TOP > 国内特許検索 > 放射線線量計および放射線線量計算プログラム > 明細書

明細書 :放射線線量計および放射線線量計算プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4766407号 (P4766407)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
発明の名称または考案の名称 放射線線量計および放射線線量計算プログラム
国際特許分類 G01T   1/20        (2006.01)
G01T   1/203       (2006.01)
G01T   1/16        (2006.01)
G01T   1/22        (2006.01)
FI G01T 1/20 H
G01T 1/203
G01T 1/16 B
G01T 1/22
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2008-536391 (P2008-536391)
出願日 平成19年9月26日(2007.9.26)
国際出願番号 PCT/JP2007/068675
国際公開番号 WO2008/038662
国際公開日 平成20年4月3日(2008.4.3)
優先権出願番号 2006261241
優先日 平成18年9月26日(2006.9.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年6月25日(2010.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】石川 正純
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二
【識別番号】100096976、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 純
審査官 【審査官】中塚 直樹
参考文献・文献 特開2003-194953(JP,A)
特開2001-056381(JP,A)
調査した分野 G01T 1/00-7/12
A61N 5/10
特許請求の範囲 【請求項1】
入射してくる電離放射線によって発光するシンチレータと、
このシンチレータからの出力である光を電流に変換する光電気変換器と、
この光電気変換器からの出力について、その強度が所定のしきい値以上のイベント数をカウントするカウンタと、
このカウンタによるカウント値を、各イベントの発生頻度が、イベントの光強度が大きくなるに従って、指数関数的に減少するという関係に基づいて、吸収線量に変換して吸収線量を求める吸収線量算出部と、
を有する放射線線量計。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線線量計において、
前記シンチレータは、プラスチックシンチレータである放射線線量計。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線線量計において、
前記シンチレータは、軽元素を主成分とし、発光減衰時間が10ナノ秒以下である放射線線量計。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線線量計において、
前記シンチレータは、体積が1mm3以下である放射線線量計。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の放射線線量計において、
前記吸収線量算出部は、下記式に基づいて、シンチレータの吸収線量DScを算出する放射線線量計。
Sc=(Ctotal/b)-(aΔt/b2){exp(-bE0)-1}
ここで、a,bは定数、Ctotalはイベントのカウント数、Δtはイベントカウント時間、E0は前記しきい値である。
【請求項6】
請求項1に記載の放射線線量計において、
チェレンコフ光と、シンチレータによる発光を、複数の異なる波長における発光が同時にあるか、特定の1つの波長における発光のみがあるかの違いを利用して弁別して、計数することによってシンチレータ以外の発光を除去する放射線線量計。
【請求項7】
コンピュータに、
入射してくる電離放射線によって発光するシンチレータからの出力である光を電流に変換した電気信号について、その強度が所定のしきい値以上のイベント数をカウントしたカウント値を受け入れさせ、
受け入れたカウント値を、各イベントの発生頻度が、イベントの光強度が大きくなるに従って、指数関数的に減少するという関係に基づいて、吸収線量に変換して吸収線量を求めさせ、
シンチレータの吸収線量を算出する放射線線量計算プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線線量計算プログラムにおいて、
前記指数関数的に減少するという関係は、下記式に基づいている放射線線量計算プログラム。
Sc=(Ctotal/b)-(aΔt/b2){exp(-bE0)-1}
ここで、a,bは定数、Ctotalはイベントのカウント数、Δtは測定時間、E0は前記しきい値である。
【請求項9】
コンピュータに、
入射してくる電離放射線によって発光するシンチレータからの出力である光を電流に変換した電気信号について、その強度が所定のしきい値以上のイベント数をカウントしたカウント値を受け入れさせ、
受け入れたカウント値を、各イベントの発生頻度が、イベントの光強度が大きくなるに従って、指数関数的に減少するという関係に基づいて、吸収線量に変換して吸収線量を求めさせ、
シンチレータの吸収線量を算出する放射線線量計算プログラムを記録した媒体。
【請求項10】
請求項9に記載の媒体において、
前記指数関数的に減少するという関係は、下記式に基づいている放射線線量計算プログラムを記録した媒体。
Sc=(Ctotal/b)-(aΔt/b2){exp(-bE0)-1}
ここで、a,bは定数、Ctotalはイベントのカウント数、Δtは測定時間、E0は前記しきい値である。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータを用いた電離放射線吸収線量の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
電離放射線を測定する方法として、放射線治療の分野では一般的に電離箱が用いられている。電離箱は、微小体積に含まれる空気が放射線によって電離された際の電荷を数百ボルトの高電圧によって収集する測定装置であり、収集した電荷量によって吸収線量を評価している。
【0003】
一方、吸収線量を測定する手段として、固体検出器を用いた方法も行われており、例えば、特許文献1には、シンチレータと光ファイバを組み合わせた検出器が示されている。この検出器では、シンチレータが放射線の電離作用によって発光し、かつ、発光量が電離量(吸収線量)と比例関係にあることを利用して、発光量を測定することにより吸収線量を評価している。なお、発光量の測定には光電子増倍管を用い、発光量を電流量に変換している。
【0004】
また、シンチレータを用いた熱中性子束のカウントについては、特許文献2に示されている。
【0005】
上述の特許文献1では、発光量を電流量に変換した際の電流量が極微小である場合には、(i)発光量を増やす、(ii)電流変換後の増幅率を大きくする、(iii)高精度の電流計を用いる、などの対策が必要であった。
【0006】
(i)の発光量を増やすという対策は、シンチレータを大きくすることによって実現するが、シンチレータを大きくすると極微小領域の測定は不利となる。また、(ii)、(iii)では、それぞれ高額な電気機器が必要となる。
【0007】
ここで、特許文献1は特表2004-526155号公報、特許文献2は国際公開WO2005/008287号公報である。
【発明の開示】
【0008】
本発明に係る放射線線量計は、入射してくる電離放射線によって発光するシンチレータと、このシンチレータからの出力である光を電流に変換する光電気変換器と、この光電気変換器からの出力について、その強度が所定のしきい値以上のイベント数をカウントするカウンタと、このカウンタによるカウント値を、各イベントの発生頻度が、イベントの光強度が大きくなるに従って、指数関数的に減少するという関係に基づいて、吸収線量に変換して吸収線量を求める吸収線量算出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述のような吸収線量をコンピュータにより検出するためのプログラムおよびそのプログラムを記録した媒体に関する。
【0010】
本発明では、電離放射線によってシンチレータ内部での光電効果による発光がほとんど生じないシンチレータからの発光が、所定のしきい値を超える発光強度に於いて生じるイベント数を計数することによって、吸収線量に変換している。従って、比較的小さなシンチレータを利用して、かつ比較的簡単な回路を利用して広範囲の電離放射線量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る放射線線量計の構成を示す図である。
【図2】BGOシンチレーション検出器によるγ線のエネルギースペクトルを示す図である。
【図3】水中におけるIr-192線源に対する極微小プラスチックシンチレータ(BC490)による波高分布スペクトルを示す図である。
【図4】水ファントム中Ir-192線源による吸収線量分布の測定結果を示す図である。
【図5】従来(A)と実施形態(B)の検出方法の比較を示す図である。
【図6】他の実施形態の構成を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る放射線線量計の一構成例を示す図である。この放射線線量計では、X線・γ線を用いた放射線治療における吸収線量を測定する。
【0014】
シンチレータ10は、例えばプラスチックシンチレータで構成され、X線、ガンマ線などの電離放射線を光に変換する。この実施形態においては、多量の光量を必要としないため、シンチレータ10は小型に形成することが可能であり、例えば1mmφ×0.1mm程度にできる。従来例では、1mmφ×10mmのシンチレータを用いており、これに比べると大きさが100分の1程度であり、測定における位置分解能は100倍に向上する。また、シンチレータ10を複数設ければ、複数位置における電離放射線量を検出することができる。
【0015】
ここで、本実施形態においては、シンチレータ10として、有機シンチレータ、特にプラスチックシンチレータを採用しており、電離放射線によって物質内部での光電効果による発光をほとんど生じることなく電離放射線を光に変換する。
【0016】
なお、プラスチックシンチレータでなくても、軽元素を主成分とするシンチレータであれば、プラスチックシンチレータと同様に電離放射線によって物質内部での光電効果による発光はほとんど生じない。特に、軽元素を主成分とするシンチレータでは、発光減衰時間が10ナノ秒以下のものが知られており、これを利用することによって、イベントの分離を確実に行い、正確なイベントのカウントを行うことができる。
【0017】
さらに、一般式(C2n+1NHPbX(Xはハロゲン、n=3~10)で表される、有機無機層状ペロブスカイト型化合物で形成されたシンチレータを利用することも可能である。この物質は、アルキルアミンからなる有機層をバリア層とし、ハロゲン化鉛からなる無機層を井戸層とする多重量子井戸構造を形成する。そして、この物質の井戸層に閉じ込められた励起子が放射線の照射によって発光する。また、中性子用のシンチレータとして中性子超高速シンチレータ材LiO-B:Ce3+も知られている。これらのシンチレータにおいても、プラスチックシンチレータと同様に、電離放射線によって物質内部での光電効果による発光をほとんど生じることなく電離放射線を光に変換することができる。
【0018】
通常、無機シンチレータでγ線の測定を行うと、光電効果による大きな吸収エネルギーのピーク((I)の領域)、コンプトン散乱による吸収((II)の領域)が存在する(図2参照)。図2は、BGOシンチレーション検出器によるCs-137γ線(661.6keV)のエネルギースペクトルを示している。
【0019】
有機シンチレータでは、無機シンチレータのような光電吸収によるエネルギーのピークを持たず、コンプトン散乱によるスペクトルのみになる。
【0020】
また、シンチレータ10を10mmφ×10mm以下、好ましくは1mmφ×2mm以下、より好ましくは1mmφ×1mmという極微小にすることにより、シンチレータ10自身で発生したコンプトン散乱電子がシンチレータ10から散逸する確率を上げることができる。その際、(I)の領域は直線的な分布ではなく、形状および大きさに依存した分布となる。その形状が微小球形の場合、電子とシンチレータ10との相互作用断面積に依存した分布となるため、一般的に指数関数的な分布となり、指数関数的に変化する(III)の領域とあわせて、電離放射線のカウントによる吸収線量の計算が可能になる。
【0021】
特に、シンチレータのサイズを1mm以下に設定することによって、上述のように、物質内部での光電効果による発光をほとんど生じることなく、またシンチレータ自身で発生したコンプトン散乱電子がシンチレータ10から散逸する確率を上げることができ、(I)の領域を指数関数的な分布に変えることができる。
【0022】
シンチレータ10には、シンチレータ10において電離放射線から変換された光を伝達する光ファイバ12が接続されている。この光ファイバ12は、途中にコネクタを設け、光ファイバ12を適宜着脱可能に接続することも好適である。これによって、シンチレータ10を所望の箇所に設定することが容易となる。
【0023】
光ファイバ12は、光電子増倍管14に接続される。この光電気変換器である光電子増倍管14は、光ファイバ12から供給される光(光信号)をその強度に応じた電気信号に変換する。光電子増倍管14には、信号増幅器16が接続されており、光電子増倍管14からの電気信号を増幅する。
【0024】
信号増幅器16の出力は、ディスクリミネータ18に入力される。このディスクリミネータ18には、しきい値も入力されており、入力されてくる電気信号の中で、信号レベルがしきい値以上のものをイベントとして弁別する。ここで、ディスクリミネータ18は、最終的に正しい吸収線量を検出するための電気信号を電気的なノイズから弁別することを目的としており、特定の電離放射線を入射した場合における高性能の電離箱による検出との比較などから決定するとよい。ディスクリミネータ18は、コンパレータなどで構成することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、シンチレータ10への吸収エネルギースペクトルが純粋な指数関数として表されると仮定しており、この仮定が成立すれば、しきい値はどのような値であっても誤差を生じない。しかしながら、現実には完全な指数関数ではないと思われ、しきい値を設けることによって、若干の誤差が発生すると考えられる。しきい値が高ければ高いほど、推測する範囲が大きくなり、結果として誤差が大きくなる可能性がある。一方、しきい値を小さくすれば、必要以上に多く計数することになるため、パルスが多すぎて計測装置が飽和状態となる可能性がある。従って、しきい値は、これらを考慮して適切な値に設定することが好ましい。
【0026】
ディスクリミネータ18の出力は、カウンタ20に入力され、ディスクリミネータ18によって弁別されたイベントがカウントされる。
【0027】
そして、カウント20によるカウント結果が、コンピュータ22に入力され、ここでイベントのカウント値が吸収線量に変換され、吸収線量がディスプレイ24に表示される。なお、コンピュータ22は、プログラムを実行することによって、下記のような処理を行うものであり、そのプログラムは、直接コンピュータ22内のハードディスクなどの記憶媒体に記憶して実行される。プログラムはコンピュータ22に直接書き込んでもよいし、CDなどに記憶されたものをロードしたり、通信回線を通じてコンピュータ22に供給してもよい。
【0028】
ここで、コンピュータ22におけるイベントのカウント値から吸収線量の変換について説明する。
【0029】
シンチレータ10に付与されたエネルギーがE~E+dEの時のイベント数をCSc(E)とすると、シンチレータ10の吸収線量(エネルギー)は、エネルギーが0~∞までのイベントのレベルに対しそのイベント数を乗算したものであり、
【数1】
JP0004766407B2_000002t.gif
と表される。
【0030】
極微小なプラスチックシンチレータのIr-192γ線に対する発光イベントの波高スペクトル(波高チャンネル毎のカウント値)は、図3に示すように、ほぼ指数関数に近くなる。図においては、線源に対する距離を、3~7cmに1cm毎にずらして位置させた場合の結果を示してある。それぞれの結果において、発光イベントの信号レベル(Pulse height)が高いと、それにつれて発光イベントのカウント値が指数関数的に小さくなっている。なお、シンチレータ10としては、プラスチックシンチレータBC490(サンゴバンCDJ社)を使用した。
【0031】
従って、イベント数CSc(E)は、エネルギーレベルによって決定され、測定時間をΔtとすると、
【数2】
JP0004766407B2_000003t.gif
と近似できる。ここで、a,bは、図3の関係から定まる定数である。
【0032】
このため、(1)式は(2)式を用いて、
【数3】
JP0004766407B2_000004t.gif
と表現できる。
【0033】
一方、エネルギーE以上の電子によるエネルギーの付与、すなわちシンチレータ10の発光イベントの総数Ctotalは、(2)式のエネルギー毎のイベント数CSc(E)をエネルギーE以上のものについて積分したものであり、
【数4】
JP0004766407B2_000005t.gif
と表される。
【0034】
ここで、部分積分公式として、(5)式が知られている。
【数5】
JP0004766407B2_000006t.gif
この(5)式において、f(x)=x,g(x)=exp(-bx)とすると、(5)式は、
【数6】
JP0004766407B2_000007t.gif
と書き直すことができ、(6)式に(3)式および(4)式を適用すると、
【数7】
JP0004766407B2_000008t.gif
となる。
【0035】
したがって、シンチレータ10の吸収線量DScは、
【数8】
JP0004766407B2_000009t.gif
と表される。
【0036】
さらに、水吸収線量Dは、(1)式と(8)式から、
【数9】
JP0004766407B2_000010t.gif
となる。
【0037】
なお、(μen/ρ)[m・kg-1]は、質量エネルギー転移係数であり、添え字Scはシンチレータ10のものを示し、添え字Wは水のものを示す。すなわち、(9)式の右辺第1項によって、シンチレータ10による吸収線量を水吸収線量に換算している。
【0038】
ここで、
【数10】
JP0004766407B2_000011t.gif
と定義すると、
水吸収線量Dは、
【数11】
JP0004766407B2_000012t.gif
となる。従って、補正係数α,βを決定すれば、パルスカウント総数Ctotalおよび測定時間Δtから水吸収線量Dを求めることができる。
【0039】
次に、本実施形態の装置を用いて密封小線源治療用Ir-192線源を用いた水ファントム中での線源からの距離と吸収線量率(Dose rate[cGy/min])の関係(吸収線量率分布)の測定結果を図4に示す。
【0040】
なお、測定結果との比較には、輸送モンテカルロコードMCNP-4Cを用いた。この図から分かるように、2桁以上の線量変化に対して、精度良く一致した測定結果が得られている。また、このように測定レンジが広いことは、本実施形態の特徴の一つでもある。
【0041】
図5には、本実施形態の吸収線量測定と、従来の吸収線量の測定の比較を示してある。このように、従来技術では、吸収線量を積算して平均電流量として吸収線量を検出するが、本実施形態においては、しきい値以上のイベントの回数から吸収線量を求めている。このような手法によって、シンチレータ10およびその処理回路については、比較的に簡単でありながら、高精度の検出が可能になる。
【0042】
また、特許文献1でも述べられているように、本実施形態においても、チェレンコフ光による測定の影響が発生する。これについては、以下のような方法で、対策が可能である。
【0043】
まず、シンチレータ10として、緑色発光(約490nm)のプラスチックシンチレータを用いる。チェレンコフ光の波長スペクトルは、その強度によって赤色領域(600n
m)付近まで広がり、青色領域(約420nm)でも十分な強度を有している。この性質を利用し、例えば455nmを境に分離する分光ミラーによって光を分け、455nm以下の光と455nm以上の光が同時に計測されればチェレンコフ光と判定し、455nm以上の光のみが計測されればシグナルと判定する。そして、チェレンコフ光と判定された場合に、イベントから除外することで、容易にチェレンコフ光の影響を取り除くことができる。また、特許文献1のように、差分をとる方式ではないため、SN比(Signal to Noise Ratio)が高いという利点もある。なお、この例では、緑色発光のシンチレータを前提としたが、青色発光のシンチレータでも同様の原理でチェレンコフ光が除去できる。
【0044】
図6には、このための構成例を示してある。シンチレータ10からの光は、光ファイバ12を介し、分光ミラー30に供給され、455nm以下の光と、455nmの光に分離される。455nm以下の光は、光電子増倍管14-1、信号増幅器16-1,ディスクリミネータ18-1によって、イベントが検出され、検出したイベントについてのシグナルが比較演算器32に供給される。一方、455nm以上の光は、光電子増倍管14-2、信号増幅器16-2,ディスクリミネータ18-2によって、イベントが検出され、検出したイベントについての信号が比較演算器32に供給される。
【0045】
ここで、比較演算器32は、非同時計数回路(anti-coincidence)で構成される。すなわち、ディスクリミネータ18-1、18-2の両方から同じタイミングでシグナルが来た場合には、カウントシグナルを出さず、必要な信号だけが来た場合のみカウントシグナルを出力する。例えば、青色の発光シグナルBと緑色の発光シグナルGがあったとし、必要なのは発光シグナルGと仮定する。Gシグナルだけが比較演算器32に入り、Bシグナルが同時には入ってこなかった場合、比較演算器32はカウントシグナルを出力する。また、Bシグナルだけが比較演算器に入り、Gシグナルが同時には入ってこなかった場合や、BシグナルとGシグナルが同時に入力された場合には、比較演算器32はカウントシグナルを出力しない。言い換えれば、比較演算器32は、Bシグナルによって、ゲートが作られ、BシグナルがないときだけGシグナルを通過させる。このようにして、比較演算器32は、ディスクリミネータ18-1、18-2の両方から、供給されるシグナルに基づいて、チェレンコフ光のシグナルを削除してカウントシグナルを出力する。従って、比較演算器32からのカウントシグナルをカウントするカウンタ20においては、チェレンコフ光の影響を排除してカウントを行うことができる。
【0046】
なお、分光ミラー30において、分離された455nm以下の光と、455nm以上の光のレベルは必ずしも同一ではないため、ディスクリミネータ18-1、18-2におけるしきい値を異なるものとして、適切な判定を行えるようにすることが好適である。
【0047】
このように、本実施形態においては、シンチレータ10における発光量を光電子増倍管14にて電流値(電圧値)に変換した後、ディスクリミネータ18を用いてしきい発光量以上のイベントのみを弁別し、カウンタ20で計数する。一般的に、光電子増倍管14、ディスクリミネータ18、カウンタ20は安価であり、特許文献1のように高価な微少電流測定装置などが不要である。
【0048】
さらに、本実施形態においては、シンチレータ10の大きさは問題とはならず、小さい方が好ましい。すなわち、シンチレータ10を小さくすることで、測定値についての解像度を向上できる。例えば、特許文献1では、1mmφ×10mmのシンチレータを用いているが、本実施形態では、直径約1mmの半球状シンチレータという、従来のものに比べ約30分の1程度の極微小シンチレータを用いている。このため、測定による位置分解能も20倍以上となる。従って、生体中でのγ線などの検出、測定が可能であり、従来はあいまいな推定でしか行えなかった放射線治療中の線量を正確に測定することができる。
【0049】
さらに、上述のようにシンチレータ自身で発生したコンプトン散乱電子がシンチレータから散逸する確率を上げることにより、指数関数的な分布に変えることができ、正確な放射線量の検出が行える。
【0050】
また、上述のように、機器構成を簡素化できるため、多数のシンチレータ10を設け、多数位置の放射線吸収量を検出する多チャンネルの構成をとることも容易となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5