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明細書 :細胞壁構成成分を連続的に産生するプロトプラストの培養方法および培養システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982749号 (P4982749)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
発明の名称または考案の名称 細胞壁構成成分を連続的に産生するプロトプラストの培養方法および培養システム
国際特許分類 C12N   1/00        (2006.01)
C12N   5/04        (2006.01)
FI C12N 1/00 A
C12N 5/00 203
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2006-548997 (P2006-548997)
出願日 平成17年12月20日(2005.12.20)
国際出願番号 PCT/JP2005/023355
国際公開番号 WO2006/068132
国際公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
優先権出願番号 2004367261
優先日 平成16年12月20日(2004.12.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月18日(2008.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】田中 秀夫
【氏名】青柳 秀紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100112874、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 薫
審査官 【審査官】名和 大輔
参考文献・文献 特開平08-103271(JP,A)
調査した分野 C12N 1/00-1/38
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
プロトプラストの液体培養の際、細胞壁合成阻害剤を用いることなく、プロトプラストが破壊されず、かつ該プロトプラスト表層への細胞壁構成成分の沈着を防止できる範囲で培養液を動かすことにより、該プロトプラストの状態を維持しながら培養液中へ細胞壁構成成分を連続産生させるプロトプラスト培養方法。
【請求項2】
前記プロトプラストを包膜又は固定化することを特徴とする請求項1記載のプロトプラスト培養方法。
【請求項3】
前記包膜又は固定化に用いる材料は、培養液を透過し、かつ前記細胞壁構成成分を透過しない性質の材料であって、該包膜あるいは固定化素材内に存在する培養液中へ前記細胞壁構成成分を連続的に産生させることを特徴とする請求項2記載のプロトプラスト培養方法。
【請求項4】
前記包膜又は固定化に用いる材料は、前記細胞壁構成成分を透過する性質の材料であって、該包膜あるいは固定化素材外に存在する培養液中へ前記細胞壁構成成分を連続的に産生させることを特徴とする請求項2記載のプロトプラスト培養方法。
【請求項5】
前記プロトプラストは、細菌、酵母、カビ、キノコ、藻類、植物のいずれかから選択される細胞から生成されたものであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のプロトプラスト培養方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞壁構成成分を連続産生するプロトプラストの培養技術に関する。より詳しくは、プロトプラストの細胞壁再生を抑制しながら、細胞壁構成成分を連続的に産生させる培養方法および培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロトプラスト(Protoplast)は、細菌、菌類、カビ、藻類、植物細胞などの細胞壁を、等張溶液中で酵素処理(例えば、リゾチーム処理)することによって細胞壁を除去することで得られる原形質体である。このプロトプラストは、細胞膜と細胞質成分のみからなり、適当な浸透圧条件下では、細胞と同様の活性を維持するので、これまで、細胞融合や遺伝子導入の素材として用いられてきた。
【0003】
また、このプロトプラストは、物質移動の悪いゲルなどに包埋して培養すると、細胞壁構成成分を産生し、プロトプラスト表層に細胞壁構成成分が蓄積、沈着することによって、細胞壁の再生が完了して細胞に戻り、増殖を開始するという性質を有する。
【0004】
現在、前記細胞壁構成成分には医薬品や食品に適用できる有用成分(例えば、β-Dグルカンなどの多糖体)が含まれていることが明らかになってきているため、該細胞壁構成成分を効率的かつ大量に産生させるための技術が関連産業界から望まれている。
【0005】
ここで、特許文献1には、酵母の細胞壁を除去して得られるプロトプラストを培養液中で培養し、該培養液中に細胞表層物質を産生させる技術、特に、プロトプラストを包括法によって固定化し、これにより得られた固定化プロトプラストを、細胞壁合成阻害剤(抗真菌剤・アクレアシンA)を添加した培養液で培養し、前記細胞表層物質を連続的に培養液中に産出させる技術が開示されている。この技術は、本来的に細胞壁構成成分を産生させるのではなく、細胞壁や細胞壁と細胞膜の間に存在する酵素タンパク群からなる細胞表層物質を産生させることを目的としている。このため、この発明では、細胞壁合成阻害剤を用いて、強制的に細胞壁構成成分を産生させないシステムが採用されている。
【0006】
特許文献2には、細胞膜を疎水化された多糖で被覆することによって、カルシウムの流入に対する耐性などを有する安定なプロトプラストを提供する技術が開示されている。

【特許文献1】特開平8-103271号公報。
【特許文献2】特開平8-56654号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
細胞から細胞壁構成成分を産生する従来の技術は、細胞を過酷な条件(高温、高圧、酸、アルカリ、薬剤処理など)の下で抽出処理するため、工程が煩雑で、かつ環境への負荷も問題となっていた。また、従来の抽出処理では細胞壁成分の変性も著しかった。
【0008】
そこで、本発明は、マイルドな培養条件下でのプロトプラストの培養を実現し、プロトプラストから細胞に戻すことなく、自然のままの細胞壁構成成分を連続的に産生させる事を可能とする技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、まず、プロトプラストの表層に細胞壁成分が蓄積してプロトプラストが細胞に戻るのを防ぐため、プロトプラストを液体培養して細胞壁成分を培養液中に拡散させることによって、プロトプラストから培養液中へ細胞壁構成成分を連続産生させるプロトプラスト培養方法を提供する。この方法は、有用な細胞壁構成成分を大量生産するための方法として好適である。なお、本発明における「プロトプラスト」は、「スフェロプラスト」を含む概念として定義する。
【0010】
この方法において、プロトプラストが破壊されない程度で、かつプロトプラスト表層への細胞壁構成成分の沈着を防止できる範囲で培養液を動かすようにすれば、プロトプラストの細胞壁再生をより確実に阻止しながら、プロトプラストから培養液中へ細胞壁構成成分を効率的に産生させることが可能となる。なお、前記範囲内において、培養液の流動の度合いを少なくすると、細胞壁構成成分をシート状の形態で回収することが可能となり、培養液の流動の度合いを大きくすると細胞構成成分の産生量を増大させることが可能になる。
【0011】
なお、本発明に係るプロトプラストは、例えば、細菌、酵母、カビ、キノコ、藻類、植物のいずれかから選択される細胞から作製されたものを、いずれも採用できる。即ち、本発明は、細菌、酵母、カビ、キノコ、藻類、植物の有用な細胞壁構成成分の生産技術として活用できる。
【0012】
「細胞壁構成成分」は、細菌では、ペプチドグリカン、テイコ酸、キチン、β-Dグルカン、マンナン、リポタンパク質、リポ多糖類(特にグラム陰性菌)、各種酵素などであり、酵母では、β-1,3-グルカン、マンナン、各種酵素など、藻類では、種類によって異なるが、例えば、セルロース、キシラン、マンナンフィブリル、アルギン酸、フコイジン、ラミナラン、寒天質、各種酵素などであり、植物の場合は、セルロース、ヘミセルロース(キシラン、マンナン、ガラクタン、グルカンなど)、グリコペプチド、ペクチン(ペクチンオリゴ糖)、セロオリゴ糖、リグニン、各種酵素、薬用成分などである。
【0013】
次に、本発明では、プロトプラストを包膜又は固定化することによって、物理的衝撃に弱い性質を有するプロトプラストを保護する。特に、培養液を動かしたときの外力からプロトプラストを保護する。本発明において、「包膜」とは、薄い膜でプロトプラストが被われ、該膜中の溶液内にプロトプラストが懸濁した状態となっていることを意味し、「固定化」は、ゲルなどで個々のプロトプラストが個別に固定された状態となっていることを意味する。
【0014】
さらに、プロトプラストを包膜又は固定化を、培養液を透過し、かつ前記細胞壁構成成分を透過しない性質の材料を用いて行うことによって、該包膜又は固定化素材内の培養液中へ、前記細胞壁構成成分を連続的に蓄積させるという方法を達成できる。この方法によれば、包膜内あるいは固定化素材中に保持されている培養液内へ細胞壁構成成分を蓄積させていくことができるため、有用な細胞壁構成成分の回収、抽出作業が容易になる。
【0015】
培養液を透過し、かつ前記細胞壁構成成分を透過しない性質の包膜あるいは固定化に用いる素材としては、例えば、アルギン酸、ペクチン、キトサン、寒天、アガロース、ゲランガム、ゼラチン、コラーゲン、κ-カラギーナン、ポリビニルアルコール、光架橋性樹脂、感光性樹脂やこれらの成分の一部を含む複合体などを挙げることができる。
【0016】
また、本発明では、前記包膜又は固定化に用いる材料として、前記細胞壁構成成分を透過する性質の材料を採用することにより、該包膜あるいは固定化素材の外側に存在する培養液中へ前記細胞壁構成成分を連続的に産生させる方法を提供する。
【0017】
この方法によれば、包膜あるいは固定化素材によってプロトプラストを物理的に保護しながら、包膜あるいは固定化素材外に存在する培養液中へ細胞壁構成成分を放出させ続けることができる。従って、この方法では、包膜あるいは固定化素材内部の狭小な培養液領域へ細胞壁構成成分を蓄積させていく方法に比べて、より大量の細胞壁構成成分を連続産生させることが可能となる。
【0018】
細胞壁構成成分を透過する性質の材料としては、例えば、高分子物質の電気泳動に用いられている、物質移動能が高い(ゲルの編み目が大きい)アガロースゲルや、アルギン酸、ペクチン、キトサン、寒天、ゲランガム、ゼラチン、コラーゲン、κ-カラギーナン、ポリビニルアルコール、光架橋性樹脂、感光性樹脂などのゲルやこれらの成分の一部を含む複合体を、任意の方法で処理、加工することによって、編み目を大きくした材料を挙げることができる。
【0019】
次に、本発明は、プロトプラストを液体培養するシステムであり、培養液を収容する培養液収容部と、プロトプラストが破壊されず、かつ該プロトプラスト表層への細胞壁構成成分の沈着を防止できる範囲の強さで前記培養液を動かす手段と、該培養液中に産生された細胞壁構成成分を回収する手段と、を少なくとも備えるプロトプラスト培養システムを提供する。
【0020】
培養液を動かす手段は、プロトプラストから産生される細胞壁構成成分がプロトプラストの表層に蓄積及び沈着して細胞壁が再生されてしまうことを有効に阻止し、かつプロトプラストを破壊しない程度の範囲で、培養液を流動、振動、攪拌等して動かすことができる手段であれば、特に限定されない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環境負荷の少ないマイルドな培養条件下で、プロトプラストを液体培養して細胞壁成分を培養液中に拡散させることで、プロトプラストの状態を維持して培養し続けることができる。即ち、プロトプラストの表層に細胞壁成分が蓄積してプロトプラストが細胞に戻るのを有効に防ぎながら、培養過程で、有用な細胞壁構成成分を培養液中に連続的に産生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1から図3に基づいて、本発明に係る方法の好適な実施形態により、本発明の基本的な概念を説明する。
【0023】
図1には、符号Pで示されたプロトプラストを液体培養するために調製された培養液1が、培養容器2に収容されている状態が示されている。この培養液1は、当該プロトプラストに適する等張液条件に調整されている。なお、培養容器2は、例えば、シャーレやシャーレ状を呈する容器を採用できるが、容器形状は、特に限定されず、目的に応じて自由に選択できる。
【0024】
プロトプラストPを前記培養容器2内で静置液体培養した場合は、培養容器2の底部に、細胞壁構成成分Wが集積するので、該細胞壁構成成分Wをシート状の形態で回収することが可能となる。
【0025】
また、プロトプラストPが破壊されない程度の強さで、培養容器2を振とうすることで、培養液1を緩やかに動かすようにしてもよい。例えば、培養容器2を振とう台の上に設置したり、マグネットスターラーで攪拌したりすることで、培養液1を動かすようにする。
【0026】
このプロトプラストPは、通常、細胞壁構成成分Wを生産し、プロトプラストPの表層に該細胞壁構成成分Wが蓄積及び沈着することで、細胞壁が再生して細胞に戻り、細胞増殖を開始するという性質を有する。しかし、本発明では、プロトプラストP周辺の培養液1を適度に動かすことによって、該プロトプラストPから産生される細胞壁構成成分WがプロトプラストPの表層に蓄積及び沈着してしまうことを有効に防止できる。この結果、プロトプラストPの表面での細胞壁の再生をより確実に阻止できる。
【0027】
この結果、培養液1中では、細胞壁再生が起こることなく、プロトプラストPが細胞壁構成成分Wを産生し続けるため、該培養液1中へ細胞壁構成成分Wが蓄積する。従って、この細胞壁構成成分W濃度の高い培養液1を回収し、この培養液1中から細胞壁構成成分Wを抽出すれば、有用な細胞壁構成成分Wを容易に大量生産することができる。例えば、β-Dグルカンなどの多糖体を大量生産することができる。
【0028】
図2は、本発明の他の実施形態の概念を示す図である。この形態では、プロトプラストPの周囲に培養液1aを内包した状態でカプセル状の包膜(又は固定化膜)Mが形成され、さらに該包膜Mの外側に培養液1bが存在している。
【0029】
包膜Mは、培養液1を透過し、かつ前記細胞壁構成成分Wを透過しない性質の材料で形成されているため、プロトプラストPから産生される細胞壁構成成分Wを、包膜Mの内部に蓄積させる機能を発揮する。
【0030】
なお、包膜Mの物質透過性を適宜設計することによって、包膜M内に蓄積させたい物質と包膜M外へ排出させたい物質を選別することができる。なお、包膜Mの材料としては、例えば、アルギン酸ナトリウムを採用することができる。
【0031】
この実施形態では、プロトプラストPそれ自体は、その周囲に形成された包膜Mによって外力から保護されているため、培養液1(1a,1b)を動かす工程を採用した場合であっても、プロトプラストPが破壊させることなく、包膜M内に細胞壁構成成分Wを産生させ続けることができる。
【0032】
また、この実施形態では、プロトプラストPから産生された細胞壁構成成分Wは、培養液1bへ広く拡散することなく、包膜Mの培養液1a内に滞留し、蓄積する。従って、細胞壁構成成分Wを回収する作業が容易となる。
【0033】
次に、図3は、プロトプラストPを包膜又は固定化する構成の変形実施形態の概念を説明するための図である。
【0034】
この実施形態では、包膜Mが、プロトプラストPから産生された細胞壁構成成分Wを透過可能な材料で形成されていることが特徴である。従って、この実施形態では、プロトプラストPから産生された細胞壁構成成分Wは、包膜M内の培養液1aや固定化用のゲルなどから、包膜Mを通り抜けて、包膜M外の培養液1bへ放出されていく。
【0035】
包膜M外の培養液1bの体積は、包膜M内の培養液1aの体積よりも大きいので、細胞壁構成成分Wの収容能力が大きい。このため、本実施形態では、図2に示す実施形態と比較して、より長時間にわたり、プロトプラストPから細胞壁構成成分Wを連続的に産生させることができるという利点がある。
【0036】
以上の方法は、図4に示すような基本構成のプロトプラスト培養システムSによって実施できる。
【0037】
このシステムSは、プロトプラストPを液体培養可能な培養液1を収容する培養液収容部S1(例えば、培養容器2)と、プロトプラストPが破壊されることなく、かつ該プロトプラストPの表層への細胞壁構成成分Wの沈着を防止できる範囲で前記培養液1を動かすことができる手段S2と、培養液1中に産生された細胞壁構成成分Wを回収する手段S3と、を少なくとも備えており、回収された培養液1から細胞壁構成成分Wを抽出する。
【0038】
培養液1を動かすことができる手段S2は、振とう装置、マグネットスターラー装置、攪拌装置、あるいはこれらを大型化した装置などを適宜採用でき、特に限定されない。この手段は、培養液1を動かさずに、静置液体培養を実施する場合では、該手段S2を駆動させないようにすればよい。
【0039】
なお、本発明においては、培養に用いるプロトプラストの濃度を適切な範囲に設定することが重要である。一例を挙げると、酵母プロトプラストの場合では、1×10~1×10cells/mLが最適である。この範囲以外の濃度であると良好に細胞壁成分が生産できない。
【0040】
また、プロトプラストの濃度に加え、培養温度、栄養源、浸透圧および振とう速度の制御、酸素の供給や疎外物質の除去などを適切に行うことが重要である。
【実施例1】
【0041】
<酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いた培養試験>。
【0042】
YPD培地(グルコース20g/L、ポリペプトン20g/L、酵母エキス10g/L、pH5.7)を200ml入れた500ml三角フラスコを用いて、30℃、200rpm、14時間の条件で酵母細胞を増殖させた。
【0043】
培養して得られた酵母細胞を集め、細胞壁溶解酵素液(溶菌酵素:Zymolyase 20T(生化学工業社製))を30U/mL、促進剤:2-Mercaptoethanolを100mM、浸透圧調整剤:0.9Mマンニトール、緩衝液:HEPES(pH7.5)を作用させ、30℃条件で、マイルドシェーカーにより1.5時間ゆっくりと振とうし、プロトプラストを作製した。
【0044】
これにより得られたプロトプラストを液体培地(YPMP培地(グルコース20g/L、ポリペプトン20g/L、酵母エキス10g/L、マンニトール0.85M、pH5.7)が入ったシャーレに入れ、30℃条件で液体培養を行った。また、マイルドシェーカーにより培養液をゆっくりと振とうした場合についても、同様の実験を行った。
【0045】
この結果、培養に伴い、培養液中に細胞壁構成成分が大量かつ継続的に分泌され、細胞壁構成成分がシート状に蓄積されることが確認できた。また、マイルドシェーカーによりゆっくりと振とうしながらプロトプラストを培養した場合、粉体状の細胞壁構成成分が培養液中に大量かつ継続的に分泌産生された。
【実施例2】
【0046】
<細菌(Escherichia coli IFO 330)を用いた液体培養試験>。
【0047】
トリプトソイブイヨン培地を200mL入れた500mL三角フラスコを用いて、37℃、100rpm、10-12時間の条件で、Eschrichia coli細胞を増殖させた。
【0048】
培養して得られたEschrichia coli細胞を集め、細胞壁溶解酵素液(溶菌酵素:Lysozyme(鶏卵白由来)1mg/L、外膜破壊剤:EDTA5mM、浸透圧調整剤:マンニトール0.9M、緩衝液:Tris-HCl(pH8.0))を作用させ、30℃条件で、マイルドシェーカーによって1.5時間ゆっくりと振とうし、プロトプラストを作製した。
【0049】
得られたプロトプラストを液体培地(0.9Mマンニトールを含むトリプトソイブイヨン培地)が入ったシャーレを用いて、37℃条件で、液体培養を行った。。また、マイルドシェーカーにより培養液をゆっくりと振とうした場合についても、同様の実験を行った。
【0050】
その結果、培養に伴い、培養液中に細胞壁構成成分が大量かつ継続的に分泌し、細胞壁構成成分がシート状に蓄積されることが確認できた。また、マイルドシェーカーによりゆっくりと振とうしながらプロトプラストを培養した場合、粉体状の細胞壁構成成分が培養液中に大量かつ継続的に分泌産生された。
【実施例3】
【0051】
<植物(Catharanthus roseus L.)を用いた液体培養試験>。
【0052】
Murashige-Skoog培地を100mL入れた500mL三角フラスコを用いて、25℃、120rpm、7日間の条件で、Catharanthus roseus L.細胞を増殖させた。
【0053】
培養して得られたCatharanthus roseus L.細胞を集め、細胞壁溶解酵素液(溶菌酵素:ペクトリアーゼY23(生化学工業社製)1.0g/L、セルラーゼオノズカRS(ヤクルト薬品工業社製)10.0g/L、細胞膜保護剤:Potassium Dextran Sulfate5.0g/L、緩衝液:MES0.2g/L(pH5.5))を作用させ、25℃条件下、マイルドシェーカーで1時間ゆっくりと振とうし、プロトプラストを作製した。
【0054】
得られたプロトプラストを液体培地(Murashige-Skoog培地成分、グルコース30g/L、2,4-D0.5mg/L、マンニトール100g/L、pH6.2)が入ったシャーレを用いて、25℃条件下で液体培養を行った。。また、マイルドシェーカーにより培養液をゆっくりと振とうした場合についても、同様の実験を行った。
【0055】
その結果、培養に伴い、培養液中に細胞壁構成成分が大量かつ継続的に分泌し、細胞壁構成成分がシート状に蓄積されることが確認できた。また、マイルドシェーカーによりゆっくりと振とうしながらプロトプラストを培養した場合、粉体状の細胞壁構成成分が培養液中に大量かつ継続的に分泌産生された。
【実施例4】
【0056】
<カビ(Aspergillus oryzae IFO5239)を用いた液体培養試験>。
【0057】
CZAPEK-Dox培地+0.5%カザミノ酸培地を、100mL入れた500mL三角フラスコを用いて、30℃条件下で数日間静置培養し、Aspergillus oryzae細胞を増殖させた。
【0058】
培養して得られたAspergillus oryzae細胞を集め、細胞壁溶解酵素液(溶菌酵素:FUNCELASE(ヤクルト薬品工業社製)2%、Yatalase(タカラバイオ社製)1%、Zymolyase 20T0.2%、浸透圧調整剤:0.8M NaCL、緩衝液:10mMリン酸緩衝液pH6.0)を作用させ、30℃条件下、マイルドシェーカーで3時間ゆっくりと振とうし、プロトプラストを作製した。
【0059】
得られたプロトプラストを液体培地(Czapek-Dox培地+0.5%カザミノ酸培地+0.8M NaCl)が入ったシャーレを用いて、25℃条件下で静置液体培養を行った。。また、マイルドシェーカーにより培養液をゆっくりと振とうした場合についても、同様の実験を行った。
【0060】
この結果、培養に伴い、培養液中に細胞壁構成成分が大量かつ継続的に分泌し、細胞壁構成成分がシート状に蓄積されることが確認できた。また、マイルドシェーカーによりゆっくりと振とうしながらプロトプラストを培養した場合、粉体状の細胞壁構成成分が培養液中に大量かつ継続的に分泌産生された。
【実施例5】
【0061】
<プロトプラストの包膜方法>。
【0062】
各種の細胞から得られた任意の濃度のプロトプラストを2%(w/w)CaCl、40%(w/w)PEG6000(av. MW=7500、和光純薬株式会社製)に懸濁し、包膜内部の芯液とした。包膜の部分(膜液)は、1.92%(w/v)アルギン酸ナトリウム(300-400cP、和光純薬株式会社製)、0.1%(v/v)Tween80を用いた。

【0063】
包膜の作製方法は下記の通りである。1)スターラーで攪拌している膜液へ芯液を滴下し、そのまま10分間攪拌を続けて包膜を形成させる。2)浸透圧を調整した緩衝液で液全体を2倍希釈し、メッシュで包膜を回収して同じ緩衝液で包膜を洗浄する。3)包膜を1%(w/v) CaCl液中で、30分間攪拌し、該包膜を強化する。4)CaCl液を除去し、包膜を培地で洗浄する。5)0.25%(w/v) CaClを含む培地に包膜を移し、培養を開始する。
【0064】
培養の結果、培養に伴って包膜内(内部は液状)に多量の細胞壁構成成分が継続的に生産され、蓄積することを確認した。
【実施例6】
【0065】
<ゲルビーズとゲルブロックの固定化法>。
【0066】
アルギン酸ストロンチウムゲルビーズへの固定化法。まず、次の溶液1、2と培地を用意する。溶液1:任意の濃度の各種の細胞から作製したプロトプラスト、2%アルギン酸ナトリウム(G-rich、BDH社)、MES緩衝液(pH5.7)、浸透圧調整剤:1Mマンニトール。溶液2:0.1M SrCl、MES緩衝液(pH5.7)、0.7Mマンニトール。培地:0.85Mマンニトールを含むYPD培地(YPMP培地)。
【0067】
次に、前記溶液1を前記溶液2に滴下し、60分静置してゲルビーズを形成させた。溶液2の容量は、溶液1の4-5倍とする。そして溶液2を除去した後、上記培地を加えて15分間静置する。培地を入れ替えて、振とうを加えながら、培養を行う。
【実施例7】
【0068】
<アガロースゲルブロックへの固定化法(酵母の場合)>。
【0069】
YPMP培地を用いて1.5%アガロースS-LM-3(コスモ・バイオ社製)溶液を調製し、オートクレーブ滅菌する。その後、45℃のウオーターバスで保温した。YPMP培地に懸濁した任意の濃度の酵母から作製したプロトプラストをアガロース溶液に加えて穏やかに混合した後、冷却してゲル化させた。次に、固まったゲルをメスで切断し、5mm程度のブロックを作製する。培地に添加し、振とうを加えながら、培養を行った。
【0070】
この結果、振とう培養を行ってもプロトプラストは破壊される事なく、培養に伴って多量の細胞壁構成成分が培養液中に効率的に分泌産生された。また、一部の細胞壁成分はゲルブロック内にも蓄積した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、細胞壁構成成分には医薬品や食品に適用できる有用成分(例えば、β-Dグルカンなどの多糖体)が含まれていることを踏まえ、該細胞壁構成成分を効率的かつ大量に生産させるための技術として利用できる。
【0072】
例えば、細菌では、ペプチドグリカン、テイコ酸、キチン、β-Dグルカン、マンナン、リポタンパク質、リポ多糖類(特にグラム陰性菌)、各種酵素など、酵母の場合は、β-1,3-グルカン、マンナン、各種酵素など、藻類では、種類によって異なるが、例えば、セルロース、キシラン、マンナンフィブリル、アルギン酸、フコイジン、ラミナラン、寒天質、各種酵素など、植物の場合は、セルロース、ヘミセルロース(キシラン、マンナン、ガラクタン、グルカンなど)、グリコペプチド、ペクチン(ペクチンオリゴ糖)、セロオリゴ糖、リグニン、各種酵素、薬用成分などの大量生産技術として利用できる。
【0073】
近年注目されているカビ(例えば、コウジカビ、アオカビ、ケカビ、クモノスカビ、ツチアオカビなど)やキノコ(例えば、ヒメマツタケ、霊芝、ハナビラタケ、マイタケ、シイタケなど)の有用な細胞壁構成成分の大量生産技術としても利用できる。
【0074】
加えて、本発明は、微量な細胞壁構成成分の検出などに応用できる可能性がある。細胞壁構成成分には、種々の糖質や糖タンパク質などが含まれている。それらの成分の中には、温度、浸透圧、病原菌の認識センサー等として、重要な役割を果たしているものもある。一方、本発明により、それらの成分を、比較的遊離した状態のまま、簡易かつ大量に取得できる。そこで、例えば、レクチン(糖結合性タンパク質)等を電極に固定し、特定の細胞壁構成成分とレクチン等とを結合させ、その結合を電気抵抗の変化などにより検出することにより、特定の微細な細胞壁構成成分を高精度に検出できる可能性がある。なお、例えば、特定の細胞壁構成成分とレクチンとが結合した場合の電気抵抗の変化を予め取得しておくことにより、その成分の定量的な検出ができる可能性がある。
【0075】
その他、本発明は、電子回路用部品等の組立プロセス等にも応用できる可能性がある。細胞壁成分は、例えば、電場を付加することにより、比較的容易に、電極などに付着させることができる。一方、細胞壁成分は、同種生物の細胞壁間などで特異的に相互吸着する性質を有する。そこで、接合したい部品のそれぞれに細胞壁成分を付着させ、両細胞壁を吸着させることにより、目的の態様に部品を組み立てることができる可能性がある。なお、この方法には、細胞壁間の特異的な相互吸着性を利用することにより、複雑で微細な部品の組立てを精密に行うことができ、かつ、その組立てを複雑な装置・工程を用いずに行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る細胞壁構成成分を連続的に産生するプロトプラスト連続培養方法の基本概念を説明するための図である。
【図2】包膜されたプロトプラスト(P)の構成を模式的に示す図である。
【図3】プロトプラストPを包膜又は固定化する構成の他の実施形態の概念を説明するための図である。
【図4】本発明に係る細胞壁構成成分を連続的に産生するプロトプラスト連続培養システム(S)の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 培養液
2 培養容器
P プロトプラスト
M 包膜又は固定化材料
W 細胞壁構成成分
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3