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明細書 :カーボンナノホーン内包物質の放出制御方法と物質内包カーボンナノホーン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5405773号 (P5405773)
公開番号 特開2009-040770 (P2009-040770A)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年2月5日(2014.2.5)
公開日 平成21年2月26日(2009.2.26)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノホーン内包物質の放出制御方法と物質内包カーボンナノホーン
国際特許分類 A61K  47/04        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
A61K  33/24        (2006.01)
FI A61K 47/04
A61K 9/14
A61P 35/00
B82B 3/00
B82B 1/00
C01B 31/02 101F
A61K 33/24
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2008-180396 (P2008-180396)
出願日 平成20年7月10日(2008.7.10)
優先権出願番号 2007181468
優先日 平成19年7月10日(2007.7.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年6月6日(2011.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】安嶋 久美子
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特開2005-343885(JP,A)
国際公開第2007/004545(WO,A1)
松村幸子 他,DDSキャリアとしての単層カーボンナノホーンの分散化と薬剤担持,日本化学会講演予稿集,日本,2007年 3月12日,Vol. 87th, No. 2,1436
調査した分野 A61K 47/04
A61K 9/14
A61P 35/00
B82B 1/00
B82B 3/00
C01B 31/02
A61K 33/24
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノホーン集合体(NHs)の単層カーボンナノホーン(NH)内に内包させた物質の外部への放出を制御する方法であって、
単層カーボンナノホーンに、開孔部を通じて放出すべき物質を内包させ、この開孔部もしくは開孔部とその近傍外周に、グラファイトと親和性の高い置換基と親水性基の両方を有している嵩高な分子もしくは高分子を物理吸着させて開孔部を覆うことを特徴とするカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【請求項2】
嵩高な分子と高分子は、その分子量が100~500,000の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【請求項3】
カーボンナノホーン開孔部の置換基もしくは開孔部に付加した分子に、嵩高な分子もしくは高分子を物理吸着させることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【請求項4】
内包物質が薬剤であって、PBS中において5分以内の初期バースト放出を抑え、1時間以上にわたって内包薬剤を徐放させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【請求項5】
嵩高な分子もしくは高分子が、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかの一項に記載のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【請求項6】
カーボンナノホーン集合体(NHs)の単層カーボンナノホーン(NH)に、開孔部を通じて放出すべき物質が内包されており、この開口部もしくは開孔部とその近傍外周に、グラファイトと親和性の高い置換基と親水性基の両方を有している嵩高な分子もしくは高分子が物理吸着されて開孔部が覆われて、内包された物質の放出が制御可能とされていることを特徴とする物質内包カーボンナノホーン。
【請求項7】
嵩高な分子と高分子は、その分子量が100~500,000の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の物質内包カーボンナノホーン。
【請求項8】
嵩高な分子もしくは高分子が、カーボンナノホーン開孔部の置換基もしくは開孔部に付加した分子に物理吸着されていることを特徴とする請求項6または7に記載の物質内包カーボンナノホーン。
【請求項9】
内包物質が薬剤であり、PBS中において5分以内の初期バースト放出が抑えられ、1時間以内にわたって内包薬剤が徐放可能とされていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の物質内包カーボンナノホーン。
【請求項10】
嵩高な分子もしくは高分子が、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項からのいずれかの一項に記載の物質内包カーボンナノホーン
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノホーンに内包させた物質の放出制御のための方法と、この放出が制御可能とされた物質内包カーボンナノホーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合組織構造を有するカーボンナノホーン(NHs)の単層内にシスプラティン(CDDP)等の薬剤やその他物質を内包させて、開孔部からこれを外部に放出可能とすることや、この放出によって、たとえばCDDP抗ガン剤によるガン細胞への作用を可能とすることが本発明者らによって報告されている(たとえば非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ナノホーンに内包している物質を放出させる際には、短時間に放出が完了してしまうことが多く、ナノホーンをDDSに応用するには問題があった。これを解決するためには、開孔部にフタをしてプラグ効果を発現させることが有効であって、本発明者らによって、このようなプラグ効果として、開孔部にある水酸基やカルボキシル基の水素をNaで置換する手法や、酢酸Gdを反応させる手法などが開発されている(たとえば特許文献2)。
【0004】
しかし、このようなプラグ効果の発現はその着想と展望において注目されてよいものであるが、歩留まりの問題やプラグ付加時に内包有機物が出てしまうといった問題に対しての更なる改善策の実現が望まれていた。

【非特許文献1】Mol. Pharm. 2 (2005), 475
【特許文献1】特開2005-343885号公報
【特許文献2】PCT/JP2007/050080
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のとおりの背景から、更に有効なプラグ効果を実現し、歩留りの向上や、プラグ付加時の内包物質の漏出の抑制を図ることのできる、カーボンナノホーン内包物質の放出抑制のための新しい技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:カーボンナノホーン集合体(NHs)の単層カーボンナノホーン(NH)内に内包させた物質の外部への放出を制御する方法であって、単層カーボンナノホーンに、開孔部を通じて放出すべき物質を内包させ、この開孔部もしくは開孔部とその近傍外周に、グラファイトと親和性の高い置換基と親水性基の両方を有している嵩高な分子もしくは高分子を物理吸着させて開孔部を覆うことを特徴とするカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【0008】
第2:嵩高な分子と高分子は、その分子量が100~500,000の範囲内であることを特徴とする上記第1のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【0009】
第3:カーボンナノホーン開孔部の置換基もしくは開孔部に付加した分子に、嵩高な分子もしくは高分子を物理吸着させることを特徴とする上記第1または第2のカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【0010】
第4:内包物質が薬剤であって、PBS中において5分以内の初期バースト放出を抑え、1時間以上にわたって内包薬剤を徐放させることを特徴とする上記第1から第3のいずれかのカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【0011】
第5:嵩高な分子もしくは高分子が、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする上記第1から第4のいずれかのカーボンナノホーン内包物質の放出制御方法。
【0012】
第6:カーボンナノホーン集合体(NHs)の単層カーボンナノホーン(NH)に、開孔部を通じて放出すべき物質が内包されており、この開口部もしくは開孔部とその近傍外周に、グラファイトと親和性の高い置換基と親水性基の両方を有している嵩高な分子もしくは高分子が物理吸着されて開孔部が覆われて、内包された物質の放出が制御可能とされていることを特徴とする物質内包カーボンナノホーン。
【0013】
第7:嵩高な分子と高分子は、その分子量が100~500,000の範囲内であることを特徴とする上記第6の物質内包カーボンナノホーン。
【0014】
第8:嵩高な分子もしくは高分子が、カーボンナノホーン開孔部の置換基もしくは開孔部に付加した分子に物理吸着されていることを特徴とする上記第6または第7の物質内包カーボンナノホーン。
【0015】
第9:内包物質が薬剤であり、PBS中において5分以内の初期バースト放出が抑えられ、1時間以内にわたって内包薬剤が徐放可能とされていることを特徴とする上記第6から第8のいずれかの物質内包カーボンナノホーン。
【0016】
第10:嵩高な分子もしくは高分子が、ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする上記第6から第9のいずれかの物質内包カーボンナノホーン。
【発明の効果】
【0017】
上記のとおりの本発明によれば、これまでよりも更に有効なプラグ効果が実現され、長期にわたる内包物質の徐放や、初期バースト放出の抑制等が可能とされ、歩留りの向上が図られ、プラグ付加時の内包物質の漏出という問題も解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明におけるカーボンナノホーンは、本発明者らがすでに開発して数多くの報告を行っている各種形態での方法によって合成されたものであってよい。この場合のカーボンナノホーンは、通常は、集合体の組織構造を有するもの(NHs)であって、たとえば、複数の単層カーボンナノホーン(NH)がその閉鎖端部を外方に向けて集合した構造を有している。
【0019】
本発明においては、このような集合体カーボンナノホーン(NHs)を構成する少なくとも一つの単層カーボンナノホーン(NH)における物質内包とその外部への放出を対象としている。
【0020】
カーボンナノホーンに内包させる物質としては従来公知のものをはじめとして各種のものであってよく、たとえば、シスプラティン、デキサメタゾン、ヨウ素などの薬剤、フラーレン、銀、金、CdSe、CdSなどの無機物、フタロシアニン、ポルフィリン、安息香酸、アルコール、エステル、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族化合物、その他であってよい。単層のカーボンナノホーン(NH)においては、これら物質の内包化とその放出のための開孔部を壁部や頂部の少なくとも一箇所に有している。このような開孔部については、本発明者らがすでに提案している酸化等の手段によって形成することができる。また、この開孔部には炭素原子以外の置換基、たとえばカルボキシル基や水酸基を設けるようにしてもよく、あるいは分子を結合させてもよい。
【0021】
カーボンナノホーン(NH)内への物質の内包については、本発明者がすでに提案しているようにシスプラティン(CDDP)等の物質の有機溶媒(DMF、DMSO他)溶液や水溶液中に開孔部を有するカーボンナノホーンを分散し、好ましくはN等の不活性ガス雰囲気下に溶媒や水を蒸発させることにより可能とされる。
【0022】
たとえば、図1および図2は、後述の実施例のように水溶液を用いてCDDPを内包させた単層で開孔部を有するカーボンナノホーン(SWNHOX)の電子顕微鏡写真と、走査TEM像およびEELS写真である。
【0023】
図2においては、CDDPのPt(白金)とCl(塩素原子)とC(炭素原子)も観察されている。
【0024】
本発明においては、カーボンナノホーンからの内包物質の放出速度を制御するために、カーボンナノホーンの開孔部に、嵩高な分子やポリマーによるプラグを付加する。
【0025】
このプラグは、カーボンナノホーンの外壁や開孔部に化学結合させたものではなく、物理的に吸着させたものである。
【0026】
プラグは上記の嵩高な分子や高分子といったバルキーな分子であって、開孔部を覆って閉鎖するだけのサイズとナノホーン外壁に対する充分な付着力を有しているものとする。これらの嵩高な分子や高分子は、その分子量が、100~500,000の範囲であることが好ましい。
【0027】
嵩高な分子あるいは高分子は、カーボンナノホーンを形成するグラファイトと親和性の高い置換基を有するものであることが好ましく、その具体例としては、ピレン、フタロシアニン、ドキソルビシン、ドセタキシル等の芳香族分子のようにπ電子に富むもの、あるいは、デキストランなどの糖類、脂肪族基含有の有機分子などが挙げられる。この置換基は、グラファイト壁に強く吸着し、アンカーとなる。
【0028】
また、これら嵩高な分子あるいは高分子は、それ自身が親水性であるか、あるいは親水性基を有していることが有効でもある。たとえば、ポリエチレングリコールなど水酸基を持つもの、たんぱく質などアミノ基を持つもの、カルボン酸基をもつもの等があるが、これ以外でもよい。この嵩高な分子あるいは高分子は、カーボンナノホーンの開孔部を覆うことで、内包物質の初期漏洩をおさえ、長期間の徐放を可能とする。
【0029】
本発明に用いられる嵩高な分子あるいは高分子の好適な例としては、ポリエチレングリコール付加ドキソルビシン(PEG-DXR)を挙げることができる。PEG-DXRにおけるポリエチレングリコールの分子量は、プラグ効果を有効に発揮させる点からは、好ましくは500~50000である。
【0030】
なお、プラグ効果を発現するバルキーな分子である嵩高な分子あるいは高分子は、開孔部にある置換基、または開孔部に付加した分子に物理吸着させてもよい。
【0031】
本発明においては、たとえば以下の実施例にも示すように、カーボンナノホーンに内包する物質のナノホーンからの初期(5分以内)バースト放出が抑えられ、長時間(1時間以上)にわたって、徐々に放出される。
【0032】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の例によって限定されることはない。
【実施例】
【0033】
<実施例1>
シスプラティン(CDDP)水溶液(50mg/50ml)に単層で開孔部を有するSWNH(SWNHox)50mgを分散させ、大気圧窒素気流中で水を蒸発させ、シスプラティン内包SWNHox(CDDP@SWNHox:内包CDDPとSWNHoxの重量比=1:1)を作製した(HRTEM像:図1、EELS像:図2)。別途、ポリエチレングリコール付加ドキソルビシン(PEG-DXR:PEG分子量5000)の水溶液(10mg/10ml)を用意し、その12.5μlをCDDP@SWNHox(5mg)に加え、CDDP@SWNHoxとPEG-DXRと水からなるペースト状にして、PEG-DXRをCDDP@SWNHoxに付着させた。このペーストをPBS(600ml)中に浸漬させたメンブレン(M.W.C.O.:100 kDa、pore size:10nm)に入れて、そのままCDDPのSWNHからの放出を調べた。その結果を図3に示す。
【0034】
図3に示すように、CDDP@SWNHox-(PEG-DXR)からのCDDP放出は初期バースト量約20%、半減期約18時間であった。PEG-DXRによるプラグ効果が無い場合、初期バースト量約40%、半減期約4時間であった。放出飽和量は、PEG-DXRを付加した場合もそうで無い場合も180時間程度経過して、約90%に到達していた。参考のために、CDDPのPBS溶液をメンブレンに入れて、同様に放出実験を行った場合の結果も図3に示した。
<実施例2>
CDDP@SWNH-(PEG-DXR)、CDDP@SWNH、CDDPを培地に加えてHuman Lung Cancer Cell(H460)を24時間と48時間培養し、WST-1アッセイ法により細胞のviabilityのCDDP濃度依存性を調べた。
【0035】
その結果を図4A、図4Bに示す。CDDP@SWNHはCDDPより強い毒性を持つため、少量で細胞死が顕著となるというこれまでの効果を確認することができた。さらに、CDDP@SWNH-(PEG-DXR)を加えた場合、実施例1に示したCDDP徐放性を反映して、細胞死誘発に遅延効果がみられることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】CDDP内包カーボンナノホーンのHRTEM(High Resolution Transmission Electron Microscopy)像である。
【図2】CDDP内包カーボンナノホーンのEELS(Electron Energy-Loss Spectroscopy)像である。
【図3】実施例1における結果をCDDPの放出時間と放出量との関係として示したグラフである。
【図4A】WST-1アッセイ法(24h incubation)における細胞のviabilityのCDDP濃度依存性を示すグラフである。
【図4B】WST-1アッセイ法(48h incubation)における細胞のviabilityのCDDP濃度依存性を示すグラフである。
図面
【図4A】
0
【図4B】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4