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明細書 :FSK信号に対する周波数選択性MIMO通信路に於ける、周波数領域等化と非同期検波方式を組み合わせた伝送方式

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5360744号 (P5360744)
公開番号 特開2010-081159 (P2010-081159A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成22年4月8日(2010.4.8)
発明の名称または考案の名称 FSK信号に対する周波数選択性MIMO通信路に於ける、周波数領域等化と非同期検波方式を組み合わせた伝送方式
国際特許分類 H04J  99/00        (2009.01)
H04B   7/04        (2006.01)
H04B   7/005       (2006.01)
FI H04J 15/00
H04B 7/04
H04B 7/005
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2008-245431 (P2008-245431)
出願日 平成20年9月25日(2008.9.25)
審査請求日 平成23年9月5日(2011.9.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】岩波 保則
【氏名】岡本 英二
【氏名】肱元 学
審査官 【審査官】大野 友輝
参考文献・文献 肱元学、岩波保則、岡本英二,RS符号化M-FSKエネルギー検波方式のマルチパス通信路におけるビット誤り率の検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2007年10月11日,RCS2007-87
高橋優輔、岩波保則、岡本英二,周波数選択性MIMO通信路に於けるブロック処理型時間領域等化器の検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2008年 2月22日,WBS2007-102
林和則,変復調と等化方式の基礎,MICROWAVE WORKSHOPS & EXHIBISION 2004,2004年11月10日,URL,http://www.msys.sys.i.kyoto-u.ac.jp/~kazunori/paper/mwe2004_handout.pdf
Il Jin Youn,Noncoherent M-ary Orthogonal FSK Alamouti Space-Time Coding with Antenna Selection,Advanced Communication Technology, 2008. ICACT 2008. 10th International Conference on,2008年 2月17日,Volume:1
調査した分野 H04J 99/00
H04B 7/005
H04B 7/04
IEEE Xplore
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
非同期なエネルギー検波方式を採用した周波数シフト変調(Frequency Shift Keying、以下「FSK」という。)方式を用いた伝送のうち、周波数選択性通信路環境下に於いて、受信側で検波器への入力の前にアナログ信号をサンプリングし、その離散時刻信号に対して周波数領域等化(Frequency Domain Equalization 、以下「FDE」という。)を行うことで送受信機ともに複数のアンテナを用いた単一送信機、単一受信機によるマルチ入力、マルチ出力(Multiple-Input Multiple-Output,MIMO、以下「MIMO」という。)の伝送において、アンテナ間の信号分離と周波数選択性通信路の補償が可能な伝送方式。
【請求項2】
請求項1のうち、エネルギー検波器の前にアナログ信号をサンプリングし、その離散時刻信号に対してFDEを行うことで、非同期検波方式と線形の等化技術を両立し、非同期検波方式を採用したFSK信号のMIMO通信路での利用を実現した伝送方式。
【請求項3】
請求項1のうち、送信する2値データに対しリード・ソロモン符号(Reed-Solomon code、以下「RS符号」という。)化を施す際、RS符号における1バイトに含まれるビット数が、多値変調における1シンボルに含まれるビット数の整数倍となるようにRS符号を選び、2値データをRS符号化した後、多値変調信号に変調して送信し、受信側ではシンボル判定によって得た2値データに対してRS復号化を施す伝送方式。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル無線通信方式におけるデータ伝送方式に関するものである。特に、非同期検波方式を採用したFSK信号に対し、周波数選択性通信路に於けるルチ入力、マルチ出力(Multiple-Input Multiple-Output, MIMO、以下「MIMO」という。)システムを簡易な送受信機構成で実現し、優れたビット誤り率特性を実現させる方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術としてViterbiアルゴリズムを利用した最尤系列推定(Maximum Likelihood Sequence Estimation、以下「MLSE」という。)方式が上げられる。FSK信号に対するMLSEは受信系列を送信された可能性のある全ての系列と比較する。例として、長さLビットの2値系列の復号を行うためには、送信された可能性のある2個の異なる符号系列のパスメトリック(受信系列Yにおいて、レプリカ信号との信号点間の距離の二乗和)を比較し、このパスメトリックを最小にする最も確からしい符号系列Xを選択する。
【0003】

JP0005360744B2_000002t.gif
【0004】
第3の従来技術として周波数領域等化(Frequency Domain Equalization、以下「FDE」という。)がある。受信機側で受信データを高速フーリエ変換(FFT)により周波数領域に変換し、MMSE基準の重み行列を乗算するNullingと呼ばれる方法を用いて、周波数等化と信号分離を同時に行う。この処理の後、逆高速フーリエ変換(IFFT)により時間領域に戻し、データを復調する。
第4の従来技術としてリード・ソロモン符号(Reed-Solomon code、以下「RS符号」という。)がある。2値データに対してRS符号化を施し、情報ビットに加えて冗長性を持った冗長ビットを2値データに付加する。受信側では、得られた2値データに対してRS復号化を施し、判定を誤ったビットがあればそれを正す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FSK信号の非同期エネルギー検波方式は非線形変調方式であるため、検波器出力に対する周波数選択性通信路の等化は、MLSEを用いた例などが検討されていた。しかしViterbiアルゴリズムは考慮するマルチパス遅延波数が増加すると、等化の際に必要となる状態数が指数関数的に増加するため、演算量、メモリ量の増加という観点からシステムの複雑化が問題となり、用いるのが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、非同期なエネルギー検波方式を採用した周波数シフト変調(FSK)方式を用いた伝送のうち、周波数選択性通信路環境下に於いて、受信側で検波器への入力の前にアナログ信号をサンプリングし、その離散時刻信号に対して周波数領域等化(Frequency Domain Equalization)を行うことで送受信機ともに複数のアンテナを用いた単一送信機、単一受信機によるマルチ入力、マルチ出力(MIMO)の伝送において、アンテナ間の信号分離と周波数選択性通信路の補償が可能な伝送方式にある(請求項1)。
【0007】
本発明に於ける第1の発明は、受信したFSK信号に対して1シンボル時間Tの内にc回という速さでサンプリングを行い、そうして得た離散時刻信号に対してFDEを行うことで、周波数領域で周波数選択性の等化を行うことを特徴としている。
第2の発明は、請求項1のうち、エネルギー検波器の前にアナログ信号をサンプリングし、その離散時刻信号に対してFDEを行うことで、非同期検波方式と線形の等化技術を両立し、非同期検波方式を採用したFSK信号のMIMO通信路での利用を実現した伝送方式にある(請求項2)。
【0008】
本発明に於ける第2の発明は、MIMO通信路において、FDEによって等化と同時に各アンテナから送信されたデータストリーム間の信号分離を行い、簡易なシステム構成でFSK信号のMIMOシステム化を実現していることを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、請求項1のうち、送信する2値データに対しリード・ソロモン符号(RS符号)化を施す際、RS符号における1バイトに含まれるビット数が、多値変調における1シンボルに含まれるビット数の整数倍となるようにRS符号を選び、2値データをRS符号化した後、多値変調信号に変調して送信し、受信側ではシンボル判定によって得た2値データに対してRS復号化を施す伝送方式にある(請求項3)。
【0010】
本発明に於ける第3の発明は、FDEの後段にエネルギー検波器を設置することで、受信側で位相の同期を図る必要がないことを特徴としている。
【0011】
このように本発明は、エネルギー検波方式を採用したFSK信号による伝送方式に於いて、受信信号をサンプリングして離散時刻信号を得、その出力に対してFDEを行った後、エネルギー検波器で検波することによって、受信側で受信信号の位相の同期が不要な非同期検波方式を採用したFSK信号に対する線形な等化技術の利用を可能にし、さらにFSK信号のMIMO通信路化を簡易なシステム構成で実現することが可能となる。
【0012】
まず本発明の概略を、図1を用いて説明する。図1はSISOシステムの場合である。送信機側では、変調されたデータをnシンボルからなるブロックに分割し、ブロックごとに図2のようにガードインターバル(Guard Interval、以下「GI」という。)としてサイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix、以下「CP」という。)を付加し、送信アンテナから送信する。受信機側でアナログ受信信号をサンプリング周波数f=1/Δtでサンプリングして離散時刻信号を得る。ここで、1シンボルにつきc個のサンプル値を取るとするとT=cΔtとなる。そうして得た離散時刻信号に対してFDEによって周波数選択性通信路の符号間干渉(Inter Symbol Interference、以下「ISI」という。)の補償を行う。その後、図3に示すエネルギー検波器を用いて検波を行う。エネルギー検波器に入力される信号は、FDEによる等化を行う際にサンプリングされ離散時刻信号となっているが、サンプリングの分割数cを十分に大きく取っているので連続信号と見なせる。この連続信号をM個のエネルギー検波器で検波を行い、そのM個の出力を用いて硬判定によってシンボル判定を行い、受信データビットを得る。MIMOシステムの場合では図4のようなシステムになり、FDEではISIの補償と同時に各アンテナから送信されたデータストリーム間の信号分離も行う。
受信機側でGI除去後、得られる信号y(k)は次式で表される。
【0013】
【数1】
JP0005360744B2_000003t.gif

【0014】
数1に於いて、y(k)は時刻第kシンボル目の受信信号ベクトル、x(k)は送信信号ベクトル、w(k)は雑音ベクトルであり、マルチパス遅延波数をLとした。通信路行列Hlは送信アンテナ数nT、受信アンテナ数nRのとき、数2のようなnR×nTの行列で表され、FFT処理のブロック単位に対し、時不変な複素ガウス変数の要素を取る。ここでnT=1、nR=1、の場合がSISOシステムである。
【0015】
【数2】
JP0005360744B2_000004t.gif

【0016】
次に、マルチパス通信路を通過した受信信号y(k)を、FFTにより周波数領域に変換後、数3のMMSE重み行列WMMSE(k)を用いて、周波数領域等化と信号分離を同時に行う(周波数領域におけるNulling)。
【0017】
【数3】
JP0005360744B2_000005t.gif

【0018】
数3に於いてG(j)は、周波数軸上の第jポイント目におけるMIMO通信路行列、σは雑音の分散、IはnT次の単位行列である。この後、IFFTにより時間領域に戻す。
【0019】
FDEから出力された離散時刻信号をエネルギー検波器に入力する。エネルギー検波器では検波器1で周波数f、検波器Mで周波数fMのエネルギーを検出する。ここで各周波数におけるエネルギー検波器の出力をe1,…,l,…,Mとする。但しeは、周波数がfである受信信号のエネルギーを意味する。エネルギー検波器に入力される信号は、FDEによる等化を行う際にサンプリングされ離散時刻信号となっているが、サンプリングの分割数cを十分に大きく取っているので連続信号と見なせる。これらの連続信号をM個のエネルギー検波器によって検波し、その出力を用いて硬判定によってシンボル判定を行い、受信データビットを得る。
【0020】
本発明に対し、さらにRS符号を施した場合のシステムを図5に示す。送信側では送信する2値データに対してRS符号化を施し、情報ビットに冗長ビットを加えた後、M-FSK変調を行う。受信側では得られた2値データに対してRS復号化を施し、シンボル判定で誤りが発生している場合、それを訂正する。M-FSKのみならず、多値変調ではシンボル判定で誤りが発生したとき、2値データ系列で見ると、最大logM個の誤りが固まって発生する。これはバースト誤りとみなすことができる。RS符号はバイト単位での誤り訂正を行うため、RS符号における1バイトに含まれるビット数が、多値変調における1シンボルに含まれるビット数の整数倍となるようにRS符号を選ぶことにより、効率的な誤り訂正ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
各送信・受信アンテナ間の通信路は、互いに独立な1dB減衰の2パス周波数選択性準静的レイリーフェージング通信路(Quasi-static Rayleigh fading channel)とする。この通信路の遅延プロフィールを図6に示す。
M-FSK 信号はM=2,4,16の場合について実施した。分割数cはM=2のときc=8、M=4のときc=16、
M=16のときc=32としている。また、M-FSK信号の変調指数は0.7としている。
【0023】
FDEの1ブロックには16シンボル分が含まれる(つまり、n=16)。よってFDEの1ブロックはM-FSKのM=2においてはc×n= 128ポイント、M=4においては256ポイント、M=16においては512ポイント、Guard Interval長はc×n/4ポイントとしている。また通信路のチャネル推定は受信側で完全であるということを前提としている。
【0024】
アンテナ本数が1×1のSISOシステムについて、図7にM-FSKのM=2の場合、図8にM=4の場合、図9にM=16の場合の、計算機シミュレーションによる誤り率(Bit Error Rate,BER)特性を示す。どの場合もSISOシステム、および2×2、4×4のMIMOシステムについて実施している。比較対象として、等化器を用いないとき、MLSEを用いたとき、FDEの重み行列が数4のZF重み行列WZF(k)を用いたときの場合のBER特性を示す。図7~9より、SISO伝送におけるMLSEと発明方式であるFDE MMSEとでは、M=2、4、16でそれぞれ10.0dB、11.0dB、10.5dBの劣化がある。しかしMMSE重みを用いたとき、ZF重みを用いたとき共に、FDE等化器がFSKエネルギー検波方式に適用でき、ISIを除去できていることがわかる。
【0025】
【数4】
JP0005360744B2_000006t.gif

【0026】
また、アンテナ本数が1×1のSISOシステム及び2×2、4×4のMIMOシステムについて、図10にM-FSKのM=2の場合、図11にM=4の場合、図12にM=16の場合の、計算機シミュレーションによるBER特性を示す。比較対象として、FDEにおいてZF重みを用いたときのBER特性を示す。MMSE重みを用いたとき、ZF重みを用いたとき共に、発明した送受信機システム構成によりM-FSKを用いたMIMO通信が実現できることがわかる。さらにSISO通信路と比べMIMO通信路は、送信アンテナ毎に複数のストリームを同時に送信(空間多重)しているため、2×2アンテナでは2倍の、4×4アンテナでは4倍の伝送速度を得ている。
【0027】
続いて、RS符号化を行った図5に示すシステムについて、図13にBER特性を示す。今回はM=16の16値-FSKに対し、RS(15,11)符号化を施し、変調指数h=0.7、MIMO 2×2アンテナの場合について実施した。RS(15,11)符号化を行った場合と無符号化の場合を比較すると、RS符号化を施すことでZF基準では約0.7dB、MMSE基準では約1.8dBの符号化利得を得ていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ディジタル無線通信方式におけるデータ伝送方式に関するものである。特に、エネルギー検波方式を採用した非線形変調方式であるFSK信号に対して、線形の等化技術を用いることが可能となり、また、MIMOシステム化が簡易な構成で可能となっており、伝送速度の向上と優れたビット誤り率特性を実現させるディジタル無線通信方式として利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】送受信機のSISOシステムのシステムモデルを示す図である。
【図2】ガードインターバルの付加を示す図である。
【図3】エネルギー検波器のシステムモデルを示す図である。
【図4】送受信機のMIMOシステムのシステムモデルを示す図である。
【図5】MIMOシステムに於いて、RS符号化を施した送受信機のシステムモデルを示す図である。
【図6】マルチパス通信路モデルの概略を示すモデル図である。
【図7】SISOシステムに於いて、変調に2-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図8】SISOシステムに於いて、変調に4-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図9】SISOシステムに於いて、変調に16-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図10】2×2、4×4のMIMOシステムに於いて、変調に2-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図11】2×2、4×4のMIMOシステムに於いて、変調に4-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図12】2×2、4×4のMIMOシステムに於いて、変調に16-FSKを用いた場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
【図13】2×2のMIMOシステムに於いて、変調に16-FSKを用い、RS(15,11)符号化を施した場合の計算機シミュレーションによるBER特性の比較結果を示した図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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