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明細書 :バイオディーゼル燃料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5397876号 (P5397876)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 バイオディーゼル燃料の製造方法
国際特許分類 C10L   1/02        (2006.01)
C11C   3/10        (2006.01)
C11C   3/08        (2006.01)
FI C10L 1/02
C11C 3/10
C11C 3/08
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2008-038471 (P2008-038471)
出願日 平成20年2月20日(2008.2.20)
審査請求日 平成22年12月8日(2010.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】鍋谷 浩志
【氏名】▲はぎ▼原 昌司
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
特許請求の範囲 【請求項1】
原料油脂にメタノール蒸気を供給し反応器内で無触媒でメチルエステル化反応を起こさせて脂肪酸メチルエステルを得るバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記原料油脂として遊離脂肪酸(FFA)の含有量を2.24mass%以上、若しくはモノグリセリド(MG)の含有量を3.8mass%未満とした原料を用い、この原料油脂を加水分解して遊離脂肪酸の割合を高めた状態で前記反応器に送り込むことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記加水分解されて遊離脂肪酸の割合が高められた原料油脂に別の原料油脂を混合して反応器に送り込むことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記遊離脂肪酸(FFA)としてパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸を用いることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記遊離脂肪酸(FFA)を含有する原料は、油脂の精製工程で排出される遊離脂肪酸、廃食用油またはジャトロファ(Jatropha curcas L.)から得ることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂に含まれるトリグリセリド(TG)とメタノールとを反応させてエステル交換によって脂肪酸メチルエステル(FAME)とするバイオディーゼル燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物から抽出された油脂や廃食用油などは粘度が高すぎて、そのままでは自動車、航空機、船舶、汎用エンジンなどの燃料として使用することができない。そこで従来から様々な提案がなされている。
【0003】
図1は油脂の主成分であるトリグリセリド(TG)とメタノール(MeOH)との反応で脂肪酸メチルエステル(FAME)が得られる反応を説明した図であり、(a)は全体反応を、(b)は同反応を3段階の平衡反応として示している。図中、DGはジグリセリド、MGはモノグリセリド、GLはグリセリンである。
上記のエステル交換反応によって低粘度の脂肪酸メチルエステルとする方法として、従来から触媒を用いる触媒法と触媒を用いない無触媒法が知られている。
【0004】
触媒法では、硫酸、リン酸などの酸触媒やリパーゼ(酵素)を用いる方法も提案されているが、反応速度が遅いこと、コストが高いことから、NaOHやKOHなどのアルカリ触媒を用いる方法が一般的に行われている。
【0005】
しかしながら、アルカリ触媒を用いる方法にあっては、原料油脂中に他の物質とエステル結合しない状態で存在する遊離脂肪酸(FFA)が含まれていると、遊離脂肪酸(FFA)と触媒とがケン化反応を起こして石鹸を生じ、触媒が活性を失ってしまう。このため、このような原料を用いるにあたっては、予め遊離脂肪酸(FFA)を取り除かなくてはならないという問題がある。またアルカリ触媒を用いる方法にあっては、反応後に触媒を取り除くための工程を設ける必要がある。
【0006】
触媒法の欠点を解消するために提案された無触媒法としては、超臨界メタノール法が知られている。この方法はメタノールを臨界点である239℃、8.09MPa以上の高温高圧にすることで、反応性を高めたものである。
【0007】
しかしながら、超臨界メタノール法は圧力条件が過酷であるため、設備費、運転コスト、安全性などに課題がある。そこで、無触媒法でありながら大気圧近傍でメチルエステル化反応を起こさせる方法として、特許文献1、特許文献2、非特許文献1および非特許文献2に開示される方法が提案されている。
【0008】
特許文献1には、油脂類と一価アルコール(メチルアルコール)を大気圧近傍、具体的には反応時の圧力を0.101~0.150MPa、油脂類の温度を250~350℃、アルコールを沸点よりも高温の状態に保持された過熱蒸気の状態にして接触させる方法が開示されている。
【0009】
特許文献2には、上記特許文献1に提案された方法を更に改良する方法として、供給するアルコールの量を理論上必要な化学当量よりも過剰にすること、更に過熱気化アルコールの循環手段を設けることについて開示されている。
【0010】
非特許文献1には、ひまわり油を原料として、メタノール蒸気を連続的に吹き込んで250~330℃の範囲で反応させる無触媒メチルエステル化法が記載されている。
【0011】
非特許文献2には、バイオディーゼル燃料の原料として、インドネシア(ロンボク島)で栽培されているジャトロファ(Jatropha curcas L.)を圧搾して得た粗油を用い、無触媒過熱メタノール蒸気法によってメチルエステル化反応が生じ、脂肪酸メチルエステルが得られたこと、及び実験開始直後にジャトロファ粗油から遊離脂肪酸(FFA)が未反応のまま大量に気相中に流出したことが記載されている。
【0012】

【特許文献1】WO2005/068593
【特許文献2】特開2006-28146号公報
【非特許文献1】社団法人 日本農芸化学会 2004年度大会講演要旨集
【非特許文献2】日本食品工学会 第8回(2007年度)年次大会講演要旨集
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための最良の形態を添付図面等を参照して説明する。図2は本発明方法を実施する装置の一例の概略構成図である。実際のプラントはこの構成を基本として各種装置が付加される。
【0019】
遊離脂肪酸(FFA)の含有量が2.24mass%以上(好ましくは50mass%以上)、または/且つモノグリセリド(MG)の含有量が3.8mass%未満(好ましくは0.98mass%以下)に調整された原料脂質がポンプによって反応器に供給される。この反応器内は約1気圧とされヒータによって200~350℃に保持され且つ攪拌機によって攪拌されている。攪拌機については用いなくてもよい。
【0020】
上記の反応器の底部から過熱メタノール蒸気が供給される。すると反応器内に供給された過熱メタノール蒸気の気泡界面と原料脂質が接触し、図1に示した反応が進み、バイオディーゼル燃料である脂肪酸メチルエステル(FAME)と未反応のメタノール蒸気が反応器の上部から気相として取り出され、この気相を冷却器に通すことで、脂肪酸メチルエステル(FAME)を得る。また、未反応のメタノールは、脂肪酸メチルエステルと分離され、再度加熱されて反応器底部から供給される。
【0021】
また冷却器での冷却温度をメタノールの沸点(64.6℃)よりも高く設定することにより、メタノールを蒸気の状態のまま反応器に戻すことも可能である。この場合、メタノールの蒸発潜熱に相当する分だけ所要エネルギーを節約することができる。
【0022】
図3は本発明方法を実施する別装置の概略構成図であり、この装置にあっては反応器に送り込む遊離脂肪酸の割合を高めるため、原料油脂を遊離脂肪酸とグリセリンに加水分解し、この遊離脂肪酸に必要に応じて別の原料油脂を混合して反応器に送り込むようにしている。
【0023】
以下の(表1)は上記の無触媒メチルエステル化法における反応促進物質と反応阻害物質を特定するために用意した試料の成分組成を示す。尚、本発明では、脂肪酸メチルエステル(FAME)、中間生成物であるジグリセリド(DG)およびモノグリセリド(MG)、未反応物であるトリグリセリド(TG)、副生物であるグリセリン(GL)、遊離脂肪酸(FFA)を定量分析する方法として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び薄層クロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器法(TLC/FID)を用いた。(表1)から、一般的な食用油では脂肪酸は脂肪酸メチルエステル(TG、DG、MG)の状態で存在するが、廃食用油には0.50%の遊離脂肪酸(FFA)が含まれていることが分かる。
【0024】
尚、(表1)において、白絞油は明糖油脂工業株式会社製、健康エコナは花王株式会社の食用調理油の商品名、サンソフトは太陽化学株式会社の商品名、廃食用油は中規模の社員食堂で明糖工業株式会社製の大豆白絞油を調理油として使用したものを用いた。
【0025】
【表1】
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【0026】
先ず、実験を行うにあたっての最適なMeOH供給速度と反応温度を特定するため、白絞油について以下の実験例1~6を行った。操作パラメータの一覧を以下の(表2)に示す。
【0027】
【表2】
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【0028】
図4はメタノール(MeOH)の供給速度を変化させた場合(実験例1~4)の気相生成物中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量と反応時間を示すグラフであり、このグラフからメタノールの供給速度が増加するにしたがい、脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量が増加する傾向にあることが分かる。これはメタノールの気泡界面と油脂の接触面積が増加するためと考えられる。
【0029】
図5は反応温度を変化させた場合の気相生成物中のFAME積算量と反応時間を示すグラフである。このグラフから反応温度は必ずしも高ければよいというわけではなく、290℃が最も脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量が大きくなった。
【0030】
図6(a)~(c)は実験例5,4,6の液相成分濃度を示し、(d)~(f)は実験例5,4,6の気相成分濃度を示すグラフである。液相に着目すると、TG含有量は反応温度を310℃とした場合が最も減少しているため、最も反応が進行していることになるが、気相中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量は310℃よりも290℃とした方が大きいことから、反応器内のトリグリセリドの分解速度と脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量とは必ずしも比例しないことが判明した。
【0031】
一方、気相に着目すると、気相生成物積算物のMG含有量は270℃及び290℃の場合約8%含まれているが、310℃の場合約15%含まれていることが判明した。このことから、モノグリセリド(MG)は、脂肪酸メチルエステルに変換されづらく、沸点がトリグリセリドやジグリセリドよりも低いために、反応速度を高くすると気相中により多く流出したものと考えられる。そこで、モノグリセリド(MG)の影響をより詳細に検討するために、以下の(表3)に示す成分組成の実験例7~11を用意し実験を行った。
【0032】
【表3】
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【0033】
図7は実験例7~11の気相生成物中の脂肪酸メチルエステル(FAME)の積算量の経時変化を示すグラフであり、このグラフから元々モノグリセリド(MG)の含有量が少ない実験例7,11については図7に示すように、反応時間が300minの時点において脂肪酸メチルエステル(FAME)の生成量が27gを超えているのに対し、モノグリセリド(MG)の含有量が約4%に近い実験例8,9,10については、脂肪酸メチルエステル(FAME)の生成量は反応時間が300minを超えても精々4gである。このことから、モノグリセリド(MG)が反応阻害物質であることが特定される。また、モノグリセリド(MG)の含有量は3.8%未満(より好ましくは0.98%以下)が好ましい。
【0034】
次に、反応促進物質を特定する実験について述べる。用意した試料の成分組成は以下の(表4)に示す実験例4、12~18である。
【0035】
【表4】
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【0036】
図8は実験例4,12~18の気相中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量と反応時間を示すグラフ、図9は図8の反応時間50minの時点での脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量を示すグラフである。図8及び図9から、FFA(オレイン酸)が100%の実験例16は脂肪酸メチルエステル(FAME)生成が最も早く、次に遊離脂肪酸(FFA)を50%含む実験例17の反応が早いことが分かる。
【0037】
遊離脂肪酸(FFA)はメタノールと次式で反応して水と脂肪酸メチルエステル(FAME)を生成する。
FFA+MeOH=HO+FAME
上記の反応において、反応器温度が290℃であるので、生成されたFAMEはメタノール蒸気に溶け込み、水分は蒸発して気相生成物となるので、反応は常に右に進行するため、遊離脂肪酸(FFA)を用いた場合に反応速度が早いと考えられる。
【0038】
また、トリグリセリドからの脂肪酸メチルエステルの生成反応において、塩酸や硫酸が触媒効果を有するとしてその利用が検討されていることからして、今回の反応においても、遊離脂肪酸が酸触媒としての効果を有するためにこのような反応の促進が観察されたものと考えられる。
【0039】
更に、RCOOHを遊離脂肪酸(FFA)、RCOO-(C)を油脂とすると、遊離脂肪酸(FFA)は次式のように油脂とエステル交換反応を起こすため、遊離脂肪酸(FFA)存在下ではトリグリセリド(TG)の活性部位の反応性が高くなると考えられる。
RCOOH+R’OCO-(C
=R’COOH+ROCO-(C
【0040】
以上から実験例17の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量が、実験例4の約3.7倍まで増加した。また実験例18と実験例4とを比較した場合、脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量は約1.5まで増加した。このことから遊離脂肪酸(FFA)が反応促進物質であることが特定される。また、遊離脂肪酸(FFA)の含有量は実験例18からは2.24%以上とすることが必要で、実験例17からは遊離脂肪酸(FFA)の含有量は50%以上がより好ましいと言える。
【0041】
遊離脂肪酸(FFA)の含有量が2.24%以上(好ましくは50%以上)でモノグリセリド(MG)の含有量が3.8%未満(好ましくは0.98%以下)の原料を得るには、廃食用油に遊離脂肪酸(FFA)を混合することが考えられる。また遊離脂肪酸(FFA)としては、油脂の精製工程(特に脱酸工程)から得られる脂肪酸を用いることで経済性が高まる。また、ジャトロファのような非食用の油脂を遊離脂肪酸を含む粗油のような状態で用いることによっても経済性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】油脂の主成分であるトリグリセリド(TG)とメタノールとの反応で脂肪酸メチルエステル(FAME)が得られる反応を説明した図であり、(a)は全体反応を、(b)は同反応を3段階の平衡反応として示した図
【図2】本発明方法を実施する装置の概略構成図
【図3】本発明方法を実施する別装置の概略構成図
【図4】メタノール(MeOH)の供給速度を変化させた場合の気相生成物中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量と反応時間を示すグラフ
【図5】反応温度を変化させた場合の気相生成物中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量と反応時間を示すグラフ
【図6】(a)~(c)は実験例5,4,6の液相成分濃度を示し、(d)~(f)は実験例5,4,6の気相成分濃度を示すグラフ
【図7】実験例7~11の気相生成物中の脂肪酸メチルエステルの積算量と反応時間を示すグラフ
【図8】実験例4,12~18の気相中の脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量と反応時間を示すグラフ
【図9】図8の反応時間50minの時点での脂肪酸メチルエステル(FAME)積算量を示すグラフ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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