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明細書 :ホットワイヤー法による基材表面の窒化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5493140号 (P5493140)
公開番号 特開2010-050252 (P2010-050252A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
発明の名称または考案の名称 ホットワイヤー法による基材表面の窒化方法
国際特許分類 H01L  21/318       (2006.01)
FI H01L 21/318 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2008-212634 (P2008-212634)
出願日 平成20年8月21日(2008.8.21)
審査請求日 平成23年8月1日(2011.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】和泉 亮
【氏名】稲尾 治紀
【氏名】中村 郁浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100077263、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 純博
審査官 【審査官】今井 淳一
参考文献・文献 特開2002-064097(JP,A)
特開2008-060412(JP,A)
特開2001-345302(JP,A)
調査した分野 H01L 21/318
特許請求の範囲 【請求項1】
窒素含有ガスを加熱された触媒体に接触させ、接触分解反応により生じた化学種を半導体又は金属からなる基材表面と反応させ、基材表面に窒化物膜を形成することからなるホットワイヤー法において、窒素含有ガスとして、窒素ガスに10%以下の水素を添加したガスを用い、かつ、基材表面温度が200℃以下の条件で反応させることを特徴とする基材表面の窒化方法。
【請求項2】
窒素含有ガスとして、窒素ガスに0.5~5%の水素を添加したガスを用いることを特徴とする請求項1記載の基材表面の窒化方法。
【請求項3】
基材がシリコンであり、形成された窒化物膜が、シリコン窒化膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の基材表面の窒化方法。
【請求項4】
触媒体が、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、レニウム、白金、トリウム、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、シリコン、炭素の何れか1つであることを特徴とする請求項1又は2記載の基材表面の窒化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるホットワイヤー法による基材表面の窒化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空槽内で通電加熱した、タングステン等の高融点金属からなる触媒体表面において原料ガスを分解し、生成する活性種(ラジカル基)を直接若しくは気相中での反応過程を経た後に、基材上に薄膜として堆積させる手法は、触媒化学気相成長法(Cat-CVD又はホットワイヤーCVD法、あるいは単にホットワイヤー法と称する)として知られている。例えば、シリコンやガリウム・ヒ素等の半導体や各種金属の表面を窒化処理するためには、従来、窒素ガスを用いたプラズマCVD法(プラズマ化学気相成長法)(例えば、非特許文献1参照)やアンモニアガスを用いたホットワイヤー法(例えば、非特許文献2参照)等が知られている。しかし、プラズマCVD法は、プラズマダメージの問題がある。ホットワイヤー法でも、窒素含有原料ガスとしてNH3を使用すると、プラズマダメージはなく低温で処理可能であるが、高濃度の水素ラジカルが発生するために、それによる基板ダメージが問題となる。一方、窒素ガスだけを使用すると、ホットワイヤー触媒の加熱温度が2100℃もの高温を必要とするので、ホットワイヤーがダメージを受け、周辺材料がホットワイヤー材料により汚染されるという問題があった(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
本発明者らは、上記のような問題を避けるために、窒素含有原料ガスとして窒素ガスに少量の水素を混合することによって、より低い触媒体温度でシリコン等の基材表面を窒化することを試みたところ、驚くべき効果を見出し本発明に到達した。なお、ホットワイヤー法による窒化法で、窒素ガスに水素を併用する方法も提案されてはいるが(特許文献1)、凹凸基板の窒化珪素膜のカバレッジの向上とホットワイヤーの洗浄が目的で、パルス状で原料ガスに対して50%以上もの水素を添加しているものであり、本発明を示唆するものではない。また、最近、ホットワイヤーによる窒素ガスの分解に対する水素の添加の影響が報告されているが、窒素ガスに対し50%もの水素を添加しており、かかる条件下では窒素の分解が阻害されるとされている(非特許文献4参照)。

【非特許文献1】Ruofeng Guo et al, journal of Non-crystalline Solids 351 (2005)3006-3012.
【非特許文献2】Akira Izumi, Thin Solid Films, Vol.501 (2006) 157-159.
【非特許文献3】Toshiki Makimoto et al, Solid-state Electronics Vol.41 (1997)345-347.
【非特許文献4】間崎ほか、第5回Cat-CVD研究会講演予稿集, p.37(2008.6.20-21, 厚木).
【特許文献1】国際公開第2005/93809号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、ホットワイヤー法(ホットワイヤーCVD法)によって、比較的温和な条件下に、半導体や金属等の基材表面を窒化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、窒素含有ガスを加熱された触媒体に接触させ、接触分解反応により生じた化学種を基材表面と反応させ、基材表面に窒化物膜を形成することからなるホットワイヤー法において、窒素含有ガスとして、窒素ガスに10%以下の水素を添加したガスを用いることを特徴とする基材表面の窒化方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、窒素ガスに水素を10%以下という少量加えることにより、水素ラジカル密度が極めて低い雰囲気中で、窒素の分解が容易になり、触媒体(ホットワイヤー触媒)の加熱温度が約1900℃という、従来よりも比較的低い温度で、基材表面に窒化物膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、窒素含有ガスを加熱された触媒体に接触させ、接触分解反応により生じた化学種を基材表面と反応させ、基材表面に窒化物膜を形成することからなるホットワイヤー法において、窒素含有ガスとして、窒素ガスに10%以下の水素を添加したガスを用いることを特徴とする基材表面の窒化方法である。添加する水素の量は、窒素含有ガス(添加された水素を含む全体)中の組成で10(体積)%以下であり、下限は0%を超える量であるが、好ましいのは窒素ガス99.5~95(体積)%と水素0.5~5(体積)%の混合ガスである。なお、本発明においては、本発明の効果に悪影響を与えず、かつ、添加された水素の量を超えない範囲であれば、アンモニアは含まれていてもよいが、量が増すにつれ水素ラジカル量の発生が起こるので好ましくない。酸素ガスについては、微量であれば酸窒化膜を形成させることができるが、量が増すとフィラメントが酸化してしまい高蒸気圧酸化物を形成し、その蒸発による汚染が発生するので好ましくない。
【0008】
本発明において、その表面が窒化処理に供される基材は、シリコンやガリウム・ヒ素等の半導体や各種金属からなる基材である。触媒体と基材との距離を離すことで、基材表面温度は、例えば、200℃以下に下げることもでき、かかる条件下では、有機物基材を用いることもできる。本発明において好ましい基材は、シリコンであり、形成された窒化物膜が、シリコン窒化膜であるものが特に適している。
【0009】
本発明の触媒体としては、タングステン、レニウム、タンタル、モリブデン、バナジウム、白金、トリウム、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、シリコン、炭素のいずれか1つの材料、これら材料の単体の酸化物、これら材料の単体の窒化物、これら材料(炭素を除く)の単体の炭化物を用いることができる。あるいは、これらの材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の酸化物、これらの材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の窒化物、又は、これらの材料(炭素を除く)から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の炭化物の何れか1つであっても良い。
【0010】
触媒体として好ましいのは、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、レニウム、白金、トリウム、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、シリコン、炭素の何れか1つである。
【0011】
本発明の実施の態様について図を用いて説明する。本発明の基材表面の窒化方法に用いる装置としては、従来公知のホットワイヤー法のための反応装置を用いることができる。その一例を図1に示した。図1は、本発明に用いた反応装置の断面の概略図である。反応室1の下面のガス流入口2からは、窒素含有ガス3を反応室1内に送り込む。反応室1外の直上部にはヒータ4を設置し、ヒータ直下の反応室内に基材ホルダー5があり、基材6は基材ホルダー5に被着面を下に向けて設置されている。基材6とガス流入口2の中間に、タングステン線からなる触媒体7を設置し、該触媒体7を高温に加熱して流入したガスを分解する。分解生成物には発生期の水素、窒素等の活性種があり、これが基材表面汚染物を還元除去したり、また清浄な基材表面と反応し、窒化物を形成する。シャッター8は、上記分解反応が安定化するまで、基財への被着を防止するためのものである。排気口9は、反応残余ガスを排出するためのものである。
【実施例】
【0012】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。図1に示したような反応装置を用いて、基材6として、シリコンLSIウエーハを、基材ホルダー5に設置した。基材ホルダー5の温度を60℃、タングステン線の触媒体7を1900℃に加熱し、反応室1の圧力を2.7×10-5Paに設定した。最初、シリコンLSI基板6の汚染を除去するため、水素ガスを流量30sccmで10分間流入し、連続してシリコン表面の窒化珪素膜を形成するため、水素を4%含む窒素含有ガス(窒素96%)50sccmを60分間流入し、シリコン基材6の処理を行った。この処理により、汚染の除去と汚染の除去されたシリコン表面に窒化珪素の膜形成が逐次的に行われた。
【0013】
図2に、処理時間60分の場合の、X線光電子分光法(XPS)で得たスペクトルを示す。窒素ガス100%の場合を比較として示した。横軸は結合エネルギー、縦軸は光電子強度である。図2より、シリコンのピークより結合エネルギーが2.7V高いSi-Nのピークが見られる。このことより、本発明の窒素含有ガス処理により窒化珪素が生成していることがわかる。
【0014】
図3は、処理時間を変えた場合の、XPSスペクトルの変化を示す。図3において、処理時間20分でSi-Nのピークが現れており、処理時間60分ではSi-Nのピークがより高く現れているのが分かる。
【0015】
図4は、触媒体の温度を変えた場合の、XPSスペクトルの変化を示す。図4において、温度が1600℃でもSi-Nのピークに近似したピークが現れているが、1900℃の場合には、Si-Nのピークが明瞭に高く現れているのが分かる。従って、この実験条件下では、触媒体の温度は約1900℃が好ましいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によれば、低温でかつ水素ラジカルによる損傷なしに、半導体や金属表面の窒化が可能となり、薄く緻密な高品位な窒化物層を提供することが可能である。従って、例えば、本発明をシリコン表面の窒化に応用すると、半導体プロセス分野で、大変有用な技術になる可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法を実施するための反応装置(一例)の断面の概略図である。
【図2】本発明において、窒素含有ガスによるシリコン表面処理により、窒化珪素がシリコン表面に生成したことを示すX線光電子スペクトル図である。
【図3】本発明において、シリコン表面の窒化珪素の生成量(光電子強度)と処理時間との関係を示す図である。
【図4】本発明において、シリコン表面の窒化珪素の生成量(光電子強度)と触媒体の温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 反応室
2 ガス流入口
3 窒素含有ガス
4 ヒータ
5 基板ホルダー
6 基板
7 触媒体
8 シャッター
9 排気口

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3