となっている。
【0004】
一方、遺伝子組み換えや変異誘発による酵母の育種も行われているが(特許文献1および2)、その発酵残渣に関して、健康や環境に悪影響を及ぼす可能性についての消費者の不安があるため、利用するのは困難な状況である。乳酸を利用したアルコール生産技術に関しても、従来技術では使用バイオマス量に対するエタノール生産効率には改善の余地がある。
【0005】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。

【特許文献1】特許第3874775号 明細書
【特許文献2】特開2003-93060
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、天然の酵母株であって、抗生物質に依存しない糖化液のアルコール発酵方法に適した酸耐性を持つ新規酵母を分離することが重要である。従って、抗生物質に依存しない糖化液のアルコール発酵方法に適した酸耐性を持つ新規酵母を単離すること、そのような新規酵母を含むアルコール発酵のための組成物、およびそのような新規酵母を用いるアルコール製造方法を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、従来技術の問題点を克服するために、抗生物質に依存しない糖化液のアルコール発酵方法として、酸の添加による雑菌の増殖を抑制した状態でのアルコール発酵に着目した。そこで、本発明においては、酸の添加による細菌の増殖を抑制した状態でのアルコール発酵に適した酸耐性を持つ新規酵母を分離した。分離の方法は、食品総合研究所に保存している食品由来の菌株コレクションの中から5%乳酸存在下で生育可能な酵母の選抜を行った。食品由来の菌株は発酵残渣の利用において、より安全性が高いことが予想されるからである。選抜の結果、5%乳酸存在下で生育が可能なNFRI3164株を分離した。遺伝学的及び生理学的同定の結果、NFRI3164株はCandida属glabrata種の酵母であることが明らかとなった。
【0008】
従って、本発明は以下を提供する:
(項目1) 高濃度乳酸耐性を有するCandida属のアルコール発酵性酵母。
(項目2) Candida glabrataである、項目1に記載の酵母。
(項目3) Candida glabrataのNFRI 3164株(受託番号 NITE P-464)である、項目2に記載の酵母。
(項目4) 項目1に記載の酵母を含有する、アルコール発酵のための組成物。
(項目5) さらに、糖質資源の加水分解物を含有する、項目4に記載の組成物。
(項目6) 前記糖質資源が澱粉又はセルロースを含む、項目5に記載の組成物。
(項目7) 項目1に記載の酵母を含有する、乳酸存在下でのアルコール発酵のための組成物。
(項目8) アルコールを製造する方法であって、乳酸を含む培養液中で項目1に記載の酵母を培養する工程を包含する、方法。
(項目9) 項目8に記載の方法であって、前記培養液が糖質資源の加水分解物を含有する、方法。
(項目10) 前記糖質資源が澱粉又はセルロースを含む、項目9に記載の方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明に従って、高濃度乳酸耐性を有するアルコール発酵性酵母を提供することによって、抗生物質に依存することなく、雑菌の増殖を抑制した環境下でアルコール発酵をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0011】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0012】
本明細書において使用する場合、用語「高濃度乳酸耐性」とは、2%(w/v)、好ましくは3%(w/v)、より好ましくは4%(w/v)、さらにより好ましくは5%(w/v)の乳酸の存在下で増殖することができる酵母の性質をいう。
【0013】
本明細書において使用する場合、用語「アルコール発酵性酵母」とは、グルコースなどの糖を嫌気的に分解し、エタノールと二酸化炭素の生成を伴う代謝である。従って、アルコール発酵をするためには糖が必要である。また嫌気状態も必要であるが、グルコース濃度が高い場合のみ好気条件下でもアルコール発酵が起こる。
【0014】
本明細書において使用する場合、用語「糖質資源の加水分解物」とは、Candida属の酵母を培養してアルコール発酵をする場合に、Candida属の酵母が炭素原として利用可能な栄養源をいう。糖質資源としては、単糖、オリゴ糖、多糖のいずれであってもよい。糖質資源の加水分解物を調製するための糖質資源としては、オリゴ糖、多糖のいずれであってもよく、好ましくは、澱粉およびセルロースである。
【0015】
(アルコール発酵法)
本発明の酵母を利用して、工業レベルでのアルコール製造をすることが可能である。現在、工業レベルでのバイオエタノール生産では、主にトウモロコシや甘藷などの澱粉質の糖化液や、サトウキビやサトウダイコンの糖蜜などの糖質を酵母でアルコール発酵するという手法が用いられている。酵母としては、主にSaccharomyces cerevisiaeが使用され、耐熱性や耐塩性、凝集性などの性質を持つものが利用されている。工業プロセスとしては、酵母を使い捨てにする「回分発酵法」、酵母をリサイクルし複数の発酵タンクを使用して行う「連続発酵法」、凝集性酵母を用いる「繰り返し回分発酵法」などが使われている。
【0016】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0017】
(実施例1:新規酵母NFRI3164株の分離)
食品総合研究所に保存している食品由来の菌株コレクションの中から5%乳酸存在下で生育可能な酵母の選抜を行った。食品由来の菌株は発酵残渣の利用において、より安全性が高いことが予想されるからである。
【0018】
使用した培地および選抜法は、以下のとおりである:
(1.使用培地)
(a 前培養培地)
YPD培地(Yeast Extract[Difco Laboratory, Detroit, USAまたは同等品] 10g/L・ペプトン[DifcoLaboratory,Detroit, USAまたは同等品] 20g/L・グルコース20g/L)
(b 選抜培地)
SD培地(Yeast Nitrogen Base without amino acids without ammonium sulphate [Difco
Laboratory, Detroit, USAまたは同等品] 1.7g/L・硫酸アンモニウム5g/L・グルコース20g/L・アデニン40μg/L・アルギニン20μg/L・アスパラギン酸100μg/L・グルタミン酸100μg/L・ヒスチジン20μg/L・ロイシン60μg/L・リジン30μg/L・メチオニン20μg/L・フェニルアラニン50μg/L・セリン375μg/L・トレオニン200μg/L・トリプトファン40μg/L・チロシン30μg/L・バリン150μg/L・ウラシル20μg/L)+5%(v/v)乳酸(培地のpHは2.13)
(2.選抜プロトコール)
(1)96穴マイクロプレート(Corning Incorporated, Corning, USA)のそれぞれのウェルに100μLの前培養培地を分注し、それぞれに酵母株を植菌した。30℃で48時間静置培養を行った。
(2)前培養液1.2μLを選抜培地に植菌し、30℃で48時間静置培養を行った。
(3)24時間後、48時間後にマイクロプレートリーダー(Elx800; BioTek Instruments Inc, Winooski, USA)で濁度(630nm)を測定した。
(4)48時間後に生育の観察された株を耐性株とした。
(5)383株スクリーニングし、乳酸耐性をもつ4株を得た。
(6)特に耐性の高いNFRI3164株を寄託し(受託番号 NITE P-464)、以降の研究に用
いた。
【0019】
(実施例2:NFRI3164株の同定)
NFRI3164株の同定は、糖資化性試験、26SrDNA配列の相同性試験、および、胞子形成能試験により行った。
【0020】
(1.糖資化性試験)
糖資化性試験には、アピCオクサノグラム(日本ビオメリュー株式会社)を使用した。
【0021】
(2.26SrDNA配列の相同性試験)
酵母からのDNA抽出には、Genとるくん・酵母用(タカラバイオ株式会社)を使用した。
【0022】
PCRは、KurtzmanとRobnettの論文(Kurtzman CP, Robnett CJ (1998) Identification and phylogeny of ascomycetous yeasts from analysis of nuclear large subunit (26S) ribosomal DNA partial sequences. Antonie Van Leeuwenhoek 73: 331-371.)に従い行った。プライマーはNL-1(5’-GCATATCAATAAGCGGAGGAAAAG-3;配列番号1)とNL-4(5’-GGTCCGTGTTTCAAGACGG-3’;配列番号2)を用いて、26S rDNAのD1/D2領域(約500bp)を増幅した。
【0023】
塩基配列決定は、Big Dye Terminator kit (Applied Biosystems, Lincoln, CA, USA)を使用して反応を行い、ABI PRIZM 310genetic analyzer (Applied Biosystems, Lincoln, CA, USA)を用いて塩基配列を決定した。その配列を、図1に示す(配列番号3)。
【0024】
相同性検索は、決定した塩基配列をNBCIのblast検索にかけて、相同性の高い配列を同定した。
【0025】
(3.胞子形成能試験)
胞子形成培地として、McClary胞子形成培地(塩化カリウム1.8g/L・酢酸ナトリウム8.2g/L・Yeast Extract[Difco Laboratory, Detroit, USAまたは同等品] 2.5g/L・グルコース1g/L・寒天15g/L)を用いた。胞子形成培地に白金耳を用いて菌を塗布し、3週間胞子形成を観察した。
【0026】
(4.同定の結果)
結果を以下の表1に示す:
【0027】
【表1】
JP0005187823B2_000002t.gif
同定の結果NFRI3164株はCandida属glabrata種の酵母であることが明らかとなった。また、単離した4株中のNFRI 3164株以外の3株のいずれもが、Candida属glabrata種の酵母であることが明らかとなったことから、Candida属glabrata種の酵母は、高濃度乳酸耐性を有するCandida属のアルコール発酵性酵母であると結論付けた。
【0028】
(実施例3:エタノール生産試験)
乳酸存在下での生育およびエタノール生産について解析した。培地としては、0%、1%および2%の乳酸を含むSD培地を使用した。なお、0%、1%および2%の乳酸を含むSD培地のpHは、4.79、2.52、および、2.43であった。
【0029】
生育は600nmの吸光度(濁度)を測定し、測定は前培養液をOD600=0.05になるように培地に添加して開始した。培養は30℃で48時間静置して行った。エタノール濃度の測定は培養上清を0.45μmのフィルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で発酵モニタリングカラム(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)を用いて測定した。測定はそれぞれ3回行い、標準誤差は5%以下であった。
【0030】
アルコール製造において、従来技術ではCandida属glabrata種の酵母は利用されていない。工業的にエタノール製造に使用されているSaccharomyces属cerevisiae種NBRC0224株は2%乳酸を含む培地ではエタノールを生産することができないが、NFRI 3164株は48時間後に乳酸を含まない培地の約75%のエタノール生産が可能であった(図2)。
【0031】
(実施例4:ストレス耐性試験)
酢酸、硫酸、塩、高温に対する耐性を調べた。菌株コントロールとしてSaccharomyces cerevisiaeの実用株であるNBRC 0224株を用いた。培養はSD培地(酸ストレス)あるいはYPD培地(塩、高温ストレス)を用い、無添加30℃で培養したものをコントロールとした。ストレスは0.7%酢酸(pH4.07)あるいは9mM硫酸(pH2.48)による酸ストレス、10%(w/v) 塩化ナトリウムによる塩ストレス、42℃による高温ストレスについて生育を調べた。
【0032】
エタノール製造において酵母が受ける可能性がある環境ストレスとして、熱ストレスや塩ストレスが考えられる。これらの環境ストレスに対する耐性を解析した結果、NFRI 3164株は酸耐性だけでなく、熱耐性や塩耐性も高いことが明らかとなった(図3)。
【0033】
(実施例5:高温下におけるエタノール生産)
高温下におけるエタノール生産について解析を行った。菌株コントロールとしてSaccharomyces cerevisiaeの実用株であるNBRC 0224株を用いた。培養はYPD培地を用い、吸光度(600nm)0.05で開始し、30℃および37℃で10時間培養した後のエタノール生産量を調べた。エタノール濃度測定は前記のとおりに行った。測定はそれぞれ3回行い、標準誤差は5%以下であった。
【0034】
その結果、NFRI3164株は37℃の培養においては30℃の1.3倍の速度でエタノールを生産した(図4)。
【0035】
(実施例6:汚染菌(乳酸菌)の乳酸耐性能)
実用プラントにおいて汚染が報告されているLactobacillus brevisとLactobacillus fermentumの乳酸耐性について解析をした。使用した培地は、MRS培地(LactobacilliMRS Broth[Difco Laboratory, Detroit, USA]55g/L)に、0%、1%および2%の乳酸を添加して使用した。なお、0%、1%および2%の乳酸を含む培地のpHは、6.33、4.28、および、3.73であった。乳酸菌はLactobacillus brevis IFO 3960株とLactobacillus fermentum IAM 1083株を使用した。生育は600nmの吸光度(濁度)を測定し、測定は前培養液をOD600=0.005になるように培地に添加して開始した。測定はそれぞれ3回行い、標準誤差は5%以下であった。
【0036】
食品総合研究所に保存しているLactobacillus属brevis種IFO 3960株とLactobacillus 属fermentum種IAM 1083株を用いて解析したところ、1%乳酸では生育が認められ、2%乳酸ではほとんど生育できないことが確認できた(図5)。そのため、乳酸菌の生育を抑制するためには培地に2%の乳酸添加が有効であると考えられる。
【0037】
(実施例7.乳酸菌存在下におけるエタノール生産)
乳酸菌存在下におけるエタノール生産について解析を行った。
【0038】
酵母生菌数測定用培地として、YPD寒天培地にテトラサイクリン50mg/Lを添加した培地を使用した。乳酸菌生菌数測定用培地として、MRS寒天培地にシクロヘキシミド10mg/Lを添加した培地を使用した。
【0039】
乳酸菌はLactobacillus brevis IFO 3960株とLactobacillus fermentum IAM 1083株を使用した。培養はMRS培地を用い、乳酸濃度を0あるいは2%になるように調製した。生菌数を測定するために、培養液を適宜希釈して寒天培地に塗布し、30℃で2日間培養の後、現れたコロニーの数を計測した。エタノール濃度測定は前記のとおりに行った。測定はそれぞれ3回行い、標準誤差は5%以下であった。
【0040】
乳酸を添加していないMRS培地で培養を行った結果、乳酸菌が存在することでエタノールの生産量が2分の1から3分の2程度に減少することが確認された(実施例・図6)。一方、乳酸を添加したMRS培地では乳酸菌の生菌数が減少するとともに、酵母の生育やエタノールの生産に乳酸菌の影響が見られなくなった。また48時間後には乳酸を添加しないときと同程度のエタノールを生産した。この結果から雑菌が混入した場合、乳酸の添加によりエタノール生産量が1.5~2.5倍に増加することが推測される。
【0041】
(考察)
以上のことから、発酵用培地に2%の乳酸を添加し、NFRI 3164株を用いてアルコール発酵を行うという新規なアルコール製造法により、効率的なアルコール生産が可能であると考えられる。また、NFRI3164株の高温や塩に耐性を持つことから、硫酸で加水分解したバイオマス糖化液の発酵にも適していると考えられる。
【0042】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、バイオマスの酵素による糖化液の発酵に有効である。澱粉質をアミラーゼ処理した糖化液あるいはセルロースを含むバイオマスをセルラーゼ処理した糖化液に乳酸を添加することで雑菌の増殖を抑制し、アルコール発酵を効率よく行うことができる。また、各種の酸や高温、塩等にも耐性があることから、硫酸で加水分解したバイオマス糖化液等にも利用可能であると考えられる。
【0044】
本菌株は、食品から分離した菌株であるため、発酵残渣の利用等にあたっても、実用化には何ら問題がないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、NFRI3164株の26S rDNAの配列を示す図である。
【図2】図2は、種々の乳酸濃度下での種々の酵母株の増殖およびエタノール生産量を示す図である。
【図3】図3は、NFRI3164株のストレス耐性を示す図である。
【図4】図4は、NFRI3164株のストレス下でのエタノール生産を示す図である。
【図5】図5は、種々の乳酸菌の乳酸耐性を示す図である。
【図6】図6は、NFRI3164株の乳酸存在下でのエタノール生産を示す図である。

【配列表フリ-テキスト】
【0046】
配列番号1は、プライマーはNL-1の配列である。
【0047】
配列番号2は、プライマーはNL-4の配列である。
【0048】
配列番号3は、NFRI3164株の26S rDNAの配列である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5