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明細書 :磁性異物検出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5428006号 (P5428006)
公開番号 特開2009-300392 (P2009-300392A)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
公開日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 磁性異物検出装置
国際特許分類 G01V   3/10        (2006.01)
G01R  33/02        (2006.01)
G01N  27/72        (2006.01)
FI G01V 3/10 F
G01R 33/02 B
G01N 27/72
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2008-158280 (P2008-158280)
出願日 平成20年6月17日(2008.6.17)
審査請求日 平成23年6月13日(2011.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】田代 晋久
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
【識別番号】100141634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 善博
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開2007-327905(JP,A)
特開平04-369494(JP,A)
特開2006-058265(JP,A)
特開平02-262089(JP,A)
特開平09-292471(JP,A)
特開平06-148139(JP,A)
特開平07-260943(JP,A)
実開平02-129885(JP,U)
特開2008-020346(JP,A)
Kunihisa Tashiro,Broadband Air-Core Brooks-Coil Induction Magnetometer,SICE-ICASE International Joint Conference 2006,2006年10月18日,P.179-182
調査した分野 G01V 3/00-3/40
G01N 27/72
G01R 33/02
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検出物に混入する磁性異物を検出する磁性異物検出装置であって、
前記被検出物が通過する検査領域に発生磁界の周波数の上限が、数十kHz以下の低周波数である磁界を発生させる磁界発生コイルを有する磁界発生装置と、
前記磁界発生装置により発生させた発生磁界に鎖交するよう前記磁界発生コイル内に同芯状に配置され、前記被検出物が発生磁界中を通過する際にもたらす磁界分布変化を検出する空芯状の検出コイルと、
前記検出コイルのインダクタンスL[H]と抵抗R[Ω]により決まるカットオフ周波数f=R/2πL[Hz]以上の周波数で、前記被検出物による磁界分布変化により前記検出コイルに鎖交する総磁束φ[Wb]に比例したインダクタンスL[H]から当該検出コイル両端を短絡した場合と同程度誘導される誘導電流I=φ/L[A]を増幅して当該誘導電流Iの大きさに比例した電圧信号に変換して出力する電流-電圧変換回路と、を具備したインダクション磁気センサと、
前記インダクション磁気センサに具備した電流-電圧変換回路の出力信号を解析して前記磁性異物を特定する信号解析装置と、を備えたことを特徴とする磁性異物検出装置。
【請求項2】
前記信号解析装置は、磁性異物に応じた電圧波形をサンプルとして表示可能に記憶している請求項1記載の磁性異物検出装置。
【請求項3】
前記検出コイルの抵抗がゼロでない場合、当該検出コイルに直流磁界が鎖交しても誘導電流が流れないことを特徴とする請求項1又は2記載の磁性異物検出装置。
【請求項4】
前記検出コイルが前記磁界発生装置に発生する交番磁界を打ち消すように動接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の磁性異物検出装置。
【請求項5】
前記磁界発生装置は、交流電源と、該交流電源より空芯状のコイルへ通電することにより交番磁界を発生させる磁界発生コイルと、を具備し、
前記検出コイルは、前記磁界発生コイル内に同芯状に設けられ、当該磁界発生コイルに通電して交番磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内に置かれるか或いは前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁性異物検出装置。
【請求項6】
前記磁界発生装置は、複数の永久磁石或いは直流電源に接続された磁界発生コイルのいずれかを具備し、前記検出コイルは前記永久磁石間若しくは前記磁界発生コイル内に同芯状に設けられ、前記磁界発生装置により直流磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の磁性異物検出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品加工装置などにおいて加工食品に混入した磁性異物を検出する磁性異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品加工技術の進歩や輸入食料品の増加にともない、食の安全性についての関心が高まっている。とりわけ加工食品の製造現場や食品包装などの生産課程で食品に異物が混入するおそれがあることから、特に人体への影響力が大きい金属異物(刃片や針、金属粉など)を検出して出荷する異物検出装置が用いられる。
【0003】
食品異物検出の方式には、大きく分けて以下に述べる4タイプの検出原理が用いられる。第1の検出方式は、渦電流方式である。これは送信コイルに1MHZから333kHzの交流電流を流して交番磁界を発生させ、その交番磁界中を被検査物が通過したときに発生する渦電流による磁界分布変化を受信コイルで検出する方式である。この場合、発信コイルと受信コイルの共振現象を利用した検出方式であり、送受信コイルを含むブリッジ回路において所定の中心周波数で共振する検知回路を設け、被検出物が送受信コイルの間に形成される交番磁界内を通過する際に発生した渦電流による磁界分布変化を共振周波数の変化として検出する方式である(特許文献1参照)。
【0004】
第2の検出方式としては、被検査物をCCDカメラを用いて撮像して行なわれる目視或いは画像処理による検査方式である。
第3の検出方式としては、被検査物に弱いX線を照射してその透過量を半導体センサで検出する方式である。
第4の検出方式としては、SQUID(超伝導量子干渉素子)磁気センサを用いた検出方式で、被検査物を予め磁化した後、続いて磁気シールドされた空間内でSQUID磁気センサにより残留磁気の有無を検出する方式である。
【特許文献1】特許第3857271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した第1の検出方式においては、共振回路に流れる電流または印加電圧の周波数として1MHZから333kHzの高周波数が用いられており、被検出物の包装に導電材料である銅を使用すると、例えば1kHzにおける渦電流による表皮深さは2mm程度となるため、包装内の被検出物まで異物検出が十分に行なえない。また、被検出物に発生する渦電流が当該被検出物に含まれる水分、温度などの影響を受け易く検出感度が甘くなり易い。更には、異物の形状や大きさの限界を受け易く、例えば鉄粉であればφ0.5mm、ステンレス(SUS304)製の小片であればφ0.7mmが限界とされている。
【0006】
また、第2の検出方式においては、CCDカメラによる撮像であるため被検査物の表面の異常のみ検出できるが、内部の異常は検出できない。
また、第3の検出方式においては、X線照射装置が高価なうえに、定期的に消耗品(例えばX線管球やラインセンサ)を交換する必要があるためメンテナンスコストも派生する。
また、第4の検出方式においては、SQUID(超伝導量子干渉素子)磁気センサは高感度であり、被検出物の大きさに関する検出限界の精度も高い(例えば、SUS304製の針であればφ0.1mmまで検出可能)。しかしながら、超伝導素子を使用するため、液体窒素や液体ヘリウムなどを用いた大掛かりな冷却装置が必要となる。また、検出空間を磁気シールドする必要から環境磁界の影響を受けやすく、装置コストが高くなりやすい。
【0007】
本発明の目的は、上述した既存の検出方法に比べて、装置構成が簡易で低コストにもかかわらず、被検出物の内部まで異物検出が行なえる検出感度の高い磁性異物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
遊被検出物に混入する磁性異物を検出する磁性異物検出装置であって、前記被検出物が通過する検査領域に発生磁界の周波数の上限が、数十kHz以下の低周波数である磁界を発生させる磁界発生コイルを有する磁界発生装置と、前記磁界発生装置により発生させた発生磁界に鎖交するよう前記磁界発生コイル内に同芯状に配置され、前記被検出物が発生磁界中を通過する際にもたらす磁界分布変化を検出する空芯状の検出コイルと、前記検出コイルのインダクタンスL[H]と抵抗R[Ω]により決まるカットオフ周波数f=R/2πL[Hz]以上の周波数で、前記被検出物による磁界分布変化により前記検出コイルに鎖交する総磁束φ[Wb]に比例したインダクタンスL[H]から当該検出コイル両端を短絡した場合と同程度誘導される誘導電流I=φ/L[A]を増幅して当該誘導電流Iの大きさに比例した電圧信号に変換して出力する電流-電圧変換回路と、を具備したインダクション磁気センサと、前記インダクション磁気センサに具備した電流-電圧変換回路の出力信号を解析して前記磁性異物を特定する信号解析装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合、インダクション磁気センサは、磁界分布変化を信号解析装置によって解析可能な出力信号の最小分解能から、前記検出コイルの導線材質、形状、巻数により決まるインダクタンス、抵抗、及び電流-電圧変換回路の構成が各々決定されるようになっている。
具体的には、磁束-電流換算係数について、検出コイルに鎖交する総磁束φ[Wb]とインダクタンスL[H]から誘導される誘導電流I=φ/L[A]となるが、インダクタンスLを小さくすれば微弱な磁界でも大きな誘導電流が流れる。
一方、インダクタンスL[H]と抵抗R[Ω]により決まるカットオフ周波数f=R/2πL[Hz]以上の周波数では、上記磁束-電流変換係数により誘導電流により算出されるが、それ以下の周波数では誘導電流が20dB/octで減衰する。即ち、上記磁束-電流換算係数とは反対にインダクタンスLの値を大きくするのが好ましい。
以上より、インダクション磁気センサは、検出コイルのインダクタンスL[H]と抵抗R[Ω]により決まるカットオフ周波数f=R/2πL[Hz]以上の周波数で、検出コイルに鎖交する総磁束φ[Wb]に比例したとインダクタンスL[H]から誘導される誘導電流I=φ/L[A]を増幅して電圧信号として出力することが望ましい。
【0010】
また、前記信号解析装置は、磁性異物に応じた電圧波形をサンプルとして表示可能に記憶していることを特徴とする。
【0012】
また、前記検出コイルの抵抗がゼロでない場合、当該検出コイルに直流磁界が鎖交しても誘導電流が流れないことを特徴とする。
【0013】
また、前記検出コイルが前記磁界発生装置に発生する交番磁界を打ち消すように動接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記磁界発生装置は、交流電源と、該交流電源に接続された交番磁界を発生させる磁界発生コイルと、を具備し、前記検出コイルは、前記磁界発生コイル内に同芯状に設けられ、当該磁界発生コイルに通電して交番磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内に置かれるか或いは前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されることを特徴とする。
【0015】
或いは、前記磁界発生装置は、複数の永久磁石或いは直流電源に接続された磁界発生コイルのいずれかを具備し、前記検出コイルは前記永久磁石間若しくは前記磁界発生コイル内に同芯状に設けられ、前記磁界発生装置により直流磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した磁性異物検出装置を用いれば、磁界発生装置により発生させた発生磁界に鎖交するよう同芯状に配置された検出コイル内を、被検出物が通過する際にもたらす磁界分布変化を前記検出コイルに誘導される誘導電流を増幅し電圧に変換するインダクション磁気センサにより検出して出力信号を解析して磁性異物を特定するようにしたので、装置構成が簡易で低コストにもかかわらず、被検出物の内部まで異物検出が行なえる検出感度の高い磁性異物検出装置を提供することができる。
特に、磁界発生装置により発生する発生磁界の周波数の上限は、数十kHz以下の低周波数であることから、被検出物が導電材料で包装(例えばアルミホイル包装)されていても、表皮効果による渦電流は発生せず、当該被検出物の内部の異物まで検出することができる。
【0017】
また、被検出物による磁界分布変化によって検出コイルに誘導される誘導電流は、当該検出コイル両端を短絡した場合と同程度誘導される誘導電流の大きさに比例した電圧に変換されることで検出感度を維持することができる。
また、検出コイルの抵抗値がゼロでない場合、当該検出コイルに直流磁界が鎖交しても誘導電流が流れないので、磁界発生装置により発生した一様な磁界中では検出感度を持たない。よって、被検出物に磁性異物が混入している場合のみ磁界分布に変動を生じて異常を検出することができる。
また、検出コイルが磁界発生装置に発生する交番磁界を打ち消すように動接続されていると、磁界発生装置によって発生する交番磁界の変化だけでは検出感度を持たない。よって、被検出物に磁性異物が混入している場合のみ磁界分布に変動を生じて異常を検出することができる。
また、磁界発生コイルに通電して交番磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内に置かれるか或いは前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されるか、或いは磁界発生装置により直流磁界を発生させた状態で被検出物が前記検出コイル内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出されるので、簡易な構成で高感度に磁性異物の検出が行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る磁性異物検出装置の最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、一例として加工食品に混入する磁性異物(例えば、加工刃などに用いられるステンレススチール(SUS304)小片、ステープラ針など)を検出する磁性異物検査装置について説明する。
【0019】
尚、SUS304は、本来非磁性のオーステナイト鋼であり磁化しないが、加工時の応力によってマルテンサイトに変態して磁性を帯びるようになることが知られている。したがって、加工食品に混入したステンレススチール製刃片や、ステンレス線が曲げ加工されたステープラ針などの小片は磁性異物として検出される。
【0020】
図1を参照して、磁性異物検出装置の概略構成について説明する。
磁界発生装置1は、被検出物(加工食品)2が通過する検査領域に均一な磁界を発生させる。被検出物2は、後述するように導電性包装材(アルミホイルなど)に包装されていてもよい。
【0021】
図1において、磁界発生装置1は、本実施形態では交番磁界を発生させる装置である。即ち、交流電源3と、該交流電源3に接続された空芯状コイル内に交番磁界を発生させる磁界発生コイル4を具備している。また、検出コイル5は、磁界発生コイル4内に形成される交番磁界内に同芯状に設けられている。磁界発生コイル4に通電して交番磁界を発生させた状態で被検出物2が検出コイル5内に置かれるか或いは当該検出コイル5内を通過させる際に誘導電流が流れることにより磁界分布変化が検出されるようになっている。
【0022】
尚、磁界発生装置1により発生する発生磁界の周波数の上限は、数十kHz以下の低周波数である。それ以上の周波数を用いると、被検出物2に表皮効果により渦電流が発生するおそれがあり、被検出物2の内部に混入した磁性異物6(例えば、鉄粉、ステンレススチール小片、ステープラ針など)を検査できなくなるおそれがあるからである。
【0023】
尚、磁界発生装置1は複数の永久磁石を対向配置するか或いは直流電源に接続された磁界発生コイルのいずれかを具備していてもよい。この場合、検出コイル5は、永久磁石間若しくは磁界発生コイル内に同芯状に設けられる。磁界発生装置1により発生する直流磁界中を被検出物2が検出コイル5内を通過させる際に流れる誘導電流により磁界分布変化が検出される。
【0024】
図2において、インダクション磁気センサ7は、磁界発生装置1により発生させた低周波発生磁界に鎖交するよう配置され、被検出物2が発生磁界中を通過する際にもたらす磁界分布変化を検出する空芯状の検出コイル5と、検出コイル5に誘導される誘導電流を増幅し、電圧に変換する電流-電圧変換回路8を具備している。検出コイル5は磁界発生装置1によって形成される均一磁界空間10内に配置されている。この検出コイル5内に被検出物2が置かれるか或いは通過させることで、当該検出コイル5に誘導される誘導電流の値を電流-電圧変換回路8によって電圧値に変換して出力するようになっている。
【0025】
電流-電圧変換回路8において被検出物2による磁界分布変化によって検出コイル5に誘導される誘導電流は、検出コイル5両端を短絡した場合と同程度に誘導される誘導電流に比例した電圧に変換されるようになっている。
【0026】
また、インダクション磁気センサ7は、検出コイル5の抵抗がゼロでない場合、当該検出コイル5に直流磁界が鎖交しても誘導電流が流れないようになっている。磁界発生装置1により発生した一様な磁界では検出感度を持たない。よって、被検出物2に磁性異物6が混入している場合のみ磁界分布に変動を生じて異常を検出することができる。
【0027】
また、インダクション磁気センサ7は、検出コイル5が磁界発生装置1に発生する交番磁界を打ち消すように動接続されている。磁界発生装置によって発生する交番磁界の変化だけでは検出感度を持たない。よって、被検出物2に磁性異物6が混入している場合のみ磁界分布に変動を生じて異常を検出することができる。
【0028】
信号解析装置9は、インダクション磁気センサ7に具備した電流-電圧変換回路8の出力信号(電流-電圧変換値)を解析して磁性異物6を特定する。磁性異物6のうち例えば、鉄粉やステンレスなどに応じて電圧波形をサンプルとして記憶しておくことで、異物が何であるか特定することができる。
【0029】
図2において、インダクション磁気センサ7は、磁界分布変化を信号解析装置9によって解析可能な出力信号の最小分解能から、検出コイル5の導線材質、形状、巻数により決まるインダクタンス、抵抗、及び電流-電圧変換回路8の構成が各々決定されるようになっている。
具体的には、インダクション磁気センサ7は、検出コイル5のインダクタンスL[H]と抵抗R[Ω]により決まるカットオフ周波数f=R/2πL[Hz]以上の周波数とすることが望ましい。しかしながら、インダクションセンサの高感度さゆえ、検出コイル5のアンバランスが問題となるときには、それ以下の周波数が用いられる。本実施形態では一例として10Hzの周波数が用いられる。
【0030】
尚、検出コイル5に誘導される誘導電流は、電流-電圧変換回路8に用いられるオペアンプの帰還抵抗に比例した電圧として増幅される。この増幅電圧値をコイル抵抗の100倍以上にしておけば、インダクション磁気センサ7の最小磁界感度は変わらない。インダクション磁気センサ7の最小磁界感度は、オペアンプの等価入力雑音電圧密度と等価雑音電流密度と磁束-電流換算係数により決まる。
【0031】
次に、図3の多層ソレノイドコイル11を用いて被検出物2に混入する異物検出を行なった検出実験結果の一例について説明する。以下に検出実験装置の構成例について説明する。多層ソレノイドコイル11のうち外層コイル11aに発振装置12から増幅回路13を経て定電流モードで交流電流を流して交番磁界(低周波磁界)を発生させる。このときの、交番磁界の発振周波数は10Hzであり、入力電流iの大きさを、外層コイル11aに接続された電圧計14によって電圧に換算して測定をおこなった。また、内層コイル(インダクショングラジオメータ)11bには、誘導電流を電圧に変換する電流-電圧変換回路15が接続されており、当該電流-電圧変換回路15で出力された出力電圧を電圧計16により測定を行った。
また、被検出物2は樹脂系試料台(非磁性)17のA点及びB点に試料として各々固定され、該樹脂系試料台17を多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形をオシロスコープにて観測を行なった。
【0032】
図4(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点及びB点に試料としてPCパーマロイ材を各々固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。図4(a)(b)において、Eは入力電流波形、Fは入力電流に同期したトリガー電圧波形、Gはインダクション磁気センサの出力電圧波形を示す。
PCパーマロイ材(78Permalloy, Nilaco社製)の場合、直径φ0.8mmを共通で、長さをA点で5mm,10mmと変化させ、B点で長さを100mm,40mm,20mm,10mmと変化させて出力電圧波形を観測した。この結果、PCパーマロイ材の場合、A点で(φ0.8mm,長さ10mm)、B点で(φ0.8mm,長さ40mm)以上のサイズであれば出力電圧の変化が各々観測され、磁性異物を検出できることが確認できた。
【0033】
図5(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点に試料としてアルミ箔のみとアルミ箔で包装されたPCパーマロイ材(φ0.8mm,長さ20mm)を固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を各々示す。図5(a)(b)において、Eは入力電流波形、Fは入力電流に同期したトリガー電圧波形、Gはインダクション磁気センサの出力電圧波形を示す。
図5(b)によれば、アルミ箔により包装されていても、PCパーマロイ材による出力電圧の変化が観測され、磁性異物を検出できることが確認できた。
【0034】
図6(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点及びB点に試料としてステンレス材(SUS304, Nilaco社製)を各々固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。図6(a)(b)において、Eは入力電流波形、Fは入力電流に同期したトリガー入力電圧波形、Gはインダクション磁気センサの出力電圧波形を示す。
本実施例は、樹脂系試料台17のA点及びB点に試料であるステンレス材の長さ10mmを共通にして、直径をφ0.5mm,φ0.2mm,φ0.1mmと変化させた試料を各々固定して出力電圧波形を観測した。この結果、ステンレス材の場合には、φ0.2mm,長さ10mm以上のサイズであれば磁性異物を検出できることが確認できた。
【0035】
図7(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点に試料としてアルミ箔で包装されたステンレス材(SUS304, Nilaco社製;φ0.2mm,長さ10mm)を固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。図7(a)(b)において、Eは入力電流波形、Fは入力電流に同期したトリガー入力電圧波形、Gはインダクション磁気センサの出力電圧波形を示す。
アルミ箔により包装されていても、出力電圧の変化が観測され、磁性異物が検出できることが確認できた。
【0036】
図8(a)(b)及び図9(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点及びB点に試料として鉄材(Fe99.5% ;Nilaco社製)を各々固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。図8(a)(b)及び図9(a)(b)において、Eは入力電流波形、Fは入力電流に同期したトリガー入力電圧波形、Gはインダクション磁気センサの出力電圧波形を示す。
図8(a)(b)は、樹脂系試料台17のA点及びB点に試料である鉄材の直径がφ0.5mmの場合、φ0.2mmの場合で長さを10mm,5mm,2mmと変化させたものを各々固定して得られた出力電圧波形示す。また、図9(a)(b)は、直径がφ0.1mmの場合で長さを50mm,10mmと変化させたものを各々固定して得られた出力電圧波形を示す。この結果、鉄材の場合には、直径φ0.2mm,長さ5mm以上のサイズで磁性異物を検出できることが確認できた。また、直径φ0.1mmであれば、長さ50mm以上のサイズで磁性異物を検出できることも確認できた。
また、上記各サイズの鉄材はアルミ箔により包装されていても、出力電圧の変化が観測され、磁性異物が検出できることが確認できた。
【0037】
図10は、樹脂系試料台17のA点に試料としてチーズブロックの中にステープラ針を埋め込んだものを固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。これにより、食品中に混入した磁性異物を検出可能であることが確認できた。
【0038】
以上の実験結果によれば、装置構成が簡易で低コストにもかかわらず、検出感度の高い磁性異物検出装置を提供することができることが分かる。また、磁界発生装置1により発生する発生磁界の周波数の上限は、数十kHz以下の低周波数であることから、被検出物2が導電材料で包装(例えばアルミホイル包装)されていても、表皮効果による渦電流は発生せず、当該被検出物2の内部の磁性異物6まで検出することができる。
【0039】
尚、磁界発生装置1により発生する発生磁界の周波数を10kHz以上とし、電流-電圧変換回路8の代わりに検出コイル5の両端電圧をロックインアンプ等で検出することにより磁界分布変化を検出でき、渦電流方式による汎用の金属検出器としても使用できるので、装置の付加価値を高めた磁性異物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】磁性異物検出装置のブロック構成図である。
【図2】インダクション磁気センサの構成図である。
【図3】磁性異物検出実験装置の構成図である。
【図4】PCパーマロイ材を用いた場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図5】図4の試料をアルミ包装した場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図6】ステンレス材(SUS304)を用いた場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図7】図6の試料をアルミ包装した場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図8】鉄材(Fe)を用いた場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図9】鉄材(Fe)を用いた場合に検出される入出力電圧を示すグラフ図である。
【図10】ステープラ針が混入したチーズブロックを用いた場合に検出される出力電圧を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0041】
1 磁界発生装置
2 被検出物
3 交流電源
4 磁界発生コイル
5 検出コイル
6 磁性異物
7 インダクション磁気センサ
8,15 電流-電圧変換回路
9 信号解析装置
10 均一磁界空間
11 多層ソレノイドコイル
11a 外層コイル
11b 内層コイル
12 発振装置
13 増幅回路
14,16 電圧計
17 樹脂系試料台
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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