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明細書 :Akt遺伝子に特異的なsiRNA

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5232990号 (P5232990)
公開番号 特開2007-151544 (P2007-151544A)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
発明の名称または考案の名称 Akt遺伝子に特異的なsiRNA
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
A61K 48/00
A61K 31/713
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 24
出願番号 特願2006-302935 (P2006-302935)
出願日 平成18年11月8日(2006.11.8)
優先権出願番号 2005324121
優先日 平成17年11月8日(2005.11.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年10月30日(2009.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】中城 公一
【氏名】浜川 裕之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 国際公開第2004/106517(WO,A1)
国際公開第2004/015107(WO,A1)
第64回日本癌学会学術総会予稿集,2005年 8月15日,p. 171、PP1-0283
第59回日本口腔科学会総会学術大会予稿集,2005年 9月10日,p. 483、1-FM-2-2
Prostate Cancer and Prostatic Diseases, (2005 Feb), Vol. 8, p. 108-118
Clinical Cancer Research, (2004), Vol. 10, p. 6572-6578
調査した分野 C12N 15/00
C12Q 1/68
A61P 35/00
A61K 48/00
A61K 31/713
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかを特異的に標的とする二本鎖siRNAであって、
19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNA、又は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAであり、
前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5、10から14、19から23のいずれかであり、
前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8、15から17、24から26のいずれかであり、
Akt1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAは、
前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5のいずれかであり、
前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8のいずれかであり、
Akt2遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAは、
前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号10から14のいずれかであり、
前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号15から17のいずれかであり、
Akt3遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAは、
前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号19から23のいずれかであり、
前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号24から26のいずれかである、
二本鎖siRNA。
【請求項2】
前記3’末端オーバーハング部分の2塩基の配列が、TTである請求項記載の二本鎖siRNA。
【請求項3】
Akt遺伝子特異的阻害剤であって、請求項1又は2に記載の二本鎖siRNAを含み、RNA干渉によりAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかの発現を特異的に阻害するAkt遺伝子特異的阻害剤。
【請求項4】
癌治療用の医薬組成物であって、請求項1又は2に記載の二本鎖siRNAの少なくとも1つを含む医薬組成物。
【請求項5】
さらに、アテロコラーゲンを含む請求項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記癌が、口腔癌又は前立腺癌である請求項4又は5に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Akt遺伝子に特異的なsiRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、RNA干渉(RNAinterference:RNAi)技術は、生命科学研究に頻繁に利用され、その有用性は広く確認されている。RNAiとは、二本鎖RNAによって、その配列特異的にmRNAが分解され、その結果遺伝子の発現が抑制される現象をいう。2001年に21塩基の低分子二本鎖RNAが哺乳動物細胞内でRNAiを媒介できることが報告されてより(非特許文献1参照)、siRNA(small interferece RNA)は、標的遺伝子の発現抑制方法として頻用されている。また、より高いRNAi効果を得るためのsiRNAの配列選択基準についても報告されている(非特許文献2参照)。RNAi技術は、医薬品への応用や、癌を含む種々の難治性疾患の治療への応用が期待されている。
【0003】
しかしながら、siRNAを臨床応用する場合、インターフェロン応答の問題がある。すなわち、高濃度の合成siRNAを細胞内に導入したり、細胞内において高濃度にsiRNAを発現させたりすると、インターフェロン応答が誘導され非特異的な発現阻害や非特異的な細胞増殖阻害が起こる。現在では、10nM以上の合成siRNAを細胞内導入するとインターフェロン応答が誘導されることが知られている。
【0004】
さらに、siRNAを臨床応用する場合、オフターゲット効果の問題がある。すなわち、siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できる優れた技術ではあるが、標的遺伝子以外の類似標的配列を有する遺伝子の発現も抑制することが明らかにされている(非特許文献3参照)。
【0005】
他方、Akt1遺伝子、Akt2遺伝子及びAkt3遺伝子を含むAkt遺伝子ファミリーは、癌遺伝子としての機能が知られており、種々の癌種においてその発癌、増殖、浸潤、及び転移への関与が示唆されている遺伝子である(非特許文献4)。
【0006】
しかしながら、これまでに、Akt1遺伝子などのAkt遺伝子ファミリーに特異的なsiRNAであって、上述したインターフェロン応答の問題や、オフターゲット効果の問題を回避できる臨床応用可能なsiRNAは報告されていない。

【非特許文献1】Elbashir SMら、「Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells.」 Nature 411 (6836): 494-498, 2001.
【非特許文献2】Reynolds Aら、「Rational siRNA design for RNA interference.」 Nat Biotechnol 22 (3): 326-330, 2004.
【非特許文献3】Jackson ALら、「Expression profiling reveals off-target gene regulation by RNAi.」 Nat Biotechnol 21 (6): 635-637, 2003.
【非特許文献4】Vivanco Iら、「The phosphatidylinositol 3-kinase-Akt pathway in human cancer.」 Nat Rev Cancer 2 (7): 489-501, 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかを特異的に標的とする臨床応用可能なsiRNAの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のsiRNAは、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかを標的とする二本鎖siRNAであって、19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNA、又は、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAであり、前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5、10から14、19から23のいずれかであり、前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8、15から17、24から26のいずれかである二本鎖siRNAである。なお、本発明の二本鎖siRNAは、いずれも、Akt遺伝子ファミリーに特異的なRNAiを媒介するという共通の活性を共有し、かつ、この共通の活性に不可欠な重要な構造要素、すなわち、RNAiを媒介するためのAkt遺伝子ファミリーに対応する共通した重要な構造要素を共有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明者らは、まず、口腔癌の治療標的分子について鋭意研究を重ね、Akt1が口腔癌において、治療標的分子となりうることを見出した。すなわち、ヒト全遺伝子を対象にした網羅的遺伝子発現解析を行い、培養ヒト不死化角化上皮細胞及び正常口腔粘膜組織には発現が認められず、培養ヒト口腔癌細胞及び口腔癌組織においてのみ共通して発現が認められる遺伝子として、Akt1遺伝子を同定した。
【0010】
次に、本発明者らは、Akt1遺伝子のsiRNAについてさらに鋭意研究を重ね、1nMという使用濃度であっても十分にRNAi効果を発揮することにより、インターフェロン応答の誘導回避が可能な二本鎖siRNAを見出した。そして、本発明者らは、Akt1遺伝子のsiRNAについて、BLASTサーチを駆使し、Akt1mRNAの非翻訳領域を含めた全配列より他の遺伝子にホモロジーを示さない配列を標的配列として選択し、オフターゲット効果を回避できる二本鎖siRNAを見出し、本発明に到達した。さらに本発明者らは、Akt1遺伝子のファミリー遺伝子であるAkt2及びAkt3遺伝子についても、1nMという使用濃度であっても十分にRNAi効果を発揮し、かつ、オフターゲット効果を回避できる二本鎖siRNAを見出した。
【0011】
本発明の二本鎖siRNAによれば、例えば、1nMという使用濃度であっても十分にRNAi効果を発揮できるから、好ましくは、インターフェロン応答を回避して使用できる。また、本発明の二本鎖siRNAは、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかに特異的であるから、好ましくは、オフターゲット効果を回避して使用できる。したがって、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、臨床応用可能であり、例えば、癌の治療、癌治療の医薬組成物、Akt1、Akt2及びAkt3のいずれかに特異的なAkt遺伝子特異的阻害剤等に利用できる。
【0012】
とりわけ、本発明の二本鎖siRNAがRNAi効果を発揮するAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子は口腔癌又は前立腺癌における治療標的分子であるから、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、口腔癌又は前立腺癌の治療や、口腔癌又は前立腺癌の医薬組成物等に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の二本鎖siRNAは、一態様として、Akt1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAであって、前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号1から5のいずれかであり、前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号6から8のいずれかである二本鎖siRNAである。なお、この態様の本発明の二本鎖siRNAは、いずれも、Akt1遺伝子に特異的なRNAiを媒介するという共通の活性を共有し、かつ、この共通の活性に不可欠な重要な構造要素、すなわち、RNAiを媒介するためのAkt1遺伝子に対応する共通した重要な構造要素を共有する。
【0014】
また、本発明の二本鎖siRNAは、一態様として、Akt2遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAであって、前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号10から14のいずれかであり、前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号15から17のいずれかである二本鎖siRNAである。なお、この態様の本発明の二本鎖siRNAは、いずれも、Akt2遺伝子に特異的なRNAiを媒介するという共通の活性を共有し、かつ、この共通の活性に不可欠な重要な構造要素、すなわち、RNAiを媒介するためのAkt2遺伝子に対応する共通した重要な構造要素を共有する。
【0015】
さらにまた、本発明の二本鎖siRNAは、一態様として、Akt3遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAであって、前記19塩基対の配列が、配列表の配列番号19から23のいずれかであり、前記27塩基対の配列が、配列表の配列番号24から26のいずれかである二本鎖siRNAである。なお、この態様の本発明の二本鎖siRNAは、いずれも、Akt3遺伝子に特異的なRNAiを媒介するという共通の活性を共有し、かつ、この共通の活性に不可欠な重要な構造要素、すなわち、RNAiを媒介するためのAkt3遺伝子に対応する共通した重要な構造要素を共有する。
【0016】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAにおいて、前記3’末端オーバーハング部分の2塩基の配列は、TT(チミン・チミン)であることが好ましい。
【0017】
本発明の二本鎖siRNAは、その他の態様として、前記配列表の配列番号1から8、10から17、19から26の配列において、1又は数個の塩基が修飾され、又は置換、付加若しくは欠失し、かつ、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかに特異的なRNA干渉を誘導する二本鎖siRNAである。
【0018】
本発明のAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤は、RNA干渉によりAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかの発現を特異的に阻害するAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤であって、本発明の二本鎖siRNAを含む。
【0019】
本発明の医薬組成物は、癌治療用の医薬組成物であって、本発明の二本鎖siRNAの少なくとも1つを含む医薬組成物である。本発明の医薬組成物は、さらに、アテロコラーゲンを含むことが好ましい。本発明の医薬組成物において、治療用途の対象となる癌は、特に制限されないが、例えば、口腔癌、前立腺癌等があげられ、中でも、口腔癌であることが好ましい。
【0020】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーは、一態様として、Akt1遺伝子のAkt1mRNA、Akt1タンパク質、リン酸化Akt1タンパク質、及び、Akt1タンパク質に対する自己抗体からなる群から選択される口腔癌の腫瘍マーカーであって、前記Akt1mRNAが、GenBankアクセッション番号(2005年10月31日付)がNM_005163、NM_001014431及びNM_001014432からなる群から選択される塩基配列からなるmRNAであり、前記Akt1タンパク質が、配列表の配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、被検者の口腔由来試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、被検者における口腔癌の存在を示す口腔癌の腫瘍マーカーである。
【0021】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーは、一態様として、Akt2遺伝子のAkt2mRNA、Akt2タンパク質、リン酸化Akt2タンパク質、及び、Akt2タンパク質に対する自己抗体からなる群から選択される口腔癌の腫瘍マーカーであって、前記Akt2mRNAが、GenBankアクセッション番号(2006年8月20日付)がNM_001626で表される塩基配列からなるmRNAであり、前記Akt2タンパク質が、配列表の配列番号18のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、被検者の口腔由来試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、被検者における口腔癌の存在を示す口腔癌の腫瘍マーカーである。
【0022】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーは、一態様として、Akt3遺伝子のAkt3mRNA、Akt3タンパク質、リン酸化Akt3タンパク質、及び、Akt3タンパク質に対する自己抗体からなる群から選択される口腔癌の腫瘍マーカーであって、前記Akt3mRNAが、GenBankアクセッション番号(2006年8月20日付)がNM_005465で表される塩基配列からなるmRNAであり、前記Akt3タンパク質が、配列表の配列番号27のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、被検者の口腔由来試料における前記腫瘍マーカーの陽性が、被検者における口腔癌の存在を示す口腔癌の腫瘍マーカーである。
【0023】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの使用方法は、被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の口腔癌の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む口腔癌の腫瘍マーカーの使用方法である。
【0024】
本発明の検出キットは、口腔癌の腫瘍マーカーを検出するための検出キットであって、前記Akt1、Akt2及びAkt3mRNAのいずれかを検出するためのプローブ及びプライマーの少なくとも一方であるポリヌクレオチド、前記Akt1、Akt2及びAkt3タンパク質のいずれかを検出するための抗体、並びに、抗Akt1、Akt2及びAkt3タンパク質抗体のいずれかを検出するための抗原及び抗体からなる群から選択される少なくとも一つを含む検出キットである。
【0025】
次に、本発明の二本鎖siRNAについて詳しく説明する。
【0026】
まず、本発明において、「Akt遺伝子」又は「Akt遺伝子ファミリー」とは、前述のとおり癌遺伝子としての機能が知られており、種々の癌種においてその発癌、増殖、浸潤、及び転移への関与が示唆されている遺伝子又は遺伝子ファミリーである(非特許文献4)。本発明において、「遺伝子ファミリー」とは、ゲノム中に存在する共通の祖先を持つ複数の遺伝子群の総称をいい、「Akt遺伝子ファミリー」は、Akt1遺伝子、Akt2遺伝子及びAkt3遺伝子を含む。本発明の二本鎖siRNAの標的となるAkt1遺伝子としては、好ましくは、ヒトAkt1遺伝子であって、その配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_005163、NM_001014431、及び、NM_001014432等から入手可能である。また、本発明の二本鎖siRNAの標的となるAkt2遺伝子としては、好ましくは、ヒトAkt2遺伝子であって、その配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_001626等から入手可能である。さらにまた、本発明の二本鎖siRNAの標的となるAkt2遺伝子としては、好ましくは、ヒトAkt2遺伝子であって、その配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_005465等から入手可能である。
【0027】
本発明者らは、ヒト全遺伝子に対するマイクロアレイを用いた網羅的解析を行い、培養ヒト不死化角化上皮細胞及び正常口腔粘膜組織には発現が認められず、培養ヒト口腔癌細胞及び口腔癌組織においてのみ共通して発現が認められる遺伝子を探索した。その工程のフロー図を図5に示す。これにより、口腔癌の治療標的分子として、Akt1遺伝子を見出した。さらに、本発明者らは、本発明の二本鎖siRNAによりAkt1遺伝子の発現を阻害すると、培養ヒト口腔癌細胞の増殖は阻害されるが培養ヒト不死化角化上皮細胞の増殖には全く影響を及ぼさないことも見出した。さらにまた、Akt1遺伝子と同じ遺伝子ファミリーであるAkt2遺伝子及びAkt3遺伝子についても、正常口腔粘膜組織に比較して、口腔癌組織において過剰発現する遺伝子であることを見出した。
【0028】
本発明において、「siRNA」とは、RNAiを媒介可能な短鎖のRNA分子であって、一般には、21塩基~27塩基の二本鎖低分子RNAをいう。
【0029】
本発明の二本鎖siRNAは、2つの態様があり、第1の態様が、19塩基対と2塩基の3’末端オーバーハングとからなる21塩基の二本鎖siRNAであり、第2の態様が、27塩基対からなるブラントエンドの二本鎖siRNAである。前記19塩基対及び前記27塩基対の配列を、下記表1A~1Cに示す。これらの表において、左欄が、それぞれのsiRNAのコードネームであり、右欄が、SeqID、すなわち、配列表の配列番号である。下記表1AがAkt1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAの表であり、下記表1BがAkt2遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAの表であり、下記表1CがAkt3遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAの表である。
【0030】
ここで、「特異的に標的とする」とは、オフターゲット効果がないことをいう。すなわち、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子は上述したとおり同じAkt遺伝子ファミリーに含まれる互いに相同性の高い遺伝子群であるが、標的とするAkt遺伝子以外のAktファミリー遺伝子にRNAi効果を及ぼすこと無い非常に高い特異性を示すことをいう
。例えば、下記表1AのsiRNAは、Akt1遺伝子の発現に対してのみRNAi効果
を発揮し、Akt2及びAkt3遺伝子の発現には影響を及ぼさない。下記表1B及びCに記載のsiRNAも同様に、それぞれ、Akt2及びAkt3遺伝子の発現に対してのみRNAi効果を発揮する。
【0031】
【表1A】
JP0005232990B2_000002t.gif

【0032】
【表1B】
JP0005232990B2_000003t.gif

【0033】
【表1C】
JP0005232990B2_000004t.gif

【0034】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAにおいて、前記3’末端のオーバーハングとは、5’末端から19merが相補的な配列である2本の21merのRNA鎖が対合して二本鎖を形成したとき19塩基対の両端から突出する3’末端の2merの部分をいう。前記3’末端オーバーハングの2塩基の配列は、例えば、両端とも、TT(チミン・チミン)が好ましい。なお、前記3’オーバーハングの2塩基の配列は、これに制限されず、RNAi効果や細胞増殖抑制効果に実質的に影響を及ぼさない範囲であれば、任意の天然核酸塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシシル)、並びに、天然及び人工の公知の修飾塩基であってもよい。また、前記3’末端オーバーハング部分のヌクレオチドは、通常、リボヌクレオチドを使用できるがこれに制限されず、RNAi効果や細胞増殖抑制効果に実質的に影響を及ぼさない範囲であれば、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、その他の公知のヌクレオチド類似体を使用してもよい。さらに、本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAは、必要に応じて、前記3’末端オーバーハングに代えて、5’末端オーバーハングとしてもよい。
【0035】
本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAの19塩基対の配列は、Akt1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Aに記載のとおり、A6、A22、A33、A56及びA58(それぞれ、配列表の配列番号1~5)の5種類が使用できるが、好ましくは、A22及びA58であって、より好ましくは、A58である。また、Akt2遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Bに記載のとおり、B36、B172、B395、B431及びB477(それぞれ、配列表の配列番号10~14)の5種類が使用できるが、好ましくは、B395及びB431であって、より好ましくは、B431である。さらにまた、Akt3遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Cに記載のとおり、C169、C498、C941、C1229及びC1321(それぞれ、配列表の配列番号19~23)の5種類が使用できるが、好ましくは、C169及びC941であって、より好ましくは、C169である。
【0036】
本発明の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNAは、27merの相補的な2本のRNA鎖が対合して形成した二本鎖であるから、その末端は平滑である。本発明の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNAの27塩基対の配列は、Akt1遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Aに記載のとおり、A1392、A2224及びA2239(それぞれ、配列表の配列番号6~8)の3種類が使用できるが、好ましくは、A1392及びA2239であって、より好ましくは、A1392である。また、Akt2遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Bに記載のとおり、B33、B390及びB475(それぞれ、配列表の配列番号15~17)の3種類が使用できるが、好ましくは、B33及びB390であって、より好ましくは、B33である。Akt3遺伝子を特異的に標的とする二本鎖siRNAとしては、上記表1Cに記載のとおり、C166,C496及びC1224(それぞれ、配列表の配列番号24~26)の3種類が使用できるが、好ましくは、C166及びC496であって、より好ましくは、C496である。
【0037】
本発明の二本鎖siRNAの塩基対部分の配列(配列表の配列番号1~8、10~17、19~26)は、Akt1遺伝子特異的なRNAiを誘導できる範囲において、1又は数個の塩基が修飾され、又は置換、付加若しくは欠失したものであってもよい。前記数個とは、例えば、2、3、4個である。
【0038】
本発明の二本鎖siRNAの製造方法は、インビトロで化学的又は酵素的に合成しても、又は、インビボで合成してもよく、その製法は特に制限されないが、なかでも、従来公知の方法により化学合成して製造することが好ましい。合成二本鎖siRNAであれば、濃度調節が容易となり臨床応用に際してインターフェロン応答の回避が容易となる。また、コンタミネーションの防止が容易であり安全性においても利点がある。例えば、本発明の21塩基オーバーハング二本鎖siRNAのA58を製造する場合、まず、配列表の配列番号5の配列の3’末端に2塩基のオーバーハングを加えた21merのRNA鎖、及び、前記配列番号5の配列の相補配列の3’末端に2塩基のオーバーハングを加えた21merのRNA鎖をそれぞれ化学合成する。次に、前記2本のRNA鎖が対合する条件で対合させ、本発明の21塩基のオーバーハング二本鎖siRNAを得る。使用に際しては、必要に応じて、従来公知の方法により適宜精製することが好ましい。
【0039】
したがって、本発明は、その他の態様として、二本鎖siRNAの製造方法であって、前記二本鎖siRNAが、本発明の二本鎖siRNAであり、配列表の配列番号1~5、10~14、19~23のいずれかの配列及びその相補配列にそれぞれ2塩基のオーバーハングを加えた2本のRNA鎖、又は、配列表の配列番号6~8、15から17、24から26のいずれかの配列及びその相補配列の2本のRNA鎖を合成する合成工程と、合成した前記2本のRNA鎖を対合して二本鎖RNAとする対合工程とを含む製造方法を含む。
【0040】
次に、本発明の二本鎖siRNAの使用方法について説明する。本発明の二本鎖siRNAは、インビトロにおいて細胞や組織に対して使用できることに加えて、ヒトに対して臨床応用可能である。ヒトへの投与方法は、特に制限されず、適宜、従来公知のデリバリーシステムを利用できる。なかでも、例えば、口腔癌等のように、直視直達の可能な部位に対しては、例えば、アテロコラーゲンを用いた局所投与法が好ましい。前記アテロコラーゲンは、例えば、局所止血剤として既に臨床応用されており、また、前記アテロコラーゲンを用いたsiRNAの局所投与法は、血管内皮増殖因子(VEGF)を分子標的とした動物実験でその有意性が示されている(Takei Yら、Cancer Res 64(10):3365-3370、2004)。
【0041】
また、その他のデリバリーシステムとして、生体内での分解を防ぎ、細胞内透過性を高めるための化学修飾(Rossi JJ.、Nature 432(7014):155-156、2004; Soutschek Jら、Nature 432(7014):173-178、2004)やカチオニックリポソーム(Yano Jら、Clin Cancer Res 10(22):7721-7726、2004)を用いたデリバリーシステムを利用しても良い。さらに、必要に応じて、本発明の二本鎖siRNAを発現するsiRNA発現ベクターを構築し、遺伝子治療技術を利用したデリバリーシステムを利用することもできる。
【0042】
本発明の二本鎖siRNAは、とりわけ、口腔癌の治療や、口腔癌の治療の用途に使用する医薬組成物若しくはそれらの製造に使用することが好ましい。口腔癌とは、一般に、歯肉、舌、頬部、口蓋、口底、唾液腺等の口腔を構成する部位の粘膜により発生する癌をいう。口腔は、摂食、構音等、日常生活を営む上で極めて重要な機能を担っている。手術手技の進歩により進行口腔癌の治療成績は向上しているものの、治療後のQOL(生活の質)の低下は避けられない。したがって、進行口腔癌に対しては特に手術を用いない根治性の高い新規治療法の開発が急務となっている。マウスの骨肉腫及び肝細胞癌のモデルで単一の癌遺伝子の発現を一時的に抑制するのみで、腫瘍細胞の分化誘導による治癒が観察され、癌遺伝子への依存が癌のアキレス腱であることが示された。また、ヒト癌においても、EGFR,Her-2、Bcr-Abl等の単一の癌遺伝子を分子標的とする薬剤が開発され、癌臨床においてその有用性が示されている。本発明においては、Akt1遺伝子を分子標的とする。前述したとおり、Akt1が、少なくとも口腔癌において分子標的となることは、本発明者らが初めて見出した事実である。
【0043】
すなわち、本発明の二本鎖siRNAを使用してRNAi効果によりAkt1遺伝子の発現を阻害することで、好ましくは、口腔癌細胞の細胞増殖を抑制できる。これに対し、口腔癌細胞以外の口腔細胞は、本発明の二本鎖siRNAの影響を受けない。なお、Akt1は、口腔癌のみならず、様々な癌種の癌遺伝子として知られているから、本発明の二本鎖siRNAは、口腔癌に限られず、例えば、前立腺癌等の癌治療一般や、癌治療に使用する医薬組成物一般若しくはそれらの製造に使用できる。また、同じ遺伝子ファミリーに属するAkt2遺伝子及びAkt3遺伝子も同様に、口腔癌、前立腺癌等の癌治療一般や、癌治療に使用する医薬組成物一般に使用できる。
【0044】
前述したとおり、従来、siRNAを臨床応用する上で大きな問題が2つあった。すなわち、インターフェロン応答が誘導される問題と、オフターゲット効果の問題である。前記インターフェロン応答を回避するには、細胞内導入濃度を少なくとも10nM未満とする必要があるが、本発明の二本鎖siRNAは、好ましくは、1nMという超低濃度でAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかに対して十分なRNAi効果を発揮することができる。
【0045】
また、前記オフターゲット効果についても、本発明の二本鎖siRNAの標的配列は、BLASTサーチを駆使してAkt1、Akt2及びAkt3mRNAのそれぞれの非翻訳領域も含めた全配列により他の遺伝子にホモロジーを示さない配列であるため、オフターゲット効果を回避できる。例えば、Akt遺伝子は、Akt1からAkt3まで3種類が知られており、それぞれ、約75%の相同性がある。そして、Akt1からAkt3のすべてを阻害すると、細胞にとって致死的であることが知られている。しかし、本発明の二本鎖siRNAを正常細胞に使用しても影響がなく、オフターゲット効果は回避される。このように、本発明の二本鎖siRNAは、臨床応用における大きな2つの障壁をクリアしており、臨床応用可能である。なお、臨床応用においては、本発明の二本鎖siRNAは、合成二本鎖siRNAであることが好ましい。
【0046】
したがって、本発明は、その他の態様として、RNA干渉によりAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれかの発現を特異的に阻害するAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤であって、本発明の二本鎖siRNAを含むAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤を含む。本発明のAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤は、細胞内のAkt1、Akt2及びAkt3遺伝子のいずれか一種類、二種類、又は、全部の発現を特異的にノックダウンするために、インビトロ及びインビボで使用できる。その剤形は、特に制限されない。本発明のAkt遺伝子ファミリー特異的阻害剤は、阻害するAkt遺伝子ファリミーの種類に応じて本発明の二本鎖siRNAを一種類、二種類、又は、全種類含むことができる。
【0047】
さらに、本発明は、その他の態様として、癌、好ましくは口腔癌又は前立腺癌、より好ましくは口腔癌の治療方法であって、本発明の二本鎖siRNAを使用することを含む癌の治療方法を含む。本発明の治療方法は、既存の放射線及び/又は抗癌剤の使用と本発明の二本鎖siRNAの使用とを併用することを好ましく含む。また、さらにその他の態様として、本発明は、癌、好ましくは口腔癌又は前立腺癌、より好ましくは口腔癌の治療における二本鎖siRNAの使用であって、前記二本鎖siRNAが、本発明の二本鎖siRNAである使用を含む。同様に、本発明の二本鎖siRNAの使用は、既存の放射線及び/又は抗癌剤の使用との併用を好ましく含む。いずれの態様においても、使用する本発明の二本鎖siRNAは、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子を標的とする本発明の二本鎖siRNAのいずれか一種類でもよく、これらを二種類又は三種類を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
次に、本発明の医薬組成物について説明する。本発明の医薬組成物は、癌治療用の医薬組成物であって、本発明の二本鎖siRNAを含むものである。本発明の組成物に含まれる本発明の二本鎖siRNAは、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子を標的とする本発明の二本鎖siRNAのいずれか一種類でもよく、これらの二種類又は三種類を組み合わせて含んでもよい。本発明の医薬組成物は、さらに、アテロコラーゲンを含むことが好ましい。上述のとおり、本発明の医薬組成物の治療用途の対象となる癌は、特に制限されないが、好ましくは口腔癌又は前立腺癌であって、口腔癌であることがより好ましい。
【0049】
本発明の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるキャリアを含んでもよい。前記薬学的キャリアとしては、特に制限されないが、例えば、本発明の二本鎖siRNAが、標的の部位、組織、細胞等に侵入する効率を高めることができるキャリア、例えば、リポソーム、カチオンリポソーム等があげられる。本発明の医薬組成物の剤形は、特に制限されず、例えば、注射剤、クリーム剤、軟膏、錠剤、懸濁剤等があげられる。また、投与方法も特に制限されず、例えば、注射、経口、局所、鼻内、直腸、静脈内、動脈内投与等があげられる。
【0050】
次に、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーについて説明する。本発明の口腔癌の腫瘍マーカーは、Akt1遺伝子の発現をマーカーとして利用するものである。本発明において、「口腔癌の腫瘍マーカー」とは、口腔癌細胞の目印(マーカー)になる物質であって、口腔癌の診断や治療の判断基準として役立つ物質の総称をいう。本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおいて、マーカーとなる物質は、Akt1、Akt2又はAkt3遺伝子の転写産物であるAkt1、Akt2又はAkt3mRNA、前記転写産物の翻訳産物であるAkt1、Akt2又はAkt3タンパク質、リン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質、Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質に対する自己抗体の少なくとも一つである。本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおいて、前記「被検試料」とは、特に制限されないが、例えば、リンパ節、唾液、血液等である。本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおいて、腫瘍マーカーが「陽性」であるとは、腫瘍マーカーの測定値が、所定のしきい値より大きい場合のことをいう。前記しきい値は、当該技術分野の当業者であれば、例えば、健常者や良性の腫瘍患者における前記腫瘍マーカーの数値を統計学的に処理した値に基づいて定めることができる。前記しきい値としては、例えば、健常者や良性の腫瘍患者等の平均の値の3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、及びそれ以上の値があげられる。
【0051】
前記Akt1mRNAの塩基配列は、前述のとおり、GenBankアクセッション番号(2005年10月31日付)NM_005163、NM_001014431及びNM_001014432に登録されている。前記Akt1タンパク質は、配列表の配列番号9のアミノ酸配列からなるAkt1タンパク質である。また、前記リン酸化Akt1タンパク質のリン酸化部位は、配列表の配列番号9の第473番目のセリン(Ser473)である。前記Akt2mRNAの塩基配列は、前述のとおり、GenBankアクセッション番号(2006年8月20日付)がNM_001626に登録されている。前記Akt2タンパク質は、配列表の配列番号18のアミノ酸配列からなるAkt2タンパク質である。また、前記リン酸化Akt2タンパク質のリン酸化部位は、配列表の配列番号18の第474番目のセリン(Ser474)である。前記Akt3mRNAの塩基配列は、前述のとおり、GenBankアクセッション番号(2006年8月20日付)がNM_005465に登録されている。前記Akt3タンパク質は、配列表の配列番号27のアミノ酸配列からなるAkt3タンパク質である。また、前記リン酸化Akt3タンパク質のリン酸化部位は、配列表の配列番号27の第472番目のセリン(Ser472)である。前記塩基配列及びアミノ酸配列において、突然変異や遺伝子多型等に起因した1~数個の置換・欠失・付加等の相違があるものであっても、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーに含まれる。前記数個とは、例えば、2、3、4個である。また、前記Akt1、Akt2又はAkt3mRNA及び前記Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質の一部分も本発明の口腔癌の腫瘍マーカーに含まれる。
【0052】
次に、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの使用方法について説明する。本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの使用方法としては、特に制限されず、従来公知の腫瘍マーカーと同様の使用方法にて使用できるが、例えば、被検者から被検試料を準備する準備工程と、前記被検試料中に本発明の口腔癌の腫瘍マーカーを検出する検出工程と、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する判定工程とを含む使用方法があげられる。まず、前記準備工程において、被検者から被検試料を準備する。次に、前記検出工程において、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーのマーカー物質であるAkt1、Akt2又はAkt3mRNA、Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質、リン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質、抗Akt1、Akt2又はAkt3若しくは抗リン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質自己抗体等を、後述するように、それぞれ、例えば、従来公知の方法等を用いて検出し、最後に、前記判定工程において、前記腫瘍マーカーが陽性か否かを判定する。検出対象は1種類に限られず、例えば、Akt1、Akt2及びAkt3のマーカー物質のいずれか2種類又は3種類を組み合わせて使用することも好ましい。
【0053】
前記判定工程における本発明の口腔癌の腫瘍マーカーが陽性か陰性かの判定は、前述のとおり、例えば、健常者等の値を基準として設定するしきい値と比較して判定することができる。
【0054】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおける前記Akt1、Akt2又はAkt3mRNAを検出する方法としては、特に制限されないが、前記RNAを定量できる従来公知の方法があげられ、その方法にも特に制限はないが、例えば、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットプロット、RNaseプロテクションアッセイ等のほか、マイクロアレイを用いる方法、リアルタイムPCR法等のPCRを利用する方法、前記RNAを直接測定する方法等の迅速な測定が可能な方法があげられる。前記定量は、前記判定工程において前記しきい値との比較ができる相対的な定量であってもよく、例えば、適当な内部標準や外部標準を利用することができる。
【0055】
前記マイクロアレイを用いる方法としては、前記Akt1、Akt2又はAkt3mRNAに対応するプローブが配置されたマイクロアレイを準備し、このマイクロアレイに、前記被検試料中の前記Akt1、Akt2又はAkt3mRNAを鋳型として調製した標識化ターゲットをハイブリダイズさせ、前記プローブに結合した前記ターゲットの標識シグナルを測定して前記RNA鎖を定量する方法があげられる。前記リアルタイムPCR法としては、例えば、被検試料のトータルRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型に前記マーカー転写産物領域をPCRで増幅し、リアルタイムモニタリング用試薬を用いて増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングして解析する方法があげられる。また、前記mRNAを直接測定する方法としては、例えば、Invader(登録商標:Third Wave Technologies社)RNAアッセイ等があげられる。ただし、前記Akt1mRNAを検出する方法としては、これらの方法に限られず、種々の定量方法を適用できる。
【0056】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおける前記Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫学的測定方法があげられる。前記免疫学的測定方法としては、ウェスタンブロット、ELISA、サンドウィッチELISA、免疫組織化学染色等があげられる。前記抗体は、前記Akt1タンパク質等を用いた従来公知の方法で作製してもよく、市販のものを購入してもよい。前記抗体は、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。
【0057】
本発明の口腔癌の腫瘍マーカーにおける前記Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質に対する自己抗体を検出する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記自己抗体の抗原であるAkt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質を固相に固定化し、前記自己抗体と抗原抗体反応により複合体を形成させ、さらに、前記自己抗体に対する標識抗体により前記複合体を検出する方法等が挙げられる。
【0058】
次に、本発明の検出キットについて説明する。本発明の検出キットは、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの検出するためのキットである。本発明のキットは、第1の態様として、前記マイクロアレイを含む検出キットが挙げられる。検出前記キットには、さらに、被検試料からトータルRNAを調製するプライマーや試薬、ターゲットを調製するための標識化された本発明のプライマーや試薬等を含んでもよい。前記試薬としては、従来公知の試薬が利用でき、例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、標識化合物、バッファー等があげられる。また、本発明の検出キットは、第2の態様として、前述のPCR等の遺伝子増幅技術を用いたAkt1、Akt2又はAkt3mRNA検出/測定方法に使用するプローブやプライマーを含むキットが挙げられる。これらのプローブやプライマーの配列は、特に制限されず、当業者であれば容易に設定可能である。前記検出キットは、例えば、マイクロアレイを製造する場合や、リアルタイムPCR法により検出する場合に使用できる。さらに、本発明の検出キットは、第3の態様として、Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質に対する抗体を含む検出キットが挙げられ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA等の前記ポリペプチドの免疫学的測定に使用できる。第4の態様として、自己抗体の抗原であるAkt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質、並びに、前記自己抗体に対する標識化抗体を含む検出キットが挙げられ、例えば、上述したとおり、自己抗体の免疫学的測定に使用できる。前記自己抗体を検出することで、間接的にAkt1、Akt2又はAkt3遺伝子の発現を検出できる。前記Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質及び/又はリン酸化Akt1、Akt2又はAkt3タンパク質は、固相に固定化されていることが好ましい。本発明の検出キットは、上述のいずれの態様においても取扱説明書を含んでもよい。
【0059】
さらに、本発明は、口腔癌の診断方法であって、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーを使用することを含む口腔癌の診断方法を含む。また、本発明は、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの使用であって、口腔癌の診断における本発明の口腔癌の腫瘍マーカーの使用を含む。
【0060】
以下に、本発明を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0061】
前記表1Aの5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(A6、A22、A33、A56及びA58;それぞれ、配列表の配列番号1~5)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(A1392、A2224及びA2239;それぞれ、配列表の配列番号6~8)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、それぞれの合成二本鎖siRNAについて、1nMの濃度で使用した場合のAkt1遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を確認した。具体的には、以下のようにして行った。
【0062】
合成二本鎖siRNAの調製
前記5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(A6、A22、A33、A56及びA58)は、配列表の配列番号1~5の19塩基の配列及びその相補配列それぞれの3’末端にTT配列からなる2塩基オーバーハング部分を加えたRNA鎖を、定法により化学合成し、それらを対合させて調製した。また、前記3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNAは、配列表の配列番号6~8の配列及びその相補配列のRNA鎖を定法により化学合成し、それらを対合させて調製した。以下のRNAi効果及び細胞増殖抑制効果の確認に際しては、適宜、HPLC等で精製したものを使用した。
【0063】
細胞及び培養法
RNAi効果の確認には、ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株SASに、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を導入して分離したGFP安定発現株GFP-SAS細胞を用いた。前記細胞の培養には、10%ウシ胎児血清(FBS;Biosource International社製)、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン、0.25mg/mlアンホテリシンB(Invitrogen社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma-Aldrich社製)を増殖培養液として用い、空気中に5%の割合で炭酸ガスを含む培養器内で、37℃で行った。
【0064】
合成二本鎖siRNAの細胞内導入
60mm径プラスチックペトリ皿(商標:Falcon、BD Biosciences社製)に、8×105個の前記GFP-SAS細胞を植え込み、24時間培養後opti-MEM(Invitrogen社製)にて2回洗浄し、1nMの合成二本鎖siRNAを含むLipofectamine2000(Invitrogen社製)溶液を加えた。5時間後10%FBSを含むDMEMに培地交換した。
【0065】
ウエスタンブロッティング法
上述のとおり、合成二本鎖siRNAを導入後48時間培養した後に、細胞をCelLytic M Cell Lysis Reagent(Sigma-Aldrich社製)を用いて可溶化した。前記可溶化試料を、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動)にて展開し、Mini-PROTEANII(Bio-Rad社製)を用いて、2時間PDVF(polyvinylidene difuoeide)膜(Millipore社製)に転写した。転写後は、5%スキムミルク(和光純薬社製)を含むT-TBS(25mM Tris-HCl、125mM NaCl、0.1% Tween20;Sigma-Aldrich社製)にて4℃、1晩ブロッキングした。さらに、一次抗体をブロッキング溶液にて希釈し、室温にて1時間反応させ、前記T-TBS溶液にて3回洗浄後、二次抗体を同様に1時間反応させた。ECLplusキット(Amersham Biosciences社製)にて発色させた後、LAS3000(富士フィルム社製)を用いてデジタル画像化した。
【0066】
細胞増殖評価法
前記GFP-SAS細胞に前記合成二本鎖siRNAを導入した細胞を、6ウェルマイクロプレート(商標:Falcon、BD Biosciences社製)に5×104個植え込み、4日間培養した後、0.05%トリプシン-0.53mM EDTA(Invitrogen社製)にて細胞を回収し、Z1 Coulter Counter(Beckman Coulter社製)を用いて細胞数を計測した。
【0067】
RNAi効果についての結果
前記8種類の合成二本鎖siRNAを前記培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株GFP-SASに導入し、上述のとおり、RNAi効果をAkt1タンパク質の発現レベルで評価した。その結果、前記8種類の全ての合成二本鎖siRNAが、1nMの濃度で標的遺伝子Akt1の発現を有意に抑制することが確認された。その結果の一例を図1に示す。同図において、上段が、Akt1タンパク質に対するウエスタンブロッティングの結果を示し、下段が、内部対照マーカーであるβ-チューブリンに対するウエスタンブロッティングの結果を示す。また、同図において、一番左のレーンは、GFP遺伝子に対する合成二本鎖siRNA(21塩基オーバーハング)を導入した場合のコントロールである。同図に示すとおり、前記8種類の中でも、A58、A1392、及びA2239の3種類の合成二本鎖siRNAは、80%以上の顕著なRNAi効果を示した。
【0068】
細胞増殖抑制効果についての結果
前記8種類の合成二本鎖siRNAを前記培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株GFP-SASに導入し、上述のとおり、細胞増殖抑制効果を評価した。その結果、前記8種類の全ての合成二本鎖siRNAが、1nMの濃度で前記口腔癌細胞の増殖を有意に抑制することが確認された。その結果の一例を図2に示す。同図において、左3レーンは、左から、それぞれ、siRNAを導入しなかった場合、GFPを標的とした21塩基オーバーハングsiRNAを導入した場合、及び、GFPを標的とした27塩基ブラントエンドsiRNAを導入した場合のコントロールである。また、同図において、縦軸は、前記siRNAを導入しなかった場合の細胞数を1とした場合の相対的な細胞数を示す。同図に示すとおり、前記8種類の中でも、A56、A58、及びA1392の3種類の合成二本鎖siRNAは、70%以上の顕著な口腔癌細胞の増殖抑制効果を示した。
【0069】
上述のとおり、前記8種類の合成二本鎖siRNAは、1nMという超低濃度でも、有意なAkt1遺伝子を標的としたRNAi効果及び口腔癌細胞の増殖抑制効果を示した。そのなかでも、A58及びA1392は、とりわけ優れたRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を示した。
【実施例2】
【0070】
Akt1遺伝子が口腔癌に共通して発現しており、Akt1タンパク質が口腔癌の腫瘍マーカーとなることを確認した。
【0071】
Akt1タンパク質の検出
10種類の口腔癌細胞株におけるAkt1タンパク質を、ウェスタンブロットにより検出した。その結果の一例を図3に示す。前記ウェスタンブロットは、定法により行った。同図において、第1レーンは、不死化ヒト角化上皮細胞を使用した非口腔癌細胞のコントロールであり、第2~11レーンは、培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株由来の試料である。同図に示すとおり、Akt1タンパク質は、口腔癌細胞にのみ共通して発現していた。
【0072】
口腔癌組織におけるAkt1タンパク質の免疫組織化学染色
抗Akt1タンパク質抗体を用いて、63症例の口腔扁平上皮癌組織について定法により免疫組織化学染色し、前記口腔癌組織におけるAkt1の陽性率を確認した。前記免疫化学染色の一例を図4に示す。同図において左図は、正常口腔粘膜を使用したコントロールである。前記口腔癌組織におけるAkt1陽性率の結果を下記表2に示す。同表のとおり、免疫組織化学染色によるAkt1の陽性率は90%を超えており、本発明の口腔癌の腫瘍マーカーは、極めて有用であることが確認された。
【0073】
【表2】
JP0005232990B2_000005t.gif

【実施例3】
【0074】
上記表1Aに示すAkt1遺伝子を標的とした8種類の合成二本鎖siRNAの口腔癌細胞浸潤増殖抑制効果を確認した。すなわち、5×104個のGFP-SAS細胞を0.5mlのコラーゲンゲルに封入したのち、1nMの濃度で合成siRNAを細胞内に導入した。4日間培養したのち、コラゲナーゼでコラーゲンゲルを分解し、細胞を回収し、細胞数を計測した。その結果を図6に示す。同図に示すとおり、前記8種類の合成二本鎖siRNAはすべて有意に口腔癌細胞の浸潤増殖を抑制できることが示された。
【実施例4】
【0075】
上記表1Aに示すAkt1遺伝子を標的とした8種類の合成二本鎖siRNAのインビボにおける抗腫瘍活性の効果をヌードマウス背部皮下腫瘍モデルを用いて確認した。すなわち、GFP-SAS細胞1×106個を6週齢雄のBalb/Cヌードマウス背部皮下に移植して腫瘍形成を確認した後、合成二本鎖siRNAをアテロコラーゲン(商品名:AteloGene、高研社製)と混合して投与した。前記投与は、腫瘍周囲に注入する局所投与(6日間隔、3回)と静脈内投与(4日間隔、3回)の2つの方法で行った。腫瘍体積を長径×短径×高さ×0.5236の計算式を用いて算出し、合成二本鎖siRNAの抗腫瘍活性を評価した。
【0076】
Akt1遺伝子を標的とした合成二本鎖siRNAとしてA22及びA58を用い、対照としてsiRNAを導入しない偽処理(-)及びGFPを標的とした21塩基オーバーハングsiRNAをコントロールとして用いた場合の結果を図7及び図8に示す。図7は局所投与の結果であり、図8は全身投与(静脈投与)の結果である。図7(A)に示すとおり、A22及びA58を局所投与した場合、ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞の腫瘍形成を著しく抑制できることが確認された。図7(B)は、ヌードマウスの背部の脊椎を挟んで左右に腫瘍を形成させ、左側にA58、右側にコントロールを局所投与した結果の一例を示す写真である。図7(B)に示すとおり、Akt1遺伝子を標的とした本発明の合成二本鎖siRNAの抗腫瘍活性は視覚的にも明らかであった。図8(A)に示す全身投与の結果も同様にA22及びA58が腫瘍形成を著しく抑制できたことを示す。図8(B)は形成された腫瘍を取り出して大きさを計測した写真であって、上段は光学写真、下段はGFPの蛍光を撮影した写真である。このように局所投与及び全身投与のいずれの場合もAkt1遺伝子を標的とした本発明の合成二本鎖siRNAは、優れた抗腫瘍活性を示した。これらの結果は、本発明の合成二本鎖siRNAの癌治療への臨床応用が可能であることを示す。
【実施例5】
【0077】
前記表1Bの5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(B36、B172、B431、B477;それぞれ、配列表の配列番号10~14)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(B33、B390、B475;それぞれ、配列表の配列番号15~17)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、それぞれの合成二本鎖siRNAについて、1nMの濃度で使用した場合のAkt2遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を2種類のヒト口腔癌細胞株(GFP-ACC2及びGFP-ACCM)において確認した。
【0078】
使用したいずれの口腔癌細胞株も実施例1のGFP-SAS株と同様に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を導入して分離したGFP安定発現株である。これらの細胞における1nMの濃度で使用した場合のAkt2遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果の結果の一例を図9(GFP-ACC2細胞株)及び図10(GFP-ACCM細胞株)に示す。なお、これらの図には、B36、B172、B395、B431及びB477についての結果のみを示す。両図において上段の棒グラフは前記口腔癌細胞株の肝細胞増殖因子依存性浸潤増殖に対する本発明のAkt2標的siRNAによる細胞増殖抑制効果を示し、下段の写真はAkt2タンパク質のウェスタンブロットの結果であってRNAi効果を示す。これらの結果が示すとおり、本発明のAkt2遺伝子を標的としたsiRNAは、口腔癌細胞においてRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を発揮しうることが示さ
れた。
【実施例6】
【0079】
前記表1Cの5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(C169、C498、C941、C1229、C1321;それぞれ、配列表の配列番号19~23)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(C166、C496、C1224;それぞれ、配列表の配列番号24~26)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、実施例5と同様にして、1nMの濃度で使用した場合のAkt3遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を確認した。
【0080】
1nMの濃度で使用した場合のAkt3遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果の結果の一例を図11(GFP-ACC2細胞株)及び図12(GFP-ACCM細胞株)に示す。なお、これらの図には、C169、C498、C941、C1299及びC1321についての結果のみを示す。両図において上段の棒グラフは前記口腔癌細胞株の肝細胞増殖因子依存性浸潤増殖に対する本発明のAkt3標的siRNAによる細胞増殖抑制効果を示し、下段の写真はAkt3タンパク質のウェスタンブロットの結果であってRNAi効果を示す。これらの結果が示すとおり、本発明のAkt3遺伝子を標的としたsiRNAは、口腔癌細胞においてRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を発揮しうるこ
とが示された。
【実施例7】
【0081】
Akt2及びAkt3遺伝子が口腔癌に共通して発現又は過剰発現しており、Akt2及びAkt3タンパク質が口腔癌の腫瘍マーカーとなりうることを確認した。
【0082】
その結果を図13に示す。図13(A)は、Akt2及びAkt3タンパク質のウェスタンブロットの結果であって、唾液腺の正常組織及び正常上皮細胞ではAkt2及びAkt3タンパク質が検出されないのに対し、ヒト口腔癌細胞株(ヒト唾液腺癌細胞株)であるGFP-ACC2及びGFP-ACCM細胞ではAkt2及びAkt3タンパク質が過剰発現されていることを示す。また、図13(B)は、実際に6症例の口腔癌患者の正常粘膜部(N)及び患部(T)試料を用いてそれぞれAkt2及びAkt3タンパク質の過剰発現をウェスタンブロットで検出した結果の一例を示す。この6症例においては、Akt2及びAkt3タンパク質の(過剰)発現は、それぞれ、100%及び50%の陽性率を示した。
【実施例8】
【0083】
前記表1Bの5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(B36、B172、B431、B477;それぞれ、配列表の配列番号10~14)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(B33、B390、B475;それぞれ、配列表の配列番号15~17)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、ヒト前立腺癌細胞株(PC-3)の細胞について、1nMの濃度で使用した場合のAkt2遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を確認した。培地としてダルベッコ改変イーグル培地に換えてRPMI培地(Sigma-Aldrich社製)を用いた他は実施例1と同様にして行った。
【0084】
その結果の一例を図14に示す。図14(A)は、PC-3細胞内のAkt2タンパク質をウェスタンブロットで確認した結果の一例を示す図である。なお、実施例1と同様に内部対照マーカーとしてβ-チューブリンを使用したが図示していない。図14(B)は、B33、B36、B172について前立腺癌細胞増殖抑制効果を定量化したグラフである。これらの図に示すとおり、Akt2遺伝子を標的とした本発明の二本鎖siRNAはすべて80%以上の顕著なRNAi効果と十分な前立腺癌細胞増殖抑制効果を示した。
【実施例9】
【0085】
前記表1Cの5種類の21塩基オーバーハング二本鎖siRNA(C169、C498、C941、C1229、C1321;それぞれ、配列表の配列番号19~23)と、3種類の27塩基ブラントエンド二本鎖siRNA(C166、C496、C1224;それぞれ、配列表の配列番号24~26)の8種類の二本鎖siRNAを合成して調製し、ヒト前立腺癌細胞株(PC-3)の細胞について、1nMの濃度で使用した場合のAkt3遺伝子に対するRNAi効果及び細胞増殖抑制効果を確認した。培地としてダルベッコ改変イーグル培地に換えてRPMI培地(Sigma-Aldrich社製)を用いた他は実施例1と同様にして行った。
【0086】
その結果の一例を図15に示す。図15(A)は、PC-3細胞内のAkt3タンパク質をウェスタンブロットで確認した結果の一例を示す図である。なお、実施例1と同様に内部対照マーカーとしてβ-チューブリンを使用したが図示していない。図15(B)は、C169、C1224、C1321について前立腺癌細胞増殖抑制効果を定量化したグラフである。これらの図に示すとおり、Akt3遺伝子を標的とした本発明の二本鎖siRNAはすべて80%以上の顕著なRNAi効果と十分な前立腺癌細胞増殖抑制効果を示
した。
【実施例10】
【0087】
Akt1、Akt2、及び、Akt3標的siRNAの前立腺癌に対する併用効果
本発明のAkt1、Akt2、及び、Akt3を標的としたsiRNAのうち少なくとも2種類を併用すると、それぞれ単独で使用する場合よりも効率的に前立腺癌の細胞増殖を抑制できることを確認した。Akt1を標的としたsiRNAとして上記表1AのA2239のsiRNAを使用し、Akt2を標的としたsiRNAとして上記表1BのB477のsiRNAを使用し、Akt3を標的としたsiRNAとして上記表1CのC1321のsiRNAを使用した場合の結果の一例を図16に示す。同図の結果ではAkt2を標的としたsiRNAが著しい細胞増殖抑制効果を示すが、例えば、これとともにAkt1及び/又はAkt3を標的としたsiRNAを用いれば、単独で得られる効果よりも一層優れた細胞増殖抑制効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したとおり、本発明の二本鎖siRNAは、オフターゲット効果及びインターフェロン応答を回避しつつ、Akt1、Akt2又はAkt3遺伝子特異的なRNAiを媒介できるから、例えば、臨床応用が可能であり、Akt1、Akt2又はAkt3を標的分子とした医療や医薬組成物の分野、例えば、口腔癌を含む癌治療に関する治療や医薬組成物の分野で有用である。その他、本発明の二本鎖siRNAは、例えば、学術及び基礎医学的研究開発分野においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の二本鎖siRNAのAkt1遺伝子を標的としたRNAi効果をウエスタンブロッティングで確認した結果の一例である。
【図2】図2は、本発明の二本鎖siRNAの口腔癌細胞増殖抑制効果を確認した結果の一例である。
【図3】図3は、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株におけるAkt1タンパク質を検出したウェスタンブロットの結果の一例である。
【図4】図4は、正常口腔粘膜(左図)及び口腔扁平上皮癌(右図)について、抗Akt1抗体を用いて免疫組織化学染色をした写真の一例である。
【図5】図5は、口腔癌における治療標的分子としてAkt1遺伝子を同定した工程を説明するフロー図である。
【図6】図6は、本発明の二本鎖siRNAの口腔癌細胞浸潤増殖抑制効果を確認した結果の一例である。
【図7】図7は、本発明の二本鎖siRNAの局所投与による抗腫瘍活性を確認した結果の一例である。
【図8】図8は、本発明の二本鎖siRNAの全身(静脈)投与による抗腫瘍活性を確認した結果の一例である。
【図9】図9は、本発明の二本鎖siRNAのAkt2遺伝子を標的としたRNAi効果及び口腔癌細胞増殖抑制効果を確認した結果の一例である。
【図10】図10は、本発明の二本鎖siRNAのAkt2遺伝子を標的としたRNAi効果及び口腔癌細胞増殖抑制効果を確認した結果のその他の例である。
【図11】図11は、本発明の二本鎖siRNAのAkt3遺伝子を標的としたRNAi効果及び口腔癌細胞増殖抑制効果を確認した結果の一例である。
【図12】図12は、本発明の二本鎖siRNAのAkt3遺伝子を標的としたRNAi効果及び口腔癌細胞増殖抑制効果を確認した結果のその他の例である。
【図13】図13は、正常細胞及び口腔癌細胞におけるAkt2及びAkt3タンパク質の発現を確認した結果の一例である。
【図14】図14は、本発明の合成二本鎖siRNAのAkt2遺伝子を標的としたRNAi効果(A)及び前立腺癌細胞増殖抑制効果(B)を確認した結果の一例である。
【図15】図15は、本発明の合成二本鎖siRNAのAkt3遺伝子を標的としたRNAi効果(A)及び前立腺癌細胞増殖抑制効果(B)を確認した結果の一例である。
【図16】図16は、Akt1、Akt2及びAkt3遺伝子を標的とした本発明の合成二本鎖siRNAの前立腺癌細胞増殖抑制における併用効果を確認した結果の一例である。

【配列表フリ-テキスト】
【0090】
配列番号1 オーバーハングsiRNA A6
配列番号2 オーバーハングsiRNA A22
配列番号3 オーバーハングsiRNA A33
配列番号4 オーバーハングsiRNA A56
配列番号5 オーバーハングsiRNA A58
配列番号6 ブラントエンドsiRNA A1392
配列番号7 ブラントエンドsiRNA A2224
配列番号8 ブラントエンドsiRNA A2239
配列番号10 オーバーハングsiRNA B36
配列番号11 オーバーハングsiRNA B172
配列番号12 オーバーハングsiRNA B395
配列番号13 オーバーハングsiRNA B431
配列番号14 オーバーハングsiRNA B477
配列番号15 ブラントエンドsiRNA B33
配列番号16 ブラントエンドsiRNA B390
配列番号17 ブラントエンドsiRNA B475
配列番号19 オーバーハングsiRNA C169
配列番号20 オーバーハングsiRNA C498
配列番号21 オーバーハングsiRNA C941
配列番号22 オーバーハングsiRNA C1229
配列番号23 オーバーハングsiRNA C1321
配列番号24 ブラントエンドsiRNA C166
配列番号25 ブラントエンドsiRNA C496
配列番号26 ブラントエンドsiRNA C1224
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
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