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明細書 :有機ホウ素π電子系化合物及びその合成中間体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4273236号 (P4273236)
登録日 平成21年3月13日(2009.3.13)
発行日 平成21年6月3日(2009.6.3)
発明の名称または考案の名称 有機ホウ素π電子系化合物及びその合成中間体
国際特許分類 C07F   5/02        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C07F 5/02 CSPA
C09K 11/06 660
H05B 33/14 B
H05B 33/22 B
H05B 33/22 D
請求項の数または発明の数 8
全頁数 37
出願番号 特願2007-551037 (P2007-551037)
出願日 平成18年12月7日(2006.12.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 掲載者名 社団法人日本化学会 掲載年月日 平成18年2月20日 掲載アドレス http://www.chemistry.or.jp/nenkai/86haru/prog-86.pdfに掲載
特許法第30条第1項適用 研究集会名 平成17年度名古屋大学理学部化学科卒業論文発表会 主催者名 国立大学法人名古屋大学 発表日 平成18年3月6日において発表
特許法第30条第1項適用 発行社名 社団法人日本化学会 刊行物名 日本化学会第86春季年会(2006)講演予稿集II 発行年月日 平成18年3月13日に掲載
国際出願番号 PCT/JP2006/324467
国際公開番号 WO2007/072691
国際公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
優先権出願番号 2005362944
2006052613
2006224646
優先日 平成17年12月16日(2005.12.16)
平成18年2月28日(2006.2.28)
平成18年8月21日(2006.8.21)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年6月30日(2008.6.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】山口 茂弘
【氏名】若宮 淳志
【氏名】森 憲二
【氏名】チョウ ツイファ
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】本堂 裕司
参考文献・文献 特開2003-031368(JP,A)
特開2003-234192(JP,A)
調査した分野 C07F 5/02
C09K 11/06
H01L 51/50
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
つのホウ素置換基がベンゼンのパラ位に導入された、下記式(1)で表される有機ホウ素π電子系化合物。
【化1】
JP0004273236B2_000035t.gif
(但し、Ar1は、ベンゼンであり、
1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立にフェニル基、メシチル基、2,6-キシリル基、オルトトリル基、2,4,6-トリイソプロピル基、2,4,6-トリイソプロピル基、2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジアルキルフェニル基、2,4,6-トリアルキルフェニル基、2,6-ジアリールフェニル基、2,4,6-トリアリールフェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基からなる群より選ばれた1種であり、
π1は、2価基であるジエチニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ベンゼン、チオフェン、ピロール、フラン、ピリジン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、α,ω-ジエチニルオリゴアリール基、α,ω-ジエチニルオリゴヘテロアリール基、α,ω-ジビニルオリゴアリール基、α,ω-ジビニルオリゴヘテロアリール基からなる群より選ばれた1種であり、
π2及びπ3は、それぞれ独立に1価基であるフェニルアセチレン、スチリル、ヘテロアリールアセチレン、ヘテロアリールビニル基、フェニル基、チエニル、ピロリル、フリル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、オリゴアリールエチニル基、オリゴアリールビニル基からなる群より選ばれた1種であり、
π1及びπ2は、Ar1にパラ位に導入され、
nは、0~400の値である)
【請求項2】
下記式(2)で表される、請求項1に記載の有機ホウ素π電子系化合物。
【化2】
JP0004273236B2_000036t.gif

【請求項3】
下記式(3)で表される、請求項1に記載の有機ホウ素π電子系化合物。
【化3】
JP0004273236B2_000037t.gif

【請求項4】
nが0又は1である、請求項1~3のいずれかに記載の有機ホウ素π電子系化合物。
【請求項5】
発光性材料として用いられる、請求項1~4のいずれかに記載の有機ホウ素π電子系化合物。
【請求項6】
つのホウ素置換基がベンゼンのパラ位に導入された、下記式(4)で表される、有機ホウ素π電子系化合物の合成中間体。
【化4】
JP0004273236B2_000038t.gif
(但し、Ar2は、ベンゼンであり、
5,R6,R7及びR8は、それぞれ独立にフェニル基、メシチル基、2,6-キシリル基、オルトトリル基、2,4,6-トリイソプロピル基、2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジアルキルフェニル基、2,4,6-トリアルキルフェニル基、2,6-ジアリールフェニル基、2,4,6-トリアリールフェニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基からなる群より選ばれた1種であり、
9及びR10は、それぞれ独立にエチニル基、トリアルキルシリルエチニル基、アルキルジアリールシリルエチニル基、ジアルキルアリールシリルエチニル基、トリアリールシリルエチニル基、トリアルキルスタンニルエチニル基、アルキルジアリールスタンニルエチニル基、ジアルキルアリールスタンニルエチニル基、トリアリールスタンニルエチニル基、アリールエチニル基、オリゴアリールエチニル基、1価の複素環エチニル基、1価のオリゴ複素環エチニル基、アリールビニル基、オリゴアリールビニル基、1価の複素環ビニル基、1価のオリゴ複素環ビニル基、アリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、メタル化ビニル基,メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アリールエチニル基、ハロゲン化アリールビニル基、ハロゲン化オリゴアリール基、ハロゲン化オリゴアリールエチニル基、ハロゲン化オリゴアリールビニル基、1価のハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化複素環エチニル基、1価のハロゲン化複素環ビニル基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環エチニル基、1価のハロゲン化オリゴ複素環ビニル基からなる群より選ばれた1種である)
【請求項7】
記式(5)で表される、請求項6に記載の有機ホウ素π電子系化合物の合成中間体。
【化5】
JP0004273236B2_000039t.gif
(但し、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、トリアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、トリアルキルスタンニル基、アルキルジアリールスタンニル基、ジアルキルアリールスタンニル基、トリアリールスタンニル基、メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、アリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化オリゴアリール基、1価のハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種である)
【請求項8】
記式(6)で表される、請求項6に記載の有機ホウ素π電子系化合物の合成中間体。
【化6】
JP0004273236B2_000040t.gif
(但し、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子、トリアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、トリアルキルスタンニル基、アルキルジアリールスタンニル基、ジアルキルアリールスタンニル基、トリアリールスタンニル基、メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、アリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化オリゴアリール基、1価のハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種である)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機ホウ素π電子系化合物及びその合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電界発光素子(以下、有機ELという)や有機レーザなどの有機エレクトロニクス分野が脚光を浴びており、優れた発光性材料を開発しようとする試みがなされている。この有機発光性材料の特性としては、高い量子収率で発光することが求められるが、そのためには高平面性のπ電子系骨格の構築が有効であることが広く知られている。この観点から、アントラセンやペリレンなどの縮合多環系や、スチルベン骨格、オリゴフェニレン骨格などを主鎖にもつπ電子系化合物が報告されている(例えば、特開2005-170857号公報、特開2005-281185号公報参照)。一方、π電子系骨格中又はπ電子系骨格の末端基にホウ素を導入し、π電子系骨格とホウ素との軌道相互作用によってその電子構造を修飾することにより、良好な電子輸送性を有する有機化合物が提案されている。このような有機化合物の一つとして、例えば、特開2001-196183号公報には、電子輸送性材料として5,5’-ビス(ジメシチルボリル)-2,2’-ビチオフェンを用いた場合に高い発光輝度と高い発光効率とを示すことが報告されている。

【発明の開示】
【0003】
しかしながら、上述したπ電子系化合物は、一般に、高平面性のπ電子骨格を有するため、溶液状態においては濃度が濃くなるほど分子間相互作用が強く働くことによって消光が起こり、特に固体状態に至ってはこの強い分子間相互作用により消光の度合いが大きくなってしまう。このため、固体状態では量子効率が著しく低下する傾向にあり、固体状態で高い量子収率を有する発光性材料は極めて限られているのが現状である。このようなことから、固体状態において高い量子収率で発光する新規な発光性材料の開発が望まれていた。
【0004】
また、特開2001-196183号公報の電子輸送性材料では、π電子骨格の両末端に嵩高いホウ素置換基が導入されているため、分子間相互作用が起こりにくいとも考えられる。しかしながら、特開2001-196183号公報の電子輸送性材料について本発明者らが量子収率を調べたところ、固体状態における量子収率は低く、発光性材料として十分な特性を有するとは言い難かった。このように、発光性材料として真に優れた特性を持つものは依然限られているのが現状であり、固体状態において高い量子収率で発光する新規な発光性材料の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、新規な有機ホウ素π電子系化合物を提供することを目的の一つとする。また、π共役骨格に対してホウ素置換基を側鎖として導入した新規な有機ホウ素π電子系化合物を提供することを目的の一つとする。更に、そのような有機ホウ素π電子系化合物の合成中間体を提供することを目的の一つとする。
【0006】
本発明者らは、この固体状態での消光を抑制するために、ホウ素置換基を側鎖として用いることによってπ電子系骨格に非平面性を導入することに着目した。また、ホウ素置換基を側鎖として用いればπ共役様式が変化し、遷移モーメント,発光波長に摂動を加えることできると考えた。そこで、これを新たな分子設計のコンセプトとし、π電子系骨格に対しホウ素置換基を側鎖として用いることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、ベンゼン又は置換ベンゼンに2つのホウ素置換基がパラ位に導入された、下記式(1)で表される化合物である。ここで、ホウ素置換基とは、式(1)中、-BR及び-BRを表す。また、ここでいう「パラ位」とは、ベンゼン環又は置換ベンゼン環上の2つの置換基の相対位置が1,4位にあることを示す。この有機ホウ素π電子系化合物は、側鎖として用いたホウ素置換基のR,R,R及びRがπ電子系骨格に対し立体障害を及ぼすことによりπ電子系骨格にねじれが生じる。これにより、π電子系骨格が非平面性を有することになり、固体状態での分子間相互作用の度合いを制御することができると推察される。また、ホウ素置換基を側鎖として用いるため、主鎖方向とは異なる方向にもπ電子系を広げることができる。これにより、発光性材料として良好な発色を示す。したがって、これらの有機ホウ素π電子系化合物は、発光性材料(有機EL素子の発光層や有機レーザなど)として適している。
JP0004273236B2_000002t.gif
【0008】
上記式(1)で、Arは、ベンゼン又は置換ベンゼンであり、R,R,R及びRは、それぞれ独立にフェニル基、置換フェニル基、メシチル基、置換メシチル基、2,6-キシリル基、置換2,6-キシリル基、オルトトリル基、置換オルトトリル基、2,4,6-トリイソプロピル基、置換2,4,6-トリイソプロピル基、2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、置換2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、置換2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジアルキルフェニル基、置換2,6-ジアルキルフェニル基、2,4,6-トリアルキルフェニル基、置換2,4,6-トリアルキルフェニル基、2,6-ジアリールフェニル基、置換2,6-ジアリールフェニル基、2,4,6-トリアリールフェニル基、置換2,4,6-トリアリールフェニル基、チエニル基、置換チエニル基、フリル基、置換フリル基、ピロリル基、置換ピロリル基、ピリジル基、置換ピリジル基、ナフチル基、置換ナフチル基、アントリル基、置換アントリル基、フェナントリル基、置換フェナントリル基、ピレニル基、及び置換ピレニル基からなる群より選ばれた1種であり、πは、2価基であるジエチニルベンゼン、置換ジエチニルベンゼン、ジビニルベンゼン、置換ジビニルベンゼン、ベンゼン、置換ベンゼン、チオフェン、置換チオフェン、ピロール、置換ピロール、フラン、置換フラン、ピリジン、置換ピリジン、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、フェナントレン、置換フェナントレン、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、置換オリゴヘテロアリール基、α,ω-ジエチニルオリゴアリール基、α,ω-ジエチニルオリゴヘテロアリール基、α,ω-ジビニルオリゴアリール基、α,ω-ジビニルオリゴヘテロアリール基からなる群より選ばれた1種であり、π及びπは、それぞれ独立に1価基であるフェニルアセチレン、置換フェニルアセチレン、スチリル、置換スチリル、ヘテロアリールアセチレン、置換ヘテロアリールアセチレン、ヘテロアリールビニル基、置換ヘテロアリールビニル基、フェニル基、置換フェニル基、チエニル、置換チエニル、ピロリル、置換ピロリル、フリル基、置換フリル基、ピリジル基、置換ピリジル基、ナフチル基、置換ナフチル、アントリル基、置換アントリル基、フェナントリル基、置換フェナントリル基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、置換オリゴヘテロアリール基、オリゴアリールエチニル基、置換オリゴヘテロアリールエチニル基、オリゴアリールビニル基、置換オリゴヘテロアリールビニル基からなる群より選ばれた1種であり、π及びπは、Arにパラ位に導入され、nは、0~400の値である。このうち、R,R,R及びRは、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル(Mes)基)、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル基などのような嵩高い基が好ましく、特にメシチル基が好ましい。これは、メシチル基によってホウ素上を立体保護すると共にπ電子系骨格に立体障害をもたらし、その立体構造を強固に固定するからである。また、上記式(1)において、nを0又は1としてもよい。
【0009】
本発明の別の有機ホウ素π電子系化合物は、下記式(7)で表されるものである。
JP0004273236B2_000003t.gif
【0010】
(式(7)中、R及びRは、それぞれ独立に、フェニル基,オルトアルキルフェニル基,置換オルトアルキルフェニル基,2,6-ジアルキルフェニル基,置換2,6-ジアルキルフェニル基,2,4,6-トリアルキルフェニル基,置換2,4,6-トリアルキルフェニル基,2,6-ジアリールフェニル基,置換2,6-ジアリールフェニル基,2,4,6-トリアリールフェニル基,置換2,4,6-トリアリールフェニル基,チエニル基,置換チエニル基,フリル基,置換フリル基,ピロリル基,置換ピロリル基,ピリジル基,置換ピリジル基,ナフチル基,置換ナフチル基,アントリル基,置換アントリル基,フェナントリル基,置換フェナントリル基,ピレニル基及び置換ピレニル基からなる群より選ばれた1種であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16の分岐アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、置換シリル基、ホスフィノ基、置換ホスフィノ基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ボリル基、置換ボリル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、置換アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基、1価の置換オリゴ複素環基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、置換シリル基、スタンニル基、置換スタンニル基、ボリル基、置換ボリル基、ホスフィノ基、置換ホスフィノ基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種であり、
lは1~20の値であり、mは0~20の値であり、nは1~100の値である。)


【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】化合物(4a)のX線結晶解析結果の説明図である。
【図2】化合物(4b)のX線結晶解析結果の説明図である。
【図3】化合物(11)のX線結晶解析結果の説明図である。
【図4】化合物(22)のX線結晶解析結果の説明図である。
【図5】化合物(22)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図6】化合物(23)の蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図7】化合物(22)及び(26)のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を表すグラフである。
【図8】化合物(24)の蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図9】化合物(29)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図10】化合物(30)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図11】化合物(31)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを表すグラフである。
【図12】化合物(32)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを表すグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、ベンゼン又は置換ベンゼンに2つのホウ素置換基がパラ位に導入された、上記式(1)で表される化合物である。また、上記式(1)で表される本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、その具体例は、下記式(2)又は(3)で表される。この有機ホウ素π電子系化合物ではアセチレン結合又はエチレン結合が導入されているため、これらの結合が導入されていない有機ホウ素π電子系化合物に比べπ電子系が主鎖方向に広がりやすい。その結果、発光が可視領域で起こりやすくなることから、発光性材料として好ましい。
【0013】
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【0014】
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【0015】
次に、上記式(1)で表される本発明の有機ホウ素π電子系化合物の合成ルートについて説明する。上記式(1)の化合物は、例えば下記式(4)の合成中間体を利用して製造することができる。この式(4)の合成中間体を合成するルートの一例としては、有機金属試薬を用いてArの2,5位に導入された塩素、臭素又はヨウ素を金属に置換したあとジメシチルフッ化ホウ素などのハロゲン化ホウ素化合物を反応させることによりArにホウ素置換基の導入を行う、というルートが考えられる。このような有機金属試薬としては、例えば有機リチウム(n-BuLi,sec-BuLi,tert-BuLiなど)や有機マグネシウムハライドなどを用いることができる。また、式(4)の合成中間体を利用して本発明の有機ホウ素π電子系化合物を合成するルートとしては、例えば、式(4)の化合物のうち末端がエチニル化又はメタル化されたものとジハロゲン化アリールとをパラジウム触媒を用いてカップリングさせるルート、末端がハロゲン化されたものとジエチニルアリール又はジメタル化アリールとをパラジウム触媒を用いてカップリングさせるルートなどが挙げられる。このとき、式(5)の合成中間体を用いれば式(2)の有機ホウ素π電子系化合物を合成することができ,式(6)の合成中間体を用いれば式(3)の有機ホウ素π電子系化合物を合成することができる。なお、反応溶媒、反応温度、反応時間、使用する基質や試薬のモル濃度などの反応条件は、使用する試薬等に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
JP0004273236B2_000006t.gif
【0017】
JP0004273236B2_000007t.gif
【0018】
JP0004273236B2_000008t.gif
【0019】
ここで、式(4)中、Arは、ベンゼン又は置換ベンゼンであり、R,R,R及びRは、それぞれ独立にフェニル基、置換フェニル基、メシチル基、置換メシチル基、2,6-キシリル基、置換2,6-キシリル基、オルトトリル基、置換オルトトリル基、2,4,6-トリイソプロピル基、置換2,4,6-トリイソプロピル基、2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、置換2,4,6-トリt-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、置換2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,6-ジアルキルフェニル基、置換2,6-ジアルキルフェニル基、2,4,6-トリアルキルフェニル基、置換2,4,6-トリアルキルフェニル基、2,6-ジアリールフェニル基、置換2,6-ジアリールフェニル基、2,4,6-トリアリールフェニル基、置換2,4,6-トリアリールフェニル基、チエニル基、置換チエニル基、フリル基、置換フリル基、ピロリル基、置換ピロリル基、ピリジル基、置換ピリジル基、ナフチル基、置換ナフチル基、アントリル基、置換アントリル基、フェナントリル基、置換フェナントリル基、ピレニル基、置換ピレニル基からなる群より選ばれた1種であり、R及びR10は、それぞれ独立にエチニル基、トリアルキルシリルエチニル基、アルキルジアリールシリルエチニル基、ジアルキルアリールシリルエチニル基、トリアリールシリルエチニル基、トリアルキルスタンニルエチニル基、アルキルジアリールスタンニルエチニル基、ジアルキルアリールスタンニルエチニル基、トリアリールスタンニルエチニル基、アリールエチニル基、置換アリールエチニル基、オリゴアリールエチニル基、置換オリゴアリールエチニル基、1価の複素環エチニル基、置換1価の複素環エチニル基、1価のオリゴ複素環エチニル基、1価の置換オリゴ複素環エチニル基、置換エチニル基
、アリールビニル基、置換アリールビニル基、オリゴアリールビニル基、置換オリゴアリールビニル基、1価の複素環ビニル基、置換1価の複素環ビニル基、1価のオリゴ複素環ビニル基、1価の置換オリゴ複素環ビニル基、アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基、1価の置換オリゴ複素環基,メタル化ビニル基,置換メタル化ビニル基,メタル化アリール基、置換メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、置換メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価の置換メタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、1価の置換メタル化オリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アリールエチニル基、ハロゲン化アリールビニル基、置換ハロゲン化アリール基、置換ハロゲン化アリールエチニル基、置換ハロゲン化アリールビニル基、ハロゲン化オリゴアリール基、ハロゲン化オリゴアリールエチニル基、ハロゲン化オリゴアリールビニル基、置換ハロゲン化オリゴアリール基、置換ハロゲン化オリゴアリールエチニル基、置換ハロゲン化オリゴアリールビニル基、1価のハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化複素環エチニル基、1価のハロゲン化複素環ビニル基、1価の置換ハロゲン化複素環基、1価の置換ハロゲン化複素環エチニル基、1価の置換ハロゲン化複素環ビニル基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環エチニル基、1価のハロゲン化オリゴ複素環ビニル基、1価の置換ハロゲン化オリゴ複素環基,1価の置換ハロゲン化オリゴ複素環エチニル基、及び1価の置換ハロゲン化オリゴ複素環ビニル基からなる群より選ばれた1種である。
【0020】
また、式(5)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、トリアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、トリアルキルスタンニル基、アルキルジアリールスタンニル基、ジアルキルアリールスタンニル基、トリアリールスタンニル基、メタル化アリール基、置換メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、置換メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価の置換メタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、1価の置換メタル化オリゴ複素環基,アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基、1価の置換オリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、置換ハロゲン化アリール基、ハロゲン化オリゴアリール基、置換ハロゲン化オリゴアリール基、1価のハロゲン化複素環基、1価の置換ハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基、及び1価の置換ハロゲン化オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種である。
【0021】
また、式(6)中、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子、トリアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、トリアルキルスタンニル基、アルキルジアリールスタンニル基、ジアルキルアリールスタンニル基、トリアリールスタンニル基、メタル化アリール基、置換メタル化アリール基、メタル化オリゴアリール基、置換メタル化オリゴアリール基、1価のメタル化複素環基、1価の置換メタル化複素環基、1価のメタル化オリゴ複素環基、1価の置換メタル化オリゴ複素環基,アリール基、置換アリール基、オリゴアリール基、置換オリゴアリール基、1価の複素環基、1価の置換複素環基、1価のオリゴ複素環基、1価の置換オリゴ複素環基、ハロゲン化アリール基、置換ハロゲン化アリール基、ハロゲン化オリゴアリール基、置換ハロゲン化オリゴアリール基、1価のハロゲン化複素環基、1価の置換ハロゲン化複素環基、1価のハロゲン化オリゴ複素環基、及び1価の置換ハロゲン化オリゴ複素環基からなる群より選ばれた1種である。
【0022】
本発明の別の有機ホウ素π電子系化合物は、上記式(7)で表されるものである。上記式(7)において、R及びRは、それぞれ独立に、2,4,6-トリアルキルフェニル基又は置換2,4,6-トリアルキルフェニル基であるとしてもよい。また、R及びRのうち少なくとも一方が、下記式(8)又は下記式(9)で表される基であるとしてもよい。また、R及びRは水素原子であるとしてもよい。また、l及びmは1であり、nは1又は2であるとしてもよい。また、l,m及びnはいずれも1であり、R及びRはアリール基、置換アリール基又は1価の置換複素環基としてもよい。このとき、アリール基をフェニル基、置換アリール基を置換フェニル基、置換複素環基を置換チエニル基(例えばジフェニルアミノチエニル基などのジアリールアミノチエニル基)としてもよい。
【0023】
JP0004273236B2_000009t.gif
【0024】
(式(8)中、R及びRは、それぞれ独立に、フェニル基又は置換フェニル基である。)
【0025】
JP0004273236B2_000010t.gif(式(9)中、R及びR10は、それぞれ独立に、フェニル基又は置換フェニル基である。)
【0026】
上記式(7)で表される本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、側鎖として用いたホウ素置換基-BRのR及びRがπ電子系骨格に対し立体障害を及ぼすと考えられる。このため、π電子系骨格がねじれて非平面性を有し、固体状態での分子間相互作用の度合いの制御が可能になると推察される。その結果、上記式(7)の化合物は、固体状態において高い量子収率を持つことができる。また、ホウ素置換基を側鎖として用いるため、主鎖方向とは異なる方向にもπ電子系が広がり、発光性材料として良好な発光を示すと考えられる。したがって、本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、発光性材料として適している。更に、ルイス酸性であるホウ素を側鎖に導入することにより、本来、正孔輸送性を有する傾向にあるオリゴチオフェン化合物に電子輸送性を持たせることができる。したがって、本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、電荷輸送性材料として適している。
【0027】
ここで、上記式(7)のR及びRとしては、フェニル基や、オルトアルキルフェニル基,2,6-ジアルキルフェニル基,2,4,6-トリアルキルフェニル基,2,6-ジアリールフェニル基,2,4,6-トリアリールフェニル基,チエニル基,フリル基,ピロリル基,ピリジル基,ナフチル基,アントリル基,フェナントリル基,ピレニル基及びこれらの置換基などが挙げられる。具体的には、オルトアルキルフェニル基としてはオルトトリル基、オルトクメニル基などが挙げられ、2,6-ジアルキルフェニル基としては2,6-キシリル基などが挙げられ、2,4,6-トリアルキルフェニル基としてはメシチル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロ)メチルフェニル基などが挙げられ、2,6-ジアリールフェニル基としては2,6-ビス(2-メチルフェニル)フェニル基、2,6-ビス(2-イソプロピルフェニル)フェニル基、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)フェニル基、2,6-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)フェニル基、2,6-ビス(2,6-ジメチルフェニル)-4-tert-ブチルフェニル基などが挙げられ、2,4,6-トリアリールフェニル基としては2,4,6-トリフェニルフェニル基、2,4,6-トリチエニルフェニル基などが挙げられる。このうち、π電子系骨格への立体障害を考慮すると好ましくはメシチル基や2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロ)メチルフェニル基などのような嵩高い基であり、より好ましくは2,4,6-トリアルキルフェニル基であり、さらに好ましくはメシチル基である。これは、メシチル基によってホウ素上を立体保護するとともに、π電子系骨格に立体障害をもたらし、その立体構造を強固に固定するからである。
【0028】
上記式(7)のR及びRとしては、水素原子、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16の分岐アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フルオロアルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリル基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基及びハロゲン原子や、アリール基、1価の複素環基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、ボリル基及びこれらの置換基などが挙げられる。このうち、R及びRは水素原子が好ましい。あるいは、R及びRは一方が水素原子でもう一方が置換ボリル基(例えば-BR)、R及びRが置換複素環基(例えばトリアルキルシリルチエニル基などの置換チエニル基)が好ましい。
【0029】
上記式(7)のR及びRとしては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリル基、シアノ基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基及びハロゲン原子並びにアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、スタンニル基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基及びこれらの置換基などが挙げられる。このうち、いずれの基を用いるかは、目的とする発光の色などに応じて適宜選択するとしてもよい。例えば、π電子系骨格中のチオフェン環の数が比較的少ない場合(例えば2~4など)、目的とする発光色が青色又は水色のときは両末端に水素原子を導入し、緑色のときには両末端に電子受容性の高い基を導入し、黄色のときには一端に電子受容性の高い基を導入し他端に電子供与性の高い基を導入し、橙色又は赤色のときには両末端に電子供与性の高い基を導入するとしてもよい。ここで、電子受容性の高い基としては、例えばジメシチルボリル基などのホウ素置換基が挙げられ、電子供与性の高い基としては、例えばジフェニルアミノフェニル基などが挙げられる。
【0030】
また、上記式(7)のR及びRのうち少なくとも一方が、上記式(8)で表される基であるとしてもよい。末端基として電子受容性を有するホウ素置換基を導入することにより、有機ホウ素π電子系化合物の電子受容性を向上させることができ、電子注入効率を高めることができる。したがって、電子輸送性材料として適している。また、固体状態での発光量子収率も高くなる。このとき、R及びRの両末端に上記式(8)で表される基を導入すれば、電子受容性及び電子注入効率が向上し、電子輸送性材料として、より適した電子構造をもたせることができる。また、R及びRとしては、π電子系を広げて良好な発光を得る観点から好ましくはフェニル基又は置換フェニル基であり、より好ましくはメシチル基や2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル基、2,4,6-トリス(トリフルオロ)メチルフェニル基などのような嵩高い基であり、さらに好ましくはメシチル基である。これは、メシチル基によってホウ素上を立体保護することにより、立体構造が安定するからである。
【0031】
また、上記式(7)のR及びRのうち少なくとも一方が、上記式(9)で表される基であるとしてもよい。末端基として電子供与性を有するp-アミノフェニル基を導入することにより、有機ホウ素π電子系化合物の電子供与性を向上させることができ、正孔注入効率を高めることができる。また、固体状態での発光量子収率も高くなる。特に、π電子系骨格中のチオフェン環の数が少ないとき(例えば2つ)には、オリゴチオフェン部分で正孔注入効率が低い傾向にあるため、末端基としてp-アミノフェニル基を導入する効果が高い。つまり、本発明の有機ホウ素π電子系化合物において、チオフェン環の数が少ないときにも正孔注入効率が高くなり、電子輸送性だけでなく正孔輸送性も持たせることができる。したがって、電荷輸送性材料として適している。このとき、R及びRの両末端に上記式(9)で表される基を導入すれば、正孔注入効率が向上し、正孔輸送性材料として、より適した電子構造をもたせることができる。また、R及びR10としては、固体状態での発光効率の観点から、より好ましくはフェニル基又は置換フェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
【0032】
上記式(7)のl,m及びnとしては、整数であれば特に限定されず、例えば、目的とする発光の色などに応じて適宜選択するとしてもよいが、R及びRにかかわらず上記式(7)の化合物にバイポーラー性(両極性)を持たせるには、l及びmが1のときにはnが2以上であるのが好ましい。この場合、上記式(7)の化合物は電子輸送性材料としても正孔輸送性材料としても適している。このように、上記式(7)の化合物がバイポーラー性を持つようになるのは、オリゴチオフェン部分で正孔輸送性を示すとともにボリルチオフェン部分で電子輸送性を示しやすくなるためと推察される。また、本発明の有機ホウ素π電子系化合物において、l及びmは1でありnは1又は2であるとしてもよい。
【0033】
また、上記式(7)のl,m及びnをいずれも1とし、R及びRをアリール基、置換アリール基又は1価の置換複素環基としてもよい(R及びRは同じであってもよいし異なっていてもよい)。このとき、アリール基をフェニル基、置換アリール基を置換フェニル基(例えば4-ジフェニルアミノフェニル基や4-カルバゾリルフェニル基、メシチル基など)、置換複素環基を置換チエニル基(例えばジフェニルアミノチエニル基などのジアリールアミノチエニル基)としてもよい。特に、l,m及びnがいずれも1で、R及びRがいずれもジアリールアミノフェニル基である有機ホウ素π電子系化合物は、660nm前後つまり赤色領域に蛍光極大を示すが、このような性質を持つ化合物はローバンドギャップセオリーなどのためこれまであまり知られておらず、この点で有用性が高い。
【0034】
次に、上記式(7)で表される本発明の有機ホウ素π電子系化合物の合成ルートについて説明する。上記式(7)の化合物は、例えば、チオフェン環の3位又は4位がハロゲン原子に置換されたハロゲン化オリゴチオフェンを有機リチウム(n-BuLiやsec-BuLi,tert-BuLiなど)などを用いてリチオ化し、これをハロゲン化ホウ素化合物と反応させることによりオリゴチオフェンの側鎖にホウ素置換基を導入する、というルートが考えられる。なお、反応溶媒、反応温度、反応時間、使用する基質や試薬のモル濃度などの反応条件は、使用する試薬等に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
上記式(7)~(9)の化合物において、R~R10として列記した物質のうち、アルキル基、オルトアルキルフェニル基、2,6-ジアルキルフェニル基、2,4,6-トリアルキルフェニル基、アルキルチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルチオ基、アルキルスルホニルオキシ基などのアルキルとしては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、アルコキシ基、アリールアルコキシ基、アルコキシカルボニル基などのアルコキシとしては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基などが挙げられ、アルキニル基としては、エチニル基、プロパギル基、フェニルアセチニル基などが挙げられ、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールスルホニルオキシ基、2,6-ジアリールフェニル基、2,4,6-トリアリールフェニル基などのアリールとしては、例えばフェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基などが挙げられ、オリゴアリール基としては、オリゴパラフェニレン、オリゴフルオレン、オリゴ(パラフェニレンビニレン)、オリゴ(パラフェニレンエチニレン)などが挙げられ、1価の複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、キノリル基などが挙げられ、1価のオリゴ複素環基としては、オリゴフラン、オリゴチオフェン、オリゴピリジン、オリゴベンゾチオフェンなどが挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0036】
本発明の有機ホウ素π電子系化合物において、列記した物質のうち、接頭語に「置換」の付いているものの具体的な置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの分岐があってもよいアルキル基;シクロペンチル基やシクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロパギル基、フェニルアセチニル基などのアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基やアリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基やフェニルアセチルオキシ基などのアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基などのアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基などのパーフルオロ基およびさらに長鎖のパーフルオロ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基などのボリル基;アセチル基やベンゾイル基などのカルボニル基;アセトキシ基やベンゾイルオキシ基などのカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基やフェニルスルフィニル基などのスルフィニル基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;フェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基などのアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基などのヘテロ環基などが挙げられる。そのほかに、ニトロ基、ホルミル基、ニトロソ基、ホルミルオキシ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアノ基などもあげられる。さらに、これらの置換基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
【0037】
本発明の有機ホウ素π電子系化合物は、例えば有機EL素子や有機レーザなどの発光性材料として用いることができる。ここでは、一例として、有機EL素子の発光性材料として用いる場合について説明する。有機EL素子は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3つの薄膜を2つの電極で挟んだ構造であり、陽極から注入された正孔が正孔輸送層を介して発光層に入り、陰極から注入された電子が電子輸送層を介して発光層(発光性材料を主体とする層)に入ることにより、正孔と電子とが発光層中で再結合して発光する。有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を公知の蒸着法やスピンコート法で薄膜とすることにより形成する。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、各層を構成すべき材料の種類や分子累積膜の目的とする結晶構造及び会合構造などにより異なるが、例えば、ボート加熱温度50~400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/s、基板温度-50~+300℃、膜厚5~5000nmの範囲で適宜選択してもよい。
【0038】
次に、本発明の有機ホウ素π電子系化合物を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する。適当な基板上に陽極物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10~200nmの範囲の膜厚になるように蒸着法により形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔輸送材料からなる薄膜を蒸着法により形成させて正孔輸送層とする。続いて、形成した正孔輸送層の上に本発明の有機ホウ素π電子系化合物からなる薄膜を蒸着法により形成させて発光層とし、更にその上に電子輸送材料からなる薄膜を蒸着法により形成させて電子輸送層とする。そして、形成した電子輸送層の上に陰極物質からなる薄膜を1μm以下の膜厚になるように蒸着法により形成させて陰極を作製することにより、有機EL素子が得られる。なお、上述した有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極の順に作製してもよい。
【0039】
有機EL素子の陽極は、例えば、仕事関数の大きな電極材料から構成されていてもよく、具体的には、金などの金属、ヨウ化銅などの合金、インジウムチンオキシド、酸化亜鉛などの誘電性透明材料から構成されていてもよい。有機EL素子の陰極は、例えば、仕事関数の小さな電極材料から構成されていてもよく、具体的には、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム合金、アルミニウム/リチウム混合物、マグネシウム/銀混合物、インジウムから構成されていてもよい。有機EL素子の正孔輸送層は、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、TPD、芳香族第3級アミンを主鎖又は側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサンやN,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチル-4,4’-ジアミノビフェニルなどのトリアリールアミン誘導体、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、ポリシランなどであってもよい。有機EL素子の電子輸送層は、例えば、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)やチエニルチアゾールのポリマー、1,3,4-オキサゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール誘導体などであってもよい。

【実施例1】
【0040】
(1)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス(トリメチルエチニル)ベンゼンの合成
まず、2,5-ジブロモ-1,4-ビス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン(下記化合物1)を1,4-ジブロモ-2,5-ジヨードベンゼンを出発原料として公知の方法(J. Organomet. Chem. 2002, 653, 215.)により合成した。続いて、アルゴンガス雰囲気下、化合物1(4.36g,10.0mmol)のTHF溶液(80mL)にn-BuLi(1.6M,13.1mL,21.0mmol)を-78℃で滴下した。反応溶液を-78℃に保ったまま30分攪拌を続けたあと、これにジメシチルフッ化ホウ素(8.07g,21.0mmol)のTHF溶液(30mL)を加えた。反応溶液をゆっくりと室温まで昇温し、室温で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去し、残留物をエーテルで洗浄後、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒より再結晶し、4.47g(5.80mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス(トリメチルエチニル)ベンゼン(下記化合物2)を白色固体として収率58%で得た。化合物2のスペクトルデータは以下のとおり.mp > 300 ℃; 1H NMR (CDCl3): d -0.06 (s, 18H), 1.99 (s, 24H), 2.27 (s, 12H), 6.75(s, 8H), 7.34 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3): d0.3, 21.3, 23.3, 99.1, 104.8, 125.7, 128.4, 137.4, 139.3, 140.9, 142.4, 152.6; HRMS (FAB): 766.4750 (M+); Cald for C52H64B2Si2: 766.4733.
【0041】
JP0004273236B2_000011t.gif
【0042】
(2)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ジエチニルベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物2(1.53g,2.0mmol)のTHF溶液(100mL)にTBAFのTHF溶液(1.0M,40mL,40mmol)を室温で加え、反応溶液を室温で4日間攪拌した。減圧下で溶媒を留去したあと、得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.35)で分離精製した。更に、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒により再結晶を行い、0.85g(1.34mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ジエチニルベンゼン(下記化合物3)を白色固体として収率68%で得た。化合物3のスペクトルデータは以下のとおり.mp > 300 ℃; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): d2.00 (s, 24H), 2.27 (s, 12H), 2.74 (s, 2H), 6.75 (s, 8H), 7.39 (s, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3): d 21.3, 23.2, 81.5, 83.1, 125.1, 128.2, 137.8, 139.4, 140.9, 142.3, 153.0; HRMS (FAB): 623.4020 (M+H+); Calcd for C46H49B2: 623.4036.
【0043】
JP0004273236B2_000012t.gif
【0044】
(3)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物3(62mg,0.10mmol)、ヨードベンゼン(82mg,45μL,0.40mmol)、Pd(PPh(12mg,0.01mmol)及びCuI(3.8mg,0.02mmol)を脱気した1/3(v/v)(i-Pr)NEt/THF(4mL)の混合溶液に室温で溶かした。反応溶液を50℃で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、クロロホルムに溶かした。この溶液を5%NHOH水溶液、1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄したあと、無水MgSOで乾燥し、吸引濾過後にろ液を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.30)で分離精製し、56mg(0.072mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン(下記化合物4a)を緑色固体として収率72%で得た。化合物4aのスペクトルデータは以下のとおり.mp 296.5-297.5 ℃; 1H NMR (CDCl3): d 2.04 (s, 24H), 2.26 (s, 12H), 6.76 (s, 8H), 6.98 (dd, J = 7.2, 1.6 Hz, 4H), 7.15-7.20 (m, 6H), 7.46 (s, 2 H); 13C NMR (CDCl3): d21.2, 23.3, 90.2, 93.8, 123.2, 125.9, 127.7, 127.9, 128.4, 131.5, 137.5, 139.2, 140.9, 142.5, 152.2; EI MS m/z 774 (M+); Anal. Calcd for C58H52B2: C 89.92, H 7.29. Found: C 90.14, H 7.43.
【0045】
JP0004273236B2_000013t.gif
【0046】
(4)X線結晶構造解析
このように合成した化合物4aについてX線結晶構造解析を行った。その結果を図1に示す。図1に示すように、化合物4aのπ電子系骨格中のベンゼン環のうちホウ素置換基が導入されたベンゼン環とアセチレン結合を介してこのベンゼン環に結合しているベンゼン環とが二面角37.28°を形成しており、π電子系骨格にねじれが生じていることが確認された。これは、2つのメシチル基が導入されたホウ素置換基により立体障害が生じ、この立体障害により2つのベンゼン環の間にねじれが生じたものと推定される。なお、この化合物4aの立体構造は、ホウ素置換基により強固に固定されていた。
【0047】
(5)スピンコート膜とパウダーとの作製
化合物4aについて固体状態での蛍光量子収率を検討するにあたり、得られた化合物4aのスピンコート膜とパウダーとを作製した。このうち、スピンコート膜については、化合物4aの濃度を約1mg/0.25mLとしたTHF溶液を調製し、この溶液を用いて石英基板上に作製した。また、パウダーは、精製後、減圧下で溶媒を留去することにより得た。
【0048】
(6)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
得られたスピンコート膜及びパウダーについて、蛍光分光計F4500(日立製)を用いて吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を行うと共に量子収率測定装置C9920-01(浜松ホトニクス製)を用いて蛍光量子収率の測定を行った。表1にその測定結果を示す。まず、スピンコート膜の吸収スペクトルでは、表1に示すように、360nmに吸収極大を示した。この波長で光励起すると、484nmに蛍光極大を示した。また、パウダーでは360nmに吸収極大を示し、498nmに蛍光極大を示した。次に、蛍光量子収率(φ)を測定したところ、表1に示すように、スピンコート膜ではφ=0.44であり、パウダーではφ=0.71であった。これらの値は、発光性材料として十分な量子収率であり、化合物4aは、固体状態のうち特にパウダーにおいて可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。また、ホウ素置換基の導入の効果を確認するために、比較例として1,4-ビス[(4-ジフェニルアミノ)フェニル]エチニルベンゼン(下記化合物5)について同様にしてスピンコート膜を作製し、蛍光量子収率φを測定したところ、φ=0.19であった。このことから、化合物4aで高効率な蛍光量子収率が得られたのはホウ素置換基の影響によるものといえる。つまり、化合物4aのπ電子系骨格にねじれが生じ且つこの立体構造が強固に固定されているために固体状態での分子間相互作用が弱まり、これにより消光が抑制されたものと推察される。
【0049】
【表1】
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【0050】
JP0004273236B2_000015t.gif
【実施例2】
【0051】
(1)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス[(4-ジフェニルアミノ)フェニル]エチニルベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物3(62mg,0,10mmol)、4-ジフェニルアミノ-1-ヨードベンゼン(111mg,0.30mmol)、Pd(PPh(12mg,0.01mmol)及びCuI(3.8mg,0.02mmol)を脱気した1/3(v/v)(i-Pr)NEt/THF(4mL)の混合溶液に室温で溶かした。反応溶液を50℃で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、クロロホルムに溶かした。この溶液を5%NHOH水溶液、1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄したあと、無水MgSOで乾燥し、吸引濾過により乾燥剤を除去した後に減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=3/1、Rf=0.22)で分離精製し、56mg(0.059mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス[(4-ジフェニルアミノ)フェニル]エチニルベンゼン(化合物4b)を緑色固体として収率59%で得た。化合物4bのスペクトルデータは以下のとおり.mp 296.5-297.5 ℃; 1H NMR (CDCl3): d 2.04 (s, 24H), 2.26(s, 12H), 6.76 (s, 8H), 6.98 (dd, J = 7.2, 1.6 Hz, 4H), 7.15-7.20 (m, 6H), 7.46(s, 2 H); 13C NMR (CDCl3): d21.2, 23.3, 90.2, 93.8, 123.2, 125.9, 127.7, 127.9,128.4, 131.5, 137.5, 139.2, 140.9, 142.5, 152.2; EI MS m/z 774 (M+); Anal. Calcd for C58H52B2: C 89.92, H 7.29. Found: C 90.14, H 7.43.
【0052】
(2)X線結晶構造解析
このように合成した化合物4bについてX線結晶構造解析を行った。その結果を図2に示す。図2に示すように、化合物4bのπ電子系骨格中のベンゼン環のうちホウ素置換基が導入されたベンゼン環とアセチレン結合を介してこのベンゼン環に結合しているベンゼン環とが二面角47.53°を形成しており、π電子系骨格にねじれが生じていることが確認された。
【0053】
(3)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(5)と同様にして化合物4bのスピンコート膜とパウダーとを作製し、上述の実施例1の(6)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定と蛍光量子収率の測定とを行った。その結果、スピンコート膜では360nmに吸収極大を示し、560nmに蛍光極大を示した。また、パウダーでは360nmに吸収極大を示し、570nmに蛍光極大を示した(表1参照)。蛍光量子収率φは、スピンコート膜ではφ=0.94であり、パウダーではφ=0.87であった。これらの値は量子収率として極めて良好な値であり、化合物4bはスピンコート膜とパウダーとにおいて可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。

【実施例3】
【0054】
(1)化合物4cの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物3(62mg,0.10mmol)、9-(p-)ヨードフェニル)カルバゾール(147mg,0.30mmol)、Pd(PPh(12mg,0.01mmol)及びCuI(3.8mg,0.02mmol)を脱気した1/3(v/v)(i-Pr)NEt/THF(4mL)の混合溶液に室温で溶かし、これを50℃で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、クロロホルムに溶かした。この溶液を5%NHOH水溶液、1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄したあと、無水MgSOで乾燥し、吸引濾過により乾燥剤を除去した後にろ液を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=4/1、Rf=0.11)で分離精製し、101mg(0.092mmol)の上記化12の化合物4cを緑色固体として収率92%で得た。化合物4cのスペクトルデータは以下のとおり.mp > 300 ℃; 1H NMR (CDCl3): d 2.10 (s, 24H), 2.28 (s, 12H), 6.82 (s, 8H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.28 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.36-7.44 (m, 12H), 7.55 (s, 2H), 8.13 (d, J = 8.4 Hz, 4H); 13C NMR (CDCl3): d 21.3, 23.4, 91.2, 93.2, 109.7, 120.1, 120.3, 122.2, 123.5, 125.9, 126.0, 126.3, 128.5, 133.1, 137.2, 137.8, 139.4, 140.6, 141.0, 142.5, 152.3; EI MS m/z 1104 (M+); Anal. Calcd for C82H70B2N2: C, 89.12, H 6.38, N 2.53. Found: C, 88.89, H 6.59, N 2.56.
【0055】
(2)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(5)と同様にして化合物4cのスピンコート膜とパウダーとを作製し、上述の実施例1の(6)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定と蛍光量子収率の測定とを行った。その結果、スピンコート膜では360nmに吸収極大を示し、505nmに蛍光極大を示した。また、パウダーでは360nmに吸収極大を示し、504nmに蛍光極大を示した(表1参照)。蛍光量子収率φは、スピンコート膜ではφ=0.84であり、パウダーではφ=0.99であった。これらの値は量子収率として極めて良好な値であり、化合物4cはスピンコート膜とパウダーとにおいて可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。

【実施例4】
【0056】
(1)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-エチニル-1-トリメチルシリルエチニルベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物2(1.53g,2.0mmol)のTHF溶液(100mL)にTBAFのTHF溶液(1.0M,4.0mL,4.0mmol)を室温で加え、反応溶液を室温で2日間撹拌した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1,Rf=0.38)で分離精製した。更に、GPC(溶媒:クロロホルム)で精製し、1.01g(1.45mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-エチニル-1-トリメチルシリルエチニルベンゼン(下記化合物6)を白色固体として収率73%で得た。化合物6のスペクトルデータは以下のとおり.mp 237.5-238.5 ℃;1H NMR (CDCl3): d -0.06 (s, 9H), 1.98 (s, 12H), 2.00 (s, 12H), 2.26 (s, 6H), 2.28 (s, 6H), 2.73 (s,1H), 6.74 (s, 4H), 6.75 (s, 4H), 7.33 (s, 1H), 7.39 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3): d-0.4, 21.2, 21.3, 23.2, 23.3, 81.4, 83.2, 99.2, 104.6, 124.6, 126.1, 128.1, 128.4, 137.4, 137.8, 139.3, 139.4, 140.8, 141.0, 142.4, 152.6, 153.0; HRMS (FAB): 695.4432 (M+H+); Calcd for C49H57B2Si: 695.4416.
【0057】
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【0058】
(2)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-フェニルエチニル-トリメチルシリルエチルベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物6(138mg,0.20mmol),ヨードベンゼン(163mg,90μL,0.80mmol)、Pd(PPh(23mg,0.02mmol)及びCuI(7.6mg,0.04mmol)を脱気した1/3(v/v)(i-Pr)NEt/THF(8mL)の混合溶液に室温で溶かした。反応溶液を50℃で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、クロロホルムに溶かした。この溶液を5%NHOH水溶液、1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄したあと、無水MgSOで乾燥し、吸引濾過により乾燥剤を除去した後にろ液を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.34)で分離精製し、138mg(0.18mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-フェニルエチニル-トリメチルシリルエチルベンゼン(下記化合物7)を淡黄色固体として収率90%で得た。化合物7のスペクトルデータは以下のとおり.mp 285.0-286.0 ℃; 1H NMR (CDCl3): d -0.05 (s, 9H), 2.02 (s, 24H), 2.26 (s, 6H), 2.28 (s, 6H), 6.76 (s, 8H), 6.97 (dd, J = 6.8, 1.6 Hz, 2 H), 7.13-7.19 (m, 3 H), 7.39 (s, 1 H), 7.40 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3): d = -0.3, 21.2, 21.3, 23.3, 90.1, 93.8, 98.9, 104.9, 123.1, 125.6, 125.9, 127.7, 127.8, 128.37, 28.39, 131.5, 137.1, 137.7, 139.2, 139.3, 140.9, 141.0, 142.5, 152.0, 152.8; HRMS (FAB):770.4669 (M+); Cald for C55H60B2Si: 770.4650.
【0059】
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【0060】
(3)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-エチニル-フェニルエチルベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物7(191mg,0.25mmol)のTHF溶液(5mL)にTBAFのTHF溶液(1.0M,2.5mL,2.5mmol)を室温で加え、反応溶液を室温で4日間撹拌した。減圧下で溶媒を留去したあと、得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.32)で分離精製し、151mg(0.22mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-エチニル-フェニルエチルベンゼン(下記化合物8)を淡黄色固体として収率87%で得た。化合物8のスペクトルデータは以下のとおり.mp 154.0-155.0 ℃; 1H NMR (CDCl3): d 2.03 (s, 12H), 2.05 (s, 12H), 2.26 (s, 6H), 2.30 (s, 6H), 2.76 (s, 1H), 6.76 (s, 4H), 6.78 (s, 4H), 6.98 (dd, J = 6.8, 1.6 Hz, 2 H), 7.15-7.21 (m, 3H), 7.42 (s, 1H), 7.47 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3): d21.2, 21.3, 23.2, 23.3, 81.3, 83.3, 89.9, 93.9, 123.0, 124.5, 126.4, 127.7, 127.9, 128.2, 128.4, 131.5, 137.1, 138.2, 139.2, 139.4, 140.8, 141.0, 142.4, 151.9, 153.2; HRMS (FAB): 698.4272 (M+); Cald for C52H52B2: 698.4255.
【0061】
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【0062】
(4)1,4-ビス{[2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-フェニルエチニル-1-フェニル]エチニル}ベンゼンの合成
アルゴンガス雰囲気下、化合物8(110mg,0.16mmol)、p-ジヨードベンゼン(26mg,0.08mmol)、Pd(PPh(18mg,0.016mmol)及びCuI(1.6mg,0.032mmol)を脱気した1/3(v/v)(i-Pr)NEt/THF(4mL)の混合溶液に室温で溶かし、これを50℃で終夜攪拌した。減圧下で溶媒を留去した後、クロロホルムに溶かした。この溶液を5%NHOH水溶液、1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄したあと、無水MgSOで乾燥し、吸引濾過により乾燥剤を除去した後にろ液を減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.25)で分離精製し、110mg(0.075mmol)の1,4-ビス{[2,5-ビス(ジメシチルボリル)-4-フェニルエチニル-1-フェニル]エチニル}ベンゼン(下記化合物9)を緑色固体として収率93%で得た。化合物9のスペクトルデータは以下のとおり.mp 294-295 ℃; H NMR (CDCl3): d 2.02 (s, 24H), 2.03 (s, 24H), 2.27 (s, 24H), 6.74 (s, 16H), 6.77 (s, 4H), 6.94 (dd, J = 7.8, 1.6 Hz, 4 H), 7.13-7.19 (m, 6H), 7.39 (s, 2H), 7.41 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3): d 21.21, 21.24, 23.1, 90.1, 91.8, 93.9, 94.2, 122.3, 123.0, 125.4, 125.8, 127.4, 127.5. 128.3, 130.6, 131.3, 137.45, 137.49, 138.8, 140.3, 142.0, 151.5, 151.6; EI MS m/z 1471 (M+); Anal. Calcd for C110H106B4: C, 89.80; H, 7.26. Found: C, 89.79; H, 7.36.
【0063】
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【0064】
(5)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(5)と同様にして化合物9のスピンコート膜を作製し、上述の実施例1の(6)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定と蛍光量子収率の測定とを行った。その結果、389nmに吸収極大を示し、488nmに蛍光極大を示した(表1参照)。また、蛍光量子収率φについてはφ=0.59であった。このことから、化合物9はスピンコート膜において可視領域で比較的高効率な発光を示すことが確認された。

【実施例5】
【0065】
(1)2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス{2-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ビニル}ベンゼンの合成
まず、2,5-ジブロモ-1,4-ビス{2-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ビニル}ベンゼン(下記化合物10)を[2,5-ジブロモ-4-(ジエトキシホスホリルメチル)ベンジル]ホスホン酸ジエチルエステルと4-(ジフェニルアミノ)ベンスアルデヒドとを出発原料として公知の方法(J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 1215.)により合成した。続いて、アルゴンガス雰囲気下、化合物10(231mg,0.30mmol)のTHF溶液(5mL)にt-BuLi(ヘプタン中で1.46M,0.86mL,1.26mmol)を-78℃でゆっくり滴下した。反応溶液を-78℃で1時間撹拌し、ジメシチルフッ化ホウ素(168mg,0.63mmol)のTHF溶液(5mL)を加えた。この反応溶液をゆっくりと室温まで昇温し、室温で終夜攪拌した。水(5mL)を加えた後、水層をクロロホルム(30mL)で抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥し、吸引濾過後に減圧下で濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム=5/1、Rf=0.15)で分離精製し、231mg(0.21mmol)の2,5-ビス(ジメシチルボリル)-1,4-ビス{2-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ビニル}ベンゼン(下記化合物11)を緑色固体として収率70%で得た。化合物11のスペクトルデータは以下のとおり.1H NMR (CDCl3): d 2.07 (s, 24 H), 2.26 (s, 12H), 6.52 (d, J = 16.0 Hz, 2H), 6.81-6.90 (m, 18H), 7.01-7.08 (m, 16H), 7.24 (d, J = 16 Hz, 4H), 7.60 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3): d 21.2, 23.3, 122.7, 123.7, 124.2, 127.2, 127.7, 128.1, 128.5, 129.2, 130.6, 132.3, 139.2, 140.2, 140.5, 143.3, 146.7, 147.6, 150.0; EI MS M/Z 1112 (M+).
【0066】
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【0067】
(2)X線結晶構造解析
このように合成した化合物11についてX線結晶構造解析を行った。その結果を図3に示す。図3に示すように、化合物11のπ電子系骨格中のベンゼン環のうちホウ素置換基が導入されたベンゼン環とエチレン結合を介してこのベンゼン環に結合しているベンゼン環とが二面角6.18°を形成しており、π電子系骨格にねじれが生じていることが確認された。
【0068】
(3)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例1の(5)と同様にして化合物11のスピンコート膜とパウダーとを作製し、上述の実施例1の(6)と同様にして吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定と蛍光量子収率の測定とを行った。その結果、スピンコート膜では389nmに吸収極大を示し、592nmに蛍光極大を示した。また、パウダーでは360nmに吸収極大を示し、596nmに蛍光極大を示した(表1参照)。蛍光量子収率φについては、スピンコート膜ではφ=0.72であり、パウダーではφ=0.91であった。これらの値は、発光性材料として十分な量子収率であり、化合物11はスピンコート膜とパウダーとにおいて可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。また、ホウ素置換基の導入の効果を確認するために、比較例として1,4-ビス{2-[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ビニル}ベンゼン(下記化合物12)のスピンコート膜を同様に作製して蛍光量子収率φを測定したところ、φ=0.06であった。このことから、化合物11で高効率な蛍光量子収率が得られたのはホウ素置換基の影響によるものといえる。つまり、化合物11のπ電子系骨格にねじれが生じ且つこの立体構造が強固に固定されているために固体状態での分子間相互作用が弱まり、これにより消光が抑制されたものと推察される。
【0069】
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【実施例6】
【0070】
(1)3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェンの合成
3-ブロモ-2,2’-ビチオフェン(下記化合物21)3.49g(13.7mmol)をエーテル(20mL)に溶かし、n-BuLi(1.6M,9.0mL,14.4mmol)を-78℃で滴下し、そのまま3時間撹拌を続けた。この溶液に、-78℃でMesBF(4.05g,15.1mmol)のエーテル(20mL)溶液を滴下した。反応溶液をゆっくりと室温に戻し、室温で終夜撹拌した。水(20mL)を加えた後、水層をヘキサン(10mL)で5回抽出した。有機層をあわせてMgSOで乾燥後、減圧ろ過、エバポレーションで濃縮し、5.90gの茶色固体を得た。ヘキサン:トルエン(1:1)の混合溶液より再結晶し、3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(下記化合物22)1.16g(2.81mmol)を黄緑色の固体として収率20%で得た。さらに、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:トルエン=7:1,Rf=0.40)で精製し、3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(化合物22)2.43g(5.87mmol)を収率43%で得た。つまり、あわせて化合物22を3.59g(8.68mmol)の黄緑色の固体として収率63%で得た。微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)にて得られた固体の融点を測定したところ、融点は129.3-129.8℃であった。スペクトルデータは次の通りである。
【0071】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.02 (s, 12H), 2.21 (s, 6H), 6.65 (s, 4H), 6.67 (dd,JHH= 5.2, 3.6 Hz, 1H), 6.75 (dd, JHH = 3.6, 1.2 Hz, 1H), 6.89 (d, JHH= 4.8 Hz,1H), 7.03 (dd, JHH = 5.2, 1.2 Hz, 1H), 7.19 (d, JHH= 4.8 Hz, 1H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ 21.2, 23.0, 124.6, 126.2, 126.7, 127.0, 128.1, 135.1, 136.5, 138.6, 140.6, 142.2, 146.0,147.7; 11B NMR (128 MHz, CDCl3) δ69.2.単位:ppm. Anal. Calcd for C26H27BS2: C, 75.35; H, 6.57; N, 0.00. Found: C, 75.10; H, 6.53; N, 0.00.
【0072】
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【0073】
(2)X線結晶構造解析
このように合成した化合物22についてX線結晶構造解析を行った。その結果を図4に示す。図4に示すように、化合物22のπ電子系骨格中のチオフェン環同士が二面角56.3°を形成しており、π電子系骨格にねじれが生じていることが確認された。これは、メシチル基が導入されたホウ素置換基により立体障害が生じ、この立体障害により2つのチオフェン環の間にねじれが生じたものと推定される。なお、この化合物22の立体構造は、ホウ素置換基により強固に固定されていた。
【0074】
(3)スピンコート膜の作製
化合物22について固体状態での蛍光量子収率を検討するにあたり、得られた化合物22のスピンコート膜を作製した。スピンコート膜は、化合物22の濃度を約1mg/0.25mLとしたTHF溶液を調製し、この溶液0.3mLをスピンコータ(ミカサ社製、1H-D7)上に置いた石英プレートの上に滴下し、これを1000rpmで60秒回転させたあとさらに300rpmで20秒回転させることにより作製した。
【0075】
(4)吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定
得られたスピンコート膜について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-3150)を用いて吸収スペクトルを測定するとともに、分光蛍光光度計(日立製、F4500)を用いて蛍光スペクトルの測定を行った。表2及び図8にその測定結果を示す。なお、表2には吸収極大波長と蛍光極大波長とを示し、図8には吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを示した。表2に示すように、スピンコート膜の吸収スペクトルでは386nmに吸収極大を示し、この波長で光励起すると486nmに蛍光極大を示した。なお、化合物22をTHFに溶かした溶液(約1mg/0.25mL)について同様に測定を行ったところ、溶液状態では371nmに吸収極大を示し、477nmに蛍光極大を示した。また、固体状態での吸収スペクトル及び蛍光スペクトルは、溶液状態よりも少し長波長シフトするものの、スペクトルの形は固体状態と溶液状態とで略同じであった(図5参照)。更に、側鎖へのホウ素置換基の導入の効果を確認するために、比較例1として5,5’-ビス(ジメシチルボリル)-2,2’-ビチオフェン(下記化合物23)について、上述の(3)と同様にしてスピンコート膜を作製し、吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定を行い、THFに溶かした溶液状態のスペクトルと比較した。その結果を図6に示す。図5と図6とを比較すると分かるように、蛍光スペクトルにおいて、化合物23ではスピンコート膜での蛍光スペクトルがエキシマー発光に対応する長波長シフトしたピークが観察されたのに対し、化合物22では蛍光スペクトルの波形はTHF溶液のものと比べてもほとんど変化がなく、エキシマー発光は観測されなかった。このことから、化合物22の方が固体状態(スピンコート膜)において、より効果的に分子間の相互作用を抑制できると言える。
【0076】
【表2】
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【0077】
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【0078】
(5)蛍光量子収率の測定
得られたスピンコート膜について、量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、C9920-01)を用いて蛍光量子収率(φ)の測定を行った。その結果、スピンコート膜ではφ=0.55であった(表2参照)。この値は、発光性材料として十分な量子収率であり、化合物22は、固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。また、比較例1として化合物23について同様にしてスピンコート膜を作製し、蛍光量子収率φを測定したところ、φ=0.46であった(表2参照)。このことから、化合物22で高効率な蛍光量子収率が得られたのは、側鎖に導入されたホウ素置換基の影響によるものであると考えられる。つまり、化合物22のπ電子系骨格にねじれが生じ且つこの立体構造が強固に固定されているために固体状態での分子間相互作用が弱まり、これにより消光が抑制さ
れたものと推察される。
【0079】
(6)サイクリックボルタンメトリーの測定
得られた化合物22について、サイクリックボルタンメトリーを行った結果を図7に示す。なお、サイクリックボルタンメトリーは、n-BuPF6-(0.1M)を指示電解質に用いてTHF溶液中で行った。その結果、E1/2=-2.44V(vs Fc/Fc)に可逆な還元波を示した(図7参照)。この結果は、化合物22が電子受容能を有していることを示す。

【実施例7】
【0080】
(1)3,5,5’-トリス(ジメシチルボリル)-2,2’-ビチオフェンの合成
化合物22(0.103g,0.249mmol)とMesBF(0.346g,1.29mmol)のエーテル(6mL)溶液に、ジイソプロピルアミン(0.18mL,1.28mmol)とn-BuLi(1.56M,0.80mL,1.25mmol)とをエーテル(5mL)中で0℃において調製したLDAのエーテル溶液を、0℃で加えた。34時間室温で撹拌した後、水(20mL)を加えた。水層をエーテル(10mL)で4回抽出し、有機層にあわせてMgSOで乾燥後、エバポレーターで濃縮し、0.507gの粗生成物を得た。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=5:1,Rf=0.30)及びGPC(クロロホルム)で分離精製し、0.225g(0.247mmol)の3,5,5’-トリス(ジメシチルボリル)-2,2’-ビチオフェン(下記化合物24)を黄緑色固体として収率99%で得た。微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)を用いて得られた固体の融点を測定したところ、融点は144.2-144.8℃であった。スペクトルデータは次の通りである。
【0081】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.92 (s, 12H), 1.99 (s, 12H), 2.08 (s, 12H), 2.18 (s, 6H), 2.27 (s, 6H), 2.28 (s, 6H), 6.59 (s, 4H), 6.77 (s, 4H), 6.78 (s, 4H), 6.89 (d,JHH = 3.6 Hz, 1H), 6.99 (d, JHH = 3.6 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H); 11B NMR (128 MHz, CDCl3) δ 70.5 (br). 単位:ppm.
【0082】
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【0083】
(2)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例6の(3)と同様にして化合物24のスピンコート膜を作製し、上述の実施例6の(4)及び(5)と同様にして吸収スペクトル、蛍光スペクトル及び蛍光量子収率の測定を行った。その結果、スピンコート膜では411nmに吸収極大を示し、509nmに蛍光極大を示した(表2参照)。なお、溶液状態では406nmに吸収極大を示し、480nmに蛍光極大を示した。また、蛍光スペクトルは、図8に示すように、固体状態では溶液状態よりも少し長波長側にシフトするものの、スペクトルの形は略同じであった。蛍光スペクトルについて比較例1の化合物23と比較すると(図6参照)、化合物25ではスピンコート膜での蛍光スペクトルがエキシマー発光に対応する長波長シフトしたピークが観察されたのに対し、化合物24では化合物22の場合と同様に蛍光スペクトルの波形はTHF溶液のものと比べてもほとんど変化がなく,エキシマー発光は観測されなかった。このことから、化合物24の方が固体状態(スピンコート膜)において、より効果的に分子間の相互作用を抑制できると言える。また、スピンコート膜での蛍光量子収率φについてはφ=0.77であり、比較例1(φ=0.46)に比べて極めて良好であった。この値は量子収率として良好な値であり、化合物24は固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。

【実施例8】
【0084】
(1)5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェンの合成
化合物22(1.24g,3.00mmol)とN-ブロモスクシンイミド(NBS)(1.12g,6.30mmol)を酢酸(40mL)とクロロホルム(40mL)の混合溶媒に溶かし、室温で18時間撹拌した。水(40mL)を加えて、水層をクロロホルム(10mL)で3回抽出した。有機層をあわせて飽和NaHCO水(40mL)で洗浄し、MgSOで乾燥後、エバポレーターで濃縮し、1.89gの粗生成物を得た。得られた混合物をシリカゲルのショートカラム(展開溶媒:クロロホルム)に通し、1.69g(2.95mmol)の5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(下記化合物25)を黄緑色の固体として収率98%で得た。微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)を用いて得られた固体の融点を測定したところ、融点は174.6-174.8℃であった。スペクトルデータは次の通りである。
【0085】
1H NMR (400 MHz, CDCl3); δ 2.03 (s, 12H), 2.24 (s, 6H), 6.45 (d, JHH = 4.0 Hz,1H), 6.61 (d, JHH = 4.0 Hz, 1H), 6.69 (s, 4H), 6.85 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 21.2, 23.1, 111.9, 113.2, 127.5, 128.2, 129.5, 136.7, 137.1, 139.3, 140.6, 141.5, 145.6, 149.3; 11B NMR (128 MHz, CDCl3) δ 70.0. 単位:ppm. Anal. Calcd for C26H25BBr2S2: C, 4.57; H, 4.40; N, 0.00. Found: C, 54.30; H, 4.48; N, 0.00.
【0086】
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【0087】
(2)3-ジメシチルボリル-5,5’-ビス(ジフェニルアミノフェニル)-2,2’-ビチオフェンの合成
化合物25(0.283g,0.494mmol)、4-(ジフェニルアミノ)トリブチルスタンニルベンゼン(0.808g,1.51mmol)のTHF溶液(15mL)にPd(dba)・CHCl(9.0mg,1.8mol%)、トリ(2-フリル)ホスフィン(9.7mg,8.5mol%)を加え、アルゴン雰囲気下で15時間撹拌した。溶媒を減圧留去してシリカゲルのショートカラム(展開溶媒:クロロホルム)を通し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=5:2,Rf=0.32)で精製した。さらにGPC(クロロホルム)で分離精製し、0.211g(0.234mmol)の3-ジメシチルボリル-5,5’-ビス(ジフェニルアミノフェニル)-2,2’-ビチオフェン(下記化合物26)を橙色固体として収率47%で得た。微量融点測定装置(ヤナコ社製、MP-S3)を用いて得られた固体の融点を測定したところ、融点は134.0-134.8℃であった。スペクトルデータは以下の通りである。なお、dbaはジベンジリデンアセトンを表す。
【0088】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 2.08 (s, 12H), 2.20 (s, 6H), 6.68 (s, 4H), 6.74 (d,JHH= 3.6 Hz, 1H), 6.80 (d, JHH = 3.6 Hz, 1H), 6.98-7.13 (m, 17H), 7.21-7.30 (m,10H), 7.38-7.44,(m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 21.2, 23.1, 122.2, 123.0, 123.1, 123.5, 123.7, 124.3, 124.5, 126.4, 126.6, 127.7, 127.9, 128.2, 128.3, 129.26, 129.29, 129.9, 135.4, 138.8, 140.8, 142.2, 142.6, 144.7, 144.8, 147.1, 147.2, 147.38, 147.42, 148.6; 11B NMR (CDCl3) d 68.5. 単位:ppm. HRMS (FAB): 900.3754 (M+); Calcd for C62H53BN2S2: 900.3743.
【0089】
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【0090】
(3)スペクトル測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例6の(3)と同様にして化合物26のスピンコート膜を作製し、上述の実施例6の(4)及び(5)と同様にして吸収スペクトル、蛍光スペクトル及び蛍光量子収率の測定を行った。その結果、スピンコート膜では456nmに吸収極大を示し、601nmに蛍光極大を示した(表2参照)。なお、溶液状態では449nmに吸収極大を示し、600nmに蛍光極大を示した。また、スピンコート膜での蛍光量子収率はφ=0.60であり、比較例1(φ=0.46)に比べて良好な値であった。この値は量子収率としても良好な値であり、化合物26は固体状態において可視領域で高効率な発光を示すことが確認された。
【0091】
(4)サイクリックボルタンメトリーの測定
得られた化合物26について、上述の実施例6の(6)と同様にしてサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果、E1/2=+0.38V(vs Fc/Fc)に可逆な酸化波を示し、E1/2=-2.24V(vs Fc/Fc)とE1/2=-2.61V(vs Fc/Fc)に二段階の可逆な還元波を示した(図6参照)。この結果は、化合物26が正孔輸送能及び電子受容能を有していることを示す。

【実施例9】
【0092】
(1)3’,4’-ジブロモ-5,5’’’-ビス(トリメチルシリル)クオーターチオフェンの合成
2-ブロモ-5-トリメチルシリルチオフェン(2.35g,10.0mmol)のTHF(30mL)溶液に、-78℃でn-BuLi(1.6M,9.52mL,15.2mmol)を加え、-78℃で2時間撹拌を続けた。反応溶液にトリブチルスタンニルクロリド(4.13mL,4.96g,15.2mmol)を加えて、ゆっくりと室温まで昇温した。得られた2-トリブチルスタンニル-5-トリメチルシリルチオフェンのTHF溶液に、4,4’,5,5’-テトラブロモ-2,2’-ビチオフェン(1.86g,3.87mmol)、Pd(dba)・CHCl(0.195g,0.189mmol)及びトリフリルホスフィン(0.177g,0.76mmol)を加えて、10時間還流した。得られた混合溶液に水(30mL)を加えた後、クロロホルムで三回抽出した。得られた有機層を、MgSOで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。さらに、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン,Rf=0.40)で分離し、1.07g(1.70mmol)の5,5’’’-ビス(トリメチルシリル)-3’,4’’-ジブロモクオーターチオフェン(下記化合物27)を収率44%で得た。
【0093】
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【0094】
(2)3’,4’’-ビス(ジメシチルボリル)-5,5’’’-ビス(トリメチルシリル)クオーターチオフェンの合成
化合物27(0.17g,0.27mmol)のTHF溶液(10mL)に、-78℃でn-BuLi(1.6M,0.38mL,0.61mmol)を加え、そのまま-78℃で1時間撹拌を続けた。MesBF(0.18g,6.27mmol)のTHF溶液(2mL)を反応溶液に-78℃で加え、ゆっくりと室温まで昇温した。得られた反応溶液に水(10mL)を加えてろ過することにより、0.024g(0.022mmol)の3’,4’’-ビス(ジメシチルボリル)-5,5’’’-ビス(トリメチルシリル)クオーターチオフェン(下記化合物28)を収率8%で得た。スペクトルデータは次の通りである。
【0095】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.19 (s, 18H), 2.05 (s, 24H), 2.20 (s,12 H), 6.64 (s,8H), 6.77 (d, JHH = 4.0 Hz, 2H), 6.82 (d, JHH = 4.0 Hz, 2H), 6.91 (s, 2H).単位:ppm.
【0096】
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【実施例10】
【0097】
(1)5,5’’’-ビス(ジフェニルアミノ)-3’-ジメシチルボリルクオーターチオフェンの合成
ジフェニルアミノチオフェン(528mg,2.1mmol)のTHF(10mL)溶液に、-78℃で、n-BuLi(1.6M,1.4mL,2.2mmol)を加え、-78℃で20分間撹拌を続けた後、0℃まで昇温し2時間撹拌を続けた。反応溶液を再び-78℃に冷却し、反応溶液にトリブチルスタンニルクロリド(0.60mL,720mg,2.2mmol)を加えて、ゆっくりと室温まで昇温した。得られたジフェニル(5-トリブチルスタンニル-2-チエニル)アミンのTHF溶液を、5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(572.5mg,1.00mmol),Pd(dba)・CHCl(20.7mg,0.02mmol,2mol%)及びトリフリルホスフィン(18.6mg,0.08mmol,8mol%)のTHF(15mL)溶液にキャニュラで加え、反応溶液を14時間還流した。混合溶液に水(40mL)を加えた後、クロロホルムで三回抽出した。得られた有機層を、NaSOで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。さらに、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=3:1,Rf=0.24)で分離し、681mg(0.746mmol)の5,5’’’-ビス(ジフェニルアミノ)-3’-ジメシチルボリルクオーターチオフェン(下記化合物29)を収率75%で得た。このクオーターチオフェンの融点及びスペクトルデータは以下の通りである。
【0098】
mp. 100.0-102.0 ℃; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.10 (s, 12H), 2.20 (s, 6H), 6.69 (s, 4H), 6.78 (d, JHH= 4.0 Hz, 2H), 6.82 (d, JHH = 4.0 Hz, 2H), 6.91 (s, 2H);HRMS (FAB): 912.2887 (M+); Calcd for C52H49BN2S4: 912.2872.
【0099】
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【0100】
(2)5,5’-ビス(4-カルバゾリルフェニル)-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェンの合成
4-カルバゾリル-ヨードベンゼン(299mg,0.81mmol)のエーテル(5mL)溶液に、-78℃で、n-BuLi(1.6M,0.56mL,0.90mmol)を加え、-78℃で1時間撹拌を続けた後、反応溶液にトリブチルスタンニルクロリド(0.25mL,293mg,0.90mmol)を加えて、ゆっくりと室温まで昇温した。得られた4-カルバゾリル-トリブチルスタンニルベンゼンのエーテル溶液を減圧下で溶媒を留去した後、THF(5mL)に溶かして、5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(172mg,0.30mmol)、Pd(dba)・CHCl(6.2mg,0.003mmol,2mol%)及びトリフリルホスフィン(5.6mg,0.024mmol,8mol%)のTHF(5mL)溶液にキャニュラで加えた。この溶液を30時間還流した。得られた混合溶液をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=4:1,Rf=0.25)で分離し、85mg(0.095mmol)の5,5’-ビス(4-カルバゾリルフェニル)-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(下記化合物30)を収率32%で得た。
【0101】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.10 (s, 12H), 2.20 (s, 6H), 6.75 (s, 4H), 6.89 (d, JHH= 3.6 Hz, 1H), 7.03 (d, JHH = 3.6 Hz, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.30 (td, JHH= 8.4 Hz, 3.6 Hz, 4H), 7.42 (t, JHH = 8.4 Hz, 4H), 7.44 (d, JHH= 8.4 Hz, 4H), 7.57 (d, JHH = 8.4 Hz, 4H), 7.65 (d, JHH = 8.4 Hz, 2H), 7.81 (d, JHH = 8.4 Hz, 2H), 8.15 (dd, 8.4 Hz, 3.6 Hz, 4 H); 13C NMR (CDCl3) d 21.2, 23.2, 109.7, 109.8, 120.06, 120.08, 120.4, 123.47, 123.48, 123.52, 126.0, 126.9, 127.0, 127.2, 127.3, 127.4, 128.2, 128.3, 131.4 132.9, 133.3, 136.5, 136.9, 139.1, 140.7, 140.9, 142.2, 144.2, 145.4, 149.3(br); 11B NMR (CDCl3) d 67.5.単位:ppm. HRMS (FAB): 896.3441 (M+); Calcd for C62H49BN2S2: 896.3430.
【0102】
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【0103】
(3)5,5’-ジフェニル-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェンの合成
5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(286mg,0.50mmol)、フェニルボロン酸(243mg,2.0mmol)、Pd(dba)・CHCl(10.9mg,0.01mmol,2mol%)、2-(2’,6’-ジメトキシビフェニル)ジシクロヘキシルフォスフィン(17.0mg,0.04mmol,8mol%)及びKPO(638mg,3.0mmol)をトルエン(5mL)に溶かし、50℃で12時間加熱した。混合溶液に水(10mL)を加えた後、ジクロロメタンで四回抽出した。得られた有機層を、MgSOで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。さらに、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=5:1,Rf=0.40)及びGPC(展開溶液:クロロホルム)で分離し265mg(0.46mmol)の5,5’-ジフェニル-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(下記化合物31)を収率93%で得た。
【0104】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.10 (s, 12H), 2.20 (s, 6H), 6.69 (s, 4H), 6.78 (d, JHH= 4.0 Hz, 1H), 6.89 (d, JHH = 4.0 Hz, 2H), 7.12 (s, 1H), 7.34 (s, 2H), 7.34 (d, 7.2 Hz, 4H), 7.41 (d, 7.2 Hz, 2H), 7.56 (d, 7.2 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3) d 21.2, 23.1, 123.0, 125.6, 125.9, 127.4, 127.5, 127.9, 128.2, 128.78, 128.81, 130.8, 133.8, 134.3, 136.1, 138.9, 140.8, 142.3(br), 143.1, 145.1, 145.3, 149.0(br); 11B NMR (CDCl3) d 69.0. 単位:ppm. HRMS (FAB): 566.2283 (M+); Calcd for C38H35BS2: 566.2273.
【0105】
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【0106】
(4)5,5’-ジメシチル-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェンの合成
5,5’-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(286mg,0.50mmol)、メシチルボロン酸(328mg,2.0mmol)、Pd(dba)・CHCl(10.5mg,0.01mmol,2mol%)、2-(2’,6’-ジメトキシビフェニル)ジシクロヘキシルフォスフィン(17.6mg,0.04mmol,8mol%)及びKPO(640mg,3.0mmol)をトルエン(5mL)に溶かし、50℃で36時間加熱した。混合溶液に水(50mL)を加えた後、ジクロロメタンで四回抽出した。得られた有機層を、MgSOで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。さらに,シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジクロロメタン=10:1,Rf=0.38)で分離し166mg(0.26mmol)の5,5’-ジメシチル-3-ジメシチルボリル-2,2’-ビチオフェン(下記化合物32)を収率51%で得た。
【0107】
mp > 167-168 oC; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.96 (s, 6H), 2.09 (s, 12H), 2.17 (s, 6 H), 2.19 (s, 6H), 2.28 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 6.41 (d, JHH = 3.4 Hz, 1H), 6.56 (s, 1H), 6.65 (s, 4H), 6.85 (d, JHH = 3.4 Hz, 1H), 6.88 (s, 2H), 6.90 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) d 20.5, 20.8, 21.05, 21.15, 23.1, 126.6, 126.7, 127.9, 128.0, 128.2, 130.5, 130.7, 134.6, 136.7, 137.78, 137.80, 137.9, 138.3, 138.4, 140.6, 140.7, 142.4()r), 142.7, 146.7, 148.2(br); 11B NMR (CDCl3) d 68.5.単位:ppm. HRMS (FAB): 650.3223 (M+); Calcd for C44H47B S2: 650.3212.
【0108】
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【0109】
(5)スペクトルの測定及び蛍光量子収率の測定
上述の実施例6の(3)と同様にして化合物29~32のスピンコート膜を作製し、上述の実施例6の(4)及び(5)と同様にして吸収スペクトル、蛍光スペクトル及び蛍光量子収率の測定を行った。その結果を表3及び図9~図12に示す。表3及び図9~図12から明らかなように、化合物29~32のいずれも、フィルム(つまり固体状態)と溶液状態とで吸収スペクトルの吸収極大波長や蛍光スペクトルの蛍光極大波長に大きな差はなく概ね同じであり、スペクトルの形状も概ね同じであった。また、量子収率も固体状態と溶液状態とでそれほど大きな差が見られなかった。こうしたことから、これらの化合物では、固体状態においても希薄溶液状態とほぼ同様の環境をもつことを示しており、効果的に分子間の相互作用が抑制されているといえる。一方、チオフェンが4つ連なった構造をもつ化合物29は、吸収スペクトルの吸収極大が465 nm(溶液)、479 nm(固体)であり、これらの波長で光励起したときの蛍光極大が200 nm近い大きなストークスシフトを伴って660 nm前後つまり赤色領域に蛍光極大を示した。このことは、この化合物が青色の光を吸収して赤色の発光を示すことを意味している。また、一般に赤色に蛍光を示す化合物は、ローバンドギャップセオリーなどのためこれまで高い量子収率を示す化合物は限られているが、化合物29は、固体状態においても量子収率は0.30と比較的高い値を示した。これらの点から、化合物29の有用性が高い。
【0110】
【表3】
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【0111】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0112】
本出願は、2005年12月16日に出願された日本国特許出願第2005-362944、2006年2月28日に出願された日本国特許出願第2006-052613、2006年8月21日に出願された日本国特許出願第2006-224646を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、有機ELや有機レーザなどの有機エレクトロニクス分野に利用可能である。
図面
【図9】
0
【図10】
1
【図11】
2
【図12】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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