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明細書 :液滴制御装置、及び、液滴制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5019476号 (P5019476)
公開番号 特開2010-055015 (P2010-055015A)
登録日 平成24年6月22日(2012.6.22)
発行日 平成24年9月5日(2012.9.5)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 液滴制御装置、及び、液滴制御方法
国際特許分類 G02B   3/14        (2006.01)
G02B  26/00        (2006.01)
FI G02B 3/14
G02B 26/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2008-222460 (P2008-222460)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
審査請求日 平成23年6月23日(2011.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】中西 周次
【氏名】伊原 大介
【氏名】長井 智幸
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】中村 理弘
参考文献・文献 特表2001-519539(JP,A)
特開2003-177219(JP,A)
特表2006-520918(JP,A)
特開2008-107826(JP,A)
特開2008-170632(JP,A)
調査した分野 G02B 3/14
G02B 26/00
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも一対の電極を有し、当該一対の電極の内の少なくとも一方の電極の表面上に配置された液滴の態様を制御することができる液滴制御装置であって、
前記液滴は、油滴であり、
前記一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられていることを特徴とする液滴制御装置。
【請求項2】
前記電気化学的に活性な物質が金属イオンであることを特徴とする請求項1に記載の液滴制御装置。
【請求項3】
前記電気化学的に活性な物質が、非金属イオンであることを特徴とする請求項1に記載の液滴制御装置。
【請求項4】
前記油滴が電気化学的に不活性な物質であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴制御装置。
【請求項5】
前記油滴が配置された電極は、当該電極の面内で電位を異ならせることができるように設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液滴制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴制御装置が備えられ、
前記液滴がレンズとして機能し、
前記液滴の態様を制御することにより、前記レンズの焦点を制御することが可能な液体レンズ。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴制御装置が備えられ、
前記液滴が光シャッターとして機能し、
前記液滴の態様を制御することにより、表示の切替えを行うことが可能な液体ディスプレイ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴制御装置が備えられ、
液滴の態様を制御することにより、電極上での液滴の反応を可能とするラボ・オン・ア・チップ装置。
【請求項9】
電極の表面上に配置された液滴の態様を制御する液滴制御方法であって、
少なくとも一対の電極と、当該一対の電極の内の少なくとも一方の電極表面上に配置された油滴とを備え、
前記一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられている液滴制御装置において、
前記電極間に電圧を印加することにより、前記油滴の態様を制御することを特徴とする液滴制御方法。
【請求項10】
前記油滴が配置された電極は、当該電極の面内で電位を異ならせることができるように設けられており、
前記電極間において、油滴の少なくとも異なる2箇所に、互いに異なった電圧を印加することにより、前記油滴の態様を制御することを特徴とする請求項9に記載の液滴制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴の形状及び位置の制御が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上の液滴に関し、液滴を変形させる技術が用いられている。詳しくは、例えば固体基板上の微小液滴について、微小液滴の固体基板に対する接触角を変化させることにより、液滴の形状を変化させる技術が用いられている。
【0003】
また、従来から、基板上の液滴に関し、液滴を移動させる技術が用いられている。詳しくは、例えば固体基板上の微小液滴について、微小液滴の固体基板に対する接触角を非対称とすることなどにより、液滴の基板上の位置を変化させる技術が用いられている。
【0004】
(液滴の変形)
例えば、前記液滴の形状を変化させる技術としては、積層基板上に液滴を配置し、液滴に電圧をかける方法が提案されている。
【0005】
具体的には、下層としての導電体の上に、上層としての絶縁体が積層された層状構造体の上に液滴を配置する。そして、前記導電体と液滴との間に電圧を印加して、液滴の変形させるというものである。
【0006】
(特許文献1)
また、下記特許文献1には、電極が設けられた基板と、前記基板に対向して設けられた電極と、前記基板上に置かれた液滴とを備えるレンズシステムについて記載されている。
【0007】
そして、前記対向した電極を用いて前記液滴に電圧を印加することにより液滴を変形させる技術について記載されている。

【特許文献1】特表2006-520918号公報(公表日:2006(平成18)年9月14日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(高電圧)
しかしながら、前記従来の技術では、液滴の形状を変化させるためには、高電圧を印加する必要があるという問題点がある。
【0009】
すなわち、特に前記導電体と絶縁体との層状構造体の上に液滴を配置する構成においては、液滴を変形させるためには、導電体と液滴との間に高電圧を印加する必要がある。そのため、液滴操作に高い駆動力が必要となり、消費電力が高くなったり、装置の簡素化が困難となったりしていた。
【0010】
(製造コスト)
また、前記従来の技術では、構造が複雑であるため、製造が困難であったり、製造コストが高くなったりするというの問題点がある。
【0011】
すなわち、液滴を配置するための基板として、導電体と絶縁体との層状構造体を作成する必要があったり、液滴を挟むように対向する電極を作成する必要があったりした。そのため、製造が困難であったり、製造コストが高くなったりしていた。
【0012】
(液滴の移動)
また、前記液滴の形状を変化させる技術において、例えば、液滴の基板に対する接触角を非対称にすることにより、基板上で液滴を移動させることも可能である。
【0013】
液滴の前記接触角を非対称にするためには、例えば液滴に印加される電圧を非対称にすることが考えられる。そして、液滴に印加される電圧を非対称にするためには、たとえば、液滴が置かれている基板の電位を面内で異ならせることが考えられる。
【0014】
これによって、例えば、液滴を、基板との接触点において、接触角の高い点から、接触角の低い点の方向に移動させたりすることができる。
【0015】
しかしながら、前記方法による液滴の移動も、先に説明した液滴の変形における問題点と同様の問題点を有している。
【0016】
そこで、本発明は、前記の問題点にかんがみてなされたものであり、その目的は、構造が簡素で、かつ低電圧で液滴の変形が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法を提供することにある。
【0017】
さらには、構造が簡素で、かつ低電圧で液滴の移動が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の液滴制御装置は、前記課題を解決するために、
少なくとも一対の電極を有し、当該一対の電極の内の少なくとも一方の電極の表面上に配置された液滴の態様を制御することができる液滴制御装置であって、
前記液滴は、油滴であり、
前記一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の液滴制御装置は、前記課題を解決するために、
電極の表面上に配置された液滴の態様を制御する液滴制御方法であって、
少なくとも一対の電極と、当該一対の電極の内の少なくとも一方の電極表面上に配置された油滴とを備え、
前記一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられている液滴制御装置において、
前記電極間に電圧を印加することにより、前記油滴の態様を制御することを特徴とする。
【0020】
前記の構成、又は、方法によれば、油滴の配置された電極が、電気化学的に活性な水溶液中に置かれているので、電極表面で電極反応が生じうる。
【0021】
そのため、一対の電極間に印加する電圧を高電圧にすることなく、油滴の接触角を変化させることができる。
【0022】
具体的には、10V以下等の従来の1/10の電圧で、油滴の接触角を制御することができる。
【0023】
また、前記接触角の制御は、可逆的に行うことができる。すなわち、前記電圧を変化させることにより、任意の接触角を実現することができる。
【0024】
また、電極を、導電体と絶縁体との層状構造などにする必要がないので、装置の構成を簡素にすることができる。
【0025】
以上より、前記の構成及び方法では、構造が簡素で、かつ低電圧で、液滴の態様の制御、具体的には、液滴の変形が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法を提供することができる。
【0026】
なお、前記油滴(オイル ドロップレット:oil droplet)を構成する油とは、広く水に混じりにくい液体を意味する。言い換えると、前記油には、水に対する親和性が低く、例えば、水に溶けにくい又は水に混ざりにくいなどの、疎水性を有する物質が広く含まれる。
【0027】
すなわち、前記油は、例えば燃料用や潤滑用などの産業用油や、食用や調理用の家庭用油などに限定されるものではない。また、前記油の要件として、例えば容易に燃焼するなどの、燃焼性に関する性質が含まれるものでもない。
【0028】
また、本発明の液滴制御装置は、
前記電気化学的に活性な物質を金属イオンとすることができる。
【0029】
前記の構成によれば、溶液中に存在するイオンが金属イオンであるので、負の過電圧をかけて金属結晶を成長させると接触角が変化する。また、その後、正の過電圧をかけて既に析出している金属結晶を溶解させても同様に接触角が変化する。このように、一度結晶を成長させると、過電圧を正にしても負にしても、どちらの場合でも接触角を変化させることができる。
【0030】
また、本発明の液滴制御装置は、
前記電気化学的に活性な物質を非金属イオンとすることができる。
【0031】
前記の構成によれば、溶液中に存在するイオンが非金属イオンであるので、接触角変化の際に結晶成長をともなわない。
【0032】
ここで、電極上で金属結晶が成長する場合には、結晶が成長し電極基板/水溶液/油滴界面の形状が変化してしまう場合があり、デバイス化の観点からは好ましくない場合もある。この点、非金属イオンでは、前記の不具合が生じにくい。
【0033】
また、本発明の液滴制御装置は、
前記油滴を電気化学的に不活性な物質とすることができる。
【0034】
前記の構成によれば、油滴が電気化学的に不活性な物質である。
【0035】
そのため、時間と共に液滴が反応・消費されたりすることがなく、デバイスの寿命を長くすることができる。
【0036】
また、本発明の液滴制御装置は、
前記油滴が配置された電極を、当該電極の面内で電位を異ならせることができるように設けることができる。
【0037】
また、本発明の液滴制御方法は、
前記油滴が配置された電極は、当該電極の面内で電位を異ならせることができるように設けられており、
前記電極間において、油滴の少なくとも異なる2箇所に、互いに異なった電圧を印加することにより、前記油滴の態様を制御することができる。
【0038】
前記の構成、又は、方法によれば、平面視における油滴の異なる位置に、異なる電位を印加することができる。そのため、油滴の接触角を、全方位において均一ではなく、任意の位置で、他の位置と異ならすことが容易になる。
【0039】
そのため、1個の油滴における接触角の位置差を利用して、油滴を移動させることが容易になる。
【0040】
以上より、前記の構成及び方法では、構造が簡素で、かつ低電圧で、液滴の態様の制御、具体的には、液滴の移動が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法を提供することができる。
【0041】
また、本発明の液体レンズは、
前記液滴制御装置が備えられ、
前記液滴がレンズとして機能し、
前記液滴の態様を制御することにより、前記レンズの焦点を制御することが可能である。
【0042】
また、本発明の液体ディスプレイは、
前記液滴制御装置が備えられ、
前記液滴が光シャッターとして機能し、
前記液滴の態様を制御することにより、表示の切替えを行うことが可能である。
【0043】
また、本発明のラボ・オン・ア・チップ装置は、
前記液滴制御装置が備えられ、
液滴の態様を制御することにより、電極上での液滴の反応が可能である。
【0044】
前記の構成によれば、低消費電力で、構造が簡素な液体レンズ、液体ディスプレイ、ラボ・オン・ア・チップ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の液滴制御装置は、以上のように、液滴は、油滴であり、一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられているものである。
【0046】
また、本発明の液滴制御方法は、以上のように、少なくとも一対の電極と、当該一対の電極の内の少なくとも一方の電極表面上に配置された油滴とを備え、前記一対の電極は、電気化学的に活性な物質が存在する水溶液中に設けられている液滴制御装置において、前記電極間に電圧を印加することにより、前記油滴の態様を制御する方法である。
【0047】
それゆえ、構造が簡素で、かつ低電圧で液滴の変形が可能な液滴制御装置、及び、液滴制御方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態について図に基づいて説明すると以下の通りである。
【0049】
図1は、本実施の形態の液滴制御装置の概略構成を示す図である。なお、前記図1は、本実施の形態の液滴制御装置の基本構成例の1つを示すものであり、前記液滴制御装置の構成は、当該図1に示される構成に限定されるものではない。
【0050】
(基本構成例)
前記図1に示すように、本実施の形態の液滴制御装置10は、容器20に電気化学的に活性な物質が存在する水溶液30が入れられた構成を有している。
【0051】
そして、前記水溶液30には、作用電極40と対向電極42と参照電極44との、合計3個の電極が浸漬されている。この作用電極40と対向電極42とは、第1接続線46により電気的に接続されている。
【0052】
また、前記参照電極44は、前記第1接続線46に電気的に接続された第2接続線に電気的に接続されている。
【0053】
以上の構成により、前記3個の電極、すなわち、作用電極40と対向電極42と参照電極44とは、互いに電気的に接続された状態で、前記水溶液30中に浸漬されている。
【0054】
また、前記第1接続線46には、可変電源60が設けられている。
【0055】
ここで、前記作用電極40は、平板状に形成されている。そして、この作用電極40上には、液滴としての油滴50が配置されている。
【0056】
以下、順に、具体的に説明する。
【0057】
(電極構成)
なお、以下の説明は、作用電極と対向電極と参照電極とが備えられた、いわゆる3電極構成の液滴制御装置に基づいている。ただし、液滴制御装置が3電極構成であることは必須ではない。すなわち、以下に説明する液滴の態様の変化は、作用電極及び対向電極のみが備えられた2電極構成の液滴制御装置においても生じうる。
【0058】
これは、液滴の態様の変化は電気化学反応で生じるところ、この電気化学反応は、作用電極と水溶液との間に形成される電気二重層にかかる電圧を駆動力として起きる。ここで、2電極構成の液滴制御装置においては、作用電極と対向電極間との電圧差は測定可能であるが、前記電気二重層にかかる電圧を測定することはできない。そして、前記電気二重層にかかる電圧は、作用電極と対向電極間の距離や電気化学セルの形状などによって変化する場合がある。
【0059】
そこで、以下の説明では、所望の電圧が前記電気二重層にかかっていることを確認するために3電極構成の液滴制御装置を用いた構成例について説明している。
【0060】
以上のように、液滴制御装置が3電極構成であることは必須ではなく、例えば装置を簡素化するなどの観点から、液滴制御装置を2電極構成とすることに特段の問題はない。
【0061】
(電極)
まず、電極について説明する。
【0062】
前記液滴制御装置10では、前記の通り電極は3電極系である。
【0063】
そして、前記油滴50の運動を一次元に制限するために、前記作用電極40には、リボン状のAu電極を用いた。
【0064】
また、前記対向電極42にはPt板を用い、前記参照電極44にはAg|AgCl(sat.KCl)電極を用いた。
【0065】
(水溶液)
つぎに、前記水溶液30について説明する。
【0066】
前記液滴制御装置10では、その水溶液30には、10mM SnSO4と0.5M H2SO4との混合溶液を用いた。そして、前記混合溶液には、平滑剤として、0.5mM Amiet-320(商品名、花王)が加えられている。
【0067】
(液滴)
つぎに、液滴としての油滴50について説明する。
【0068】
前記液滴制御装置10では、その油滴50としてヘキサンを用いた。
【0069】
そして、作用電極40への油滴50の着滴は、下記電析反応中に行った。
【0070】
(電圧印加)
つぎに、本実施の形態の液滴制御装置10において、前記作用電極40と対向電極42との間に電圧を印加し、金属の電析反応中における作用電極40の表面の油滴50の運動をCCDカメラなどを用いて側面から観察した。
【0071】
前記の観察の結果、油滴50が前記作用電極40の上で、その態様を変化させることがわかった。
【0072】
具体的には、電析反応が起こっている電極表面上に置かれた微小な油滴50は、前記電析電位を制御することで、その接触角を変化させたり、その位置を変化させたりすることが可能であることがわかった。
【0073】
(接触角の変化)
まず、油滴50の接触角の変化について、図2に基づいて、実施の形態1として説明する。この油滴50の接触角の変化は、油滴50に印加する電圧を制御することで、油滴の接触角を任意に制御することができるというものである。すなわち、本実施の形態の液滴制御装置10では、油滴50が作用電極40のほぼ一定位置に静止した状態で、前記作用電極40に対する接触角(図2に示すθ)が変化する点が特徴である。
【0074】
なお、図2は、本実施の形態の液滴制御装置10の概略構成を示す図である。
【0075】
また、接触角の変化の説明に用いる前記図2に示す液滴制御装置10は、前記図1に示した液滴制御装置10と比べ、構成が若干異なっている。
【0076】
具体的には、前記図1に示した液滴制御装置10では、油滴50が作用電極40の上方(上面)に配置された構成を例示していた。これに対して、前記図2に示した液滴制御装置10では、油滴50が作用電極40の下方(下面)に配置された構成を例示している。
【0077】
また、前記図2に示した液滴制御装置10では、第1接続線46に電流計62が設けられ、第2接続線48に電圧計64が設けられている。
【0078】
ただし、前記図2に示した、例えば油滴50が作用電極40の下方(下面)に配置されることなどは、油滴50の接触角を変化させるための必須の事項ではない。
【0079】
つぎに、図3に基づいて、油滴50の接触角の変化について説明する。ここで図3は、本実施の形態の液滴制御装置10における液滴の挙動を示す図である。
【0080】
前記図3に示すように、本実施の形態の液滴制御装置10では、油滴50の作用電極40上の位置は一定で、接触角のみが変化している。
【0081】
図3における(a)は、静止電位(at rest potential)における油滴50を示している。
【0082】
この図3における(a)に示すように、静止電位における油滴50は、ほぼ球形をしており、油滴50と作用電極40とは、ほぼ点て接触している。そのため、油滴50の作用電極40に対する接触角(図2に示すθ参照)は90度を大きく超えている。
【0083】
他方、図3における(b)は、析出中(during deposition)における油滴50を示している。
【0084】
この図3における(b)に示すように、析出中における油滴50は、前記球形が多少つぶれており、油滴50と作用電極40とは、点ではなく、むしろ面で接触している。そのため、油滴50の作用電極40に対する接触角は、90度付近まで低下している。
【0085】
そして、本実施の形態の液滴制御装置10では、前記図3における(a)に示した形態と、前記図3における(b)に示した形態とを、任意に可逆的に行き来させることができる。
【0086】
図4は、本実施の形態の液滴制御装置10における、電位と、電流密度及び接触角との関係を示す図である。
【0087】
なお、前記図4における横軸は、電位(Potential)対Ag|AgCl/Vを示している。また、左側の縦軸は電流密度(Current Density/mAcm-2)を示し、右側の縦軸は接触角(Contact angle/degree)を示している。
【0088】
図4に示すように、電流密度の絶対値は-0.6V近傍で極大値をとり、-0.6Vからより低電位になるにつれて、なだらかに減少する。他方、-0.6Vよりも高電位側では、電流密度の絶対値は、急峻に減少する。
【0089】
つぎに、接触角について説明する。図4に示すように、接触角は、-0.55V近傍よりも低電位側では、電位に拘わらず、ほぼ一定である。そして、電位が-0.55Vよりも大きくなると、接触角は、急峻に増加する。
【0090】
そして、前記-0.48V近傍よりも高電位になると、接触角は、再び急峻に増加し、その後、再び、電位に拘わらず、変化の少ない領域となる。
【0091】
以上のように、本実施の形態の液滴制御装置10では、作用電極40の電位を制御することで、作用電極40上の油滴50の接触角を制御することができる。
【0092】
また、前記接触角は、電位の上昇及び下降を繰り返すことで、可逆的に、任意の値を実現することができる。
【0093】
そして、本実施の形態の液滴制御装置10では、油滴50の、接触角の変化を含む形状の変形を、図4に例示したように、数ボルト以下の電位で行うことができる。
【0094】
すなわち、先に説明した従来の構成では、数十ボルトの高電圧が駆動力として必要であったのに対して、本実施の液滴制御装置10では、格段に小さい電圧の範囲内における電極電位の操作で、油滴50の形状の可逆的な制御が可能となっている。
【0095】
〔実施の形態2〕
つぎに、本発明の第2の実施の形態として、油滴50の位置を変化させることが可能な液滴制御装置10について、図5(a)及び図5(b)に基づいて説明する。この油滴50の位置の変化は、油滴50に印加する電圧を制御することで、油滴50の位置を任意に制御すること、すなわち、油滴50を所望の位置に移動させることができるというものである。
【0096】
ここで、図5(a)及び図5(b)は、いずれも本実施の形態の液滴制御装置10の概略構成を示す図である。
【0097】
なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の各実施の形態の図面に示した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
本実施の形態の液滴制御装置10は、前記実施の形態1の液滴制御装置10と比較して、油滴50の位置が変化する点が相違する。すなわち、実施の形態1の液滴制御装置10においては、前記油滴50の位置を変えずにその接触角のみを変化させていたのに対して、本実施の形態の液滴制御装置10では、油滴50を任意の位置に動かすことができる。以下、説明する。
【0099】
先に図1や図2などに基づいて説明した実施の形態1の液滴制御装置10では、作用電極40の電位はその面内において一様であった。これに対して本実施の形態の液滴制御装置10では、作用電極40の電位をその面内において異ならせることができる。また、その面内における電位を所望の任意の値に設定することができる。
【0100】
前記設定の具体的な方法としては、例えば、オフセット電圧を印加する方法や、参照電極44を作用電極40に対して非対称な位置に置く方法などを例示することができる。以下、順に説明する。
【0101】
まず、図5(a)に基づいて、前記オフセット電圧を印加する方法について説明する。
【0102】
(オフセット構成)
図5(a)に示すように、本実施の形態の液滴制御装置10では、作用電極40のほぼ両端部に、その両端部を電気的に接続するオフセット用配線82が接続されている。そして、前記オフセット用配線82には、オフセット電圧を印加するためのオフセット用電源80が接続されている。
【0103】
前記の構成によれば、作用電極40の面内における電位を不均一にすることができる。そして、作用電極40上の油滴50の位置は、作用電極40の電位によって変わるため、作用電極40の電位を面内で任意に制御することで、作用電極40上の油滴50の位置を任意に変えることができる。言い換えると、作用電極40上で油滴50を任意の方向に動かすことができる。
【0104】
なお、図5(a)などに示す電気化学制御装置70とは、前記作用電極40に電位を与えるために必要な装置の全体を示している。そして、その構成要素としては、例えば、前記可変電源60や、電流計62や、電圧計64が含まれる。
【0105】
(非対称構成)
つぎに、図5(b)に基づいて、参照電極44を作用電極40に対して非対称な位置に置く方法について説明する。
【0106】
図5(b)に示すように、本実施の形態の液滴制御装置10の他の構成では、参照電極44が、作用電極40の長手方向に対して、意図的に非対称な位置に置かれている。具体的には、参照電極44は、作用電極40の長手方向における一方の端に揃うように置かれている。
【0107】
前記の構成によれば、参照電極44の先端と、作用電極40の両端との距離に長短が生じる。すなわち、参照電極44の先端から作用電極40の長手方向における2つの端までの距離(図5(b)に示すD1とD2)が等しくならない。参照電極44がその端に揃うように置かれた当該端と参照電極44の先端との距離D2は、他端と参照電極44の先端との距離D1よりも短くなる。
【0108】
前記の構成によれば、前記図5(a)に基づいて説明したオフセット電圧を印加するための構成(オフセット用電源80、オフセット用配線82など)を液滴制御装置10に追加することなく、油滴50を任意の方向に動かすことが可能となる。
【0109】
すなわち、前記の構成によれば、参照電極44から作用電極40までの距離が、作用電極40の面内長手方向において異なることとなる。
【0110】
ここで、一般に、電気化学反応系では、作用電極-参照電極間における電圧(U)を、電気化学制御装置で一定に保つ。しかし、電極反応が進み、電流(I)が流れる場合には、溶液抵抗(R)による電位損失(オーミック損失、IR損失)が起こる。そのため、実際に電極反応を駆動する過電圧は、この効果を差し引いたもの、すなわちU-IRとなる。
【0111】
以上より、参照電極を作用電極に対して非対称に配置すると、溶液抵抗が場所によって異なってくるため、作用電極面内に電位勾配を作ることができる。
【0112】
前記図5(b)に示した構成例では、参照電極44からの距離が長い(D1)方は、前記距離が短い(D2)方に比べて、前記IR損失が大きくなる。そして、作用電極40の長手方向において、前記IR損失の大きさを異ならすことができるので、前記作用電極40の長手方向において、前記電位勾配を作ることができる。
【0113】
そして、前記構成によれば、作用電極40の長手方向において電位勾配を作ることができるので、油滴50を任意の方向に動かすことが可能となる。
【0114】
なお、図5(a)及び図5(b)を用いた以上の説明は、3電極構成の液滴制御装置10に基づいていた。ただし、作用電極40の電位をその面内において異ならせることが可能な液滴制御装置10(実施の形態2)においても、その電極構成が3電極構成であることは必須ではなく、電極構成を例えば先に説明した2電極構成とすることもできる。
【0115】
以上のように本実施の形態の液滴制御装置10では、水溶液30に浸した電極基板(作用電極40)上に、電気化学的に不活性な油滴50を置き、前記電極基板上で電気化学反応をおこさせることで、油滴50の位置を変えることができる。
【0116】
そして、前記電気化学反応を起こさせるために必要な電圧、言い換えると、前記油滴50の操作に必要な駆動力は数ボルトであった。この駆動力は、先に説明した従来の技術において必要な数十ボルトの高い駆動力に比べ、およそ1/10に低減された値である。
【0117】
なお、前記実施の形態に関する説明では、油滴に印加する電圧を制御することで、油滴の態様を制御することについて説明した。ただ、例えば油滴の種類を変えることで、油滴に例えば往復運動などの自発運動をさせることもできる。具体的には、例えば油滴をニトロベンゼンとした場合には、油滴に自発的な往復運動をさせることができる。
【0118】
つぎに、前記液滴制御装置は、種々の用途に用いることができる。以下、その代表的な用途例について説明する。
【0119】
(液体レンズ)
まず、液体レンズについて説明する。ここで、液体レンズとは、オートフォーカス装置などに用いられる光の焦点を合わせるためのレンズが、固体ではなく、液体で形成されたものである。
【0120】
通常、カメラなどに用いられるオートフォーカス装置では、固体のレンズの位置を変えることで焦点を合わせている。
【0121】
これに対して、前記液体レンズでは、レンズ、すなわち液体の形状を変えることで焦点を合わせている。すなわち、液体の形状が変化することで、レンズ界面の形状や曲率などが変わり、光の集め方や発散のさせ方が変わる。そして、その変化を利用して、焦点を合わせるものである。
【0122】
ここで、液体の形状を変化させる方法としては、一般に液体に電圧を印加する方法が用いられている。そして、先に説明したとおり、従来の方法では、液体に印加する電圧に、高い電圧が要求されていた。
【0123】
この点、本実施の形態の液滴制御装置では、液体の形状を変化させるのに、高い電圧は必要ではなく、例えば数ボルト程度の低い電圧で液体の形状を変化させることができる。
【0124】
よって、低消費電力の液体レンズを実現することができる。
【0125】
(液体ディスプレイ)
つぎに、液体ディスプレイについて説明する。ここで、液体ディスプレイとは、液体の形状の変化を利用して、該液体で光シャッターを形成するものである。
【0126】
具体的には、例えば、一定の区画(面積)を有するカラーフィルター上に液体を置き、その液体の形状を変化させることで、前記面積のなかで該液体が覆う面積を変化させる。それにより、ディスプレイの表示色を変化させることができる。
【0127】
一例として、カラーフィルターの色を赤色とし、その上に置かれた液体を、液体に黒色顔料を混ぜるなどして黒色とした場合について説明する。前記の例の場合、黒色の液体が一定の区画のカラーフィルター上の全面に広がっているときには黒色が表示される。そして、黒色の液体が覆う面積が少なくなるにしたがって、表示色は赤色となり、前記面積の縮小にともない、赤色の輝度が高くなっていく。
【0128】
以上の様に、液体の形状(面積)を変化させて、ディスプレイの表示色を変化させることができる。なお、前記の例では、液体が黒色である場合について説明したが、液体の色は黒色である必要はなく、例えば、緑色や青色とすることもできる。
【0129】
ここで、液体の形状(面積)を変化させる方法として、前記実施の形態の液滴制御装置を用いることができる。前記液滴制御装置を用いることで、低消費電力の液体ディスプレイを実現することができる。
【0130】
(ラボ・オン・ア・チップ装置)
つぎに、ラボ・オン・ア・チップ装置について説明する。ここで、ラボ・オン・ア・チップ装置とは、小片上で、小規模な実験を可能とする装置を意味する。
【0131】
具体的には、例えば、複数種類の液体を混合する実験において、各液体を少量づつ小片に置き、その小片上で、液体を混合する装置を意味する。
【0132】
ここで、ラボ・オン・ア・チップ装置に前記実施の形態の液滴制御装置を用いると、より簡易な構成で、また、低消費電力のラボ・オン・ア・チップ装置を実現することができる。
【0133】
なお、本発明は前記した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
少ない消費電力で、液滴の態様を制御することができるので、例えば、液体レンズや、液体ディスプレイや、ラボ・オン・ア・チップ装置などに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態を示すものであり、液滴制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示すものであり、液滴制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の液滴制御装置における、液滴の挙動を示す図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の液滴制御装置における、電位と、電流密度及び接触角との関係を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の液滴制御装置を示す図であり、(a)及び(b)は、電極の概略構成を示している。
【符号の説明】
【0136】
10 液滴制御装置
20 容器
30 水溶液
40 作用電極 (電極)
42 対向電極 (電極)
44 参照電極
46 第1接続線
48 第2接続線
50 油滴 (液滴)
60 可変電源
62 電流計
64 電圧計
70 電気化学制御装置
80 オフセット用電源
82 オフセット用配線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図3】
4