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明細書 :温度測定装置及びこれを利用した熱処理装置、温度測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4742279号 (P4742279)
登録日 平成23年5月20日(2011.5.20)
発行日 平成23年8月10日(2011.8.10)
発明の名称または考案の名称 温度測定装置及びこれを利用した熱処理装置、温度測定方法
国際特許分類 G01K  11/12        (2006.01)
H01L  21/66        (2006.01)
G06F  17/30        (2006.01)
FI G01K 11/12 H
H01L 21/66 T
G06F 17/30 170Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 18
出願番号 特願2007-524074 (P2007-524074)
出願日 平成18年7月4日(2006.7.4)
国際出願番号 PCT/JP2006/313304
国際公開番号 WO2007/004644
国際公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
優先権出願番号 2005195691
優先日 平成17年7月5日(2005.7.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月6日(2008.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】東 清一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100121795、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴亀 國康
審査官 【審査官】榮永 雅夫
参考文献・文献 国際公開第2004/065923(WO,A1)
特開平11-190670(JP,A)
特開2000-162048(JP,A)
特開2003-085185(JP,A)
調査した分野 G01K 11/12
H01L 21/66
G01K 13/00
G01J 5/00
G06F 17/30
特許請求の範囲 【請求項1】
温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを測定する光強度測定部と、
前記被加熱体と同等の形状、熱的及び光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与え、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき該仮想被加熱体から得られる光強度特性が前記光強度特性Xに最も一致する光強度特性Zを有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める再現被加熱体取得のための演算部と、
前記再現被加熱体に基づいて前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める温度出力部と、を有する温度測定装置であって、
前記演算部は、所定の入力データを入力するデータ入力部と、該入力データに基づき仮想被加熱体の温度分布特性を求める熱伝導解析部と、求められた温度分布特性を対応する屈折率分布特性に変換する変換部と、変換された屈折率分布特性を有する仮想被加熱体の所定の光学特性Yを求める光学解析部と、前記光強度特性Xから所定の光学特性Xを抽出し、該光学特性XとYとの差異を判別し、その差異が最小になるまで補正された初期値をデータ入力部に再入力して前記光学特性Xに最も一致する光学特性Zを求める判定部と、そのような光学特性Zに対応する光強度特性Z及び温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として出力する再現被加熱体出力部と、を有する温度測定装置。
【請求項2】
光学特性は、被加熱体及び仮想被加熱体について得られる光強度特性に関する波形の振動数、位相、山の頂点と谷の最下点に関する特性、または、仮想被加熱体について得られる光学厚み特性であることを特徴とする請求項に記載の温度測定装置。
【請求項3】
判定部は、パターン・マッチング法、特徴点法又は周波数解析法により光強度特性Xと光強度特性Yとの差異を判別するパターン認識部を有することを特徴とする請求項に記載の温度測定装置。
【請求項4】
判定部は、光学厚み特性Xと光学厚み特性Yとの差異を平均二乗誤差法により判別する平均二乗誤差計算部を有することを特徴とする請求項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
光強度測定部は、レーザ光源、光路分岐素子、レーザ集光レンズ及び光強度測定機を有することを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項6】
レーザ集光レンズは、その焦点距離fが被加熱体の厚みdに対しf>2dなる関係を有するものであることを特徴とする請求項に記載の温度測定装置。
【請求項7】
1μs~10sで室温~3000Kの範囲で変化する被加熱体の温度を求めることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項8】
プラズマジェット発生装置に請求項1に記載の温度測定装置を付設した熱処理装置。
【請求項9】
温度測定装置からの信号によりプラズマジェット発生装置の出力を制御する制御装置を設けたことを特徴とする請求項に記載の熱処理装置。
【請求項10】
温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求める段階と、
まず、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求め、該温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるともに、そのような屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求めて該光強度特性Yと前記光強度特性Xとの差異を判別し、
つぎに、前記仮想被加熱体に与える熱負荷条件のうちの所定の条件を補正して補正された光強度特性を求め、前記光強度特性Xと最も差異の小さい補正された光強度特性Z及びそのような光強度特性Zに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める段階と、
前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める段階と、を有する温度測定方法。
【請求項11】
熱負荷条件のうちの所定の条件は、パワー伝達効率又は/及び仮想被加熱体が投入されるパワーを有効に受ける領域の大きさであることを特徴とする請求項10に記載の温度測定方法。
【請求項12】
温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求める手順と、
前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める手順と、
前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求める手順と、
前記屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める手順と、
前記光強度特性Xと前記光強度特性Yとの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求める手順と、
前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める手順と、
前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める手順と、をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【請求項13】
温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを測定する光強度測定部と、
前記被加熱体に関する形状、熱的及び光学的特性を入力して測定対象を選択するためのデータを入力する入力部と、
前記入力部に入力可能な対象に関する所定の初期値及びその初期値のなかの特定の初期値を変化させた補正値に基づいて予め計算された光強度特性に関するデータ群と、該データ群に対応する温度分布特性を有する再現被加熱体に関するデータ群と、を蓄積した記録部と、
前記光強度特性及び前記再現被加熱体に関するデータ群の中から被加熱体より取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Z及びその光強度特性Zに対応する再現被加熱体を検索する検索部と、を有するデータベースと
前記データベースの検索により得られた再現被加熱体に基づいて前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める温度出力部と、を有する温度測定装置。
【請求項14】
被加熱体に関する形状、熱的及び光学的特性を入力して測定対象を選択するためのデータを入力する入力部と、
前記入力部に入力可能な対象に関する所定の初期値及びその初期値のなかの特定の初期値を変化させた補正値に基づいて予め計算された光強度特性に関するデータ群と、該データ群に対応する温度分布特性を有する再現被加熱体に関するデータ群と、を蓄積した記録部と、
前記光強度特性及び前記再現被加熱体に関するデータ群の中から被加熱体より取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Z及びその光強度特性Zに対応する再現被加熱体を検索する検索部と、を有するデータベース。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
レーザを用いて温度を測定する温度測定装置及びこれを利用した熱処理装置、温度測定方法に係り、特に半導体基板等の基板の熱処理のように基板内に高い温度勾配を生ぜしめ短時間で熱処理が行われる場合の温度測定に好適に使用される温度測定装置及びこれを利用した熱処理装置、温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等の基板の熱処理においては高い精度でかつ効率的に熱処理を行うために、非接触で基板の温度を測定する方法が求められている。非接触型の温度測定装置として、従来より放射温度計が用いられているが、放射温度計は、基板の表面状態によって放射率が変化し基板の正確な温度を測定することが困難なことから、レーザによる基板の温度を測定する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体レーザからレーザ光を被測温体に照射するとともに参照用部材にも照射し、被測温体からの反射光と参照用部材からの反射光との合成光を検出し、この合成光のスペクトルにおいて、被測温体の温度に対応して特異的に強度変化を生じた光成分の周波数を求め、その周波数から前記被測温体の温度を把握する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ワークの表面温度を測定する表面温度測定装置において、レーザ光を前記ワークの測定点に照射するレーザ光照射部と、このレーザ光照射部から照射されたレーザ光を分離して前記ワークの測定点及びこの測定点から所定距離だけ隔てた位置の参照点に平行に照射するレーザ光分離部と、前記測定点にパルスレーザ光を照射し、前記測定点を間欠的に加熱するパルスレーザ光照射部と、前記測定点及び参照点から反射した反射光を集めて干渉を検出する干渉計と、この干渉計で得られた前記測定点の超音波振動の周波数に基づいて前記測定点の温度を算出する演算部と、を備えている表面温度測定装置により温度を測定する方法が提案されている。
【0005】

【特許文献1】特開2000-162048号公報
【特許文献2】特開平11-190670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの温度測定方法は、基板を炉内で加熱し基板全体の温度を一定に保って熱処理を行う場合の基板の温度の測定方法であるから、高パワー密度の加熱源により基板の表面から急速加熱を行って熱処理を行うような基板内に高い温度勾配を生ぜしめ短時間で熱処理が行われる場合の温度測定には適していない。また、特許文献1による方法は、格子振動によるレーザ光の変調を利用しているので、基板がガラスのような非晶質なものである場合は適用が困難である。さらに、微小なノイズのスペクトル解析が必要であるから時間分解能が低く、急速な温度変化をする基板の温度測定は困難であるという問題がある。このため、このような基板の熱処理のようにミリ秒単位で急速に温度変化する基板表面や内部の温度を正確に測定することができる温度測定装置又は方法が求められている。
【0007】
本発明は、このような要請に鑑み、高パワー密度の加熱源により基板の表面から急速加熱を行って基板の熱処理を行うときの基板内の所定位置の所定時間における温度を容易にかつ効率的に測定することができる温度測定装置及び温度測定方法を提供することを目的とする。また、そのような温度測定装置を利用して正確な温度制御のもとで熱処理を行うことができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、干渉性の強いレーザ光により膜厚を測定しつつ成膜する際に膜厚制御が不安定になる問題は、成膜中に成膜基板が加熱されるに伴い受光されるレーザ光の光量が周期的に変動することに起因しているということに着目した。そして、プラズマジェットにより基板の熱処理を行っている際に、基板にレーザ光を照射しつつ反射レーザ光の強度を測定すると、そのとき得られたレーザ光の反射率の時間変化状態は、基板の表面が急速加熱されて基板内に生じた温度分布に基づく屈折率の変化状態に対応しているという知見を得たことから本発明を完成した。
【0009】
本発明に係る温度測定方法は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを測定する光強度測定部と、前記被加熱体と同等の形状、熱的及び光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与え、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき該仮想被加熱体から得られる光強度特性が前記光強度特性Xに最も一致する光強度特性Zを有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める再現被加熱体取得のための演算部と、前記再現被加熱体に基づいて前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める温度出力部と、を有する。
【0010】
上記発明において、演算部は、所定の入力データを入力するデータ入力部と、該入力データに基づき仮想被加熱体の温度分布特性を求める熱伝導解析部と、求められた温度分布特性を対応する屈折率分布特性に変換する変換部と、変換された屈折率分布特性を有する仮想被加熱体の所定の光学特性Yを求める光学解析部と、前記光強度特性Xから所定の光学特性Xを抽出し、該光学特性XとYとの差異を判別し、その差異が最小になるまで補正された初期値をデータ入力部に再入力して前記光学特性Xに最も一致する光学特性Zを求める判定部と、そのような光学特性Zに対応する光強度特性Z及び温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として出力する再現被加熱体出力部と、を有するものとすることができる。
【0011】
また、上記発明において、光学特性は、被加熱体及び仮想被加熱体について得られる光強度特性に関する波形の振動数、位相、山の頂点と谷の最下点に関する特性、または、仮想被加熱体について得られる光学厚み特性であるものとすることができる。
【0012】
判定部は、パターン・マッチング法、特徴点法又は周波数解析法により光強度特性Xと光強度特性Yとの差異を判別するパターン認識部を有するものとすることができ、また、光学厚み特性Xと光学厚み特性Yとの差異を平均二乗誤差法により判別する平均二乗誤差計算部を有するものとすることができる。
【0013】
光強度測定部は、レーザ光源、光路分岐素子、レーザ集光レンズ及び光強度測定機を有するものとすることができ、そのレーザ集光レンズは、その焦点距離fが被加熱体の厚みdに対しf>2dなる関係を有するものであるのがよい。
【0014】
上記発明は、1μs~10sで室温~3000Kの範囲で変化する被加熱体の温度を求める温度測定装置に好適に用いることができ、
【0015】
上記発明に係る温度測定装置をプラズマジェット発生装置に付設することによって、半導体基板の熱処理等を高品質に行うことができる。そして、その熱処理装置には、温度測定装置からの信号によりプラズマジェット発生装置の出力を制御する制御装置を設けるのがよい。
【0016】
本発明に係る温度測定方法は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求める段階と、まず、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求め、該温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるともに、そのような屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求めて該光強度特性Yと前記光強度特性Xとの差異を判別し、つぎに、前記仮想被加熱体に与える熱負荷条件のうちの所定の条件を補正して補正された光強度特性を求め、光強度特性Xと最も差異の小さい補正された光強度特性Z及びそのような光強度特性Zに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める段階と、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める段階と、を有する。
【0017】
上記温度測定方法の発明において、熱負荷条件のうちの所定の条件は、パワー伝達効率又は/及び仮想被加熱体が投入されるパワーを有効に受ける領域の大きさとするのがよい。
【0018】
また、本発明に係る温度測定プログラムは、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、前記屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yとの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を有する。
【0019】
また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、前記屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yとの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0020】
また、本発明に係る温度測定をするLSIは、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、前記屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yとの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を実施して温度測定をするLSIである。
【0021】
上記の温度測定装置又は方法は、被加熱体の光強度特性Xの取得から再現被加熱体の取得、さらには被加熱体の所定部位の所定時間における温度の取得は非常に短時間になされるので、通常の温度測定方法と特に異ならないのであるが、予め光強度特性X及びこれに対応する再現被加熱体に関するデータを蓄積したデータベースを設けることにより、温度測定の高速化、温度測定装置のコンパクト化、簡略化等を図ることができる。
【0022】
すなわち、本発明に係るデータベースは、測定対象を選択するためのデータを入力する入力部と、前記入力部に入力可能な対象に関する所定の初期値及びその初期値のなかの特定の初期値を変化させた補正値に基づいて予め計算された光強度特性に関するデータ群と、該データ群に対応する温度分布特性を有する再現被加熱体に関するデータ群と、を蓄積した記録部と、前記光強度特性及び前記再現被加熱体に関するデータ群の中から被加熱体より取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Z及びその光強度特性Zに対応する再現被加熱体を検索する検索部と、を有する。
【0023】
このようなデータベースを利用してコンパクトで簡単な構造の温度測定装置を構成することができる。すなわち、この温度測定装置は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを測定する光強度測定部と、データベースと、前記再現被加熱体に基づいて前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める温度出力部と、を有する温度測定装置であって、前記データベースは、測定対象を選択するためのデータを入力する入力部と、前記入力部に入力可能な対象に関する所定の初期値及びその初期値のなかの特定の初期値を変化させた補正値に基づいて予め計算された光強度特性に関するデータ群と、該データ群に対応する温度分布特性を有する再現被加熱体に関するデータ群と、を蓄積した記録部と、前記光強度特性及び前記再現被加熱体に関するデータ群の中から被加熱体より取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Z及びその光強度特性Zに対応する再現被加熱体を検索する検索部と、を有する温度測定装置である。
【0024】
また、本発明に係る温度測定装置は以下のような構成にしてもよい。すなわち、任意の部位の温度と屈折率とが一義的な相関関係を有する被加熱体に、所定のレーザ光を照射して得られる、干渉波の光強度と時間との関係を示す第1の光強度特性を求める被加熱体光強度特性取得部と、前記被加熱体と同等な形状と熱的特性と光学的特性とを備える第1の仮想被加熱体において、該仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める仮想被加熱体温度特性取得部と、前記仮想被加熱体における、前記温度分布特性に対応する屈折率特性を求める仮想被加熱体屈折率特性取得部と、前記仮想被加熱体と同等な屈折率特性を有する第2の仮想被加熱体に前記レーザ光を照射して得られる、干渉波の光強度と時間の関係を示す第2の光強度特性を取得する仮想加熱体光強度特性取得部と、前記第1の光強度特性と、前記第2の光強度特性とを用いて、第1の光強度特性に最も一致した第3の光強度特性を有する再現被加熱体を特定する再現被加熱体特定部と、前記再現被加熱体における、温度分布特性に基づき、前記被加熱体の特定部位における温度を求める被加熱体温度取得部で構成してもよい。
【0025】
さらに、本発明に係る温度測定装置は、前記再現被加熱体特定部において、前記第1の光強度特性から求められる波形の振動数と、前記第2の光強度特性から求められる波形の振動数との差を最小にするように前記第2の仮想加熱体の光学厚み特性を調整することで、前記第3の光強度特性求めてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る温度測定方法又は装置は、高パワー密度の加熱源により基板の表面から急速加熱を行って熱処理を行うときの基板内の所定位置の温度を容易にかつ正確に測定することができる。また、本発明に係る熱処理装置は簡単な構造で、コンパクトであり、また、所用の基板内の微細な部分の温度を測定しその温度を基に熱処理条件を制御することにより高い処理温度安定性をもって基板の熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る温度測定装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1の温度測定装置を付設した熱処理装置の概要を示すレイアウト図である。
【図3】被加熱体に照射されるレーザ光の多重反射状態を示す説明図である。
【図4】被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xのグラフである。
【図5】図4に示す光強度特性Xと仮想被加熱体について得られた光強度特性Yを重ねて表示したグラフである。
【図6】仮想被加熱体の光学厚み特性Yを示すグラフである。
【図7】仮想被加熱体及び再現被加熱体について得られた光学厚み特性Y、Y、Zと、図4に示す光強度特性Xから抽出された光学厚み特性をプロットしたグラフである。
【図8】図4に示す光強度特性Xと再現被加熱体について得られた光強度特性Zを重ねて表示したグラフである。
【図9】仮想被加熱体及び再現被加熱体の温度分布特性を示すグラフである。
【図10】再現被加熱体の熱処理開始後5msにおける温度分布特性を示すグラフである。
【図11】再現被加熱体の熱処理開始後5msにおける屈折率分布特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
10 被加熱体
20 レーザ光
22 反射レーザ光
50 プラズマジェット発生装置
51 プラズマジェット
100 光強度測定部
105 レーザ光源
106 光路分岐素子
107 レーザ集光レンズ
108 光強度測定機
109 フィルタ
200 演算部
210 データ入力部
220 熱伝導解析部
230 変換部
240 光学解析部
250 判定部
270 再現被加熱体出力部
300 温度出力部
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る温度測定装置の実施の形態を以下に説明する。本温度測定装置は、図1に示すように、光強度測定部100、演算部200及び温度出力部300を有している。光強度測定部100は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光又は透過光の光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを測定する機能、すなわち被加熱体光強度特性取得部としての機能を有する。演算部200は、被加熱体と同等の形状、熱的及び光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与え、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき該仮想被加熱体から得られる光強度特性が前記光強度特性Xに最も一致する光強度特性Zを有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める再現被加熱体取得のための機能を有する。温度出力部300は、再現被加熱体に基づいて前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める機能を有する。なお、本発明おいて各種特性を示す場合、記号X、Y又はZは、それぞれ被加熱体、仮想被加熱体又は再現被加熱体に関する特性であることを示す。
【0030】
光強度測定部100は、例えば図2に示す測定装置から構成される。この実施例は、被加熱体10をプラズマ発生装置50のプラズマジェット51により加熱して熱処理を行う熱処理装置に上記温度測定装置を利用した場合の実施例であるが、光強度測定部100は、レーザ光源105、光路分岐素子106、レーザ集光レンズ107、フィルタ109及び光強度測定機108から構成されている。
【0031】
この熱処理装置により被加熱体10の熱処理を行う場合、レーザ光20がレーザ光源105から光路分岐素子106及びレーザ集光レンズ107を通して被加熱体10の裏面に照射されると、照射されたレーザ光20は、図3に示すように被加熱体10の表裏面で多重反射し、それらの干渉したレーザ光22が光路分岐素子106、フィルタ109を介して光強度測定機108に入射される。光強度測定機108により、図4に示すような光強度と時間との関係を示す光強度特性Xが測定され、記録される。
【0032】
なお、図4は、厚さ525μmの石英基板を投入電力1.67kW、走査速度700m/sのプラズマジェットで熱処理を行っている際に、石英基板の裏面から出力10mW、波長633nmのHe-Neレーザ光を垂直照射し、その石英基板の表裏面で反射された反射レーザ光(レーザ光22)の光量を測定して求めたものである。図4の横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は反射レーザ光22と入射レーザ光20との光量比から求めた反射率(相対的光強度)を示す。この場合、石英基板の表面側へ透過する透過光の光量から求めた透過率を使用することもできるが、装置の構成・操作性を考慮すると反射率を使用する方が実用上好ましい。
【0033】
図4に示すように、反射率は熱処理の経過時間に従って増減を繰り返しており、光強度特性Xは振動波形を示している。本発明はこのような光強度特性Xを利用して被加熱体の温度分布、温度の変化状態を測定する。したがって、本発明においては、被加熱体10は温度と屈折率が一義的な相関関係を有するものであれば足りるが、入射光と多重反射レーザ光が干渉し、その干渉波が振動波形を生ずる程度に干渉可能なものでなければならない。このため、被加熱体10は、ほぼ平行な2つ以上の反射面を有するのが望ましく、平行度のずれは5°以内であるのがよい。また、被加熱体は50%以上のレーザ透過率を有するものがよい。この場合は、被加熱体の裏面と表面から反射する反射レーザ光の入射光に対する強度比が1/4以上を確保できるから、振幅が十分大きな反射率の時間変化曲線データを得ることができる。
【0034】
また、被加熱体10の形状に関し、被加熱体10の面積はその厚さに比較して十分大きいのがよい。これは、厚み方向に対して平面方向の熱拡散長が長くなり、加熱している間の蓄熱効果の影響が小さくなるので比較的高い精度で温度測定ができるという利点がある。また、同様の理由で被加熱体の厚みは、熱処理層の厚みに対し十分大きいのがよい。
【0035】
本光強度測定部100に用いるレーザ光20は、干渉性を有するものであれば特に限定されない。例えば、出力10mW、波長633nmのHe-Neレーザ光、出力50mW、波長532nmのYAG高調波レーザ光を使用することができる。測定温度誤差を小さくするためには、照射レーザスポットが被加熱体10の平面方向温度分布より十分小さくする必要があるため、レンズ等で絞ることが望ましい。ただし、被加熱体厚みdに対してレンズの焦点距離fがf<2dとなるようなレンズを使用すると、被加熱体裏面からの反射光強度が表面からの反射光強度に比して極端に弱くなり、反射光の干渉振幅が小さくなるという問題が発生する。よって、レンズはf>2dなる焦点距離のものを使用するのが望ましい。
【0036】
被加熱体10を加熱する加熱源は特に限定されない。本温度測定装置は、基板等の熱処理をどのような加熱源を使用して行う場合にも使用することができる。しかしながら、本温度測定装置は、プラズマジェット、レーザあるいはXeフラッシュランプやハロゲンランプ等の高パワー密度の加熱源によりSiO2基板、Si製の基板等をミリ秒単位で急速に加熱して熱処理を行うときの温度測定に使用するのがよい。本温度測定装置により、従来は困難であったミリ秒単位で急速に変化する温度を容易に測定することができるからである。
【0037】
本温度測定装置における演算部200は、上述の再現被加熱体取得のための機能を実現させる構成として、以下のような構成とすることができる。すなわち、演算部200は、図1に示すように、データ入力部210、熱伝導解析部220、変換部230、光学解析部240、判定部250、再現被加熱体出力部260を有するものとすることができる。
【0038】
データ入力部210は、演算のための初期値やそれらの補正値等、所定の入力データを入力するための機能を有する。初期値として、被加熱体に関する厚さ、面積、平行度等の形状的条件と、初期温度、初期反射率、熱伝導度、密度、比熱、屈折率の温度依存性等の熱的及び光学的条件と、加熱源に関する種類、投入パワー、投入パワーの時間プロフィル、パワー伝達効率、仮想被加熱体が投入されるパワーを有効に受ける領域の大きさ等の条件が入力される。
【0039】
熱伝導解析部220は、入力データに基づき仮想被加熱体の温度分布特性を求めるための機能、すなわち仮想被加熱体温度特性取得部としての機能を有する。熱伝導解析部220は公知の熱伝導解析手法を応用したプログラム又はソフトを主体として構成することができる。
【0040】
変換部230は、熱伝導解析部220により求められた温度分布特性を対応する屈折率分布特性に変換する機能、すなわち仮想被加熱体屈折率特性取得部としての機能を有する。仮想被加熱体は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有しており、仮想被加熱体に生じた温度分布、温度の時間変化は一義的に屈折率分布、屈折率の時間変化に変換することができる。例えば、温度T(℃)、レーザ光の波長が633nmにおける石英基板の場合は、その屈折率nが、n=1.457+1.2×10-5Tなる関係式で表され、Si製の基板の場合は、屈折率nが、n=4.04+2.105×10-4Tなる関係式で表されるから、このような関係式に基づいて温度分布特性を屈折率分布特性に変換することができる。
【0041】
光学解析部240は、変換部230により求められた変換された屈折率分布特性を有する仮想被加熱体の所定の光学特性を求めるための機能、すなわち上記の屈折率分布特性を有する仮想被加熱体(光学構造体)の光学特性を求めるための機能を有する。例えば、光強度特性Yを取得する光学構造体光強度特性取得部としての機能を有する。この場合、光学特性Yはレーザ光を照射する基板の厚さdとその基板の屈折率nで定義される光学厚み(n×d)に関する光学厚み特性Yとすることもできる。このような光学特性を求めるには公知の光学解析手法を応用したプログラム又はソフトを使用することができる。
【0042】
判定部250は、光強度特性Xから所定の光学特性Xを抽出し、その光学特性Xと光学解析部240により求められた光学特性Yとの差異を判別する機能を有する。例えば、対象とする光学特性が光強度特性である場合は、光強度測定部100で求められた光強度特性Xと、光学解析部240で求められた光強度特性Yの差異を判別する。対象とする光学特性が光学厚み特性である場合は、光強度測定部100で求められた光強度特性Xから光学厚み特性を抽出した光学厚み特性Xと、光学解析部240で求められた光学厚み特性Yとの差異を判別する。
【0043】
具体的に説明すると、光強度特性Xと光強度特性Yの差異を判別するには、それらの特性を示す波形が振動していることを利用する。例えば、図5に示すように、実際に光強度測定部100により得られた実線で示す光強度特性Xの波形と、初期値を使用して光学解析部240により求められた破線で示す光強度特性Yの波形は、通常はその振動数と位相が異なっている。これらの点に着目して光強度特性Xと光強度特性Yとの差異を判別する。
【0044】
すなわち、判定部250にパターン・マッチング法、特徴点法又は周波数解析法を利用したパターン認識部を設け、光強度特性Xと光強度特性Yとの振動数及び位相の差異を抽出し、パターン認識部により解析することにより容易にその差異を判定することができる。振動数は、一般に、被加熱体の上昇温度が高いほど多く、上昇温度が低いほど少ない。なお、図5において横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は反射率を示す。
【0045】
このような光強度特性を利用する手法に対し、光学厚み特性を利用する場合は、以下のようにして光学厚み特性Xと光学厚み特性Yとの差異を判別する。すなわち、光学解析部240により図6の実線で示すような光学厚み特性Yが得られる。図6において横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は光学厚みを示す。
【0046】
一方、図4に示す光強度特性Xに着目すると、振動波形の山の頂点と次の谷の最下点、あるいは谷の最下点と次の山の頂点は、光学構造体の光学厚みが(1/4)λ(λはレーザ光の波長)変化したときを示す。この光学厚みがλ/4ずつ変化する時間を図4に示す光強度特性Xを示す波形から抽出し、図6にプロットすると、図6の丸印で示すようになる。図6においてa~gは、図4において光強度特性Xを示す波形が山の頂点又は谷の最下点を示すときである。
【0047】
図6から分かるように、光学厚み特性Xと光学厚み特性Yとの差異は、a~gの時間における両者の光学厚みを比較することによって容易になされる。例えば、a~gにおける両者の光学厚みの平均二乗誤差の差異を求めることによって判別することができる。
【0048】
このような判定部250による光学特性の差異の判別は、その差異が最小になるまで繰り返される。すなわち、判定部250は、光学特性XとYとの差異を判別し、その差異が最小になるまで補正された初期値をデータ入力部に再入力して光学特性XとYとの差異が最も小さい、すなわち光学特性Xに最も一致する光学特性Zを求める。そして、再現被加熱体出力部260により、そのようにして得られた光学特性Zを有する光学構造体に対応する光強度特性Z及び温度分布特性を有する仮想被加熱体を求め、そのような特性を有する仮想被加熱体が再現被加熱体として温度出力部300に出力される。この再現被加熱体は、被加熱体の温度分布及び温度の時間変化に最も近似した温度分布及び温度の時間変化をその内部に再現させたものである。
【0049】
温度出力部300は、このような再現被加熱体に基づき、被加熱体の所定の位置及び時間(熱処理開始後の時間)における温度を求め、被加熱体の測定温度として出力する。
【0050】
以上本発明に係る温度測定装置について説明した。本温度測定装置は、以下の温度測定方法を好適に実施することができる。すなわち、本発明に係る温度測定方法は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光を照射し、その入射光と反射光との干渉から得られる光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求める段階と、まず、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求め、該温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるとともに、そのような屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求めて該光強度特性Yと前記光強度特性Xとの差異を判別し、つぎに、前記仮想被加熱体に与える熱負荷条件のうちの所定の条件を補正して補正された光強度特性を求め、前記光強度特性Xと最も差異の小さい補正された光強度特性Z及びそのような光強度特性Zに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求める段階と、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求める段階と、を有する。
【0051】
この温度測定方法において、光強度特性Xと最も差異の小さい補正された光強度特性Z、すなわち光強度特性Xに最も一致する光強度特性Zを求めるために補正する熱負荷条件は、上述の初期値のうちパワー伝達効率又は/及び仮想被加熱体が投入されるパワーを有効に受ける領域(受熱域)の大きさとするのがよい。例えば、パワー伝達効率εをε+Δε、受熱域の大きさとしてプラズマジェットの幅WをW+ΔWとして入力し、再計算をさせる。これにより効果的に光強度特性XとYとの差異を小さくすることができる。
【0052】
このような温度測定方法は、以下のプログラムにより好適に実施することができる。すなわち、本発明に係る温度測定プログラムは、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、その入射光と反射光との干渉から得られる光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を有する。
【0053】
また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することができる。すなわち、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、その入射光と反射光との干渉から得られる光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる干渉波の光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を記録したものである。
【0054】
また、以下のような温度測定をするLSIを構成することができる。すなわち、本発明に係る温度測定をするLSIは、温度と屈折率が一義的な相関関係を有する被加熱体にレーザ光が照射されたとき、その入射光と反射光との干渉から得られる光強度と時間との関係を示す光強度特性Xを求めるプログラムと、前記被加熱体と同等の形状、熱的、光学的特性を有する仮想被加熱体に前記被加熱体が加熱された条件と同等の熱負荷を与えたときの温度分布特性を求める熱伝導解析プログラムと、前記温度分布特性に対応する屈折率分布特性を求めるプログラムと、屈折率分布特性を有する仮想被加熱体に、前記レーザ光と同等の特性を有するレーザ光を照射したとき得られる光強度特性Yを求める光学解析プログラムと、前記光強度特性Xと前記光強度特性Yとの差異を判別し、その差異が最小になるまで熱負荷条件のうちの所定の条件を補正しつつ該光強度特性Xと最も差異の小さい光強度特性Zを求めるプログラムと、前記光強度特性Zを有し、これに対応する温度分布特性を有する仮想被加熱体を再現被加熱体として求めるプログラムと、前記再現被加熱体の温度分布特性に基づき前記被加熱体の所定部位の所定時間における温度を求めるプログラムと、を実施して温度測定をするLSIである。
【0055】
以上本発明に係る温度測定装置及び温度測定方法について説明した。これらの温度測定装置の構成又は温度測定方法の実施において、以下に説明するデータベースを設けるのがよい。これにより、被加熱体の光強度特性取得からその所定部位の所定時間における温度を求めるまでの時間を一層短縮することができ、温度測定の高速化を図ることができる。
【0056】
すなわち、本データベースは、測定対象を選択するためのデータを入力する入力部と、前記入力部に入力可能な対象に関する所定の初期値及びその初期値のなかの特定の初期値を変化させた補正値に基づいて予め計算された光強度特性に関するデータ群と、該データ群に対応する温度分布特性を有する再現被加熱体に関するデータ群と、を蓄積した記録部と、前記光強度特性及び前記再現被加熱体に関するデータ群の中から被加熱体より取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Z及びその光強度特性Zに対応する再現被加熱体を検索する検索部と、を有する。
【0057】
上記データベースにおいて、所定の初期値とは、被加熱体に関する被加熱体の形状、初期温度、初期反射率、熱伝導率、密度、比熱及び屈折率の温度依存性に関するデータ等と、加熱源に関する加熱源の種類、投入パワー、投入パワーの時間プロフィル、パワー伝達効率及び受熱域の大きさに関するデータ等と、温度測定に用いるレーザに関する出力及び波長に関するデータ等である。特定の初期値とは、パワー伝達効率又は/及びプラズマジェットの幅に関するデータである。また、測定対象を選択するためのデータとは、具体的には、「石英基板」とか「Si製の基板」であり、あるいは「石英基板及びプラズマジェット走査速度」である。測定対象を選択するためのデータの内容は、生産現場の必要性に応じて決められ、その測定対象を選択するためのデータの大きさに応じてデータベースの大きさが決められる。
【0058】
このようなベータベースを設けた温度測定装置は、上述した温度測定装置の演算部200をこのベータベースで置き換えた構成にすることができる。この温度測定装置により、以下のように温度測定がなされる。すなわち、被加熱体が急速加熱され、光強度特性Xに関するデータが光強度測定部100から取得され始めると、検索部はデータ部から取得される光強度特性Xに最も一致した光強度特性Zを検索する。そして、この光強度特性Zに対応する温度分布特性を有する再現被加熱体が検索される。この再現被加熱体に関する出力は、ほとんどタイムラグがなく出力されるので、本温度測定装置により、被加熱体の加熱後の瞬間瞬間における温度を測定することができ、また、被加熱体の任意の位置における温度の変化状態を測定することができる。また、このようなベータベースを設けることにより、コンパクト、簡単な構造の温度測定装置を構成することができる。
【0059】
以上説明したように本温度測定装置は、半導体基板等を高パワー密度の加熱源で熱処理を行うようなミリ秒単位で急速に温度変化する基板表面や内部の温度を正確に測定することができる。このため、本温度測定装置を熱処理装置に付設することによって品質の高い熱処理を行うことができる。また、本温度測定装置からの信号によりプラズマジェット発生装置の出力を制御する制御装置を設けた熱処理装置によれば、さらに高品質の熱処理を行うことができる。また、そのような熱処理装置に、プラズマジェット発生装置のプラズマジェットと半導体基板等とを相対的に移動させる駆動装置を設けることができる。
【実施例1】
【0060】
図2に示す温度測定装置を用いて、厚さ525μmの石英基板をプラズマジェットで熱処理するときの石英基板の温度測定試験を行った。プラズマジェットの投入電力は1.67kW、走査速度は700m/sであった。熱処理を行っている際に、この石英基板の裏面から出力10mW、波長633nmのHe-Neレーザ光を垂直照射し、被加熱体内部において多重反射されるレーザ光の干渉の結果生じる反射光の光強度と時間との関係を示す光強度特性を測定した。再現被加熱体の取得は上述の光学厚み特性を利用する方法を用いた。
【0061】
試験結果を図7~11に示す。図7は、光学厚み特性を示すグラフであり、上述の光学厚み特性を利用して再現被加熱体を求める場合の実施例を示す。図7の横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は光学厚みを示す。図8は光強度特性を示すグラフであり、横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は反射率を示す。図9は石英基板の表面温度を示すグラフであり、横軸は熱処理開始後の時間を示し、縦軸は表面温度を示す。図10は、再現被加熱体の熱処理開始後5msにおける温度分布特性を示すグラフであり、横軸は再現被加熱体の位置を示し、縦軸は再現被加熱体の表面からの深さ位置を示す。図中の数字は温度を示し、矢印はプラズマジェットの照射位置を示す。なお、プラズマジェットは図の左から右の方に走査されている。図11は、図10に示す各温度を石英基板の温度と屈折率の関係式、n=1.457+1.2×10-5Tに基づいて屈折率に変換した場合の光学構造体(再現被加熱体)の屈折率分布特性を示すグラフである。図11の横軸は再現被加熱体の位置を示し、縦軸は再現被加熱体の表面からの深さ位置を示す。図中の数値は屈折率を示し、矢印はプラズマジェットの照射位置を示す。
【0062】
図7から9において、記号Xは被加熱体、すなわち石英基板に関する特性を示す。記号Y(Y1、Y2)は仮想被加熱体に関する特性を示し、記号Zは再現被加熱体に関する特性を示す。また、図7に示す丸印は、図8の被加熱体に関する光強度特性Xから抽出される光学厚み特性(波形の山の頂点と谷の最下点を示す時間とそのときの光学厚み)をそれぞれプロットしたものである。
【0063】
図7において、光学厚み特性Y1曲線はパワー伝達効率を定格値の45%として求めたものである。図7に示すように、丸印は光学厚み特性Y1曲線より上部にある。このため、パワー伝達効率を定格値の90%として再入力・再計算して光学厚み特性Y曲線が得られた。しかし、求められた光学厚み特性Y曲線は丸印の上部にあるので、パワー伝達効率を定格値の64.5%として再入力・再計算して求められたのが、光学厚み特性Zである。
【0064】
図7によると、2番目から6番目の丸印について、それぞれ隣り合う丸印間の光学厚み差が等しい(λ/4)ことがわかる。これは、図8において、光強度特性Xが明瞭な山又は谷波形を示すことと関係している。また、図7によると、図8の光強度特性Xから抽出した丸印が、再現被加熱体に関する光学厚み特性Z曲線上によく一致していることも分かる。
【0065】
図8によると、被加熱体に関する光強度特性Xと、再現被加熱体に関する光強度特性Zの波形(振動数、位相)がよく一致していることが分かる。図9に示された温度分布特性によると、再現被加熱体(石英基板)の表面の温度は5ms後に1300°Kに達していることが分かる。また、図10によると、温度分布はプラズマジェットの照射部を中心にして年輪状の形状をしていることが分かる。そして、表面から20μmを超える深さまで1000K以上の温度になっており、本例の条件において石英基板は充分に熱処理されることが分かる。実際に石英基板の組織を光学顕微鏡で観察すると、充分に熱処理がされていることが分かった。図10と図11を比較すると、石英基板の温度と屈折率の関係が直線的比例関係を有することから分かるように、温度分布形状と屈折率分布形状は相似形(同等)になっていることが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10