TOP > 国内特許検索 > 異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法および異種熱可塑性樹脂成型体 > 明細書

明細書 :異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法および異種熱可塑性樹脂成型体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5253065号 (P5253065)
公開番号 特開2010-076141 (P2010-076141A)
登録日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発行日 平成25年7月31日(2013.7.31)
公開日 平成22年4月8日(2010.4.8)
発明の名称または考案の名称 異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法および異種熱可塑性樹脂成型体
国際特許分類 B29C  65/14        (2006.01)
B32B  27/00        (2006.01)
FI B29C 65/14
B32B 27/00 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2008-244466 (P2008-244466)
出願日 平成20年9月24日(2008.9.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年3月26日~28日 社団法人日本金属学会主催の「2008年春期(第142回)大会」において文書をもって発表、平成20年8月3日~7日 社団法人日本機械学会主催の「2008年度年次大会 講演論文集Vol.6」において文書をもって発表
審査請求日 平成23年9月7日(2011.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
発明者または考案者 【氏名】西 義武
【氏名】岩田 圭祐
【氏名】佐藤 浩則
【氏名】武井 廣明
【氏名】利根川 昭
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
【識別番号】100103218、【弁理士】、【氏名又は名称】牧村 浩次
【識別番号】100115392、【弁理士】、【氏名又は名称】八本 佳子
審査官 【審査官】鏡 宣宏
参考文献・文献 特開2004-268383(JP,A)
特開2004-273238(JP,A)
特表2003-509251(JP,A)
特開2002-316362(JP,A)
調査した分野 B29C 63/00-65/82
B29C 69/00-69/02
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00-43/00
特許請求の範囲 【請求項1】
隣接した、熱可塑性樹脂(A)からなる層(A)および熱可塑性樹脂(B)(ただし、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)とは異種の熱可塑性樹脂である)からなる層(B)を有する積層体に、
層(A)から層(B)に向かって、または層(B)から層(A)に向かって、加速電圧が50~300keVの範囲で電子線照射を行うことを特徴とする異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法。
【請求項2】
前記積層体に電子線照射を行う前、後または電子線照射中に、前記積層体を一体化することを特徴とする請求項1に記載の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法。
【請求項3】
前記電子線照射における電子線照射線量が、0.05~0.5MGyの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする異種熱可塑性樹脂成型体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法、および異種熱可塑性樹脂成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、軽量で機械的強度が高いことから、一般産業用途、土木・建築用途、輸送用機器分野など、幅広い分野で多量に使用されている。また、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂を用いた場合と比べて、成形性が非常に良好であり成形材料として有用である。さらに熱可塑性樹脂は生体適合性も良好であるため、人工血管、人工臓器、人工靱帯等の医療分野での応用が有望視され、その際には性質の異なった異種の樹脂を組み合わせて使用することが考えられている。
【0003】
しかしながら、従来の異種熱可塑性樹脂を接合する技術では、一般に熱可塑性樹脂どうしのぬれ性が乏しく、また結晶性熱可塑性樹脂は非晶性樹脂と比べて融点が高いため、融着等による接合は難しい等の欠点がある。そのため、熱可塑性樹脂間の接着性不良が起こり、充分な物性向上が図れなかった。
【0004】
熱可塑性樹脂間のぬれ性を改良した熱可塑性樹脂間の接合としては、例えばレーザー加熱処理による熱可塑性樹脂の接合技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、接着剤を含有する熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂間の接合が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、紫外線照射を用いた、熱可塑性樹脂間の接合が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
上記特許文献1~3に開示された技術は、熱処理(加熱温度、および加熱時間等)や、熱可塑性樹脂や接着剤の組成を規定することにより、熱可塑性樹脂間の界面近傍の異種高分子材料を改質、または、第三高分子層の形成により接合するものであって、熱可塑性樹脂層間の接合強度が十分でなかったり、生体への影響が不明な物質の混入が懸念されたり、あるいは殺菌処理が難しい場合があった。

【特許文献1】特開2004-223719号公報
【特許文献2】特開平09—277459号公報
【特許文献3】特開平7-90228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、異種の熱可塑性樹脂からなる層の層間接合強度に優れた成形体の製造方法および該製造方法により得られた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、異種の熱可塑性樹脂からなる層を、隣接して配置した積層体に、特定の加速電圧の範囲で、電子線を照射することにより、層間の界面接合強度に優れた異種熱可塑性樹脂成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の異種熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、隣接した、熱可塑性樹脂(A)からなる層(A)および熱可塑性樹脂(B)(ただし、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)とは異種の熱可塑性樹脂である)からなる層(B)を有する積層体に、層
(A)から層(B)に向かって、または層(B)から層(A)に向かって、加速電圧が50~300keVの範囲で電子線照射を行うことを特徴とする。
【0009】
前記積層体に電子線照射を行う前、後または電子線照射中に、前記積層体を一体化することが好ましい。
前記電子線照射における電子線照射線量が、0.05~0.5MGyの範囲であることが好ましい。
【0010】
また本発明には、上記記載の製造方法により得られることを特徴とする異種熱可塑性樹脂成型体が含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法により得られる、異種熱可塑性樹脂成型体は、異種の熱可塑性樹脂からなる層の層間の界面が高い接着強度で接合されている。
また、本発明の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法により得られる、異種熱可塑性樹脂成型体は、同時に殺菌・滅菌効果も得られることから特に人工血管、人工靱帯等の医療機器分野の使用に適しており、さらには、一般産業用途、土木、建築、輸送用機器、電子機器分野等の各種産業分野における、軽量化や強靭化を必要とされる製品や、接合・複合部品等として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の異種熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、隣接した、熱可塑性樹脂(A)からなる層(A)および熱可塑性樹脂(B)(ただし、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)とは異種の熱可塑性樹脂である)からなる層(B)を有する積層体に、層(A)から層(B)に向かって、または層(B)から層(A)に向かって、加速電圧が50~300keVの範囲で電子線照射を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法では、熱可塑性樹脂(A)からなる層(A)および熱可塑性樹脂(B)からなる層(B)が隣接した状態で配置された積層体、すなわち異種の熱可塑性樹脂からなる層が互いに隣接した積層体に電子線を照射することにより、層間の接着強度を高めることができる。
【0014】
本発明の製造方法においては、前述のように層(A)および層(B)が隣接した積層体の層(A)から層(B)に向かって、または層(B)から層(A)に向かって、電子線を照射する。
【0015】
前記積層体の層(A)を構成する熱可塑性樹脂(A)および層(B)を構成する熱可塑性樹脂(B)としては、熱可塑性を有する樹脂であれば特に限定はなく、汎用樹脂、耐熱性樹脂、耐衝撃性樹脂、エンジニアリング樹脂等様々な熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の組み合わせとしては、特に限定はなく、異なる種類の熱可塑性樹脂であればよい。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル等のビニル系重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン61、ナイロン6T、ナイロン9T等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の縮合系重合体;ポリアセタール;ポリフェニレンオキサイド;ポリフェニレンサルフ
ァイド;ポリエーテルスルホン等が挙げられる。上記樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いてもよい。また、これらの樹脂には必要に応じて、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、充填剤などを添加してもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)としては、目的の用途に応じて、異種の熱可塑性樹脂を選択して組み合わせる。例えば、実施例に示したようにポリアミドの薄層とポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン、またはポリカーボネートの比較的厚いシート層とを組み合わせた積層体を用いて製造された異種熱可塑性樹脂成型体は、各層が有する物性に加えて、熱可塑性樹脂の層間に高い接合強度を持ち、全体として機械的強度、生体適合性、加工性に優れる。
【0018】
本発明に用いる積層体は、フィルムまたはシート状であると、電子線が均一に照射されるため好ましい。また、本発明に用いる積層体は、前述の互いに隣接した層(A)および層(B)を有していれば良く、他の層がさらに被覆されていてもよい。
【0019】
他の層の一例としては、例えばゴム状体を挙げることができる。
本発明に用いる積層体において、前記層(A)および層(B)の厚さとしては特に限定はなく、通常は層(A)および層(B)の厚さは0.01~500μmの範囲にある。本発明においては、層(A)および層(B)の厚さとしては、どちらが厚くてもよい。
【0020】
本発明の異種熱可塑性樹脂成型体の製造方法においては、通常、前記積層体に電子線照射を行う前、後または電子線照射中に、前記積層体を一体化する。すなわち、予め一体化させてから電子線を照射してもよく、一体化させながら電子線を照射してもよく、電子線を照射した後に一体化させてもよい。一体化することにより、本発明の製造方法により得られる異種熱可塑性樹脂成型体は、より高い層間接着強度を有する。ここで一体化処理とは、層(A)と層(B)とを固定する処理であれば特に限定はなく、熱可塑性樹脂のフィルムないしシートを積層して得られた前記積層体に圧縮等の加圧操作を加える処理や、層(A)または層(B)上に、熱可塑性樹脂(B)または熱可塑性樹脂(A)を押し出し、層(B)または層(A)を形成し、積層体の形成と同時に一体化を行う処理や、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を共押出しすることにより、積層体の形成と同時に一体化を行う処理が挙げられる。加圧操作を行う処理としては、例えば図2に示す簡易な加圧装置や、既存のプレス成形機を用いる方法であってもよいし、また一対のロール間を通過させたりする方法でもよい。また、大量生産する場合には、層(A)または層(B)上に、熱可塑性樹脂(B)または熱可塑性樹脂(A)を押し出して、層(B)または層(A)を形成させて、積層体の形成と同時に一体化を行う処理や、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を共押出しすることにより、積層体の形成と同時に一体化を行う処理が簡便である。
【0021】
なお一体化処理が、加圧操作を行う処理である場合には、好ましくは大気中、室温で、4~3000kPaの印加圧力下で保持することにより行われる。
図2は、簡易な加圧装置例の概念図を示す。図2では、フィルムまたはシート状の熱可塑性樹脂からなる積層体(11および12)を、スプリングバネ14を備えた台座13の上に載せて配置し、それら全体を加圧補助フィルム10で覆い、そのフィルムの周囲から強い力で積層体を押さえ込むことにより、結果的に積層体の上下面から強い圧力を加えている。
【0022】
本発明において、積層体に電子線照射を行うには、加速電圧が50~300keVの範囲で行われる。本発明においては、熱可塑性樹脂の放射線損傷や、X線の発生を防ぐため、また加熱による熱可塑性樹脂の変形、融解、劣化を防ぐために加速電圧は低い方が望ましく、好ましくは加速電圧が100~300keV、より好ましくは120~200ke
V、さらに好ましくは150~180keVの範囲で電子線照射を行う。電子線の照射時間は、通常0.01~3.0秒であり、電子線照射時の温度は通常室温~50℃の範囲である。
【0023】
電子線照射装置は、特に限定されるものではなく、図1に本発明に使用可能な電子線照射装置の一例を示す。該電子線照射装置は、マルチ電子銃7を備えた真空室2と、その下部に積層体(試料)6が供給される筐体1とが設置され、真空室2と筐体1とが接するように構成されている。筐体1の内部は、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気に保たれ、駆動ロール3および従動ロール4に懸架されたコンベヤ5が配置されている。該コンベヤ5の上を試料6が搬送される。前記真空室2内には、カソードとなるマルチ電子銃7が配置され、真空室2の下部でかつ筺体1と接する箇所にアノードとなる窓8がチタン膜によって形成され配置されている。真空室2内のマルチ電子銃7から、筐体1中の試料6に向かって電子線が窓8を通して照射されるので、筐体1の内部がプロセス領域9を構成している。
【0024】
なお、前記試料6とは、電子線が照射される対象であり、具体的には前記積層体である。本発明において、電子線の照射は、層(A)から層(B)に向かって、または層(B)から層(A)に向かって行われる。すなわち、積層体の一方の表面側から積層体の深さ方向に向かって電子線が照射される。なお、電子線の照射は一般に層(A)と層(B)との厚さに差がある場合には、厚さの薄い層から、厚い層に向かって電子線を照射することが低い加速電圧によって有効な電子線を照射する観点から好ましい。
【0025】
すなわち、図2に示す装置を用いて一体化した積層体(11および12)に電子線を照射する場合には、通常11から12に向かって電子線が照射される。
ここで電子線照射量D(MGy)は、I(Irradiation current(mA))、S(Conveyor speed(m/min.))、n(Number of Irradiation)との間の関係式(下記式
1)から算出される。
D=0.216×(I/S)×n (式1)
【0026】
本発明では、前記照射における電子線照射線量が、0.05~0.5MGyの範囲であることが好ましく、0.1~0.45MGyの範囲であることがより好ましく、0.2~0.3MGyの範囲であることが特に好ましい。
【0027】
この範囲であれば、電子線照射によって各層の機械的強度が損なわれることなく、高い接着強度で層間の接合がなされるので、得られる異種樹脂成型体の引張強度や曲げ強度、さらには衝撃強度等の機械的な物性が、従来の異種樹脂成型体と比べて向上するために好ましい。
【0028】
なお、電子線照射に際して、少なくとも電子線は接着すべき層間の界面にまで到達することが望ましいことから、電子線の進入深さを考慮して、電子線が照射され侵入する側の層を形成する素材の密度や厚さ、照射環境等を適宜制御することが必要になる。例えば、複合体に組み込まれているフィルムやシートの厚さが増すと、一般に電子線が内部にまで充分に進入しないため、照射電圧の変化に伴い、透過可能なフィルムの厚さが決まる。そこで、電子線が照射され侵入される側の熱可塑性樹脂層の厚さは、電子線の加速電圧によって影響を受け、少なくとも両層の界面にまで電子線が侵入することが望ましい。
【0029】
実施例で示したように、厚さ25μmのポリアミドフィルムと、異種の熱可塑性樹脂(ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート)シートとを組み合わせて用いた場合、ポリアミドフィルム側から加速電圧(V)を170keVの条件で電子線照射したときには、電子線は100~200μmの深さへと侵入する。そこで100~20
0keVの電子線が内部まで充分に侵入させるためには、電子線が照射される側の層の厚さは0.01~200μmであることが好ましく、加速電圧が50~300keVの範囲の電子線で、内部まで充分に侵入させるためには、電子線が照射される側の層の厚さが0.01~500μmであることが好ましい。なお、電子線が直接照射されない他方の層は、主に機械的な強度を保つ役割を担う基材層として使われることが多いので、実用的な厚さを有していればよい。
【0030】
このようにして製造された異種熱可塑性樹脂成型体は、さらに真空成型や圧空成型等の様々な二次成形を加えて、希望する各種の形状へと変更させることができる。
本発明の製造方法により得られる、異種熱可塑性樹脂成型体は、層(A)に由来する層(A’)および層(B)に由来する層(B’)を有しており、層間の接合強度に優れる。層間の接合強度に優れる理由については明らかではないが、本発明者らは積層体に電子線を照射することにより、異種熱可塑性樹脂にダングリングボンドが形成し、それによって相互のぬれ性が改良されて、熱可塑性樹脂間の界面接着性が向上し、高い接合強度が得られたと推定している。
【0031】
本発明の異種熱可塑性樹脂成型体は、人工血管、人工靱帯などの幅広い医療用材料、あるいは医療器具部品等としての使用に好適である。もちろん各種産業分野における接合・複合部品や製品にも応用することができる。
【実施例】
【0032】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
下記2種類の熱可塑性樹脂のフィルムを準備した。フィルムの大きさは、共に長さ10.0mmで、幅が10.0mmであった。
(1)ポリアミドフィルム(ナイロン-6、ユニチカ製 EMBLEM ON、厚さ25μm)
(2)ポリプロピレンシート(ニッコー株式会社製 ポリプロピレンフィルムシート、厚
さ0.2mm)
ポリプロピレンシートの上に、ポリアミドフィルムを重ねて敷き、積層体を得た。
【0033】
その後、図2に記載の加圧装置を用いて、常温、印加圧力0.27MPa、大気雰囲気の条件で積層体をプレスして、長さ10.0mm、幅10.0mmの、ポリアミド層/ポリプロピレン層からなる2層が一体化した積層体(複合体)を得た。なお、該複合体の厚さは225.0μm、体積は22.5mm3であった。
【0034】
次いで、図2の加圧装置に設置された状態にある前記複合体をそのまま図1に示した電子線照射装置にセットし、室温、窒素ガス雰囲気中(1013hPa)で電子線を照射して、シート状の異種熱可塑性樹脂成型体を得た。なお、電子線の照射は、ポリアミド層からポリプロピレン層に向かって行った。照射条件は、Acceleration voltage(加速電圧
)が170keV、Irradiation currentがI=2mA、Conveyor speedがS=10m
/min、真空室の真空度が3×10-4Pa以下、Ti箔窓の厚さが15μm、窓から試料までの距離が10mm、試料にかかる電圧が約130keVで、1回当たりの照射量は
、43.2kGyで、1回当たりの照射時間は0.23秒であった。また、電子線の照射
回数は3回であり、電子線照射量は0.13MGy(43.2kGy×3)であった。
【0035】
得られた、異種熱可塑性樹脂成型体を、その後図3に示すように2個のステンレス鋼棒(泰豊トレーディングス製 JIS G4318相当 SUS304、厚さ5.0mm、幅5.0mm、長さ10.0mmの角棒形)の間に挟み、その際に試料の平坦な両表面と角
棒端面との間を接着剤(セメダイン製品 商品名SUPER X)を用いて接着し、それ
を引張試験用試験片として利用した。
【0036】
前記引張試験用試験片を用いて、引張試験をJIS K7073に準拠して行い、測定した引張強度値から各試験片における両層の接着面に対する接着強度を評価した。すなわち、インストロン引張試験機(型番3367)を用い、引張速度1mm/min.で引張試験を行い、下記式より引張強度を算出した。
σ=F/S
(σ:引張強度(MPa)、F:引張荷重(N)、S:試験片の断面積(m2))
【0037】
〔実施例2〕
前記(2)ポリプロピレンシート(ニッコー株式会社製 ポリプロピレンフィルムシー
ト、厚さ0.2mm)を、(3)ポリメタクリル酸メチルシート(日東樹脂工業製 クラレ
ックス、厚さ1.0mm)に代えた以外は実施例1と同様に行い、ポリアミド層/ポリメ
タクリル酸メチル層からなる2層が一体化した積層体(複合体)、異種熱可塑性樹脂成型体および引張試験用試験片を得た。
【0038】
実施例1と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
なお、該複合体の厚さは1025μm、体積は102.5mm3であった。また、電子
線の照射は、ポリアミド層からポリメタクリル酸メチル層に向かって行った。
【0039】
〔実施例3〕
前記(2)ポリプロピレンシート(ニッコー株式会社製 ポリプロピレンフィルムシー
ト、厚さ0.2mm)を、(4)ポリカーボネートシート(ゼネラル・エレクトリック社製
レキサンシート、厚さ1.0mm)に代えた以外は実施例1と同様に行い、ポリアミド
層/ポリカーボネート層からなる2層が一体化した積層体(複合体)、異種熱可塑性樹脂成型体および引張試験用試験片を得た。
【0040】
実施例1と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
なお、該複合体の厚さは1025μm、体積は102.5mm3であった。また、電子
線の照射は、ポリアミド層からポリカーボネート層に向かって行った。
【0041】
〔実施例4、5〕
電子線の照射回数を3回から5回(実施例4)、10回(実施例5)へと増加させた以外は実施例1と同様に行い、異種熱可塑性樹脂成型体および引張試験用試験片を得た。なお、電子線照射線量は0.22MGy(実施例4)、0.43MGy(実施例5)であった。
実施例1と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
【0042】
〔実施例6、7〕
電子線の照射回数を3回から5回(実施例6)、10回(実施例7)へと増加させた以外は実施例2と同様に行い、異種熱可塑性樹脂成型体および引張試験用試験片を得た。なお、電子線照射線量は0.22MGy(実施例6)、0.43MGy(実施例7)であった。
実施例2と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
【0043】
〔実施例8、9〕
電子線の照射回数を3回から5回(実施例8)、10回(実施例9)へと増加させた以外は実施例3と同様に行い、異種熱可塑性樹脂成型体および引張試験用試験片を得た。なお、電子線照射線量は0.22MGy(実施例8)、0.43MGy(実施例9)であった。
【0044】
実施例3と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
電子線の照射回数が5回および10回である異種熱可塑性樹脂成型体から得られた引張試験用試験片(実施例4~9)に関して、引張応力と伸び歪との関係を図4に示した。
また、実施例1~9および後述する比較例1~3より、電子線照射線量と引張応力との関係、電子線照射線量と引張歪との関係を図5および6に示した。
【0045】
〔比較例1〕
前記実施例1と同様の複合体を用いて、電子線を照射することなく引張試験用試験片を作成した。実施例1と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
【0046】
〔比較例2〕
前記実施例2と同様の複合体を用いて、電子線を照射することなく引張試験用試験片を作成した。実施例2と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
【0047】
〔比較例3〕
前記実施例3と同様の複合体を用いて、電子線を照射することなく引張試験用試験片を作成した。実施例3と同様に引張試験を行い、引張強度を算出した。
【0048】
実施例1~9と比較例1~3とを比較することにより、電子線を照射することによって得られた異種熱可塑性樹脂成型体は、高い引張強度および高い弾性率を有することがわかった。すなわち、異種熱可塑性樹脂成型体は、各層が強い強度で接着されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、電子線照射装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、異種熱可塑性樹脂層を重ねて、加圧積層(一体化)を行う装置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、引張試験用試験片の構造を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例4~9で行った引張試験で得られた引張応力と伸び歪との関係を示す図である。
【図5】図5は、実施例1~9、および比較例1~3で行った引張試験において、引張応力と電子線照射線量との関係を示す図である。
【図6】図6は、実施例1~9、および比較例1~3で行った引張試験において、伸び歪と電子線照射線量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・筐体
2・・・真空室
3・・・駆動ロール
4・・・従動ロール
5・・・コンベヤ
6・・・試料
7・・・マルチ電子銃(カソード)
8・・・窓(アノード)
9・・・プロセス領域
10・・・加圧補助フィルム
11・・・熱可塑性樹脂(実施例においては、ポリアミドフィルム)
12・・・熱可塑性樹脂(実施例においては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、または
ポリプロピレン)
13・・・台座(例えば、ウレタン樹脂)
14・・・スプリングバネ14
15・・・ステンレス角材
16・・・熱可塑性樹脂(ポリアミドフィルム)
17・・・熱可塑性樹脂(ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリプロピレン)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5