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明細書 :液状食品の短波電界殺菌方法および殺菌装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4997606号 (P4997606)
公開番号 特開2010-057423 (P2010-057423A)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月8日(2012.8.8)
公開日 平成22年3月18日(2010.3.18)
発明の名称または考案の名称 液状食品の短波電界殺菌方法および殺菌装置
国際特許分類 A23L   3/01        (2006.01)
FI A23L 3/01
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2008-226766 (P2008-226766)
出願日 平成20年9月4日(2008.9.4)
審査請求日 平成23年8月15日(2011.8.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】植村 邦彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 特開2006-238827(JP,A)
特開2006-067943(JP,A)
調査した分野 A23L 3/00-3/3598
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
周波数10MHz~50MHzの電界を、電極表面に密着させるかまたは直接形成した非粘着性かつ電気絶縁性が高い膜厚50μm以下の絶縁薄膜を介して液状食品に印加することを特徴とする液状食品の短波電界殺菌方法。
【請求項2】
前記液状食品がタンパク質を含むことを特徴とする請求項1に記載の液状食品の短波電界殺菌方法。
【請求項3】
前記電界の印加により液状食品中の耐熱性微生物を失活させることを特徴とする請求項1または2に記載の液状食品の短波電界殺菌方法。
【請求項4】
液状食品を通過させるための流路と、この流路を挟んで設けた少なくとも一対の電極と、電極に電界を印加するための短波電源を備え、前記流路と電極とは、電極に密着した非粘着性かつ電気絶縁性が高い膜厚50μm以下の薄膜によって分離されていることを特徴とする短波電界殺菌装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳等の液状食品中に存在する耐熱性芽胞を効果的に殺菌する方法に関し、詳細には、生乳や豆乳等のタンパク質を多く含む液状食品であっても変質させずに殺菌することができる短波電界殺菌方法および殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の安全性向上のための技術開発は、国内外において重要な研究課題となっている。特に、牛乳や大豆加工食品などの日配品は、滅菌を目的とした加熱を十分に行った場合、栄養成分や風味が損なわれることから加熱を加減する必要があり、そのことが消費期限を短くする原因となっている。
【0003】
上記理由から、風味を損なわずに耐熱性微生物を殺菌することのできる新しい方法が求められており、もし、この問題が解決すれば、日配品の常温流通や長期保存が可能となるため、エネルギー・コストおよび食料資源の削減も可能となる。
【0004】
本発明者らは、特許文献1~3に示すように交流高電界による耐熱性芽胞を殺菌する技術を既に開発している。そしてこれらの技術については液状食品、特に果汁への応用・実用化が進捗している。各特許文献で示した交流高電界を応用した技術は、液状食品を流動させ、そこへ20kHz前後の周波数の交流高電界を、液状食品に密着したチタン製電極を使用して印加するものである。
【0005】
このように液状食品中に電流を流すことによる通電加熱の熱的効果、および印加した高電界の電気的効果により、食品中の微生物を効率的に殺菌することができる。対象とする微生物が大腸菌のような栄養細胞の場合、高電界パルス殺菌と同様の電界効果が殺菌に大きく寄与する。
【0006】
また、対象とする微生物が芽胞の場合、電気的な効果よりも熱的な効果が大きくなり、交流高電界を印加された芽胞は、短時間その温度を保持するだけで不活化され、そのときの不活化速度は加熱処理の10倍から100倍に達することが分かっている。
【0007】

【特許文献1】特開2006-238827号
【特許文献2】特開2007-029012号
【特許文献3】特開2007-029014号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液状食品のうち、果汁や各種の茶飲料の殺菌については、上記のとおり交流高電界技術の応用が可能であった。しかし、生乳や豆乳など、タンパク質を多く含む液状食品については、摩擦により液の流れが遅くなる流路壁面に電極が密着しているため、この電極表面においてタンパク質が付着、凝固、焦げ付き等を生じる。したがって交流高電界処理を行うことが困難であった。
【0009】
参考のため、図6に、流路中の牛乳に電極を介して交流高電界を印加した後の様子を示す写真を示す。この図から電極表面の一部(端部)に焦げたタンパク質が付着している。これは電極表面における液の流れが遅いためタンパク質が付着したためであり、この状態が続くと電極全面に焦げ付くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、生乳や豆乳などタンパク質を多く含む液状食品であっても、そこに含まれる耐熱性芽胞を効果的に殺菌することができる液状食品の短波電界殺菌方法および短波電界殺菌装置を提供することを目的とする。
【0011】
このため、本発明に係る短波電界殺菌方法は、周波数10MHz~50MHzの電界を、電極表面に設けた絶縁薄膜を介して液状食品に印加することを特徴とする。
【0012】
前記絶縁被膜は、非粘着性かつ電気絶縁性が高い膜厚50μm以下の薄膜を、電極表面に密着させるかまたは直接形成させたものが好ましい。殺菌処理可能な液状食品としては、高熱により変質する恐れのあるタンパク質を含むものが挙げられる。殺菌は、前記電界の印加により液状食品中の耐熱性の微生物を失活させることにより実施される。
【0013】
また、本発明の短波電界殺菌装置は、液状食品を通過させるための流路と、この流路を挟んで設けた少なくとも一対の電極と、電極に電界を印加するための短波電源を備え、前記流路と電極とは、非粘着性かつ電気絶縁性が高い膜厚50μm以下の薄膜によって分離されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の短波電界殺菌方法および短波電界殺菌装置によれば、液状食品と電極とが直接接触しないため、電極表面のたんぱく質等のスケーリングおよびその焦げを回避し、タンパク質を多く含む牛乳や豆乳などの液状食品の連続処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適実施例を図および実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る短波電界殺菌装置を組み込んだ装置全体の概略図であり、図中10は液状食品を貯留するタンク、11はポンプ、12は流量計、13は温度計、14はクーラー、15は圧力計、5は短波電源であり、温度計13、13間に本発明に係る短波電界殺菌装置1が配置されている。
【0016】
また、図2は短波電界殺菌装置を上下に分割して示した斜視図、図3は同短波電界殺菌装置の縦断面図であり、短波電界殺菌装置1は、2つのテフロン(登録商標)製のブロック2を合わせて構成され、ブロック2間に液体食品の流通路3が形成されている。また、流通路3内には、前記流路3を挟んで一対の電極4,4が設けられていて、電極4に電界を印加するための前記短波電源5が結線されている。本実施例の場合、電極4の寸法は6×24mm、電極間距離は4mmとした。
【0017】
そして、流路3と電極4とは、非粘着性かつ電気絶縁性が高く膜厚が50μm以下の薄膜6によって分離されている。この実施例では薄膜6は電極4に密着している。流路3内の温度は前記光ファイバー温度計13にて測定される。
【0018】
短波電源5は、周波数10~50MHz、さらに好ましくは20~40MHzの電界を、絶縁薄膜6を介して液状食品に印加することができる能力を備えている。
【0019】
絶縁被膜6を形成する材料としては、非粘着性かつ電気絶縁性が高いものであれば制限はない。その例としてテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂およびポリ塩化ビニリデン(PVDC)を挙げることができる。また膜厚は50μm以下であるが、好ましくは20~40μmである。また、薄膜6は電極4の表面に密着させるが、電極4面に薄膜形成液をコーティングすることにより直接形成させることもできる。
【0020】
液状食品に絶縁薄膜6を介して短波帯の周波数の高周波を印加すると、通電開始後、数十~数百ミリ秒単位の短時間内に、液状食品中を流れる電流による通電加熱が行われ食品温度は120℃程度にまで急速加熱される。したがって、その後、たとえば1秒前後の短時間、温度を保持し直ちに冷却することで、従来の交流高電界技術と同様に液状食品中の耐熱性芽胞を効果的に殺菌することができる。
【0021】
流路3内に流すことのできる液状食品に制限はなく、果汁類、お茶類、水類、液状調味料(醤油、食用油、酢等)等を挙げることができるが、特に、タンパク質含有食品である牛乳、豆乳等に適用することで交流高電界と異なり食品が電極に直接接触しない効果を最大限に享受することができる。
【0022】
(実施例)
以下に具体的な実施例を説明する。
電極に密着させる絶縁薄膜として、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を使用した。PVDC製の薄膜は電気的に高い絶縁性を有するため、従来技術のように低い周波数(例えば20kHz)の交流を印加した場合、薄膜のインピーダンスが高くなり、交流の電気エネルギーを食品に通電することができなかった。
【0023】
しかし、図4に示すように、本発明に係る周波数の高い短波帯の電界を用い、膜厚27μmのPVDC膜を介した牛乳のインピーダンスを測定したところ、周波数が高くなるほどインピーダンスが低下し、10MHzで短波電源が出力可能なインピーダンス範囲(160Ω以下)内に収まることが分かった。また50MHzを超えるとインピーダンスは低いが短波電源によって出力できなくなる。したがって、10MHz~50MHzが適当であり、このインピーダンス範囲であれば、交流の電気エネルギーを液状食品に通電することができる。
【0024】
そこで電極表面にPVDC膜を張り、電極に周波数28MHz、最大出力1kWの短波を印加し、流路内に毎時12Lの流量で枯草菌芽胞(B.subtilis)を添加した牛乳を流した。この条件によれば、供給温度70℃の牛乳を電極出口では115℃の温度まで上昇させ、連続10分間以上安定運転することが可能であった。同様の方法で、豆乳についても実験を行ったが、この場合も運転が可能であった。
【0025】
本実施例の処理によって、牛乳あるいは豆乳に添加した枯草菌芽胞が2対数オーダー以上低下することが分かった。枯草菌芽胞の残存率を図5に示す。図5においてゼロは未処理を意味し、-2以下となっていることは2対数以上の効果があることを示す。この結果は、これまでにオレンジジュース中の芽胞を交流高電界処理したものと同程度であり、枯草菌芽胞の殺菌について、周波数が上昇したことによる殺菌効果の低下はなかったものと判断された。またPVDC被膜に残留している牛乳は凝固したり焦げたりすることがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の殺菌方法および殺菌装置によれば、ロングライフ牛乳程度に安全性が高く、低温殺菌牛乳程度の高品質な牛乳が製造可能となる。また、本技術で殺菌処理した生乳を加工用の原料とすることで、乳加工品の安全性を高め、消費期限を延長することが可能となる。また、本技術で豆乳の無菌化を行えば、無菌豆腐などの製品化が期待される。このように本技術の応用範囲は広く、食品産業上、重要な技術となる可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る短波電界殺菌装置を組み込んだ装置全体の概略図
【図2】同短波電界殺菌装置を上下に分割して示した斜視図
【図3】同短波電界殺菌装置の縦断面図
【図4】牛乳のインピーダンス特性を示すグラフ
【図5】本実施例による枯草菌芽胞の残存率を示すグラフ
【図6】従来装置で牛乳に交流高電界を印加した後の電極の様子を示す写真
【符号の説明】
【0028】
1…短波電界殺菌装置、2…ブロック、3…液体食品流通路、4…電極、5…短波電源、6…絶縁性薄膜、10…タンク、11…ポンプ、12…流量計、13…温度計、14…クーラー、15…圧力計。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5