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明細書 :ヘテロ接合度の分散を推定するためのプログラムを記録した記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3360110号 (P3360110)
公開番号 特開2000-276464 (P2000-276464A)
登録日 平成14年10月18日(2002.10.18)
発行日 平成14年12月24日(2002.12.24)
公開日 平成12年10月6日(2000.10.6)
発明の名称または考案の名称 ヘテロ接合度の分散を推定するためのプログラムを記録した記録媒体
国際特許分類 G06F 17/18      
C12N 15/09      
G01N 33/48      
FI G06F 17/18 Z
G01N 33/48
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願平11-084422 (P1999-084422)
出願日 平成11年3月26日(1999.3.26)
審査請求日 平成11年3月26日(1999.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501168814
【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
発明者または考案者 【氏名】大原 一郎
【氏名】小林 敬典
【氏名】中山 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
審査官 【審査官】宮司 卓佳
参考文献・文献 J.C.Stephens,外3名,Estimation of Heterozygosity for Single-Probe Multilocus DNA Fingerprints,Mol.Biol.Evol.,米国,The University of Chicago,第9巻,第4号,p.729-743
Pieter Vos,外10名,AFLP: a new technique for DNA fingerprinting,Nucleic Acide Research,米国,Oxford University,第23巻,第21号,p.4407-4414
Hideki Innan,外3名,A Method for Estimating Nucleotide Diversity From AFLP Data,Genetics,米国,the Genetics Society of America,1999年 3月18日,第151巻,p.1157-1164
Andrew G.Clark,外1名,Prospects for Estimating Nucleotide Divergence with RAPDs,Mol.Biol.Evol.,米国,The University of Chicago,第10巻,第5号,p.1096-1111
八杉龍一,外3名編,岩波 生物学辞典,株式会社 岩波書店,1996年 3月21日,第4版,p.1212
調査した分野 G06F 17/00 - 17/18
C12N 15/00 - 15/90
C12Q 1/00 - 3/00
G01N 33/48 - 33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
コンピュータに、複数遺伝子座に対する優性遺伝子マーカーによるDNAフィンガープリントからヘテロ接合度の推定値を得るヘテロ接合度推定手順を実行させるためのプログラムにおいて、個体数nのサンプリングで見かけ上の出現頻度がj/nであるバンドの数をfo(j) と定義するとき、出現頻度がj/nであるバンドの真の数値fT(j)を、j<nのとき、
【数1】
JP0003360110B2_000002t.gifと推定し、j=nのとき、
【数2】
JP0003360110B2_000003t.gifと推定して、fT(j)を用いたシミュレーションにより遺伝子座内分散を推定する遺伝子座内分散推定手順を実行させることを特徴とするプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、2倍体ゲノムを有する生物の集団の遺伝的多様性を検査して近親交配の程度を調べ、近交弱勢の危険を事前に防ぐなど,DNAフィンガープリントから対象生物の遺伝的特性を評価するプログラムを記録した記録媒体に関する。

【0002】

【従来の技術】従来、対象生物の遺伝的特性を評価する方法の一つに、RAPDやAFLPに代表される、複数遺伝子座に対する優性遺伝子マーカーによるDNAフィンガープリント法がある。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】しかし、そのデータ解析に関して重要な事は、複数集団間の遺伝的多様度の適切な指標を用い、その値の複数集団間での差を示すとともに、差の有意性を統計的に検定することである。本発明では、2倍体ゲノムを有する生物の集団の遺伝的多様度を比較するために上述のフィンガープリント法を用いる。しかし、そのデータ解析に関して重要な事は、複数集団間の遺伝的多様度の適切な指標を用い、同じ生物種から任意に選んだ複数集団間での値の差を示すとともに、差の有意性を統計的に検定することである。そこで、遺伝的多様度の指標としてヘテロ接合度を用いることとし、ヘテロ接合度の誤差を集団ごとに推定することとする。しかしながら、これまでのところ、そのような方法は報告されていなかった。そこで、本発明は「複数遺伝子座DNAフィンガープリント法からヘテロ接合度を求める方法」(Stephens et al. 1992) を参考にしつつ、優性遺伝子マーカーによるヘテロ接合度とその誤差に関する知見を得るプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。

【0004】


【0005】

【課題を解決するための手段】本発明は、コンピュータに、複数遺伝子座に対する優性遺伝子マーカーによるDNAフィンガープリントからヘテロ接合度の推定値を得るヘテロ接合度推定手順を実行させるためのプログラムにおいて、個体数nのサンプリングで見かけ上の出現頻度がj/nであるバンドの数をfo(j) と定義するとき、出現頻度がj/nであるバンドの真の数値fT(j)を、j<nのとき、

【0006】

【数3】
JP0003360110B2_000004t.gif【0007】と推定し、j=nのとき、

【0008】

【数4】
JP0003360110B2_000005t.gif【0009】と推定して、fT(j)を用いたシミュレーションにより遺伝子座内分散を推定する遺伝子座内分散推定手順を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。また、前記遺伝子座間分散推定手順によって推定される遺伝子座間分散の推定値と前記遺伝子座内分散推定手順によって推定される遺伝子座内分散の推定値の和の平方根を、ヘテロ接合度の誤差として推定する誤差推定手順を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。

【0010】

【発明の実施の形態】以下添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態では、2倍体ゲノムを有する生物の、同一種又は同一亜種に属する各集団の遺伝的多様度を比較するために上述のフィンガープリント法を用いる。そして、遺伝的多様度の指標としてヘテロ接合度を用いることとし、ヘテロ接合度の誤差を集団ごとに推定する。

【0011】
DNA多様度を集団間で比較することを目的とし、各集団の個体からRAPD分析やAFLP分析によりDNAフィンガープリントを得る。データの解析に際し、ノンパラメトリックな統計学的手法を用いて集団のヘテロ接合度の誤差を推定することで、集団間にヘテロ接合度の有意差があるかどうかを検討することができる。優性遺伝子マーカーによるDNAフィンガープリントから求められるヘテロ接合度と、その誤差に関する知見を次のようにして得る。

【0012】
1)ヘテロ接合度の計算について、RAPD(random amplified polymorphic DNA) やAFLP(amplified fragment length polymorphism) などの優性遺伝子マーカー(Welsh and McClelland1990; Williams et al. 1990; 島野・矢野 1997)からヘテロ接合度を計算する方法の報告は、現在のところ存在しない。しかしながら、ほぼ共優性マーカーと考えられるミニサテライトDNAフィンガープリントなどの複数遺伝子座DNAフィンガープリントに関してはStephens et al. (1992) による報告があり、さらにJin and Chakraborty (1993) による改良案も出されている。そこで、優性遺伝子マーカーとしての個々のバンドを、複数遺伝子座における共優性マーカーからのランダム抽出であるとみなすことにより、Stephens et al. (1992) およびJin and Chakraborty (1993) によって与えられたものと同じ式で、ヘテロ接合度を計算する。

【0013】
2)ヘテロ接合度における遺伝子座間分散について、まず、n個体からDNAフィンガープリントを得たとき、あるバンドがn個体中何個体で出現するかを求めてヒストグラムを作成すると、一般にその出現頻度分布は正規分布から大きく外れるため、誤差を推定するのにパラメトリックな方法を用いることは好ましくない。そこで本実施の形態ではノンパラメトリックな推定法として、「ブートストラップ再抽出」を使用し、各再抽出ごとにヘテロ接合度を求め、その分散をもってヘテロ接合度の遺伝子座間分散を推定することとする。

【0014】
この際問題となるのは、ブートストラップの単位は独立な遺伝子座であるべきであるにも拘わらず、Stephens et al. (1992) で例示されているような複数遺伝子座DNAフィンガープリントでは、1つの遺伝子座に対応するバンドがどれとどれであるかがわからないので、遺伝子座ごとのブートストラップ再抽出が不可能であることである。しかしながら、幸いなことに、RAPDやAFLPでは、出現するバンドのほとんどが独立であって、多くの遺伝子座からの対立遺伝子のランダムな抽出であるとみなしても大きな問題はないので、ミニサテライトDNAフィンガープリント(Stephens et al. 1992)が直面するバンド間の相関の問題を回避することができると考えられる。従って、RAPDやAFLPのDNAフィンガープリントでは各バンドを独立なサンプルと解釈しても、大きな問題は生じないと考えられる。

【0015】
3)ヘテロ接合度における遺伝子座内分散について、Stephens et al. (1992) にコンピューターシミュレーションの方法が示されているが、この方法はヘテロ接合度が小さいとき、その値を過小評価するという欠陥があることがわかった。そこで「OKN補正」により、シミュレーションの方法を改良した。

【0016】
4)ヘテロ接合度の誤差について、遺伝子座間分散と遺伝子座内分散の和の平方根をとることにより、ヘテロ接合度の誤差が得られる。図1は、DNAフィンガープリントからヘテロ接合度の誤差を計算する全体動作を示すフローチャートである。ここで、ステップS2とステップS3とは入れ換え可能である。また、「ステップS4→ステップS5」と「ステップS6→ステップS7」も入れ換え可能である。

【0017】
図2は、ステップS2における総バンド数を計算する動作を示すフローチャートである。図3は、ステップS3におけるヘテロ接合度を計算する動作を示すフローチャートである。ここで、計算に用いられている式はStephens et al. (1992) からとられているが、これをJin and Chakraborty (1993) による式で置き換えてもよい。その場合は、

【0018】

【数5】
JP0003360110B2_000006t.gif【0019】となる。図4は、ステップS4におけるバンドのブートストラップ再抽出をNB回実行してヘテロ接合度をNB個求める動作を示すフローチャートである。図5及び図6は、ステップS6における遺伝子座内分散の計算のためのNR回のシミュレーションを実行してヘテロ接合度をNR個求める動作を示すフローチャートである。

【0020】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。記録媒体は、例えば、磁気テープ、CD-ROM、ICカード、RAMカード等のいかなるタイプの記録媒体であってもよい。また、「ブートストラップ再抽出」とは、N個のサンプルから重複を許してN個のサンプルをランダムに抽出することである。

【0021】

【遺伝子座内分散における「OKN補正」の意義と方法】Stephens et al. (1992) による遺伝子座内分散のシミュレーションの方法の概略は、同論文のp740に記述されている。それによれば、真の出現頻度がj/nであるようなバンドが、n個体のサンプリングで全く検出されない確率は、(1-j/n)nであるから、見かけ上の出現頻度がj/nであるバンドの数をfo(j) とすると、出現頻度がj/nであるバンドの真の数値は、

【0022】

【数6】
JP0003360110B2_000007t.gif【0023】であるとされている。この補正によって、出現頻度の低い所での真のバンド数は正しく見積もられており、特にヘテロ接合度が高い時はこの補正に基づくシミュレーションは有効である。

【0024】
しかしながら、この補正法では、j=nのとき、
T(n)=fo(n)
となり、全く補正が効いてない。ところが実際には、例えばfT(n-1)のバンドがfo(n) に貢献することもありうるのであるから、正しくはfT(n)<fo(n) でなくてはならない。そしてこのような傾向はヘテロ接合度の低い時に大きく効いてくるので、Stephens et al. (1992) の補正のみでは、シミュレーションによってヘテロ接合度の値そのものを過小評価してしまうことになる。そこで、上述の難点を克服するために新たに「OKN補正」を加えた。

【0025】
<方法>真の出現頻度がj/nであるようなバンドが、n個体のサンプリングでn個体すべてに検出されてしまう確率は、(j/n)nであるから、見かけ上の出現頻度がj/nであるバンドの数をfo(j) とすると、出現頻度がj/nであるバンドの真の数値は、j<nとして、

【0026】

【数7】
JP0003360110B2_000008t.gif【0027】で近似される。ただし、jは1からn-1までの数値をとる。右辺の分母の最後の項-(j/n)nが「OKN補正」である。一方、j=nについては、

【0028】

【数8】
JP0003360110B2_000009t.gif【0029】であり、右辺の最終項

【0030】

【数9】
JP0003360110B2_000010t.gif【0031】が「OKN補正」である。このようにして、ヘテロ接合度の小さい場合にも偏りのないヘテロ接合度をシミュレーションできるようになり、その結果、ヘテロ接合度に伴っている遺伝子座内分散についても、より正確な値が求められるようになったと考えられる。

【0032】
ただし、この補正によって、ヘテロ接合度そのものの推定はかなり改善されるものの、遺伝子座内分散の値についてはあまり大きな変更が生じない。したがって、遺伝子座間分散が遺伝子座内分散よりもはるかに大きいケースにおいては、この「OKN補正」はあまり大きな貢献をする訳ではないことに注意する必要がある。あくまでも遺伝子座間分散の見積もりの方がより重要である。

【0033】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、複数遺伝子座DNAフィンガープリントから得られる平均ヘテロ接合度の誤差の範囲を推定するという、従来存在しなかった推定を可能とするものである。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5