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明細書 :プラスミノーゲン活性化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5488949号 (P5488949)
公開番号 特開2009-242255 (P2009-242255A)
登録日 平成26年3月7日(2014.3.7)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成21年10月22日(2009.10.22)
発明の名称または考案の名称 プラスミノーゲン活性化剤
国際特許分類 A61K  35/74        (2006.01)
A61P   7/02        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A23K   1/18        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
FI A61K 35/74 A
A61P 7/02
A61P 43/00 111
A23L 1/30 Z
A23K 1/18 A
A23K 1/16 304B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2008-088366 (P2008-088366)
出願日 平成20年3月28日(2008.3.28)
審査請求日 平成22年12月9日(2010.12.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】野村 将
個別代理人の代理人 【識別番号】100119002、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 敦
審査官 【審査官】川嵜 洋祐
参考文献・文献 特開2006-191881(JP,A)
特開2004-269358(JP,A)
Hurmalainen V et al.,Extracellular proteins of Lactobacillus crispatus enhance activation of human plasminogen.,Microbiology. ,2007年 4月,Vol.153 No.4,pp.1112-1122
Antikainen J et al.,pH-Dependent Association of Enolase and Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase of Lactobacillus crispatus with the Cell Wall and Lipoteichoic Acids,J Bacteriol.,2007年 6月,Vol.189 No.12,pp.4539-4543
調査した分野 A61K 31/00 - 31/327
A61K 31/33 - 31/80
A61K 33/00 - 33/44
A23L 1/27 - 1/308
A61K 38/00 - 38/58
A61K 41/00 - 45/08
A61K 35/00 - 35/76
A61P 1/00 - 43/00
A23K 1/16
A23K 1/18
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス・バイオバー・ジアセチラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis bv. diacetylactis)、及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)のいずれか一種以上の乳酸菌の菌体から、pH10~pH12の緩衝液により抽出されたプラスミノーゲン活性化剤。
【請求項2】
前記菌体が80℃~150℃の温度で5分~40分加熱処理して用いられる請求項1に記載のプラスミノーゲン活性化剤。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載のプラスミノーゲン活性化剤を用いた食品。
【請求項4】
前記請求項1又は請求項2に記載の記載のプラスミノーゲン活性化剤を用いた飼料又はペットフード。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌の生産する線溶酵素活性化因子を有効成分とし、フィブリノーゲンを限定分解して、血栓形成もしくは血栓再閉塞を阻害するプラスミノーゲン活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症により引き起こされる疾病は、心筋梗塞、脳梗塞、肺閉塞症などの重篤なものが多く、常に死因の上位を占めている。
【0003】
血栓の形成にはフィブリンが重要な役割を演じるが、繊維素溶解系(繊溶系)の正常な活性化は、これらの循環器系疾患の予防となる。即ち、繊維素溶解酵素の不活性前駆体プラスミノーゲンは、活性化因子の作用によって活性型のプラスミンに変換され、血栓を形成するフィブリン及びフィブリノーゲンを小断片化し溶解する。プラスミノーゲン活性化因子としては、プラスミノーゲンアクチベーター(以下tPAと略記することがある。)、ウロキナーゼ(以下UKと略記することがある。)、ストレプトキナーゼなどが知られており、これらはいずれも、血栓溶解剤として医療において用いられている。
【0004】
しかし前記tPA、UK等のプラスミノーゲン活性化因子は、高いプラスミノーゲン活性化能力をもつが、その一方で副作用も強い。そこで医薬品のような急性、且つ高い効果を求めるのではなく、食品から低レベルの有効成分を長期間にわたって摂取することによる保健効果が期待されている。中でも納豆はフィブリン分解活性を有し、食事による摂取によって血流改善効果を示すことが知られており、その有効成分も特定されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0005】
一方、乳酸菌は、炭水化物を分解して乳酸を生成することによってエネルギーを獲得する微生物のうち細菌に属するものの総称であり、代表的な属としてグラム陽性球菌であるLactococcus属、Streptococcus属、Pediococcus属、Leuconostoc属、及びグラム陽性桿菌であるLactobacillus属がある。この乳酸菌については、近年生体調節機能が大きく注目され、整腸作用、免疫調節作用、抗ストレス作用、抗酸化作用など、様々な機能性が明らかにされてきており、食品の差別化、需要の創出に貢献している(例えば特許文献2を参照。)。しかし従来乳酸菌において、プラスミノーゲンの活性化能や血流改善効果に関する知見は報告されていない。
【0006】

【特許文献1】特開平3-168082号公報
【特許文献2】特開平8-268899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィブリノーゲンを限定分解して、血栓形成もしくは血栓再閉塞を阻害する、新たなプラスミノーゲン活性化剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、乳酸菌がプラスミノーゲンを活性化させる作用を見出して、本発明をするに至った。即ち本発明は以下の通りである。
<1> 本発明は、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス・バイオバー・ジアセチラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis bv. diacetylactis)、及びラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)のいずれか一種以上の乳酸菌の菌体から、pH10~pH12の緩衝液により抽出されたプラスミノーゲン活性化剤である。
<2> 更に本発明は、前記菌体が80℃~150℃の温度で5分~40分加熱処理して用いられるプラスミノーゲン活性化剤である。
<3>更に本発明は、前記プラスミノーゲン活性化剤を用いた食品、及び飼料又はペットフードである。

【発明の効果】
【0009】
本発明は、乳酸菌の菌体を有効成分とする新たなプラスミノーゲン活性化剤を提供する。本発明のプラスミノーゲン活性化剤である乳酸菌は、幅広い範囲の熱及びpHに安定であり、また乳酸菌は食品であることから、食事から日常的に摂取することにより、血流改善等の保健効果を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプラスミノーゲン活性化剤に用いられる乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis、なお以下において菌種名の記載はラテン表記のみとし、他の菌種も同様とする。)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス・バイオバー・ジアセチラクチス(Lactococcus lactis ssp. lactis bv. diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のいずれか一種以上を用いることができる。

【0011】
前記の乳酸菌の中でも、Lactococcus lactis ssp. lactis、Lactococcus lactis ssp. lactis bv. diacetylactis、及びLactobacillus bulgaricusがより好ましく、特にLactococcuslactis ssp. lactisとLactococcuslactis ssp. lactis bv. diacetylactisが好ましい。
【0012】
前記Lactococcus lactis ssp. lactisにおいては特にATTCC 19435株が、またLactococcuslactis ssp. lactis bv. diacetylactisにおいては特に C 59株が好ましい。なお前記C 59株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受領番号NITE AP-536として寄託されている。
【0013】
本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、培養後12時間後から用いることが好ましく、培養後20時間後から用いることが更に好ましい。
【0014】
本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、-30℃の温度に反復凍結処理した後も、高温で一定時間加熱処理をした後も活性を失わず、広範囲の温度に対し安定である。したがって本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、加熱食品としても好適に用いることができる。
【0015】
また本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、室温において用いるよりも、80℃~150℃の温度で、5分~40分、より好ましくは100℃~130℃の温度で、10分~20分、加熱処理することが、活性が高まり好ましい。
【0016】
また本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、pH3~pH9という広い範囲で安定である。したがって本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、前記加温調理のみならず、酸を用いる調理等にも用いることができ、日常の広範囲の調理によって本発明のプラスミノーゲン活性化剤を摂取することができる。
【0017】
本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、前記菌体から、pH7~pH14、より好ましくはpH10~pH12の抽出液を用いることにより、プラスミノーゲン活性化成分を含む抽出液として使用することもできる。
【0018】
さらに本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、ヒト型だけでなく他の動物種のプラスミノーゲンにも効果を発揮するため、飼料、ペットフードとしても有効に用いることができる。
【実施例】
【0019】
<実施例1 スクリーニング>
(供試株及び培養)
実施例1に供試した菌株は、Lactococcus lactis ssp. lactisに属する菌株3種、Lactococcus lactis ssp. lactis bv. diacetylactisに属する菌株3種、Lactococcus lactisssp. cremorisに属する菌株1種、Lactobacillus bulgaricusに属する菌株2種、Lactobacillus coryniformisに属する菌株1種、Lactobacillus paraplantarumに属する菌株1種、Lactobacillus plantarumに属する菌株1種、Leuconostoc mesenteroidesに属する菌株1種、Pediococcus acidilacticiに属する菌株1種、及びStreptococcus thermophilusに属する菌株1種の合計15株を用いた。試験に供試した乳酸菌株、及びその入手先を表1に示したが、表1の寄託機関欄の、1)はAmerican Type Culture Collection.(ATCC)を、2)は 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(FERM)を、3)は農業生物資源ジーンバンク (MAFF)を、4)は独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE )をそれぞれ示す。
【0020】
供試菌株のうち、C25株、C59株、C75株、D55株、H80株は、いずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、C25株:受領番号NITE AP-539、C59株:受領番号NITE AP-536、C75株:受領番号NITE AP-538、D55株:受領番号NITE AP-540、H80株:受領番号NITE AP-537として、それぞれ寄託されている。
【0021】
【表1】
JP0005488949B2_000002t.gif

【0022】
Lactoccocus属菌の培養には、M17培地 (トリプトン0.5%、ソイトン0.5%、肉消化物0.5%、酵母消化物0.25%、アスコルビン酸0.05%、硫酸マグネシウム0.025%、β-グリセロリン酸二ナトリウム1.9%、乳糖0.5%(Difco社製))の乳糖を、ブドウ糖0.5%に置換した培地(以下GM17培地と表記する)を用い、それ以外の菌種の培養にはLactobacilliMRS培地(プロテオースペプトン1%、牛肉エキス1%、酵母エキス0.5%、ブドウ糖2%、Tween 80 0.1%、クエン酸アンモニウム0.5%、硫酸マグネシウム0.01%、硫酸マンガン0.005%、リン酸二カリウム0.2%(Difco社製、以下MRS培地と表記する))を用いた。
【0023】
培養にあたっては、本培養の前に、各供試菌株について前培養を1回行い、菌を活性化した。該前培養は、オートクレーブ滅菌した新鮮な前記各培地5mlに、保存菌を植金耳で接種し、30℃で一晩培養して行った。
【0024】
(プラスミノーゲン活性化能の測定)
前記により前培養を行った各供試菌株について、培養液50ulを滅菌した新鮮な前記各培地5mlに接種し、30℃で14時間静置培養した。該培養液を日立CR20型高速冷却遠心機(ローター形式 RPRS3-3)を用いて遠心分離(3000rpm、20分、4℃)した。遠心上清(培養上清)を吸引して取り除き、沈殿している菌体を0.85%塩化ナトリウム溶液1mlに懸濁後、同様に遠心分離(3000rpm、20分、4℃)した。遠心上清(菌体洗浄液)を吸引して取り除き、沈殿している各供試菌株の菌体を回収した。
【0025】
前記により得られた各菌体を、600nmの吸光度が0.25(OD600=0.25)になるように、緩衝液0.1M Tris-Cl pH7.4中に懸濁し、菌体懸濁液を得た。該菌体懸濁液50ulに、酵素基質液(0.1M Tris-ClpH7.4、75ug/ml ヒトプラスミノーゲン(Sigma社製 、plasminogen from human plasma)、0.15mMプラスミン基質(Sigma社製、
N-Tosylglycyl-L-prolyl-L-lysine 4-nitroanilide acetate salt))100ulを加え、30℃で18時間静置した後、トミーMRX-152型微量冷却遠心機(ローター形式 TMS-4)を用いて遠心分離(12000rpm、10分、4℃)し、上清の405nmの吸光度を、ベックマンDU640型分光光度計を用いて測定した。
【0026】
前記各菌体懸濁液50ulに、盲検としてプラスミノーゲンを含まない酵素基質液(0.1M Tris-Cl pH7.4、0.15mM プラスミン基質(Sigma社製、
N-Tosylglycyl-L-prolyl-L-lysine 4-nitroanilide acetate salt))100ulを加え、前記と同様に静置した後、トミーMRX-152型微量冷却遠心機(ローター形式 TMS-4)を用いて遠心分離(12000rpm、10分、4℃)し、上清の405nmの吸光度を測定した。
【0027】
前記菌体懸濁液にプラスミノーゲンを含む酵素基質液を加えた上清の405nmの吸光度の測定値(以下反応液測定値ということがある。)から、前記菌体懸濁液にプラスミノーゲンを含まない酵素基質液を加えた上清の405nmの吸光度の測定値(以下盲検測定値ということがある。)を差し引くことにより、両値の差dA405を算出した。
【0028】
プラスミノーゲン活性の測定は、菌体懸濁液の代わりに組織プラスミノーゲンアクチベーター(生化学工業)の含量を、10000IU/ml、20000 IU/ml、50000 IU/ml、100000 IU/mlと替えた0.1M Tris-ClpH7.4の各50ulに、前記プラスミノーゲンを含む酵素基質液、及び前記プラスミノーゲンを含まない酵素基質液をそれぞれ100ul加え、前記と同様に反応液測定値から盲検測定値を差し引くことによりdA405を算出した。前記組織プラスミノーゲンアクチベーターの含量(以下プラスミノーゲン活性化能ということがある。)とdA405の測定結果を表2に、また該測定結果より得られたプラスミノーゲン活性化能とdA405値の検量線の一例を図1に示す。
【0029】
【表2】
JP0005488949B2_000003t.gif

【0030】
前記図1により作成した活性量の検量線は、Y軸を(dA405)、X軸を(プラスミノーゲン活性化能)とすると、下記数1に示された回帰式となる(R= 0.9122)。したがって下記数2により、各菌体懸濁液(OD600=0.25)のプラスミノーゲン活性化能(IU/ml)を求めた。
【0031】
【数1】
JP0005488949B2_000004t.gif

【0032】
【数2】
JP0005488949B2_000005t.gif

【0033】
(結果)
前記により求めた各供試菌株の菌体懸濁液(OD600=0.25)1ml当たりのプラスミノーゲン活性化能を表3に示す。
【0034】
【表3】
JP0005488949B2_000006t.gif

【0035】
表3から、供試した15株すべてで、プラスミノーゲン活性化能を検出した。中でもLactococcus lactis subsp. lactis に属するATCC19435株、Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactisに属するC59株及びCVT8W株、Lactococcus lactis ssp. cremorisに属するATCC 19257株、Lactobacilluscoryniformisに属するH80株及びC75株が高い活性を示し、特にATCC 19435株及びC59株が極めて高い活性を示した。
【0036】
<実施例2 ウシ型プラスミノーゲンに対する作用>
(方法)
実施例1においてプラスミノーゲン活性化能が強かったATCC 19435株及びC 59株について、ウシ型プラスミノーゲンに対する活性化能を観察した。菌体懸濁液の調製と活性化能測定は、実施例1に記載の方法と同様とし、ウシプラスミノーゲンに対する活性化能測定は、実施例1の酵素基質液のヒトプラスミノーゲンを、ウシプラスミノーゲン(Sigma社製、plasminogen from bovine plasma)に代えることによって行った。
【0037】
(結果)
前記各菌体のdA405値と数2に示す算式から、ウシ型プラスミノーゲン活性化能を算出した。該各菌株の菌体懸濁液(OD600=0.25)1ml当たりのヒト型及びウシ型プラスミノーゲンに対するプラスミノーゲン活性化能を表4に示す。
【0038】
【表4】
JP0005488949B2_000007t.gif

【0039】
表4から、供試株はヒトプラスミノーゲンだけでなく、ウシプラスミノーゲンにも活性を有することが明らかになった。
【0040】
<実施例3 熱安定性>
(方法)
C59株について、実施例1の方法と同様にして得た菌体懸濁液(pH7.4、OD600=0.25)を、次の5条件で処理した。(1)4℃で4時間静置、(2)室温で4時間静置、(3)-30℃凍結後、室温融解を3回繰り返し、(4)沸騰水浴上で10分間加熱、(5)オートクレーブ(121℃、1気圧加圧)で15分間加熱。
【0041】
(結果)
前記各処理した菌体懸濁液について、前記実施例1の方法と同様にして、プラスミノーゲン活性化能を測定、算出した。各処理について、菌体懸濁液(OD600=0.25)1ml当たりの残存するプラスミノーゲン活性化能、及び(1)の活性量を100とした相対値を残存活性として表5に示す。
【0042】
【表5】
JP0005488949B2_000008t.gif

【0043】
表5の結果から、(4)の100℃・10分の加熱処理、及び(5)の121℃・15分の加熱処理では、(1)の4℃・4時間静置に対して、それぞれ173%、181%と活性量は増加した。(2)の室温・4時間静置では活性低下はほとんど見られなかった。(3)の-30℃凍結・融解処理によって、活性は約70%に低下したが、活性は維持された。本活性は加温することにより、むしろ向上することが明らかになった。
【0044】
<実施例4 pH安定性>
(方法)
C59菌体について、前記実施例1と同様の方法により得た菌体について、緩衝液0.1M Tris-Cl pH7.4に替えて、pH3.0, pH 4.0, pH 5.0, pH 6.0, pH 7.0, pH8.0, pH 9.0の各緩衝液を用いて、600nmの吸光度が5.0(OD600=5.0)になるように、各緩衝液中に懸濁した。前記緩衝液は、pH3.0ないしpH7.0については、McIlvaine緩衝液(リン酸-クエン酸緩衝液)を、pH7.0ないしpH 9.0については、0.1M Tris-Cl緩衝液を、それぞれ用いた。前記菌体懸濁液を、30℃で3時間加温処理後、0.1MTris-Cl pH7.4で20倍に希釈し、その50ulを用いて残存するプラスミノーゲン活性化能を測定した。
【0045】
(結果)
各pHで処理後菌体懸濁液(OD600=0.25)1ml当たりの残存するプラスミノーゲン活性化能、及びプラスミノーゲン活性化能が最も高い値を示したpH4.0の値を100とした相対値を括弧書きとして表6に示す。
【0046】
【表6】
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【0047】
表6の結果から、pH3.0-pH9.0の間でプラスミノーゲン活性化能の低下は認められず、広範囲のpHで安定であることが明らかになった。
【0048】
<実施例5 培養時間>
(方法)
C59菌株について、前記実施例1と同様の方法により前培養をした前培養液50ulを、滅菌した新鮮なGM17培地5mlに接種し、30℃で培養した。接種後3時間から27時間後まで3時間ごとに培養液を採取し、該採取した培養液について、実施例1の方法で菌体懸濁液(OD600=0.25)を作製し、菌体のプラスミノーゲン活性化能を測定した。また、培養上清、及び菌体洗浄液のプラスミノーゲン活性化能についても測定した。培養上清、及び菌体洗浄液は0.1M Tris-Cl pH7.4にて30倍に希釈し、その希釈液50ulに前記酵素基質液100ulを加え、菌体懸濁液と同様の方法でプラスミノーゲン活性化能を測定した。
【0049】
前記処理後菌体懸濁液(OD600=0.25)1ml当たりの残存するプラスミノーゲン活性化能、及び培養上清と菌体洗浄液の1mlあたりのプラスミノーゲン活性化能(IU/ml)を、表7及び図2に示した。
【0050】
【表7】
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【0051】
(結果)
表7及び図2から、菌の生育は、接種後6時間でプラトーに達した。菌体量あたりのプラスミノーゲン活性化能は、15時間後から増加し、21時間後にプラトーに達した。培養上清及び菌体洗浄液には活性はほとんど認められず、本活性は菌体に結合している成分によると示唆された。
【0052】
<実施例6 無細胞抽出液の調製 抽出液のpH>
(方法)
前記実施例5のC59菌体について、21時間培養液から実施例1に記載の方法で菌体を調製した。前記菌体について、抽出液としてMcIlvaine緩衝液(リン酸-クエン酸緩衝液)pH3.0, pH 4.0, pH 5.0, pH 6.0、及び0.1MTris-Cl緩衝液pH7.0, pH 8.0、並びに0.1M 重炭酸ナトリウム緩衝液pH9.0, pH 10.0, pH 11.0を、OD600=5.0となるようにそれぞれ加え、菌体懸濁液を調製した。
【0053】
該菌体懸濁液は、4℃で1時間静置した後、トミーMRX-152型微量冷却遠心機(ローター形式 TMS-4)を用いて遠心分離(12000rpm、10分、4℃)して沈殿を除き、遠心上清(抽出液)を得た。
【0054】
前記各pHの菌体懸濁液、及び抽出液各10ulを、0.1M Tris-Cl pH7.4 190ulにそれぞれ加えよく混和した後、菌体懸濁液(OD600=0.25)及び抽出液の各1ml当たりのプラスミノーゲン活性化能を測定した。該各プラスミノーゲン活性化能の測定値より、各pHの菌体懸濁液から抽出液への抽出率を、下記数3により求めた。結果を表8に示す。
【0055】
【数3】
JP0005488949B2_000011t.gif

【0056】
【表8】
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【0057】
(結果)
表8の結果から、pH3-pH8の緩衝液で抽出した際にはプラスミノーゲン活性化能の緩衝液への移行は見られなかったのに対して、pH10以上の緩衝液を用いた際には緩衝液へ活性が移行した。pH10以上の緩衝液を用いることにより、無細胞抽出液のプラスミノーゲン活性化剤を作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、乳酸菌の菌体を有効成分とする新たなプラスミノーゲン活性化剤が提供される。本発明のプラスミノーゲン活性化剤である乳酸菌は、幅広い範囲の熱及びpHに安定であり、また乳酸菌は食品であることから、新たな機能を有する食品を提供することができ、血流改善等の保健効果が期待される。さらに本発明のプラスミノーゲン活性化剤は、ヒトプラスミノーゲンのみならず、動物のプラスミノーゲンも活性化するために、飼料、ペットフード等としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】プラスミノーゲン活性化能とdA405値の検量線
【図2】C59株培養時のプラスミノーゲン活性化能の継時変化
図面
【図1】
0
【図2】
1