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明細書 :能動フィルタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4328861号 (P4328861)
公開番号 特開2007-049506 (P2007-049506A)
登録日 平成21年6月26日(2009.6.26)
発行日 平成21年9月9日(2009.9.9)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
発明の名称または考案の名称 能動フィルタ
国際特許分類 H03H  11/04        (2006.01)
H03H  11/48        (2006.01)
FI H03H 11/04 G
H03H 11/48 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2005-232712 (P2005-232712)
出願日 平成17年8月11日(2005.8.11)
審査請求日 平成20年3月18日(2008.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】武藤 浩二
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
審査官 【審査官】崎間 伸洋
参考文献・文献 特開平07-240664(JP,A)
特開2001-068967(JP,A)
特開平08-172338(JP,A)
特開平02-137414(JP,A)
調査した分野 H03H11/00-11/54
特許請求の範囲 【請求項1】
数の演算増幅器を使用した積分回路を用いて、低域通過特性及びそれと相補な高域通過特性を同時に出力する能動フィルタにおいて、
前記複数の積分回路のそれぞれの前段に、等価積分時定数を大きくあるいは小さくする係数回路を前置して、前記複数の積分回路の内の最終段の積分回路出力を低域通過特性の出力とし、
前記係数回路は、演算増幅器を信号減衰回路として用いて等価積分時定数を大きくし、あるいは信号増幅回路として用いて等価積分時定数を小さくすることで、フィルタの遮断周波数を可変し、かつ、
入力信号と前記複数の積分回路の内の第1の積分回路出力を所定の割合で重みをつけて減算することにより高域通過特性の出力をする能動フィルタ。
【請求項2】
前記高域通過特性の出力を、低域通過特性の出力に組み合わせて、低域通過の遮断周波数と高域通過の遮断周波数を所定の関係に設定することにより帯域通過特性または帯域除去特性を有する請求項に記載の能動フィルタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、LC低域通過フィルタの直列枝電流と並列枝電圧の関係を複数の積分回路を用いて模擬する低域通過特性の能動フィルタ、及びそれと相補な特性を持つ高域通過特性の能動フィルタ、並びに、これら両フィルタを組み合わせて構成した帯域通過特性または帯域除去特性の出力をする能動フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
能動フィルタの一般的構成方法及び設計法としては、例えば非特許文献1が知られており、また能動フィルタの遮断周波数あるいは通過帯域を可変するための可変抵抗回路として、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
図2は、一般的なLC低域通過フィルタの一例で、フィルタ次数が4次の場合を示している。例示したような抵抗とリアクタンスだけで作った受動フィルタ(パッシブフィルタ)は、増幅器と組み合わせた、より優れた特性を持つ能動フィルタ(アクティブフィルタ)に模擬できることが知られている。図3は、図2に示すLC低域通過フィルタの直列枝を流れる電流(I1、 I3)及び並列枝の電圧(V2、 Vout)を模擬した能動低域通過フィルタの機能ブロック図である。図中の積分回路についた符号は入力端子の正負を表している。また、矢印は各ブロック出力端子からの信号の流れを表している。図3の4つの積分回路(積分回路1~積分回路4)は、それぞれ図2のリアクタンスL1, C2, L3, C4に対応している。
【0004】
図2に示すLC 低域通過フィルタにおいて、入力電圧Vin 及び直列枝電流I1、I3 及び並列枝電圧V2、Vout との間には
【0005】
【数1】
JP0004328861B2_000002t.gif

【0006】
の関係がある。そこで、
【0007】
【数2】
JP0004328861B2_000003t.gif

【0008】
という伝達関数を有する差動入力の回路ブロックを用いれば、上式の関係を模擬することができる。この回路ブロックは差動入力の積分回路を用いて構成することができ、関数T1 及びT4 の分母に現れる定数項RS及び1/RLは積分回路の自己ループで実現できる。これをブロック図で表すと図3のようになる。
【0009】
図4に示す反転積分回路は、非反転入力端子を接地した演算増幅器と、その反転入力端子に接続される入力抵抗Rと、帰還容量Cとによって構成される。演算増幅器は、+端子(非反転入力端子)と-端子(反転入力端子)にかかる電圧の差を、高利得に増幅して出力する差動増幅器である。差動入力の積分回路は、反転積分回路のみで構成することはできないので、一般的には図4に示すような反転積分回路を、図3の積分回路1 及び積分回路3 として、図5に示すような非反転積分回路を図3の積分回路2 及び積分回路4 として交互に用いて、加算入力で処理できるように全体の回路を構成している。
【0010】
このように構成された積分回路の積分時定数はT=CRであるため、遮断周波数を可聴周波数より遙かに低い例えば0.1Hzにするためには、R及びCの値は2.9MΩ及び1μFという大きなものが必要となる。しかし、遮断周波数の設定精度を1%程度とした場合、これらの値を1%の精度で実現することは非常に困難であるばかりでなく、抵抗値が大きいため基板の漏れ電流による誤差を生じるため、遮断周波数を正確に設定することができない。

【特許文献1】特開2001-68967号公報
【非特許文献1】ボルケンブルグ(柳沢 監訳)、アナログフィルタの設計、秋葉出版(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
能動フィルタにおいてその遮断周波数あるいは通過帯域を可聴周波数以下の極低周波領域に設定しようとする場合、従来の能動フィルタ構成法での設計計算から得られた抵抗またはトランジスタの伝達コンダクタンスの逆数及びコンデンサの値は極めて大きくなり、精度良くこれを実現すること及びそのような能動フィルタを集積化することは極めて困難である。
【0012】
また能動フィルタの遮断周波数あるいは通過帯域または阻止帯域を可変する従来技術では、並列接続される回路素子のうち一つの抵抗器は常に入出力端子間に接続されており、実現可能な可変抵抗範囲が限定されるため、能動フィルタの遮断周波数あるいは通過帯域または阻止帯域を広い範囲にわたって可変することができない。
【0013】
そこで本発明では上記の課題を解決することのできる能動フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は積分回路に係数回路を前置することで前記の課題を解決する。係数回路を前置することにより、全体の積分時定数を拡大あるいは縮小することができる。
【0015】
本発明では、LC低域通過フィルタの直列枝電流と並列枝電圧の関係を模擬する能動フィルタであって、係数回路を前置した積分回路と、抵抗値を外部から与えるディジタル信号により可変できるようにした可変抵抗回路を備えた、遮断周波数あるいは通過帯域または阻止帯域を可変できる能動フィルタを提供する。
【0016】
本発明の低域通過特性の能動フィルタは、複数の積分回路のそれぞれの前段に、等価積分時定数を拡大あるいは縮小する係数回路を前置することで、フィルタの遮断周波数を広範囲に設定可能にしたものである。この係数回路は、演算増幅器を信号減衰回路として用いて等価積分時定数を拡大し、あるいは信号増幅回路として用いて等価積分時定数を縮小する。
【0017】
また、本発明の低域通過特性の能動フィルタと相補な特性を持つ高域通過特性の能動フィルタは、複数の積分回路のそれぞれの前段に、等価積分時定数を拡大あるいは縮小する係数回路を前置することで、フィルタの遮断周波数を広範囲に設定可能にし、かつ、入力信号と複数の積分回路の内の第1の積分回路出力を所定の割合で重みをつけて減算することにより高域通過特性の出力をする。
【0018】
また、本発明の帯域通過特性または帯域除去特性の出力をする能動フィルタは、高域通過特性の能動フィルタと低域通過特性の能動フィルタを組み合わせて、低域通過の遮断周波数と高域通過の遮断周波数を所定の関係に設定することにより構成したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、能動フィルタの遮断周波数あるいは通過帯域または阻止帯域を可聴周波数以下の極低周波域から演算増幅器の性能に起因する限界周波数までの広い範囲にわたって可変させることができる。
【0020】
また、前記能動フィルタの集積回路化を容易にすることができる。
【0021】
また、前記能動フィルタの遮断周波数あるいは通過帯域または阻止帯域をマイクロコンピュータ等を用いて外部から自由に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、例示に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成した能動低域通過フィルタを例示する機能ブロック図である。係数回路についた符号は入力端子の正負を表している。また、矢印は各ブロック出力端子からの信号の流れを表している。例示の能動低域通過フィルタを構成する積分回路は、図4に示すような反転積分回路で構成されている。この能動低域通過フィルタは、図3を参照して前述した能動低域通過フィルタのそれぞれの積分回路に、係数回路(係数回路1、2、・・・N)を前置したものに相当する。それ故、図1に示す能動低域通過フィルタは、図2に例示したようなLC低域通過フィルタを模擬するフィルタである。
【0023】
積分回路に前置される係数回路は、演算増幅器を用いて、例えば図6に例示したように構成することができる。図6に示す差動入力の係数回路の出力端子と図4に示す反転積分回路の入力端子が接続される。全体の積分時定数はT=CR・R1/R2となるので、 R1>R2であれば積分時定数を拡大することができる。また、R1<Rであれば積分時定数を縮小することができる。例えば遮断周波数を0.1Hzとした場合、R1及びR2をそれぞれ150kΩ、510Ωとすれば、R及びCの値はそれぞれ100kΩ、0.1μFとなり、これらの抵抗及びコンデンサの値は1%以下の精度のものが標準的に入手できる値であると同時に、基板の漏れ電流の影響を無視することができる値となる。また遮断周波数の上限は回路に使用する能動素子(演算増幅器あるいはトランジスタ)の周波数特性で決定され、係数回路を前置することによる劣化はほとんどない。
【0024】
本発明では演算増幅器と抵抗及びキャパシタで構成される積分回路を有する能動フィルタを対象としており、このような積分回路の積分時定数を拡大或いは縮小するために備えられる本発明の係数回路は、図6(a)(b)に例示したように、非反転入力端子を抵抗R3を介して接地した演算増幅器と、その反転入力端子及び非反転入力端子に接続される入力抵抗R1と、帰還抵抗R2とによって差動入力の係数回路として構成することができる。2入力の反転入力端子を有する図6(b)の回路は、図1の係数回路1に用いられ、それ以外の係数回路2~Nには、1入力の反転入力端子を有する図6(a)の回路が用いられる。非反転入力端子に接続される接地抵抗R3の値は、係数値をR1/R2の値に設定するために、図6(a)の回路の場合、帰還抵抗R2の値に等しく、また図6(b)の回路の場合は入力抵抗R1と帰還抵抗R2の並列合成抵抗値に等しく選ばれる。この演算増幅器は、信号を減衰する回路として用いて等価積分時定数を拡大する場合もあれば、増幅回路として用いて、等価積分時定数を縮小する場合もある。
【0025】
遮断周波数を可変する可変抵抗回路は図7に示すように、2つの端子A、Bを有し、これらの端子の間に抵抗(R0~RN-1)とスイッチ(S0~SN-1)の直列回路を複数個並列に接続した回路により構成される。スイッチS0~SN-1はそれぞれ独立に開閉を制御するための制御信号入力端子 b0~bN-1を有し、アナログスイッチ、単体のMOSトランジスタあるいは機械接点を利用するリレーのいずれを用いても良い。
【0026】
この可変抵抗回路は、制御信号を与えることにより、その制御信号に応じた抵抗だけが端子A~B間に接続され、所望の抵抗値を端子A~B間に得ることができる。一例として、抵抗素子数を8素子とし、制御信号がb0をLSBとする8ビット2進数で与えられる場合を考えると、R0をフィルタの最低遮断周波数により決められる値とし、R1=R0/2 、R2=R0/4、R3=R0/8、…、R7=R0/128とすれば、制御信号入力により遮断周波数を最低周波数からその255倍まで任意の整数倍に設定することができる。
【0027】
例示の可変抵抗回路は、積分回路の入力抵抗R(図4参照)に代えて挿入する。可変抵抗回路の端子Aを、図4に示す反転積分回路の演算増幅器の反転入力端子に、また、可変抵抗回路の端子Bを図6の係数回路の出力端子に接続すれば、スイッチ端子が基準電位面との間に有する寄生容量の影響は無視することができる。また、スイッチS0~SN-1がオン抵抗を有する場合は、各抵抗R0~RN-1は上記計算式で求められた値からオン抵抗を差し引いた値とすればよい。
【0028】
図1に示した能動低域通過フィルタからそれと相補な高域通過出力を得るための回路構成は、図8に示すように入力信号Vinを1/2減衰器により減衰した信号と第1の積分回路(積分回路1)出力とを減算する。これにより、図8の能動フィルタは低域通過出力(LPF出力)及びそれと相補な高域通過出力(HPF出力)とを同時に出力することができる。
【0029】
以下、図8に示す能動フィルタの作用について、図9を参照して、さらに説明する。図9は、LC低域通過フィルタの場合の無損失2ポート回路を例示する図である。図示の回路において、端子1-1’ は入力ポート、2-2’ は出力ポートを示す。L1 を流れる電流I1
【0030】
【数3】
JP0004328861B2_000004t.gif

【0031】
で与えられる。ただし、Zin は入力ポートから右側の全回路を見た入力インピーダンスである。これより
【0032】
【数4】
JP0004328861B2_000005t.gif

【0033】
を求めると
【0034】
【数5】
JP0004328861B2_000006t.gif

【0035】
となる。ここでS11 は入力ポートにおける反射係数である。
LC のみで構成された無損失2 ポート回路の散乱行列を
【0036】
【数6】
JP0004328861B2_000007t.gif

【0037】
とおけば、図9において各ポートの反射電力|b1|2 及び|b2|2 は、ポート1 の入射電力を|a1|2として
|b1|2 =|S11|2|a1|2
|b2|2 =|S21|2|a1|2 (3)
となる。
【0038】
一方、無損失2 ポートの消費電力P は
P=|a1|2 -(|b1|2+|b2|2)=0 (4)
であるから、これより
|b1|2=|a1|2-|b2|2 (5)
を得る。
【0039】
すなわち、ポート1 での反射電力は入射電力とポート2 の反射電力(この場合、負荷抵抗RL の消費電力)の差に等しい。従って、回路が低域通過フィルタであれば、ポート1 の反射電力はその低域通過フィルタと相補な高域通過特性となる。
【0040】
式(2) は電力に換算するとポート1 の反射電力、すなわち式(5) に他ならないから、直列枝電流と並列枝電圧の関係を模擬する能動フィルタにおいて
【0041】
【数7】
JP0004328861B2_000008t.gif

【0042】
を得れば、その低域通過能動フィルタと相補な特性を有する高域通過特性のフィルタを同時に実現することができる。
【0043】
図8の構成において、積分回路1 の出力はI1RS となっているので、入力電圧Vin を1/2 倍してこれらを減算回路に入力してやれば、低域通過フィルタと相補な特性を持つ高域通過フィルタを同時に構成することができる。
【0044】
図10は、帯域通過あるいは帯域除去フィルタの構成を説明する図である。帯域通過あるいは帯域除去フィルタは、低域通過出力の能動フィルタと、高域通過出力の能動フィルタを直列に組み合わせることにより構成できる。低域通過出力の能動フィルタとしては、図1(或いは図8)に例示したようなフィルタを用いることができ、また、高域通過出力の能動フィルタとしては、図8に例示したような低域通過出力と相補な高域通過出力をする能動フィルタを用いることができる。これらフィルタを、例えば図10に示すように組み合わせて、帯域通過あるいは帯域除去フィルタを構成することができる。低域通過フィルタの遮断周波数fLと高域通過フィルタの遮断周波数fHの関係が、fL>fHであるときが帯域通過、fL<fであるときが帯域除去となる。これらフィルタの遮断周波数は、固定値あるいはディジタル信号で可変できるよう個別に設定することにより通過帯域または阻止帯域を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に基づき構成した能動低域通過フィルタを例示する機能ブロック図である。
【図2】一般的なLC低域通過フィルタの一例を示す図である。
【図3】図2に示すLC低域通過フィルタを模擬した能動低域通過フィルタの機能ブロック図である。
【図4】反転積分回路を例示する図である。
【図5】非反転積分回路を例示する図である。
【図6】積分回路に前置される差動入力の係数回路を例示する図である。
【図7】遮断周波数を可変する可変抵抗回路を例示する図である。
【図8】低域通過出力(LPF出力)及びそれと相補な高域通過出力(HPF出力)とを同時に出力することができる能動フィルタを例示する図である。
【図9】図8に示す能動フィルタの作用について説明する図である。
【図10】帯域通過あるいは帯域除去フィルタの構成を説明する図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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