TOP > 国内特許検索 > 高分子柔軟アクチュエータ > 明細書

明細書 :高分子柔軟アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5392669号 (P5392669)
公開番号 特開2009-273204 (P2009-273204A)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
公開日 平成21年11月19日(2009.11.19)
発明の名称または考案の名称 高分子柔軟アクチュエータ
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
H02N   2/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
H02N 2/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2008-120060 (P2008-120060)
出願日 平成20年5月2日(2008.5.2)
審査請求日 平成23年4月18日(2011.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】平井 利博
【氏名】平井 一臣
【氏名】高崎 緑
審査官 【審査官】西山 智宏
参考文献・文献 特開2005-323482(JP,A)
特開2006-288040(JP,A)
特開2007-300755(JP,A)
特開2000-253682(JP,A)
特開平02-041685(JP,A)
特開2006-120596(JP,A)
調査した分野 H02N2/00
H02N11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
誘電性高分子可塑剤イオン液体とを含有するゲル状に形成された高分子柔軟アクチュエータであって、
前記誘電性高分子がポリ塩化ビニルであり、ポリ塩化ビニル1~50重量部と、前記可塑剤50~150重量部と、前記イオン液体1~30重量部とを含み、
電極によりゲルを部分的に挟む配置として電極間に電圧を印加した際に、電極から延出する部分が折れ曲がることを特徴とする高分子柔軟アクチュエータ。
【請求項2】
前記イオン液体は、陽イオンと陰イオンとの組み合わせからなる塩であり、
前記陽イオンが、ホスホニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであることを特徴とする請求項1に記載の高分子柔軟アクチュエータ。
【請求項3】
前記可塑剤がアジピン酸、セバシン酸、イタコン酸フタル酸エステルのいずれか一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子柔軟アクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工筋肉等に適用することができ、電気刺激により変形可能で、小型かつ柔軟で軽量な高分子柔軟アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電性高分子材料を用いたアクチュエータは、小型軽量かつ柔軟であり人工筋肉への応用が期待されている。人工筋肉アクチュエータとして期待されている誘電性高分子材料にはポリ塩化ビニルやポリメタクリル酸メチルなどがある。中でも可塑剤を含有させたポリ塩化ビニルゲルは、生体筋肉に類似し、電気刺激によりクリープ変形もしくはベンディング変形を生じる。しかし、一般的にこれらの誘電性高分子を用いたゲルアクチュエータの駆動には数百Vの高電圧の印加で必要である。従って、低電圧で駆動するゲルアクチュエータの開発は、人工筋肉への応用には必要不可欠である。
【0003】
これらの問題を解決するために、近年は高分子とイオン液体を用いたイオンゲルアクチュエータが注目を浴びている。
【0004】
特許文献1に高分子とイオン液体を用いたアクチュエータが開示されている。これは、誘電性高分子とイオン液体、さらにカーボンナノファイバーを使用している。このアクチュエータは3層で形成されており、製造方法も何段階かのステップを必要とされ、使用している試薬も一般的には高価のものである。
【0005】
また、特許文献2のアクチュエータにおいては、誘電性高分子、可塑剤および添加剤を使用したアクチュエータであり、駆動電圧の低下する方法を開示している。この駆動法では、従来に比べ駆動電圧の低下は見られたが100V以上の印加電圧が必要であり、相対的に高い駆動電圧を要する次点がある。

【特許文献1】特開2006-288040
【特許文献2】特開2005-323482
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低電場で駆動でき、空気中で安定に作動し、製造および加工が極めて簡単であり、幅広い用途への実用化を可能にする柔軟高分子アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の高分子柔軟アクチュエータは、誘電性高分子可塑剤イオン液体とを含有するゲル状に形成された高分子柔軟アクチュエータであって、前記誘電性高分子がポリ塩化ビニルであり、ポリ塩化ビニル1~50重量部と、前記可塑剤50~150重量部と、前記イオン液体1~30重量部とを含み、電極によりゲルを部分的に挟む配置として電極間に電圧を印加した際に、電極から延出する部分が折れ曲がることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の高分子柔軟アクチュエータは、請求項1に記載されたもので、前記イオン液体は、陽イオンと陰イオンとの組み合わせからなる塩であり、前記陽イオンが、ホスホニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の高分子柔軟アクチュエータは、請求項1または2に記載されたもので、前記可塑剤がアジピン酸、セバシン酸、イタコン酸フタル酸エステルのいずれか一つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高分子柔軟アクチュエータは、上記課題が解決したことに加え、従来とは異なる塑性変形を示す。この高分子柔軟アクチュエータは無色透明かつ小型軽量で柔軟であり、印加電圧を反対にすることにより、ゲルの変形は初期段階へと復元する新規なゲルアクチュエータを作製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
高分子柔軟アクチュエータは、誘電性高分子に電圧を印加して変形させる柔軟高分子アクチュエータにおいて、上記誘電性高分子が可塑剤およびイオン液体を含有することを特徴とするものであり、以下のようにして得られるものである。
【0016】
3重量%誘電性高分子の有機溶媒溶液に、可塑剤を70~100重量%、イオン液体を1~10重量%加えた後、完全に溶解させる。得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン製のシャーレ上でキャストし乾燥させると、厚さ250~600μmのゲル状で、誘電性高分子3重量部、可塑剤70~100重量部とイオン液体1~10重量部とからなる高分子柔軟アクチュエータが得られる。
【0017】
図1に本発明の柔軟高分子アクチュエータの作動状態の一例を示す断面模式図を挙げ説明する。本発明の実施における柔軟高分子アクチュエータは、イオン液体を含有した可塑化ポリ塩化ビニルゲル1の両面に、板状の電極2aおよび2bが接し、前記電極2aおよび2bに駆動電源3を接続し構成されている。図1(a)は、駆動電源3からゲル1へ電圧を印加していない状態、図1(b)は、駆動電源3からゲル1へ電圧を印加することにより、ゲル1が陽極方向に折れ曲がる様子を示す。
【0018】
本発明で使用するイオン液体は、常温溶融塩、イオン性液体などとも呼ばれるものであり、陽イオン(カチオン)と陰イオン(アニオン)よりなり、100℃以下で融点を持つ有機塩を指す。また、優れた熱安定性を示し、化学的、電気的にも安定である。
【0019】
本発明のイオン性液体に用いられる陽イオン(カチオン)としては、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0020】
一方、本発明に用いられるイオン液体の陰イオン(アニオン)としては、RSO、Cl、RCOO、などが挙げられる。本発明に用いられるイオン液体は、上記のカチオンとアニオンの組み合わせからなる塩を含むことが好ましい。
【0021】
なお、誘電性高分子は、汎用性に富むポリ塩化ビニルである。
【0022】
可塑剤には、ポリ塩化ビニルと相溶性を持つアジピン酸、セバシン酸、イタコン酸およびフタル酸エステルが挙げられる。中でも、粘着性や応答速度に優れるアジピン酸ジメチルが好ましい。
【0023】
有機溶媒は、ポリ塩化ビニル、可塑剤、イオン液体を溶解させたりするものであれば特に限定されないが、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒が挙げられる。中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
【0024】
溶液中での可塑剤およびイオン液体濃度が低いほど、得られたゲルの初期弾性率が高く加工が容易となるため好ましいが、その濃度が前記範囲より少ないと、高い印加電圧が必要となる。
【0025】
溶液中での可塑剤およびイオン液体濃度が高いほど、電荷が蓄積され易くなるため低電圧で駆動するため好ましいが、その濃度が前記範囲より多いと、ゲルの初期弾性率が低下し膜が物理的に脆くなってしまう。
【0026】
溶液中での可塑剤濃度が70~100重量%、イオン液体濃度が約5重量%であると、得られた高分子柔軟アクチュエータは、低電場での駆動が可能であり。粘着性も良く、柔軟かつ加工も容易のため、特に好ましい。
【実施例】
【0027】
本発明を適用する高分子柔軟アクチュエータを試作した例を実施例1、2に示す。本発明を適用外の例を比較例1に示す。また実施例および比較例の高分子柔軟アクチュエータの物性を調べた。
(実施例1)
【0028】
ポリ塩化ビニルを10重量部、アジピン酸ジブチルを85重量部、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム メタンスルホン酸を5重量部、をテトラヒドロフランに溶解させて、十分に撹拌し完全に溶解させた。得られた溶液をトリテトラフルオロエチレン製シャーレ上に約5日キャストしてテトラヒドロフランを蒸発させ、高分子柔軟アクチュエータとして厚さ約400μmのIL含有可塑化PVCゲルを作製した。
(実施例2)
【0029】
ポリ塩化ビニルを10重量部、アジピン酸ジブチルを88重量部、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム メタンスルホン酸を2重量部とし、実施例1と同様の方法で、高分子柔軟アクチュエータとして、イオン液体含有可塑化ポリ塩化ビニルゲルを作製した。
(比較例1)
【0030】
ポリ塩化ビニルを10重量部、アジピン酸ジブチルを90重量部とし、実施例1と同様の方法で、高分子柔軟アクチュエータとしてイオン液体非含有可塑化ポリ塩化ビニルゲルを作製した。
(柔軟高分子アクチュエータの電圧に対する応答性の評価)
【0031】
実施例1および比較例1で得られたゲルを縦10mm×横5mmに切り出した。アルミニウム電極に挟み、空気中で電圧を印加し、レーザー変位計を用いて、ゲルの先端変位量を測定した。
【0032】
得られた柔軟高分子アクチュエータに、正方向の電圧を印加したときの変位量を図2に示す。
【0033】
電圧印加時の実施例2の挙動を確認したところ、電圧印加停止後も変形を保持することが確認された。
(柔軟高分子アクチュエータの逆電圧に対する応答性の評価)
【0034】
実施例2で得られたゲルを同様の条件で正方向の電圧を印加した後、電圧印加方向を反対にし、電圧を印加したときの高分子柔軟アクチュエータの挙動(変位量)を図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の高分子柔軟アクチュエータのみならずキャパシタ、スイッチング器、センサー等のエレクトロデバイスとして有用である。また、繊維状にして電場駆動する衣料にすることもできる。
【0036】
また、この高分子柔軟アクチュエータは、人工筋肉として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用する柔軟高分子アクチュエータの作動状態の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明を適用する実施例1の柔軟高分子アクチュエータの経過時間あたりの変位量を示すグラフである。
【図3】同じく実施例2の柔軟高分子アクチュエータの経過時間あたりの変位量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1はイオン液体含有可塑化ポリ塩化ビニルゲル、2aおよび2bは電極、3は駆動電源である。



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2